特許第6141008号(P6141008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141008
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/476 20060101AFI20170529BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   A61F13/476
   A61F13/47 300
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-287991(P2012-287991)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-36832(P2014-36832A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2012-160826(P2012-160826)
(32)【優先日】2012年7月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】工藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄二
(72)【発明者】
【氏名】安井 真理
(72)【発明者】
【氏名】松島 梓
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−082061(JP,A)
【文献】 特開2011−167573(JP,A)
【文献】 特開2011−143292(JP,A)
【文献】 特開2009−213719(JP,A)
【文献】 特開2006−034495(JP,A)
【文献】 特開2007−135940(JP,A)
【文献】 特開2003−284741(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0243087(US,A1)
【文献】 特開2005−007144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向と、前後方向に直交する幅方向と、を有する吸収性物品において、
吸収体を備える本体部と、
着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域の中心を含む中央領域よりも後方において、前記本体部の幅方向外縁から幅方向外側に突出するヒップフラップ部と、を備え、
前記吸収性物品の外縁の少なくとも一部は、外縁圧搾部を有し、
前記ヒップフラップ部は、非肌当接面側にサイド粘着部を備え、
前記ヒップフラップ部は、
第1くびれ部と、
前記第1くびれ部よりも後方に位置し、前記第1くびれ部よりも幅方向外側に突出すると共に、前記ヒップフラップ部の幅が最大となる部分を含む第1フラップ部と、
前記第1くびれ部よりも前方に位置し、前記第1くびれ部よりも幅方向外側に突出する第2フラップ部と、を備え、
前記第2フラップ部の外縁には、前記外縁圧搾部が配置され、
前記サイド粘着部は、前記第1フラップ部の非肌当接面側に配置され
前記ヒップフラップ部は、
前記第2フラップ部よりも前方に位置する第2くびれ部を備え、
前記第2くびれ部は、前記第1くびれ部よりも、幅方向内側に位置する、吸収性物品。
【請求項2】
前記第1フラップ部の外縁には、前記外縁圧搾部が配置され、
前記サイド粘着部は、前記第1フラップ部における前記外縁圧搾部の幅方向内縁よりも幅方向内側に位置すると共に、前記第1くびれ部よりも幅方向内側に位置する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1フラップ部における前記外縁圧搾部の幅方向内縁から幅方向外縁までの長さは、前記第1フラップ部における前記外縁圧搾部の幅方向内縁から前記サイド粘着部の幅方向外側端部までの長さよりも短い、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1フラップ部における前記外縁圧搾部は、前記第1くびれ部よりも後方に位置し、前記第2フラップ部における前記外縁圧搾部は、前記第1くびれ部よりも前方に位置する、請求項2又は3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第2フラップ部における前記外縁圧搾部は、前記第1くびれ部と前記第2くびれ部とを通る直線よりも、幅方向外側に位置する、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記ヒップフラップ部は、肌当接面側に配置されたサイドシートと、非肌当接面側に配置されたバックシートと、前記サイドシートと前記バックシートとの間に配置された中間層と、を備え、
前記中間層は、前記ヒップフラップ部に配置された前記外縁圧搾部よりも、幅方向内側に位置する、請求項4又は5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記ヒップフラップ部は、前記第1フラップ部よりも後方に後方くびれ部を備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記本体部は、非肌当接面側に本体粘着部を備え、
前記本体部の後端部の少なくとも一部に前記外縁圧搾部が配置され、
前記本体部の後端部に配置された前記外縁圧搾部の幅方向外側端部と、前記ヒップフラップ部における前記外縁圧搾部の後端部との間は、前記外縁圧搾部が配置されない非圧搾部であり、
前記サイド粘着部及び前記本体粘着部は、前記非圧搾部から少なくとも前記中央領域の後端部まで前後方向に延びる領域よりも幅方向外側及び内側にそれぞれ配置される、請求項1乃至のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記ヒップフラップ部は、肌当接面側に配置されたサイドシートと、非肌当接面側に配置されたバックシートと、前記サイドシートと前記バックシートとの間に配置された中間層と、を備え、
前記中間層の幅方向内縁に沿って前後方向に延びる直線は、前記非圧搾部の幅方向外側端部を通り、前記吸収体の幅方向外縁に沿って前後方向に延びる直線は、前記非圧搾部の幅方向外側端部を通る、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記ヒップフラップ部は、サイド圧搾部を有し、
