(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140429
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】銅箔の表面状態の評価装置、銅箔の表面状態の評価プログラム及びそれが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに、銅箔の表面状態の評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20170522BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20170522BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20170522BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
G01N21/956 B
H05K3/00 Q
G01N21/84 Z
G01N21/17 A
【請求項の数】19
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-250744(P2012-250744)
(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-95679(P2014-95679A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2012-227377(P2012-227377)
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】新井 英太
(72)【発明者】
【氏名】三木 敦史
(72)【発明者】
【氏名】新井 康修
(72)【発明者】
【氏名】中室 嘉一郎
【審査官】
越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−069199(JP,A)
【文献】
特開2001−249006(JP,A)
【文献】
国際公開第03/096776(WO,A1)
【文献】
米国特許第5363188(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
B32B 1/00−43/00
H05K 1/03
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理銅箔の表面処理された表面側を透明基材の少なくとも一方の面に張り合わせた後に、前記表面処理銅箔をエッチングにより除去し、当該表面処理銅箔をエッチングにより除去した後の透明基材の下に存在するマークを、前記透明基材越しに撮影する撮影手段と、
前記撮影によって得られた画像について、観察された前記マークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製する観察地点−明度グラフ作製手段と、
前記観察地点−明度グラフにおいて、前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線を用いて前記透明基材の視認性を評価し、前記視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する銅箔表面状態評価手段と、
を備えた銅箔の表面状態の評価装置であり、
前記銅箔表面状態評価手段は、
前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)を用いて前記透明基材の視認性の評価を行い、前記透明基材の視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する銅箔の表面状態の評価装置。
【請求項2】
前記銅箔表面状態評価手段は、
前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)と、
前記観察地点−明度グラフにおいて、明度曲線とBtとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt1として、明度曲線とBtとの交点からBtを基準に0.1ΔBまでの深さ範囲において、明度曲線と0.1ΔBとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt2としたときに、下記(1)式で定義されるSvと、
Sv=(ΔB×0.1)/(t1−t2) (1)
を用いて前記透明基材の視認性評価を行い、前記透明基材の視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する請求項1に記載の銅箔の表面状態の評価装置。
【請求項3】
前記撮影手段による撮影によって得られた画像について、明度のばらつきを緩和させるスムージング処理手段をさらに備え、
前記観察地点−明度グラフ作製手段が、前記スムージング処理後の前記明度を用いて観察地点−明度グラフを作製する請求項1又は2に記載の銅箔の表面状態の評価装置。
【請求項4】
前記透明基材の下に存在するマークが、前記透明基材の下に敷いた印刷物に印刷されたライン状のマークであり、
前記観察地点−明度グラフ作製手段が、前記撮影によって得られた画像について、観察された前記ライン状のマークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製する請求項1〜3のいずれかに記載の銅箔の表面状態の評価装置。
【請求項5】
前記銅箔表面状態評価手段による視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が40以上である場合を良好と判定する請求項1〜4のいずれかに記載の銅箔の表面状態の評価装置。
【請求項6】
前記銅箔表面状態評価手段による視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が50以上である場合を良好と判定する請求項5に記載の銅箔の表面状態の評価装置。
【請求項7】
表面処理銅箔の表面処理された表面側を透明基材の少なくとも一方の面に張り合わせた後に、前記表面処理銅箔をエッチングにより除去し、当該表面処理銅箔をエッチングにより除去した後の透明基材の下に存在するマークを、前記透明基材越しに撮影する撮影手段と、
前記撮影によって得られた画像について、観察された前記マークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製する観察地点−明度グラフ作製手段と、
前記観察地点−明度グラフにおいて、前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線を用いて前記透明基材の視認性を評価し、前記視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する銅箔表面状態評価手段と、
を備えた銅箔の表面状態の評価装置であり、
前記銅箔表面状態評価手段は、
前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)と、
