(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接触検出手段は、前記変位検出部によって検出された複数の前記カンチレバーの前記変位のうち、前記変位が最も大きい前記カンチレバーの位置または前記変位の応答が最も早い前記カンチレバーの位置に基づいて、前記物体の接触位置を検出する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の接触センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る入力装置においては、抵抗感圧型または静電容量検出型などの圧力センサを用いており、タッチパネルに対する接触位置を検出するための電極や電気配線をタッチパネル近傍に設ける必要が生じる。これによって、タッチパネル近傍の構造が複雑になるとともに、構造上の制約が増大するという問題が生じる。さらに、タッチパネルに対する接触圧の強度を検出するために必要とされる構造が複雑化することによって、各種の形状や大きさを有するようにして汎用性を向上させることが困難である。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、構造が複雑化することを防止しつつ接触位置および接触圧を検出することが可能な接触センサ、接触入力装置および電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1の発明に係る接触センサは、圧力伝達媒体を内部に有し、物体の接触による圧力変動を前記圧力伝達媒体に伝達可能な中空部材(例えば、実施形態での中空部材101)と、前記中空部材または前記中空部材の内部に配置され、前記圧力変動に応じた検出信号を出力する少なくとも1つの圧力変動検出部(例えば、実施形態での圧力センサ1)と、前記圧力変動検出部から出力された前記検出信号に基づいて前記物体の接触位置および接触圧を検出する接触検出手段(例えば、実施形態での信号処理回路103)と、を備え、前記圧力変動検出部は、前記圧力伝達媒体が流通可能な開口(例えば、実施形態での連通開口11)を有する本体部(例えば、実施形態での本体部3)と、先端部(例えば、実施形態での先端部4b)が自由端かつ基端部(例えば、実施形態での基端部4a)が前記本体部に片持ち状に支持された状態で前記開口を塞ぐように配置され、前記圧力変動に応じて撓み変形するカンチレバー(例えば、実施形態でのカンチレバー4)と、前記カンチレバーの撓み変形に応じた変位を検出する変位検出部(例えば、実施形態での変位測定部5)と、を備え、前記接触検出手段は、少なくとも1つの前記圧力変動検出部の前記変位検出部によって検出された前記カンチレバーの複数の前記変位の大きさおよびタイミングの差に基づいて、前記物体の接触位置および接触圧を検出
し、前記中空部材の内部に配置された複数の前記圧力変動検出部を備え、前記圧力変動検出部の前記本体部は、キャビティ(例えば、実施形態でのキャビティ10)を備え、前記本体部の前記開口は、前記キャビティの内部と外部とを連通し、前記カンチレバーは、前記キャビティの内部と外部との圧力差に応じて撓み変形し、前記接触検出手段は、複数の前記変位検出部によって検出された複数の前記カンチレバーの前記変位の大きさと、複数の前記変位検出部によって検出された複数の前記カンチレバー間の前記変位のタイミングの差と、に基づいて前記物体の接触位置および接触圧を検出し、前記中空部材は、板状に形成され、前記中空部材の表面に沿って設けられ、接触操作に応じて前記圧力変動を発生可能な平面状の接触操作部(例えば、実施形態での接触操作部211)を備え、配置位置が異なる少なくとも3つの前記圧力変動検出部を備え、前記接触検出手段は、前記3つの前記圧力変動検出部の前記変位検出部によって検出された3つの前記カンチレバーの前記変位の大きさと、前記3つの前記カンチレバー間の前記変位のタイミングの差と、に基づいて、前記接触操作部における前記接触位置の2次元座標位置を検出する。
【0008】
さらに、本発明の第
2の発明に係る接触センサは、
圧力伝達媒体を内部に有し、物体の接触による圧力変動を前記圧力伝達媒体に伝達可能な中空部材(例えば、実施形態での中空部材101)と、前記中空部材または前記中空部材の内部に配置され、前記圧力変動に応じた検出信号を出力する少なくとも1つの圧力変動検出部(例えば、実施形態での圧力センサ1)と、前記圧力変動検出部から出力された前記検出信号に基づいて前記物体の接触位置および接触圧を検出する接触検出手段(例えば、実施形態での信号処理回路103)と、を備え、前記圧力変動検出部は、前記圧力伝達媒体が流通可能な開口(例えば、実施形態での連通開口11)を有する本体部(例えば、実施形態での本体部3)と、先端部(例えば、実施形態での先端部4b)が自由端かつ基端部(例えば、実施形態での基端部4a)が前記本体部に片持ち状に支持された状態で前記開口を塞ぐように配置され、前記圧力変動に応じて撓み変形するカンチレバー(例えば、実施形態でのカンチレバー4)と、前記カンチレバーの撓み変形に応じた変位を検出する変位検出部(例えば、実施形態での変位測定部5)と、を備え、前記接触検出手段は、少なくとも1つの前記圧力変動検出部の前記変位検出部によって検出された前記カンチレバーの複数の前記変位の大きさおよびタイミングの差に基づいて、前記物体の接触位置および接触圧を検出し、前記中空部材に形成された開口部(例えば、実施形態での開口部111)に配置された複数の前記圧力変動検出部を備え、前記本体部の前記開口は、前記中空部材の内部と外部とを連通し、前記カンチレバーは、前記中空部材の内部と外部との圧力差に応じて撓み変形し、前記接触検出手段は、複数の前記変位検出部によって検出された複数の前記カンチレバーの前記変位の大きさと、複数の前記変位検出部によって検出された複数の前記カンチレバー間の前記変位のタイミングの差と、に基づいて前記物体の接触位置および接触圧を検出
し、前記中空部材は、板状に形成され、前記中空部材の表面に沿って設けられ、接触操作に応じて前記圧力変動を発生可能な平面状の接触操作部(例えば、実施形態での接触操作部211)を備え、配置位置が異なる少なくとも3つの前記圧力変動検出部を備え、前記接触検出手段は、前記3つの前記圧力変動検出部の前記変位検出部によって検出された3つの前記カンチレバーの前記変位の大きさと、前記3つの前記カンチレバー間の前記変位のタイミングの差と、に基づいて、前記接触操作部における前記接触位置の2次元座標位置を検出する。
【0009】
さらに、本発明の第
