特許第6139188号(P6139188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139188
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】研磨装置および研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/00 20120101AFI20170522BHJP
   B24B 37/34 20120101ALI20170522BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B24B37/00 K
   B24B37/34
   H01L21/304 622E
【請求項の数】20
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-49686(P2013-49686)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-172155(P2014-172155A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 尚典
(72)【発明者】
【氏名】望月 宣宏
(72)【発明者】
【氏名】高東 智佳子
(72)【発明者】
【氏名】大保 忠司
【審査官】 宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/035518(WO,A1)
【文献】 特開2006−088292(JP,A)
【文献】 特開2007−180309(JP,A)
【文献】 特表2011−521450(JP,A)
【文献】 特表2007−525002(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0019581(US,A1)
【文献】 特開平10−309661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00−37/34
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、
研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、
研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、
前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、
前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、
前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、
前記研磨液貯留機構は、前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液貯留量を調整可能であることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構の少なくとも一部を上下動させることにより調整可能であることを特徴とする請求項に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構に設けられた開口の大きさを変化させることにより調整可能であることを特徴とする請求項に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の一部を吸入して排出することにより調整可能であることを特徴とする請求項に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構における研磨液を堰き止める部分を拡大又は縮小することにより調整可能であることを特徴とする請求項に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記研磨液供給ノズルは、前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液の供給状態を調整可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記研磨液供給ノズルの研磨液供給状態の調整は、研磨液の供給流量の調整であることを特徴とする請求項に記載の研磨装置。
【請求項8】
研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、
研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、
研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、
前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、
前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、
前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、
前記研磨液供給ノズルは、前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液の供給状態を調整可能であり、
前記研磨液供給ノズルの研磨液供給状態の調整は、研磨液の供給位置の調整であることを特徴とする研磨装置。
【請求項9】
研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、
研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、
研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、
前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、
前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、
前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、
前記研磨液供給ノズルは、前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液の供給状態を調整可能であり、
前記研磨液供給ノズルの研磨液供給状態の調整は、研磨液の温度の調整であることを特徴とする研磨装置。
【請求項10】
前記研磨液センサーは、pH、酸化還元電位、分光法、光の屈折率、光散乱、ζ電位、電気伝導度、温度、液中成分濃度のうち、少なくとも一つの物理量を測定することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項11】
測定した2つ以上の物理量を用いて研磨液の鮮度を算出することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項12】
前記研磨液センサーは、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液に直接接触又は浸漬されるか、または前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液を吸入して移送した箇所に配置されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項13】