前記観察地点−明度グラフにおいて、明度曲線とBtとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt1として、明度曲線とBtとの交点からBtを基準に0.1ΔBまでの深さ範囲において、明度曲線と0.1ΔBとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt2としたときに、下記(1)式で定義されるSvと、
Sv=(ΔB×0.1)/(t1−t2) (1)
を用いて前記透明基材の視認性評価を行い、前記透明基材の視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価し、
前記銅箔表面状態評価手段による視認性評価において、前記Svが3.5以上となる場合を良好と判定し、以下の(a)、(b)、(c)及び(d)の項目のいずれか1つ以上を満たす銅箔の表面状態の評価装置。
(a)前記撮影手段による撮影によって得られた画像について、明度のばらつきを緩和させるスムージング処理手段をさらに備え、
前記観察地点−明度グラフ作製手段が、前記スムージング処理後の前記明度を用いて観察地点−明度グラフを作製する、
(b)前記透明基材の下に存在するマークが、前記透明基材の下に敷いた印刷物に印刷されたライン状のマークであり、
前記観察地点−明度グラフ作製手段が、前記撮影によって得られた画像について、観察された前記ライン状のマークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製する、
(c)前記銅箔表面状態評価手段による視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が40以上である場合を良好と判定する、
(d)前記銅箔表面状態評価手段による視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が50以上である場合を良好と判定する。
【請求項8】
前記銅箔表面状態評価手段による視認性評価において、前記Svが3.9以上となる場合を良好と判定する請求項7に記載の銅箔の表面状態の評価装置。
【請求項9】
前記銅箔表面状態評価手段による視認性評価において、前記Svが5.0以上となる場合を良好と判定する請求項8に記載の銅箔の表面状態の評価装置。
【請求項10】
コンピュータを請求項1〜9のいずれかに記載の銅箔の表面状態の評価装置として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項12】
表面処理銅箔の表面処理された表面側を透明基材の少なくとも一方の面に張り合わせた後に、前記表面処理銅箔をエッチングにより除去し、当該表面処理銅箔をエッチングにより除去した後の透明基材の下に存在するマークを、前記透明基材越しに撮影し、
前記撮影によって得られた画像について、観察された前記マークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製し、
前記観察地点−明度グラフにおいて、前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線を用いて前記透明基材の視認性を評価し、前記透明基材の視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する銅箔の表面状態の評価方法であり、
前記銅箔表面状態評価は、
前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)を用いて前記透明基材の視認性の評価を行い、前記透明基材の視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する銅箔の表面状態の評価方法。
【請求項13】
前記銅箔表面状態評価は、
前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)と、
前記観察地点−明度グラフにおいて、明度曲線とBtとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt1として、明度曲線とBtとの交点からBtを基準に0.1ΔBまでの深さ範囲において、明度曲線と0.1ΔBとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt2としたときに、下記(1)式で定義されるSvと、
Sv=(ΔB×0.1)/(t1−t2) (1)
を用いて前記透明基材の視認性評価を行い、前記透明基材の視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する請求項12に記載の銅箔の表面状態の評価方法。
【請求項14】
前記透明基材の下に存在するマークがライン状のマークであり、
前記観察地点−明度グラフが、前記撮影によって得られた画像について、観察された前記ライン状のマークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して作製される請求項12又は13に記載の銅箔の表面状態の評価方法。
【請求項15】
前記視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が40以上である場合を良好と判定する請求項12〜14のいずれかに記載の銅箔の表面状態の評価方法。
【請求項16】
前記視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が50以上である場合を良好と判定する請求項15に記載の銅箔の表面状態の評価方法。
【請求項17】
表面処理銅箔の表面処理された表面側を透明基材の少なくとも一方の面に張り合わせた後に、前記表面処理銅箔をエッチングにより除去し、当該表面処理銅箔をエッチングにより除去した後の透明基材の下に存在するマークを、前記透明基材越しに撮影し、
前記撮影によって得られた画像について、観察された前記マークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製し、
前記観察地点−明度グラフにおいて、前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線を用いて前記透明基材の視認性を評価し、前記透明基材の視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する銅箔の表面状態の評価方法であり、
前記銅箔表面状態評価は、
前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)と、
前記観察地点−明度グラフにおいて、明度曲線とBtとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt1として、明度曲線とBtとの交点からBtを基準に0.1ΔBまでの深さ範囲において、明度曲線と0.1ΔBとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt2としたときに、下記(1)式で定義されるSvと、