前記サイド圧搾部は、後方に向かうにつれて幅方向内側から幅方向外側に延び、
前記サイド粘着部は、前記サイド圧搾部よりも後方に位置する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記サイド圧搾部は、複数の圧搾部によって構成されており、
前記複数の圧搾部は、間隔を空けて配置されている、請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記外縁圧搾部は、複数の圧搾部によって構成されており、
前記外縁圧搾部を構成する複数の圧搾部は、間隔を空けて配置されており、
前記サイド圧搾部を構成する圧搾部の外形と、前記外縁圧搾部を構成する圧搾部の外形とは、異なる、請求項11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記サイド圧搾部を構成する圧搾部の間隔は、前記外縁圧搾部を構成する圧搾部の間隔よりも大きい、請求項12に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関し、特に、ヒップフラップ部を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生理用ナプキン等の吸収性物品は、液透過性の表面層と、液不透過性の裏面層と、これらの間に配置される吸収体とを備えることにより、経血等の体液を吸収及び保持する。また、吸収性物品の周囲に経血等の体液が漏れ出し、着用者の着衣に付着することを防止するために、吸収体を備える本体部から幅方向外側に延出するサイドフラップ部を設けた吸収性物品が知られている。
【0003】
吸収性物品のサイドフラップ部は、着用者の下着の非肌当接面側に折り返されて固定されるウイング部と、ウイング部よりも後方に配置され、着用者の下着の肌当接面に固定されるヒップフラップ部とを含む。ウイング部及びヒップフラップ部は、それぞれの裏面に配置された粘着部を介して、着用者の下着に固定される。
【0004】
サイドフラップ部は、吸収体を備える本体部よりも剛性が低いため、特に、使用中に着用者の肌と接するヒップフラップ部はよれやすく、また、外縁が捲れやすい。ヒップフラップ部のよれ又は捲れが、裏面に粘着部が配置された部分に及ぶと、粘着部が着用者の下着から剥がれることがある。その結果、サイドフラップ部の下着に対する固定が不十分となり、経血等の体液が漏れて、着用者の下着に付着するおそれがある。
【0005】
特許文献1には、ヒップフラップ部の外縁に、前後方向に延びる直線部分を設けた生理用ナプキンが開示されている。ヒップフラップ部の幅が最大となる部分の外縁を直線形状とすることにより、ヒップフラップ部の外側端部に矩形の粘着部を配置すると共に、粘着部の面積を大きく確保し、ヒップフラップ部の固定状態を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−118877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、吸収性物品の着用者が脚を閉じると、ウイング部の幅方向外側から内側に向かって力がかかる。このとき、ウイング部から後方に向かって力がかかり、ウイング部より後方に位置するヒップフラップ部に力がかかる。特許文献1に記載された生理用ナプキンは、使用中にかかる力を考慮して粘着部の位置を定めたものではなく、ウイング部から力が伝わることによってヒップフラップ部全域によれが広がり、粘着部が剥がれるおそれがある。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、ヒップフラップ部の固定状態を改善した吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、以下の特徴を有する。本発明の第1の特徴は、前後方向(前後方向L)と、前後方向に直交する幅方向(幅方向W)と、を有する吸収性物品(吸収性物品1)において、吸収体(吸収体4)を備える本体部(本体部M)と、着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域(排泄口当接領域C)の中心を含む中央領域(中央領域CA)よりも後方において、前記本体部の幅方向外縁から幅方向外側に突出するヒップフラップ部(ヒップフラップ部HF)と、を備え、前記吸収性物品の外縁の少なくとも一部は、前記吸収性物品の外縁が厚み方向に圧搾された外縁圧搾部(シール部10)を有し、前記ヒップフラップ部は、非肌当接面側にサイド粘着部(ヒップフラップ部ずれ止め材8)を備え、前記ヒップフラップ部は、第1くびれ部(第1くびれ部31)と、前記第1くびれ部よりも後方に位置し、前記第1くびれ部よりも幅方向外側に突出すると共に、前記ヒップフラップ部の幅が最大となる部分を含む第1フラップ部(第1フラップ部41)と、前記第1くびれ部よりも前方に位置し、前記第1くびれ部よりも幅方向外側に突出する第2フラップ部(第2フラップ部42)と、を備え、前記第2フラップ部の外縁には、前記外縁圧搾部が配置され、前記サイド粘着部は、前記第1フラップ部の非肌当接面側に配置されることを要旨とする。
【0010】
かかる特徴によれば、ヒップフラップ部の中で最も幅方向外側に突出した第1フラップ部より前方に第1くびれ部が位置し、第1くびれ部の前方に第2フラップ部が位置する。吸収性物品の着用者が脚を閉じると、中央領域の幅方向外側から内側に向かって力がかかり、その力が後方に伝達される。ヒップフラップ部に伝達された力は、第2フラップ部を変形させるが、第1くびれ部によって吸収され、第1くびれ部よりも後方の第1フラップ部にかかる力が軽減される。
【0011】
また、第2フラップ部の外縁には外縁圧搾部が配置される。外縁圧搾部は剛性が高められ、外縁圧搾部の内縁において周辺部分と剛性が変化する。そのため、第2フラップ部が前方からの力、すなわち、第2フラップ部を変形させようとする力を受けても、剛性の変化する外縁圧搾部の内縁を起点として外縁が内側に折れ返るため、外縁圧搾部の内縁よりも幅方向内側の領域には、よれが生じにくい。さらに、第2フラップ部の後方には第1くびれ部が位置するため、第1くびれ部より後方の第1フラップ部は、第2フラップ部におけるよれ又は捲れの影響を受けにくい。その結果、第1フラップ部に配置されたサイド粘着部による下着への固定状態が維持される。
