(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記決定ステップでは、他の車載無線通信装置と比較して、現在位置の第1のエリアに定義される所定位置に自装置が最も近い場合に、自装置が前記データベース装置にアクセスすると決定する、
請求項1に記載の無線通信方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような現状を考慮し、本発明は、ホワイトスペースデータベース装置からのホワイトスペース情報を効率的に取得可能な無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、車車間通信システムを構成する車載無線通信装置のそれぞれが、データベース装置(ホワイトスペースデータベース)にアクセスするのではなく、代表車両のみが
アクセスし、取得したホワイトスペース情報を他の装置に配信する構成を採用する。
【0008】
より具体的には、本発明の一態様は車車間通信システムを構成する車載無線通信装置が行う無線通信方法であって、自装置の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、あらかじめ定められた制御チャネルを用いて、前記位置情報を含む車両データを送信する車両データ送信ステップと、他の車載無線通信装置から前記制御チャネルで送信される車両データを受信する車両データ受信ステップと、複数の第1のエリア(代理DBアクセスエリアに対応)に区分された地図情報を記憶する地図情報記憶手段から、現在位置の第1のエリアに関する情報を取得する地図情報取得ステップと、前記位置情報取得ステップにおいて取得される自装置の位置情報、前記車両データ受信ステップにおいて取得される他の車載無線通信装置の位置情報、および前記地図情報取得ステップにおいて取得される前記第1のエリアに関する情報に基づき、ホワイトスペース情報を記憶するデータベース装置にアクセスするか否かを決定する決定ステップと、前記決定ステップにおいて前記データベース装置へアクセスすると決定した場合に、現在位置付近のホワイトスペース情報を前記データベース装置から取得するクエリステップと、前記クエリステップにおいて前記データベース装置から取得したホワイトスペース情報を、周囲の車載無線通信装置に対して送信する配布ステップと、を有する。
【0009】
このように、全ての車載無線通信装置がデータベース装置にアクセスするのではなく、一部の車載無線通信装置のみがデータベース装置へアクセスし、取得したホワイトスペース情報を周囲に配布することで、データベース装置に対するアクセスを減らすことができる。
【0010】
上記の決定ステップにおける、データベース装置にアクセスする装置の決定方法は、第1のエリア内の一部の車載無線通信装置のみがアクセスすると決定可能な方法であればどのような方法であっても良い。例えば、第1のエリアに定義される所定位置(例えば、第1のエリアの中心位置)に最も近い装置がデータベース装置へアクセスすると決定することが好ましい。第1のエリア内の複数の車載無線通信装置がデータベース装置へアクセスするようにしても良く、この場合、エリアに1つ定義される所定位置に最も近い所定台数の車載無線通信装置がデータベース装置へアクセスしても良いし、エリアに複数定義される所定位置のそれぞれについて最も近い車載無線通信装置がデータベース装置へアクセスするようにしても良い。
【0011】
上述のあらかじめ定められた制御チャネルは、例えば車車間通信用に専用に割り当てられたチャネルとすることができる。この制御チャネルを介して位置情報を含む車両データを交換することで、各車載無線通信装置は周囲に存在する車載無線通信装置の位置情報などを把握可能である。したがって、各車載無線通信装置は、自律分散的にデータベース装置にアクセスするべきか否かを決定することができる。
【0012】
本発明において、第1のエリアよりも大きい第2のエリア(DCC共用エリアに対応)を導入し、クエリステップでは第2のエリアについてのホワイトスペース情報を取得するようにすることも好ましい。ここで、第2のエリアは複数の第1のエリアから構成されるようなエリアとすることができる。より広い範囲である第2のエリアについてのホワイトスペース情報が利用可能となるので、より適切な周波数を通信に利用する周波数として選択することができる。ここで、第1のエリアの大きさを車載無線通信装置の通信距離よりも狭く定義し、第2のエリアの大きさを車載無線通信装置の通信距離よりも広く定義することも好ましい。このようにすれば、隣接する第1のエリアの代表車両が配信するホワイトスペース情報を受信可能であり、かつ、その配信情報の中に自装置に対応する第1のエリアのホワイトスペース情報が含まれているからである。
【0013】
また、本発明において、自装置および周囲の車載無線通信装置の位置や移動方向や移動速度に基づいて、ホワイトスペース情報を取得する対象のエリアを拡張することも好ましい。ホワイトスペース情報を取得する対象のエリアを、移動方向や移動速度に基づいて拡張することで、移動が予測される範囲についてのホワイトスペース情報を取得可能となる。すなわち、より長い期間にわたって有効なホワイトスペース情報が取得できる。ここで、拡張エリアの決定方法は、種々の方法が考えられる。例えば、同じ第1のエリア内の全ての車載無線通信装置の移動方向および移動速度を考慮して拡張エリアを決定することができる。あるいは、第1のエリア内の一部の車載無線通信装置の移動方向および移動速度を考慮して拡張エリアを決定してもよい。さらに、データベース装置にアクセスする車載無線通信装置のみの移動方向および移動速度を考慮して拡張エリアを決定してもよい。なお、周囲の車載無線通信装置の位置情報等を取得するためには、それぞれの車載無線通信装置が、位置情報、移動方向、および移動速度を車両データに含めて送信すればよい。
【0014】
また、本発明において、車載無線通信装置がデータベース装置にアクセスするタイミングを完全に同じにせず、アクセスを分散することが好ましい。通信の衝突やデータベース装置の過負荷を回避するためである。このためには、決定ステップ(およびその後のクエリステップおよび配布ステップ)を行うタイミングを、自装置の現在位置を含む第1のエリアに応じたタイミングとすればよい。なお、全ての第1のエリアでアクセスタイミングを異ならせる必要はなく、複数の第1のエリアについてアクセスタイミングが一致しても構わない。
【0015】