Sv=(ΔB×0.1)/(t1−t2) (1)
を用いて前記透明基材の視認性評価を行い、前記透明基材の視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価し、
前記視認性評価において、前記Svが3.5以上となる場合を良好と判定し、以下の(e)、(f)、(g)及び(h)の項目のいずれか1つ以上を満たす銅箔の表面状態の評価方法。
(e)撮影手段による撮影によって得られた画像について、明度のばらつきを緩和させるスムージング処理を行い、
前記スムージング処理後の前記明度を用いて観察地点−明度グラフを作製する、
(f)前記透明基材の下に存在するマークがライン状のマークであり、
前記観察地点−明度グラフが、前記撮影によって得られた画像について、観察された前記ライン状のマークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して作製される、
(g)前記視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が40以上である場合を良好と判定する、
(h)前記視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が50以上である場合を良好と判定する。
【請求項18】
前記視認性評価において、前記Svが3.9以上となる場合を良好と判定する請求項17に記載の銅箔の表面状態の評価方法。
【請求項19】
前記視認性評価において、前記Svが5.0以上となる場合を良好と判定する請求項18に記載の銅箔の表面状態の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅箔の表面状態の評価装置、銅箔の表面状態の評価プログラム及びそれが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに、銅箔の表面状態の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレットPCといった小型電子機器には、配線の容易性や軽量性からフレキシブルプリント配線板(以下、FPC)が採用されている。近年、これら電子機器の高機能化により信号伝送速度の高速化が進み、FPCにおいてもインピーダンス整合が重要な要素となっている。信号容量の増加に対するインピーダンス整合の方策として、FPCのベースとなる樹脂絶縁層(例えば、ポリイミド)の厚層化が進んでいる。一方、FPCは液晶基材への接合やICチップの搭載などの加工が施されるが、この際の位置合わせは銅箔と樹脂絶縁層との積層板における銅箔をエッチングした後に残る樹脂絶縁層を透過して視認される位置決めパターンを介して行われるため、樹脂絶縁層の視認性及びそれに影響を与える樹脂絶縁層に積層する銅箔の表面状態が重要となる。
【0003】
このような樹脂絶縁層の視認性の評価方法として、特許文献1では、CCDカメラによって樹脂絶縁層越しに撮影した画像を観察して評価している。また、特許文献2では、評価対象の樹脂絶縁層の水平面に対して30°をなす角度からCCDカメラで撮影した画像にテストパターンが歪んで映っているか否かを評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−309336号公報
【特許文献2】特開2006−001056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにCCDカメラで観察して画像を単純に観察するものでは、視認性評価の精度には限界があり、製造ラインで実際に作製しなければ、位置合わせ等のために設けられたマークを透明基材越しに視認することが可能か否かを判断できないのが実情であり、製造コストの点で問題があった。これは特許文献2のように当該画像にテストパターンが歪んで映っているか否かを評価する方法であっても同様である。そして、このように視認性評価の精度が低ければ、樹脂絶縁層に積層する銅箔の表面状態の評価の精度も低くなる。
本発明は、銅箔の表面状態を効率良く正確に評価することができる銅箔の表面状態の評価装置、銅箔の表面状態の評価プログラム及びそれが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに、銅箔の表面状態の評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、表面処理銅箔の表面処理された表面側を透明基材の少なくとも一方の面に張り合わせた後に、表面処理銅箔をエッチングにより除去し、当該表面処理銅箔をエッチングにより除去した後の透明基材の下に存在するマークを、透明基材越しに撮影し、当該マーク部分の画像から得た観察地点−明度グラフにおいて描かれるマーク端部付近の明度曲線の変化の大きさに着目し、当該明度曲線の変化の大きさを評価することで、透明基材の視認性を透明基材の種類や透明基材の厚みの影響を受けずに、効率良く正確に評価し、これにより透明基材に積層された銅箔の表面状態を効率良く正確に評価することができることを見出した。
【0007】
以上の知見を基礎として完成された本発明は一側面において、表面処理銅箔の表面処理された表面側を透明基材の少なくとも一方の面に張り合わせた後に、前記表面処理銅箔をエッチングにより除去し、当該表面処理銅箔をエッチングにより除去した後の透明基材の下に存在するマークを、前記透明基材越しに撮影する撮影手段と、前記撮影によって得られた画像について、観察された前記マークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製する観察地点−明度グラフ作製手段と、前記観察地点−明度グラフにおいて、前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線を用いて前記透明基材の視認性を評価し、前記視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する銅箔表面状態評価手段とを備えた銅箔の表面状態の評価装置であり、前記銅箔表面状態評価手段は、前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)を用いて視認性の評価を行い、前記視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する銅箔の表面状態の評価装置である。
【0008】
本発明の銅箔の表面状態の評価装置は一実施形態において、前記銅箔表面状態評価手段は、前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)と、前記観察地点−明度グラフにおいて、明度曲線とBtとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt1として、明度曲線とBtとの交点からBtを基準に0.1ΔBまでの深さ範囲において、明度曲線と0.1ΔBとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt2としたときに、下記(1)式で定義されるSvと、
Sv=(ΔB×0.1)/(t1−t2) (1)
