特許第6141257号(P6141257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6141257C1q−アディポネクチン複合体及びその利用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141257
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】C1q−アディポネクチン複合体及びその利用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20170529BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20170529BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20170529BHJP
【FI】
   G01N33/53 B
   G01N33/543 545A
   G01N33/53 R
   !C07K14/47
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-508077(P2014-508077)
(86)(22)【出願日】2013年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2013059467
(87)【国際公開番号】WO2013147123
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-78540(P2012-78540)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下村 伊一郎
(72)【発明者】
【氏名】船橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】岸田 堅
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏規
(72)【発明者】
【氏名】高橋 重雄
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/121794(WO,A1)
【文献】 特開平02−287257(JP,A)
【文献】 Peake PW, Shen Y, Walther A, Charlesworth JA.,Adiponectin binds C1q and activates the classical pathway of complement,Biochem Biophys Res Commun.,2008年,Vol.367, No. 3 ,Page.560-565
【文献】 Kishida K,外6名,Serum C1q- binding adiponectin in maintenance hemodialysis patients.,BMC Nephrol.,2013年 2月26日,Vol.14,doi: 10.1186/1471-2369-14-50.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C1q及びアディポネクチンからなるC1q−アディポネクチン複合体。
【請求項2】
請求項1に記載のC1q−アディポネクチン複合体の量の測定方法であって、当該複合体の量を免疫学的測定法によって測定することを含む方法。
【請求項3】
免疫学的測定法がELISA法である請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
ELISA法が抗アディポネクチン抗体及び抗C1q抗体を用いるサンドイッチELISA法である請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
抗アディポネクチン抗体がF(ab’)2である請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれかに記載の測定方法により、診断対象から採取した血液中の請求項1に記載のC1q−アディポネクチン複合体の量を測定することを含む、被験者のメタボリックシンドローム又は動脈硬化リスクの試験方法。
【請求項7】
血液中の総アディポネクチン量に対する請求項1に記載のC1q−アディポネクチン複合体の量の比(C1q−APN/Total−APN比)を指標とする、請求項6に記載の試験方法。
【請求項8】
請求項1に記載のC1q−アディポネクチン複合体の量を測定するための測定用キットであって、抗アディポネクチン抗体及び抗C1q抗体の組み合わせを含有するキット。
【請求項9】
メタボリックシンドローム又は動脈硬化リスクを診断するための請求項8に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C1q−アディポネクチン複合体(本明細書中、C1q−APNと略記する場合がある。)及びその利用に関する。また、本発明はC1q−アディポネクチン複合体を測定する方法、及びこの複合体を測定することによりメタボリックシンドローム又は動脈硬化リスクを診断する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドローム(本明細書中、MetSと略記する場合がある。)に罹患している患者は、動脈硬化の危険性、並びに心臓病、及び脳卒中等の命にかかわる病気の危険性が高い状態にあると言うことができる。従って、MetSの予防又は治療を行うために、その適切な診断方法が求められている。
【0003】
内臓脂肪蓄積を基盤とした、インスリン抵抗性及び耐糖能異常、動脈硬化惹起性リポタンパク質異常、並びに高血圧症などの症状がMetSの主要な病態として挙げられる。MetSは、内臓脂肪蓄積と、2つ以上の病的状態の組み合わせとして定義され、2005年4月に日本では内科分野の8つの学会より、その診断基準が作成された。具体的には、内臓脂肪肥満を有し、且つ高血圧、脂質代謝異常、及び空腹時高血糖のうちの2つ以上を有する場合に、MetSと診断される(非特許文献1)。
【0004】
近年、動脈硬化性病変の程度を評価する様々な測定方法が開発され、それらの有用性が示されている。その代表的な検査方法としては、例えば、(1)頸部超音波により頸動脈内膜複合体肥厚度(intima-media thickness: IMT)を測定する頸動脈超音波検査法、(2)腕−足首間の血圧又は脈波の伝達速度を測定することで動脈硬化度を数値化するPWV(pulse wave velocity)検査又はCAVI(cardio-ankle vascular index)検査が挙げられる。
【0005】
このような診断方法に加えて、内臓脂肪蓄積に伴うMetS、又は動脈硬化性疾患の血液指標として総アディポネクチン(本明細書中、Total−APNと略記する場合がある。)量の測定法又は高分子量アディポネクチン(本明細書中、HMW−APNと略記する場合がある。)量の測定法(特許文献1)が開発された。
【0006】
一方、後記のように、内臓脂肪蓄積に伴う血中のアディポネクチン(本明細書中、APNと略記する場合がある。)の量の低下が、糖尿病・高脂血症・高血圧に加えて心血管疾患にも直接関与することを示す基礎研究及び臨床研究成果が集積されている。例えば、臨床的研究及び基礎的研究から、アディポネクチンは抗糖尿病作用及び抗動脈硬化作用を有することが報告されている(非特許文献2)。特に、肥満に伴う血中アディポネクチン濃度の低下は低アディポネクチン血症と呼ばれ、糖尿病(非特許文献3)又は高血圧(非特許文献4)、睡眠時無呼吸症候群(非特許文献5)、動脈硬化性心血管疾患(非特許文献6)、メタボリックシンドローム(非特許文献7)といった肥満に関連した各種疾患に深く関与することが明らかにされている。
【0007】
従って、血中アディポネクチン量の測定は、MetS診断マーカーとなり得る可能性が期待されている。
【0008】
ところで、非特許文献8には、酸化剤(メタ過よう素酸ナトリウム)によって化学的に処理されたアディポネクチン及びC1qからなる複合体が開示されているが、天然の状態でアディポネクチンとC1qとが複合体を形成することは、これまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2009/078151号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】メタボリックシンドローム診断基準検討委員会:メタボリックシンドロームの定義と診断基準.日本内科学会雑誌94: 794-809、2005
【非特許文献2】Matsuzawa Y. Adiponectin: a key player in obesity related disorders. Curr Pharm Des. 2010;16: pp.1896-901.
【非特許文献3】Hotta K, Funahashi T, Arita Y, et al., Plasma concentrations of a novel, adipose-specific protein, adiponectin, in type 2 diabetic patients. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2000;20: pp.1595-9.
【非特許文献4】Ohashi K, Kihara S, Ouchi N, et al., Adiponectin replenishment ameliorates obesity-related hypertension. Hypertension. 2006; 47: pp.1108-16.
【非特許文献5】Nakagawa Y, Kishida K, Kihara S, et al., Nocturnal reduction in circulating adiponectin concentrations related to hypoxic stress in severe obstructive sleep apnea-hypopnea syndrome. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2008; 294: pp.E778-84.
【非特許文献6】Ouchi N, Kihara S, Arita Y, et al., Novel modulator for endothelial adhesion molecules: adipocyte-derived plasma protein adiponectin. Circulation. 1999; 100: pp.2473-6.
