(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両端部が固定され、内側に冷媒が収容された内管と、該内管の外周側に配置されて該内管との間の空間が真空に維持された外管とを備えると共に、1回以上巻回された巻回部を備えた真空断熱管と、
両端部が固定されて前記内管の内側に配置されたケーブルコアと、
を有し、
前記巻回部は、巻枠の外周に巻回されている超電導ケーブル。
前記ケーブルコアの少なくとも一端部は、ケーブル端末部に設けられた冷媒の液槽内に配置されると共に、該液槽内で1回以上巻回されたコア巻回部を備えている請求項1〜8の何れか1項に記載の超電導ケーブル。
一対のケーブル端末部の間に、ケーブルコアと、該ケーブルコアの外周側に配置された内管と、該内管の外周側に配置されて該内管との間の空間が真空に維持された外管とを配設するケーブル配設工程と、
前記ケーブルコア、前記内管、及び前記外管を巻枠に1回以上巻回する巻回工程と、
前記ケーブルコア、前記内管、及び前記外管の両端部を前記ケーブル端末部に固定した状態で、前記内管の内側に冷媒を流す冷媒送液工程と、
を有し、
前記冷媒送液工程で前記内管の内側に冷媒を流す前の状態において、前記内管を前記外管の中心軸よりも巻回中心軸から離れる方向に偏芯して配置させると共に、前記ケーブルコアを前記内管の中心軸よりも巻回中心軸から離れる方向に偏芯して配置させる超電導ケーブルの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特開2010−187520号公報に記載の技術では、ケーブル端末部の近傍のみに配置されている。このため、一方のケーブル端末部と他方のケーブル端末部との間の中間部分における熱収縮を吸収できず、ケーブルに負荷がかかることがある。また、特開2010−272529号公報に記載の技術では、複数のケーブルコアを備えた構成を前提としているため、1本のケーブルコアを備えた超電導ケーブルに適用することができず、汎用性が低い。さらに、ケーブルコア、内管、及び外管の3つの部材の間に生じる熱収縮量の差を吸収するには改善の余地がある。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、汎用性が高く、ケーブルコア、内管、及び外管の3つの部材の間に生じる熱収縮量の差を吸収することができる超電導ケーブル及び超電導ケーブルの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様の超電導ケーブルは、両端部が固定され、内側に冷媒が収容された内管と、該内管の外周側に配置されて該内管との間の空間が真空に維持された外管とを備えると共に、1回以上巻回された巻回部を備えた真空断熱管と、両端部が固定されて前記内管の内側に配置されたケーブルコアと、を有する。
【0006】
第1態様の超電導ケーブルでは、真空断熱管は、内管と外管とを備えており、この内管及び外管の両端部は固定されている。また、内管の内側には冷媒が収容されている。さらに、内管と外管との間は真空に維持されている。また、内管の内側には、ケーブルコアが配置されており、このケーブルコアも両端部が固定されている。ここで、真空断熱管は、1回以上巻回された巻回部を備えている。また、ケーブルコアも真空断熱管と共に巻回されている。これにより、内管の内側に冷媒が収容されると、巻回部におけるケーブルコアは、内管よりも熱収縮して引張応力が生じる。特に、ケーブルコアは、金属よりも収縮しやすい高分子材料からなる部位を多く含んでいるのが一般的であるため、内管が金属製である場合は、ケーブルコアがより熱収縮して引張応力が大きくなる。そして、ケーブルコアは、巻回部の中心(巻回中心軸)に近づくように内管の内部を径方向に移動する。また、巻回部における内管は、外管よりも冷却されるため、外管よりも熱収縮して巻回部の巻回中心軸に近づくように外管の内部を径方向に移動する。このようにして、ケーブルコア及び内管の巻き径が小さくなった分だけ巻回部の両側に伸びて引張応力を吸収させる。この結果、ケーブルコアと内管との間の熱収縮量の差、及び外管と内管との間の熱収縮量の差を吸収することができ、ケーブルへの応力負荷を軽減させることができる。