【0012】
また、本発明の第2の特徴は、前記第1フラップ部の外縁には、前記外縁圧搾部が配置され、前記サイド粘着部は、前記第1フラップ部における前記外縁圧搾部の幅方向内縁よりも幅方向内側に位置すると共に、前記第1くびれ部よりも幅方向内側に位置することを要旨とする。
【0013】
かかる特徴によれば、第1フラップ部にも外縁圧搾部が配置されるため、第1フラップ部の外縁が捲れたとしても、外縁圧搾部の内縁を起点として折れ返りやすい。第1フラップ部に前方からの力がかかる場合、前方に位置する第1くびれ部を起点として、外縁圧搾部の内縁に沿うように折れ返りやすい。そこで、第1フラップ部における外縁圧搾部の幅方向内縁よりも幅方向内側、かつ第1くびれ部よりも幅方向内側に位置するサイド粘着部には、外縁の捲れが影響しにくい。
【0014】
また、本発明の第3の特徴は、前記第1フラップ部における前記外縁圧搾部の幅方向内縁から幅方向外縁までの長さ(幅w)は、前記第1フラップ部における前記外縁圧搾部の幅方向内縁から前記サイド粘着部の幅方向外側端部までの長さ(距離a)よりも短いことを要旨とする。
【0015】
かかる特徴によれば、第1フラップ部において、外縁圧搾部の内縁を起点として外縁が非肌当接面側に折れ返る場合であっても、外縁圧搾部の幅はサイド粘着部から外縁圧搾部までの距離よりも小さいため、外縁の捲れた部分がサイド粘着部に到達せず、サイド粘着部が捲れない。
【0016】
また、本発明の第4の特徴は、前記ヒップフラップ部は、前記第2フラップ部よりも前方に位置する第2くびれ部(第2くびれ部32)を備え、前記第2くびれ部は、前記第1くびれ部よりも幅方向内側に位置することを要旨とする。
【0017】
かかる特徴によれば、第2フラップ部の前方に第2くびれ部が位置することから、第2フラップ部の外縁が捲れる場合、第1くびれ部と第2くびれ部を結んだ直線に沿って折れ返りやすく、それよりも内側の領域が捲れることを防止する。
【0018】
また、本発明の第5の特徴は、前記第1フラップ部における前記外縁圧搾部は、前記第1くびれ部よりも後方に位置し、前記第2フラップ部における前記外縁圧搾部は、前記第1くびれ部よりも前方に位置することを要旨とする。
【0019】
かかる特徴によれば、第1くびれ部には外縁圧搾部が配置されていない。そのため、第1くびれ部は、第1フラップ部及び第2フラップ部の外縁圧搾部よりも剛性が低く、よれ又は捲れが生じる起点となりやすい。中央領域からの力がかかった場合に、第1くびれ部を起点としてよれ又は捲れが生じさせることで、それよりもさらに幅方向内側及び後方の領域によれが生じることを防止する。
【0020】
また、本発明の第6の特徴は、前記第2フラップ部における前記外縁圧搾部は、前記第1くびれ部と前記第2くびれ部とを通る直線(仮想線VL)よりも、幅方向外側に位置することを要旨とする。
【0021】
かかる特徴によれば、第1くびれ部及び第2くびれ部は、外縁圧搾部が配置されていないため、第2フラップ部の外縁圧搾部よりも剛性が低い。そのため、第2フラップ部の外縁は、第1くびれ部及び第2くびれ部を通る直線上で折れ返りやすい。中央領域からの力がかかった場合に、第2フラップ部の外縁を第1くびれ部及び第2くびれ部を通る直線上で折れ返らせることで、それよりもさらに内側及び後方の領域によれが生じることを防止する。
【0022】
また、本発明の第7の特徴は、前記ヒップフラップ部は、肌当接面側に配置されたサイドシート(サイドシート11)と、非肌当接面側に配置されたバックシート(バックシート3)と、前記サイドシートと前記バックシートとの間に配置された中間層(中間層12)と、を備え、前記中間層は、前記ヒップフラップ部に配置された前記外縁圧搾部よりも、幅方向内側に位置することを要旨とする。
【0023】
かかる特徴によれば、中間層の配置された領域は剛性が高められるため、中間層の配置された領域と外縁圧搾部との間で剛性が変化し、折れ返りの起点となりやすい。中間層の配置された領域と外縁圧搾部との間で折れ返らせることで、それよりもさらに内側の領域によれが生じることを防止する。
【0024】
また、本発明の第8の特徴は、前記ヒップフラップ部は、前記第1フラップ部よりも後方に後方くびれ部(後方くびれ部33)を備えることを要旨とする。
【0025】
かかる特徴によれば、第1フラップ部は、幅が最大となる部分から後方くびれ部に向かうにつれて幅が小さくなる。中央領域よりも後方の領域が長い吸収性物品は、使用時に後端部が幅方向に振れるため、ヒップフラップ部の後端部が捲れやすい。そこで、第1フラップ部の後方に後方くびれ部を配置し、後端部からの捲れを後方くびれ部で止めることにより、第1フラップ部が捲れることを防止する。
【0026】
また、本発明の第9の特徴は、前記本体部は、非肌当接面側に本体粘着部(本体部ずれ止め材6)を備え、前記本体部は、その後端部の少なくとも一部に前記外縁圧搾部が配置され、前記本体部の後端部に配置された前記外縁圧搾部の幅方向外側端部と、前記ヒップフラップ部における前記外縁圧搾部の後端部との間は、前記外縁圧搾部が配置されない非圧搾部(非圧搾部X)であり、前記サイド粘着部及び前記本体粘着部は、前記非圧搾部から少なくとも前記中央領域の後端部まで前後方向に延びる領域よりも幅方向外側及び内側にそれぞれ配置されることを要旨とする。
【0027】
かかる特徴によれば、非圧搾部は、隣接する外縁圧搾部よりも剛性が低い。吸収性物品の使用時、後端部が幅方向に振れて、ヒップフラップ部を変形させようとする力が加わった場合に、非圧搾部がよれの生じる起点となりやすい。また、非圧搾部から前方に延びる領域は、本体粘着部もサイド粘着部も配置されていないため、非圧搾部を起点として生じたよれが延びやすい。その結果、他の領域によれが生じることを防止することができる。
【0028】
また、本発明の第10の特徴は、前記中間層の幅方向内縁に沿って前後方向に延びる直線は、前記非圧搾部の幅方向外側端部を通り、前記吸収体の幅方向外縁に沿って前後方向に延びる直線は、前記非圧搾部の幅方向外側端部を通ることを要旨とする。
【0029】
かかる特徴によれば、非圧搾部から前方に延びる、よれの生じやすい領域と、吸収体も中間層も配置されておらず、剛性の低い領域とが一致する。そのため、この領域は、吸収性物品の後端部が幅方向に振れた場合にかかる力を吸収し、第1フラップ部への影響を抑えることができる。
【0030】