を用いて視認性評価を行い、前記視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する。
【0009】
本発明の銅箔の表面状態の評価装置は別の一実施形態において、前記撮影手段による撮影によって得られた画像について、明度のばらつきを緩和させるスムージング処理手段をさらに備え、前記観察地点−明度グラフ作製手段が、前記スムージング処理後の前記明度を用いて観察地点−明度グラフを作製する。
【0010】
本発明の銅箔の表面状態の評価装置は更に別の一実施形態において、前記透明基材の下に存在するマークが、前記透明基材の下に敷いた印刷物に印刷されたライン状のマークであり、前記観察地点−明度グラフ作製手段が、前記撮影によって得られた画像について、観察された前記ライン状のマークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製する。
【0011】
本発明の銅箔の表面状態の評価装置は更に別の一実施形態において、前記銅箔表面状態評価手段による視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が40以上である場合を良好と判定する。
【0012】
本発明の銅箔の表面状態の評価装置は更に別の一実施形態において、前記銅箔表面状態評価手段による視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が50以上である場合を良好と判定する。
【0013】
本発明の銅箔の表面状態の評価装置は更に別の一実施形態において、前記銅箔表面状態評価手段による視認性評価において、前記Svが3.5以上となる場合を良好と判定する。
【0014】
本発明の銅箔の表面状態の評価装置は更に別の一実施形態において、前記Svが3.9以上となる場合を良好と判定する。
【0015】
本発明の銅箔の表面状態の評価装置は更に別の一実施形態において、前記Svが5.0以上となる場合を良好と判定する。
【0016】
本発明は別の一側面において、コンピュータを本発明の銅箔の表面状態の評価装置として機能させるためのプログラムである。
【0017】
本発明は更に別の一側面において、本発明の銅箔の表面状態の評価プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0018】
本発明は更に別の一側面において、表面処理銅箔の表面処理された表面側を透明基材の少なくとも一方の面に張り合わせた後に、前記表面処理銅箔をエッチングにより除去し、当該表面処理銅箔をエッチングにより除去した後の透明基材の下に存在するマークを、前記透明基材越しに撮影し、前記撮影によって得られた画像について、観察された前記マークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製し、前記観察地点−明度グラフにおいて、前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線を用いて前記透明基材の視認性を評価し、前記視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する銅箔の表面状態の評価方法であり、前記銅箔表面状態評価は、前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)を用いて前記透明基材の視認性の評価を行い、前記透明基材の視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する銅箔の表面状態の評価方法である。
【0019】
本発明の銅箔の表面状態の評価方法は一実施形態において、前記銅箔表面状態評価は、前記マークの端部から前記マークがない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)と、前記観察地点−明度グラフにおいて、明度曲線とBtとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt1として、明度曲線とBtとの交点からBtを基準に0.1ΔBまでの深さ範囲において、明度曲線と0.1ΔBとの交点の内、前記マークに最も近い交点の位置を示す値をt2としたときに、下記(1)式で定義されるSvと、
Sv=(ΔB×0.1)/(t1−t2) (1)
を用いて前記透明基材の視認性評価を行い、前記透明基材の視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する。
【0020】
本発明の銅箔の表面状態の評価方法は別の一実施形態において、前記透明基材の下に存在するマークがライン状のマークであり、前記観察地点−明度グラフが、前記撮影によって得られた画像について、観察された前記ライン状のマークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して作製される。
【0021】
本発明の銅箔の表面状態の評価方法は別の一実施形態において、前記視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が40以上である場合を良好と判定する。
【0022】
本発明の銅箔の表面状態の評価方法は別の一実施形態において、前記視認性評価において、前記ΔB(ΔB=Bt−Bb)が50以上である場合を良好と判定する。
【0023】
本発明の銅箔の表面状態の評価方法は別の一実施形態において、前記視認性評価において、前記Svが3.5以上となる場合を良好と判定する。
【0024】
本発明の銅箔の表面状態の評価方法は別の一実施形態において、前記視認性評価において、前記Svが3.9以上となる場合を良好と判定する。
【0025】
本発明の銅箔の表面状態の評価方法は別の一実施形態において、前記視認性評価において、前記Svが5.0以上となる場合を良好と判定する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、銅箔の表面状態を効率良く正確に評価する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る銅箔の表面状態の評価装置の模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る銅箔の表面状態の評価方法のフローチャートである。
【
図3】マーク幅が約1.3mmの場合のBt及びBbを定義する模式図である。
【
図4】マーク幅が約0.3mmの場合のBt及びBbを定義する模式図である。
【
図5】t1及びt2及びSvを定義する模式図である。
【
図6】マークの幅が0.1〜0.4mmの場合の明度曲線の評価の際の、撮影手段の構成及び明度曲線の測定方法を表す模式図である。
【
図7】マークの幅が1.0〜2.0mmの場合の明度曲線の評価の際の、撮影手段の構成及び明度曲線の測定方法を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(銅箔の表面状態の評価装置、銅箔の表面状態の評価方法、銅箔の表面状態の評価プログラム及び記録媒体)