3の発明に係る接触センサでは、前記圧力変動検出部の前記本体部は、前記中空部材の外部に配置されたキャビティ(例えば、実施形態でのキャビティ10)を備え、前記本体部の前記開口は、前記キャビティの内部と前記中空部材の内部とを連通し、前記カンチレバーは、前記キャビティの内部と前記中空部材の内部との圧力差に応じて撓み変形する。
【0012】
さらに、本発明の第
4の発明に係る接触センサでは、前記接触検出手段は、前記変位検出部によって検出された複数の前記カンチレバーの前記変位のうち、前記変位が最も大きい前記カンチレバーの位置または前記変位の応答が最も早い前記カンチレバーの位置に基づいて、前記物体の接触位置を検出する。
【0013】
さらに、本発明の第
5の発明に係る接触センサでは、
圧力伝達媒体を内部に有し、物体の接触による圧力変動を前記圧力伝達媒体に伝達可能な中空部材(例えば、実施形態での中空部材101)と、前記中空部材または前記中空部材の内部に配置され、前記圧力変動に応じた検出信号を出力する少なくとも1つの圧力変動検出部(例えば、実施形態での圧力センサ1)と、前記圧力変動検出部から出力された前記検出信号に基づいて前記物体の接触位置および接触圧を検出する接触検出手段(例えば、実施形態での信号処理回路103)と、を備え、前記圧力変動検出部は、前記圧力伝達媒体が流通可能な開口(例えば、実施形態での連通開口11)を有する本体部(例えば、実施形態での本体部3)と、先端部(例えば、実施形態での先端部4b)が自由端かつ基端部(例えば、実施形態での基端部4a)が前記本体部に片持ち状に支持された状態で前記開口を塞ぐように配置され、前記圧力変動に応じて撓み変形するカンチレバー(例えば、実施形態でのカンチレバー4)と、前記カンチレバーの撓み変形に応じた変位を検出する変位検出部(例えば、実施形態での変位測定部5)と、を備え、前記接触検出手段は、少なくとも1つの前記圧力変動検出部の前記変位検出部によって検出された前記カンチレバーの複数の前記変位の大きさおよびタイミングの差に基づいて、前記物体の接触位置および接触圧を検出し、前記中空部材は、環状に形成され、前記中空部材の内部に周方向を塞ぐように配置された1つの前記圧力変動検出部を備え、前記本体部の前記開口は、前記圧力伝達媒体の流通方向である周方向の第1方向側の第1方向部(例えば、実施形態での第1方向部113a)と第2方向側の第2方向部(例えば、実施形態での第2方向部113b)とを連通し、前記カンチレバーは、前記第1方向部と前記第2方向部との圧力差に応じて撓み変形し、前記変位検出部は、前記第1方向および前記第2方向に伝達された前記圧力変動による前記カンチレバーの2回の撓み変形に応じた2つの変位を検出し、前記接触検出手段は、前記変位検出部によって検出された前記カンチレバーの前記2つの変位の大きさおよびタイミングの差に基づいて、前記物体の接触位置および接触圧を検出する。
【0014】
さらに、本発明の第
6の発明に係る接触センサでは、前記中空部材は、前記圧力変動を前記圧力伝達媒体に伝達不能な不感領域(例えば、実施形態での不感領域112)を備え、前記変位検出部は、前記不感領域を跨いだ前記中空部材に対する前記物体の接触移動に起因した複数回の前記圧力変動による前記カンチレバーの複数回の撓み変形に応じた複数の変位を検出し、前記接触検出手段は、前記変位検出部によって検出された前記カンチレバーの前記複数の変位のタイミングに基づいて、前記不感領域を跨いだ前記物体の接触移動の方向および接触位置を検出する。
【0015】
また、本発明の第
7の発明に係る接触入力装置は、
圧力伝達媒体を内部に有し、物体の接触による圧力変動を前記圧力伝達媒体に伝達可能な中空部材(例えば、実施形態での中空部材101)と、前記中空部材または前記中空部材の内部に配置され、前記圧力変動に応じた検出信号を出力する少なくとも1つの圧力変動検出部(例えば、実施形態での圧力センサ1)と、前記圧力変動検出部から出力された前記検出信号に基づいて前記物体の接触位置および接触圧を検出する接触検出手段(例えば、実施形態での信号処理回路103)と、を備え、前記圧力変動検出部は、前記圧力伝達媒体が流通可能な開口(例えば、実施形態での連通開口11)を有する本体部(例えば、実施形態での本体部3)と、先端部(例えば、実施形態での先端部4b)が自由端かつ基端部(例えば、実施形態での基端部4a)が前記本体部に片持ち状に支持された状態で前記開口を塞ぐように配置され、前記圧力変動に応じて撓み変形するカンチレバー(例えば、実施形態でのカンチレバー4)と、前記カンチレバーの撓み変形に応じた変位を検出する変位検出部(例えば、実施形態での変位測定部5)と、を備え、前記接触検出手段は、少なくとも1つの前記圧力変動検出部の前記変位検出部によって検出された前記カンチレバーの複数の前記変位の大きさおよびタイミングの差に基づいて、前記物体の接触位置および接触圧を検出し、前記中空部材の内部に配置された複数の前記圧力変動検出部を備え、前記圧力変動検出部の前記本体部は、キャビティ(例えば、実施形態でのキャビティ10)を備え、前記本体部の前記開口は、前記キャビティの内部と外部とを連通し、前記カンチレバーは、前記キャビティの内部と外部との圧力差に応じて撓み変形し、前記接触検出手段は、複数の前記変位検出部によって検出された複数の前記カンチレバーの前記変位の大きさと、複数の前記変位検出部によって検出された複数の前記カンチレバー間の前記変位のタイミングの差と、に基づいて前記物体の接触位置および接触圧を検出し、前記中空部材は、管状に形成され、前記中空部材の長手方向に沿って設けられ、押圧操作によって弾性変形可能かつ前記押圧操作に応じて前記圧力変動を発生可能な複数の押圧操作部(例えば、実施形態でのキーパッド201のキー)を備え、前記中空部材の長手方向の第1端部および第2端部に第1および第2の前記圧力変動検出部を備え、前記接触検出手段は、前記第1および第2の前記圧力変動検出部の前記変位検出部によって検出された第1および第2の前記カンチレバーの前記変位の大きさと、前記第1および第2の前記カンチレバー間の前記変位のタイミングの差と、に基づいて、前記複数の押圧操作部のうち何れの前記押圧操作部が押圧操作されたかを検出する接触センサと、前記接触検出手段によって検出された前記押圧部に応じた入力信号を出力する入力信号出力部(例えば、実施形態での信号処理回路103)と、を備える。