【0007】
また、任意の位置に複数の巻回部を形成することができる上、巻回部の巻回数を増やすだけで、ケーブルコア及び内管の伸び代を長く確保することができる。
【0008】
第2態様の超電導ケーブルは、第1態様において、前記巻回部は、巻枠の外周に巻回されている。
【0009】
第2態様の超電導ケーブルでは、ケーブルコアや内管が熱収縮した時に巻回部の巻回中心軸に近づくように外管の径方向に移動した場合であっても、ケーブル全体の巻回構造が変形するのを抑制することができる。すなわち、巻回部における超電導ケーブルの形状を良好に維持することができる。
【0010】
第3態様の超電導ケーブルは、第1態様又は第2態様において、前記巻回部における前記内管は、前記内管の内側に冷媒が収容される前の状態で、前記外管の中心軸よりも前記巻回部の巻回中心軸から離れる方向に偏芯して配置されている。
【0011】
第3態様の超電導ケーブルでは、内管の内側に冷媒を収容した際に、熱収縮した内管が外管の径方向に移動する移動量を多く確保することができる。これにより、効率良く熱収縮量の差を吸収することができる。
【0012】
第4態様の超電導ケーブルは、第1態様〜第3態様の何れか1の態様において、前記巻回部における前記内管は、前記内管の内側に冷媒が収容された状態で、前記外管の中心軸よりも前記巻回部の巻回中心軸に近づく方向に偏芯して配置されている。
【0013】
第4態様の超電導ケーブルでは、例えば、内管の内側に収容された冷媒を取り出した際に、熱膨張した内管が巻回部の巻回中心軸から離れる方向に移動した場合であっても、内管と外管とが干渉するのを抑制することができる。これにより、冷媒を取り出した際に内管や外管が損傷するのを抑制することができる。
【0014】
第5態様の超電導ケーブルは、第1態様〜第4態様の何れか1の態様において、前記巻回部における前記ケーブルコアは、前記内管の内側に冷媒を収容する前の状態で、前記内管の中心軸よりも前記巻回部の巻回中心軸から離れる方向に偏芯して配置されている。
【0015】
第5態様の超電導ケーブルでは、内管の内側に冷媒を収容した際に、熱収縮したケーブルコアが内管の径方向に移動する移動量を多く確保することができる。これにより、効率良く熱収縮量の差を吸収することができる。
【0016】
第6態様の超電導ケーブルは、第1態様〜第5態様の何れか1の態様において、前記巻回部における前記ケーブルコアは、前記内管の内側に冷媒が収容された状態で、前記内管の中心軸よりも前記巻回部の巻回中心軸に近づく方向に偏芯して配置されている。
【0017】
第6態様の超電導ケーブルでは、例えば、内管の内側に収容された冷媒を取り出した際に、熱膨張したケーブルコアが巻回部の巻回中心軸から離れる方向に移動した場合であっても、ケーブルコアと内管とが干渉するのを抑制することができる。これにより、冷媒を取り出した際にケーブルコアや内管が損傷するのを抑制することができる。
【0018】
第7態様の超電導ケーブルは、第1態様〜第6態様の何れか1の態様において、前記ケーブルコアの径がφ40mm以下である。
【0019】
第7態様の超電導ケーブルでは、ケーブルコアの径をφ40mm以下とすることにより、巻回部を形成するための超電導ケーブルが短くて済む。すなわち、一般的にケーブルコアの許容曲げ径は、その直径の25倍程度が目安とされており、ケーブルコアの径が大きいほど、許容曲げ径も大きくなる。ここで、ケーブルコアの径がφ40mmよりも大きい場合は、巻回部の巻き径をφ1mよりも大きくすることが望まれており、巻回部を形成するために超電導ケーブルを長くしなければならず、コストが上昇する。これに対して、ケーブルコアの径をφ40mm以下とすることで、巻回部の巻き径を小さくすることができ、コストを低減することができる。なお、CIGRE(国際大電力システム会議)が推奨しているケーブルコアの許容曲げ径は、真空断熱管の外径をDとし、ケーブルコアの直径をdとしたときに、25×(d+D)+5%である。なお、真空断熱管にコルゲート管(波付け管)を用いる場合は、ケーブルコアよりも曲げやすいため、ケーブルの許容曲げ径は、最も曲げにくいケーブルコアのみを考慮して設定すればよい。