また、本発明の第11の特徴は、前記ヒップフラップ部は、厚み方向に圧搾されたサイド圧搾部(第2のエンボス線22)を有し、前記サイド圧搾部は、後方に向かうにつれて幅方向内側から幅方向外側に延び、前記サイド粘着部は、前記サイド圧搾部よりも後方に位置することを要旨とする。
【0031】
かかる特徴によれば、中央領域からの力がかかった場合に、ヒップフラップ部をサイド圧搾部に沿って折れ返らせることで、サイド圧搾部よりも後方の領域によれが生じることを防止する。その結果、サイド圧搾部よりも後方に位置するサイド粘着部による下着への固定状態が維持される。
【0032】
また、本発明の第12の特徴は、前記サイド圧搾部は、前記厚み方向に圧搾された複数の圧搾部によって構成されており、前記複数の圧搾部は、間隔を空けて配置されていることを要旨とする。
【0033】
また、本発明の第13の特徴は、前記外縁圧搾部は、前記厚み方向に圧搾された複数の圧搾部によって構成されており、前記外縁圧搾部を構成する複数の圧搾部は、間隔を空けて配置されており、前記サイド圧搾部を構成する圧搾部の外形と、前記外縁圧搾部を構成する圧搾部の外形とは、異なることを要旨とする。
【0034】
また、本発明の第14の特徴は、前記サイド圧搾部を構成する圧搾部の間隔は、前記外縁圧搾部を構成する圧搾部の間隔よりも大きいことを要旨とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、ヒップフラップ部の固定状態を改善した吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の実施形態に係る吸収性物品の表面側から見た平面図である。
図2図2は、図1に示す吸収性物品の背面図である。
図3図3は、図2に示すヒップフラップ部の拡大図である。
図4図4は、図1に示すX−X’断面の模式断面図である。
図5図5は、図1に示す吸収性物品が使用時に変形した状態を示す模式図である。
図6図6は、本発明の変形例1に係る吸収性物品の表面側から見た平面図である。
図7図7は、本発明の変形例2に係る吸収性物品の一部の表面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(全体構成)
次に、本発明に係る吸収性物品の実施形態の全体構成について、図面を参照しながら説明する。図1から図4は、本発明の実施形態に係る吸収性物品1を示す。図1は、吸収性物品の平面図であり、図2は、吸収性物品の背面図である。図3は、図2に示すヒップフラップ部の拡大図である。図4は、図1に示すX−X’断面の模式断面図である。本実施形態に係る吸収性物品1は、例えば、生理用ナプキンである。
【0038】
吸収性物品1は、前後方向Lに延びる本体部Mと、本体部Mから幅方向W外側に突出するサイドフラップ部SFとを備える。本体部Mは、着用者の肌に当接する液透過性のトップシート2と、着用者の下着と接触する液不透過性のバックシート3と、トップシート2及びバックシート3の間に配置された吸収体4と、を備える。吸収体4は、平面視にて、本体部Mの前後方向L及び幅方向Wにおける中央部分に配置される。図3に、吸収体4の外縁B4を破線で示す。本体部Mは、非肌当接面側すなわちバックシート3側に、本体部ずれ止め材6を備える。
【0039】
サイドフラップ部SFは、着用者の排泄口が当接する排泄口当接領域の中心Cを含む中央領域CAの幅方向外側に配置されるウイング部WGと、ウイング部WGの後端部よりも後方に位置するヒップフラップ部HFと、を備える。サイドフラップ部SFは、トップシート2の幅方向W外側に延びるサイドシート11と、本体部Mから幅方向W外側に延びるバックシート3と、を含む。サイドシート11は、幅方向W内側端部においてトップシート2と重なり、ホットメルト接着剤等によって接合される。
【0040】
ここで、排泄口当接領域の中心Cは、着用者の排泄口が当接する中央領域CAの前後方向及び幅方向の中心と一致する。例えば、ウイング部を有する吸収性物品においては、ウイング部の前後方向の中心が、中央領域の前後方向の中心となる。また、ウイング部を有しない吸収性物品においては、吸収体の幅方向の長さ寸法が最も短い位置が、中央領域の前後方向の中心となる。なお、排泄口当接領域Cは、着用者の股間部と当接する領域に含まれており、着用者の両脚の間に位置する。
【0041】
ウイング部WGは、着用者の下着の非肌当接面側に折り返されるように構成されている。ヒップフラップ部HFは、着用者の下着の肌当接面側に固定されるように構成されている。ウイング部WG及びヒップフラップ部HFは、非肌当接面側にそれぞれウイング部ずれ止め材及びヒップフラップ部ずれ止め材8を備える。ヒップフラップ部HFの詳細な構成については、後述する。
【0042】
吸収性物品1では、トップシート2、サイドシート11及びバックシート3の外縁が接合されて、吸収体4が内封される。接合方法としては、超音波、ホットメルト接着剤等がある。吸収性物品1の外縁の少なくとも一部には、エンボス加工を施すことによって外縁圧搾部としてのシール部10が形成されている。トップシート2及びサイドシート11とバックシート3とは、エンボス加工によって厚み方向に圧搾される。エンボス加工には、ヒートエンボス加工、超音波エンボス加工等の手法があり、ここでは任意の手法を用いることができる。吸収性物品1の外縁を接着剤等で接合することに加えて、少なくとも一部にシール部10を形成することにより、使用時に外縁の接合が弱まり、各シートがばらばらになることを防止する。図3に示すヒップフラップ部HFの拡大図において、シール部10は、ドット状の圧搾部の集合体として示されている。
【0043】
ここで、吸収性物品1の外縁とは、吸収性物品1の前後方向L及び幅方向Wにおける最も外側から、一定の距離にわたる領域を意味する。シール部10が形成される部分においては、吸収性物品1の最も外側からシール部10の内縁までの最短距離である幅wを、吸収性物品1の外縁とする。
【0044】
吸収性物品1には、トップシート2及び吸収体4を厚み方向に圧縮した圧搾溝5が形成されている。なお、圧搾溝は、少なくともトップシート2及び吸収体4を厚み方向に圧搾することによって形成されていればよく、種々の構成を採用することができる。例えば、プレス加工やエンボス加工によって形成することができ、その形状は、格子網やハニカム形状であってもよい。
【0045】
(トップシート及びバックシートの構成)