【非特許文献7】Ryo M, Nakamura T, Kihara S, et al., Adiponectin as a biomarker of the metabolic syndrome. Circ J. 2004; 68: pp.975-81.
【非特許文献8】Peake PW et al., Adiponectin binds C1q and activates the classical pathway of complement. Biochem Biophys Res Commun.367:560-565,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、アディポネクチン(本明細書中、APNと略記する場合がある。)は、MetS又は動脈硬化性疾患の診断マーカーとして期待されているバイオマーカーであり、その測定法としてTotal−APN量測定法及びHMW−APN量測定法が開発されている。
しかし、現状では、これらの測定方法は精度が十分であるとはいえず、更に精度の高いマーカーが必要とされている。
また、Total−APN量測定では、SDS存在下で加熱処理することにより立体構造を解離するため、アディポネクチンの質的変化は検出できない。更に、また、HMW−APN量測定では、6量体以上のアディポネクチン多量体を検出できる一方、検出できる多量体構造に特異性はない。
【0012】
一方、アディポネクチン関連の測定法では、量的変化に加えて質的変化の検出が重要となる可能性が想定されている。血中でのアディポネクチン複合体存在様式が解明でき、血中アディポネクチン複合体の特異的な検出法が開発できれば、アディポネクチン単独測定法よりも効率良く内臓脂肪蓄積に伴ったMetS又は動脈硬化性疾患高リスク群を診断できる可能性がある。
【0013】
従って、本発明は、MetS又は動脈硬化リスクの精度が高い診断マーカーとして用いることができるバイオマーカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
近年、アディポネクチンは他のタンパク質と直接結合する可能性が示唆されており、インビトロでの解析から、アディポネクチンは、補体C1q(非特許文献8)をはじめFactor H(非特許文献9)、Platelet−derived growth factor(PDGF)−BB(非特許文献10)、Calreticulin(非特許文献11)、CystatinC(非特許文献12)、リポポリサッカリド(非特許文献13)といったタンパク質又は糖脂質と結合することが示されている。しかしながら、ヒト血中に存在している内在性アディポネクチンがこれらの因子と結合していることは解析されておらず、血中のアディポネクチンが他のタンパク質との複合体を形成しているかは不明であった。
【0015】
一方、大阪大学を中心とした研究より、(1)ヒト脂肪組織は、補体の古典的活性化経路及び第2経路に関与する遺伝子群を豊富に発現していること(非特許文献14)、(2)アディポネクチンは、C1qと相同性が高くC1q受容体に結合すること(非特許文献15)、(3)マウス関節炎モデルでの解析より、アディポネクチンはC1q又はC3を阻害することにより炎症又は関節破壊を抑制することが報告されている(非特許文献16)。
【0016】
本発明者らは、本発明において、ファーウエスタンブロット法、及びタンパク質固相化プレートを用いたインビトロ相互作用解析からアディポネクチン結合タンパク質探索を進め、C1qがアディポネクチンと強く結合することを見出した。更に、抗ヒトアディポネクチン抗体及び抗ヒトC1q抗体を用いた共免疫沈降法より、ヒト血清中の内在性アディポネクチンに関してもC1qと直接結合していることを世界で初めて証明した。
【0017】
非特許文献9:Peake PW et al., Factor H binds to the N-terminus of adiponectin and modulates complement activation. Biochem Biophys Res Commun. 397:361-366,2010
非特許文献10:Arita Y, Kihara S, Ouchi N et al., Adipocyte-derived plasma protein adiponectin acts as a platelet-derived growth factor-BB-binding protein and regulates growth factor-induced common postreceptor signal in vascular smooth muscle cell. Circulation. 2002; 105: 2893-8.
非特許文献11:Takemura Y, Ouchi N, Shibata R、et al., Adiponectin modulates inflammatory reactions via calreticulin receptor-dependent clearance of early apoptotic bodies. J Clin Invest. 2007; 117: 375-86.
非特許文献12:Komura N, Kihara S, Sonoda M, et al., Increment and impairment of adiponectin in renal failure. Cardiovasc Res. 2010; 86: 471-7.
非特許文献13:Peake PW et al., Human adiponectin binds to bacterial lipopolysaccharide. Biochem Biophys Res Commun. 341:108-115,2006.
非特許文献14:Maeda K, Okubo K, Shimomura I, et al., Analysis of an expression profile of genes in the human adipose tissue. Gene. 1997; 190: 227-35
非特許文献15:Yokota T, Oritani K, Takahashi I, et al., Adiponectin, a new member of the family of soluble defense collagens, negatively regulates the growth of myelomonocytic progenitors and the functions of macrophages. Blood. 2000; 96: 1723-32.
非特許文献16:Ebina K, Oshima K, Matsuda M, et al., Adenovirus-mediated gene transfer of adiponectin reduces the severity of collagen-induced arthritis in mice. Biochem Biophys Res Commun. 2009; 378: 186-91.