また、本発明の第8の発明に係る接触入力装置は、圧力伝達媒体を内部に有し、物体の接触による圧力変動を前記圧力伝達媒体に伝達可能な中空部材(例えば、実施形態での中空部材101)と、前記中空部材または前記中空部材の内部に配置され、前記圧力変動に応じた検出信号を出力する少なくとも1つの圧力変動検出部(例えば、実施形態での圧力センサ1)と、前記圧力変動検出部から出力された前記検出信号に基づいて前記物体の接触位置および接触圧を検出する接触検出手段(例えば、実施形態での信号処理回路103)と、を備え、前記圧力変動検出部は、前記圧力伝達媒体が流通可能な開口(例えば、実施形態での連通開口11)を有する本体部(例えば、実施形態での本体部3)と、先端部(例えば、実施形態での先端部4b)が自由端かつ基端部(例えば、実施形態での基端部4a)が前記本体部に片持ち状に支持された状態で前記開口を塞ぐように配置され、前記圧力変動に応じて撓み変形するカンチレバー(例えば、実施形態でのカンチレバー4)と、前記カンチレバーの撓み変形に応じた変位を検出する変位検出部(例えば、実施形態での変位測定部5)と、を備え、前記接触検出手段は、少なくとも1つの前記圧力変動検出部の前記変位検出部によって検出された前記カンチレバーの複数の前記変位の大きさおよびタイミングの差に基づいて、前記物体の接触位置および接触圧を検出し、前記中空部材に形成された開口部(例えば、実施形態での開口部111)に配置された複数の前記圧力変動検出部を備え、前記本体部の前記開口は、前記中空部材の内部と外部とを連通し、前記カンチレバーは、前記中空部材の内部と外部との圧力差に応じて撓み変形し、前記接触検出手段は、複数の前記変位検出部によって検出された複数の前記カンチレバーの前記変位の大きさと、複数の前記変位検出部によって検出された複数の前記カンチレバー間の前記変位のタイミングの差と、に基づいて前記物体の接触位置および接触圧を検出し、前記中空部材は、管状に形成され、前記中空部材の長手方向に沿って設けられ、押圧操作によって弾性変形可能かつ前記押圧操作に応じて前記圧力変動を発生可能な複数の押圧操作部(例えば、実施形態でのキーパッド201のキー)を備え、前記中空部材の長手方向の第1端部および第2端部に第1および第2の前記圧力変動検出部を備え、前記接触検出手段は、前記第1および第2の前記圧力変動検出部の前記変位検出部によって検出された第1および第2の前記カンチレバーの前記変位の大きさと、前記第1および第2の前記カンチレバー間の前記変位のタイミングの差と、に基づいて、前記複数の押圧操作部のうち何れの前記押圧操作部が押圧操作されたかを検出する接触センサと、前記接触検出手段によって検出された前記押圧部に応じた入力信号を出力する入力信号出力部(例えば、実施形態での信号処理回路103)と、を備える。
また、本発明の第9の発明に係る接触入力装置は、前記圧力変動検出部の前記本体部は、前記中空部材の外部に配置されたキャビティ(例えば、実施形態でのキャビティ10)を備え、前記本体部の前記開口は、前記キャビティの内部と前記中空部材の内部とを連通し、前記カンチレバーは、前記キャビティの内部と前記中空部材の内部との圧力差に応じて撓み変形する。
【0016】
また、本発明の第
10の発明に係る接触入力装置は、
第1の発明から第3の発明のいずれか1つに記載の接触センサと、前記接触検出手段によって検出された前記接触位置に応じた入力信号を出力する入力信号出力部(例えば、実施形態での信号処理回路103)と、を備える。
【0017】
また、本発明の第
11の発明に係る電子機器は、
第7の発明から第10の発明のいずれか1つに記載の接触入力装置を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接触センサによれば、中空部材を各種の形状や大きさを有するように形成することができ、軽量化および薄型化などが容易に可能であり、汎用性を向上させることができる。さらに、物体の接触位置の近傍に電極や電気配線を設ける必要が無く、液体などに対する特別なシール構造を設ける必要が無く、構造が複雑化することを防止することができる。さらに、中空部材を形成する材料および圧力伝達媒体を成す物質の光透過率を適宜に設定することができ、所望の光透過率を容易に確保することができる。さらに、付加的な特別な構造または構成要素を設ける必要無しに接触位置および接触圧を同時に検出することができる。さらに、外部からの電圧印加が不要であり、消費電力の増大を防止することができる。
【0019】
本発明の接触入力装置によれば、構造が複雑化することを防止しつつ軽量化および薄型化などが容易に可能であり、汎用性を向上させることができる。
さらに、第10の発明に係る接触入力装置によれば、1つの管状の中空部材によって複数の押圧操作部に対する操作を区別して検出することができ、例えば複数の押圧操作部のそれぞれに個別にセンサを設ける場合に比べて、構造を単純化することができる。
さらに、第11の発明に係る接触入力装置によれば、板状の中空部材の大きさにかかわらずに2次元座標位置を精度良く検出することができ、各種の大きさの中空部材によって汎用性を向上させることができる。
【0020】
本発明の電子機器によれば、構造が複雑化することを防止しつつ軽量化および薄型化などが容易に可能であり、汎用性を向上させることができる。
さらに、
第7の発明から第9の発明に係る接触入力装置を備える電子機器によれば、1つの管状の中空部材によって複数の押圧操作部に対する操作を区別して検出することができ、例えば複数の押圧操作部のそれぞれに個別にセンサを設ける場合に比べて、構造を単純化することができる。
さらに、第
10の発明に係る接触入力装置を備える電子機器によれば、板状の中空部材の大きさにかかわらずに2次元座標位置を精度良く検出することができ、各種の大きさの電子機器を容易に形成することができ、汎用性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(接触センサ)
以下、本発明の実施形態に係る接触センサについて添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係る接触センサ100の構成図である。
図2は本発明の第1の実施形態に係る圧力センサ1の構成を示す平面図である。
図3は、
図2中に示すA−A線に沿った断面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の接触センサ100は、物体の接触位置および接触圧を検出するセンサである。接触センサ100は、例えば、少なくとも2つの第1の圧力センサ1(1a)および第2の圧力センサ1(1b)と、中空部材101と、検出回路102と、信号処理回路103と、を備えている。
【0024】
(圧力センサの構成)
図2及び