【0020】
第8態様の超電導ケーブルは、第1態様〜第7態様の何れか1の態様において、前記巻回部における最も巻き径が小さい前記真空断熱管の巻き径がφ1m以下である。
【0021】
第8態様の超電導ケーブルでは、巻き径がφ1m以下のコンパクトな巻回部を形成することにより、巻回部を形成するために長い超電導ケーブルを必要とせず、コストを低減することができる。
【0022】
第9態様の超電導ケーブルは、第1態様〜第8態様の何れか1の態様において、前記巻回部の巻回数が20回以下である。
【0023】
第9態様の超電導ケーブルでは、ケーブルコアの熱収縮時に巻回部からケーブルコアを無駄なく引き出すことができる。すなわち、巻回数を20回よりも多い回数とした場合は、巻回部において外側の管の内壁と内側の構造体の表面との間に生じる摩擦力の合計が大きくなるので、内管及びケーブルコアの伸び代のすべてを引き出せない場合がある。この場合、巻回部における中央付近の巻回構造は、本来の役割を果たさない一方、コストとスペースを増大させてしまう。これに対して、巻回数を20回以下とすることで、前記摩擦力の合計が小さくなるので、比較的摩擦力の小さい真空断熱管の内管と外管の間では径方向にスムーズに移動し、巻回部から無駄なく内管及びケーブルコアを引き出して熱収縮量の差を吸収することができる。
【0024】
第10態様の超電導ケーブルは、第1態様〜第9態様の何れか1の態様において、前記ケーブルコアの少なくとも一端部は、ケーブル端末部に設けられた冷媒の液槽内に配置されると共に、該液槽内で1回以上巻回されたコア巻回部を備えている。
【0025】
第10態様の超電導ケーブルでは、ケーブルコアの熱収縮時に、コア巻回部が引張バネのように伸びて、ケーブル端末部の近傍に作用する引張応力を吸収することができる。
【0026】
第11態様の超電導ケーブルの製造方法は、一対のケーブル端末部の間に、ケーブルコアと、該ケーブルコアの外周側に配置された内管と、該内管の外周側に配置されて該内管との間の空間が真空に維持された外管とを配設するケーブル配設工程と、前記ケーブルコア、前記内管、及び前記外管を巻枠に1回以上巻回する巻回工程と、前記ケーブルコア、前記内管、及び前記外管の両端部を前記ケーブル端末部に固定した状態で、前記内管の内側に冷媒を流す冷媒送液工程と、を有する。
【0027】
第11態様の超電導ケーブルの製造方法では、ケーブル配設工程で、一対のケーブル端末部の間にケーブルコア、内管、及び外管が配設される。また、巻回工程では、ケーブルコア、内管、及び外管を巻枠に1回以上巻回させて巻回部が形成される。そして、冷媒送液工程で内管の内側に冷媒を送液することにより、巻回部におけるケーブルコア及び内管が巻回部の巻回中心軸に近づくように外管の径方向に移動する。これにより、ケーブルコア及び内管が巻回部の両側に伸びて、ケーブルコア及び内管に作用する引張応力を吸収することができる。
【0028】
第12態様の超電導ケーブルの製造方法は、第11態様において、前記冷媒送液工程で前記内管の内側に冷媒を流す前の状態において、前記内管を前記外管の中心軸よりも巻回中心軸から離れる方向に偏芯して配置させると共に、前記ケーブルコアを前記内管の中心軸よりも巻回中心軸から離れる方向に偏芯して配置させる。
【0029】
第12態様の超電導ケーブルの製造方法では、冷媒送液工程で内管の内側に冷媒を流した際に、熱収縮した内管及びケーブルコアの移動量を多く確保することができる。これにより、効率良く熱収縮量の差を吸収することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明に係る超電導ケーブルによれば、汎用性が高く、ケーブルコア、内管、及び外管の3つの部材の間に生じる熱収縮量の差を吸収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
以下、
図1〜
図4を参照して、本発明に係る超電導ケーブルの第1実施形態について説明する。
【0033】
(超電導ケーブル及びケーブル端末部の構成)
図1に示されるように、本実施形態に係る超電導ケーブル10は、主として、真空断熱管14と、ケーブルコア16とを含んで構成されている。また、真空断熱管14は、内管18と外管20とを含んで構成されている。