【0018】
本発明者らは、次に、臨床的意義を明確にすることを目的に、ヒト血清中のC1q−アディポネクチン複合体を簡便に測定することが可能なサンドイッチELISA法の開発を行った。C1qには、抗体のFc領域に結合し補体経路を活性化させる生理機能が知られている。この生理機能が非特異反応の原因となりC1q−アディポネクチン複合体のELISA測定法の構築を困難にさせていた。本課題を解決するためにFc領域を除去したF(ab’)2抗体を作製し、固相化抗体として用いることで非特異反応の除去を実現した。以上の条件検討より、プレート固相化抗体として抗ヒトアディポネクチン−F(ab’)2抗体を用い、検出抗体として抗ヒトC1q抗体を用いることで血清中のC1q−アディポネクチン複合体を簡便に特異的かつ高精度に検出できるELISA法を完成するに至った。
【0019】
アディポネクチン複合体のヒト血清中での存在様式及び臨床的意義は、本発明にて構築したC1q−アディポネクチン複合体ELISA法を用いることにより世界で初めて可能となった。
本発明者らは、まず、ゲル濾過クロマトグラフィーにてヒト血清を分子量分画し、各分画におけるC1q−アディポネクチン複合体の存在量を測定した。本解析から、C1q−アディポネクチン複合体は、高分子量及び中分子量分画のアディポネクチンと同一の分子量サイズに存在していることを見出した。
【0020】
本発明者らは、次に、C1q−アディポネクチン複合体の臨床的意義を評価することを目的として、健常者329例における血中量を測定した。本解析では、総アディポネクチン(Total−APN)量に対するC1q−アディポネクチン複合体(C1q−APN)の存在量比(C1q−APN/Total−APN比)を新たな血液指標として開発した。興味深いことに、本指標は、非リスク群と比較して内臓脂肪蓄積に伴うMetS及び心血管疾患高リスク群にて有意に高値を示していた。
【0021】
以上の結果より、本測定法及び解析法は、血中アディポネクチンの量的変化に加えて、アディポネクチンの質的変化という新たな観点からの評価を可能とした。したがって、本指標の臨床利用は、内臓脂肪蓄積に伴うMetS又は動脈硬化性疾患高リスク群を効率良く抽出するために非常に重要である。
【0022】
すなわち、本発明は、次の各態様を含む。
【0023】
項1.C1q及び天然型アディポネクチンを含有するC1q−アディポネクチン複合体。
項2.項1に記載のC1q−アディポネクチン複合体の量の測定方法であって、当該複合体の量を免疫学的測定法によって測定することを含む方法。
項3.免疫学的測定法がELISA法である項2に記載の測定方法。
項4.ELISA法が抗アディポネクチン抗体及び抗C1q抗体を用いるサンドイッチELISA法である項3に記載の測定方法。
項5.抗アディポネクチン抗体がF(ab’)2である項4に記載の測定方法。
項6.項2〜5のいずれかに記載の測定方法により、診断対象から採取した血液中の項1に記載のC1q−アディポネクチン複合体の量を測定することを含む、メタボリックシンドローム又は動脈硬化リスクの診断方法。
項7.血液中の総アディポネクチン量に対する項1に記載のC1q−アディポネクチン複合体の量の比(C1q−APN/Total−APN比)を指標とする、項6に記載の診断方法。
項8.項1に記載のC1q−アディポネクチン複合体の量を測定するための測定用キットであって、抗アディポネクチン抗体及び抗C1q抗体を含有するキット。
項9.メタボリックシンドローム又は動脈硬化リスクを診断するための項8に記載のキット。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、メタボリックシンドローム又は動脈硬化のバイオマーカ−として有用なC1q−アディポネクチン複合体及びその測定方法が提供される。また、従来の総アディポネクチン測定法及び高分子量アディポネクチン測定法より精度の高いMetS又は動脈硬化リスクの診断を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1.A】ヒトアディポネクチン組換えタンパク質と補体C1q精製タンパク質との結合解析におけるファーウエスタンブロットの写真である(実施例1)。
図1.B】ヒトアディポネクチン組換えタンパク質と補体C1q精製タンパク質との結合解析の結合評価結果のグラフである(実施例1)。
図1.C】ヒトアディポネクチン組換えタンパク質と補体C1q精製タンパク質との結合解析の結合評価結果のグラフである(実施例1)。
図2.A】ヒト血清中におけるアディポネクチンとC1qの結合解析において、アディポネクチン及びC1qの多量体構造の検出を示すウエスタンブロットの写真である(実施例2)。
図2.B】ヒト血清中におけるアディポネクチンとC1qの結合解析において、アディポネクチン免疫沈降結果を示すウエスタンブロットの写真である(実施例2)。
図2.C】ヒト血清中におけるアディポネクチンとC1qの結合解析において、C1q免疫沈降結果を示すウエスタンブロットの写真である(実施例2)。
図3.A】ELISA法の開発において作成した標準曲線である(実施例3、実施例4)。
図3.B】ELISA法の開発において作成した希釈曲線である(実施例3、実施例4)
図3.C】ヒト血清中C1q−アディポネクチン複合体のゲル濾過分画の様式を示すグラフである(実施例3、実施例4)。
図4.A】ヒト血清中のC1q測定ELISA法の構築において作成した標準曲線である(実施例5)。
図4.B】ヒト血清中のC1q量の測定結果のグラフである(実施例5)。
図4.C】タンパク質濃度と吸光度の相関を示すグラフである(実施例5)。
図5】健常者329例における血清中の、Total−APN、HMW−APN、C1q−APN、C1qの相関関係を示すグラフである(実施例6)。
図6】健常者329例において、メタボリックシンドローム有無判定に対するROC(Receiver Operating Characteristic)曲線解析を示すグラフである(実施例7)。
図7】内臓脂肪蓄積における各種アディポネクチン関連指標と肥満関連心血管リスクファクター集積との関係を示すグラフ(Box-and-whisker表記)である(実施例8)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.C1q−アディポネクチン複合体
【0027】
本発明のC1q−アディポネクチン複合体は、天然型アディポネクチン及びC1qを含有する。本発明のC1q−アディポネクチン複合体は、好ましくは、天然型アディポネクチン及びC1qからなる。
【0028】
1.1 天然型アディポネクチン
アディポネクチンは244アミノ酸より構成される生理活性タンパク質であり、脂肪細胞から分泌される。N末端側にはシグナルペプチド・コラーゲン様ドメイン、そしてC末端側には球状ドメインを有する。特に球状ドメインは、コラーゲンV又はVIII、そして補体成分C1qと高いホモロジーを有することが知られている(非特許文献17)。ヒトにおいてアディポネクチンは、4〜30μg/mLの濃度にて血中に存在しており、内臓脂肪の蓄積に伴い低下することが示されている(非特許文献18)。アディポネクチンはコラーゲン様ドメインなど特徴的な立体構造を有していることから、血液中では、3量体、6量体、それ以上の多量体(HMW;High molecular weight multimer)といった多様な立体構造を形成していることが想定されている(非特許文献19)。
本発明における天然型アディポネクチンは、これらのいずれであってもよく、また、これらの混合物であってよい。
【0029】
非特許文献17:Okamoto Y, Arita Y, Nishida M, et al., An adipocyte-derived plasma protein, adiponectin, adheres to injured vascular walls. Horm Metab Res. 2000; 32:47-50.