研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、
研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、
研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、
前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、
前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、
前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、
前記研磨液センサーは、研磨パッドの略半径方向の複数箇所において測定可能であることを特徴とする研磨装置。
【請求項14】
前記研磨液供給ノズルに研磨液を供給する研磨液供給部は、研磨パッド上に供給する前の研磨液の鮮度を求める使用前研磨液鮮度測定機構を備えたことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項15】
記鮮度測定器にて鮮度が高いと判定された研磨液は、研磨テーブルから排出後に前記研磨液供給ノズルに供給して再利用することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項16】
前記研磨液貯留機構は円弧状に湾曲して形成された板状体からなる研磨液貯留板を備えることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項17】
記研磨液貯留機構は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの下流側の位置のみに配置され、前記研磨液貯留機構と前記研磨ヘッドとの間隔は5mm〜100mmに設定され、
前記研磨液供給ノズルから研磨液を前記研磨パッドへ滴下する位置は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの上流側で近接した位置になっていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項18】
研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨方法において、
研磨液供給ノズルから研磨パッド上に研磨液を供給し、
研磨液を基板と研磨パッドとの間に介在させつつ基板を研磨パッドに摺接させて基板を研磨し、
研磨液貯留機構により研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留し、
前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を研磨液センサーにより測定し、
鮮度測定器により、前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出し、
前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行い、
前記研磨パッドの半径方向の複数箇所において研磨液の鮮度を求め、求めた鮮度が予め定めた閾値を下回った箇所のみ研磨液の鮮度を更新する動作を行うことを特徴とする研磨方法。
【請求項19】
記研磨液貯留機構は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの下流側の位置のみに配置され、前記研磨液貯留機構と前記研磨ヘッドとの間隔は5mm〜100mmに設定され、
前記研磨液供給ノズルから研磨液を前記研磨パッドへ滴下する位置は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの上流側で近接した位置になっていることを特徴とする請求項18に記載の研磨方法。
【請求項20】
前記研磨液の鮮度が予め定めた閾値を下回ったことを検出したら、前記研磨液貯留機構に貯留している研磨液貯留量を減少させ及び/又は研磨液供給ノズルからの研磨液供給量を増加させることを特徴とする請求項18または19に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板上に形成された金属膜や絶縁膜などの薄膜を研磨する研磨装置および研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化・高密度化に伴い、回路の配線がますます微細化し、多層配線の層数も増加している。回路の微細化を図りながら多層配線を実現しようとすると、下側の層の表面凹凸を踏襲しながら段差がより大きくなるので、配線層数が増加するに従って、薄膜形成における段差形状に対する膜被覆性(ステップカバレッジ)が悪くなる。したがって、多層配線するためには、このステップカバレッジを改善し、然るべき過程で平坦化処理しなければならない。また光リソグラフィの微細化とともに焦点深度が浅くなるため、半導体デバイスの表面の凹凸段差が焦点深度以下に収まるように半導体デバイス表面を平坦化処理する必要がある。
【0003】
従って、半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化技術がますます重要になっている。この平坦化技術のうち、最も重要な技術は、化学的機械研磨(CMP(Chemical Mechanical Polishing))である。この化学的機械的研磨は、研磨装置を用いて、シリカ(SiO)やセリア(CeO)等の砥粒を含んだ研磨液を研磨パッドに供給しつつ半導体ウエハなどの基板を研磨面に摺接させて研磨を行うものである。
【0004】
CMPプロセスを行う研磨装置は、研磨パッドを有する研磨テーブルと、半導体ウエハなどの基板を保持するための研磨ヘッドとを備えている。このような研磨装置を用いて基板の研磨を行う場合には、研磨ヘッドにより基板を保持して基板を研磨パッドに対して所定の圧力で押圧する。このとき、研磨パッド上に研磨液を供給しつつ研磨テーブルと研磨ヘッドとを相対運動させることにより基板を研磨パッドに摺接させ、基板の被研磨面を平坦かつ鏡面に研磨する。
【0005】
研磨プロセスにおいて、研磨液の成分濃度等は研磨性能に影響を及ぼすため、特許文献1には、研磨装置から排出された研磨液を回収容器に回収し、回収した研磨液のゼータ電位を測定し、測定値が所定値よりも小さい時にはゼータ電位調整剤を添加して凝集状態にある研磨砥粒を分散状態にし、ゼータ電位が所定値以上の研磨液を研磨装置に循環させる研磨方法が記載されている。
また、特許文献2には、平坦化プロセスの種々のステップを制御するための調整プロセス中において研磨パッド上から排出された廃液(デブリス、研磨スラリ、化学的又はその他の副生成物を含む)を分析ユニットに回収し、回収した廃液中の所定の元素濃度等の要素を分析して廃液の特性を評価し、評価された廃液特性に基づいて平坦化プロセスを制御するようにしたCMP装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−167769号公報