図3に示すように、本実施形態の圧力センサ1は、所定の周波数帯域の圧力変動を検出するセンサである。圧力センサ1は、例えば、SOI基板2と本体部3とを一体的に固定した形状からなり、SOI基板2に形成されたカンチレバー4と、カンチレバー4に接続されてカンチレバー4の変位を測定する変位測定部5と、を備えている。
【0025】
SOI基板2は、シリコン支持層2a、シリコン酸化膜等の酸化層2bおよびシリコン活性層2cを熱的に張り合わせて形成されている。
本体部3は、例えば樹脂材で構成され、キャビティ10として機能する箱型の凹部10a、つまりキャビティ10の内部と外部とを連通する連通開口11が設けられた箱型の凹部10aを備えている。これに伴い、例えば、SOI基板2の酸化層2bおよびシリコン活性層2cには、本体部3の連通開口11に臨んで連通する連通開口2Aが形成されている。
【0026】
カンチレバー4は、SOI基板2のシリコン活性層2cからなり、平板状のシリコン活性層2cからカンチレバー4と枠部12とを形成するようにギャップ13を切り出すことによって形成されている。カンチレバー4は、基端部4aを固定端とし、先端部4bを自由端とした片持ち梁構造を形成し、基端部4aを中心としてキャビティ10の内部と外部との圧力差に応じて撓み変形可能とされている。
カンチレバー4の基端部4aには、該カンチレバー4が撓み変形し易くなるようにして、貫通孔15が形成されている。
【0027】
変位測定部5は、カンチレバー4の基端部4aの表面上に設けられたピエゾ抵抗20と、ピエゾ抵抗20に接続された配線部21と、カンチレバー4の変位を検出する検出回路102と、を備えている。
ピエゾ抵抗20は、カンチレバー4の撓み量(変位量)に応じて電気抵抗値が変化する抵抗素子であり、
図2におけるカンチレバー4の短手方向において、貫通孔15を挟んだ両側に対となって配置されている。これら一対のピエゾ抵抗20は、導電性材料からなる配線部21を介して相互に電気的に接続されている。検出回路102は一対のピエゾ抵抗20に接続され、ピエゾ抵抗20の電気抵抗値変化に基づいてカンチレバー4の変位を検出する。
【0028】
この変位測定部5において、検出回路102を通じてピエゾ抵抗20に所定電圧が印加されると、この電圧印加に起因する電流は、貫通孔15を回り込むようにして、一方のピエゾ抵抗20から配線部21を経由して他方のピエゾ抵抗20に流れる。これによって、検出回路102は、カンチレバー4の変位(撓み変形)に応じて変化するピエゾ抵抗20の電気抵抗値変化を電気的な出力信号として取り出すことが可能である。変位測定部5は、この出力信号(センサ出力)に基づいて、カンチレバー4の変位を測定可能であり、キャビティ10の内部と外部との間に発生した圧力差を検出する。
【0029】
なお、ピエゾ抵抗20は、例えばリンなどのドープ剤(不純物)がイオン注入法や拡散法などの各種の方法によりドーピングされることで形成される。また、双方のピエゾ抵抗20は配線部21のみで電気的に導通するように形成されている。これによって、カンチレバー4周囲のシリコン活性層2cは、配線部21以外でピエゾ抵抗20双方が導通しないよう、エッチングされている。
また、ピエゾ抵抗20は、圧電薄膜であってもよい。この場合、カンチレバー4の基端部4aに加わる応力に応じて、起電力が発生する。検出回路102は、この起電力を検出することで、カンチレバー4の変位を検出する。
【0030】
(圧力センサの動作)
まず、上述した圧力センサ1を用いて、微小な圧力変動を検出する場合について、
図4及び
図5を用いて説明する。
初めに、
図4(A)に示す期間Aのように、キャビティ10の外部の圧力(以下、外圧Pout)と、キャビティ10内部の圧力(以下、内圧Pin)との圧力差がゼロである場合には、
図5(A)に示すように、カンチレバー4は撓み変形しない。
ここで、
図4(A)に示す時刻t1以降の期間Bのように、外圧Poutがステップ状に上昇すると、キャビティ10の外部と内部との間に圧力差が生じるので、
図5(B)に示すように、カンチレバー4はキャビティ10内部に向けて撓み変形する。
すると、カンチレバー4の撓み変形に応じてピエゾ抵抗20に歪みが生じ、電気抵抗値が変化するので、
図4(B)に示すように、圧力センサ1の出力信号が増大する。
【0031】
また、外圧Poutの上昇以降、ギャップ13を介してキャビティ10の外部から内部へと圧力伝達媒体が流動する。そのため、
図4(A)に示すように、内圧Pinは時間の経過とともに、外圧Poutよりも遅れながら、かつ外圧Poutの変動よりも緩やかな応答で上昇する。
その結果、内圧Pinが外圧Poutに徐々に近づくので、キャビティ10の外部と内部との圧力が均衡状態になり始め、カンチレバー4の撓みが徐々に小さくなり、
図4(B)に示すように上記出力信号が徐々に低下する。
そして、
図4(A)に示す時刻t2以降の期間Cのように、内圧Pinが外圧Poutに等しくなると、
図5(C)に示すように、カンチレバー4の撓み変形が解消されて元の状態に復帰し、
図4(B)に示すように、圧力センサ1の出力信号が再びゼロになる。
【0032】
このように、カンチレバー4の変位に基づいた出力信号の変動をモニタすることで、キャビティ10の外部の圧力変動を検出することができる。
特に、SOI基板2のシリコン活性層2cを用いて半導体プロセス技術によりカンチレバー4を形成できるので、従来の圧電素子に比べて薄型化(例えば、数十〜数百nm)し易い。したがって、微小な圧力変動の検出を精度よく行うことができる。
【0033】
(接触センサの構成)
2つの第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)は、中空部材101の内部の異なる位置に配置されている。
中空部材101は、物体の接触の押圧によって接触部分が変形可能、かつ押圧の解除によって変形前の形状に復帰可能な材料、例えば樹脂材などによって形成されている。中空部材101は、各種の気体や液体からなる圧力伝達媒体を内部に有し、外表面に対する物体の接触の押圧による接触部分の圧力変動を内部の圧力伝達媒体に伝達可能である。
中空部材101の内部に配置された各圧力センサ1において、キャビティ10の内部および外部には圧力伝達媒体が存在しており、物体の接触の押圧によって中空部材101の外表面の接触部分から圧力伝達媒体に伝達された圧力変動に応じて各圧力センサ1のカンチレバー4が撓み変形可能である。
【0034】
なお、例えば、中空部材101が透明または光透過率が所定値より高い材料により形成され、かつ圧力伝達媒体が空気などの透明または光透過率が所定値より高い物質とされた場合には、接触センサ100は所定値より高い光透過率を有する。
【0035】
