特許第6139411号(P6139411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139411
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】着色された磁化可能なセキュリティ要素
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20170522BHJP
   G07D 7/04 20160101ALI20170522BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170522BHJP
   C09C 1/24 20060101ALI20170522BHJP
   G07D 7/12 20160101ALI20170522BHJP
   B42D 25/378 20140101ALI20170522BHJP
   B42D 25/369 20140101ALI20170522BHJP
【FI】
   B41M3/14
   G07D7/04
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09C1/24
   G07D7/12
   B42D15/10 378
   B42D15/10 369
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-545083(P2013-545083)
(86)(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公表番号】特表2014-509958(P2014-509958A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2011006279
(87)【国際公開番号】WO2012084143
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】10015871.6
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ヘック、 ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ホナイト、 ウテ
(72)【発明者】
【氏名】クライン、 シルケ
【審査官】 杉山 輝和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−532573(JP,A)
【文献】 特開2006−268469(JP,A)
【文献】 特開平05−197848(JP,A)
【文献】 特開平09−090887(JP,A)
【文献】 特開2007−230236(JP,A)
【文献】 特表2008−528312(JP,A)
【文献】 特開2010−264658(JP,A)
【文献】 特開平11−235871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の固体コーティング、またはポリマー層からなり、コーティングまたはポリマー層が、いずれの場合にも、非金属で磁化可能でないフレーク状支持体および該支持体上の少なくとも1種の磁化可能な酸化鉄含有層を有するフレーク状の効果顔料を含む、着色された磁化可能なセキュリティ要素であって、
前記酸化鉄含有層が、γ−Fe23、γ−FeOOH、Fe34またはこれらの2つ以上の混合物からなる、あるいはいずれの場合にも、層の重量を基準として、少なくとも80重量%の量でこれらを含み、
セキュリティ要素はさらなる着色剤を含まず、
波長範囲780〜1100nmの近赤外線領域における最大吸収率が40%である、セキュリティ要素。
【請求項2】
コーティングまたはポリマー層が、いずれの場合にも0.1〜100μmの範囲の層厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティ要素。
【請求項3】
コーティングまたはポリマー層の層厚さが、2〜35μmの範囲にあることを特徴とする、請求項1または2に記載のセキュリティ要素。
【請求項4】
NIR領域における最大吸収率が20%であることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載のセキュリティ要素。
【請求項5】
フレーク状の効果顔料が、コーティングまたはポリマー層の重量を基準として、1〜40重量%の濃度でコーティングまたはポリマー層中に存在することを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載のセキュリティ要素。
【請求項6】
フレーク状の効果顔料の濃度が、5〜25重量%であることを特徴とする、請求項5に記載のセキュリティ要素。
【請求項7】
フレーク状の効果顔料が金属層を有さないことを特徴とする、請求項1から6の何れかに記載のセキュリティ要素。
【請求項8】
垂直に見たときにフレーク状の効果顔料によって生成される少なくとも1つの有彩色を有することを特徴とする、請求項1からの何れかに記載のセキュリティ要素。
【請求項9】
垂直以外の視野角から見たときに、フレーク状の効果顔料によって生成される垂直に見たときと異なる色を有することを特徴とする、請求項1からの何れかに記載のセキュリティ要素。
【請求項10】
フレーク状の効果顔料によって形成される、三次元パターンの外観を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のセキュリティ要素。
【請求項11】
非金属で磁化可能でないフレーク状支持体および該支持体上の少なくとも1種の磁化可能な酸化鉄含有層を有するフレーク状の効果顔料が、少なくとも1種の結合剤または少なくとも1種のポリマー成分と混合され、コーティングとして基材に付けられ、固化されるかまたは押出によってポリマープレートまたはポリマーフィルムに変換されることを特徴とする、請求項1からの何れかに記載の着色された磁化可能なセキュリティ要素の製造方法。
【請求項12】
基材にコーティングを付けることが、塗布または印刷によって実行されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
基材上のコーティング中のフレーク状の効果顔料が、磁場の作用下でまだ固化していない状態のコーティング中で、基材面に対して傾斜したまたは垂直な配置に配向し、コーティングが、顔料の配向を維持しながら固化することを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