【特許文献2】特表2007−520083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CMPプロセスを行う研磨装置にあっては、CMPプロセス中、研磨液は研磨パッド上に常時供給され、研磨パッドから常時廃液として排出されているが、研磨パッド上に供給された研磨液のなかには、殆ど研磨に寄与することなく研磨能力を残したまま排出されてしまう研磨液も多量にある。したがって、供給した研磨液の研磨能力を最大限に活用しているわけではなく、総じて十分な研磨能力を保持している研磨液を排出してしまっているという問題がある。
【0008】
また、特許文献1および2に記載されているように、従来にあっては、研磨装置から排出された研磨液(又は廃液)を回収し、回収した研磨液(又は廃液)中の成分濃度等を測定・分析することが行われていた。この場合、回収した研磨液(又は廃液)中には、デブリス(研磨屑)、研磨スラリ、化学的又はその他の副生成物などが含まれている。したがって、研磨装置から排出された研磨液を回収し、回収した研磨液(又は廃液)を測定・分析することでは、実際の研磨時に又は研磨直後に研磨液が持っている研磨能力を測定したことにはならないという問題がある。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、研磨パッド上に設けた研磨液貯留機構により、研磨に供した後に十分な研磨能力を保持している研磨液を排出せずに貯留することで供給された研磨液の研磨能力を十分に活用し、かつ研磨液の研磨能力を測定して研磨能力の低下した研磨液を速やかに排出することで、最小の研磨液供給量で最大の研磨能力が得られる研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明の研磨装置の一態様は、研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、前記研磨液貯留機構は、前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液貯留量を調整可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構を設けたため、研磨に供した後に十分な研磨能力を保持している研磨液を排出せずに貯留することが可能となり、供給された研磨液の研磨能力を十分に活用することができる。
本発明によれば、研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を研磨液センサーにより測定し、鮮度測定器により研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する。研磨性能に影響を与える研磨液の物理量については、種々のものがあるが、pH、酸化還元電位、分光法(吸光法,発光法)、光の屈折率、光散乱(ミラー散乱,動的散乱)、ゼータ電位、電気伝導度、温度、液中成分濃度は、いずれも研磨性能(研磨能力)に関係があり、これら物理量の変化を監視することにより研磨液の研磨能力の高さ(研磨能力の保持度合)、すなわち研磨液の「鮮度」を求めることができる。
本発明によれば、算出した研磨液の鮮度に基づいて、鮮度制御器は研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う。この制御は、以下のように行う。
予め研磨性能(研磨速度、平坦性、欠陥数など)と研磨液のこれら物理量すなわち鮮度との関係を調べておき、更に予め許容可能な鮮度の閾値を設定しておく。設定しておいた閾値を下回ったことを検出したら、鮮度制御器からの指令で、研磨液供給ノズルによる研磨液の供給状態の制御、研磨液貯留機構による研磨液貯留量の制御、もしくはその双方を実施することで、研磨液の鮮度を一定の範囲に制御することができる。
【0013】
発明の好ましい態様によれば、前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構の少なくとも一部を上下動させることにより調整可能であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構の少なくとも一部を上下動させることにより、研磨液貯留機構における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構に設けられた開口の大きさを変化させることにより調整可能であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構に設けられた開口の大きさを変化させることにより、研磨液貯留機構における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の一部を吸入して排出することにより調整可能であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構に貯留された研磨液の一部をポンプ等により吸入して排出することにより、研磨液貯留機構における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構における研磨液を堰き止める部分を拡大又は縮小することにより調整可能であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構における研磨液を堰き止める部分を拡大又は縮小することにより、研磨液貯留機構における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液供給ノズルは、前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液の供給状態を調整可能であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液供給ノズルの研磨液供給状態の調整は、研磨液の供給流量の調整であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液供給ノズルに研磨液を送出するポンプの回転速度を制御することにより、研磨液供給ノズルから研磨パッド上に供給する研磨液の流量を制御(調整)することができる。なお、ポンプに代えて、レギュレータを設けることにより、研磨液の供給流量を制御(調整)してもよい。
【0018】
本発明の研磨装置の他の態様は研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、前記研磨液供給ノズルは、前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液の供給状態を調整可能であり、前記研磨液供給ノズルの研磨液供給状態の調整は、研磨液の供給位置の調整であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液供給ノズルを揺動させ、研磨パッド上への研磨液の供給位置を制御(調整)することができる。この場合、研磨液供給ノズルの吐出口を研磨パッド上の最適位置に位置させたら、研磨液供給ノズルの揺動を停止して研磨液供給ノズルの位置を固定する。また、研磨液供給ノズルの内部に複数の通路を設け、各通路にバルブを設置し、各通路に設けたバルブを適宜開閉することにより、研磨液の供給位置を複数箇所から選択することができる。この場合、通常、1つのバルブのみを開き、残りのバルブを閉じることにより複数箇所から最適な1つの供給位置を選択するが、複数のバルブを同時に開き、複数箇所から同時に研磨液を供給することもできる。
【0019】