検出回路102は、各圧力センサ1に対して、圧力伝達媒体の圧力変動に起因するカンチレバー4の撓み変形に応じた変位を検出し、この変位の検出信号を出力する。
信号処理回路103は、検出回路102から出力された検出信号を用いて、第1の圧力センサ1(1a)に対して検出された変位と第2の圧力センサ1(1b)に対して検出された変位との大きさおよびタイミングの差に基づいて、中空部材101の外表面に対する物体の接触位置および接触圧を検出する。
【0036】
例えば
図6に示すように、中空部材101の外表面に対する物体の接触の押圧に対し、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出された変位の大きさ(センサ出力Fa,Fb)は、圧力伝達媒体の圧力変動の大きさ、つまり中空部材101の外表面に対する物体の接触の押圧強度(接触圧)を示している。したがって、信号処理回路103は、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出された変位の大きさを用いて、物体の接触の押圧強度(接触圧)を検出する。
さらに、
図6に示すように、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出された変位のタイミング(つまり、センサ出力Fa,Fbに対応する時刻ta,tb)の差t(=tb−ta)は、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)の位置と接触位置との距離差dに対応している。この距離差dは、圧力伝達媒体における圧力変動の伝達速度vと、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出された変位のタイミングの差t(=tb−ta)との積(d=t×v)によって記述可能である。したがって、信号処理回路103は、中空部材101の内部における第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)間の所定の圧力伝達経路に対し、距離差dに応じて圧力伝達経路上の接触位置を検出する。
【0037】
(接触センサの動作)
以下に、本実施形態において、例えば
図1に示すように、接触センサ100の中空部材101が管状に形成され、この管状の中空部材101の延在方向(例えば、中空部材101が伸びる方向である長手方向など)の第1端部101Lに第1の圧力センサ1(1a)が配置され、第2端部101Rに第2の圧力センサ1(1b)が配置された場合の接触センサ100の動作について説明する。
【0038】
この管状の中空部材101の延在方向の第1端部101Lおよび第2端部101R間の適宜の位置に物体の接触による押圧Fが作用すると、この接触に起因する圧力変動は、圧力伝達媒体によって中空部材101の延在方向に沿って第1端部101Lおよび第2端部101Rに向かい伝達される。したがって、中空部材101の延在方向に沿って伝達された圧力変動は、第1端部101Lの第1の圧力センサ1(1a)と、第2端部101Rの第2の圧力センサ1(1b)とによって検出される。
【0039】
信号処理回路103は、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出回路102によって検出された変位の大きさを用いて、物体の接触の押圧強度(接触圧)を検出する。さらに、信号処理回路103は、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出回路102によって検出された変位のタイミングの差を用いて、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)の位置と物体の接触位置との距離差を検出する。そして、検出した距離差に応じて中空部材101の延在方向に沿った圧力伝達経路上の接触位置を検出する。
【0040】
上述したように本実施形態の接触センサ100によれば、中空部材101を各種の形状や大きさを有するように形成することができ、軽量化および薄型化などが容易に可能であり、汎用性を向上させることができる。さらに、物体の接触位置の近傍に電極や電気配線を設ける必要が無く、液体などに対する特別なシール構造を設ける必要が無く、構造が複雑化することを防止することができる。さらに、中空部材101を形成する材料および圧力伝達媒体を成す物質の光透過率を適宜に設定することができ、所望の光透過率を容易に確保することができる。さらに、付加的な特別な構造または構成要素を設ける必要無しに接触位置および接触圧を同時に検出することができる。さらに、外部からの電圧印加が不要であり、消費電力の増大を防止することができる。
【0041】
(第1変形例)
なお、上述した実施形態においては、例えば中空部材101の内部の圧力伝達媒体と同一の圧力伝達媒体が中空部材101の外部に存在する場合などにおいて、
図7に示す第1変形例に係る接触センサ100のように、中空部材101は内部と外部とを連通する連通開口部101aを備えてもよい。
この第1変形例によれば、中空部材101の内部の圧力は、連通開口部101aを通じて外部の圧力と同一になることから、外部圧力の変化による中空部材101の変形を抑制することができ、中空部材101の劣化や破損などの発生を防止することができる。
【0042】
(第2変形例)
なお、上述した実施形態においては、
図8に示す第2変形例に係る接触センサ100のように、圧力センサ1は中空部材101に形成された開口部111に配置されてもよい。
この第2変形例においては、管状の中空部材101の延在方向(例えば、中空部材101が伸びる方向である長手方向など)の第1端部101Lおよび第2端部101Rに開口部111が設けられている。そして、開口部111の内壁面と圧力センサ1の外面(例えば、SOI基板2や本体部3の端面など)とが接触し、開口部111によって圧力センサ1が支持されるようにして、開口部111に圧力センサ1が装着されている。本体部3およびキャビティ10は、中空部材101の外部に配置され、本体部3の連通開口11は、キャビティ10の内部と中空部材101の内部とを連通している。カンチレバー4は、キャビティ10の内部と中空部材101の内部との圧力差に応じて撓み変形する。
【0043】
(第3変形例)
なお、上述した第2変形例においては、例えば中空部材101の内部の圧力伝達媒体と同一の圧力伝達媒体が中空部材101の外部に存在する場合などにおいて、