【0034】
内管18は、コルゲート管(波付け管)で形成された略円筒状の部材であり、内管18の一端部がケーブル端末部12に接続(固定)されている。また、内管18の内部には、冷媒としての液体窒素24が収容されている。ここで、本実施形態では一例として、内径がφ29mmで外径がφ33mmの内管18を用いている。
【0035】
外管20は、コルゲート管で形成されて内管18の外周側に配置された略筒状の部材であり、一端部がケーブル端末部12に接続(固定)されている。また、外管20と内管18との間の空間22は真空に維持されている。ここで、本実施形態では一例として、内径がφ48mmで外径がφ54mmの外管20を用いている。なお、この外管20と内管18との間の空間22の真空度は、断熱効果を十分に得られるだけの真空度であれば特に制限しない。
【0036】
内管18の内側には、ケーブルコア16が配置されている。ケーブルコア16は、例えば、導電性に優れる金属材料(例えば、銅)で形成された図示しないフォーマに、テープ状の図示しない超電導線材をらせん状に多数本巻き付け、その上に図示しない絶縁層、図示しない超電導シールド層、図示しない保護層を設けて構成されている。また、ケーブルコア16の一端部は、ケーブル端末部12に接続(固定)されている。ここで、本実施形態のケーブルコア16は、径がφ40mm以下のものを用いており、一例として、直径φ24mmのケーブルコア16を用いている。
【0037】
ケーブル端末部12は、外殻を構成する外部圧力室26を備えており、この外部圧力室26の一端部には、フランジ26Aが設けられている。そして、真空断熱管14の外管20は、外部圧力室26に接続されており、フランジ26Aによって外管20と内管18との間の空間22が閉塞されている。
【0038】
内管18は、外部圧力室26の内部まで延在されており、外部圧力室26の内部に配置された液槽28のフランジ28Aに接続されている。液槽28の内側には、冷媒としての液体窒素が収容されており、この液槽28から内管18の内側へ液体窒素が送り込まれるようになっている。
【0039】
液槽28の内側には、接続端子30が設けられており、ケーブルコア16の一端部が接続端子30の一端側に接続されている。また、接続端子30の他端側には、引出導体32が接続されており、この引出導体32は、ケーブル端末部12の外部まで延出されている。
【0040】
(巻回部の構成)
ここで、内管18の他端部、外管20の他端部、及びケーブルコア16の他端部は、図示しない他方のケーブル端末部に接続(固定)されている。そして、一方のケーブル端末部12と他方のケーブル端末部との間には、
図2に示されるように、真空断熱管14及びケーブルコア16を巻回させた巻回部44が設けられている。
【0041】
巻回部44は、真空断熱管14及びケーブルコア16を1回以上巻回して構成されており、本実施形態では一例として、真空断熱管14を巻枠34の外周面に10回巻回している。巻枠34は、略円柱状の枠本体34Cを備えており、この枠本体34Cの外周面に真空断熱管14が巻回されている。また、枠本体34Cの上端部には、枠本体34Cよりも大径の上フランジ34Aが設けられており、枠本体34Cの下端部には、上フランジ34Aと略同一の径で形成された下フランジ34Bが設けられている。
【0042】
ここで、本実施形態では、真空断熱管14を上下方向に螺旋状となるように巻回部44を形成しているため、支持台36、38、40を配置して真空断熱管14を支持することで、巻回部44の上端部まで真空断熱管14を持ち上げた構造とされている。一方、巻回部44の下端部と下フランジ34Bとの段差を考慮して、支持台42を配置している。
【0043】
また、巻枠34の枠本体34Cは、径がφ1m以下のものを用いており、本実施形態では一例として、径がφ0.6mの枠本体34Cの外周面に真空断熱管14を巻回している。このため、巻回部44における最も巻き径が小さい真空断熱管14の巻き径は、φ1m以下となっている。
【0044】
(製造方法)