非特許文献18:Arita Y, Kihara S, Ouchi N, et al., Paradoxical decrease of an adipose-specific protein, adiponectin, in obesity. Biochem Biophys Res Commun. 1999; 257:79-83
非特許文献19:Pajvani UB, Du X, Combs TP, Berg AH, Rajala MW, Schulthess T, Engel J, Brownlee M, Scherer PE. Structure-function studies of the adipocyte-secreted hormone Acrp30/adiponectin. Implications fpr metabolic regulation and bioactivity. J Biol Chem. 2003 Mar 14;278(11):9073-85
【0030】
本明細書中、天然型アディポネクチンとは、自然界から単離されるアディポネクチンを意味する。従って、酸化剤等によって化学的に処理されて構造が改変されたアディポネクチンは、本発明における天然型アディポネクチンからは除外される。
【0031】
アディポネクチンは、天然には、脂肪細胞によって産生され、血液等の中に含有される。
天然型アディポネクチンは、好ましくは、血液から単離されるアディポネクチンである。なお、本明細書中、「血液から単離される」とは、間接的に血液から単離されることを包含する。すなわち、例えば、血清から単離されるアディポネクチンは、血液から単離されるアディポネクチンである。
【0032】
このような天然型アディポネクチンは、血液から抽出した粗精製の天然型アディポネクチンを、所望により、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等の公知のタンパク質精製法によって精製することによって得られる。
【0033】
一方、本発明における天然型アディポネクチンには、自然界から単離されるアディポネクチンと同じ構造を有するアディポネクチンも包含される。
天然型アディポネクチンは、自然界から単離されるアディポネクチンと同じ構造を有する限り、遺伝子工学的手法によって製造された、組換えアディポネクチンであってもよい。組換えアディポネクチンは、この分野で周知慣用の手法に従って、大腸菌、酵母、又は哺乳動物細胞株(例、293細胞、CHO細胞)の遺伝子組換えによって作製することができる。
【0034】
1.2 C1q
C1qは、18サブユニット(各6分子ずつのA鎖・B鎖・C鎖)より構成される約462kDaのタンパク質であり、非特許文献20によれば、ヒト血中には80μg/mLにて存在している。C1qは補体活性化経路の第1因子C1の主要構成因子であり、抗原抗体複合体を認識する。
本発明におけるC1qは、特に限定されず、例えば自然界から単離されるC1qであることができる。
【0035】
非特許文献20:Sunyer,J.O. and Lambris,J.D.(1999). Complement. Encyclopedia of Life Sciences
【0036】
C1qは、例えば、特開平9−178745に記載の方法のように、血清又は血漿を透析して得られるC1q粗精製物溶液をIgG固定化不溶性担体に接触させた後、当該不溶性担体に吸着したC1qを分離回収する方法などの、公知の方法によって調製することができる。
【0037】
本発明のC1q−アディポネクチン複合体においては、天然型アディポネクチンとC1qとが、直接的に、かつ非共有結合によって結合している。
【0038】
本発明のC1q−アディポネクチン複合体における、天然型アディポネクチンとC1qとの重量比は、通常1:10〜10:1、好ましくは1:3〜3:1、より好ましくはおよそ1:1である。
【0039】
本発明のC1q−アディポネクチン複合体は、水系溶媒(例、リン酸緩衝液)中で、天然型アディポネクチンと、C1qとを、前記の比率で、混合、及び攪拌することによって得られる。
【0040】
攪拌時間は、通常、1〜48時間、好ましくは、12〜36時間である。
攪拌時の温度は、好ましくは、20〜40℃である。
【0041】
2.C1q−アディポネクチン複合体の量の測定方法
【0042】
本発明の、C1q−アディポネクチン複合体の量を測定する方法(以下、単に本発明の測定方法と称する場合がある)は、免疫学的測定法によって当該複合体の量を測定することを特徴とする。
【0043】
本発明の測定方法において使用できる生体試料としては、C1q−アディポネクチン複合体を含有し得る試料であれば特に限定されず、ヒト、サル、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット及びその他の哺乳類の動物から得られた血液(血清、血漿)などの体液、組織抽出液、組織由来細胞の培養上清液などが挙げられる。ヒトのMetS、又は動脈硬化リスクの診断が測定の目的である場合は、生体試料は、好ましくは、ヒトの血液(血清、血漿)である。
試料の採取方法は、測定の目的等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、空腹時の検査対象からの採血などによって行われる。
【0044】
免疫学的測定法としては、例えば、ウェスタンブロッティング法、ドットブロット法、免疫沈降法、酵素免疫測定法(EIA;enzyme-immuno assay、ELISA;enzyme-linked immunosorbent assay)、放射線免疫測定法(RIA;radio-immuno assay)、蛍光抗体法(FIA;fluorescent immuno assay)、免疫組織染色、又は免疫クロマトグラフィー法等の公知の免疫学的測定法を採用することができる。
このような、免疫学的測定法は、それぞれについて慣用の方法に従って実施すればよい。
【0045】
本発明の測定方法における免疫学的測定法では、C1q−アディポネクチン複合体を認識する抗体が用いられる。当該抗体は、C1q−アディポネクチン複合体を認識できるものであれば特に限定無く用いることができる。当該抗体は、C1q−アディポネクチン複合体に対する特異的抗体(抗C1q−アディポネクチン複合体抗体)であってもよく、抗アディポネクチン抗体と抗C1q抗体の組み合わせであってもよいが、好ましくは、抗アディポネクチン抗体と抗C1q抗体の組み合わせである。
【0046】
当該抗体は、モノクローナル抗体、又はポリクローナル抗体であることができ。
当該抗体は、例えば、アディポネクチン、C1q、又はそれらの部分ペプチドを抗原として用いて得ることができるが、これらの抗体は、市販品として入手することも可能である。
以下に、抗アディポネクチン抗体、及び抗C1q抗体の製造方法を説明する。
【0047】
モノクローナル抗体は、公知の方法に基づいて作製することができる。具体的には、温血動物(例、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ)に抗原を感作させ、免疫された個体の免疫関連細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマを作製し、その中から目的の特異的抗体を産生するハイブリドーマを選択する。
温血動物に感作させる抗原であるアディポネクチン及びC1qとしては、それぞれ前記で説明したアディポネクチン及びC1q又はそれらの部分ペプチドを用いればよい。当該部分ペプチドは、アディポネクチン及びC1qをそれぞれ適当なペプチダーゼで切断すること、又は固相合成法等の化学的合成方法によって合成すること等の公知の製造方法によって得ることができる。