軟化したポリマー成分中のフレーク状の効果顔料が、磁場の作用によって配向し、ポリマープレートまたはポリマーフィルムの形成を伴うポリマー成分の固化によってこの配向に保たれることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
セキュリティ要素によって保護される製品の表面のうちの1つの上に位置するセキュリティ要素が、磁気センサーを通過し、磁気センサーが、フレーク状の効果顔料によって生成されるセキュリティ要素における磁気信号の強さおよび/または位置を登録し、その顔料によって生成される二次元または三次元パターンの形状および/または場所を任意選択で追加的に登録し、これらを第1の基準と比較し、セキュリティ要素と基準の特徴が対応した場合、前記製品が、第1のステップにおいて暫定的に有効であると見なされ、第2のステップにおいて、セキュリティ要素が、赤外線センサーを通過し、780〜1100nm(NIR)の波長範囲におけるセキュリティ要素の吸収が計測されて第2の基準と比較され、前記波長範囲内における最大吸収率が第2の基準に対応し、且つ最大でも40%の場合に、セキュリティ要素が有効であると見なされることを特徴とする、請求項1から10の何れかに記載のセキュリティ要素の検証のための方法。
【請求項16】
検証の第1および第2のステップが、それぞれセキュリティ要素の同じ箇所で実行されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
さらに前記製品の表面上のセキュリティ要素の場所が確認されることを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から10の何れかに記載のセキュリティ要素を含有するセキュリティ製品。
【請求項19】
製品の保護および/または検証のための、請求項1から10の何れかに記載のセキュリティ要素の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造およびコピーから保護されるべき物品、具体的には紙幣、小切手、証明書およびその他のセキュリティドュメントの保護/検証に適し、機械可読であり、近赤外領域で特定の吸収挙動を有する、着色された磁化可能なセキュリティ要素(security element)、このタイプのセキュリティ要素の検証のための方法、ならびに製品の保護および/または検証のためのセキュリティ要素の使用に関する。
【0002】
例えば紙幣、小切手、クレジットカード、株券、パスポート、本人確認書類、運転免許証、入場券、収入印紙などの有価文書(documents of value)には、長年にわたって、これらの製品の偽造およびコピーをより困難にするために、または理想的な場合、これらの行為を完全に不可能にするために、多種多様なセキュリティ特徴(features)が備えられてきた。広範囲に及ぶ製品の侵害行為の事例が近年増加しているので、これは、例えば、例としてはラベル、梱包材料、シールなど、製品保護のその他の要素にも相当程度まで適用されている。
【0003】
本明細書で使用されるセキュリティ特徴は、様々なクラスに分類される。したがって、いわゆる人間的(human)特徴は、視覚的に、または補助器具を使用せず、平均的な視力によって、例えば自然もしくは人工の日光などの一般的な光条件下で、訓練されていない観察者による触覚によって、セキュリティ特徴として知覚され得るセキュリティ特徴である。これらのセキュリティ特徴は、第1のレベルの特徴としても知られている。
【0004】
対照的に、いわゆる第2のレベルの特徴は、例えばUVランプ、UVダイオードまたは光学拡大鏡などの簡素で広く普及している補助器具を使用して容易に特定され得るセキュリティ特徴である。
【0005】
用語、第3のレベルの特徴は、特殊機関において、例えば国立の中央銀行において、特定のデバイスを使用して読み取られ、有価文書の真正性の最終確認を容易にする、機械可読なセキュリティ特徴に適用される。
【0006】
最初に言及した第1および第2のレベルの特徴は、いわゆる「一般人」またはスーパーマーケットのレジ係にも、具体的には、迅速かつ安価に、流通している紙幣の真正性の確認ができるようにすること、および通常の商取引に適正なセキュリティをもたらすことを意図した特徴である。そのため、これらの特徴は、特に頻繁に用いられるが、頻繁に偽造が企てられる。
【0007】
セキュリティ特徴の数を増加させ、異なるクラスからのセキュリティ特徴を使用することによって、セキュリティ特徴を有する有価文書の偽造がより困難になることは明らかである。経験から、第2のセキュリティ特徴によってセキュリティが二重になるだけでなく、それどころか、潜在的な偽造者が、異なる組合せの可能性を試さざるを得なくなるので、セキュリティをはるかに強化することができることが分かっている。そのため、異なるタイプの複数のセキュリティ特徴が、有価文書において互いに組み合わされることが好ましい。これらの複数のセキュリティ特徴は、一般に互いに並んで存在するので、そのタイプおよび場所が補助器具の有無にかかわらず存在する特徴を見つけることができるように検査する人物によって知られていなければならない相互に独立した複数のセキュリティ特徴は、有価文書上に位置する。
【0008】
これは、例えば紙幣の場合、セキュリティ特徴が紙幣の両面に位置している場合は、時間のかかる方法である。加えて、異なるタイプの複数のセキュリティ特徴の適用も、特には紙幣のような大量に流通している有価文書の場合は、製造費用の著しい増加を引き起こす。加えて、特徴を組み合わせた場合、色または金属の刷り重ねによって、様々なセキュリティ特徴の効果が低下するまたは十分な働きをしない可能性があり、このことは、セキュリティ特徴の真正性の評価に不確実さを生じさせ得る。
【0009】
例えば、その彩色がいろいろな視野角で任意選択で変化する、様々な形態における着色されたインプリント(imprints)を、人間的特徴として使用することが知られている。この可変の色は、反射角の内側または外側の特徴を見る際に、明暗効果、金属効果、玉虫色(iridescent)効果、「ホログラフィック」効果または可視の色の変化に関係し得る。これらの効果を達成するために、とりわけ、これらの特徴において、全てのタイプの効果顔料(effect pigments)、例えば透明または不透明な、真珠光沢のまたは光学的に可変の(optically variable)顔料を使用することが知られている。セキュリティ特徴の生成のために、これらの顔料は、印刷用インクで使用されることが多く、それによってセキュリティ特徴が印刷される。しかし、顔料は、プラスチック材料にも組み込まれ、次いで、好ましくは、有価文書中にまたは有価文書上に短冊状(strip form)に塗付され得る。