次に、一対のケーブル端末部12の間に超電導ケーブル10を設置して製造する方法について説明する。初めに、一対のケーブル端末部12の間に、ケーブルコア16、内管18、及び外管20を配設する(ケーブル配設工程)。
【0045】
次に、ケーブルコア16、内管18、及び外管20を巻枠34に1回以上巻回する(巻回工程)。これにより、巻回部44が形成されている。なお、
図2に示されるように、一重に形成してもよいが、二重巻き又は三重巻きとしてもよい。この場合、巻回部44において最も内側に巻回された部位の巻き径が本発明における「最も小さな巻き径」となる。すなわち、「最も小さな巻き径」とは、
図2における巻枠34の枠本体34Cの直径DFのことである。
【0046】
巻回部44を形成した後、ケーブルコア16の両端部をケーブル端末部12の接続端子30に接続(固定)する。なお、真空断熱管の内部は、この時に真空引きしてもよいし、これ以前の段階で真空にしておいてもよい。また、内管18の両端部をケーブル端末部12の液槽28に接続(固定)する。さらに、外管20の両端部をケーブル端末部12の外部圧力室26に接続する。
【0047】
ここで、
図3A及び
図3Bに示されるように、内管18は、巻回部44を形成する際に突っ張るため、外管20の外側の内周壁に沿って配設される。一方、ケーブルコア16も巻回部44を形成する際に突っ張るため、内管18の外側の内周壁に沿って配設される。このため、内管18の内側に液体窒素24を収容する前の状態で、内管18は外管20の中心軸よりも中心Cから離れる方向に偏芯して配置されており、ケーブルコア16は内管18の中心軸よりも中心Cから離れる方向に偏芯して配置されている。
【0048】
以上のように巻回部44が形成された状態で、ケーブル端末部12の液槽28から内管18の内側に液体窒素を送液する(冷媒送液工程)。これにより、ケーブルコア16及び内管18が冷却される。ここで、
図4Aに示されるように、ケーブルコア16及び内管18が冷却されて熱収縮することで、巻回部44の両側から引張応力が作用する。このとき、巻回部44では、
図4Bに示されるように、内管18が外管20に対して巻回部44の中心(巻回中心軸)Cに近づく方向に移動する。また、ケーブルコア16が内管18に対して中心Cに近づく方向に移動する。このようにして、内管18及びケーブルコア16が巻回部44の両側に伸びて引張応力を吸収する。
【0049】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係る超電導ケーブルの作用並びに効果について説明する。
【0050】
本実施形態によれば、内管18の内側に液体窒素24を送液すると、巻回部44におけるケーブルコア16及び内管18が冷却され、外管20の内部を巻回部44の中心C側に移動する。このようにして、巻回部44の中心Cに近づいた分だけケーブルコア16及び内管18が巻回部44の両側に伸ばされるため、熱収縮時に作用する引張応力を吸収することができる。すなわち、ケーブルコア16、内管18、及び外管20の3つの部材の間に生じる熱収縮量の差を吸収することができる。
【0051】
ここで、本実施形態に係る超電導ケーブル10による熱収縮の吸収量(伸び長さΔL)は、下記(1)式のように求められる。
【数1】
・・・・・(1)
【0052】
(1)式におけるD
outerは、空隙の外周直径であり、D
innerは、空隙の内周直径である。すなわち、外管20に対する内管18の伸び長さを求める場合、外管20の内径がD
outerとなり、内管18の外径がD
innerとなる。ここで、外管20の寸法は、上述したように、内径がφ48mmで外径がφ54mmであり、内管18の寸法は、内径がφ29mmで外径がφ33mmであるため、内管18における熱収縮の吸収量(伸び長さ)は、1回巻くごとに47.1mmであり、本実施形態では巻回数が10回なので、約47cmの伸び長さとなる。
【0053】
また、ケーブルコア16の径はφ24mmであるため、ケーブルコア16の伸び長さは、1回巻くごとに62.8mmであり、本実施形態では巻回数が10回なので、約63cmの伸び長さとなる。これにより、例えば、全長1kmの送電ケーブルを5分割する4カ所の分割点に巻回部44を設けた場合、ケーブルコア16の全体の伸び長さは約2.5mとなり、全長1kmの送電ケーブルに対して0.25%の長さ分だけ引張応力を吸収することができる。