また、本発明において、上述のようにして取得したホワイトスペース情報に基づいて、利用可能な周波数の中から、第1の動的制御チャネル(分散制御チャネルに対応)として決定することが好ましい。そして、決定した第1の動的制御チャネルを用いて、データベース装置から取得したホワイトスペース情報を周囲の車載無線通信装置に対して送信することが好ましい。
【0016】
上述のようにして取得したホワイトスペース情報を利用して、プライマリユーザが利用している空き周波数の中から第1の動的制御チャネルを選択することができる。そして、第1の動的制御チャネルを用いてホワイトスペース情報を配布することで、あらかじめ定められた制御チャネル(例えば、車車間通信専用の制御チャネル)の通信容量を圧迫せずに済む。
【0017】
この際、前記第1の動的制御チャネル決定ステップでは、現在位置を含む第2のエリア内で利用可能な割合が最も高い周波数を、前記第1動的制御チャネルに利用する周波数として決定する、ことも好ましい。第2のエリアは、上述のように、第1のエリアよりも大きいエリアである。このようにすれば、第2のエリア内に位置する車載無線通信装置のうち多数の車載無線通信装置が利用可能なチャネルを、第1の動的制御チャネルとして選択できることが期待できる。また、第2のエリアに含まれる複数の第1のエリアについて、それぞれ第1の動的制御チャネルを決定する車載無線通信装置が存在するが、上述のような基準にしたがって選択を行うことで、第2のエリア内では同一の周波数が第1の動的制御チャネルとして選択されることになる。したがって、第1の動的制御チャネルが頻繁に切り替わることを回避できる。
【0018】
また、本発明において、前記車両データには、位置情報、移動方向、および移動速度が含まれており、自装置および他の車載無線通信装置の位置情報、移動方向、および移動速度に基づいて、自装置と同一のグループに属する車載無線通信装置を決定するグループ決定ステップと、自装置がグループ内のリーダであるか否かを判定するステップと、自装置がグループ内のリーダである場合に、グループ内で第2の動的制御チャネル(グループ制御チャネルに対応)として利用する周波数を決定する第2動的制御チャネル決定ステップ
と、前記第2の動的制御チャネルの周波数を、前記第1の動的制御チャネルを用いて周囲の車載無線通信装置へ通知する第2動的制御チャネル通知ステップと、を含む、ことも好ましい。
【0019】
この際、前記第2動的制御チャネル決定ステップでは、前記グループ内の車載無線通信装置の位置情報、移動方向、および移動速度に基づいて、前記グループ内の車載無線通信装置のそれぞれについて、現時点から所定時間後までの存在範囲を予測し、それぞれの車載無線通信装置について予測された範囲の全体に関して、プライマリユーザの利用率が最も少ない周波数を、前記第2の動的制御チャネルに利用する周波数として決定する、ことも好ましい。このようにすれば、グループ内でより利用可能率が高い周波数を第2の制御チャネルとして選択することができる。
【0020】
また、本発明において、自装置がグループ内のリーダである場合に、グループ内でデータチャネルとして利用する周波数を決定するデータチャネル決定ステップと、前記データチャネルの周波数を、前記第2の動的制御チャネルを用いて周囲の車載無線通信装置へ通知するデータチャネル通知ステップと、を含む、ことも好ましい。
【0021】
この際、前記データチャネル決定ステップでは、グループ内の各車載無線通信装置について、時間経過に応じた存在範囲を推定し、グループ内の全ての車載無線通信装置が利用可能な状態が最も長く継続する周波数を、前記データチャネルとして決定する、ことも好ましい。このようにすれば、グループ内での全ての車載無線通信装置が継続的に利用可能な周波数をデータチャネルとして選択でき、安定した通信が実現できる。
【0022】
本発明は、上記の処理の少なくとも一部を含む無線通信方法として捉えることもできる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を実行するための手段を備える車載無線通信装置、あるいは当該車載無線通信装置を搭載した車両として捉えることもできる。また、本発明は、上述の車載無線通信装置から構成される車車間通信システムとして捉えることもできる。また、本発明は、上述の無線通信方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム、あるいはこのコンピュータプログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体として捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ホワイトスペースデータベース装置からのホワイトスペース情報を効率的に取得可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<ホワイトスペースデータベースへのアクセス方法>
図1は、本実施形態にかかる車車間通信システムの概要図であり、ホワイトスペースデータベース装置10(以下、WSDB装置10あるいはDB装置10とも称する)と、車載無線通信装置21a〜21dを搭載する複数の車両20a〜20dからなる。本実施形態にかかる車車間通信システムにおける各車両は、プライマリユーザ(PU、免許者)が利用していない周波数(ホワイトスペース)をセカンダリユーザ(SU)として利用して通信を行う。
【0026】
図2(A)(B)は、WSDB装置10が保有するホワイトスペース情報(以下、WS情報とも称する)を説明する図である。
図2(A)に示すように、WSDB装置10には、所定の大きさのセル(例えば、100m四方の正方形)について、プライマリユーザの利用状況が記憶される。
図2(B)に示すように、各セルは、例えば緯度IDおよび経度IDによって特定可能であり、チャネルごとにプライマリユーザによる利用状況(利用有無)が「1」または「0」で格納される。たとえば、プライマリユーザが利用していることを「1」で表し、プライマリユーザが利用していないことを「0」で表す。車両は、所定範囲のセルについて各チャネルごとの利用状況を取得することで、その範囲におけるチャネルの状況を把握できる。
【0027】
本実施形態において、ホワイトスペースの検出は、WSDB装置10へアクセスすることによって行う。ただし、全ての車両がWSDB装置10へアクセスすると、WSDB装置10での処理負荷が過剰になったり、通信が逼迫するおそれがある。そこで、本実施形態においては、複数の車両20a〜20dのうち、特定の車両のみがWSDB装置10へアクセスする。WSDB装置10へアクセスした車両は、取得したホワイトスペース情報を周囲の車両に配布する。このようにして、アクセスの集中を回避しつつ、全ての車両がホワイトスペース情報を利用可能とする。
