(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記隔壁部は、前記基板が前記隔壁部を通過するとき、前記第1ガス空間と前記第2ガス空間を区画するためのガスバリアを形成するために不活性ガスを噴出する、前記基板の搬送方向に直交する幅方向に延在するスリット状の不活性ガス供給口を、前記隙間に面する前記隔壁部の側壁に備える、請求項1に記載の成膜装置。
前記隔壁部は、前記不活性ガス供給口を開口端とする不活性ガス流路の空間を備え、前記不活性ガスは、前記幅方向の両側から前記不活性ガス流路の空間に供給される、請求項2に記載の成膜装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該成膜装置では、フレキシブルなフィルムの両側の面にALDを用いて成膜することはできるが、フィルムは複数のローラによって搬送径路をジグザク状に蛇行しながら搬送され、フィルムは曲げられた状態で成膜される。このため、フィルムに形成された薄膜には内部ストレスが作用する。したがって、このような状態で成膜された薄膜は内部ストレスによってフィルムから剥がれ易く、膜質に問題が生じ易い。
【0006】
そこで、本発明は、プラズマALDを用いて搬送する基板に対して成膜する成膜装置であって、膜質が良好な薄膜を効率よく形成することができる成膜装置及びこの成膜装置を用いた成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、成膜用ガスと反応性ガスを用いて原子層単位で薄膜を形成する成膜装置である。
当該性膜装置は、
成膜容器と、
前記成膜容器内で成膜用の基板を直線状に搬送する搬送機構と、
前記成膜容器の内部空間の一部を、成膜用ガスを含む第1ガス空間と、反応性ガスあるいは前記反応性ガスのラジカルを含む第2ガス空間とに分離し、かつ、前記基板を搬送するとき、前記基板が前記第1ガス空間
の一部である第1ガス部分空間と前記第2ガス空間
の一部である第2ガス部分空間とを
複数回交互に通過するように前記基板の通過するスリット状の隙間を複数備え
た隔壁部と、を有し、
前記第1ガス部分空間は、前記第1ガス空間のうち前記基板の搬送経路に対して第1の側にある第1ガス主空間から突出して前記搬送経路を横切って、前記搬送経路の前記第1の側と反対の第2の側まで延びて空間が閉塞する領域であり、
前記第2ガス部分空間は、前記第2ガス空間のうち前記基板の搬送経路に対して前記第2の側にある第2ガス主空間から突出して前記搬送経路を横切って、前記搬送経路の前記第1の側まで延びて空間が閉塞する領域であり、
前記隔壁部は、前記第1ガス部分空間と前記第2ガス部分空間を分離するように、前記搬送経路を交差する。
【0008】
前記隔壁部は、前記基板が前記隔壁部を通過するとき、前記第1ガス空間と前記第2ガス空間を区画するためのガスバリアを形成するために不活性ガスを噴出する、前記基板の搬送方向に直交する幅方向に延在するスリット状の不活性ガス供給口を、前記隙間に面する前記隔壁部の側壁に備える、ことが好ましい。
【0009】
このとき、前記隔壁部は、前記不活性ガス供給口を開口端とする不活性ガス流路の空間を備え、前記不活性ガスは、前記幅方向の両側から前記不活性ガス流路の空間に供給される、ことが好ましい。
【0010】
前記隔壁部の前記側壁には、前記不活性ガス供給口を挟むように、前記幅方向に延在するスリット状の一対のガス排気口を備える、ことが好ましい。
【0011】
このとき、前記隔壁部は、前記一対のガス排気口を開口端とする一対の排気流路の空間を備え、前記一対の排気流路の空間において、前記幅方向に向けて不活性ガスが流れる、ことが好ましい。
【0012】
このとき、前記一対の排気流路の空間において前記不活性ガスは、互いに異なる方向に流れる、ことがより好ましい。
【0013】
