(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0028] 本明細書は、本発明の特徴を組み込んだ1つ以上の実施形態を開示する。開示される1つ又は複数の実施形態は本発明を例示するにすぎない。本発明の範囲は、開示される1つ又は複数の実施形態に限定されない。本発明は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって定義される。
【0022】
[0029] 記載された1つ又は複数の実施形態、及び本明細書で「一実施形態」、「ある実施形態」、「例示的実施形態」などに言及した場合、それは記載された1つ又は複数の実施形態が特定の特徴、構造又は特性を含むことができるが、それぞれの実施形態が必ずしも特定の特徴、構造又は特性を含まないことがあることを示す。さらに、このようなフレーズは、必ずしも同じ実施形態に言及するものではない。さらに、ある実施形態に関連して特定の特徴、構造又は特性について記載している場合、明示的に記載されているか、記載されていないかにかかわらず、このような特徴、構造又は特性を他の実施形態との関連で実行することが当業者の知識にあることが理解される。
【0023】
[0030] 本発明の実施形態はハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はそれらの任意の組合せで実施することができる。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサで読み取り、実行することができる機械読み取り式媒体に記憶した命令として実施することもできる。機械読み取り式媒体は、機械(例えば、計算デバイス)で読み取り可能な形態で情報を記憶するか、又は伝送する任意の機構を含むことができる。例えば、機械読み取り式媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)、及びその他を含むことができる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令を、本明細書では特定の行為を実行するものとして記述することができる。しかしながら、このような記述は便宜的なものにすぎず、このような行為は実際には計算デバイス、プロセッサ、コントローラ、又はファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行する他のデバイスの結果であることを認識されたい。
【0024】
[0031] このような実施形態を詳述する前に、本発明の実施形態を実施することができる例示の環境を提示することが有用であろう。
【0025】
[0032]
図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えば、UV放射又はその他の任意の好適な放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1位置決めデバイスPMに接続されたマスク支持構造(例えば、マスクテーブル)MTと、を含む。装置は、また、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2位置決めデバイスPWに接続された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WT又は「基板支持体」を含む。装置は、パターニングデバイスMAによって基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に放射ビームBに与えられるパターンを投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSをさらに含む。
【0026】
[0033] 照明システムは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気型等の光学コンポーネント又はそれらの任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0027】
[0034] マスク支持構造は、パターニングデバイスを支持、すなわち、その重量を支えている。マスク支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。このマスク支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械式、真空式、静電式等のクランプ技術を使用することができる。マスク支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。マスク支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置に来るようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
【0028】
[0035] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0029】
[0036] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
【0030】
[0037] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム及び静電気光学システム、又はそれらの任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
【0031】
[0038] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
【0032】