これらの抗原は、そのまま、又は免疫動物の抗体産生能を高めるため、フロインド完全アジュバント、フロインド不完全アジュバント等のアジュバントと混合、又はエマルションを調製して前記動物に投与してもよい。
通常、0.1〜100μg/bodyの量の抗原を用い、1回から数回程度(隔週程度で免疫する)の免疫を行う。抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に、牌臓、胸腺、又はリンパ節を摘出し、それらから採取した細胞を、マウスミエローマ細胞株(例、SP2/0、P3U1)とポリエチレングリコール法等の公知の方法を用いて融合させ、ハイブリドーマを作製する。
ハイブリドーマの選別は、抗原を吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、次いで標識した抗免疫グロブリン抗体等を反応させることにより、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法等の公知の方法によって行うことができる。
【0048】
ポリクローナル抗体は、前記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、当該免疫動物から本発明のタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。
【0049】
本発明の測定方法における免疫学的測定法としては、ELISA法が好ましい。また、本発明の測定方法における免疫学的測定法としては、サンドイッチ法が好ましい。本発明の測定方法における免疫学的測定法として、特に好ましくは、サンドイッチELISA法である。当該サンドイッチELISA法、慣用の条件、及び手法に準じて実施される。
【0050】
本発明の測定方法におけるサンドイッチELISAの好ましい態様は、
抗アディポネクチン抗体を不溶化する段階、
当該不溶化された抗体に試料を接触させて、当該抗体に試料中のC1q−アディポネクチン複合体を結合させる段階、
前記C1q−アディポネクチン複合体に、抗C1q抗体を結合させる段階、及び
標識された抗体(二次抗体)を前記C1q−アディポネクチン複合体に結合した抗C1q抗体に結合させる段階
を含む。
【0051】
抗アディポネクチン抗体の不溶化は、例えば、プレート及びその他の容器壁、ビーズ、スライド、樹脂膜、カラム等公知の担体に抗アディポネクチン抗体を化学結合又は物理結合することによって行うことができる。
【0052】
当該測定方法に用いられる抗体は、完全抗体分子であってもよく、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、VH等のフラグメントであってもよく、scFv、scFv−Fc、dsFv、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子であってもよく、又はポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾された誘導体などであってもよい。
ここで、C1qは、抗アディポネクチン抗体のFc領域に不都合に結合し得るので、抗アディポネクチン抗体としては、F(ab’)が好ましい。
前記フラグメントは、抗体をパパイン又はペプシン等の酵素で処理するか、又はこれら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを任意の宿主細胞中で発現させることで得ることができる。
【0053】
抗C1q抗体に結合させる標識された抗体(二次抗体)は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、又はβ−ガラクトシダーゼ等の酵素;125I、32P、14C、35S、又はH等の放射性同位体;或いはフルオロセイン(FITC)、テトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光化合物等により慣用の方法で標識されたIgG抗体である。
【0054】
3.メタボリックシンドローム又は動脈硬化リスクの診断方法
本発明のメタボリックシンドローム又は動脈硬化リスクの診断方法は、診断対象から採取した血液中のC1q−アディポネクチン複合体の量を測定することを含む。
【0055】
本発明のメタボリックシンドローム又は動脈硬化リスクの診断方法では、当該C1q−アディポネクチン複合体の量自体、又はこれから導かれる数値を指標として用いて、メタボリックシンドローム又は動脈硬化リスクを診断する。
すなわち、C1q−アディポネクチン複合体は、メタボリックシンドローム又は動脈硬化のマーカーとして有効に用いられる。
【0056】
本発明の診断方法で指標として用いられる数値としては、例えば、
血液中のC1q−アディポネクチン複合体の量、
血液中の総アディポネクチン量に対するC1q−アディポネクチン複合体量の比(C1q−APN/Total−APN比)、
血液中の高分子量アディポネクチン(HMW−APN)量に対するC1q−アディポネクチン複合体量の比(C1q−APN/HMW−APN比)
が挙げられる。
これらのなかでも、メタボリックシンドローム又は動脈硬化との相関関係の高さから、好ましくは、C1q−APN/Total−APN比、又はC1q−APN/HMW−APN比であり、より好ましくはC1q−APN/Total−APN比である。ここで、高分子量アディポネクチン量と、総アディポネクチン量とは、相関性が高いことが知られている。
【0057】
これらの数値の算出に用いられる総アディポネクチン量、及び高分子量アディポネクチン量の測定は、公知の方法によって行うことができる。このような公知の方法としては、例えば、前記特許文献1に記載の高分子量アディポネクチン測定法が挙げられる。また、市販の測定キットを用いて測定してもよい。
【0058】
メタボリックシンドローム又は動脈硬化リスクの診断においては、診断対象について得られた数値を、例えば、メタボリックシンドローム又は動脈硬化に罹患していないことが知られている対象について得られた数値、及びメタボリックシンドローム又は動脈硬化に罹患していることが知られている対象について得られた数値に基づいて決定された基準値(又は、カットオフポイント)と比較する。
例えば、C1q−APN/Total−APN比を用いる場合、かかる基準値より高い場合に、メタボリックシンドローム又は動脈硬化に罹患しているか、或いはそのリスクが高いと判断される。
【0059】
当該指標は、単独で用いられてもよく、メタボリックシンドローム又は動脈硬化リスクの診断においては、これらの診断において用いられる他の指標と組み合わせて用いられてもよい。
【0060】
4.キット
本発明によれば、前記方法を利用した、C1q−アディポネクチン複合体を選択的に測定するためのキットもまた提供される。
本発明のキットは、抗C1q−アディポネクチン複合体抗体、又は抗アディポネクチン抗体及び抗C1q抗体の組み合わせを備える。
これらの抗体としては、それぞれ前記したものを用いることができる。
【0061】
好ましくは、抗C1q−アディポネクチン複合体抗体は、又は抗アディポネクチン抗体及び抗C1q抗体のいずれか一方は、ELISAプレートに結合している。
【0062】
当該キットは、好ましくは、標準として、抗C1q−アディポネクチン複合体抗体を備える。
【0063】
当該キットは、好ましくは、使用説明書を備える。
【実施例】
【0064】
以下に本発明の実施例を示すが、これに限定されるものではない。
【0065】
まず、本発明の実施例の材料及び方法を説明する。
【0066】
1−1.ファーウエスタンブロット法
(1)C1qに対するアディポネクチンの結合評価
組換えアディポネクチンタンパク質(rhAPN、200μg)のビオチン標識は、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-biotin(Pierce社)を用いて添付文書に従い行った。ヒトC