トップシート2は、体液等の液体を透過する液透過性のシートである。トップシート2は、少なくとも吸収体4の表面を覆う。トップシート2は、不織布、織布、有孔プラスチックシート、メッシュシート等、液体を透過する構造のシート状の材料であれば、特に限定されない。織布や不織布の素材としては、天然繊維、化学繊維のいずれも使用できる。
【0046】
バックシート3は、着用時の違和感を生じさせない程度の柔軟性を有する材料とすることが好ましい。バックシート3は、不透液性且つ透湿性であることが望ましく、好ましくはポリエチレン主体のフィルムであるが、炭酸カルシウム、硫酸バリウムを含んだ通気フィルムを使用することもできる。
【0047】
バックシート3の下着と接触する表面には、ホットメルト接着剤が塗布された複数の接着部が設けられている。接着部は、本体部Mの裏面側に設けられ、下着のクロッチ部に吸収性物品1を固定するための本体部ずれ止め材6と、ウイング部WGの裏面側に設けられ、クロッチ部を巻き込んでウイング部WGを固定するためのウイング部ずれ止め材9と、ヒップフラップ部HFの裏面側に設けられ、下着の後身頃に対してヒップフラップ部HFを開いた状態で固定するためのヒップフラップ部ずれ止め材8と、を有する。
【0048】
使用前の状態では、本体部ずれ止め材6は、剥離テープ7に接しており、ヒップフラップ部ずれ止め材8及びウイング部ずれ止め材9は、図示しない剥離テープに接している。剥離テープは、使用前に接着剤が劣化するのを防止している。そして、使用時に着用者によって剥離テープが剥離される。
【0049】
なお、剥離テープを有しない吸収性物品においては、吸収性物品を個別に包装する包装シートによって使用前に接着剤が劣化するのを防止するように構成されていてもよい。接着剤と包装シートが接する場合には、包装シートの表面には、接着剤の接着力を低下させることなく接着剤を剥離可能にする処理を施すことが望ましい。
【0050】
(吸収体の構成)
吸収体4は、親水性繊維、パルプを含む。吸収体4は、経血などの体液を吸収可能な材料によって形成される。吸収体4は、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によって積層して形成されてもよいし、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によってシート状に成形したエアレイドシートでもよいし、ティッシュ(例えば、目付15g/m)上に高吸収ポリマーを混入した粉砕パルプを配置し、ティッシュで包むことによって形成されていてもよい。
【0051】
吸収体4は、綿状パルプや合成パルプ等を坪量100〜300g/m程度に積層したパルプを保護紙(図示せず)で包むことによって構成されている。なお、吸収体4は、全面ほぼ均一な厚みであってもよいし、非均一な厚みであってもよい。保護紙は、パルプの形状を保持するためのものであり、例えばクレープ紙やティッシュペーパーなどを用いることができる。
【0052】
吸収体4は、前後方向Lに延び、少なくとも排泄口当接領域の中心Cを含むように設けられる。吸収体4の大きさは、バックシート3よりも略一回り程度小さい。吸収体4の幅方向Wの長さは、成人女性の股間隔に対応しており、概ね50〜80mmである。吸収体4は、ホットメルトなどの接着剤によってバックシート3に接着される。また、本実施形態では、吸収体4とトップシート2とは、ホットメルト接着剤によって接着されている。
【0053】
(サイドシートの構成)
サイドシート11は、トップシート2の幅方向W外側端から幅方向W外側に延びる。サイドシート11は、トップシート2と同様に、吸収体4よりも肌当接面側に配置される。サイドシート11は、トップシート2と同様の材料から選ぶことができる。但し、サイドシート11を乗り越えて吸収性物品1外方へ経血が流れることを防止するために、サイドシート11は疎水性又は撥水性を有することが好ましい。サイドシート11は、本体部Mの幅方向W両側縁部、ウイング部WG、及びヒップフラップ部HFを覆う。
【0054】
(ヒップフラップ部の構成)
ヒップフラップ部HFは、ヒップフラップ部HFの幅がその前後の領域の幅よりも小さい第1くびれ部31と、第1くびれ部31よりも後方に位置し、第1くびれ部31よりも幅方向外側に突出すると共に、ヒップフラップ部HFの幅が最大となる部分を含む第1フラップ部41と、第1くびれ部よりも前方に位置し、第1くびれ部よりも幅方向外側に突出する第2フラップ部42と、を備える。第2フラップ部42の外縁には、シール部10が配置され、ヒップフラップ部ずれ止め材8は、第1フラップ部41の非肌当接面側、すなわちバックシート3側に配置される。
【0055】
つまり、吸収性物品1においては、ヒップフラップ部HFの中で最も幅方向外側に突出した第1フラップ部41より前方に第1くびれ部31が位置し、第1くびれ部31の前方に第2フラップ部4が位置する。吸収性物品1の着用者が脚を閉じると、中央領域CAの幅方向外側から内側に向かって力がかかり、その力が後方に伝達される。ヒップフラップ部HFに伝達された力は、第2フラップ部42を変形させるが、第1くびれ部31で吸収される。そのため、第1フラップ部41にかかる力が軽減される。
【0056】
また、第2フラップ部42の外縁にはシール部10が配置される。シール部10は剛性が高められ、シール部10の内縁において周辺部分と剛性が変化する。そのため、第2フラップ部42が前方からの力、すなわち、第2フラップ部42を変形させようとする力を受けても、剛性の変化するシール部10の内縁を起点として外縁が内側に折れ返るため、第2フラップ部42の全域にはよれが生じにくい。さらに、第2フラップ部42の後方には第1くびれ部31が位置するため、第1くびれ部31より後方の第1フラップ部41は、第2フラップ部42におけるよれ又は捲れの影響を受けにくい。その結果、第1フラップ部41に配置されたヒップフラップ部ずれ止め材8による下着への固定状態が維持される。なお、図5に、吸収性物品1が使用時に変形した状態を示す。
【0057】
また、第1フラップ部41の外縁には、シール部10が配置され、ヒップフラップ部ずれ止め材8は、第1くびれ部31よりも幅方向内側に位置する。
【0058】
つまり、第1フラップ部41にもシール部10が配置されるため、第1フラップ部41の外縁が捲れたとしても、シール部10の内縁を起点として折れ返りやすい。第1フラップ部41に前方からの力がかかる場合、前方に位置する第1くびれ部31を起点として、シール部10の内縁に沿うように折れ返りやすい。そこで、第1くびれ部31よりも幅方向内側に位置するヒップフラップ部ずれ止め材8には、外縁の捲れが影響しにくい。