[0039] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブル又は「基板支持体」(及び/又は2つ以上のマスクテーブル又は「マスク支持体」)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブル又は支持体を並行して使用するか、又は1つ以上の他のテーブル又は支持体を露光に使用している間に1つ以上のテーブル又は支持体で予備工程を実行することができる。
【0033】
[0040] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部が、水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆われ得るタイプでもよい。液浸液は、例えばマスクと投影システムの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。液浸技術を使用して、投影システムの開口数を増加させることもできる。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムと基板との間に液体が存在するというほどの意味である。
【0034】
[0041]
図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを含むビームデリバリシステムBDを用いて放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0035】
[0042] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するように構成されたアジャスタADを含んでいてもよい。通常、イルミネータの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調整することができる。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを含んでいてもよい。イルミネータILを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0036】
[0043] 放射ビームBは、マスク支持構造(例えば、マスクテーブルMT)上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスクMA)に入射し、パターニングデバイスによってパターン形成される。マスクMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2の位置決めデバイスPW及び位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)を用いて、基板テーブルWTを、例えば様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めするように正確に移動させることができる。同様に、第1位置決めデバイスPMと別の位置センサ(
図1には明示されていない)とを用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めできる。一般に、マスクテーブルMTの移動は、第1位置決めデバイスPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現することができる。同様に、基板テーブルWT又は「基板支持体」の移動は、第2ポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか又は固定してもよい。マスクMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に位置してもよい(スクライブレーンアライメントマークとして公知である)。同様に、マスクMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0037】
[0044] 図示の装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
【0038】
[0045] 1.ステップモードでは、マスクテーブルMT又は「マスク支持体」及び基板テーブルWT又は「基板支持体」は基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光することができるように、基板テーブルWT又は「基板支持体」がX方向及び/又はY方向に移動させられる。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で結像されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
【0039】
[0046] 2.スキャンモードでは、マスクテーブルMT又は「マスク支持体」及び基板テーブルWT又は「基板支持体」は同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。マスクテーブルMT又は「マスク支持体」に対する基板テーブルWT又は「基板支持体」の速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
【0040】
[0047] 3.別のモードでは、マスクテーブルMT又は「マスク支持体」はプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWT又は「基板支持体」を移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWT又は「基板支持体」を移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に適用できる。
【0041】
[0048] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0042】