本発明の研磨装置の他の態様は研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、前記研磨液供給ノズルは、前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液の供給状態を調整可能であり、前記研磨液供給ノズルの研磨液供給状態の調整は、研磨液の温度の調整であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液供給ノズルに研磨液を供給する研磨液供給チューブに、温度センサと熱交換器とを設置し、研磨液供給チューブを流れる研磨液の温度を温度センサにより検出し、検出値に基づいて熱交換器を制御することにより、研磨液の温度を制御(調整)することができる。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液センサーは、pH、酸化還元電位、分光法、光の屈折率、光散乱、ζ電位、電気伝導度、温度、液中成分濃度のうち、少なくとも一つの物理量を測定することを特徴とする。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、測定した2つ以上の物理量を用いて研磨液の鮮度を算出することを特徴とする。
本発明における研磨性能には、研磨液の液性の指標と砥粒状態の指標との積あるいは比などの関数が寄与する。砥粒の凝集状態の指標としては2次粒子径があり、これはレーザー回折・散乱法、動的光散乱法、細孔電気抵抗法で測定できる。また、砥粒の凝集し易さを示す指標としてはゼータ電位があり、電気泳動光散乱法で測定できる。粒子径の分布の変化や凝集度の変化を捉えることで、研磨液の鮮度低下を監視することが可能である。
他に二つ以上の値の変化を監視し、これらの比率がどう変化するかを監視することで研磨能力を監視できる。たとえばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析法)などにより総金属濃度変化を監視しながら、吸光度により金属錯体濃度変化を監視すると、これらの比率がどう変化するかを監視することで錯化剤の消費程度が分かる。すなわち、錯化剤が十分存在する場合には、金属濃度の増加に伴い金属錯体濃度も増加し、結果として総金属濃度と金属錯体濃度の比はある一定の範囲内にあるが、錯化剤が不足すると金属錯体濃度が頭打ちとなって増加しなくなるため、両者の比率が変化する。これを検出することで研磨液の研磨能力の低下を検知することが可能となる。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液センサーは、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液に直接接触又は浸漬されるか、または前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液を吸入して移送した箇所に配置されることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液センサーは、研磨液貯留機構に貯留された研磨液に直接接触又は浸漬されるように配置される。例えば、研磨液センサーは一体型のセンサーからなり、研磨液センサーの検出端は研磨液に浸漬される。また、研磨液センサーは、互いに対向して配置された発光部と受光部とを備えた分離型のセンサーからなり、発光部および受光部はともに研磨液に浸漬される。
また、本発明によれば、研磨液貯留機構に貯留された研磨液を吸入して移送した箇所に研磨液センサーを配置する。すなわち、研磨液貯留機構に貯留された研磨液を吸入して移送するために、ポンプと配管とが設置され、配管に研磨液センサーが設置される。この場合、例えば、一体型の研磨液センサーの検出端は配管内を流れる研磨液に直接接触するように配置される。また、発光部と受光部からなる分離型の研磨液センサーは配管内を流れる研磨液に浸漬される。なお、発光部と受光部からなる分離型の研磨液センサーは配管のU字状の折曲部の外側に対向して配置してもよい。この場合、配管は透光性の材質のチューブから構成される。
【0023】
本発明の研磨装置の他の態様は研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、前記研磨液センサーは、研磨パッドの略半径方向の複数箇所において測定可能であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構に貯留された研磨液について、研磨パッドの略半径方向の複数箇所において測定可能であるため、研磨液貯留機構の複数の位置において同時に研磨液の鮮度に関わる物理量を測定できる。
【0024】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液供給ノズルに研磨液を供給する研磨液供給部は、研磨パッド上に供給する前の研磨液の鮮度を求める使用前研磨液鮮度測定機構を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、研磨液供給ノズルに研磨液を供給する研磨液供給部に、研磨パッド上に供給する前の研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーが設置され、研磨液センサーは、研磨液センサーで測定された物理量から研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器に接続されている。研磨液センサーと鮮度測定器は、使用前研磨液測定機構を構成しており、使用前研磨液測定機構により研磨パッド上に供給する前の研磨液の鮮度を求めることができる。
【0026】
本発明の好ましい態様は、前記鮮度測定器にて鮮度が高いと判定された研磨液は、研磨テーブルから排出後に前記研磨液供給ノズルに供給して再利用することを特徴とする。
本発明は、研磨液貯留機構に貯留された研磨液を吸入して移送した箇所に研磨液センサーを配置した構成の場合に好適であり、研磨液を吸入して移送した箇所に配置された研磨液センサーにより研磨液の鮮度に関わる物理量を測定し、鮮度測定器にて鮮度を算出し、鮮度制御器により予め設定された鮮度の閾値より高く鮮度が高いと判定された研磨液は、研磨液供給ノズルに供給して再利用する。
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液貯留機構は円弧状に湾曲して形成された板状体からなる研磨液貯留板を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明の好ましい態様は、前記研磨液貯留機構は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの下流側の位置のみに配置され、前記研磨液貯留機構と前記研磨ヘッドとの間隔は5mm〜100mmに設定され、前記研磨液供給ノズルから研磨液を前記研磨パッドへ滴下する位置は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの上流側で近接した位置になっていることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構は、研磨テーブルの回転方向において研磨ヘッドの下流側に設けられているため、研磨に供した後に十分な研磨能力を保持している研磨液を排出せずに貯留することが可能となる。
【0029】