【0054】
また、本実施形態では、巻回部44を形成することで熱収縮を吸収しているため、任意の位置に巻回部44を形成することができる。さらに、巻回部44の巻回数を増やすだけで、熱収縮の吸収量を大きくすることができるため、汎用性が高い。そして、超電導ケーブル10を配設する長さに応じて巻回部44の巻回数を増やすことができるため、巻枠34の形状等を変更する必要がない。
【0055】
さらにまた、本実施形態では巻枠34を設けており、この巻枠34に超電導ケーブル10を巻回している。これにより、ケーブルコア16や内管18が熱収縮して巻回部44の中心Cに近づく方向に移動した場合であっても、ケーブル全体の巻回構造が変形するのを抑制することができ、巻回部44における真空断熱管及びケーブルコアの形状を良好に維持することができる。
【0056】
また、液体窒素24を送液する前の状態で、
図3Bに示された配置にすることで、ケーブルコア16及び内管18の径方向の移動量を多くすることができる。これにより、少ない巻回数であっても効率良く熱収縮量の差を吸収することができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、ケーブルコア16を直径がφ40mm以下の小径のものを用いることにより、巻回部44をコンパクトにすることができ、コストの上昇を抑制することができる。すなわち、ケーブルコア16の直径が大きい場合、許容曲げ径も大きくなるため、例えば、ケーブルコア16の径がφ40mmであった場合、巻回部44の巻き径はφ1m以上に設定されることが望ましい。ここで、上記の(1)式に示されるように、巻回部44の巻き径(枠本体34Cの径)は、伸び長さとは関係しないため、巻き径が大きい場合であっても熱収縮の吸収量は変わらない。すなわち、ケーブルコア16の径をφ40mm以下にすれば、熱収縮の吸収量が同じでも巻回部44を形成するために必要な超電導ケーブル10の長さを短くすることができる。
【0058】
さらにまた、本実施形態では、巻回部44の巻回数を20回以下とすることで、熱収縮時に巻回部44から無駄なくケーブルコア16を引き出すことができる。すなわち、巻回部44の巻回数を多くするほど、ケーブルコア16と内管18との間に生じる摩擦力の合計が大きくなり、この摩擦力が熱収縮時の引張応力を上回ると、ケーブルコア16が移動しなくなる。これに対して、巻回数が20回以下であれば、比較的摩擦力が小さい真空断熱管14の内管18と外管20との間では径方向にスムーズに移動し、巻回部44からことができる。一方、巻回数を20回よりも多くする場合、巻回部44を形成するために無駄に長い超電導ケーブル10を用意する必要があり、コストの観点からも好ましくない。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る超電導ケーブルの第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0060】
本実施形態に係る超電導ケーブル50は、
図5に示されるように、巻回部54の構造が第1実施形態と異なっている。詳細には、巻回部54には、巻枠52が配置されており、この巻枠52は、超電導ケーブル50の軸方向に延びている。そして、真空断熱管14は、この巻枠52の外周面に螺旋状に巻回されている。
【0061】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係る超電導ケーブルの作用並びに効果について説明する。
【0062】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を有する。また、超電導ケーブル50の配設方向に螺旋状となるように真空断熱管14を巻回しているため、上下方向に螺旋状となるように巻回した第1実施形態と比較して、必要な超電導ケーブル50の長さを短くすることができる。特に、
図6に示される変形例に係る超電導ケーブル55のように、巻回部54における超電導ケーブル50の間隔をあけてピッチを大きくすることで、巻回数が同じ場合でもケーブル端末部12(