[0049]
図2は、従来技術によるメトロロジフレームを示す。メトロロジフレームMFは、投影システム(
図1のPS)の少なくとも一部に接続され、投影システムに基準を提供してもよい。Zerodur(商標)製の格子プレートGPをメトロロジフレームMFに搭載して、格子GRを基板テーブル(
図1のWT)に提供されたエンコーダが使用して投影システムに対する基板テーブルの位置を測定することができる。あるいは、基板テーブルWT(
図1)に「格子プレート」を搭載し、メトロロジフレームにエンコーダを搭載してメトロロジフレームに対する基板テーブルの位置を測定してもよい。同様の周波数範囲内の動力学を有するメトロロジフレームMF及び格子プレートGPを合体させてもよい。メトロロジフレームMF(又は実際、冷却される他の任意の表面)にとって重要な外乱力がフローによって誘発された振動であり、これが、メトロロジフレームMF及び、振動問題における共鳴マウントのために、格子プレートGPの両方の問題を引き起こすことがある。格子プレートGPは、移動する基板テーブルによって引き起こされる乱流による振動も受けることがある。オイルダンパーODなどのダンパーを用いてメトロロジフレームMFと格子プレートGPとの間の共鳴マウント内の振動を減衰させることができる。
【0043】
[0050]
図3は、リソグラフィ装置のコンポーネントがメトロロジフレームを備える本発明のある実施形態を示す。本発明のこの実施形態は、メトロロジフレームMF及び格子プレートGPの機能を1つの構造に統合する。格子GRは、メトロロジフレームMF上に刻印されている。格子は上部の保護層で保護され得る。メトロロジフレームMFは、アルミニウム又はSiSiCから形成されてもよい。SiSiCの方が剛性特性(すなわち動力特性)に優れており、CTE(熱膨張係数)は1/10である。メトロロジフレームMFは、メトロロジフレームMFに温度制御媒体を提供するチャネルCHを備えてもよい。チャネルは、熱負荷がメトロロジフレームMFの中心に達するのを回避するようにメトロロジフレームMFの表面付近に提供してもよい。温度制御媒体は、水であってもよく、又は二相冷却媒体、例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国仮出願第61/477,496号及びUS61/587,344号に関連して詳述するCO
2であってもよい。CO
2を使用することで、チャネル内を流れる流体の現在のフローは減少するため、メトロロジフレームMF(又は冷却が必要なその他の表面)の現在のフローに誘発された振動の問題が解決される。CO
2の熱伝達効率は、実際の現在のフローでは水と比べてはるかに高い。アルミニウムのメトロロジフレームMFは、小さい温度感受性を有していてもよく、その一方で冷却領域が広く対流質量が大きく冷却能力が高いために熱質量が大きく、さらにチャネルへの伝導率が極めて高い。アルミニウムのメトロロジフレームMFは比較的大きい熱膨張係数を有していてもよく、フレームは一定の温度上昇を前提としてその膨張率は比較的大きい。これは例えば、ミリケルビン温度上昇が小さくなるCO
2の極めて大きい熱伝達係数を用いて温度上昇を防止することによって解決することができる。さらに、これは、変形測定システムで変形を測定することで解決できるか、又は埋め合わせることができる。変形は、メトロロジフレームMFに提供されたZerodur(商標)製のバーZBを備える変形測定システムを有することで測定できる。バーZBは一点FFでメトロロジフレームMFの残り部分に固定されることが可能であり、反対側はメトロロジフレームの残り部分に対して可動自在であってもよい。容量センサCSなどのセンサを用いて、Zerodur(商標)の端点とメトロロジフレームMFとの間の相対移動を測定することができる。このために、容量センサはメトロロジフレームの第1部分に提供された第1の電極と、メトロロジフレームの第2部分、例えば、バーZBに提供された第2電極と、を含んでもよく、容量センサは、電極間の変位を決定してメトロロジフレームの変形を測定できる。変形測定値を用いてメトロロジシステムを調整してメトロロジフレームの変形を補償することができる。図では第1方向の2つの変形測定システムを示しているが、それ以上の数の変形測定システムを用いて多方向に変形を測定できる。例えば、第1方向に対して垂直な第2方向に変形を測定して第2方向の変形を補償することも可能である。
【0044】
[0051]
図4は、メトロロジフレームの形態の本発明の別の実施形態を示す。次に、
図3と同様に変形測定システムを用いて変形が測定される。測定結果は、変形測定システムに接続された動作可能な変形コントローラDMCへ送信され得る。変形測定値の関数としてのチャネルグループ内の二相媒体の圧力を調整するように構築されプログラミングされた圧力制御システムは、圧力を調整することでチャネルグループの温度を調整することができる。二相媒体の熱伝達係数は極めて大きいため、微小な温度上昇を制御して変形を制御することができる。局所的な熱負荷衝撃は、CO
2によって十分に中和することができることに留意されたい。より局所的な熱負荷の効果で局所的に流速が上昇するので、二相冷却媒体の熱伝達係数が増加してホットスポットの衝撃を中和する。メトロロジフレームに、各グループ内の温度を個別に制御してメトロロジフレームの変形を複数の自由度で制御する個別の変形コントローラDMC、温度制御システム及び変形測定システムを備える複数のチャネルグループを提供してもよい。チャネルはチャネルグループにグループ化されることが可能であり、各グループは、自身の変形コントローラDMCに接続された自身の温度制御システムを備えていてもよい。例えば、
図4のメトロロジフレームでは、メトロロジフレームMFの最上部の変形コントローラDMCを用いてメトロロジフレームの最上部のチャネルグループCHを制御して変形を最小限にすることができる。