【0010】
磁気特徴も、頻繁に使用されている。磁気特徴は機械可読であるが、着磁性(magnetisability)のために使用される意図の性質に応じて、追加的に人間的特徴を表示させることも容易に可能である。したがって、光学的に可変な磁化可能な顔料が近年頻繁に使用されており、その助けによって、補助器具を使用しなくとも観察者による知覚が可能であり、偽造することが困難な、三次元の、任意選択で着色されたまたは光学的に可変のイメージを生じさせる磁気的に誘導されたパターンを、生成プロセス中に印加された磁場の影響下で生成することが可能である。
【0011】
一般に、従来の有価文書も、赤外線特徴を高い頻度で含有し、その特徴は、多種多様な波長の赤外光下で見ると可視または不可視であり、IR光下での比較的簡素な識別の他に、機械可読とすることもできる。
【0012】
これらのセキュリティ特徴の全ては、これらの構造をより複雑にし、単一のセキュリティ特徴の特性の多様さを増せば、偽造することがより困難になる。加えて、セキュリティ特徴における多機能な特徴の物質の使用によって、セキュリティの低下を容認する必要なしに、個別の製品の製造費用が削減される。
【0013】
一般に、上記の磁化可能なセキュリティ特徴は、印刷用インクを用いて適切な基材に通常付けられる(applied)、磁化可能な顔料の使用によって得られる。非常に多種多様な材料の使用によって、磁化可能な顔料は、黒もしくは暗褐色である(例えば、様々な酸化鉄を含むまたは磁性合金を含む針状のまたはフレーク状の顔料も用いられる場合)、または既に上で述べた通り、着色されているもしくは光学的に可変でもある。しかし、顔料の十分に高い着磁性を得るために、磁場における顔料の高い移動性を保証することができるような十分に高い着磁性を有する金属層または金属合金が、着色された磁性顔料に対してさえ、層構造において一般に用いられる。
【0014】
前記磁性顔料の共通の特徴は、これらが、赤外光中で見る際に暗画像を生成することであるが、その理由は、この目的に用いられる材料は、可視領域で強く吸収するが、一般に赤外領域で、しかし少なくとも、約780〜1100nmの波長を有する近赤外線領域(NIR)においても比較的強く吸収するからである。したがって、確認に用いた設備が対応する波長領域中の特徴を「IRに透明である」と記録するように、NIR領域ではわずかしか吸収しない、または全く吸収しない磁気セキュリティ特徴を任意選択で用いることができることも有利であろう。
【0015】
したがって、NIR領域で低くしか吸収しない、または全く吸収しない、着色された磁化可能なセキュリティ特徴に対する要求がある。
【0016】
したがって、本発明の目的は、単一の顔料の使用を介して、着色されているだけでなく十分に磁化可能でもあり、近赤外領域(NIR、780〜1100nm)で低くしか吸収しないセキュリティ要素を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、このタイプのセキュリティ要素の製造のための方法を提供することにある。
【0018】
加えて、本発明の目的は、このタイプのセキュリティ要素の検証のための方法も提供することにある。
【0019】
本発明の追加的な目的は、前記セキュリティ要素の使用およびそのセキュリティ要素を含有する製品を示すことにある。
【0020】
本発明の目的は、基材(substrate)上の固体コーティング、またはポリマー層からなり、コーティングまたはポリマー層が、いずれの場合にも、非金属で磁化可能でない支持体および少なくとも1種の磁化可能な酸化鉄含有層を有するフレーク状の効果顔料を含む、着色された磁化可能なセキュリティ要素であって、NIR領域(780〜1100nm)における最大吸収率が40%であるセキュリティ要素によって達成される。
【0021】
本発明の目的は、非金属で磁化可能でない支持体および少なくとも1種の磁化可能な酸化鉄含有層を有するフレーク状の効果顔料が、少なくとも1種の結合剤または少なくとも1種のポリマー成分と混合され、コーティングとして基材に付けられ、固化されるかまたは押出(extrusion)によってポリマープレート(polymeric plate)またはポリマーフィルムに変換される、このタイプのセキュリティ要素の生成のための方法によってさらに達成される。
【0022】
加えて、本発明の目的は、本発明によるセキュリティ要素の検証のための方法であって、セキュリティ要素(それによって保護される製品の表面(複数)のうちの1つの上に位置する)、磁気センサーを通過し、磁気センサーが、フレーク状の効果顔料によって生成されるセキュリティ要素における磁気信号の強さおよび/または位置を登録し(register)、これらの顔料によって生成される二次元または三次元パターンの形状および/または場所を任意選択で追加的に登録し、これらを第1の基準と比較し、セキュリティ要素と基準の特徴が対応(correspond)した場合、製品が、第1のステップにおいて暫定的に有効である(valid)と見なされ、第2のステップにおいて、セキュリティ要素が、赤外線センサーを通過し、780〜1100nm(NIR)の波長範囲におけるセキュリティ要素の吸収が計測され、第2の基準と比較され、セキュリティ要素が、前記波長範囲内における最大吸収率が第2の基準に対応し、最大でも40%の場合に有効であると見なされる方法によって達成される。
【0023】
加えて、本発明の目的は、さらに、本発明によるセキュリティ要素を含有するセキュリティ製品(security product)によって、および製品の保護および/または検証のための本発明によるセキュリティ要素の使用によって達成される。
【0024】
したがって、本発明は、基材上の固体コーティング、またはポリマー層からなり、コーティングまたはポリマー層が、いずれの場合にも、非金属で磁化可能でない支持体および少なくとも1種の磁化可能な酸化鉄含有層を有するフレーク状の効果顔料を含む、着色された磁化可能なセキュリティ要素であって、NIR領域(780〜1100nm)における最大吸収率が40%であるセキュリティ要素に関する。
【0025】
用語「着色された」は、本発明の意味において、有彩原色の赤、青、黄色や、例えばオレンジ、マゼンタ、バイオレット、ターコイズ、緑などの対応する二次色(様々な割合での原色からの混合色)、さらに例えば金、銀および青銅などの金属色相、しかし白または黒などの無彩色ではない色、を意味するものと考えられるべきである。
【0026】