また、前記搬送機構は、一対の回転ローラを含み、前記基板は、長尺状のフレキシブルなフィルムである。このとき、前記フィルムは、前記回転ローラの一方に巻き回された状態から前記回転ローラの他方に巻き取られる、ことが好ましい。
【0014】
このとき、前記回転ローラは、互いに異なる方向に回転することができ、前記フィルムの前記搬送方向は、異なる2方向に自在に選択される。
【0015】
本発明の他の一態様は、前記成膜装置を用いて行う成膜方法である。当該成膜方法では、前記基板はロールに巻かれたフィルムである。そして、当該成膜方法は、成膜時、前記フィルムを前記ロールから引き出して前記フィルムの成膜のために前記フィルムを搬送した後、搬送中成膜されたフィルムを巻き回して成膜処理ロールにする第1ステップと、前記フィルムの膜厚を厚くするために、前記成膜処理ロールから前記フィルムを再度引き出して搬送し、搬送中成膜されたフィルムを巻き取って新たな成膜処理ロールにする第2ステップと、を含む。前記第2ステップを繰り返すことにより、形成された膜の膜厚を目標の厚さにする。
【発明の効果】
【0016】
上述の成膜装置及び成膜方法によれば、膜質が良好な薄膜を効率よく形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(成膜方法の概要)
図1は、ALDを用いて成膜をする本実施形態の成膜装置の概要を説明する図である。
成膜装置は、成膜用ガスと反応性ガスを用いて原子層単位で基板に薄膜を形成する。成膜装置は、成膜容器1と、この成膜容器1内で成膜用の基板Fを直線状に搬送する図示されない搬送機構と、隔壁部2とを有する。
隔壁部2は、成膜容器の内部空間の一部を、成膜用ガスの雰囲気を形成する成膜用ガス空間(第1ガス空間)3と、反応性ガスあるいは反応性ガスのラジカルの雰囲気を形成する反応性ガス空間(第2ガス空間)4とに分離し、かつ、基板Fを搬送するとき、基板Fが成膜用ガス空間3と反応性ガス空間4とを交互に通過するように基板Fの通過するスリット状の隙間5を備える。隔壁部2は、成膜用ガス空間(第1ガス空間)3と反応性ガス空間(第2ガス空間)4とを基板Fの搬送径路に沿ってジグザグ状に区画することを特徴とする。
このような構成により、基板Fは直線状に搬送されるので、基板Fとしてフィルムを用いた場合、従来のようにフィルムは曲げられた状態で成膜されない。このため、形成された薄膜には内部ストレスが作用することもない。したがって、形成された薄膜の膜質は、従来に比べて向上する。また、基板Fがガラス基板である場合、従来のように成膜中、ガラス基板が曲げられることはないので破断する虞もない。なお、
図1に示す隔壁部2は、成膜用ガス空間3と反応性ガス空間4の突出する領域が矩形状になるように設けられているが、成膜用ガス空間3と反応性ガス空間4の突出する領域の形状は特に限定されず、後述する
図2に示す隔壁部2のように、例えば三角形状であってもよい。以下、本発明の成膜装置について詳細に説明する。
【0019】
図2は、本実施形態の成膜装置の概略構成図である。成膜装置10は、成膜用ガスと反応性ガスを用いて原子層単位で薄膜を形成する装置である。成膜装置10は、成膜容器12と、搬送機構14と、プラズマ生成ユニット16と、プラズマ生成空間仕切り壁17と、隔壁部18と、ガス供給ユニット20と、排気ユニット22と、を主に有する。隔壁部18が、
図1に示す隔壁部2に対応する。
【0020】
成膜装置10は、以下の構成を備える。
搬送機構14は、成膜容器12内で成膜用の基板を直線状に搬送する。
プラズマ生成ユニット16は、プラズマ生成電極を含む。このプラズマ生成電極は、成膜容器12内の、搬送中の基板の搬送経路に対向するように設けられ、電力の供給を受けることにより、成膜空間内の反応性ガスを用いてプラズマを生成する。