【0028】
図3を参照して、本実施形態におけるWSDB装置へのアクセス方法(WS情報取得処理)について説明する。各車両は、760MHzや5.8GHz帯などの車車間通信に専用に割り当てられている周波数を用いて、定期的に車両情報(車両ID、位置情報、移動方向、移動速度など)を送信するとともに、他の車両から送信される車両情報を受信する(S10)。このように、各車両が定期的に車両情報を交換(送受信)することで、周囲に存在する車両の位置情報を把握できる。なお,
図3では車両情報の交換を一度だけ行うように記載しているが、上述のように、定期的に行うようにすることが好ましい。
【0029】
本実施形態においては、代理DBアクセスエリア(第1のエリアに対応)と称するエリ
ア内では、一台の車両のみがWSDB装置10へアクセスする。代理DBアクセスエリアは、例えば、
図4に示すように250m四方のエリア41とすることができる。WSDB装置10にアクセスするか否かを各車両が自律的に判断可能な基準を設けて、代理DBアクセスエリア内の一部の車両のみがWSDB装置10にアクセスするようにすることが好ましい。本実施形態では、同じ代理DBアクセスエリア内に位置する車両のうち、当該エリアに定義される所定位置(例えば、エリアの中心位置)に最も近い車両が、WSDB装置10へアクセスする。
【0030】
具体的には、自車両の現在位置付近の地図情報を取得して、代理DBアクセスエリアに関する情報を把握する(S11)。そして、ステップS10において取得した周囲の車両の位置情報、および自車両の位置情報、および地図情報と関連付けて記憶されている代理DBアクセスエリアの情報に基づいて、自車両が代理DBアクセスエリアの所定位置(中心位置)に最も近い車両であるかどうかを判定する(S12)。
【0031】
自車両が代理DBアクセスエリアの中心位置に最も近い車両と判定される場合(S12−YES)には、自車両がWSDB装置10に対して、ホワイトスペース情報を取得するためのクエリを送信する(S13)。ここで、どの範囲についてのホワイトスペース情報を取得するかは、任意であって構わない。例えば、
図4に示すように、4×4個の代理DBアクセスエリアからなるエリア(DCC共用エリア、第2のエリアに対応)についてのホワイトスペース情報を取得するようにすることができる。なお、後述するようにこのエリアは、ホワイトスペースを使った通信を行う際に、共通の制御チャネル(分散制御チャネル、DCC)を用いるエリアである。
【0032】
車両がWSDB装置10からホワイトスペース情報の応答を取得すると(S14)、取得したホワイトスペース情報を周囲の車両に対して配布する(S15)。ホワイトスペース情報の配布方法は任意であって構わないが、例えば、ホワイトスペースから制御チャネル(上記のDCC)を決定して、この制御チャネル上で送信するようことが好ましい。より具体的な通信方法については、後述する。
【0033】
一方、自車両が代理DBアクセスエリアの中心位置に最も近い車両ではない場合(S12−NO)には、自車両はWSDB装置10へはアクセスせず、他の車両から送信されるホワイトスペース情報を受信する(S16)。
【0034】
このようにして、車車間通信システム内の一部の車両のみがWSDB装置10へアクセスすることで、WSDB装置10へのアクセスの集中や通信網の逼迫を回避できる。
図1の例では、車両20a〜20dの4台の車両のうち、車両20aのみがWSDB装置10へアクセスし、車両20b〜20dは、車両20aから車車間通信によってホワイトスペース情報を取得する。
【0035】
<ホワイトスペースデータベース連携型車車間通信システム>
以下では、上述したホワイトスペースデータベースへのアクセス方法を利用した、車車間通信システムについて説明する。この車車間通信システムでは、760MHz(あるいは5.8GHz)の車車間通信専用のチャネルに加えて、ホワイトスペースの中から2つの動的制御チャネル(分散制御チャネルDCCおよびグループ制御チャネルGCC)および1つまたは複数のデータチャネルを確立して車車間通信を行う。動的制御チャネルとは、利用周波数があらかじめ定まっておらず、周辺におけるプライマリユーザの周波数利用状況によって周波数が定められる制御チャネルを意味する。なお、760MHz(あるいは5.8GHz)の車車間通信専用チャネルは、本発明におけるあらかじめ定められた制御チャネルに相当する。また、分散制御チャネルDCCおよびグループ制御チャネルは、本発明における第1の動的制御チャネルおよび第2の動的制御チャネルにそれぞれ対応す
る。
【0036】
図5は、本実施形態にかかる車車間通信装置を構成する車両の機能ブロックを示す図である。車両は、LTE通信部101、WSDBクエリ部102、WS情報記憶部103、利用周波数決定部104、車車間通信部105、地図情報記憶部111、GPS装置112、車両センサ113、アプリケーション実行部114などの機能部を有する。これらの機能部は、電気回路や電子回路などのハードウェア回路によって実現されてもよいし、CPU(Central Processor Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などがメモリなどの
記憶装置に格納されたプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0037】
LTE通信部101は、LTE(Long Term Evolution)通信網を介して、WSDB装
置10と無線通信する。なお、WSDB装置10との間の無線通信方式は、LTE以外にも、3GやモバイルWiMax(IEEE802.16e)であっても良いし、無線LAN(IEEE802.11a/b/g/n等)などであっても良い。
【0038】
WSDBクエリ部102は、WSDB装置10に対してWS情報を要求するクエリを発行する機能部である。WSDBクエリ部102は、WSDBクエリ部102に対してアクセスするか否かの判断や、WSDB装置10へのアクセスタイミングの決定や、どの範囲を対象としてWS情報を取得するかの決定や、WSDB装置10から応答結果の受信、などの処理を行う。これらの詳細については後述する。
【0039】