図1は、本発明の実施形態に係る銅箔の表面状態の評価装置10の模式図である。本発明の実施形態に係る銅箔の表面状態の評価装置10は、ステージ15上に設けられた透明基材17の下に存在するマーク16を、透明基材17越しに撮影する撮影手段11と、撮像手段11からの画像信号を基に各種の処理を行うコンピュータ12と、コンピュータ12からの各種信号を基に所定の画像等を表示する表示手段13と、ステージ上の透明基材17及びマーク16に光を照射する照明手段14とを備えている。透明基材17は特に限定されず、透明であれば、ガラス製やポリイミド等の樹脂製基材であってもよい。なお、本発明では透明とは光透過性を有することも含まれる。なお、本発明におけるマークは、紙等の印刷物に印刷された印でもよく、銅配線でもよく、目印となる印であればどのような形態であってもよい。また、マークとは印刷物であってもよく、金属であってもよく、無機物であってもよく、有機物であってもよく、目印となるものであればよい。マークは、ライン状であれば、撮影によって得られた画像について、観察されたマークを横切る方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作成するのが容易となり、好ましい。
【0029】
フレキシブルプリント配線板(FPC)は液晶基材への接合やICチップの搭載などの加工が施されるが、この際の位置合わせは銅張積層板の銅箔をエッチングした後に残る樹脂絶縁層を透過して視認される位置決めパターンを介して行われるため、樹脂絶縁層の視認性が重要となる。そして、このような樹脂絶縁層の視認性に影響を与える銅箔の表面状態の評価が必要となる。このような樹脂絶縁層の効率良い正確な視認性評価及び銅箔の表面状態の評価のために、本発明において、透明基材は、少なくとも一方の表面が粗化処理などの表面処理をされた表面処理金属箔を、粗化処理などの表面処理をされた表面側から、透明基材の少なくとも一方の表面に貼り合わせた後、エッチングで前記金属箔を除去して作製されている。当該金属箔は、特に限定されないが、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、銅合金箔、ニッケル合金箔、アルミ合金箔、ステンレス箔、鉄箔、鉄合金箔等を用いることができる。
【0030】
撮影手段11は、撮像素子、撮像素子の出力が入力される画像処理回路等で構成された画像処理部、画像処理部等を制御する制御回路等で構成された制御部、レンズ等で構成された光学系等を備えている。撮影手段11としては、例えばCCDカメラ等を用いることができる。撮影手段11は、ステージ15上に設けられた透明基材17の下に存在するマーク16を、透明基材17越しに撮影して画像を取得する。
【0031】
コンピュータ12は、撮像手段11からの画像信号を基に各種の処理を行う。コンピュータ12は、撮像手段11からの画像信号について、観察されたマーク16が伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製する観察地点−明度グラフ作製手段と、観察地点−明度グラフにおいて、マーク16の端部からマーク16がない部分にかけて生じる明度曲線を用いて透明基材17の視認性を評価し、当該視認性の評価結果に基づいて銅箔の表面状態を評価する銅箔表面状態評価手段とを備えている。
【0032】
コンピュータ12は、撮影手段11による撮影によって得られた画像について、明度のばらつきを緩和させるスムージング処理手段をさらに備え、観察地点−明度グラフ作製手段が、スムージング処理後の明度を用いて観察地点−明度グラフを作製してもよい。
【0033】
また、透明基材17の下に存在するマーク16が、透明基材17の下に敷いた印刷物に印刷されたライン状のマーク16であり、観察地点−明度グラフ作製手段が、撮影によって得られた画像について、観察されたライン状のマーク16が伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製してもよい。
【0034】
コンピュータ12は、記憶手段としてのメモリを備えている。このメモリには、デジタル化した撮像手段11からの画像、観察地点−明度グラフ作製式、視認性評価式、銅箔の表面状態の評価式、各段階における評価値等がそれぞれコンピュータ読み取り可能に記録(いわゆる保存)されている。
【0035】
表示手段13は、コンピュータ12からの各種信号を基に、観察地点−明度グラフ、視認性評価結果、銅箔の表面状態の評価結果等の所定の画像や数値等を表示する。
【0036】
次に、上記実施形態による銅箔の表面状態の評価装置10を用いた銅箔の表面状態の評価方法について、
図2に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図2に示すフローチャートは本発明に係る銅箔の表面状態の評価装置10を用いた銅箔の表面状態の評価方法の一実施形態であり、本発明の銅箔の表面状態の評価装置10で実現可能な評価方法は、
図2のフローチャートで示すものに限られない。特に、ΔB及びSvの両測定値により視認性を評価しなくてもよく、ΔBのみで視認性を評価してもよい。また、スムージング処理は、
図2では撮影で得られた画像に対して、観察地点−明度グラフを作成する前に行っているが、これに限らず、例えば、観察地点−明度グラフを作成した後に行ってもよい。
銅箔の表面状態の評価装置10を用いた銅箔の表面状態の評価方法では、まず、少なくとも一方の表面が粗化処理などの表面処理をされた表面処理金属箔を、粗化処理などの表面処理をされた表面側から、透明基材の少なくとも一方の表面に貼り合わせた後、エッチングで前記金属箔を除去して作製された透明基材17を準備する。次に、透明基材17の下に存在するマーク16を、透明基材17越しに撮影手段11によって撮影する。撮影手段11によって撮影された画像の信号は、コンピュータ12へ送られる。コンピュータ12の観察地点−明度グラフ作製手段は、撮像手段11からの画像信号について、観察されたマーク16が伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して観察地点−明度グラフを作製する。コンピュータ12の銅箔の表面状態評価手段は、当該観察地点−明度グラフにおいて、マーク16の端部からマーク16がない部分にかけて生じる明度曲線によって透明基材17の視認性を評価し、当該視認性の評価結果に基づいて、透明基材17に貼り合わせられていた表面処理金属箔の表面状態を評価する。従来、製造ラインで実際に作製しなければ、位置合わせ等のために設けられたマークを透明基材越しに視認することが可能か否かを判断できず、製造コストの点で問題があった。しかしながら、本発明に係る銅箔の表面状態の評価装置10を用いれば、上記構成により、実験室のみでも容易に効率良く透明基材17の視認性を正確に評価し、それによって効率良く正確に銅箔の表面状態の評価をすることが可能となる。例えば、透明基材17の視認性の評価結果が良好である場合を、そのまま銅箔の表面状態が良好であると評価することができる。
【0037】
コンピュータ12の銅箔の表面状態評価手段は、マーク16の端部からマーク16がない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)を用いて視認性の評価を行い、この評価結果を用いて銅箔の表面状態の評価を行う。