1q精製タンパク質(100ng)をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)にて分離後、ニトロセルロースメンブレン(Protran BA 85 Nitrocellulose Membrane)(Whatman社)に転写した。前記メンブレンはBlock Ace(DS pharma社)にて室温で1時間ブロッキングを行った。その後、前記メンブレンを、1μg/mLに希釈したビオチン標識rhAPNにて4℃で18時間インキュベートした。PBSTにて3回洗浄した後、10000倍希釈したHRP標識ストレプトアビジン(Invitrogen社)にて室温で1時間攪拌した。最後に、再度3回洗浄した後、ECL Plus Western Blotting Detection Reagent(GE healthcare社)にて検出した。
【0067】
(2)アディポネクチンに対するC1qの結合評価
rhAPN(200ng)はSDS−PAGEにて分離後、ニトロセルロースメンブレンに転写した。メンブレンはBlock Ace(DS pharma社)にて室温、1時間ブロッキングを行った。その後、1μg/mLに希釈したヒトC1q精製タンパク質にて室温で3時間インキュベートした。PBSTにて3回洗浄した後、1000倍希釈したHRP標識抗ヒトC1qポリクローナル抗体にて室温で1時間攪拌した。最後に、再度3回洗浄した後、前記1)と同様にECL Plus試薬にて検出した。
【0068】
1−2.免疫沈降法
各100μgの抗ヒトアディポネクチン−F(ab’)2抗体、及び抗ヒトC1q−F(ab’)2抗体は、添付文書に従い磁気ビーズ(Dynabeads M-280 tosylactivated)(Invitrogen社)にカップリングさせた。検体希釈液(1% Tween20、1M NaCl、0.1% ProClin300を含むPBS(−))にて希釈したヒト血清は、各抗体を結合させた前記磁気ビーズと混合し、4℃で18時間転倒混和した。
前記磁気ビーズを検体希釈液にて3回洗浄した後、各免疫沈降産物をSDS−PAGE及びウェスタンブロッティングに用いた。
【0069】
1−3.ヒトC1q−アディポネクチン複合体ELISA法
抗アディポネクチンモノクローナル抗体は、市販のキット(ImmunoPure IgG1 Fab and F(ab')2 Preparation Kit)(Pierce社)を用い使用説明書に従ってF(ab’)2抗体を作製した。EIA/RIA用96ウェルマイクロタイタープレート(96-Well EIA/RIA 1x8 Stripwell Plate、Cornig社)に3μg/mLに調整した抗アディポネクチン−F(ab’)2抗体を100μL添加して4℃で18時間インキュベートして固相化した。その後、洗浄液(0.05% Tween20を含むD−PBS(−))にて1回洗浄し、ブロッキング液(1% ウシ血清アルブミン(BSA)、5% D−Sorbitolを含むD−PBS(−))を300μLにて添加し4℃で18時間インキュベートした。プレートは、ブロッキング液を除去し、ドライルーム内にて乾燥し使用時まで4℃保存した。
【0070】
C1q−アディポネクチン(APN)複合体標準品は、組換えヒトアディポネクチンタンパク質、及びヒトC1q精製タンパク質を各10μg/mLずつ混合し、37℃で24時間攪拌することにより作製した。なお、本標準品を800倍希釈したものを1単位/mLのC1q−APN複合体任意量として定義した。
【0071】
標準曲線作製には、前記で作製したC1q−APN複合体標準品を検体希釈液(1% BSA、1% ブタ血清、0.1% Tween20、1M NaCl、0.1% ProClin300を含むPBS(−))にて希釈し、5、2.5、1.25、0.625、0.313、0.156単位/mLを調製した。標準液及びヒト血清(検体希釈液にて80倍希釈)を各100μLずつウェルに添加し、25℃で1時間インキュベートした。
次に、各ウェルを洗浄液350μLにて3回洗浄後、一次抗体希釈液(1% BSA、1% ブタ血清、0.1% Tween20、1M NaCl、0.1% ProClin300を含むPBS(−))にて5000倍希釈した抗ヒトC1qポリクローナル抗体(DAKO社)を100μL添加し、25℃にて1時間インキュベートした。その後、3回洗浄後、二次抗体希釈液(1% BSA、1% ブタ血清、0.1% Tween20、0.1% ProClin300を含むPBS(−))にて10000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG抗体を100μL添加し、25℃にて1時間インキュベートした。最後に、各ウェルを洗浄液で3回洗浄後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)発色液100μLを添加し、室温で15分間発色させた。発色後のウェルは、1N希硫酸100μLを添加して反応を停止させ、450nm吸光度(参照波長650nm)(Abs(450-650nm))をマイクロプレートリーダーVmax(Molecular Devices社)にて測定した。血清中のC1q−APN複合体量は、Softmax Pro software(Molecular Devices社)にて標準曲線を作成し算出した。
【0072】
1−4.ヒト血清のゲル濾過分画法
ヒト血清(150μL)は、0.22 μmシリンジフィルターにて濾過後、AKTA Explorer 10S(GE healthcare社)に接続したSuperdex−200(GE healthcare社)クロマトグラフィーにて分画した。各フラクションは、280nm吸収を測定下、流速0.5mL/minにて分取した。
【0073】
1−5.ヒトC1q ELISA法
【0074】
抗ヒトC1q−F(ab’)2抗体は、ペプシン消化法により作製した。抗ヒトC1qポリクローナル抗体は、500μgを0.1M Sodium acetate Buffer、pH4.4にて希釈し、20μg ペプシン(和光純薬工業)にて37℃で18時間消化した。その後、F(ab’)2抗体は、Protein Aクロマトグラフィー及びSephacryl S−300(GE healthcare社)クロマトグラフィーにて精製した。EIA/RIA用96ウェルマイクロタイタープレートに3μg/mLに調整した抗ヒトC1q−F(ab’)2抗体を100μL添加して4℃で18時間インキュベートして固相化した。その後、洗浄液にて1回洗浄し、ブロッキング液を300μL添加して4℃で18時間インキュベートした。プレートは、ブロッキング液を除去しドライルーム内にて乾燥後、使用時まで4℃保存した。
【0075】
ヒトC1q標準品は、ヒトC1q精製タンパク質を検体及び抗体希釈液(0.5% BSA、0.05% Tween20、0.05% ProClin300を含むPBS(−))にて希釈し、150、75、37.5、18.75、9.38、4.69、2.34ng/mLを調製した。標準液及びヒト血清(検体希釈液にて3000倍希釈)を各100μLずつウェルに添加し、25℃で1時間インキュベートした。次に、各ウェルを洗浄液350μLにて3回洗浄後、検体及び抗体希釈液にて40000倍希釈したHRP標識抗ヒトC1qポリクローナル抗体を100μLずつ添加し、25℃にて1時間インキュベートした。以降は、前記のC1q−APN複合体ELISA法と同一手法にて検出・定量を行った。今回、検出抗体として使用したHRP標識抗ヒトC1qポリクローナル抗体は、Peroxidase Labelling Kit−NH(DOJINDO社)を用い添付文書に従い作製した。
【0076】
実施例1 インビトロでのアディポネクチンとC1qの結合評価