ホワイトスペース情報記憶部103は、自車両がWSDB装置10からLTE網を介して取得したWS情報や、他の車両から車車間通信によって取得したWS情報を格納する機能部である。WS情報記憶部103には、
図2(B)に示すように、セルごとおよびチャネルごとに、プライマリユーザの利用有無が格納される。
【0040】
利用周波数決定部104は、分散制御チャネルDCC、グループ制御チャネルGCC、データチャネルDCHとして利用する周波数を決定する機能部である。利用周波数決定部104は、WS情報記憶部103に格納されたWS情報に基づいてこれらのチャネルを決定したり、他の車両から車車間通信によって通知される情報に基づいてこれらのチャネルを取得したり、あるいは、周波数をスキャン(リスニング)してこれらの制御チャネルを発見したりする。各チャネルの決定方法の詳細については後述する。
【0041】
車車間通信部105は、車車間通信専用のチャネル(760MHz帯や5.8GHz帯)および、ホワイトスペース上のチャネルを使って、周囲の車両と無線通信を行う機能部である。車車間通信部105は、車車間通信専用チャネルでは、車両ID、位置情報、移動速度、移動方向などの車両データを定期的に送信する。また、分散制御チャネルDCCでは、WS情報およびグループ制御チャネルGCCの周波数を通知する。また、グループ制御チャネルGCCでは、グループ内でのルーティング情報を交換したり、データチャネルの周波数を通知したりする。これらの詳細については、後述する。
【0042】
地図情報記憶部111には、地図情報が記憶される。この地図情報は、
図4に示すように、メッシュ状の代理DBアクセスエリア41およびDCC共用エリア42によって区分されている。代理DBアクセスエリア41は、例えば、一辺250mの正方形状のエリアである。この大きさは、任意であって良いが、700Mhz帯や分散制御チャネルでの通信距離を考慮して定義するのがよい。DCC共用エリア42には、代理DBアクセスエリア41よりも大きく、複数の代理DBアクセスエリア41からなるエリアであり、
図4の例では、4×4の代理DBアクセスエリアからなる一辺1kmの正方形状のエリアである。同一のDCC共用エリア42内では、後述するように共通の基準にしたがって分散制御
チャネルDCCが選択される。したがって、同一のDCC共用エリア内では同一の分散制御チャネルDCCを利用することになり、分散制御チャネルDCCが頻繁に変更されることを回避できる。
【0043】
GPS装置112は、GPS装置から位置情報を取得する装置である。なお、位置情報を取得可能であれば、GPS装置以外の衛星測位装置や、基地局測位装置などを用いても良い。車両センサ113は、車両制御装置から種々のセンサ情報を取得する機能部であり、例えば、速度、加速度、操舵角、ブレーキ踏み込み量などを取得する。
【0044】
アプリケーション実行部114は、車車間通信を利用するアプリケーションプログラムを実行する機能部である。実行されるプログラムは任意のものであって良く、ここでは本発明では特に限定されない。
【0045】
<全体処理>
図6のフローチャートを参照して、本実施形態にかかる車車間通信システムにおける無線通信処理の概要を説明する。なお、
図6のフローチャートは、処理の概念を説明するためのものであり、実際の処理順序とは異なることに留意されたい。
【0046】
まず、760MHz帯(あるいは5.8GHz)の車車間通信用チャネルを用いて車両情報を交換(送信および受信)することで、周辺状況を把握する(S21)。すなわち、自車両の周囲に存在する車両の台数やその位置などを把握する。この車両情報の交換処理は、定期的に行うことが好ましい。例えば、各車両が100ミリ秒ごとに1回車両情報をブロードキャスト送信するようにすることができる。このようにすることで、各車両は周辺状況を常に把握可能となる。また、WSDB装置10あるいは周囲の車両からホワイトスペース情報を取得することによって、自車両の周囲のホワイトスペースに関する情報を取得する。
【0047】
車両情報の受信によって周辺状況を把握したら、分散制御チャネルDCCを確立する(S22)。分散制御チャネルDCCの確立方法は、WSDB装置10から得られるWS情報に基づいて自らDCCを選択したり、周波数帯をスキャンして分散制御チャネルDCCを発見したりすることによって行う。上述のように、DCC共用エリア内では、同一の周波数が分散制御チャネルDCCとして利用される。
【0048】
次のグループ制御チャネルGCC確立処理S23では、グループ(車群、スワーム)ごとに定義されるグループ制御チャネルGCCを確立する。グループは、同様の移動度(移動方向および移動速度)を有する車両として定義される。このグループ内で特定の車両(リーダ車両)がグループ制御チャネルGCCを選択し、グループ内の他の車両に対して分散制御チャネルDCCを介してグループ制御チャネルGCCを通知する。確立されたグループ制御チャネルGCCでは、グループ内でのルーティング情報やデータチャネルの周波数、アプリケーション関連のメッセージ通知などが送信される。
【0049】
またデータチャネル確立処理S24では、グループ内のデータ通信に利用するデータチャネルを確立する。データチャネルは、グループ内の特定車両(リーダ車両)が選択し、グループ内の他の車両に対してグループ制御チャネルGCCを介してデータチャネルを通知する。
【0050】
データチャネルが確立すると、グループ内の車両は、このデータチャネルを用いて車車間通信を行う(S25)。
【0051】
なお、
図6のフローチャートでは、上記の処理が順次(シーケンシャルに)行われるよ
うに記載しているが、処理順序は必ずしもシーケンシャルとは限らない。上述のように車両情報の交換は定期的に行われる。また、各種チャネルが確立した後も、そのチャネルが継続して利用可能であるか判断し、チャネル周波数の変更が必要になった場合には、チャネルの変更処理(再確立処理)を行う。これらの詳細については、以下で説明する。
【0052】
<周辺状況把握処理〜分散制御チャネル確立・維持処理>
周辺状況の把握処理(S21)および分散制御チャネル確立処理(S22)について、
図7のフローチャートを参照して説明する。ここでは、分散制御チャネルDCCを把握できていない状況における処理について説明する。分散制御チャネルDCCが把握できていない状況とは、車両システムの起動時(エンジンON時)や、DCC共用エリア42をまたいだ移動を行った時に生じる。
【0053】