【0038】
また、コンピュータ12の銅箔の表面状態評価手段は、マーク16の端部からマーク16がない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)と、観察地点−明度グラフにおいて、明度曲線とBtとの交点の内、マーク16に最も近い交点の位置を示す値(前記観察地点−明度グラフの横軸の値)をt1として、明度曲線とBtとの交点からBtを基準に0.1ΔBまでの深さ範囲において、明度曲線と0.1ΔBとの交点の内、マークに最も近い交点の位置を示す値(前記観察地点−明度グラフの横軸の値)をt2としたときに、下記(1)式で定義されるSvと、
Sv=(ΔB×0.1)/(t1−t2) (1)
を用いて視認性の評価を行い、この評価結果を用いて銅箔の表面状態の評価を行ってもよい。
なお、上述した観察位置-明度グラフにおいて、横軸は位置情報(ピクセル×0.1)、縦軸は明度(階調)の値を示す。
このような構成によれば、実験室のみでも容易に効率良く透明基材17の視認性をより正確に評価を行うことができ、この評価結果を用いて実験室のみでも容易に効率良く銅箔の表面状態の評価を行うことができる。
【0039】
コンピュータ12は、撮影手段11による撮影によって得られた画像について、明度のばらつきを緩和させるスムージング処理手段をさらに備え、観察地点−明度グラフ作製手段が、スムージング処理後の明度を用いて観察地点−明度グラフを作製するのが好ましい。撮影手段11による撮影によって得られた画像から得られる明度のノイズを含んだデータ(原波形)に対して、スムージング処理手段によるスムージング処理を行うことで、当該明度のばらつきが緩和するため、透明基材17の視認性をより正確に評価することが可能となる。スムージング処理手段によるスムージング処理としては、種々ある平滑化プログラムにより行うことができ、例えば、2・3次多項式適合法によるスムージング処理、フーリエ変換によるスムージング処理、或いは、移動平均法によるスムージング処理等を用いることができる。なお、スムージング処理は、公知の種々ある平滑化プログラムを用いて行ってもよい。また、明度データのスムージング処理はマーク16の有る部分、無い部分の両方について行ってもよく、マーク16の有る部分について行ってもよく、マーク16の無い部分に行ってもよく、部分的に行ってもよい。
なお、撮影手段11による撮影によって得られた画像について、当該明度のスムージング処理を行う前に、あらかじめ当該明度のノイズを含んだデータ(原波形)の観察地点−明度グラフ作製を行ってもよい。
【0040】
また、銅箔の表面状態評価手段による視認性評価において、上記のΔB値のみに基づいて視認性を評価する場合は、マーク16の端部からマーク16がない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔBが40以上となる場合を視認性並びに銅箔の表面状態が良好と判定してもよい。
さらに、銅箔の表面状態評価手段による視認性評価において、上記のΔB値及びSv値に基づいて視認性を評価する場合は、マーク16の端部からマーク16がない部分にかけて生じる明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔBが40以上であり、観察地点−明度グラフにおいて、明度曲線とBtとの交点の内、マークに最も近い交点の位置を示す値(前記観察地点−明度グラフの横軸の値)をt1として、明度曲線とBtとの交点からBtを基準に0.1ΔBまでの深さ範囲において、明度曲線と0.1ΔBとの交点の内、マーク16に最も近い交点の位置を示す値(前記観察地点−明度グラフの横軸の値)をt2としたときに、Svが3.5以上となる場合を視認性並びに銅箔の表面状態が良好と判定してもよい。
Svは、3.9以上、好ましくは4.5以上、好ましくは5.0以上、より好ましくは5.5以上となる場合を視認性並びに銅箔の表面状態が良好と判定するのがより好ましい。また、Svの上限は特に限定する必要はないが、例えば70以下、30以下、15以下、10以下である。
ΔB(ΔB=Bt−Bb)は、50以上である場合を視認性並びに銅箔の表面状態が良好と判定するのが好ましく、60以上である場合を視認性並びに銅箔の表面状態が良好と判定するのがより好ましい。ΔBの上限は特に限定する必要は無いが、例えば100以下、あるいは80以下、あるいは70以下である。このような評価によれば、透明基材17の視認性を効率良く、更に正確に評価を行うことができ、この評価結果を用いて効率良く、更に正確に銅箔の表面状態の評価を行うことができる。
【0041】
ここで、「明度曲線のトップ平均値Bt」、「明度曲線のボトム平均値Bb」、及び、後述の「t1」、「t2」、「Sv」について、図を用いて説明する。また、「明度曲線のボトム平均値Bb」については、マークの幅を大きくした(例えばマークの幅は0.7mm以上、例えば0.8mm以上、例えば5mm以下、4mm以下、例えば約1.3mmとすることができる。)としたものと、マークの幅を小さくした(例えばマークの幅は0.01mm以上、0.05mm以上、0.1mm以上、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、例えば0.3mmとすることができる。)としたものとでは、規定が異なっているため、それぞれの場合について説明する。
図3に、マークの幅を大きくした(約1.3mmとした)場合のBt及びBbを定義する模式図を示す。
図3の「マーク」は、上記CCDカメラによる撮影で得られた画像に観察された印刷物のライン状のマーク(幅約1.3mm)を示している。当該マークに重なるように描かれた曲線が上記観察地点−明度グラフにおいて、マークの端部からマークがない部分にかけて生じる明度曲線を示している。
図3に示すように、「明度曲線のトップ平均値Bt」は、マークの両側の端部位置から100μm離れた位置から30μm間隔で5箇所(両側で合計10箇所)測定したときの明度の平均値を示す。「明度曲線のボトム平均値Bb」は、マークの端部位置から100μm内側に入った位置から100μm間隔で11箇所測定したときの明度の平均値を示す。なお、明度の平均値を測定するための観察地点の間隔は、明度曲線の形に応じて適宜1μm〜500μmの範囲で採用することができる。観察地点の偏りを避けるため、観察地点の間隔は略等間隔であるか、等間隔であることが好ましい。なお、観察地点の間隔は略等間隔でなくても良く、等間隔でなくても良い。また、測定間隔が広いほど、特定の観察地点の影響を排除することができ、観察地点による誤差を軽減できると考える。
図4(a)及び
図4(b)に、マークの幅を約0.3mmとした場合のBt及びBbを定義する模式図を示す。マークの幅を約0.3mmとした場合、
図4(a)に示すようにV型の明度曲線となる場合と、
図4(b)に示すように約1.3mmの場合と同様に底部を有する明度曲線となる場合がある。いずれの場合も「明度曲線のトップ平均値Bt」は、マークの両側の端部位置から50μm離れた位置から、マークの幅を約1.3mmとした場合と同様に、30μm間隔で5箇所(両側で合計10箇所)測定したときの明度の平均値を示す。一方、「明度曲線のボトム平均値Bb」は、明度曲線が
