【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明の研磨装置の一態様は、研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、前記研磨液貯留機構は、
前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液貯留量を調整可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構を設けたため、研磨に供した後に十分な研磨能力を保持している研磨液を排出せずに貯留することが可能となり、供給された研磨液の研磨能力を十分に活用することができる。
本発明によれば、研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を研磨液センサーにより測定し、鮮度測定器により研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する。研磨性能に影響を与える研磨液の物理量については、種々のものがあるが、pH、酸化還元電位、分光法(吸光法,発光法)、光の屈折率、光散乱(ミラー散乱,動的散乱)、ゼータ電位、電気伝導度、温度、液中成分濃度は、いずれも研磨性能(研磨能力)に関係があり、これら物理量の変化を監視することにより研磨液の研磨能力の高さ(研磨能力の保持度合)、すなわち研磨液の「鮮度」を求めることができる。
本発明によれば、算出した研磨液の鮮度に基づいて、鮮度制御器は研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う。この制御は、以下のように行う。
予め研磨性能(研磨速度、平坦性、欠陥数など)と研磨液のこれら物理量すなわち鮮度との関係を調べておき、更に予め許容可能な鮮度の閾値を設定しておく。設定しておいた閾値を下回ったことを検出したら、鮮度制御器からの指令で、研磨液供給ノズルによる研磨液の供給状態の制御、研磨液貯留機構による研磨液貯留量の制御、もしくはその双方を実施することで、研磨液の鮮度を一定の範囲に制御することができる。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構の少なくとも一部を上下動させることにより調整可能であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構の少なくとも一部を上下動させることにより、研磨液貯留機構における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構に設けられた開口の大きさを変化させることにより調整可能であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構に設けられた開口の大きさを変化させることにより、研磨液貯留機構における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の一部を吸入して排出することにより調整可能であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構に貯留された研磨液の一部をポンプ等により吸入して排出することにより、研磨液貯留機構における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液貯留量は、前記研磨液貯留機構における研磨液を堰き止める部分を拡大又は縮小することにより調整可能であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構における研磨液を堰き止める部分を拡大又は縮小することにより、研磨液貯留機構における研磨液貯留量を制御(調整)することができる。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液供給ノズルは、前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液の供給状態を調整可能であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液供給ノズルの研磨液供給状態の調整は、研磨液の供給流量の調整であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液供給ノズルに研磨液を送出するポンプの回転速度を制御することにより、研磨液供給ノズルから研磨パッド上に供給する研磨液の流量を制御(調整)することができる。なお、ポンプに代えて、レギュレータを設けることにより、研磨液の供給流量を制御(調整)してもよい。
【0018】
本発明の
研磨装置の他の態様は、
研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、前記研磨液供給ノズルは、前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液の供給状態を調整可能であり、前記研磨液供給ノズルの研磨液供給状態の調整は、研磨液の供給位置の調整であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液供給ノズルを揺動させ、研磨パッド上への研磨液の供給位置を制御(調整)することができる。この場合、研磨液供給ノズルの吐出口を研磨パッド上の最適位置に位置させたら、研磨液供給ノズルの揺動を停止して研磨液供給ノズルの位置を固定する。また、研磨液供給ノズルの内部に複数の通路を設け、各通路にバルブを設置し、各通路に設けたバルブを適宜開閉することにより、研磨液の供給位置を複数箇所から選択することができる。この場合、通常、1つのバルブのみを開き、残りのバルブを閉じることにより複数箇所から最適な1つの供給位置を選択するが、複数のバルブを同時に開き、複数箇所から同時に研磨液を供給することもできる。