少なくとも1つの視野角から、好ましくは垂直から見た本発明によるセキュリティ要素は、日光または日光様の人工照明下で、セキュリティ要素中のフレーク状の効果顔料の存在に起因し得る少なくとも1種の有彩色を有する。このことは、本発明によるセキュリティ要素が、用いられるフレーク状の効果顔料の色を有し、この顔料がそれぞれの視野角からこの色を呈することが好ましいことを意味する。この色は、例えば可視光を吸収する有機もしくは無機顔料、または可溶性染料などの可視光を吸収する少量の着色剤(colorants)を混ぜることによって、または別法として磁化可能な層を有さないさらなるフレーク状の効果顔料の添加によっても、変更することができることは言うまでもない。しかし、対応する添加量は、本発明に従って用いられるフレーク状の効果顔料によって生成される色が、完全には覆われ(masked)ず、磁気センサーによって登録された信号も、本発明によるセキュリティ要素の赤外線の吸収も、それによる悪影響を受けないように、非常に少量であるべきである。したがって、コーティングまたはポリマー層の顔料含有量を基準として、本発明によるセキュリティ要素中に存在するさらなる着色剤は10重量%を超えないことが有利である。好ましくは、さらなる着色剤が存在しないことである。
【0027】
本発明に従って用いられる効果顔料は、支持体およびその上に位置している少なくとも1つの層を有するフレーク状の顔料であるので、その色は、顔料の層構造に用いられる材料の吸収色、干渉効果、またはこの2つの組合せに、本質的に起因している。適した層構造の場合、これらの顔料は、さらに光学的に可変でもよい、すなわち、これらの顔料は、1つの視野角から、一般には垂直からのコーティングまたはポリマー層(すなわち、整列した(aligned)形態で)の第1の色、および垂直から偏移している少なくとも1つの視野角からの第2の色を有する。
【0028】
本発明に従って用いられるフレーク状の効果顔料は、上の定義の意味において、着色されている、すなわち、適用媒体(application medium)における少なくとも1つの視野角からの有彩色を有する。これらは、強力な(intense)粉末色も有することが好ましい。
【0029】
磁化可能なという用語は、磁場の印加によって、存在する顔料がまだ固化していないコーティングまたは軟化したポリマー材料中の磁場の力線に沿って配向し得る場合、および/または磁気信号が、対応するセンサーによって登録され得る場合に、本発明によるセキュリティ要素に適用される。この信号は、例えば飽和磁化、残留磁化、保磁力(magnetic coercitivity)などの磁気計測量を含んでもよく、または磁気モーメントの存在に関するイエス/ノー情報にのみ関してもよい。
【0030】
本発明によるセキュリティ要素は、基材上のコーティング、またはポリマー層(自己支持型も)のいずれかからなり、ここで、コーティングまたはポリマー層は、いずれの場合にも、非金属で磁化可能でない支持体(support)およびその支持体上に少なくとも1種の磁化可能な酸化鉄含有層を有するフレーク状の効果顔料を含む。
【0031】
フレーク状の、磁化可能な効果顔料に適した支持体材料は、干渉顔料の生成にも通常使用されるように、誘電性の、好ましくは透明なフレーク状の支持体材料である。これらは、マイカ、カオリン、タルク、もしくはさらにその他のフィロシリケートなどの天然材料、またはフレーク状のSiO、ガラス、Al、もしくはホウケイ酸塩の支持体などの合成生成された支持体ともすることができる。前記合成生成された支持体フレークは、より均一な(uniform)表面およびより良好に制御可能な顔料の厚さならびに粒径のために、好ましく用いられ、ここで、Al支持体フレークが非常に特に好ましい。これらの支持体フレークは、非金属で磁化可能でない。
【0032】
ここで支持体フレークの平均厚さは、約100〜1000nm、好ましくは120〜500nmの範囲である。厚さの標準偏差は、10%を超えないことが好ましい。厚さの標準偏差は、例えば、特には合成生成された支持体フレークの、生成プロセスによって、制御することができる。
【0033】
粒径に対応し、支持体フレークの最も長い軸(longest axis)を表す支持体フレークの平均直径は、通常5〜200μmの範囲、特には5と150nmの間、特に好ましくは10と100μmの間である。ここでも、狭い粒径分布が、特に有利である。粒径分布は、破砕法もしくはふるい作業によって、またはこの2つの組合せによって、制御することができる。
【0034】
本発明に従って用いられるフレーク状の効果顔料は、支持体フレーク上に少なくとも1種の磁化可能な酸化鉄含有層をさらに有する。本明細書において、酸化鉄は、それ自体が強磁性またはフェリ磁性特性を有する鉄の酸化物さらには水和酸化物(oxide hydrate)の両方を意味するものと考えられることを意図する。これらは、本質的にγ−Fe、γ−FeOOHおよびFe、またはこれらの2つ以上の混合物である。フレーク状の効果顔料中の対応する層は、これらの材料の何れかからなるか、または主な部分として、好ましくは層の重量を基準として少なくとも80重量%で、これらを含む。γ−FeもしくはFeまたはこれらの混合物を含む、またはこれらからなる層が好ましい。層の残りの構成要素は、通常、磁化可能でない鉄化合物、特には酸化鉄、および/または層特性を向上させるためおよびそれらを用いて後続のコーティングを簡素化するために酸化鉄含有層に導入される、以下で述べるドープ剤である。
【0035】
酸化鉄含有層は、通常、15〜400nm、好ましくは20〜300nm、特に好ましくは50〜200nmの厚さを有する。
【0036】
これらは、可視波長領域における酸化鉄の吸収によって固有の(inherent)吸収色を有するが、これらは、完全に不透明ではなく、そのかわり外部から差し込んだ可視光を、或る割合まで、ただし少なくとも10%程度まで透過する。
【0037】
したがって、酸化鉄によって生成されるフレーク状の効果顔料の吸収色の他に、酸化鉄含有層の上に任意選択で付けられるさらなる干渉層によってだけでなく、顔料のフレーク状の基材によっても、干渉効果は追加的に可能である。これらの干渉効果は、さらに、支持体と酸化鉄含有層の間に、および/または酸化鉄含有層上に位置している中間層または最上層によって強化され得る。しかし、いずれにしても、フレーク状の支持体上のこれらの追加的な干渉可能層は、吸収/干渉効果によって生成される顔料の彩色が、追加的なさらなる吸収効果によって変更されないように、(高屈折率または低屈折率の)無色材料から作製される。
【0038】