図4(a)に示すようにV型となる場合は、このV字の谷の先端部における明度の最低値を示し、
図4(b)の底部を有する場合は、約0.3mmの中心部の値を示す。なお、明度の平均値を測定するための観察地点の間隔は、明度曲線の形に応じて適宜1μm〜500μmの範囲で採用することができる。観察地点の偏りを避けるため、観察地点の間隔は略等間隔であるか、等間隔であることが好ましい。なお、観察地点の間隔は略等間隔でなくてもよく、等間隔でなくてもよい。また、測定間隔が広いほど、特定の観察地点の影響を排除することができ、観測地点による誤差を軽減できると考える。
図5に、t1及びt2及びSvを定義する模式図を示す。「t1(ピクセル×0.1)」は、明度曲線とBtとの交点の内、前記ライン状マークに最も近い交点並びにその交点の位置を示す値(前記観察地点−明度グラフの横軸の値)を示す。「t2(ピクセル×0.1)」は、明度曲線とBtとの交点からBtを基準に0.1ΔBまでの深さ範囲において、明度曲線と0.1ΔBとの交点の内、前記ライン状マークに最も近い交点並びにその交点の位置を示す値(前記観察地点−明度グラフの横軸の値)を示す。このとき、t1およびt2を結ぶ線で示される明度曲線の傾きについては、y軸方向に0.1ΔB、x軸方向に(t1−t2)で計算されるSv(階調/ピクセル×0.1)で定義される。なお、横軸の1ピクセルは10μm長さに相当する。また、Svは、マークの両側を測定し、小さい値を採用する。さらに、明度曲線の形状が不安定で上記「明度曲線とBtとの交点」が複数存在する場合は、最もマークに近い交点を採用する。
撮影手段11で撮影した上記画像において、マークが付されていない部分では高い明度となるが、マーク端部に到達したとたんに明度が低下する。透明基材17の視認性が良好であれば、このような明度の低下状態が明確に観察される。一方、透明基材17の視認性が不良であれば、明度がマーク端部付近で一気に「高」から「低」へ急に下がるのではなく、低下の状態が緩やかとなり、明度の低下状態が不明確となってしまう。
本発明はこのような知見に基づき、透明基材17に対し、例えばマークを付した印刷物を下に置き、透明基材17越しに撮影手段11で撮影した上記マーク部分の画像から得られる観察地点−明度グラフにおいて描かれるマーク端部付近の明度曲線を制御している。より詳細には、明度曲線のトップ平均値Btとボトム平均値Bbとの差ΔB(ΔB=Bt−Bb)を40以上とし、観察地点−明度グラフにおいて、明度曲線とBtとの交点の内、前記ライン状マークに最も近い交点の位置を示す値(前記観察地点−明度グラフの横軸の値)をt1として、明度曲線とBtとの交点からBtを基準に0.1ΔBまでの深さ範囲において、明度曲線と0.1ΔBとの交点の内、マークに最も近い交点の位置を示す値(前記観察地点−明度グラフの横軸の値)をt2としたときに、上記(1)式で定義されるSvを評価することで、正確な透明基板の視認性評価を可能とし、この評価結果を用いて効率良く、更に正確に銅箔の表面状態の評価を行うことができる。Svは、3.5以上となる場合を視認性並びに銅箔の表面状態が良好と判定するのが好ましい。Svは、3.9以上、好ましくは4.5以上、好ましくは5.0以上、より好ましくは5.5以上となる場合を視認性並びに銅箔の表面状態が良好と判定するのがより好ましい。また、ΔBは好ましくは50以上となる場合を視認性並びに銅箔の表面状態が良好と判定するのがより好ましく、好ましくは60以上となる場合を視認性並びに銅箔の表面状態が良好と判定すると良い。ΔBの上限は特に限定する必要は無いが、例えば100以下、あるいは80以下、あるいは70以下である。また、Svの上限は特に限定する必要はないが、例えば70以下、30以下、15以下、10以下である。このような構成によれば、マークとマークで無い部分との境界がより明確になり、位置決め精度が向上して、マーク画像認識による誤差が少なくなり、より正確に位置合わせができるようになる。従って、Sv、ΔBの値が、上述のSv、ΔBの値の範囲内である場合に、銅箔の表面状態が良好であると判定してもよい。
【0042】
また、上述のような処理手順をプログラムとしてコンピュータに実行させることで、透明基材の視認性を効率良く正確に評価することができ、この評価結果を用いて効率良く、正確に銅箔の表面状態の評価を行うことができる。
【0043】
さらに、このプログラムを光学、あるいは磁気ディスクなどの記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録させて用いることにより、他のコンピュータでもこのプログラムを実現でき、上述の処理手順と同様の作用効果を得ることができる。
【実施例】
【0044】
実施例A1〜30及び実施例B1〜14として、各種銅箔を準備し、一方の表面に、粗化処理として表1に記載の条件にてめっき処理を行った。
上述の粗化めっき処理を行った後、実施例A1〜10、12〜27、実施例B3、4、6、9〜15について次の耐熱層および防錆層形成のためのめっき処理を行った。
耐熱層1の形成条件を以下に示す。
液組成 :ニッケル5〜20g/L、コバルト1〜8g/L
pH :2〜3
液温 :40〜60℃
電流密度 :5〜20A/dm
2
クーロン量:10〜20As/dm
2
上記耐熱層1を施した銅箔上に、耐熱層2を形成した。実施例B5、7、8については、粗化めっき処理は行わず、準備した銅箔に、この耐熱層2を直接形成した。耐熱層2の形成条件を以下に示す。
液組成 :ニッケル2〜30g/L、亜鉛2〜30g/L
pH :3〜4
液温 :30〜50℃
電流密度 :1〜2A/dm
2
クーロン量:1〜2As/dm
2
上記耐熱層1及び2を施した銅箔上に、さらに防錆層を形成した。防錆層の形成条件を以下に示す。
液組成 :重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH :3〜4
液温 :50〜60℃
電流密度 :0〜2A/dm
2(浸漬クロメート処理のため)
クーロン量:0〜2As/dm
2(浸漬クロメート処理のため)
上記耐熱層1、2及び防錆層を施した銅箔上に、さらに耐候性層を形成した。形成条件を以下に示す。
アミノ基を有するシランカップリング剤として、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(実施例A17、24〜27)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(実施例A1〜16)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(実施例A18、28、29)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(実施例A19)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(実施例A20、21)、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン(実施例A22)、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(実施例A23)で、塗布・乾燥を行い、耐候性層を形成した。これらのシランカップリング剤を2種以上の組み合わせで用いることもできる。同様に実施例B1〜15においては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランで塗布・乾燥を行い、耐候性層を形成した。