【0019】
本発明の
研磨装置の他の態様は、
研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、前記研磨液供給ノズルは、前記鮮度制御器からの指令に基づき、研磨液の供給状態を調整可能であり、前記研磨液供給ノズルの研磨液供給状態の調整は、研磨液の温度の調整であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液供給ノズルに研磨液を供給する研磨液供給チューブに、温度センサと熱交換器とを設置し、研磨液供給チューブを流れる研磨液の温度を温度センサにより検出し、検出値に基づいて熱交換器を制御することにより、研磨液の温度を制御(調整)することができる。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液センサーは、pH、酸化還元電位、分光法、光の屈折率、光散乱、ζ電位、電気伝導度、温度、液中成分濃度のうち、少なくとも一つの物理量を測定することを特徴とする。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、測定した2つ以上の物理量を用いて研磨液の鮮度を算出することを特徴とする。
本発明における研磨性能には、研磨液の液性の指標と砥粒状態の指標との積あるいは比などの関数が寄与する。砥粒の凝集状態の指標としては2次粒子径があり、これはレーザー回折・散乱法、動的光散乱法、細孔電気抵抗法で測定できる。また、砥粒の凝集し易さを示す指標としてはゼータ電位があり、電気泳動光散乱法で測定できる。粒子径の分布の変化や凝集度の変化を捉えることで、研磨液の鮮度低下を監視することが可能である。
他に二つ以上の値の変化を監視し、これらの比率がどう変化するかを監視することで研磨能力を監視できる。たとえばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析法)などにより総金属濃度変化を監視しながら、吸光度により金属錯体濃度変化を監視すると、これらの比率がどう変化するかを監視することで錯化剤の消費程度が分かる。すなわち、錯化剤が十分存在する場合には、金属濃度の増加に伴い金属錯体濃度も増加し、結果として総金属濃度と金属錯体濃度の比はある一定の範囲内にあるが、錯化剤が不足すると金属錯体濃度が頭打ちとなって増加しなくなるため、両者の比率が変化する。これを検出することで研磨液の研磨能力の低下を検知することが可能となる。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液センサーは、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液に直接接触又は浸漬されるか、または前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液を吸入して移送した箇所に配置されることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液センサーは、研磨液貯留機構に貯留された研磨液に直接接触又は浸漬されるように配置される。例えば、研磨液センサーは一体型のセンサーからなり、研磨液センサーの検出端は研磨液に浸漬される。また、研磨液センサーは、互いに対向して配置された発光部と受光部とを備えた分離型のセンサーからなり、発光部および受光部はともに研磨液に浸漬される。
また、本発明によれば、研磨液貯留機構に貯留された研磨液を吸入して移送した箇所に研磨液センサーを配置する。すなわち、研磨液貯留機構に貯留された研磨液を吸入して移送するために、ポンプと配管とが設置され、配管に研磨液センサーが設置される。この場合、例えば、一体型の研磨液センサーの検出端は配管内を流れる研磨液に直接接触するように配置される。また、発光部と受光部からなる分離型の研磨液センサーは配管内を流れる研磨液に浸漬される。なお、発光部と受光部からなる分離型の研磨液センサーは配管のU字状の折曲部の外側に対向して配置してもよい。この場合、配管は透光性の材質のチューブから構成される。
【0023】
本発明の
研磨装置の他の態様は、
研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨装置において、研磨パッド上に研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、研磨パッド上に配置され、研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留する研磨液貯留機構と、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーと、前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器と、前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行う鮮度制御器とを備え、前記研磨液センサーは、研磨パッドの略半径方向の複数箇所において測定可能であることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構に貯留された研磨液について、研磨パッドの略半径方向の複数箇所において測定可能であるため、研磨液貯留機構の複数の位置において同時に研磨液の鮮度に関わる物理量を測定できる。