車車間通信部105が、車車間通信専用チャネルを介して、他の車両との間で車両情報を交換する(S31)。これにより、周囲の車両の位置情報や移動方向等に関する情報を取得可能である。上述したように、この車両情報の交換処理は、定期的に繰り返し実行される。
【0054】
ここで、何台の車両から車両情報を受信できたかによって、周囲に存在する車両の密度が把握可能である。そこで、周囲の車両密度によって、以降の処理を分岐する。周囲の車両密度が所定の閾値以上である場合(S32−YES)は、周囲の車両によって分散制御チャネルDCCが確立されている可能性が高いので、リスニングによって分散制御チャネルDCCの発見を試みる。この際、現在位置付近のWS情報を全く保有していない場合(S33−NO)には、全てのチャネルを順番にリスニングする(S34)。一方、現在位置付近のWS情報を部分的に(あるいは完全に)保有している場合(S33−YES)には、このWS情報に基づいて分散制御チャネルDCCを予測できるので、分散制御チャネルDCCとして使用されている可能性が高いチャネルから順番にリスニングする(S35)。リスニングの結果、分散制御チャネルDCCが発見できれば(S36−YES)、それ以上の処理を行わず、発見された分散制御チャネルDCCを介してWS情報を取得できる。なお、ステップS32の処理における閾値は1〜数台の範囲とすれば良い。
【0055】
一方、リスニングの結果、分散制御チャネルDCCが発見できなかった場合(S36−NO)や、周囲の車両密度が低い場合(S32−NO)には、自車両が分散制御チャネルDCCを決定する処理を行う。具体的には、まず、ホワイトスペースDBクエリ部102がLTE通信部101を介して、WSDB装置10に対してアクセスして、現在位置付近のWS情報を取得する(S37)。この際、少なくとも、自車両が位置するDCC共用エリアについてのWS情報を取得する。例えば、クエリに自車両が位置するDCC共用エリアのエリアIDを含めて当該エリアについてのWS情報を要求しても良いし、クエリに自車両が位置するDCC共用エリアの対角方向の2頂点の位置ID(緯度IDおよび経度ID)を含めて当該エリアについてのWS情報を要求しても良い。ホワイトスペースDBクエリ部102は、WSDB装置10からの応答として得られるWS情報をWS情報記憶部103に格納する。
【0056】
次に、利用周波数決定部104が、WS情報記憶部103に格納された現在のDCC共用エリアについてのWS情報に基づいて、分散制御チャネルDCCとして利用する周波数を決定する(S38)。上述したように、WS情報はセル単位でのプライマリユーザのチャネルの利用有無を表す情報であり、一つのDCC共用エリアには複数のセルが含まれる。DCC共用エリア内において、プライマリユーザがチャネルを利用しているセルの割合(PUカバー率)が最も低いチャネル、すなわち、セカンダリユーザが利用可能なセルの割合が最も大きいチャネルを、分散制御チャネルDCCとして選択する。
【0057】
分散制御チャネルDCCが決定されると、車車間通信部105は、WS情報記憶部103に格納されているWS情報を、分散制御チャネルDCC上で周囲の車両に対して配布する。例えば、WS情報の配布は、定期的に繰り返し実行されることが望ましい。
【0058】
次に、既に分散制御チャネルDCCを把握している状況での、WS情報の配布および分散制御チャネルDCCの維持処理について、
図8のフローチャートを参照して説明する。
【0059】
図8は、他の車両の位置を把握できている場合の分散制御チャネルDCCの確立・維持処理の流れを示すフローチャートである。まず、車車間通信部105が、車車間通信専用チャネルを介して、他の車両との間で車両情報を交換する(S41)。これにより、周囲の車両の位置情報や移動方向等に関する情報を取得可能である。上述したように、この車両情報の交換処理は、定期的に繰り返し実行される。また、自車両の現在位置付近の地図情報を取得して、自車両が位置する代理DBアクセスエリアおよびDCC共用エリアに関する情報を取得する(S42)。
【0060】
次に、ホワイトスペースDBクエリ部102が、WSDB装置10へアクセスするか否かの判断を行う。具体的には、自車両が、周囲の車両と比較して、代理DBアクセスエリアの中心位置に最も近いか否かを判定する(S43)。この判定処理は、自車両がどの代理DBアクセスエリアに属するかの決定、自車両が属する代理DBアクセスエリアの中心位置の取得、周囲の車両および自車両のそれぞれについて当該中心位置との距離の算出、および自車両に関する距離が最短であるかどうかの判定によって行える。
【0061】
自車両が代理DBアクセスエリアの中心位置に最も近くはない場合(S43−NO)は、自車両はWSDB装置10へのアクセスは行わずに処理を終了する。この場合は、分散制御チャネルDCC上で他の車両から送信されるWS情報を受信することになる。
【0062】
一方、自車両が代理DBアクセスエリアの中心位置に最も近い場合(S43−YES)は、ホワイトスペースDBクエリ部102がWSDB装置10へアクセスしてWS情報を取得する。まず、ホワイトスペースDBクエリ部102は、WS情報を取得するためのクエリを生成して、WSDB装置10へ送信する(S44)。このクエリは、自車両が属するDCC共用エリアに加えて、自車両や周囲の車両の移動度(移動方向および移動速度)に基づいて拡張されたエリアについてのWS情報を要求するものとすることが好ましい。ホワイトスペースDBクエリ部102は、このクエリの結果としてWSDB装置10から送信される応答を受信し、WS情報記憶部103に格納する(S45)。
【0063】
ステップS44における拡張エリアの決定方法はいくつかの方法が考えられる。以下、
図9を参照して説明する。
図9(A)は、自車両(WSDB装置10へアクセスする車両)の移動度に基づいて、拡張エリアを決定する方法を説明する図である。
図9(A)において、自車両91の移動方向および移動速度が速度ベクトル92(移動度)として示されている。自車両91の属するDCC共用エリアは、領域93として示される3×3の代理DBアクセスエリアからなる領域である。ホワイトスペースDBクエリ部102は、自車両が属するDCC共用エリア93を、自車両の速度ベクトル92に基づいて拡張したエリア94についてのWS情報をWSDB装置10から取得する。
クエリは任意の形式であって良いが、例えば、DCC共用エリア93の向かい合う2つの頂点93aおよび93bの座標(緯度IDおよび経度ID)と、自車両の位置情報、および速度ベクトルとをクエリに含めて送信するようにすることができる。そして、WSDB装置10がクエリに含まれるこれらの情報に基づいて、DCC共用エリア93を拡張したエリア94を求めて、このエリア94についてのWS情報を返すようにすることができる。