プラズマ生成空間仕切り壁17は、成膜容器12内の、基板の搬送経路とプラズマ生成電極との間に設けられ、プラズマ生成電極との間でプラズマ生成空間を形成する壁である。この壁は、プラズマの一部あるいはプラズマ中のイオンあるいはイオンから生成されるラジカルが通過することのできる貫通孔が、基板の搬送方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。
隔壁部18は、成膜容器12の内部空間の一部を、成膜用ガスの雰囲気を形成する成膜用ガス空間(第1ガス空間)18aと、反応性ガスあるいは反応性ガスのラジカルの雰囲気を形成する反応生成ガス空間(第2ガス空間)18bと、に分離する。さらに、隔壁部18は、基板を搬送するとき、基板が成膜用ガス空間18aと反応生成ガス空間18bとを交互に通過するように基板の通過するスリット状の隙間を複数備え、成膜用ガス空間18aと反応生成ガス空間18bとを基板の搬送径路に沿ってジグザグ状に区画する。
以下、成膜装置10の各構成を詳細に説明する。本実施形態では、成膜用基板として、極めて薄いガラス板や樹脂フィルムであって、ロール状に巻くことのできる長尺状のフレキシブルな基板を対象として説明する。したがって、以降の説明では基板Fの代わりに、フィルムFを用いる。なお、本発明で用いる成膜用基板は、フレキシブルな基板に限定されない。例えば、板状の硬い1枚の基板を成膜用基板とすることもできる。
【0021】
図1に示すように、成膜容器12の成膜空間内には、搬送機構14と、プラズマ生成ユニット16に属するプラズマ生成電極16aと、プラズマ生成空間仕切り壁17と、隔壁部18と、が主に設けられている。成膜容器12は、成膜容器12内の成膜空間を所定の圧力に維持し、あるいは減圧し、成膜空間内で成膜用基板を成膜処理するための容器である。成膜容器12の外周の壁面のそれぞれには、成膜空間内の雰囲気を成膜処理に適した温度にするために、加熱ヒータ24が設けられている。
【0022】
搬送機構14が搬送する成膜用基板は、ロール(回転ローラ14aあるいは回転ローラ14b)に巻かれたフレキシブルなフィルムFである。搬送機構14は、回転ローラ14a,14bを備え、成膜容器内でフィルムFを搬送する。回転ローラ14a,14bは図示されない駆動モータに接続され、駆動モータの回転により、回転ローラ14a,14bが回転するように構成されている。駆動モータの回転方向は選択することができる。回転ローラ14a,14bにはフィルムFが巻き回されており、フィルムFはロール状を成している。搬送機構14は、成膜するとき、回転ローラ14a,14bのいずれか一方を巻き取りローラとし、他方を送りローラとして回転させる。すなわち、回転ローラ14a,14bの回転により、フィルムFをロール(回転ローラ14b)に巻き回された状態から引き出し、回転ローラ14aが巻き取る。このとき、引き出されたフィルムFは成膜のために一方向に搬送された後、搬送中成膜されたフィルムFを回転ローラ14aは巻き取って成膜処理ロールにする。
図1では、フィルムFが回転ローラ14bから回転ローラ14aに搬送されて、回転ローラ14aで巻き取られることが図示されている。
【0023】
本実施形態では、フィルムFに形成される薄膜の膜厚を厚くするために、フィルムFへの成膜を繰り返し行うことが好ましい。このとき、搬送機構14は、成膜後のフィルムFを回転ローラ14aで巻き取って得られた成膜処理ロールを再度引き出して、回転ローラ14aから回転ローラ14bに向かって、すなわち、先の成膜中の搬送方向と反対方向に搬送することが好ましい。搬送中、フィルムFは成膜されて膜厚が厚くなる。回転ローラ14bは、成膜されたフィルムFを巻き取って新たな成膜処理ロールにする。この後、さらに膜厚を厚くするために、回転ローラ14bから回転ローラ14aに向かって、すなわち、先の成膜中の搬送方向と反対方向にフィルムFを搬送する。搬送中、フィルムFは成膜されて膜厚が厚くなる。回転ローラ14aは、成膜されたフィルムFを巻き取って新たな成膜処理ロールにする。このように、フィルムFの異なる方向への搬送を繰り返しながら、薄膜の膜厚を厚くすることにより、フィルムFに形成される薄膜の膜厚を目標の厚さにすることが好ましい。すなわち、回転ローラ14a,14bは、互いに異なる方向に回転することができ、フィルムFの搬送方向は、異なる2方向に自在に選択されることが好ましい。