【0045】
[0052]
図5(a)及び
図5(b)は、リソグラフィ装置部が光学要素を備える本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では、光学要素はミラーである。この実施形態では、ミラーはガラス又はセラミック材料などの熱膨張係数(CTE)が小さい材料で形成されたミラー本体MBを含んでもよい。
光学要素は金属から形成されてもよい。ミラー本体MBの1つの表面には、従来技術で公知の反射コーティングを施してもよい。ミラー本体は、ミラー本体MBの表面付近へ平行に進展する2つのチャネルCH AとCH Bとを備える。水でもよいが、好ましくは、CO
2などの二相媒体である温度制御媒体が2つのチャネルCH A及びCH Bを通過する。チャネルCH Aを流れる温度制御媒体の温度がチャネルCH Bを流れる温度制御媒体の温度と同じ場合、ミラーは
図5(a)に示すように平坦なままである。しかしながら、一方のチャネル内の温度制御媒体の温度と他方のチャネル内の温度制御媒体の温度とが異なる場合、ミラーは変形する。例えば、
図5(b)は、CH A内の温度がCH Bよりも小さい場合の変形を示す。
【0046】
[0053]
図5(a)及び
図5(b)は、ミラーの断面図を示し、従って、2つのそれぞれの表面付近の2つのチャネルCH A及びCH Bのみを示していることを理解されたい。実際には、複数の並列のチャネルCH Aと複数の並列のチャネルCH Bとがあり、ミラー本体MBの実質的に全表面にわたって温度制御チャネルが広がっている。同様に、そのような制御が特に必要なミラー表面の領域にのみ隣接して温度制御チャネルを配置してもよい。
【0047】
[0054] 水などの単相温度制御媒体を使用してもよいが、単相媒体よりも二相媒体の方が好まれる。大きい熱フローを伝達するために必要であるのはごく小さいフローなので、フローに誘発されたミラーの変形は圧倒的に少ない。
【0048】
[0055]
図5(a)及び
図5(b)の実施形態は、熱によるミラーのたわみを回避したい状況に特に適している。しかしながら、アルミニウムなどのCTEがより大きい材料をCTEが小さい材料で置き換えた場合、同じ原理を用いて所望のミラーのたわみを制御することができる。
【0049】
[0056]
図6(a)及び
図6(b)の実施形態で、ミラー本体MBは、アルミニウムなどの熱膨張係数がより大きい材料から形成される。この実施形態では、ミラー本体MBの表面から異なる距離にある2つの第1温度制御チャネルCH Aのグループと、やはりミラー本体の表面から異なる距離にある2つの第2温度制御チャネルCH Bのグループとが提供されている。温度が異なる2つのグループに温度制御媒体を選択的に提供することで、ミラーを
図6(b)に示すように変形させることができる。ここでの1つのオプションは、AのチャネルグループにCO
2を供給する1つのシステムを提供し、BのチャネルグループにCO
2を供給する第2システムを提供することである。
【0050】
[0057] チャネルグループ数を増やして制御の度合いを上げるという別のオプションを
図7(a)及び
図7(b)に示す。3つ以上のチャネルグループを提供することもでき、各チャネルグループは、独立した温度制御のために自身のCO
2供給源を備えてもよい。チャネルグループ数を増やすとそれらの間の温度差が小さくなり、チャネル間の応力が低下する。この結果、同じ厚さの材料の全体にわたって温度差が減少するために、システム全体の熱流量が低下する。そのためにエネルギー消費が低下し、熱制御が向上する。
【0051】
[0058] また、使用時に選択された領域の熱制御のみが必要なミラー(又はその他のコンポーネント)の全体にわたって熱制御を提供する必要はないということを理解されたい。この概略を
図8(a)及び
図8(b)に示す。
図8(a)は、使用時に画像2が、この例では、左右の領域に形成されたミラー1を概略的に示す。画像が一貫してこれらの領域にのみ形成される場合、これらの領域にのみ熱制御を提供すれば十分である。露光及び画像形成に使用される領域3を示す
図8(b)にこれを図示する。熱制御はこれらの領域にのみ適用されればよく、ミラーのその他の領域には全く熱制御を提供しないか、又はより感受性が低い熱制御を提供すればよい。
【0052】
[0059] 光学要素にメトロロジシステムに関連して上述した変形測定システムのようなシステムを提供することができることを理解されたい。すなわち、光学要素は、光学要素の第1部分に提供された第1電極と、光学要素の第2部分に提供された第2電極と、を備える容量センサを備えてもよく、上記容量センサは、電極間の変位を決定して素子の変形を決定することができる。あるいは、光学要素は、変形を測定する干渉計を備えてもよい。また、変形測定システムに動作可能に接続された変形コントローラを提供してもよく、温度制御システムは、チャネルグループ内の二相媒体の圧力を調整するように構築されプログラミングされ、例えば、変形測定システムによる変形測定値の関数としてのチャネルグループの温度を調整する圧力制御システムであってもよい。
【0053】
[0060] あるいは、光学要素の変形は、画像の位置、焦点又はその他の光学パラメータを決定することによって間接的に決定され、かつ、そのようなパラメータ内にエラーが検出された場合に、温度制御システムにフィードバックされて補正調整を実行する補正信号を生成することによって間接的に決定されることができる。
【0054】
[0061] CO