ファーウエスタンブロット法によるアディポネクチンとC1qの結合評価結果を図1に示した。還元・加熱下にて組換えアディポネクチンタンパク質(rhAPN)のSDS−PAGEを実施した後、ブロットしたメンブレンをヒトC1q精製タンパク質と反応させ、その後、抗ヒトC1qポリクローナル抗体にて検出した(図1.A 左(APN))。
また、同様に、ヒトC1q精製タンパク質をブロットしたメンブレンをビオチン標識rhAPNと反応後にHRP標識ストレプトアビジンにて反応させた(図1.A 右(C1q))。以上の手法より、アディポネクチンとC1qの直接結合をインビトロにて証明した。
【0077】
次に、rhAPN及びヒトC1q精製タンパク質結合プレートを用いた結合評価を実施した。図1.Bには、rhAPN固相化プレート(1μg/mL)に対し、ヒトC1q精製タンパク質を表記濃度にて添加し、その後、抗ヒトC1q抗体にて検出した結果を示した。また、図1.Cには、ヒトC1q精製タンパク質固相化プレート(1μg/mL)に対し、rhAPNを表記濃度にて添加し、その後、抗ヒトアディポネクチン抗体にて検出した結果を示した。これらELISAプレートを用いた結合実験からも、アディポネクチンとC1qの直接結合を確認した。一方、rhAPN、ヒトC1q精製タンパク質ともに対照であるBSAプレートへの結合はほとんど認められなかった。
【0078】
実施例2 ヒト血清におけるC1q−アディポネクチン複合体の検出
ヒト血清を、還元及び加熱、非還元及び加熱、又は非還元及び非加熱条件下にて、SDS−PAGE、及びウェスタンブロッティングを行うことにより、アディポネクチン及びC1qの多量体構造を検出した。結果を図2.Aに示した。加熱及び還元処理下では、31kDa付近にアディポネクチンに由来するシグナルを、また31、30、26kDa付近にC1qに由来するシグナルを検出した。一方、非還元及び非加熱処理下においては、114kDa以上に、アディポネクチン及びC1qの高分子量体を検出した。
【0079】
次に、ヒト血清を用いた共免疫沈降法により血中に存在するC1q−アディポネクチン複合体の直接検出を実施した。血清中のアディポネクチン及びC1qを免疫沈降し、その後、各々の免疫沈降産物を抗ヒトアディポネクチン抗体、あるいは抗ヒトC1q抗体にてウェスタンブロッティングを行った。図2.Bにはアディポネクチン免疫沈降結果を、図2.CにはC1q免疫沈降結果を示した。その結果、アディポネクチン免疫沈降産物中にはC1qに特異的なシグナルが検出され、同様にC1q免疫沈降産物についてもアディポネクチンに特異的なシグナルが検出された。以上、共免疫沈降法による検討結果から、ヒト血清中においてもC1q−アディポネクチン複合体が存在していることを証明した。
これまでに、インビトロでの検討にて、アディポネクチンとC1qが結合することは報告されていた[非特許文献8]。しかしながら、ヒト血清中にC1q−アディポネクチン複合体が存在することを証明したことは本発明が初めてである。
【0080】
実施例3 ヒト血清中のC1q−アディポネクチン複合体測定ELISA法の構築
【0081】
ヒト血清に存在するC1q−アディポネクチン複合体の臨床的意義を解析する目的にて、血清中のC1q−アディポネクチン複合体量の測定のためのELISA法を開発した。
抗アディポネクチン−F(ab’)2抗体固相化プレートに対し、複合体標準品及び80倍希釈ヒト血清を各ウェルに添加した。検出抗体には、抗ヒトC1qポリクローナル抗体及びHRP標識抗ウサギIgG抗体を使用した。C1q−アディポネクチン複合体標準品は、5−0.315単位/mLまで段階希釈したものにより標準曲線を作成した(図3.A)。ヒト血清希釈検体は、図3.Bに示すように良好な希釈曲線が得られ、対照として用いたマウスIgG−F(ab’)2抗体固相化プレートでは吸光度は確認されなかった。
【0082】
実施例4 ヒト血清中C1q−アディポネクチン複合体のゲル濾過分画様式
アディポネクチンは循環血中に高分子分画(High-molecular weight; HMW)、中分子分画(Middle-molecular weight; MMW)、低分子量分画(Low-molecular weight; LMW)の分画パターンにて存在していることが報告されている[Komura N, Kihara S, Sonoda M, et al., Clinical significance of high-molecular weight form of adiponectin in male patients with coronary artery disease. Circ J. 2008 Jan;72(1):23-8]。本発明では、ヒト循環血中においてC1q−アディポネクチン複合体がどのような分布様式にて存在しているかゲル濾過クロマトグラフィー法にて解析した。ヒト血清をSuperdex−200クロマトグラフィーにて分画し、各フラクションにおける総アディポネクチン量及びC1q−アディポネクチン複合体量を測定した。図3.Cに示すように、C1q−アディポネクチン複合体は、HMW及びMMW分画のアディポネクチン中に存在している可能性が示唆された。
【0083】
実施例5 ヒト血清中のC1q測定ELISA法の構築
血清中C1qに特異的なELISA測定法の構築を行った。抗ヒトC1q−F(ab’)2抗体固相化プレートに対し、ヒトC1q標準品及び3000倍希釈ヒト血清を各ウェルに添加した。検出抗体には、HRP標識抗ヒトC1qポリクローナル抗体を使用した。
ヒトC1q標準品は、150−2.34ng/mLまで段階希釈し標準曲線を作成した(図4.A)。希釈したヒト血清は、図4.Bに示すように良好な希釈曲線が得られ、対照として用いたウサギIgG−F(ab’)2抗体固相化プレートでは吸光度は確認されなかった。
【0084】
C1qを構成するサブユニット(C鎖)とアディポネクチンは、特に高い相同性を有することが報告されている[Maeda K, Okubo K, Shimomura I et al., cDNA cloning and expression of a novel adipose specific collagen-like factor, apM1(AdiPose Most abundant Gene transcript 1). Biochem Biophys Res Commun. 1996 Apr 16;221(2):286-9.]。次に、本発明にて構築したヒトC1q ELISA測定法について、組換えアディポネクチンタンパク質(rhAPN)を測定することによりアディポネクチンとの反応交差性を検討した。図4.Cに示すように、最大250ng/mLにてrhAPNを添加した場合についても吸光度は認められなかった。以上の検討から、本法はヒト血清中C1qに特異性の高いELISA法であると結論付けた。
【0085】
実施例6 循環血中C1q−アディポネクチン複合体量とC1q量の相関関係
日立健康管理センターにてあらかじめ本研究内容を説明し同意を得た2010年度検診受診者より血清を提供してもらった。30歳から74歳までの腹部CTスキャンを受診している重症疾患(癌、脳血管疾患、心筋梗塞)の罹病歴のない男性329名を対象とした。表1に各検体の臨床背景を示した。対象者を内臓脂肪面積(VFA)<100cmの非内臓脂肪型肥満者(113名、平均VFA;66±24cm)、及びVFA≧100cmの内臓脂肪型肥満者(216名、平均VFA;149±38cm)に分類した。
表1中、データは、平均値 ± SD (range) 又は分析対象数 (n)である。
略号は以下の通りである。