あるいは、車両側でエリア94を求めて、エリア93の向かい合う2つの頂点94aおよび94bをクエリに含めて送信するようにしても良い。
【0064】
なお、拡張エリアの算出は、
図9(B)に示すように、車両91の位置情報と移動ベクトル92から推測される予測移動範囲92aを求め、この予測移動範囲92aとDCC共用エリア93を含むように拡張エリア94を決定してもよい。
【0065】
また、自車両の移動度ではなく、周囲の車両(同一の代理DBアクセスエリアに位置する車両)の位置や移動度も考慮して拡張エリア94を決定することも好ましい。
【0066】
図9(C)は、自車両および周囲に位置する車両の位置情報および移動ベクトルを考慮して、拡張エリアを決定する方法の別の例を説明する図である。この例では、自車両および同一のDCC共用エリアに位置する車両のそれぞれの移動ベクトルに基づいて、拡張エリアを決定する。例えば、矢印96および矢印97で示す移動度を有する車両が存在する場合に、それぞれの移動度を考慮して拡張エリアを決定する。
【0067】
なお、DCC共用エリアだけでなく移動度に基づいて拡張エリアを設定するのは、自車両や周囲の車両が現在のDCC共用エリアから別のDCC共用エリアに移動した際に、周辺のWS情報を取得済みにしておくためである。したがって、拡張エリアの決定方法は上記の手法に限られず、このような目的の趣旨に応じて種々の変形が可能である。
【0068】
クエリに対する応答としてWSDB装置10から送信されるWS情報は、例えば、WS情報取得対象範囲の始点および終点のセルを特定する情報(始点および終点の緯度IDおよび経度ID)と、対象範囲内の全てのセルに関する全てのチャネルのプライマリユーザの利用有無を表すデータである。
【0069】
次に、利用周波数決定部104が、WS情報記憶部103に格納された現在のDCC共用エリアについてのWS情報に基づいて、分散制御チャネルDCCとして利用する周波数を決定する(S45)。上述したように、WS情報はセル単位でのプライマリユーザのチャネルの利用有無を表す情報であり、一つのDCC共用エリアには複数のセルが含まれる。DCC共用エリア内において、プライマリユーザがチャネルを利用しているセルの割合(PUカバー率)が最も低いチャネル、すなわち、セカンダリユーザが利用可能なセルの割合が最も大きいチャネルを、分散制御チャネルDCCとして選択する。
【0070】
図10は、分散制御チャネルDCCの選択処理を説明する図である。ここでは、DCC共用エリアが4×4個のセルからなるものとして記載しているが、実際にはDCC共用エリアにはより多くのセルが含まれる。
図10においては、3つのチャネル(チャネル0,1,2)についてのWS情報が示されており、○印はプライマリユーザが利用していない(空きチャネルである)ことを示し、×印はプライマリユーザが利用していることを示す。PUカバー率は、(プライマリユーザが利用しているセル数)/(全セル数)で定義され、
図10の例では、チャネル0,1,2についてそれぞれ、25%、50%、6%である。したがって、この例では、PUカバー率が最も低いチャネル2が分散制御チャネルDCCとして選択される。なお、複数のチャネルが同一のPUカバー率最低値を有する場合、ある定められた基準でいずれかのチャネルを選択する(例えば、最も低い周波数を選択するなど)ことが好ましい。こうすることで、同じWS情報に基づいて分散制御チャネルDCCを選択すれば、常に同じチャネルが選択されるようにできる。
【0071】
なお、PUカバー率の算出時に、全てのセルを同等に扱っているが、各セルに存在する車両数および将来的に存在すると予想される車両数に応じて、セルごとに重みをつけてPUカバー率を算出してもよい。このようにすれば、より多くの車両が利用可能なチャネル
を分散制御チャネルDCCとして選択することができる。
【0072】
分散制御チャネルDCCが決定されると、車車間通信部105は、WS情報記憶部103に格納されているWS情報を、分散制御チャネルDCC上で周囲の車両に対して配布する(S46)。例えば、WS情報の配布は、定期的に繰り返し実行されることが望ましい。
【0073】
このような処理によって、WSDB装置10へのアクセス処理および分散制御チャネルDCCの決定が行われることで、次のような利点がある。まず、WSDB装置10へアクセスする車両の数が代理DBアクセスエリアにつき基本的に1台となるので、WSDB装置10の処理負荷の軽減およびLTE通信網の通信量抑制が可能となる。また、PUカバー率が最も低いチャネルを分散制御チャネルDCCとして選択することで、より多くの車両が利用可能なチャネルを選択することができる。また、複数の車両が分散制御チャネルDCCを決定しても同一のチャネルが選択されることになり、DCC共用エリア内では同じチャネルが分散制御チャネルDCCとして選択される。
【0074】
なお、
図8のフローチャートに記載のWS情報の配布および分散制御チャネルDCCの維持処理は、定期的に行うことが好ましい。例えば、
図11に示すように、処理の実行間隔は全ての代理DBアクセスエリアで同一(例えば、5秒)とするが、実行タイミングは代理DBアクセスエリアに応じてずらすことが好ましい。
図11の例では、代理DBアクセスエリアIDの末尾(10で割った余り)の値に応じて、実行タイミングを0.5秒ずつずらしている。このようにすれば、WSDB装置10への同時アクセス数を減らすことができる。なお、
図11の例では、代理DBアクセスエリアを10個のグループに分けてグループごとに実行タイミングを変えていえるが、グループ数はこれより多くても少なくても構わない。
【0075】
<グループ制御チャネルGCC確立・維持処理>
次にグループ制御チャネルGCCの確立・維持処理(S23)について、
図12のフローチャートを参照して説明する。なお、ここでは、WSDB装置10から直接あるいは分散制御チャネルDCCを介して、車両が周囲のWS情報を保有済みであるものとする。
【0076】
車車間通信専用チャネルを介した車両情報の交換処理(S41)は定期的に行われており、各車両は周囲の車両の位置情報や移動情報等を把握可能である。そして、自車両および周囲の車両の位置や移動度(移動方向および移動速度)に基づいて、同一のグループ(車群)に属する車両を特定する(S42)。近接した車両のうち、同様の移動方向に移動する車両を車群のメンバとして特定すればよい。あるいは、近接した車両のうち、同じ道路を同じ方向に走行している車両を車群のメンバとして特定しても良い。