酸化鉄含有層が、Mg、Ca、Sr、BaまたはAlの元素の酸化物(個々にまたは互いに組み合わせて)とドープされることも好ましい。ここでこれらのドープ剤の割合は、酸化鉄含有層の重量に対して、0.01〜5重量%である。完全にまたは主にγ−Feからなる層は、MgOでドープされることが好ましいのに対して、完全にまたは主にFeからなる層の場合は、Alでドープされることが好ましい。
【0039】
本発明によれば、用いられるフレーク状の効果顔料は、金属層または金属合金を含む層を有さない。
【0040】
本発明によれば、同じ出願人による特許出願WO2010/149266に記載されている磁性顔料の使用が、特に好ましい。これらは、好ましくはその基材を囲んでいる、マグヘマイト(maghaemite)含有コーティングがその上に位置する、2つの平行な主面を有する均質な(homogeneous)組成物のフレーク状の基材を有する。特に適した実施形態において、これらは、合成的に生成され、したがって非常に均一で滑らかな表面を有する透明な基材上に、実質的に完全にγ−Fからなり、MgOでドープされていることが特に好ましい単一の層を有する。このタイプの顔料は、支持体を基準として、最大5重量%のTiO(特には単結晶の形態の、酸化アルミニウムフレーク)を含むことができる合成生成された酸化アルミニウム支持体をベースとする場合、最も適している。このタイプの顔料は、高い飽和磁化、残留磁化および抗磁力(coercitive force)を有するので、良好な磁化挙動を有する。これらは、したがって、磁場の作用下で、対応する未固化の媒体(コーティング、ポリマー材料)中の磁力線にそって良好に配向することができ、この場所で固化することもできる。
【0041】
同時に、好ましくは、これらは、適用媒体中において強力な金色または青銅色を有し、それは極めて高い光沢を追加的に有する。この色は、視野角とは無関係である。驚くべきことに、このタイプの顔料は、可視波長領域での著しい吸収と関連するその魅力的な可視色にもかかわらず、およびNIR領域での著しい吸収も通常期待させる高含量の酸化鉄にもかかわらず、NIR波長領域で非常に弱く吸収するだけであるということが見出された。したがって、これらは、本発明のセキュリティ要素に特に適している。このタイプの顔料において、マグヘマイト層(γ−Fe)の厚さは、20〜400nm、好ましくは30〜300nm、特には5〜200nmである。WO 2010/149266の内容全体は、本明細書で明示的に参照され、同様に、本特許出願に組み込まれるものとする。
【0042】
表題が「磁性顔料」という、同じ出願人による、今のところ未公開の別の特許出願(PCT/EP2011/005731)に記載されている磁性顔料は、同様に、本発明のセキュリティ要素で使用するのに適していることが証明されている。これらは、均質な組成を有する透明なフレーク状の基材上に、α−Feおよび/またはFeOOHの第1の層ならびにFeの第2の層を含む、第2の層が第1の層よりも厚い二重コーティングを有する。ここで基材は、同様に、合成生成された基材であることが好ましい。特には、これらは、既に上で述べた通りの酸化アルミニウムフレークである。Feの第2の層は、Alでドープされることが好ましく、少なくとも第1の層の10倍の層厚さである、第1の層より著しく厚い層厚さを有する。加えて、ケイ素水和物層および無色の高屈折率層(好ましくはTiOおよび/または酸化チタン水和物を含む)が、Fe層上に位置していることが好ましい。これらの顔料の場合、Fe層は、15〜250nm、特には20〜180nm、特に好ましくは25〜150nmの層厚さを有する。
【0043】
本発明によるセキュリティ要素で使用するのに適したこのタイプの顔料は、高光沢を有する強い有色干渉色および強い粉末色を有する。それぞれの顔料の干渉層の層厚さによるが、干渉色は、視野角とは無関係であるか、または視野角により異なる強力な有色干渉色相を有するように、調節することもできる。このタイプの挙動は、ここでも、予想に反して、NIR領域での吸収挙動が、比較的弱く表されるだけであるので、光学的に可変であると見なされ、一般的なセキュリティ特徴の彩色、特には本発明によるセキュリティ要素に非常に適している。しかし、ここに記載した顔料のNIR吸収は、WO 2010/149266に記載の顔料の吸収より著しく高い、つまり、本発明によるセキュリティ要素中の層厚さおよび顔料濃度は、相応に調和(match)していなければならない。しかし、これらの顔料は、これらの良好な磁気挙動によって、印加した磁場において容易に配向することもできるので、これらを使用して、ここで異なる色であってもよい三次元の磁気的に誘導されたパターンが、視野角によって、セキュリティ要素中に生成され得る。特許出願PCT/EP2011/005731の内容も、本明細書で明示的に参照され、同様に、本特許出願に組み込まれるものとする。
【0044】
本発明によるセキュリティ要素の吸収挙動の測定は、250〜2500nmの波長範囲のUV/VIS透過およびUV/VIS反射スペクトルの基準記録(standard recording)ならびにこれらのスペクトルから計算される任意の波長での吸収を介して実行され、ここで、それぞれの基材の固有吸収は、存在する場合、同様に測定され、総体的な(overall)結果は、測定された値によって相応に補正される。
【0045】
その結果、それぞれの基材の吸収によって補正される吸収曲線は、所望の波長範囲(780〜1100nm)で記録され得る。
【0046】
セキュリティ要素が基材上のコーティングの形態である本発明による実施形態において、少なくとも本発明によるセキュリティ要素が付けられた箇所で、NIR領域において固有の吸収を有さない、またはそのNIR吸収が、別に測定され、補正によって算出され得る基材が、当然使用される。このような基材に適した材料は、特には、前記の条件を満たす従来の紙、紙層を含有するラミネート、またはポリマープレートもしくはフィルムである。コーティングされたおよびカレンダー処理した(satinised)紙または下塗層(primary layers)でコーティングされている紙およびフィルムを用いることも、前記条件が満たされている限り大いに可能である。特に適しているのは、有価文書および紙幣の製造に通常用いられる特殊紙およびポリマーフィルムである。これらの組成物は、当業者に知られているので、詳細な説明はここでは必要がない。
【0047】
NIR領域における任意選択でプレコーティングした基材の固有吸収は、当然40%の値を超えてはならないが、好ましくは、全く存在しないまたは10%吸収の値を超えない。
【0048】