【0024】
排気ユニット22は、ロータリポンプあるいはドライポンプ等の排気装置22a,22bを含む。排気ユニット22は、成膜容器12内の成膜空間及びプラズマの生成されるプラズマ生成空間内のガスを排気して、一定の圧力に維持する。排気装置22aは、後述するプラズマ生成空間内の反応性ガスを排気する。排気装置22bは、プラズマ生成電極16aより下方の、プラズマ生成空間を含む成膜空間内のガスを排気する。後述するように、排気装置22は、図示されない排気バルブを介して隔壁部18の排気口とガス管を通して接続されている。
【0025】
プラズマ生成ユニット16は、プラズマ生成電極16aと、接地電極16bと、マッチングボックス16cと、高周波電源16dと、を有する。プラズマ生成ユニット16は、成膜用ガスのフィルムFに吸着した成膜成分と反応する反応物質を生成する。成膜容器12内には、成膜容器12の断面を横切るように設けられた空間仕切り壁17が設けられている。プラズマ生成空間仕切り壁17は、フィルムFの搬送経路とプラズマ生成電極16aとの間に設けられている。
成膜容器12内のプラズマ生成電極16aは、板状の電極であり、フィルムFの搬送経路の上方で、フィルムFの搬送経路に沿って搬送経路に対向するように設けられている。プラズマ生成電極16aは、電力の供給を受けることにより、成膜空間内の反応性ガスを用いてプラズマを生成する。具体的には、プラズマ生成電極16aは、給電線により、成膜容器12の天井面からマッチングボックス16cを介して高周波電源16dに接続されている。高周波電源16dは、例えば13.56MHzの高周波電圧をプラズマ生成電極16aに供給する。
接地電極16bは、プラズマ生成空間仕切り壁17の面にプラズマ生成電極16aと対向するように設けられている。すなわち、プラズマ生成空間仕切り壁17のプラズマ生成電極16aと対向する対向面は、接地電極16bによって構成されている。
プラズマ生成電極16aに高周波電圧が印加されることにより、プラズマ生成電極16aと接地電極16bとの間の空間に供給された反応性ガスを用いてプラズマPが生成される。すなわち、プラズマ生成電極16aと接地電極16bとの間の空間はプラズマ生成空間となる。
【0026】
高周波電源16aに高周波電力を供給する給電線は、成膜容器12の天井面に設けられた孔を通して成膜容器12外のマッチングボックス16cに接続される。このとき、孔は、絶縁体16eでシールされる。また、プラズマ生成電極16aの外周には、石英板等を用いた絶縁体板16fが設けられている。これにより、プラズマ生成空間はプラズマ生成電極16aの上方の空間から画されている。
【0027】
本実施形態は、プラズマ生成電極16aと接地電極16bとが互いに対向し、電極間でプラズマを生成する容量結合プラズマ方式を用いるが、これ以外に、誘導結合プラズマや公知のプラズマ生成方式を用いることができる。また、本実施形態では、プラズマから得られるラジカル(ラジカル原子あるいはラジカル分子)を用いて成膜するが、プラズマを用いなくてもよい。例えば、反応活性の高いガス、例えばオゾン、水あるいはアンモニアを用いることができる。フィルムFの加熱温度を高くすることにより、反応活性を高めて、オゾン、水、アンモニア、窒素等を用いることができる。この場合、プラズマ生成ユニット16を用いなくてもよい。
【0028】
プラズマ生成空間を画する成膜容器12の一方の側壁(
図1中の右側の側壁)には、ガス供給孔が設けられている。このガス供給孔は、
図1に示されるように、後述する反応性ガス源20aと接続したガス供給管と接続されている。このガス供給孔を通して反応性ガスがプラズマ生成空間内に供給される。すなわち、反応性ガスは、成膜容器12の側壁から、プラズマ生成空間内に供給される。また、プラズマ生成空間を画する成膜容器12の他方の側壁(