【0059】
また、ヒップフラップ部ずれ止め材8は、第1フラップ部41におけるシール部10の幅方向内縁よりも幅方向内側に位置する。ここで、第1フラップ部41におけるシール部10の幅方向内縁から幅方向外縁までの幅wは、第1フラップ部41におけるシール部10の幅方向内縁からヒップフラップ部ずれ止め材8の幅方向外側端部までの距離aよりも短い。
【0060】
つまり、第1フラップ部41において、シール部10の内縁を起点として外縁が非肌当接面側に折れ返る場合であっても、シール部10の幅wは、ヒップフラップ部ずれ止め材8からシール部10までの距離aよりも小さいため、外縁の捲れた部分がヒップフラップ部ずれ止め材8に到達せず、ヒップフラップ部ずれ止め材8が捲れない。
【0061】
また、ヒップフラップ部HFは、第2フラップ部42よりも前方に位置し、ヒップフラップ部HFの幅がその前後の領域の幅よりも小さい第2くびれ部32を備える。第2くびれ部42は、第1くびれ部31よりも幅方向内側に位置する。
【0062】
つまり、第2フラップ部42の前方に第2くびれ部32が位置することから、第2フラップ部42の外縁が捲れる場合、第1くびれ部31と第2くびれ部32を結んだ直線に沿って折れ返りやすく、それよりも内側の領域が捲れることを防止する。
【0063】
また、第1フラップ部41におけるシール部10は、第1くびれ部31よりも後方に位置し、第2フラップ部42におけるシール部10は、第1くびれ部31よりも前方に位置する。
【0064】
つまり、第1くびれ部31における最も内側の点は、第1フラップ部41及び第2フラップ部42のシール部10よりも剛性が低く、よれ又は捲れが生じる起点となりやすい。中央領域CAからの力がかかった場合に、第1くびれ部31を起点としてよれ又は捲れが生じさせることで、それよりもさらに内側及び後方の領域によれが生じることを防止する。
【0065】
また、第2フラップ部42におけるシール部10は、第1くびれ部31と第2くびれ部32とを通る直線よりも、幅方向外側に位置する。
【0066】
つまり、第1くびれ部31及び第2くびれ部32は、第2フラップ部42のシール部10よりも剛性が低い。そのため、図3に示すように、第2フラップ部42の外縁は、この2点を通る仮想線VL上で折れ返りやすい。中央領域CAからの力がかかった場合に、第2フラップ部42の外縁を仮想線VL上で折れ返らせることで、それよりもさらに内側及び後方の領域によれが生じることを防止する。
【0067】
好ましくは、ヒップフラップ部HFは、サイドシート11とバックシート3との間に配置された中間層12を備える。中間層12は、サイドシート11とホットメルト接着剤によって接合される。中間層12には、柔軟性及びコストの観点から、ポリプロピレン繊維を主体とするSB(スパンボンド)不織布又はSMS(スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド)不織布を使用することが好ましく、SMS不織布を使用することがより好ましい。SMS不織布は細かい繊維のメルトブローン層を有するため、後述するサイドエンボス20形成時に、サイドシート11側からエンボス加工を施しても、バックシート3へのダメージを抑制できるからである。また、SB不織布及びSMS不織布は、表面が平滑であるため、サイドシート11及びバックシート3と異なる材料で形成されていても、ホットメルト接着剤等によって容易に接合することができる。中間層12には、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン等の繊維から形成されるスパンレース不織布を使用することもできる。
【0068】
図3に、中間層12の幅方向内縁B12を破線で示す。中間層12の幅方向外縁は、ヒップフラップ部HFに配置されたシール部10よりも、幅方向内側に位置する。つまり、中間層12の配置された領域は剛性が高められるため、中間層12の配置された領域とシール部10との間で剛性が変化し、折れ返りの起点となりやすい。中間層12の配置された領域とシール部10との間で折れ返らせることで、それよりもさらに内側の領域によれが生じることを防止する。
【0069】
また、ヒップフラップ部HFは、第1フラップ部41よりも後方に、ヒップフラップ部HFの幅がその前後の領域の幅よりも小さい後方くびれ部33を備える。
【0070】
つまり、第1フラップ部41は、幅が最大となる部分から後方くびれ部33に向かうにつれて幅が小さくなる。中央領域CAよりも後方の領域が長い吸収性物品は、後方の領域ほど、使用時に幅方向に振れやすい。そのため、ヒップフラップ部HFは、後方からも、ヒップフラップ部HFを変形させようとする力を受ける。そこで、第1フラップ部41の後方に後方くびれ部33を配置し、後方からヒップフラップ部HFを変形させようとする力を後方くびれ部33で吸収することにより、第1フラップ部41が受ける力を軽減する。
【0071】
図3に示すように、本体部Mの後端部の少なくとも一部には、シール部10が形成されている。ここで、本体部Mの後端部に配置されたシール部10の幅方向外側端部と、ヒップフラップ部HFにおけるシール部10の後端部との間に、シール部10が配置されない非圧搾部Xが設けられている。ヒップフラップ部ずれ止め材8及び本体部ずれ止め材6は、非圧搾部Xから少なくとも中央領域CAの後端部まで前後方向に延びる領域よりも幅方向外側及び内側にそれぞれ配置される。
【0072】
非圧搾部Xは、隣接するシール部10よりも剛性が低い。吸収性物品1の使用時、後端部が幅方向に振れて、ヒップフラップ部HFを変形させようとする力が加わった場合に、非圧搾部Xがよれの生じる起点となりやすい。また、非圧搾部Xから前方に延びる領域は、ヒップフラップ部ずれ止め材8及び本体部ずれ止め材6のいずれも配置されていないため、非圧搾部Xを起点として生じたよれが延びやすい。その結果、他の領域によれが生じることを防止することができる。
【0073】
また、中間層12の幅方向内縁B12に沿って前後方向に延びる直線は、非圧搾部Xの幅方向外側端部を通り、吸収体4の外縁に沿って前後方向に延びる直線は、非圧搾部Xの幅方向外側端部を通る。
【0074】