【0024】
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液供給ノズルに研磨液を供給する研磨液供給部は、研磨パッド上に供給する前の研磨液の鮮度を求める使用前研磨液鮮度測定機構を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、研磨液供給ノズルに研磨液を供給する研磨液供給部に、研磨パッド上に供給する前の研磨液の鮮度に関わる物理量を測定する研磨液センサーが設置され、研磨液センサーは、研磨液センサーで測定された物理量から研磨液の鮮度を算出する鮮度測定器に接続されている。研磨液センサーと鮮度測定器は、使用前研磨液測定機構を構成しており、使用前研磨液測定機構により研磨パッド上に供給する前の研磨液の鮮度を求めることができる。
【0026】
本発明の
好ましい態様は
、前記鮮度測定器にて鮮度が高いと判定された研磨液は、研磨テーブルから排出後に前記研磨液供給ノズルに供給して再利用することを特徴とする。
本発明は、研磨液貯留機構に貯留された研磨液を吸入して移送した箇所に研磨液センサーを配置した構成の場合に好適であり、研磨液を吸入して移送した箇所に配置された研磨液センサーにより研磨液の鮮度に関わる物理量を測定し、鮮度測定器にて鮮度を算出し、鮮度制御器により予め設定された鮮度の閾値より高く鮮度が高いと判定された研磨液は、研磨液供給ノズルに供給して再利用する。
本発明の好ましい態様によれば、前記研磨液貯留機構は円弧状に湾曲して形成された板状体からなる研磨液貯留板を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明の
好ましい態様は
、前記研磨液貯留機構は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの下流側の位置のみに配置され、前記研磨液貯留機構と前記研磨ヘッドとの間隔は5mm〜100mmに設定され、前記研磨液供給ノズルから研磨液を前記研磨パッドへ滴下する位置は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの上流側で近接した位置になっていることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液貯留機構は、研磨テーブルの回転方向において研磨ヘッドの下流側に設けられているため、研磨に供した後に十分な研磨能力を保持している研磨液を排出せずに貯留することが可能となる。
【0029】
本発明の研磨方法の
一態様は、研磨ヘッドにより研磨対象の基板を保持し基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧して基板の被研磨面を研磨する研磨方法において、研磨液供給ノズルから研磨パッド上に研磨液を供給し、研磨液を基板と研磨パッドとの間に介在させつつ基板を研磨パッドに摺接させて基板を研磨し、研磨液貯留機構により研磨パッド上で研磨液を堰き止めて研磨液を貯留し、前記研磨液貯留機構に貯留された研磨液の鮮度に関わる物理量を研磨液センサーにより測定し、鮮度測定器により、前記研磨液センサーで測定された物理量から貯留されている研磨液の鮮度を算出し、前記鮮度測定器で求めた研磨液の鮮度に基づいて研磨液の供給状態の制御および/または研磨液の貯留状態の制御を行い、前記研磨パッドの半径方向の複数箇所において研磨液の鮮度を求め、求めた鮮度が予め定めた閾値を下回った箇所のみ研磨液の鮮度を更新する動作を行うことを特徴とする。
本発明によれば、研磨パッドの半径方向の複数箇所において研磨液の鮮度を求め、求めた鮮度が予め定めた閾値を下回った箇所のみ研磨液の鮮度を更新する動作を行う。すなわち、求めた鮮度が予め定めた閾値を下回った箇所のみ研磨液貯留機構に貯留している研磨液貯留量を減少させ及び/又は研磨液供給ノズルからの研磨液供給量を増加させることにより、研磨液の鮮度を更新する。これにより、研磨液の鮮度の調整は、研磨液貯留機構における複数の領域で個別に行うことができるため、トータルの研磨液供給量を減らすことができる。すなわち、最小の研磨液供給量で最大の研磨能力を得ることができる。
本発明の研磨方法の好ましい態様において、前記研磨液貯留機構は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの下流側の位置のみに配置され、前記研磨液貯留機構と前記研磨ヘッドとの間隔は5mm〜100mmに設定され、前記研磨液供給ノズルから研磨液を前記研磨パッドへ滴下する位置は、前記研磨テーブルの回転方向において前記研磨ヘッドの上流側で近接した位置になっていることを特徴とする。
本発明の研磨方法の好ましい態様は、前記研磨液の鮮度が予め定めた閾値を下回ったことを検出したら、前記研磨液貯留機構に貯留している研磨液貯留量を減少させ及び/又は研磨液供給ノズルからの研磨液供給量を増加させることを特徴とする。
本発明によれば、研磨液の鮮度を一定の範囲に制御することができ、最小の研磨液供給量で最大の研磨能力を得ることができる。