図1中の左側の側壁)には、ガス排気孔が設けられている。このガス排気孔は、
図1に示されるように、排気装置22aと接続された排気管と接続されている。
【0029】
プラズマ生成空間仕切り壁17は、板状の絶縁部材から構成されている。プラズマ生成空間仕切り壁17は、フィルムFの搬送経路の上方で、搬送経路とプラズマ生成電極16aとの間に設けられ、プラズマ生成電極16aと対向し、プラズマ生成電極16aとの間でプラズマ生成空間を形成する。プラズマ生成電極16aと対向するプラズマ生成空間仕切り壁17の面は、接地電極16bにより構成されている。プラズマ生成空間仕切り壁17には、スリット状の貫通孔がフィルムFの搬送方向に沿って間隔をあけて設けられている。この貫通孔は、フィルムFの搬送方向と直交する方向に延びることが好ましい。この貫通孔には、プラズマの一部あるいはプラズマ中のイオンあるいはプラズマから生成されるラジカル原子あるいはラジカル分子が通過する。
【0030】
プラズマ生成空間仕切り壁17の下方には、隔壁部18が設けられている。隔壁部18は、成膜容器12を横断するように設けられている。
隔壁部18は、フィルムFの搬送径路に対してジグザグ状に横切っている。すなわち、隔壁部18は、プラズマ生成空間仕切り壁17の下方に位置する成膜容器12の内部空間の一部を、成膜用ガスの雰囲気を形成する成膜用ガス空間18aと、プラズマ生成空間仕切り壁17に設けられた貫通孔を通して反応性ガスあるいは反応性ガスのラジカル(ラジカル分子またはラジカル原子)を含んだ反応生成ガス空間18bと、に分離する。さらに、隔壁部18は、基板の通過するスリット状の隙間を備え、成膜用ガス空間18aと反応生成ガス空間18bとを基板の搬送径路に沿ってジグザグ状に区画する。したがって、フィルムFは搬送径路に沿って搬送中、成膜用ガス空間18aと反応生成ガス空間18bとを交互に通過する。成膜用ガスは、成膜用ガス源20bに接続されたガス供給管を通して成膜用ガス空間18aに供給される。したがって、成膜用ガス空間18aは、成膜用ガスを含む。フィルムFが、成膜用ガス空間18aと反応生成ガス空間18bを通過することによって、フィルムF上に成膜用ガスの成膜成分が吸着される。この吸着された成膜成分と、反応性ガスあるいは反応性ガスのラジカルとが反応して薄膜が形成される。すなわち、成膜用ガスとして、フィルムFに成膜成分が化学吸着するようなガスが選択されている。反応性ガスとして、成膜成分と反応するようなガスが選択される。フィルムFは、成膜用ガス空間18aと反応生成ガス空間18bとを交互に繰り返し通過するので、フィルムFに形成される薄膜は徐々に厚さが厚くなっていく。成膜用ガス空間18aは、成膜用ガスの雰囲気をつくり、反応性ガス空間18bでは、反応性ガスあるいは反応性ガスから得られるラジカル分子あるいはラジカル原子の雰囲気がつくられるので、フィルムFの両面には薄膜が形成される。
図2に示すように隔壁部18の両端、すなわち、隔壁部18の搬送径路の両端部分は、ジグザグ形状ではなく、回転ローラ14a,14bの上方に位置して直線状に成膜容器12の側壁に延びる。
本実施形態の好ましい形態として、フィルムFの搬送経路上において、フィルムFが反応生成ガス空間18bを通過する領域の鉛直上方に、搬送径路に沿って間隔をあけて設けられるプラズマ生成空間仕切り壁17の貫通孔が位置するように、ジグザグ形状の隔壁部18が設けられている。これにより、反応性ガスあるいは反応性ガスのラジカルがフィルムFに確実に供給される。したがって、この場合、隔壁部18のジグザグ形状の周期と、プラズマ生成空間仕切り壁17の間隔をあけて設けられる貫通孔の周期とが一致していることが好ましい。
【0031】
プラズマ生成空間仕切り壁17より下方の成膜容器12の一方の側壁(