BMI;ボディー・マス・インデックス、WC;腹囲、VFA;内臓脂肪面積、SFA;皮下脂肪面積、SBP;収縮期血圧、DBP;拡張期血圧、BG;血中グルコース、fIRI;空腹時免疫反応性インスリン、TC;総コレステロール 、HDL−C;高密度リポタンパク質コレステロール、eGFR;推定糸球体濾過量(=194×Cr−1.094×年齢−0.287)、AST;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ALT;アラニンアミノトランスフェラーゼ、γ−GTP;γ−グルタミルトランスフェラーゼ、Total−APN;総アディポネクチン、HMW−APN;高分子量アディポネクチン、C1q−APN;C1q−アディポネクチン複合体
【0086】
【表1】
【0087】
図5に循環血中の総アディポネクチン(Total−APN)量、高分子アディポネクチン(HMW−APN)量、C1q−アディポネクチン複合体(C1q−APN)量、及びC1q量との相関図を示した。図5中、○(白丸)は、VFA≧100cmを示し、●(黒丸)は、VFA<100cmの群を示す。
Total−APN量とHMW−APN量は、有意な正の相関関係が認められ(r=0.9518、p<0.0001、図5A)、C1q−APN量とは分散した正の相関関係が認められた(r=0.5657、p<0.0001、図5B)。一方で、Total−APN量とC1q量との相関関係は認められなかった(図5D)。
HMW−APN量は、C1q−APN量と有意な正の相関関係が認められたが(r=0.5577、p<0.0001、図5C)、C1q量との相関関係は認められなかった(図5E)。一方で、C1q量は、C1q−アディポネクチン複合体量と弱い相関関係が認められた(r=0.1140、p=0.0411、図5F)。
【0088】
次に、C1q−APN量又はC1q量と各種臨床パラメーターとの相関を解析した。各相関係数を表2に示した。IRI、TG、ALT、γ−GTP、及びC1q−APN量は非対称な分散を示したため、Log変換して解析に使用した。Log C1q−APNは、HDL−Cと正に相関しており、BMI、WC、VFA、SFA、log−IRI、HbA1c、log−TG、UA、log−ALT、log−γ−GTPとは負に相関していた。一方で、Log C1q−APNとリスクファクター数との相関は認めなかった。
C1qは、BMI、WC、VFA、SFA、SBP、DBP、log IRI、TC、log TG、Log ALT、及びリスクファクター数との正の相関が認められ、HDL−Cとの負の相関が認められた。
更に、ステップワイズ重回帰分析(Stepwise multiple regression)解析から、BMI(multivariate BMI)、VFA(multivariate VFA)、及びSFA(multivariate SFA)がC1q−APN複合体量の有意な規定因子であった。一方、BMI、VFA、SFAはC1qの有意な規定因子ではなかった。
表2において、C1q−APN、IRI、TG、AST、ALT及びγ−GTPのレベルのデータは、歪んだ分布を示し、分析前に対数変換した。有意水準は、p<0.05(*)に設定した。逐次重回帰分析を実施して、C1q−APN又はC1qに有意に相関するこれらのパラメーターを決定した。次いで、p<0.05及びF>4.0のパラメータを独立変数として回帰分析に投入した(*)。
これらの略号は表1に同じである。
【0089】
【表2.A】

【表2.B】
【0090】
実施例7 メタボリックシンドローム有無判定に対するROC曲線解析
循環血中の総アディポネクチン(Total−APN)量は、メタボリックシンドロームのバイオマーカーであることが知られている[非特許文献7]。絶対量だけでなく、Total−APNに占める高分子アディポネクチン(HMW−APN)の存在割合(HMW−APN/Total−APN比)又は総アディポネクチン量に占めるC1q−アディポネクチン複合体の存在割合(C1q−APN/Total−APN比)といったアディポネクチンの血中での構造を示す相対指標についても質的変化を観察する上で重要と考えられた。これら循環血中のC1q−APN量、C1q量、C1q−APN/Total−APN比、HMW−APN/Total−APN比、又はC1q−APN/C1q比と、メタボリックシンドロームとの関係については全く不明であった。
【0091】
表3には、内臓脂肪蓄積者をVFA≧100cmあるいはWC≧85cmに基づき規定した場合のメタボリックシンドローム有無判断に対する各種臨床指標のROC曲線を示した。内臓脂肪蓄積群をVFA≧100cmにて規定した場合(図6、表3)、ROC曲線下面積(AUC:Area under the specificity-sensitivity curves)は、C1q−APN/Total−APN比が0.704(95%CI、0.632−0.775、図6E)、Total−APN量が0.668(95%CI、0.596−0.740、図6A)、そしてHMW−APN量が0.648(95%CI、0.577−0.720、図6B)であった。一方、C1q−APN量は、0.535(95%CI、0.457−0.613、図6C)であった。本結果に関しては、WCにてメタボリックシンドロームを規定した場合に関しても同様の結果が得られた(表3)。表3では、AUCが高い順に並べている。表3の略号は、以下の通りである。AUC;特異度−感度曲線下面積、95% CI;95%信頼区間、その他は略号は表1に同じ。
【0092】
【表3.A】

【表3.B】
【0093】
以上の結果から、Total−APN量又はHMW−APN量と比較して、C1q−APN/Total−APN比がアディポネクチン関連指標の中で、最もメタボリックシンドローム判定の最も有効なバイオマーカーである可能性が判明した。一方で、C1q−APN単独量は有効な指標ではなかった。
【0094】
実施例8 内臓脂肪蓄積における各種アディポネクチンと肥満関連心血管リスクファクター集積
脂質異常・高血圧・血糖異常(メタボリックシンドロームの構成要因)を有する集団について、各種アディポネクチン関連指標との関連性を評価した。対象を、VFA<100cmとVFA≧100cmの2群に分類し、日本人の内臓脂肪蓄積基準に基づきカットオフ値を選定した。表1にこれら2群の臨床的特徴を示した。
【0095】
VFA<100cmの集団については、血清中のTotal−APN量、HMW−APN量、C1q−APN量、HMW−APN/Total−APN比、C1q−APN/Total−APN比、又はC1q−APN/HMW−APN比と、肥満関連心血管リスクファクター集積との関連性は認められなかった(図7A)。一方で、VFA≧100cmの集団については、血清中のTotal−APN量とHMW−APN量が肥満関連心血管リスクファクター集積と有意な負の相関が認められた(p=0.0191、[図7B a]、p=0.0450、[図7B b]、Kruskal-Wallis test)。C1q量はリスクファクター集積と有意な正の相関が認められたが(p=0.0191、[図7B d])、C1q−APNとの相関は認められなかった(p=0.5669、[図7B d])。更に、C1q−APN/Total−APN比、及びC1q−APN/HMW−APN比は、肥満関連心血管リスクファクターの集積と有意な正の相関関係(p=0.0003、[図7B e]、p=0.0065、[図7B f]、Kruskal-Wallis test)が認められた一方で、HMW−APN/Total−APN比及びC1q−APN/C1q比はリスクファクター集積との相関は認められなかった(図7B g、h)。
【0096】
以上の結果から、各種指標と比較して、C1q−APN/Total−APN比が最も肥満関連心血管リスクファクター集積を反映するバイオマーカーであることが判明した。
以上から、本指標は動脈硬化症と関連する可能性が強く示唆された。
図1.A】
図1.B】
図1.C】
図2.A】
図2.B】
図2.C】
図3.A】
図3.B】
図3.C】
図4.A】
図4.B】
図4.C】
図5
図6
図7