【0077】
車群を構成するメンバが特定されたら、自車両がその車群のリーダであるか否かを判定する(S43)。リーダ車両の条件は任意であって構わないが、例えば、車群の先頭車両をリーダ車両としたり、車群内で車両IDが最も小さいあるいは最も大きい車両をリーダ車両としたりすることができる。もちろん、これら以外の基準にしたがって、リーダ車両を選択しても良い。
【0078】
自車両がリーダ車両である場合(S43−YES)には、周囲のWS情報に基づいてグループ制御チャネルGCCを選択する(S44)。グループ制御チャネルGCCの選択処理の詳細について、
図13および
図14を参照して説明する。
【0079】
図13(A)はグループ制御チャネルGCC選択処理S44の詳細を示すフローチャートである。まず、自車両の移動方向と地図情報から、自車両(および車群)が走行中の道
路を特定する(S441)。そして、走行中の道路の形状に基づいて、移動予測エリアを特定する(S442)。そして、移動予測エリアにおいてPUカバー率が最も低いチャネルをグループ制御チャネルGCCとして選択する(S443)。
【0080】
例えば、
図13(B)に示すように、自車両(あるいは車群)1301が、道路1302を図中右方向に走行している場合、エリア1302に示す領域が今後の移動予測エリアであると判断できる。なお、エリア1302はセルを組み合わせた領域である。
図13(C)に示すように、移動予測エリアの各セルについてPUの利用有無を判定し、移動予測エリア全体についてのPUカバー率をチャネルごとに計算する。この例では、Ch1はPUカバー率が6%で、Ch2はPUカバー率が50%であるので、Ch1がグループ制御チャネルGCCとして選択される。
【0081】
なお、移動予測エリアの算出は別の方法によって行っても良い。例えば、車群を構成する各車両について移動予測範囲を求めて、それらを足し合わせた範囲を車群の移動予測エリアとすることも好ましい。この方法について、
図14を参照して説明する。例えば、
図14(A)に示すように、車群が3台の車両1401〜1403から構成されているものとする。車両1401の位置、その位置での道路形状、および移動速度等に基づいて、現時点から所定時間経過後までに車両1401が位置する範囲1404が推定できる(
図14(B))。同様に、車両1402および1403についても、移動予測範囲1405および1406が推定できる(
図14(C)(D))。そして、これらの範囲1404〜1406を足し合わせた範囲1407を、車群の移動予測エリアとして求めてもよい(
図14(E))。このようにすれば、車両が存在するセルのみを抽出してPUカバー率を求められるのでより好ましいチャネルを選択可能となる。特に、車群の大きさに比較してセルの大きさが小さいときには、本手法が有効といえる。
【0082】
リーダ車両がグループ制御チャネルGCCを決定したら、分散制御チャネルDCC上で選択したチャネルを同一グループ内の車両に対して通知する(S45)。この通知により、リーダ車両以外の車両は、グループ制御チャネルGCCを把握して、グループ制御チャネルGCCを用いた通信が可能となる。グループ制御チャネルGCC上では、車群内でのルーティング情報の交換や、データチャネルの通知などが行われる。
【0083】
なお、
図12のグループ制御チャネルGCCの確立・維持処理は繰り返し実行されることが好ましい。例えば、5秒おきなどの間隔で定期的に実行することが考えられる。また、走行中の道路が変わった場合に再実行することが望ましい。また、同じ道路を走行中であっても、別のDCC共用エリアに移動した場合には再実行することが望ましい。
【0084】
<データチャネル確立・維持処理>
次にデータチャネルDCHの確立・維持処理(S24)について説明する。なお、ここでは、WSDB装置10から直接あるいは分散制御チャネルDCCを介して、車両が周囲のWS情報を保有済みであり、かつ、グループの形成が完成しグループ制御チャネルGCCも把握しているものとする。
【0085】
データチャネルの選択・維持処理は、グループ内のリーダ車両によって実行される。リーダ車両の選択基準は既に述べたので繰り返しは省略する。データチャネルの選択・維持処理では、グループ内の各車両について、移動予測エリアを時間ステップ(例えば5秒)ごとに算出して、現時点で全ての車両が利用可能であり、かつ、最も長く継続して利用可能なチャネルをデータチャネルとして選択する。以下、
図15〜
図17を参照してより詳細に説明する。
【0086】
図15は、データチャネル選択・維持処理の流れを示すフローチャートである。まず、
時間ステップを表す変数Nを0で初期化する(S51)。ここでは、時間ステップとして5秒を想定し、時間ステップNとは、現時刻から5N秒後から5(N+1)秒後の間の期間を表す。
【0087】
ステップS52〜S53の処理は、それぞれの車両について繰り返し実行される。ステップS52では、時間ステップN、すなわち現時刻から5N秒後から5(N+1)秒後における、対象車両の移動予測エリアを抽出する。そして、ステップS53において、このようにして算出した移動予測エリアでの各チャネルのプライマリユーザの利用状況を取得する。
【0088】
このような処理を時間ステップNの上限値に達するまで繰り返す。例えば、Nの上限値を「8」として現時点から45秒後までの移動予測エリアについてプライマリユーザの利用状況を取得する。
【0089】
上記の処理の
図16を参照して具体的に説明する。
図16(A)は車両1601の現時刻での位置と、0〜5秒後における移動予測エリア1602を示している。この移動予測エリア1602は次のようにして求められる。まず、移動速度に基づいて、0秒後から5秒後において移動可能な範囲1603を求める。次に、現在走行中の道路の進行方向側の部分と、範囲1603が重なる部分が、移動予測エリア1602として求められる。ここでは、移動予測エリア1602として2つのセルが抽出されている。そして、移動予測エリア1602のそれぞれのセルについて、各チャネルの利用状況をWS情報に基づいて取得する。
図16(A)の例では、チャネル1は2つのセルの両方で利用可能であり、
図16(B)の例では、チャネル2は2つのセルの一方では利用可能であるが他方では利用不可である。
【0090】