2などの二相(液体と気体)温度制御媒体の使用が特に好ましい。これは、二相システムでは局所圧力が直ちに局所流体温度を指示し、臨界速度が単相液体専用システム内の臨界速度であるチャネル内の冷却流体の速度ではなく液相内の音の速度であることから、水などの単相媒体よりも応答時間が速いためである。従って、二相システムは極めて高速であり、二相媒体に接している全表面にわたって均等な分散が得られる。チャネルグループには、例えば、上記の変形測定システムによって得られるフィードバックデータに応答して、若しくは、焦点又はその他の光学パラメータ制御システムに応答して温度制御媒体の温度を調整することができる制御システムから供給される温度制御媒体が提供される。
【0055】
[0062] ミラーの形態の光学要素は、リソグラフィ装置内での使用に特に有用であるが、例えば、レーザ及び望遠鏡などの他の形態の装置内でのミラーの焦点制御を含むその他の多数の可能な使用法を有する。少なくとも好ましい実施形態では、本発明はフローノイズが極めて小さく能動制御が高速のミラーの極めて良好な熱調節(ミリケルビン単位の温度制御解決策による)が可能である。
【0056】
[0063] さらに、複数の二相流体圧力制御ループがある本発明の好ましい実施形態では、n自由度でミラーの変形を制御することが可能である。特に、クロストークを回避するように好適に配置された冷却チャネルを備えた1+n個の制御ループがある場合、チャネルの局所温度を制御することでミラーをn自由度で変形させることができる。
【0057】
[0064] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用について特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。そのような代替的用途の文脈においては、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には理解されるであろう。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、上記及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、従って本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0058】
[0065] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用について特に言及してきたが、本発明は文脈によってはその他の用途、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、さらに状況が許すのであれば、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組合せを印加することでレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0059】
[0066] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極紫外線(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を包含する。
【0060】
[0067] 「レンズ」という用語は、文脈によっては、屈折、反射、磁気、電磁気及び静電型光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はそれらの組合せを指すことができる。
【0061】
[0068] 以上、本発明の特定の実施形態を説明してきたが、説明とは異なる別の方法でも本発明を実施することができることが理解される。例えば、本発明は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ以上のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に記憶したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとることができる。
【0062】
[0069] 上記の説明は例示的であり、限定的ではない。それ故、下記に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
【0063】
[0070] 特許請求の範囲を解釈するには、「発明の概要」及び「要約書」の項ではなく、「発明を実施するための形態」の項を使用するよう意図されていることを理解されたい。「発明の概要」及び「要約書」の項は、本発明者が想定するような本発明の1つ以上の例示的実施形態について述べることができるが、全部の例示的実施形態を述べることはできず、従って本発明及び添付の特許請求の範囲をいかなる意味でも限定しないものとする。
【0064】
[0071] 以上では、特定の機能の実施態様を例示する機能的構成要素及びその関係を用いて本発明について説明してきた。これらの機能的構成要素の境界は、本明細書では説明の便宜を図って任意に画定されている。特定の機能及びその関係が適切に実行される限り、代替的境界を画定することができる。
【0065】
[0072] 特定の実施形態に関する以上の説明は、本発明の全体的性質を十分に明らかにしているので、当技術分野の知識を適用することにより、過度の実験をせず、本発明の全体的概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態を容易に修正する、及び/又はこれらを様々な用途に適応させることができる。従って、このような適応及び修正は、本明細書に提示された教示及び案内に基づき、開示された実施形態の同等物の意味及び範囲内に入るものとする。本明細書の言葉遣い又は用語は説明のためのもので、限定するものではなく、従って本明細書の用語又は言葉遣いは、当業者には教示及び案内の観点から解釈されるべきことを理解されたい。
【0066】
[0073] 本発明の幅及び範囲は、上述した例示的な実施形態のいずれによっても限定されず、特許請求の範囲及びその同等物によってのみ規定されるものである
。