本発明によるポリマーのセキュリティ要素に用いられるポリマー材料は、同じように選択される。これらは、プレートまたはフィルムに変換され、NIR領域に固有吸収を有さない、またはこの吸収は、実際の条件下で別に測定され、補正によって減算する(subtract)ことができる。従来の加工プロセス、例えば押出などによってプレートまたはフィルムに変換することができる従来のポリマー材料が、フレーク状の効果顔料が前記ポリマー材料中に存在していても、原理上適している。ここでも、適した材料は、当業者によく知られている。特には、PETは、とりわけNIR領域において固有吸収を有さないので、極めて高度に適した材料である。したがって、ポリマー材料の固有のNIR吸収は、可能であれば、0%とするべきであり、特には、10%の値を超えないものとするべきである。
【0049】
NIR領域中のセキュリティ要素の吸収(それがフレーク状の効果顔料の吸収に基づく場合)と、それぞれのセキュリティ要素におけるフレーク状の効果顔料の濃度の間に、および後者に依存して、セキュリティ要素の厚さとも、或る相関が存在することが理解できる。記載したタイプのフレーク状の効果顔料の濃度を低くすると、本発明によるセキュリティ要素の厚さを厚くすることができるという基本原理は、色、着磁性および所望のNIR吸収を同時に達成するために、ここで適用される。
【0050】
しかし、従来のコーティングおよび押出プロセスの場合、一般にそれぞれのプロセスによって制限される顔料含有量および達成可能な層厚さ(これも当然制限される)が、留意されるべきである。したがって、顔料の含有量は、そのタイプとは無関係に、コーティング組成物中において、例えば印刷用インクにおいて、しかしフィルム生成のためのポリマー材料においても、それぞれのコーティング組成物またはポリマー材料に対して、一般には40重量%を超えないものにするべきであり、その理由は、そうでなければ、分解(breakdowns)が一連のプロセス中に発生するかもしれないからである。本発明に従って用いられるフレーク状の効果顔料の他に、セキュリティ要素中にさらなる顔料が存在しないことが好ましいので、基材上のコーティングまたはポリマー層における本発明によるフレーク状の効果顔料の含有量は、コーティングまたはポリマー層の重量に対して、1〜40重量%に限定される。この全範囲のより低い領域における顔料含有量の場合、本発明によるセキュリティ要素の相応に厚い層厚さが築かれ得ることは言うまでもない。しかし、低濃度の効果顔料は、著しく色度を低減させることにもなる。したがって、フレーク状の効果顔料の濃度は、一般に従来のコーティングおよび印刷法において、またはフィルム生成において問題なくこの顔料濃度を用いることができるので、コーティングまたはポリマー層の重量に対して、5〜25重量%とすることが有利である。
【0051】
本発明によるセキュリティ要素、または詳細には基材上の顔料含有コーティングまたは効果顔料を含むポリマー層は、有利には、0.1〜100μm、特には1〜80μmの厚さを有する。これらの厚さにおいて、満足のいく色度および着磁性の両方が、さらにはNIR領域における所望の低吸収が、上記の割合のフレーク状の効果顔料を用いて得ることができる。
【0052】
2〜35μmの範囲の層厚さが、特に好ましい。これらは、ほとんどの従来のコーティング法を用いて得ることができ、ここでは、上記の顔料濃度で、特には5〜25重量%の範囲の濃度で、NIR領域における吸収を最大でも20%の値に低下させ、同時にセキュリティ要素の優れた色度および着磁性を得ることさえ可能である。このことは、特には、WO 2010/149266による上述の顔料に適用される。対照的に、PCT/EP2011/005731による顔料は、NIR吸収に対して本発明に従って要求される条件を満たすために、2〜15μmの範囲の層厚さおよび5〜12重量%の濃度を必要とする。
【0053】
本発明によるセキュリティ要素は、既に上で述べた通り、好ましくはさらなる顔料を含まない、またはいずれにしても、セキュリティ要素の達成可能な色度を決定的に定めるさらなる顔料を含まないので、セキュリティ要素の色スキーム(colour scheme)は、実際には、酸化鉄含有層を有する用いられる効果顔料の色の特性に起因する。
【0054】
したがって、本発明によるセキュリティ要素が、唯一の視野角からまたは複数の視野角からの強力な色を有するかどうかは、このように、用いられる効果顔料の特性によって決まる。
【0055】
したがって、例えばWO 2010/149266による上述の効果顔料は、垂直に見た時に有彩色、ここでは好ましくは金属光沢を有する金または青銅の色相を有するセキュリティ要素の生成を可能にする。この色は、視野角によって変化しない。それは、基材またはポリマー層の表面に対して、フレーク状の効果顔料の平行配向がより良好になると、より強力で光沢を持つ。フレーク状の効果顔料のこの平行配向は、通常、従来のコーティングおよび押出プロセス中に既に得られている。しかし、この色は、三次元パターンが、その後の固化したコーティングまたは層において明らかになるように、フレーク状の効果顔料が、まだ固化していないコーティングまたは軟化したポリマー材料への磁場の印加によって配向される場合でさえ、変化しない。これは、おおむね強力で光沢のある金または青銅の色相において任意の視野角から可視になるであろう。
【0056】
対照的に、それ自体が光学可変性挙動を既に有する、本発明によるフレーク状の効果顔料が使用される場合、本発明によるセキュリティ要素は、同様に、垂直以外の角度(一般にフラットな(flat)視野角)から見ると垂直に見るときと異なる色を有する。これは、特には、フレーク状の効果顔料が、既に上で述べた通り、本発明によるセキュリティ要素において平行に配向されている場合に適用される。しかし、これらが、三次元パターンが形成されるような方法で磁場によって配向される場合(基材面またはポリマー層の表面に対して傾斜したおよび/または垂直の、フレーク状の効果顔料の長手軸の配向)、異なる色、好ましくは有彩色が、上で述べた通り、いずれの場合にも、その全てが垂直とは異なる、異なる視野角から可視とすることができる。
【0057】
1つは光学的に可変であるが、他方はどの角度からでも同じ色を呈する、前記タイプの2種の異なるフレーク状の効果顔料が、空間的に分離した配列の本発明による単一のセキュリティ要素に、あるいは別法として、同時に可視であり、好ましくは互いに並んで位置している2種の異なるセキュリティ要素に、付けられるかまたは導入される場合、非常に魅力的な光学的効果も達成することができる。垂直から見ると、同じ色、または別法として異なる色が、ここで異なる部分領域(part−areas)において可視であるが、垂直とは異なる視野角から見ると、異なる色が常に可視である。部分領域上の磁気的に誘導される異なるパターンおよびNIR領域における総体的な低吸収と任意選択で組み合わせて、偽造が困難でコピーが不可能な魅力的なセキュリティ要素が得られる。