図9に示す第3変形例に係る接触センサ100のように、圧力センサ1の本体部3はSOI基板2の酸化層2bおよびシリコン活性層2cと同一の形状、例えば環板状に形成され、キャビティ10は省略されてもよい。
この第3変形例においては、本体部3の連通開口11は、中空部材101の内部と外部とを連通している。カンチレバー4は、中空部材101の内部と外部との圧力差に応じて撓み変形する。
【0044】
(第4変形例)
なお、上述した実施形態においては、
図10に示す第4変形例に係る接触センサ100のように、中空部材101は、中空部材101の外表面に対する物体の接触の押圧に対して、圧力変動を圧力伝達媒体に伝達不能な不感領域112を備えてもよい。
不感領域112は、例えば、物体の接触の押圧によって接触部分が変形不能な領域であって、物体の接触の押圧によって変形可能な領域に比べて、より厚く形成されたり、より硬質な材料によって形成されている。
【0045】
この第4変形例において、検出回路102は、各圧力センサ1に対して、不感領域112を跨いだ中空部材101に対する物体の接触移動に起因した複数回(例えば、
図10に示す2回など)の圧力変動によるカンチレバー4の複数回の撓み変形に応じた複数の変位を検出する。信号処理回路103は、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出回路102によって検出された複数回の変位の大きさを用いて、物体の接触の押圧強度(接触圧)を検出する。さらに、信号処理回路103は、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出回路102によって検出された複数の変位のタイミングの差を用いて、不感領域112を跨いだ物体の接触移動の方向と、接触移動の始点位置および終点位置を検出する。
【0046】
例えば
図11に示すように、不感領域112を跨いだ物体の接触移動に起因して第1の圧力センサ1(1a)に対して、検出回路102によって、不感領域112を跨ぐ前後の2つの変位のタイミング(つまり、センサ出力Faに対応する2つの時刻ta1,ta2)が検出される。また、不感領域112を跨いだ物体の接触移動に起因して第2の圧力センサ1(1b)に対して、検出回路102によって、不感領域112を跨ぐ前後の2つの変位のタイミング(つまり、センサ出力Fbに対応する2つの時刻tb1,tb2)が検出される。
【0047】
ここで、不感領域112を跨ぐ前の第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出された変位のタイミング(つまり、センサ出力Fa,Fbに対応する時刻ta1,tb1)の差T1(=tb1−ta1)は、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)の位置と接触移動の始点位置との距離差に対応している。また、不感領域112を跨いだ後の第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出された変位のタイミング(つまり、センサ出力Fa,Fbに対応する時刻ta2,tb2)の差T2(=tb2−ta2)は、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)の位置と接触移動の終点位置との距離差に対応している。そして、不感領域112を跨ぐ前のタイミングの差T1と、不感領域112を跨いだ後のタイミングの差T2と、に対して、T1>T2の場合は、接触移動の方向が第1の圧力センサ1(1a)から第2の圧力センサ1(1b)に向かう方向である場合に対応している。また、T1<T2の場合は、接触移動の方向が第2の圧力センサ1(1b)から第1の圧力センサ1(1a)に向かう方向である場合に対応している。
【0048】
したがって、信号処理回路103は、先ず、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出された変位の大きさ(センサ出力Fa,Fb)を用いて、物体の接触の押圧強度(接触圧)を検出する。
さらに、信号処理回路103は、不感領域112を跨ぐ前の第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出された変位のタイミングの差T1を用いて、接触移動の始点位置を検出する。さらに、不感領域112を跨いだ後の第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出された変位のタイミングの差T2を用いて、接触移動の終点位置を検出する。さらに、これらのタイミングの差T1,T2を用いて、接触移動の方向を検出する。
【0049】
(第5変形例)
なお、上述した実施形態においては、
図12に示す第5変形例に係る接触センサ100のように、少なくとも3つの第1、第2および第3の圧力センサ1(1a,1b,1c)を備えてもよい。
この第5変形例においては、中空部材101は薄板状に形成され、3つの第1、第2および第3の圧力センサ1(1a,1b,1c)は、中空部材101に形成された3つの開口部111(111a,111b,111c)に配置されている。そして、開口部111の内壁面と圧力センサ1の外面(例えば、SOI基板2や本体部3の端面など)とが接触し、開口部111によって圧力センサ1が支持されるようにして、開口部111に圧力センサ1が装着されている。本体部3およびキャビティ10は、中空部材101の外部に配置され、本体部3の連通開口11は、キャビティ10の内部と中空部材101の内部とを連通している。カンチレバー4は、キャビティ10の内部と中空部材101の内部との圧力差に応じて撓み変形する。
【0050】
この第5変形例においては、信号処理回路103は、検出回路102から出力された3つの第1、第2および第3の圧力センサ1(1a,1b,1c)に対する検出信号を用いて、物体の接触の押圧強度(接触圧)に加えて、中空部材101の外表面上に設定された2次元座標系において中空部材101の外表面に対する物体の接触位置の2次元座標位置を検出する。
【0051】
例えば
図13に示すように、信号処理回路103は、第1、第2および第3の圧力センサ1(1a,1b,1c)に対して検出された変位の大きさ(センサ出力Fa,Fb,Fc)を用いて、物体の接触の押圧強度(接触圧)を検出する。
さらに、例えば