本発明の研磨方法の態様は、研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨方法において、研磨液供給ノズルから研磨パッド上に研磨液を供給し、研磨液を基板と研磨パッドとの間に介在させつつ基板を研磨パッドに摺接させて基板を研磨し、研磨液貯留機構により研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留し、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を研磨液センサーにより測定し、鮮度測定器により、前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出し、前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行い、前記研磨パッドの半径方向の複数箇所において研磨液の鮮度を求め、求めた鮮度が予め定めた閾値を下回った箇所のみ研磨液の鮮度を更新する動作を行うことを特徴とする。
本発明によれば、研磨パッドの半径方向の複数箇所において研磨液の鮮度を求め、求めた鮮度が予め定めた閾値を下回った箇所のみ研磨液の鮮度を更新する動作を行う。すなわち、求めた鮮度が予め定めた閾値を下回った箇所のみ研磨液貯留機構に貯留している研磨液貯留量を減少させ及び/又は研磨液供給ノズルからの研磨液供給量を増加させることにより、研磨液の鮮度を更新する。これにより、研磨液の鮮度の調整は、研磨液貯留機構における複数の領域で個別に行うことができるため、トータルの研磨液供給量を減らすことができる。すなわち、最小の研磨液供給量で最大の研磨能力を得ることができる。
本発明の研磨方法の好ましい態様において、前記研磨液貯留機構は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの下流側の位置のみに配置され、前記研磨液貯留機構と前記研磨ヘッドとの間隔は5mm〜100mmに設定され、前記研磨液供給ノズルから研磨液を前記研磨パッドへ滴下する位置は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの上流側で近接した位置になっていることを特徴とする。
本発明の研磨方法の好ましい態様は、前記研磨液の鮮度が予め定めた閾値を下回ったことを検出したら、前記研磨液貯留機構に貯留している研磨液貯留量を減少させ及び/又は研磨液供給ノズルからの研磨液供給量を増加させることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液の鮮度を一定の範囲に制御することができ、最小の研磨液供給量で最大の研磨能力を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構を設けたため、研磨に供した後に十分な研磨能力を保持している研磨液を排出せずに貯留することが可能となり、供給された研磨液の研磨能力を十分に活用することができる。
(2)研磨液貯留機構に貯留されている研磨液の研磨能力の高さ(研磨能力の保持度合)、すなわち研磨液の鮮度を算出することで、研磨液の鮮度を管理することができる。
(3)研磨液貯留機構に貯留されている研磨液の鮮度を算出し、算出した研磨液の鮮度に基づいて、研磨液供給ノズルによる研磨液の供給状態の制御、研磨液貯留機構による研磨液貯留量の制御、もしくはその双方を実施することで、研磨液の鮮度を一定の範囲に制御することができる。したがって、最小の研磨液供給量で最大の研磨能力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明に係る研磨装置の全体構成を示す模式的斜視図である。
図2図2は、図1に示す研磨装置の概略平面図であり、研磨パッド,研磨ヘッド,研磨液供給ノズル,研磨液貯留機構および研磨液センサーの配置関係を図示している。
図3図3は、図3は、図1に示す研磨装置の変形例を示す概略平面図である。
図4図4は、研磨液貯留機構の少なくとも一部を上下動させることにより研磨液貯留量を制御(調整)する構成を示す図であり、図4(a)は研磨液貯留機構を示す模式的立面図であり、図4(b)は図4(a)のIV矢視図である。
図5図5は、研磨液貯留機構に設けられた開口の大きさを変化させることにより研磨液貯留量を制御(調整)する構成を示す平面図である。
図6図6は、研磨液貯留機構に貯留された研磨液の一部を吸入して排出することにより研磨液貯留量を制御(調整)する構成を示す模式的立面図である。
図7図7は、研磨液貯留機構における研磨液を堰き止める部分を拡大又は縮小することにより研磨液貯留量を制御(調整)する構成を示す平面図である。
図8図8は、研磨液供給ノズルによる研磨後の供給流量を制御(調整)する構成を示す平面図である。
図9図9(a),(b)は、研磨液供給ノズルによる研磨液の供給位置および研磨液の温度を制御(調整)する構成を示す図であり、図9(a)は模式的立面図であり、図9(b)は図9(a)のIX矢視図である。
図10図10は、研磨液供給ノズルが複数の通路を備えることにより研磨液の供給位置を複数箇所(多点供給)とする構成を示す部分断面立面図である。
図11図11(a),(b)は、研磨液センサーが研磨液貯留機構に貯留された研磨液に直接接触又は浸漬されるように配置された構成を示す模式的立面図である。
図12図12は、研磨液センサーが研磨液貯留機構に貯留された研磨液を吸入して移送した箇所に配置された構成を示す模式的立面図である。
図13図13は、研磨液供給ノズルによる研磨液の供給位置および研磨液の温度を制御(調整)する構成を示す模式的立面図である。
図14図14は、研磨液のpHの時間経過に対する変化を示すグラフである。
図15図15は、研磨液の酸化還元電位の時間経過に対する変化を示すグラフである。
図16図16は、研磨液の特定波長における吸光度の時間経過に対する変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る研磨装置および研磨方法の実施形態を図1乃至図16を参照して説明する。図1乃至図16において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明に係る研磨装置の全体構成を示す模式的斜視図である。図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2を支持する研磨テーブル1と、研磨対象物である半導体ウエハ等の基板を保持して研磨テーブル1上の研磨パッド2に押圧する研磨ヘッド3と、研磨パッド2上に研磨液(スラリー)を供給する研磨液供給ノズル4とを備えている。
【0033】
研磨ヘッド3は、その下面に真空吸着により半導体ウエハ等の基板を保持するように構成されている。研磨ヘッド3および研磨テーブル1は、矢印で示すように同一方向に回転し、この状態で研磨ヘッド3は、基板を研磨パッド2に押圧する。研磨液供給ノズル4からは研磨液が研磨パッド2上に供給され、基板は、研磨液の存在下で研磨パッド2との摺接により研磨される。
【0034】
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2上に配置され、研磨パッド2上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構10と、研磨液貯留機構10に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーSとを備えている。研磨液貯留機構10は、円弧に湾曲して形成された板状体からなる研磨液貯留板11を備え、研磨液貯留板11の下面が研磨パッド2に接触することにより研磨液貯留板11の内周面により研磨液を堰き止めて研磨液を貯留するようになっている。また、研磨液センサーSは、研磨ヘッド3と研磨液貯留機構10との間の空間に設置されており、研磨液貯留機構10に貯留された研磨液に直接接触又は浸漬されるようになっている。