図16(C)は、5〜10秒後における移動予測エリア1604を示している。上記と同様に、5秒後から10秒後において移動可能な範囲を求めて、その範囲と現在走行中の道路の進行方向側部分との重なる部分が、移動予測エリア1604として求められる。なお、5秒後から10秒後において移動可能な範囲は、5秒後までに移動可能な範囲1603の外側部分であり、かつ、10秒後までに移動可能な範囲1605の内側部分とする。すなわち、車両は道路上を同じ方向に一定速度で走行するという仮定に基づいて、移動予測エリアを求めている。このようにして、5〜10秒後の移動予測エリアを求め、当該エリアに含まれるそれぞれのセルについて、各チャネルの利用状況を取得する。
図16(D)は、10〜15秒後における移動予測エリア1606を示す。処理自体は上記と同様であるので、繰り返しは省略する。
【0091】
上記の繰り返し処理が終了すると、全ての車両および全ての時間ステップについて移動予測エリアの抽出およびそのエリアでの各チャネルの利用有無が取得できる。データチャネルは、全ての車両が利用可能である必要があるので、ある時間ステップにおける全車両の移動予測エリア内の全てのセルについて利用可能なチャネルをデータチャネルとして利用可能であると判断し、それ以外のチャネルを利用不可能であると判断する。例えば、
図16(A)(B)の例では、0〜5秒後の間では、チャネル1は、(他の車両についても利用可能であれば)利用可能であると判断されるが、チャネル2は(他の車両が利用可能であったとしても)利用不可能であると判断される。
【0092】
すなわち、上記の繰り返し処理の終了時点で、
図17に示すように、各時間ステップについて、それぞれのチャネルが利用可能であるか否かを判断できる。リーダ車両は、現時点から最も長い期間継続して全ての車両が利用可能なチャネルをデータチャネルとして選択する(S56)。
図17の例では、チャネル1は現時点から6ステップの間全ての車両が利用可能であり、チャネル2の0時間ステップ、チャネル3の5ステップ、チャネル4
の4ステップと比較しても、最も長い時間利用可能である。したがって、リーダ車両は、チャネル1をデータチャネルとして決定する。
【0093】
継続時間が最も長いチャネルが複数存在する場合には、それらの中からランダムに選択して構わない。また、複数のチャネルをデータチャネルとして用いるチャネルボンディングを採用して、通信の冗長化やスループットの向上を実現してもよい。
【0094】
なお、上記の例では、時間ステップごと(例えば、0〜5秒後、5〜10秒後など)に区切って各車両の移動予測エリアを求めているが、距離ごとに移動予測エリアを求めても構わない。例えば、各車両の現在位置から0〜100m以内における移動予測エリア、100〜200m以内における移動予測エリアなどを求めても良い。この場合は、最も遠くの距離まで全ての車両が利用可能なチャネルをデータチャネルとして選択すれば良い。すなわち、時間基準でチャネルの利用状況を判断してもよいし、距離基準でチャネルの利用状況を判断してもよい。
【0095】
決定されたデータチャネルは、グループ制御チャネルGCC上でグループ内の車両に対して通知される(S57)。データチャネルは、車車間通信を利用するアプリケーションプログラム(例えば、隊列走行アプリケーションプログラムなど)がデータを送信するために用いられる。
【0096】
<本実施形態の作用効果>
本実施形態によれば、全ての車両がホワイトスペースデータベース装置へアクセスするのではなく、代理DBアクセスエリア内の一台の車両のみが代表してデータベース装置へアクセスし、取得したホワイトスペース情報をホワイトスペース上の制御チャネルで配布している。したがって、データベース装置へのアクセス集中を回避できる。また、LTE通信網などのデータベース装置との間の通信が逼迫する事態も避けられる。
【0097】
また、データベース装置へアクセスする際にDCC共用エリア内のホワイトスペース情報を取得し、このエリア内でのプライマリユーザの利用状況に応じて分散制御チャネルDCCを決定している。したがって、DCC共用エリア内でも最も利用可能なエリア(セル)が多いチャネルを分散制御チャネルDCCとして選択することができる。さらに、このような基準で分散制御チャネルDCCを選択しているので、DCC共用エリア内では同一のチャネルが分散制御チャネルDCCとして選択され、分散制御チャネルDCCを頻繁に切り替える必要がなくなるという利点もある。
【0098】
また、上述のようにして決定された分散制御チャネルDCC上で配布されるホワイトスペース情報に基づいて、グループ制御チャネルGCCやデータチャネルDCHを適切に決定することで、利用可能性の高いチャネルをグループ制御チャネルGCCやデータチャネルDCHとして選択することができる。
【0099】
<変形例>
上記の説明は、本発明を例示的に説明したものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その技術的思想の範囲内で、種々の変形が可能である。
【0100】
例えば、上記の説明で例示した、距離や時間などのパラメータは任意に変更可能である。例えば、代理DBアクセスエリアやDCC共用エリアの大きさなどは、システム要求に応じて任意に変更可能である。また、データベース装置へのアクセス間隔などの時間も、システム要求に応じて任意に変更可能である。
【0101】
また、上記の説明では、代理DBアクセスエリアの中心位置に最も近い車両のみがホワ
イトスペースデータベース装置へアクセスしているが、中心位置に近い複数台の車両がデータベース装置にアクセスするようにしても良いし、代理DBアクセスエリアに複数の基準位置を設けて、それぞれの基準位置に最も近い車両がデータベース装置へアクセスするようにしても良い。すなわち、何らかの基準にしたがって、一部の車両のみがデータベース装置にアクセスするように制限するようにすれば、データベース装置へのアクセス集中を減らす効果や、通信量の削減の効果が得られる。
【0102】
また、車両がデータベース装置からホワイトスペース情報を取得する際に、どのエリアを対象としてものであるかは、車両とデータベース装置のいずれかまたは両者が協働して決定すればよい。例えば、車両側で、現在位置や移動ベクトルなどに基づいて対象エリアの始点と終点を算出し、この情報をクエリに含めて送信しても良い。逆に、車両は、現在位置や移動ベクトルなどをクエリに含めて送信し、データベース装置においてこれらの情報に基づいて対象エリアを算出してもよい。上記の実施形態で示した手法は、一例に過ぎずこのように種々の手法を採用可能である。