図13に示すように、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出回路102によって検出された変位のタイミング(つまり、センサ出力Fa,Fbに対応する時刻ta,tb)の差tab(=tb−ta)は、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)の位置と接触位置との距離差dabに対応している。また、第1および第3の圧力センサ1(1a,1c)に対して検出回路102によって検出された変位のタイミング(つまり、センサ出力Fa,Fcに対応する時刻ta,tc)の差tac(=tc−ta)は、第1および第3の圧力センサ1(1a,1c)の位置と接触位置との距離差dacに対応している。したがって、信号処理回路103は、中空部材101の外表面上に設定された2次元座標系において、距離差dab,dacに応じて2次元座標の接触位置を検出する。
【0052】
(第6変形例)
なお、上述した実施形態においては、
図14に示す第6変形例に係る接触センサ100のように、中空部材101が環状に形成されている場合には、中空部材101の内部に周方向を塞ぐように配置された1つの圧力センサ1を備えてもよい。
この第6変形例においては、圧力センサ1の本体部3はSOI基板2の酸化層2bおよびシリコン活性層2cと同一の形状、例えば環板状に形成され、キャビティ10は省略されている。本体部3の連通開口11は、中空部材101の内部における圧力伝達媒体の流通方向である周方向の第1方向側の第1方向部113aと第2方向側の第2方向部113bとを連通し、カンチレバー4は、第1方向部113aと第2方向部113bとの圧力差に応じて撓み変形する。
【0053】
この第6変形例に係る接触センサ100は、検出回路102から出力される検出信号と所定の第1閾値Vth1とを比較して比較結果の信号を出力する第1のコンパレータ114(114a)と、検出回路102から出力される検出信号と所定の第2閾値Vth2とを比較して比較結果の信号を出力する第2のコンパレータ114(114b)とを備えている。
この第6変形例においては、中空部材101の外表面に対する物体の接触の押圧に対して、周方向の第1方向および第2方向に圧力変動が伝達される。これによって、物体の接触位置から第1方向側に圧力センサ1へ向かう圧力伝達経路の距離と、物体の接触位置から第2方向側に圧力センサ1へ向かう圧力伝達経路の距離と、が異なる場合には、カンチレバー4に互いに逆方向の2回の撓み変形が生じる。したがって、検出回路102は、カンチレバー4の互いに逆方向の2回の撓み変形に応じた2つの変位を検出し、これら2つの変位の検出信号、例えば正の値を有する検出信号と負の値を有する検出信号とを出力する。
【0054】
第1および第2のコンパレータ114(114a,114b)の第1閾値Vth1および第2閾値Vth2は、圧力センサ1のカンチレバー4に生じる互いに逆方向の2回の撓み変形に対応して設定されている。例えば、検出回路102から出力された正の値を有する検出信号が所定の正の値の第1閾値Vth1よりも大きい値を有する場合に第1のコンパレータ114(114a)から出力されるON信号は、周方向の第1方向に伝達された圧力変動に応じてカンチレバー4に撓み変形が生じたことを示す。また、検出回路102から出力された負の値を有する検出信号が所定の負の値の第2閾値Vth2よりも小さい値を有する場合に第2のコンパレータ114(114b)から出力されるON信号は、周方向の第2方向に伝達された圧力変動に応じてカンチレバー4に撓み変形が生じたことを示す。
【0055】
信号処理回路103は、検出回路102から出力される2つの検出信号を用いて、物体の接触の押圧強度(接触圧)を検出することに加えて、第1および第2のコンパレータ114(114a,114b)から出力されるON信号のタイミングに基づいて、中空部材101の周方向における物体の接触位置を検出する。
例えば
図14に示す第1の押圧F1のように、物体の接触位置から第1方向側に圧力センサ1へ向かう圧力伝達経路の距離が、物体の接触位置から第2方向側に圧力センサ1へ向かう圧力伝達経路の距離よりも短い場合には、
図15に示すように、第1のコンパレータ114(114a)からON信号が出力された時刻t1の後の時刻t2に第2のコンパレータ114(114b)からON信号が出力される。また、例えば
図14に示す第2の押圧F2のように、物体の接触位置から第1方向側に圧力センサ1へ向かう圧力伝達経路の距離が、物体の接触位置から第2方向側に圧力センサ1へ向かう圧力伝達経路の距離よりも長い場合には、
図16に示すように、第2のコンパレータ114(114b)からON信号が出力された時刻t1の後の時刻t2に第1のコンパレータ114(114a)からON信号が出力される。したがって、信号処理回路103は、第1および第2のコンパレータ114(114a,114b)から出力されるON信号の順序と、これらのON信号のタイミングの差T(=t2−t1)とに応じて、中空部材101の周方向における物体の接触位置を検出する。
【0056】
なお、物体の接触位置から第1方向側に圧力センサ1へ向かう圧力伝達経路の距離と、物体の接触位置から第2方向側に圧力センサ1へ向かう圧力伝達経路の距離とが等しい場合には、カンチレバー4に生じる互いに逆方向の撓み変形が相殺する。したがって、中空部材101の周方向の第1方向および第2方向で圧力センサ1からの距離がほぼ等しくなる所定領域113cは、物体の接触に対する不感領域とされている。
【0057】
(第7変形例)
なお、上述した実施形態においては、
図17に示す第7変形例に係る接触センサ100のように、所定の配列線に沿って複数の圧力センサ1を配列してもよいし、所定の網目状に複数の圧力センサ1を配置してもよい。
この第7変形例においては、複数の圧力センサ1は中空部材101に形成された複数の開口部111に配置されてもよいし、複数のカンチレバー4が形成されたSOI基板2によって複数の圧力センサ1が構成され、このSOI基板2が中空部材101に形成された開口部111に配置されてもよい。そして、開口部111の内壁面と圧力センサ1の外面(例えば、SOI基板2や本体部3の端面など)とが接触し、開口部111によって圧力センサ1が支持されるようにして、開口部111に圧力センサ1が装着されている。圧力センサ1の本体部3はSOI基板2の酸化層2bおよびシリコン活性層2cと同一の形状、例えば環板状に形成され、キャビティ10は省略されている。本体部3の連通開口11は、中空部材101の内部と外部とを連通している。カンチレバー4は、中空部材101の内部と外部との圧力差に応じて撓み変形する。
この第7変形例においては、信号処理回路103は、複数の圧力センサ1に対して検出回路102から出力された複数の検出信号のうち、カンチレバー4の変位が最も大きい検出信号またはカンチレバー4の変位の応答が最も早い検出信号を用いて、この検出信号に対応する圧力センサ1の位置またはこの位置の近傍を、物体の接触位置であると検出する。