【0035】
図1に示すように、研磨装置は、さらに研磨液センサーSで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器5と、鮮度測定器5で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器6とを備えている。研磨液センサーSは鮮度測定器5に接続され、鮮度測定器5は鮮度制御装置6に接続されている。研磨液貯留機構10は鮮度制御装置6に接続されている。また、研磨液供給ノズル4に研磨液を供給する研磨液供給部(配管やポンプP等を含む)7は、鮮度制御装置6に接続されている。
【0036】
図2は、図1に示す研磨装置の概略平面図であり、研磨パッド2,研磨ヘッド3,研磨液供給ノズル4,研磨液貯留機構10および研磨液センサーSの配置関係を図示している。図2に示すように、研磨液貯留機構10は、研磨ヘッド3に近接して設置されており、研磨テーブル1の回転方向において研磨ヘッド3の下流側に配置されている。研磨液貯留機構10の研磨液貯留板11は、概略円盤状の研磨ヘッド3の回転中心Oを中心とした円弧上にあり、研磨ヘッド3の半径をR1、研磨液貯留板11の半径をR2とすると、R2=(1.05〜1.3程度)×R1に設定されている。研磨液貯留板11の半径R2を研磨ヘッド3の半径R1より大きくすることにより、研磨ヘッド3と研磨液貯留板11との間に研磨パッド2上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留空間を形成している。この研磨液貯留空間における研磨ヘッド3と研磨液貯留板11との間隔は、5mm〜100mm、好ましくは20mm〜50mmに設定されている。研磨液センサーSは研磨液貯留空間にある研磨液に直接接触又は浸漬されるようになっている。研磨液供給ノズル4は、研磨パッド2の外側から研磨パッド2の回転中心の近傍まで延びており、研磨液供給ノズル4からの研磨液の滴下位置は、研磨テーブル1の回転方向において研磨ヘッド3の上流側で近接した位置になっている。
【0037】
図3は、図1に示す研磨装置の変形例を示す概略平面図である。図3に示す研磨装置においては、研磨ヘッド3と研磨液貯留板11との間に形成された研磨液貯留空間に複数の研磨液センサーが配置されている。図示例では、3個の研磨液センサーS1,S2,S3が所定間隔をおいて配置されている。これら複数の研磨液センサーS1,S2,S3は、研磨パッド2の略半径方向の複数箇所において研磨液の鮮度に関わる物理量を測定できるようになっている。
【0038】
次に、研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーSおよび研磨液センサーSで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器5について説明する。
上記CMPプロセス用の研磨液は、砥粒に加え各種添加剤成分を含むことが知られているが、これらの添加剤成分にはそれぞれ、pHや酸化還元電位調節、砥粒の分散性向上、研磨表面での保護膜形成、溶出した金属イオンとの錯体形成などの役割がある。研磨の進行に伴い、研磨液の成分濃度は変化するため、研磨液の研磨性能も変化する。安定した研磨性能を得るためには、研磨液の各成分濃度を最適値に保つことが重要であり、このためには各成分濃度を監視/制御することが望ましい。
【0039】
研磨性能に対する研磨液の液性変化の影響は、以下のようなものがある。
研磨液のpHが変化すると、砥粒のゼータ電位が変化することで砥粒の凝集状態が変わり、研磨性能が変化したりスクラッチが発生しうる。またpH変化に伴って錯化剤の酸解離度が変化すると金属錯体の生成量に影響すると考えられ、これにより金属錯体として液中に存在可能な金属量が変化することで、研磨性能に影響が出る。
【0040】
また、pHと酸化還元電位の変化は金属の反応性に影響するため、金属表面における不動態層形成や錯体形成に影響し、研磨性能を変化させる。
研磨液のpHや酸化還元電位の変化は、研磨液の液中成分の濃度変化と相関があるため、pHや酸化還元電位の変化を監視することで、間接的に成分濃度を監視することができる。同様に金属イオンとの錯体形成によって可視光や紫外線の吸光波長や吸光係数が変化する場合、吸光度の変化を監視することで錯化剤や金属イオン、あるいは金属錯体濃度の変化を監視できる。
【0041】
研磨の進行に伴う研磨液の各種の液性変化の要因としては、さまざまな要因がある。pH変化については、研磨が進行し、液中の錯化剤が金属イオンとの錯体形成に消費されると、錯化剤の解離平衡が変化し、非解離だった錯化剤が解離すると共にプロトンを放出することでpHが低下する。また銅イオンのように1価と2価の酸化状態を取り得る場合、酸化剤や還元剤共存下で銅イオンが触媒的に作用し、ある成分の酸化分解反応などを促進し、その反応に伴ってプロトンが生成/消費されることでpHを変化させる。
【0042】
研磨液の酸化還元電位(ORP)変化については、銅イオンのように金属錯体を形成し、かつ1価や2価の酸化状態を取り得る場合、触媒的な作用で酸化剤や還元剤を消費することでORPが変化する。また金属と錯体を形成する前の錯化剤の状態では酸化還元されにくかった成分が、金属イオンと錯体を形成することで酸化還元され易くなり、結果として金属錯体濃度が増えるにつれて酸化還元剤が金属錯体との酸化還元反応に消費され、ORPが変化してしまうことがある。
【0043】
吸光度変化については、金属イオン、錯化剤、金属錯体など成分によって特有の吸光波長や吸光係数を持つので、研磨の進行に伴う金属の溶出、金属錯体の形成などにより、各成分濃度が変化すると溶液全体としての吸光波長や吸光係数が変化する。特に金属錯体の酸化還元反応などにより、特定の波長域において、元の成分よりも高い吸光度を示す生成物ができる場合などでは、酸化剤や還元剤などの成分濃度変化を生成物の吸光度変化で監視することができる。
【0044】
研磨性能と研磨液との関係について更に説明すると、研磨性能には、研磨液の液性の指標と砥粒状態の指標との積あるいは比などの関数が寄与する。
これまで、研磨液の液性の指標を列挙したが、砥粒の凝集状態の指標としては2次粒子径があり、これはレーザー回折・散乱法、動的光散乱法、細孔電気抵抗法で測定できる。また、砥粒の凝集し易さを示す指標としてはゼータ電位があり、電気泳動光散乱法で測定できる。粒子径の分布の変化や凝集度の変化を捉えることで、研磨液の鮮度低下を監視することが可能である。
【0045】
他に二つ以上の値の変化を監視し、これらの比率がどう変化するかを監視することで研磨能力を監視できる。たとえばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析法)などにより総金属濃度変化を監視しながら、吸光度により金属錯体濃度変化を監視すると、これらの比率がどう変化するかを監視することで錯化剤の消費程度が分かる。すなわち、錯化剤が十分存在する場合には、金属濃度の増加に伴い金属錯体濃度も増加し、結果として総金属濃度と金属錯体濃度の比はある一定の範囲内にあるが、錯化剤が不足すると金属錯体濃度が頭打ちとなって増加しなくなるため、両者の比率が変化する。これを検出することで研磨液の研磨能力の低下を検知することが可能となる。