つまり、非圧搾部Xから前方に延びる、よれの生じやすい領域と、吸収体も中間層も配置されておらず、剛性の低い領域とが一致する。そのため、この領域は、吸収性物品1の後端部が幅方向に振れた場合にかかる力を吸収し、第1フラップ部41への影響を抑えることができる。
【0075】
好ましくは、ヒップフラップ部HFは、厚み方向に圧搾されたサイドエンボス20を有する。サイドエンボス20は、サイドシート11側からエンボス加工を施すことにより、サイドシート11及びバックシート3が厚み方向に圧縮されている。サイドフラップ部SFが中間層12を含む場合は、サイドエンボス20は、サイドシート11と中間層12とバックシート3とが厚み方向に圧縮されている。サイドエンボス20は、ウイング部WGの後端部から後方に延びる第1のエンボス線21と、第1のエンボス線21から分岐し、幅方向W外側に延びる第2のエンボス線22、第3のエンボス線23、第4のエンボス線24を含む。
【0076】
第2のエンボス線22、第3のエンボス線23、第4のエンボス線24は、後方に向かうにつれて幅方向内側から幅方向外側に延びるように形成されることにより、サイドエンボス20が力の掛かる方向に沿うため、サイドエンボス20が折り起点となり、ヒップフラップ部HFが自然と折り畳まれる。よって、ヒップフラップ部HFが身体に対しても、下着に対しても無理なく適合し易くなる。したがって、ヒップフラップ部HFに無秩序な皺が発生し難くなり、違和感のない変形ができ、すっきりした装着感が得られる。
【0077】
図1に示すサイドエンボス20は、前方から、第4のエンボス線24、第3のエンボス線23、第4のエンボス線24の順に配置されている。ヒップフラップ部ずれ止め材8は、後方に向かうにつれて幅方向内側から幅方向外側に延びるサイドエンボス20のうち、最も後方に位置する第4のエンボス線24よりも後方に位置する。
【0078】
つまり、中央領域CAからの力がかかった場合に、後方に向かうにつれて幅方向内側から幅方向外側に延びるサイドエンボス20に沿ってヒップフラップ部HFを折れ返らせることで、後方によれが生じることを防止する。その結果、最も後方に位置する第4のエンボス線24よりも後方に位置するヒップフラップ部ずれ止め材8による下着への固定状態が維持される。
【0079】
(吸収性物品の製造方法)
次に、本実施形態に係る吸収性物品1の製造方法の一部について説明する。なお、説明しない方法については、既存の方法を用いることができる。吸収性物品の製造方法は、第1ステップとして、シート生成工程を行う。次いで、第2ステップとして、シート接合工程を行う。具体的には、トップシート2とサイドシート11とを、例えば熱溶着によって接着する。
【0080】
第3ステップとして、吸収体成型工程を行う。具体的には、成型ドラムによって吸収体の材料となるパルプを成型して吸収体4を成型する。なお、第1ステップ及び第2ステップのシート生成工程と、第3ステップの吸収体成型工程の順序は、逆の順序であってもよい。
【0081】
第4ステップにおいて、接合工程を行う。具体的には、第3ステップにおいて成型した吸収体と、第2ステップにおいて接合したトップシート及びサイドシートとを接合する接合工程を行う。
【0082】
第5ステップにおいて、圧搾溝5の形成工程を行う。具体的には、トップシート2と吸収体4とを厚み方向に圧縮し、圧搾溝5を形成する。ヒップフラップ部HFに中間層12を設ける場合は、圧搾工程の後に、サイドシート11の裏面に中間層12のシートを接合する。接合は、ホットメルト接着剤の塗布により行う。
【0083】
第6ステップにおいて、バックシート接合工程を行う。具体的には、圧搾溝を形成した吸収体4及びトップシート2と、サイドシート11と、バックシート3とを、ホットメルト接着剤の塗布により接合する。
【0084】
第7ステップとして、エンボス加工工程を行う。具体的には、サイドエンボス20の形成と、シール部10の形成とを、同時に行う。サイドエンボス20は、サイドシート11及びバックシート3を厚み方向に圧縮して形成する。ヒップフラップ部HFが中間層12を備える場合は、サイドシート11、中間層12、及びバックシート3を厚み方向に圧縮してサイドエンボス20を形成する。シール部10は、吸収性物品の外縁に沿ってトップシート2、サイドシート11、及びバックシート3を厚み方向に圧縮して形成する。その後、製品形状の線に合わせて、トップシート2等をカットする。
【0085】
その後、サイドフラップ部SFを前後方向に沿って折り畳み、サイドフラップ部SFのバックシート3に、ヒップフラップ部ずれ止め材8、ウイング部ずれ止め材9として接着剤を塗布し、吸収性物品1の包装工程を行う。上記の工程により、本実施の形態に係る吸収性物品の製造することができる。
【0086】
(変形例1)
図6は、本発明の変形例1に係る吸収性物品の、表面側から見た平面図である。なお、以下の変形例の説明において、本実施の形態と同様の構成を有する部分については、同じ符号で表わされるものとし、説明を省略する。
【0087】
図6に示す吸収性物品1’は、ヒップフラップ部HFにおいて、サイドシート11とバックシート3との間に、中間層12に代えて、サイド吸収体4’を備える。図6において、サイド吸収体4’は、吸収体4を幅方向Wに延ばすことによって、吸収体4と一体的に形成される。サイドエンボス20’は、少なくともサイドシート11とサイド吸収体4’とを圧搾して一体化する。サイドエンボス20は、サイド吸収体4’が配置された部分にのみ形成されてもよい。
【0088】
図7は、本発明の変形例2に係る吸収性物品の一部の表面側から見た平面図である。図7に示す吸収性物品は、サイド圧搾部として第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23を有し、これらのエンボス線は、厚み方向に圧搾された複数の圧搾部によって構成されている。具体的には、第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23は、複数の点状の圧搾部の集合体によって構成されている。
【0089】