【0058】
なお、この第7変形例においては、例えば
図18(A),(B)に示すように、圧力センサ1に直接的に物体が接触して、この接触の押圧による接触部分の圧力変動が圧力センサ1によって検出されてもよい。この場合、さらに、例えば
図18(C)に示すように、複数の圧力センサ1を覆うカバー115などを備え、このカバー115を介して圧力センサ1に物体が接触するように構成してもよい。
【0059】
(接触入力装置)
以下、本発明の第1の実施形態に係る接触入力装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態の接触入力装置200は、例えばキーボードなどの入力装置であって、
図19に示すように、各種の文字、記号および機能の信号の出力が割り当てられた押圧操作可能な複数のキー201aを備えるキーパッド201と、上述した実施形態の接触センサ100と、を備えている。
【0060】
接触センサ100はキーパッド201の裏面側に配置され、操作者の押圧操作によって弾性変形可能なキーパッド201の各キー201aの接触の押圧による圧力変動を検出する。
接触センサ100の中空部材101は管状に形成され、キーパッド201の各キー201aの配列に対応して複数箇所で湾曲した形状を有している。この管状の中空部材101の延在方向の第1端部101Lには第1の圧力センサ1(1a)が配置され、第2端部101Rには第2の圧力センサ1(1b)が配置されている。
【0061】
接触センサ100の信号処理回路103は、予め、管状の中空部材101の延在方向に沿った圧力伝達経路上の位置と、キーパッド201の各キー201aの位置との対応関係のデータを記憶している。これによって、信号処理回路103は、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出回路102から出力された検出信号を用いて、中空部材101の延在方向に沿った圧力伝達経路上における物体(つまりキーパッド201の各キー201a)の接触位置を検出する。そして、検出した接触位置に応じてキーパッド201上で押圧操作されたキー201aを検出し、検出したキー201aに対して予め割り当てられている信号を外部に出力する。
【0062】
以下、本発明の第2の実施形態に係る接触入力装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態の接触入力装置210は、例えばタッチパネルなどの入力装置であって、
図20に示すように、平板状の接触操作部211と、上述した実施形態の第5変形例に係る接触センサ100と、を備えている。
接触操作部211は、操作者の押圧操作によって弾性変形可能かつ押圧操作に応じて圧力変動を発生可能である。
接触センサ100は接触操作部211の裏面側に配置され、操作者の押圧操作によって弾性変形可能な接触操作部211の圧力変動を検出する。
【0063】
接触センサ100の信号処理回路103は、第1、第2および第3の圧力センサ1(1a,1b,1c)に対して検出回路102から出力された検出信号を用いて、接触操作部211に対する押圧操作の押圧強度(接触圧)を検出する。さらに、信号処理回路103は、接触操作部211の表面上に予め設定された2次元座標系での接触位置の2次元座標を検出する。そして、検出した接触位置および接触圧の信号を外部に出力する。
【0064】
上述した第1または第2の実施形態の接触入力装置200,210によれば、構造が複雑化することを防止しつつ軽量化および薄型化などが容易に可能であり、汎用性を向上させることができる。
さらに、第1の実施形態に係る接触入力装置200によれば、1つの管状の中空部材101によって複数のキー201aに対する操作を区別して検出することができ、例えば複数のキー201aのそれぞれに個別にセンサを設ける場合に比べて、構造を単純化することができる。
さらに、第2の実施形態に係る接触入力装置210によれば、板状の接触操作部211の大きさにかかわらずに接触位置の2次元座標位置を精度良く検出することができ、各種の大きさの接触操作部211によって汎用性を向上させることができる。
【0065】
(電子機器)
上述した第1および第2の実施形態に係る接触入力装置200,210は、例えばコンピュータ装置や電子楽器などの各種の電子機器に備えることができる。
例えば、上述した第1の実施形態に係る接触入力装置200を備える電子鍵盤楽器においては、接触センサ100の中空部材101は管状に形成され、押圧操作可能な電子鍵盤楽器の複数の白鍵および黒鍵の配列に対応した形状を有している。接触センサ100の信号処理回路103は、予め、管状の中空部材101の延在方向に沿った圧力伝達経路上の位置と、電子鍵盤楽器の複数の白鍵および黒鍵の位置との対応関係のデータを記憶している。これによって、信号処理回路103は、第1および第2の圧力センサ1(1a,1b)に対して検出回路102から出力された検出信号を用いて、押圧操作された白鍵または黒鍵を検出し、検出した白鍵または黒鍵に対して予め割り当てられている音色の音出力信号を外部に出力する。
【0066】
また、例えば、上述した第2の実施形態に係る接触入力装置210を備える電子打楽器においては、接触センサ100の信号処理回路103は、予め、接触操作部211の表面上の2次元座標系での接触位置と、接触圧と、音色との対応関係のデータを記憶している。これによって、信号処理回路103は、第1、第2および第3の圧力センサ1(1a,1b,1c)に対して検出回路102から出力された検出信号を用いて、接触圧および接触位置を検出し、検出した接触圧および接触位置に対して予め割り当てられている音色の音出力信号を外部に出力する。
【0067】
上述した実施形態の電子機器によれば、構造が複雑化することを防止しつつ軽量化および薄型化などが容易に可能であり、汎用性を向上させることができる。
さらに、第1の実施形態に係る接触入力装置200を備える電子鍵盤楽器によれば、1つの管状の中空部材101によって複数の白鍵および黒鍵に対する操作を区別して検出することができ、例えば複数の白鍵および黒鍵のそれぞれに個別にセンサを設ける場合に比べて、構造を単純化することができる。
さらに、第2の実施形態に係る接触入力装置210を備える電子打楽器によれば、板状の接触操作部211の大きさにかかわらずに接触位置の2次元座標位置を精度良く検出することができ、各種の大きさの電子打楽器を容易に形成することができ、汎用性を向上させることができる。