【0046】
このように金属イオンや酸化還元剤、錯化剤などの添加剤を含めた複雑な反応が起こっている場合、吸光度など成分濃度と相関のある物理的指標を監視することで、個々の成分濃度変化を間接的に監視することができる。
以上は、研磨性能に影響を与える研磨液の物理量について、いくつかを例示したが、総括すると、pH、酸化還元電位、分光法(吸光法,発光法)、光の屈折率、光散乱(ミラー散乱,動的散乱)、ゼータ電位、電気伝導度、温度、液中成分濃度は、いずれも研磨性能(研磨能力)に関係があり、これら物理量の変化を監視することにより研磨液の研磨能力の高さ(研磨能力の保持度合)、すなわち研磨液の「鮮度」を求めることができる。したがって、上記物理量の少なくとも一つを研磨液センサーSにより測定し、鮮度測定器5により、測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出することができる。
【0047】
このようにして算出した研磨液の鮮度に基づいて、鮮度制御器6は研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う。この制御は、以下のように行う。
予め研磨性能(研磨速度、平坦性、欠陥数など)と研磨液のこれら物理量すなわち鮮度との関係を調べておき、更に予め許容可能な鮮度の閾値を設定しておく。設定しておいた閾値を下回ったことを検出したら、鮮度制御器6からの指令で、研磨液供給ノズル4による研磨液の供給状態の制御、研磨液貯留機構10による研磨液貯留量の制御、もしくはその双方を実施することで、研磨液の鮮度を一定の範囲に制御する。
【0048】
研磨液供給ノズル4による研磨液の供給状態は、研磨液供給流量、研磨液供給位置(パッド半径方向位置)、研磨液供給ノズルのパッド半径方向の揺動幅と揺動速度、によって制御される。研磨液貯留機構10による研磨液貯留量は、研磨液貯留機構10の上下動、研磨液貯留機構10に設けられた開口部の大きさの変化、研磨液貯留機構10のパッド半径方向の伸縮、などにより、研磨液貯留機構10での研磨液流入量と研磨液排出量とのバランスを変化させることによって制御される。
【0049】
次に、鮮度制御器6からの指令に基づき研磨液貯留機構10による研磨液貯留量を制御する具体的な構成について図4乃至図7を参照して説明する。
図4は、研磨液貯留機構10の少なくとも一部を上下動させることにより研磨液貯留量を制御(調整)する構成を示す図であり、図4(a)は研磨液貯留機構10を示す模式的立面図であり、図4(b)は図4(a)のIV矢視図である。図4(a),(b)に示すように、研磨液貯留機構10の研磨液貯留板11は、3つに分割された貯留板片11A,11B,11Cから構成されており、各貯留板片11A,11B,11Cにはねじ棒12が連結されている。各ねじ棒12には、外周面に歯車13aを形成し内周面に雌ねじを形成した雌ねじ部材13が螺合しており、雌ねじ部材13にはモータMに連結された歯車14が噛合している。モータMは鮮度制御器6に接続されている。したがって、各モータMを個別に駆動することにより、雌ねじ部材13を回転させ、ねじ棒12を上下動させ、貯留板片11A,11B,11Cを個別に上下動させることができる。すなわち、研磨液貯留機構10の少なくとも一部を上下動させることにより、研磨液貯留機構10における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0050】
図5は、研磨液貯留機構10に設けられた開口の大きさを変化させることにより研磨液貯留量を制御(調整)する構成を示す平面図である。図5に示すように、研磨液貯留機構10の研磨液貯留板11には、複数の開口(図示例では3個の開口)11aが形成されており、これら複数の開口11aの位置には、開口11aを個別に開閉するシャッタ16が設置されている。複数のシャッタ16の開閉は鮮度制御器6により個別に制御されるようになっている。したがって、開閉すべきシャッタ16の個数を適宜調整することにより、研磨液貯留機構10に設けられた開口の大きさを変化させることができ、研磨液貯留機構10における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0051】
図6は、研磨液貯留機構10に貯留された研磨液の一部を吸入して排出することにより研磨液貯留量を制御(調整)する構成を示す模式的立面図である。図6に示すように、研磨液貯留機構10は、研磨液貯留板11上に設置されたポンプPと、ポンプPに接続された配管15とを備えている。ポンプPはモータMに連結されており、モータMは鮮度制御器6に接続されている。したがって、モータMを駆動することによりポンプPを作動させ、研磨液貯留機構10に貯留された研磨液の一部を吸入して排出することができる。これにより、研磨液貯留機構10における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0052】
図7は、研磨液貯留機構10における研磨液を堰き止める部分を拡大又は縮小することにより研磨液貯留量を制御(調整)する構成を示す平面図である。図7に示すように、研磨液貯留機構10の研磨液貯留板11の両側部には、研磨液貯留板11に対して進退自在に構成された補助の研磨液貯留板17,17が設置されている。各補助の研磨液貯留板17の進退は鮮度制御器6により個別に制御されるようになっている。したがって、各補助の研磨液貯留板17を適宜進退させることにより、研磨液貯留機構10における研磨液を堰き止める部分を拡大又は縮小することができる。これにより、研磨液貯留機構10における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0053】
次に、鮮度制御器6からの指令に基づき研磨液供給ノズル4による研磨液の供給状態を制御する具体的な構成について図8乃至図10を参照して説明する。
図8は、研磨液供給ノズル4による研磨後の供給流量を制御(調整)する構成を示す平面図である。図8に示すように、研磨液供給ノズル4に研磨液を送出するポンプPは鮮度制御器6に接続されており、ポンプPの回転速度が制御されるようになっている。したがって、ポンプPの回転速度を制御することにより、研磨液供給ノズル4から研磨パッド2上に供給する研磨液の流量を制御(調整)することができる。なお、ポンプPに代えて、レギュレータを設けることにより、研磨液の供給流量を制御(調整)してもよい。
【0054】
図9(a),(b)は、研磨液供給ノズル4による研磨液の供給位置および研磨液の温度を制御(調整)する構成を示す図であり、図9(a)は模式的立面図であり、図9(b)は図9(a)のIX矢視図である。図9(a),(b)に示すように、研磨液供給ノズル4は、二つのプーリ20,21と、二つのプーリ20,21間に架渡されたタイミングベルト22と、プーリ21に連結されたモータMとからなる揺動機構に連結されている。モータMは鮮度制御器6に接続されている。したがって、モータMを正逆転することにより、プーリ20を回転させて研磨液供給ノズル4を揺動させ、研磨パッド2上への研磨液の供給位置を制御(調整)することができる。この場合、研磨液供給ノズル4の吐出口を研磨パッド2上の最適位置に位置させたら、モータMを停止して研磨液供給ノズル4の位置を固定する。
【0055】