第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23が形成されたヒップフラップ部には、サイド吸収体4‘が配置されている。よって、吸収性物品の幅方向中央から幅方向外側に体液が流れた場合に、第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23によって体液を引き込み、体液が吸収性物品の外縁に到達することを防止できる。更に、第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23は、外縁圧搾部としてのシール部10よりも幅方向内側に配置されている。よって、使用者が第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23を明瞭に視認でき、体液を引き込み可能なエンボス線が吸収性物品の外縁よりも内側に存在していることを認識でき、横漏れが発生し難いという安心感を得ることができる。
【0090】
また、第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23は、外縁圧搾部としてのシール部10と距離を空けて配置されており、第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23によって引き込んだ体液が、シール部に到達しないように構成されている。よって、第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23によって引き込んだ体液がシール部10に到達することによる横漏れを防止できる。
【0091】
第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23は、複数の点状の圧搾部の集合体によって構成されており、圧搾部がライン状に連続していない。複数の点状の圧搾部の集合体によれば、ライン状に連続する圧搾部と比較して、圧搾部によってヒップフラップ部が硬くなり過ぎることを抑制できる。よって、ヒップフラップ部が身体のラインに沿って柔軟に変形し易くなり、ヒップフラップをより身体にフィットさせることができる。
【0092】
第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23を構成する圧搾部の形状と、シール部を構成する圧搾部の形状とは、異なることが望ましい。なお、圧搾部の外形が異なるとは、円形状と三角形状等、外形の形状が異なる構成のみならず、形状が同じであって大きさが異なる相似形も含む概念である第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23を構成する圧搾部の形状と、シール部を構成する圧搾部の形状とを異ならせることにより、体液を引き込み可能なエンボス線が吸収性物品の外縁よりも内側に存在していることを認識でき、横漏れが発生し難いという安心感を得ることができる。
【0093】
第2のエンボス線22及び第3のエンボス線23を構成する圧搾部の間隔は、シール部10を構成する圧搾部の間隔よりも大きいことが望ましい。圧搾部の間隔を大きくすると、圧搾部間に圧搾されていない領域が配置される。圧搾されていない領域は、圧搾されている領域よりも柔らかく肌への刺激が少ない。よって、ヒップフラップ部が身体のラインに沿ってより柔軟に変形し易くなり、ヒップフラップ部をより身体にフィットさせることができる。
【0094】
(その他の実施形態)
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0095】
例えば、本実施の形態では、サイドエンボス20は、線状であるが、例えば、間欠的に配置された複数のドット状の集合体によって構成されていてもよい。
【0096】
また、本実施の形態では、シール部10はドット状の集合体として説明したが、これに限定されない。シール部10は、格子状の集合体又は線状の圧搾部であってもよい。
【0097】
また、本実施の形態では、トップシート2とサイドシート11とを別々に設けるものとして記載したが、これに限定されない。トップシートを本体部からサイドフラップ部にまで幅方向に延ばすことにより、トップシートとサイドシートとを一体的に形成することもできる。
【0098】
また、本実施の形態では、ヒップフラップ部HFのみにサイドエンボス20を形成するものとして説明したが、これに限定されない。ウイング部WGにもサイドエンボスを形成することにより、着用者の下着への巻き込みを容易にすることもできる。
【0099】
また、本体部Mの幅方向W両側端部にギャザーを形成してもよい。
【0100】
また、本実施の形態では、サイドフラップ部SFがウイング部WGを有するものとして説明したが、これに限定されない。サイドフラップ部SFは、ウイング部WGを有さず、ヒップフラップ部HFのみを有してもよい。
【0101】
また、本実施の形態では、第2フラップ部42の前方に第2くびれ部32を有するものとして説明したが、これに限定されない。例えば、前後方向Lの長さが短い吸収性物品においては、第2くびれ部32を設けず、第2フラップ部42の前方がウイング部WGの後端部に連なってもよい。
【0102】
また、本実施の形態では、ヒップフラップ部HFの幅が最大となる部分が、第1フラップ部41に1つだけ含まれるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、前後方向Lの長さが長い吸収性物品においては、第1フラップ部41にヒップフラップ部HFの幅が最大となる部分を2つ設けることもできる。この場合、ヒップフラップ部ずれ止め材8の前後方向Lにおける位置は、ヒップフラップ部HFの幅が最大となる部分のうち後方に位置する部分に位置することが好ましいが、ヒップフラップ部HFの幅が最大となる部分のうち前方に位置する部分に位置してもよい。
【符号の説明】
【0103】
L…前後方向、 W…幅方向、 M…本体部、 C…排泄口当接領域の中心、 CA…中央領域、 SF…サイドフラップ部、 WG…ウイング部、 HF…ヒップフラップ部、 1…吸収性物品、2…トップシート、 3…バックシート、 4…吸収体、 5…圧搾溝、 6…本体部ずれ止め材、 7…剥離テープ、8…ヒップフラップ部ずれ止め材、 9…ウイング部ずれ止め材、 10…シール部、 11…サイドシート、12…中間層、 20…エンボス部、 21…第1のエンボス線、 22…第2のエンボス線、 23…第3のエンボス線、 24…第4のエンボス線、 31…第1くびれ部、 32…第2くびれ部、 33…後方くびれ部、 41…第1フラップ部、 42…第2フラップ部、VL…仮想線、 X…非圧搾部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7