図1の右側の側壁)には、ガス供給孔が設けられている。このガス供給孔には、パージガス源20cと接続された図示されないガス供給管が接続されている。パージガスは、不要となった成膜用ガス、反応性ガス、ラジカル分子、ラジカル原子等を効率よく排気するために用いるガスである。
【0032】
ガス供給ユニット20は、反応性ガス源20aと、成膜用ガス源20bと、パージガス源20cと、不活性ガス源20dと、とを主に有する。
反応性ガス源20aが供給する反応性ガスとして、例えば、O
2,O
3,H
2O,N
2O,N
2,NH
3等が用いられる。成膜用ガス源20bが供給する成膜用ガスとして、例えばTMA(トリメチルアルミニウム)、TEMAZ(テトラエチルメチルアミノジルコニウム)、TEMAHf(テトラエチルメチルアミノハフニウム)、アミノシラン等を含む有機金属化合物ガスが用いられる。パージガス源20cが供給するパージガスとして、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが用いられる。不活性ガス源20dが供給する不活性ガスとして、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが用いられる。不活性ガスとは、反応性ガスと成膜用ガスに対して反応しないガスをいう。
【0033】
(隔壁部18の説明)
図3(a)は、
図2に示す隔壁部18を詳細に説明する図であり、(b)は、隔壁部18に設けられたスリット状の隙間50に面する隔壁部18の側壁18cを説明する図である。
図4(a),(b)は、本実施形態の隔壁部の内部を説明する図である。
【0034】
隔壁部18は、フィルムFの搬送径路に対してジグザグ状に形成されているので、フィルムFが搬送径路に沿って搬送できるようにスリット状の隙間50が複数設けられている。隙間50は、フィルムFを通過できる程度であればよく、フィルムFと、隙間50に面する側壁面18cとの間の距離は例えば0.1〜5mmである。
この隔壁部18の隙間に面する側壁18cには、
図3(b)に示すように、フィルムFの搬送方向に直交する幅方向に延在するスリット状の不活性ガス供給口18dが設けられていることが好ましい。不活性ガス供給口18dは、フィルムFが隔壁部18を通過するとき、成膜用ガス空間18aと反応性ガス空間18bを区画するためのガスバリアを形成するために不活性ガスを噴出する。
【0035】
図3(b)には、より好ましい形態として、不活性ガス供給口18dを挟むように、フィルムFの搬送方向と直交する幅方向に延在するスリット状の一対のガス排気口18eを備える。ガス排気口18eは、余分な不活性ガスを吸引して成膜容器12外に排気する。
図4(a)に示されるように、隔壁部18の内部は、3層構造の空間を有しており、各層の空間は不活性ガス供給口18d及びガス排気口18eを開口端とするように構成されている。
【0036】
隔壁部18は、
図4(a)に示すように、不活性ガス供給口18dを開口端とする不活性ガス流路の空間18fを備え、不活性ガスは、フィルムFの搬送方向と直交する幅方向の両側から不活性ガス流路の空間18fに供給されることが、装置構成を実現する上で好ましい。空間18fには、
図3(a)に示されるように、不活性ガス源20dと接続された不活性ガス供給管62a,68aを介して隔壁部18の幅方向の両側から不活性ガスが供給される。
【0037】
さらに、隔壁部18は、
図4(a)に示すように、一対のガス排気口18eを開口端とする一対の排気流路の空間18gを備え、
図4(b)に示されるように、一対の排気流路の空間18gにおいて、幅方向に向けて不活性ガスが流れることが好ましい。一対の排気流路の空間18gにおいて不活性ガスは、ガス管60a,60b,64a,64b,66a,66b,70a,70bを介して互いに異なる方向に流れることが好ましい。ガス管60a,64a,66a,70aは、不活性ガス源20dと接続されており、不活性ガスを空間18gに供給する。一方、ガス管60b,64b,66b,70bは排気装置22bと接続されており、不活性ガスを吸引する。このように、不活性ガスを空間18gで常時流しつつ、ガス排気口18eから不活性ガスを吸引する。ガス吸気口18eは、不要な不活性ガスの他に、不要な成膜用ガスあるいは反応生成ガスを吸引してもよい。