【0045】
なお、圧延銅箔は以下のように製造した。表2に示す組成の銅インゴットを製造し、熱間圧延を行った後、300〜800℃の連続焼鈍ラインの焼鈍と冷間圧延を繰り返して1〜2mm厚の圧延板を得た。この圧延板を300〜800℃の連続焼鈍ラインで焼鈍して再結晶させ、表2の厚みまで最終冷間圧延し、銅箔を得た。表2の「種類」の欄の「タフピッチ銅」はJIS H3100 C1100に規格されているタフピッチ銅を、「無酸素銅」はJIS H3100 C1020に規格されている無酸素銅を示す。また、「タフピッチ銅+Ag:100ppm」はタフピッチ銅にAgを100質量ppm添加したことを意味する。
電解銅箔はJX日鉱日石金属社製電解銅箔HLP箔を用いた。電解研磨又は化学研磨を行った場合には、電解研磨又は化学研磨後の板厚を記載した。
なお、表2に表面処理前の銅箔作製工程のポイントを記載した。「高光沢圧延」は、最終の冷間圧延(最終の再結晶焼鈍後の冷間圧延)を記載の油膜当量の値で行ったことを意味する。「通常圧延」は、最終の冷間圧延(最終の再結晶焼鈍後の冷間圧延)を記載の油膜当量の値で行ったことを意味する。「化学研磨」、「電解研磨」は、以下の条件で行ったことを意味する。
「化学研磨」はH
2SO
4が1〜3質量%、H
2O
2が0.05〜0.15質量%、残部水のエッチング液を用い、研磨時間を1時間とした。
「電解研磨」はリン酸67%+硫酸10%+水23%の条件で、電圧10V/cm
2、表2に記載の時間(10秒間の電解研磨を行うと、研磨量は1〜2μmとなる。)で行った。
【0046】
上述のようにして作製した実施例の各サンプルについて、
図1に示したものと同様の構成の銅箔の表面状態の評価装置を用いて、各種評価を下記の通り行った。
(1)明度曲線
銅箔をポリイミドフィルム(カネカ製厚み25μm、50μm、東レデュポン製厚み50μm)の両面に貼り合わせ、銅箔をエッチング(塩化第二鉄水溶液)で除去してサンプルフィルムを作製した。続いて、ライン状の黒色マークを印刷した印刷物を、サンプルフィルムの下に敷いて、印刷物をサンプルフィルム越しにCCDカメラで撮影した。ここで使用したマークの幅は、0.1〜0.4mmであった。次に、コンピュータによって、撮影によって得られた画像について、観察されたライン状のマークが伸びる方向と垂直な方向に沿って観察地点ごとの明度を測定して作製した、観察地点−明度グラフにおいて、マークの端部からマークがない部分にかけて生じる明度曲線および、ΔB及びt1、t2、Svを測定した。このとき用いた撮影手段の構成及び明度曲線の測定方法を表す模式図を
図6に示す。
また、ΔB及びt1、t2、Svは、
図5で示すように下記撮影手段で測定した。なお、横軸の1ピクセルは10μm長さに相当する。
撮影手段は、CCDカメラ、マークを付した紙を下に置いたポリイミド基板を置くステージ(白色)、ポリイミド基板の撮影部に光を照射する照明用電源、撮影対象のマークが付された紙を下に置いた評価用ポリイミド基板をステージ上に搬送する搬送機(不図示)を備えている。当該撮影手段の主な仕様を以下に示す:
・撮影手段:株式会社ニレコ製シート検査装置Mujiken
・CCDカメラ:8192画素(160MHz)、1024階調デジタル(10ビット)
・照明用電源:高周波点灯電源(電源ユニット×2)
・照明:蛍光灯(30W)
なお、
図6に示された明度について、0は「黒」を意味し、明度255は「白」を意味し、「黒」から「白」までの灰色の程度(白黒の濃淡、グレースケール)を256階調に分割して表示している。
なお、使用したマークの幅が0.1〜0.4mmと小さいものであったため、作製した明度曲線は
図4(a)に示すようなV型または
図4(b)に示すような底部を有するV型となった。
【0047】
(2)視認性(樹脂透明性)及び銅箔の表面状態の評価;
銅箔をポリイミドフィルム(カネカ製厚み25μm、50μm、東レデュポン製厚み50μm)の両面に貼り合わせ、銅箔をエッチング(塩化第二鉄水溶液)で除去してサンプルフィルムを作成した。なお、粗化処理を行った銅箔については、銅箔の粗化処理した面を前述のポリイミドフィルムに貼り合わせて前述のサンプルフィルムを作製した。得られた樹脂層の一面に印刷物(直径6cmの黒色の円)を貼り付け、反対面から樹脂層越しに印刷物の視認性を判定した。印刷物の黒色の円の輪郭が円周の90%以上の長さにおいてはっきりしたものを「◎」、黒色の円の輪郭が円周の80%以上90%未満の長さにおいてはっきりしたものを「○」(以上合格)、黒色の円の輪郭が円周の0〜80%未満の長さにおいてはっきりしたもの及び輪郭が崩れたものを「×」(不合格)と評価した。そして、当該視認性の評価をそのまま、銅箔表面状態の評価とした。
【0048】
(3)歩留まり
銅箔をポリイミドフィルム(カネカ製厚み25μm、50μm、東レデュポン製厚み50μm)の両面に貼り合わせ、銅箔をエッチング(塩化第二鉄水溶液)して、L/Sが30μm/30μmの回路幅のFPCを作成した。なお、粗化処理を行った銅箔については、銅箔の粗化処理した面を前述のポリイミドフィルムに貼り合わせた。その後、20μm×20μm角のマークをポリイミド越しにCCDカメラで検出することを試みた。10回中9回以上検出できた場合には「◎」、7〜8回検出できた場合には「○」、6回検出できた場合には「△」、5回以下検出できた場合には「×」とした。
上記各試験の条件及び評価を表1〜5に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
(評価結果)
実施例のポリイミド基材について、いずれも製造ラインで実際に製造することなく、実験室レベルで容易に且つ正確に視認性を評価することができた。銅箔表面状態は、表中の視認性の評価の「◎」、「○」(以上合格)、「×」(不合格)をそのまま適用することで評価することで、銅箔の表面状態についても容易に且つ正確に評価することができた。
また、幅が1.0〜2.0mmと大きいマークを上記例の代わりに用いて上記実施例と同様の試験を行ったところ、明度曲線として
図3に示す底部のある図が得られた。
図7に、マークの幅が1.0〜2.0mmの場合の明度曲線の評価の際の、撮影手段の構成及び明度曲線の測定方法を表す模式図を示す。この場合も、上記実施例と同じ結果が得られ、かつ上記実施例と同様に、ポリイミド基材について、製造ラインで実際に製造することなく、実験室レベルで容易に且つ正確に視認性を評価することができ、これによって銅箔の表面状態についても容易に且つ正確に評価することができた。
【符号の説明】
【0055】
10 銅箔の表面状態の評価装置
11 撮影手段
12 コンピュータ(観察地点−明度グラフ作製手段、銅箔の表面状態評価手段、スムージング処理手段)
13 表示手段
14 照明手段
15 ステージ
16 マーク
17 透明基材