図1参照)までの距離を縮めることができる。また、摩擦が小さくなるので、ケーブルコアを引き出しやすくすることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、一部の超電導ケーブル50が巻枠52の下敷きになっているため、巻枠52の両端部を支持する支持台を設けて、巻回部54における超電導ケーブル50が地面と接触しないように構成してもよい。
【0064】
<第3実施形態>
次に、本発明に係る超電導ケーブルの第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0065】
本実施形態の超電導ケーブル60は、第1実施形態と同様にケーブル端末部12から離れた位置に巻回部44を備えている(
図3参照)。また、本実施形態では、
図7に示されるように、ケーブル端末部12の液槽28内にコア巻回部62を備えている点で第1実施形態と異なる。以下、コア巻回部62の詳細について説明する。
【0066】
コア巻回部62は、液槽28内に配設されたケーブルコア16を螺旋状に1回以上巻回して形成されている。なお、本実施形態では一例として6回巻回しているが、巻回数については特に制限しない。また、コア巻回部62の巻き径についても特に制限しない。さらに、他方のケーブル端末部12にも同様のコア巻回部を設けてもよい。
【0067】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係る超電導ケーブルの作用並びに効果について説明する。
【0068】
本実施形態では、液体窒素24が送液されてケーブルコア16が熱収縮した時に、ケーブルコア16に引張応力が作用する。このとき、コア巻回部62が引張バネのように伸びて引張応力を吸収することができる。また、液体窒素を抜いてケーブルコア16を常温に戻した場合は、復元力によってコア巻回部62が冷却される前の状態に戻る。
【0069】
なお、本実施形態では、コア巻回部62に復元力を働かせるため、液槽28内のケーブルコア16を捩じった状態に維持させている。詳細には、
図8に示されるように、コア巻回部62よりも液槽28の入口側にガイドプレート64を配置しており、このガイドプレート64の上下方向の中央部に形成された挿通孔64Aにケーブルコア16を挿通させている。
【0070】
また、挿通孔64Aよりも上方に挿通孔64Bを形成しており、この挿通孔64Bには、支持シャフト66が挿通されている。さらに、支持シャフト66から下方へ複数のワイヤ68が延出されており、このワイヤ68の先端は、ケーブルコア16の外周面に固定された固定リング70に取り付けられている。また、
図7に示されるように、支持シャフト66は、一端が液槽28のフランジ28Aに固定されており、片持ち梁状に形成されている。
【0071】
以上の構成により、ケーブルコア16の捩じり力が固定リング70からワイヤ68を介して支持シャフト66に伝達されるが、支持シャフト66の移動が制限されているため、液槽28内のケーブルコア16を捩じった状態に維持させることができる。なお、本実施形態の構成に限定されず、他の構成で液槽28内のケーブルコア16を捩じった状態に維持させるようにしてもよい。また、復元力を必要としない場合は、ガイドプレート64や支持シャフト66等が無い構成としてもよい。
【0072】
以上、本発明の第1実施形態〜第3実施形態に係る超電導ケーブルについて説明したが、これらの実施形態を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、冷媒として液体窒素を用いたが、本発明はこれに限定せず、超電導状態を維持できる冷却液であれば、他の冷媒を用いてもよい。例えば、ヘリウムガスなどの気体を冷媒として用いてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、
図2に示されるように、支持台36、38、40、42を用いているが、本発明はこれに限定せず、コンパクトな超電導ケーブルであれば、支持台を用いなくてもよい。また、支持台の形状や大きさについても特に限定しない。