【0038】
フィルムFは、成膜用ガスの成膜成分の吸着あるいは反応性ガスによる反応に要する時間は、例えば1m秒〜10秒であればよく、フィルムFの搬送速度と成膜用ガス空間18a及び反応性ガス空間18bを横切る距離は、吸着に要する時間及び反応に要する時間に応じて適宜選択することができる。また、フィルムFが1つの成膜用ガス空間18aと1つの反応性ガス空間18bを通過することを1サイクルとしたき、フィルムFが搬送ローラ14a,14b間を搬送される間に10〜300サイクルの通過をすることが好ましい。
【0039】
以上のように、隔壁部18は、成膜容器12の内部空間の一部を、成膜用ガス空間18aと、反応性ガス空間18bとに分離し、かつ、フィルムFを搬送するとき、フィルムFが成膜用ガス空間18aと反応性ガス空間18bとを交互に通過するようにフィルムFの通過するスリット状の隙間50を備え、成膜用ガス空間18aと反応性ガス空間18bとをフィルムFの搬送径路に沿ってジグザグ状に区画する。このため、フィルムFは、従来のように、複数のローラを用いてフィルムを曲げながら成膜することはないので、膜質が良好な薄膜を形成することができる。しかも、フィルムFは、成膜用ガス空間18aと反応性ガス空間18bとを交互に繰り返し移動するので、薄膜を効率よく形成することができる。
【0040】
隔壁部18は、フィルムFが隔壁部18を通過するとき、ガスバリアを形成するために不活性ガスを噴出するスリット状の不活性ガス供給口18dを、隙間50に面する隔壁部18の側壁18cに備える。このため、成膜用ガス空間18aと反応性ガス空間18bとを確実に区画することができる。
【0041】
隔壁部18は、不活性ガス供給口18dを開口端とする不活性ガス流路の空間18fを備え、不活性ガスは、フィルムFの搬送方向と直交する幅方向の両側から不活性ガス流路の空間18fに供給される。このため、片側から不活性ガスを供給する場合に比べて、スリット状の不活性ガス供給口18dから均一なガス量を噴出することができる。
【0042】
隔壁部18の側壁面には、不活性ガス供給口18dを挟むように、幅方向に延在するスリット状の一対のガス排気口18eを備える。このため、不活性ガス供給口18dから噴出し不要となった不活性ガスをガス排気口18eは確実に回収することができる。
特に、隔壁部18は、一対のガス排気口18eを開口端とする一対の排気流路の空間18gを備え、空間18gにおいて、フィルムFの搬送方向と直交する幅方向に向けて不活性ガスが流れる。このため、不活性ガスの吸引排気を均一かつ安定して行うことができる。
さらに、一対の排気流路の空間18gにおいて、
図4(b)に示すように、不活性ガスが互いに異なる方向に流れる。このため、排気管を隔壁部18の幅方向の両側から効率よく配管することができ、コンパクトな装置構成とすることができる。
【0043】
また、回転ローラ14a,14bは、互いに異なる方向に回転することができ、フィルムFの搬送方向を自在に選択できるので、フィルムFの搬送方向を逐次切り替えることができる。このため、フィルムFは、フィルムFに形成される膜の厚さが所望の厚さになるまで、成膜用ガス空間18a及び反応性ガス空間18bを交互に繰り返し移動し、しかも何度もフィルムFを往復させて移動させることができる。このため、効率よくフィルムFの成膜を行うことができる。
【0044】
以上、本発明の成膜装置及び成膜方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態および例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。