【0058】
本発明によるセキュリティ要素は、基材上の固体コーティング、またはポリマー層である。後者は、同様に基材上に存在する、または自己支持型のいずれかとすることができる。固体コーティングまたはポリマー層は、下にある基材を完全にまたは部分的に被覆することができる。基材上のコーティング、または基材上に位置しているポリマー層も、例えばパターン、モチーフ、文字、記号などからなり、基材の形状から外れていてもよい、二次元の外形を当然有することができる。本発明によるセキュリティ要素は、同様に、異なる磁性顔料または異なって配向した磁性顔料を含むことができる部分領域(複数)に分割することができる。
【0059】
本発明は、本発明によるセキュリティ要素の生成のための方法にも関する。この方法は、非金属で磁化可能でない支持体および少なくとも1種の磁化可能な酸化鉄含有層を有するフレーク状の効果顔料が、少なくとも1種の結合剤または少なくとも1種のポリマー成分と混合され、コーティングとして基材に付けられ、そして固化されるかまたは押出によってポリマープレートまたはポリマーフィルムに変換されるという事実によって、区別される。
【0060】
慣習的な印刷法を含めた従来のコーティング法は、所望の層厚さおよび顔料濃度を得ることができる基材上のコーティングの生成のために用いることができる。ここで、具体的には、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、オフセットオーバープリントワニス法(offset overprint varnishing process)、紙コーティング法、バーコーティング、ならびに、顔料濃度および層厚さに応じて、限られた程度までは、凹版印刷法などの印刷法や、ナイフコーティング、刷毛塗り、スタンピング、ポアリング(pouring)、フロー法(flow process)、ローラーもしくはスクリーン塗付法またはエアブラシを用いた塗付などのその他のコーティング法を挙げることができる。
【0061】
基材上のコーティングからなり、慣習的なコーティング法または印刷法を用いて付けられる本発明によるセキュリティ要素は、使用される方法の簡潔さのために好ましい。
【0062】
本発明に従って用いられる結合剤およびフレーク状の効果顔料を除いて、対応するコーティング組成物は、溶媒、補助剤(assistant)および/または添加剤などの従来のさらなる構成要素も含むことができる。これらは、専門的に(in an expert manner)用いられ、コーティング組成物に通常用いられる材料と違いはない。例えば、ここで、湿潤剤、潤滑材、ブロッキング防止剤、接着促進剤、乾燥促進剤および光開始剤を挙げることができる。これらは、当然、NIR領域での所望の吸収を超えない、またはそれら自体が、NIR領域でほとんどまたは全く吸収しないように選択される。
【0063】
コーティング組成物は、コーティングされるべき基材に専門的に付けられ、固化される。ここで固化作業は、物理的な乾燥法とすることができるが、熱の供給および/または様々な波長(注:NIR領域は無い)の化学線照射(actinic radiation)によってサポートされることが好ましい。UV硬化系の使用が特に好ましい。
【0064】
既に上で述べた通り、フレーク状の効果顔料は、従来のコーティング作業中に、そこで作用する力によって、既に基材の表面に対して実質的に平行に配向されている。磁気的に誘導される三次元パターンがセキュリティ要素中に生成されることになる場合、磁化可能な効果顔料が、磁場の力線がどのように流れるかによって、それらの長手方向の軸を基材面に対して傾斜しておよび/または垂直にして、それら自身を配向するように、基材上のまだ固化していないコーティングが磁場に導入される。
【0065】
本発明のさらなる実施形態において、本発明によるセキュリティ要素は、本発明に従って使用されるフレーク状の効果顔料と少なくとも1種の適したポリマー成分を混合すること、得られた組成物を軟化させること、続いてその組成物をポリマープレートまたはポリマーフィルムに変換することによって生成される、ポリマー層からなる。
【0066】
ここでも、従来の補助剤ならびに添加剤および慣習的な方法は、いずれの場合にも、著しい変更なしに用いることができる。この目的のために必要とされる全ての成分およびプロセスステップは、当業者によく知られている。適したポリマー成分の他に、例えば、充填剤、UV安定剤、阻害剤(inhibitors)、防炎剤、潤滑材、可塑剤、溶媒または分散剤などの、プラスチック工業では慣例的な補助剤および添加剤が添加される。これらは、同様に、本発明によるセキュリティ要素の所望のNIR吸収を著しく損なわず、好ましくはこの領域において固有吸収を有さないように選択される。
【0067】
上述のコーティング法と同じように、軟化した状態の顔料含有ポリマー材料に対して、
存在するフレーク状の効果顔料が、押出プロセス中の磁場の印加によって、磁場の力線に沿って配向することも可能である。三次元の外観を有する顔料のパターンは、ここで同様に形成することができ、続いてポリマー材料の硬化によって固化される。こうして得られたポリマープレートまたはフィルムは、上述した通り、NIR領域において低吸収を呈するにすぎない、着色された、可視の、磁気的に誘導された三次元パターンを有する。
【0068】
本発明は、本発明によるセキュリティ要素の検証のための方法であって、セキュリティ要素によって保護される製品の表面(複数)のうちの1つの上に位置するセキュリティ要素が、磁気センサーを通過し、ここで磁気センサーが、フレーク状の効果顔料によって生成されるセキュリティ要素の磁気信号の強さおよび/または位置を登録し、これらの顔料によって生成される二次元または三次元パターンの形状および/または場所を任意選択で追加的に登録し、これらを第1の基準と比較し、セキュリティ要素と基準の特徴が対応した場合、製品が、第1のステップにおいて暫定的に有効であると見なされ、第2のステップにおいて、セキュリティ要素が、赤外線センサーを通過し、780〜1100nm(NIR)の波長範囲におけるセキュリティ要素の吸収が計測され、第2の基準と比較され、セキュリティ要素が、前記波長範囲内における最大吸収率が第2の基準に対応し、最大でも40%の場合に有効であると見なされるという事実によって区別される方法にも関する。
【0069】