また、図9(a),(b)に示すように、研磨液供給ノズル4に研磨液を供給する研磨液供給チューブ24には、温度センサ25と熱交換器26とが設置されている。温度センサ25および熱交換器26は鮮度制御器6に接続されている。したがって、研磨液供給チューブ24を流れる研磨液の温度を温度センサ25により検出し、検出値を鮮度制御器6に入力して熱交換器26を制御することにより、研磨液の温度を制御(調整)することができる。
【0056】
図10は、研磨液供給ノズル4が複数の通路を備えることにより研磨液の供給位置を複数箇所(多点供給)とする構成を示す部分断面立面図である。図10に示すように、研磨液供給ノズル4は内部に複数の通路4a,4b,4c,4dを有している。各通路4a〜4dにはバルブVa,Vb,Vc,Vdが設置されており、各バルブVa〜Vdは鮮度制御器6に接続されている(図示せず)。したがって、バルブVa〜Vdを適宜開閉することにより、研磨液の供給位置を複数箇所から選択することができる。この場合、通常、1つのバルブのみを開き、残りのバルブを閉じることにより複数箇所から最適な1つの供給位置を選択するが、複数のバルブを同時に開き、複数箇所から同時に研磨液を供給することもできる。
【0057】
次に、研磨液センサーSの配置構成について図11および図12を参照して説明する。
図11(a),(b)は、研磨液センサーSが研磨液貯留機構10に貯留された研磨液に直接接触又は浸漬されるように配置された構成を示す模式的立面図である。
図11(a)に示す例においては、研磨液センサーSは一体型のセンサーからなり、研磨液センサーSの検出端は研磨液に浸漬されている。
図11(b)に示す例においては、研磨液センサーSは、互いに対向して配置された発光部Leと受光部Lrとを備えた分離型のセンサーからなり、発光部Leおよび受光部Lrはともに研磨液に浸漬されている。なお、発光部Leと受光部Lrは、図11(b)の紙面に直交する方向に対向配置してもよい。
【0058】
図12は、研磨液貯留機構10に貯留された研磨液を吸入して移送した箇所に研磨液センサーSを配置した構成を示す模式的立面図である。図12に示すように、研磨液貯留機構10に貯留された研磨液を吸入して移送するために、ポンプPと配管15とが設置されている。配管15には、図12の枠内に示すように、研磨液センサーSが設置されている。すなわち、枠内の(a)に示す例においては、研磨液センサーSの検出端は配管15内を流れる研磨液に直接接触するように配置されている。(b)に示す例においては、発光部Leと受光部Lrからなる研磨液センサーSは配管15内を流れる研磨液に浸漬されている。(c)に示す例においては、発光部Leと受光部Lrからなる研磨液センサーSは配管15のU字状の折曲部の外側に対向して配置されている。この場合、配管15は透光性の材質のチューブから構成されている。
【0059】
図12に示すように、研磨液貯留機構10に貯留された研磨液を吸入して移送した箇所に研磨液センサーSを配置した構成の場合、研磨液センサーSにより研磨液の鮮度に関わる物理量を測定し、鮮度測定器5にて鮮度を算出し、鮮度制御器6により予め設定された鮮度の閾値より高く鮮度が高いと判定された研磨液は、研磨液供給ノズル4に供給して再利用することも可能である。
【0060】
次に、研磨液供給ノズル4に研磨液を供給する研磨液供給部7が研磨パッド2上に供給する前の研磨液の鮮度を求める使用前研磨液鮮度測定機構を備えた態様について図13を参照して説明する。
図13は、研磨液供給部7が研磨パッド2上に供給する前の研磨液の鮮度を求める使用前研磨液鮮度測定機構を備えた構成を示す模式的立面図である。図13に示すように、研磨液供給ノズル4に研磨液を供給する研磨液供給チューブ24には、研磨パッド2上に供給する前の研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーSが設置されている。研磨液センサーSは、図1に示す実施形態と同様に、研磨液センサーSで測定された物理量から研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器に接続されている(図示せず)。研磨液センサーSと鮮度測定器(図示せず)は、使用前研磨液測定機構を構成しており、使用前研磨液測定機構により研磨パッド2上に供給する前の研磨液の鮮度を求めることができる。図13のその他の構成は、図9と同様である。
【0061】
図1に示す鮮度制御器6は、前記使用前研磨液鮮度測定機構で求めた使用前の研磨液の鮮度と、図1に示す鮮度測定器5で求めた研磨に使用中の研磨液の鮮度とを比較し、使用中の研磨液の鮮度の測定値を補正する。これにより、研磨液貯留機構10に貯留されて研磨に使用中の研磨液の鮮度の測定値を、誤差のない正しい測定値に較正することができる。
【0062】
次に、研磨液の鮮度に関する物理量であるpH、酸化還元電位および吸光度が研磨時間の経過につれてどのように変化するかを図14乃至図16に示す。
図14は、研磨液のpHの時間経過に対する変化を示すグラフである。縦軸は無次元化したpH値を示し、横軸は研磨液が研磨対象材料と接触している時間(無次元化)を示している。図14に示すように、接触時間が0のときpHは1であり、接触時間が0.25のときpHは0.995633、接触時間が0.5のときpHは0.991266、接触時間が0.75のときpHは0.987991、接触時間が1のときpHは0.985808である。このように、研磨液のpH値は時間の経過に伴って低下することがわかる。
図15は、研磨液の酸化還元電位の時間経過に対する変化を示すグラフである。縦軸は無次元化した酸化還元電位を示し、横軸は研磨液が研磨対象材料と接触している時間(無次元化)を示している。図15に示すように、接触時間が0のとき酸化還元電位は1であり、接触時間が0.25のとき電位は1.046512、接触時間が0.5のとき電位は1.085271、接触時間が0.75のとき電位は1.144703、接触時間が1のとき電位は1.217054である。このように、研磨液の酸化還元電位は時間の経過に伴って増加することがわかる。
【0063】
図16は、研磨液の特定波長における吸光度の時間経過に対する変化を示すグラフである。縦軸は無次元化した特定波長の吸光度を示し、横軸は研磨液が研磨対象材料と接触している時間(無次元化)を示している。図16に示すように、接触時間が0のとき吸光度は1であり、接触時間が0.25のとき吸光度は1.408759、接触時間が0.5のとき吸光度は1.761557、接触時間が0.75のとき吸光度は2.333333、接触時間が1のとき吸光度は3.467153である。このように、研磨液の特定波長における吸光度は時間の経過に伴って増加することがわかる。
このように研磨液の研磨能力に影響を与える研磨液の物理量の変化傾向を考慮して閾値を設定することにより、研磨液の鮮度を管理することができる。
【0064】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 研磨テーブル
2 研磨パッド
3 研磨ヘッド
4 研磨液供給ノズル
5 鮮度測定器
6 鮮度制御器
10 研磨液貯留機構
11,17 研磨液貯留板
11a 開口
11A,11B,11C 貯留板片
12 ねじ棒
13 雌ねじ部材
13a,14 歯車
16 シャッタ
24 研磨液供給チューブ
25 温度センサ
26 熱交換器
M モータ
P ポンプ
S,S1,S2,S3 研磨液センサー
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16