本発明によるセキュリティ要素の検証に用いられる磁気センサーおよびIRセンサーは、知られており、以前から使用されており、ここで、対応する磁気センサーは、国立の中央銀行などの特殊機関で用いられる傾向があるが、IRセンサーは、さらに、サービス部門または一般に支払取引において、可動式または固定式で追加的に用いることもできる。本発明によるセキュリティ要素の色および任意選択で存在する光学的に可変の効果も、通常の観察者、すなわち「一般人」によって、いずれの補助器具も使用せず、追加的に観察され得る。
【0070】
外形、色(任意選択でいくつかの視野角から)、パターン、磁気量の計測およびNIR領域における吸収挙動の登録の他に、それによって保護される製品上の本発明によるセキュリティ要素の空間位置も、登録されることが好ましい。
【0071】
上記の全ての特性は、それぞれセキュリティ要素の同じ箇所で確認され、このことは、全ての要件が同時に満たされる場合にのみ総体的に有効と見なされることが強調されるべきである。
【0072】
NIR領域での計測に関して、対応するセンサーは、イエス/ノー情報が得られるように、確認されるべきセキュリティ要素の或る程度の吸収のみが、保護される製品の非NIR吸収性領域に対して十分なコントラストを引き起こすように、設定されることが多い。したがって、本発明のセキュリティ要素は、このようなセンサーの場合に、情報をもたらさないことが好ましい、すなわち、NIRに透明と分類されることになる。
【0073】
NIR情報の場合のように、磁気情報も、純粋なイエス/ノー情報として得ることができる。しかし、対応するセンサーを介して、磁気計測量が登録されること、すなわち、磁気的に誘導されるパターンの形状、場所および/またはサイズが、登録され、それぞれの記憶された(stored)基準と比較されることが同様に可能である。
【0074】
周囲条件下(日光または日光様の人工照明)で個々に見ることの他に、色情報は、様々な視野角から任意選択で存在する光学的に可変の色の挙動のように、対応するセンサーを介して同様に登録され得る。磁気的に登録可能な信号の場所、形状およびサイズは、ここで、「暫定的に有効」な結果を得るために、本発明に従って用いられる磁性顔料によって生成された色で登録され得る信号の場所、形状およびサイズに対応しなければならない。
【0075】
所望のNIR挙動も対応する場合のみ、セキュリティ要素が「有効」として完全に分類される。
【0076】
互いに同時に異なる特性を有する本発明による複数のセキュリティ要素を用いて確認することは、当然可能である。加えて、非常に興味深い組合せの可能性が、「IR吸収性」として読まれるように、NIR領域で有意なより高い吸収を有する、同じまたは異なる色のセキュリティ要素によって生じる。このように、例えば、一方では本発明によるセキュリティ要素からなり、他方では強NIR吸収性材料からなる相補的パターン(complementary patterns)は、従来の条件下で同じ色を有するので均一な色効果を有するが、任意選択でこれらの磁気特性に対しても、しかしいかなる場合でもこれらのNIR特性に対して、異なる信号を生成する、セキュリティ特徴として生成され得る。このタイプの組み合わせたセキュリティ特徴は、容易にコピーすることも容易に偽造することもできないことが明らかである。
【0077】
本発明はまた、本発明によるセキュリティ要素を含有するセキュリティ製品および、製品の保護および/または検証のための本発明によるセキュリティ要素の使用にも関する。
【0078】
本発明によれば、セキュリティ製品は、例えば紙幣、小切手、クレジットカード、株券、パスポート、本人確認書類、運転免許証、入場券、収入印紙、ラベル、梱包材料、シールなどの全てのタイプの従来の有価文書と見なされる。
【0079】
しかし、使用される基材のタイプおよび用いられ得る可能な検証方法に応じて、保護されるべき日常使用の製品およびその他の消費財も、本発明によるセキュリティ要素の使用によって保護することができる。これらは、例えば衣類、靴、家庭用品、家電用品などとすることができる。
【0080】
本発明によるセキュリティ要素は、特には有価文書上に、複合的な(multiple)、機械可読特徴を有し、同時にいわゆる「一般人」によって容易におよび補助器具を使用せず確認することもでき、それらの構成(composition)を解読することが困難で、同時に、単一の顔料の使用を介して比較的安価に生成することができる、セキュリティ特徴の生成を可能にする。同時に、簡素な従来のコーティング法を用いることができる。したがって、本発明によるセキュリティ要素は、許容できる材料および設備費用と同時に、コピーおよび偽造に対する高い安全性を提供する。
【0081】
本発明は、以下の発明の例に関してより詳細に説明されることになるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
例1
スクリーン印刷用の市販の印刷ビヒクル(Schmid−RhynerからのWessco 36.30.30)を、印刷用インクの重量を基準として、15重量%の金色の磁性顔料(Merck KGaA、酸化アルミニウム基材上のマグヘマイト)と勢いよく混合し、市販のPETフィルム(780〜1100nmのNIR領域中で吸収なし)上に、61−64スクリーンを使用するスクリーン印刷法によって、固化後に乾燥層厚さ15μmのコーティングが達成されるように、コーティングした。コーティングは、視野角とは無関係の、日光下で光沢のある、強力な金色を有する。PETフィルムの底面への磁石の適用によって、コーティングの湿潤状態で磁気的に誘導される三次元パターンが生成されることを可能にする。UV/VIS透過および反射スペクトルを記録し、NIR領域での吸収を、そこから計算する。全NIR領域にわたって、10%未満の吸収が生じる。
【0083】
例2
バーコーティング法用の市販の印刷ビヒクル(ProllからのMZ 093ラッカー)を、バーコーター(250μmフィルムアプリケーター)を用いて、顔料含有量10重量%(例1による顔料)および乾燥層厚さ36μmで市販のPETフィルム(例1を参照)に塗付する。光学的および磁気的特性は、例1の光学的および磁気的特性にほぼ匹敵するが、NIR領域での吸収は、最大約20%の値まで変化し、それは総体的に、全NIR領域にわたって、おおよそ一定のままである。
【0084】
例3
例2を繰り返すが、乾燥層厚さ81μmを、500μmフィルムアプリケーターを使用して達成する点が異なる。光学的および磁気的特性は、この場合も例1および2で達成された結果にほぼ相当するが、NIR領域での吸収は、最大約35%の値まで変化し、それは総体的に、全NIR領域にわたって、おおよそ一定のままである。