特許第6142317号(P6142317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142317
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】伸縮継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/12 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   F16L27/12 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-154724(P2013-154724)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-25491(P2015-25491A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年6月23日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度から平成23年度「石油精製等高度化技術開発費補助金(革新的次世代石油精製等技術開発事業のうち重質油対応型高過酷度流動接触分解技術開発事業に係るものに限る。)」に係る補助事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春
(72)【発明者】
【氏名】吉本 明彦
(72)【発明者】
【氏名】緒方 龍
(72)【発明者】
【氏名】大原 良友
(72)【発明者】
【氏名】浅井 博文
(72)【発明者】
【氏名】金子 達昭
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−504488(JP,A)
【文献】 特開2008−25352(JP,A)
【文献】 特開昭60−179594(JP,A)
【文献】 実開昭58−119689(JP,U)
【文献】 実開昭54−120721(JP,U)
【文献】 特開昭51−55029(JP,A)
【文献】 実公昭50−39857(JP,Y1)
【文献】 実開昭48−99517(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/10 − 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火ライニングによって内壁面が画成され、粉粒体を同伴した高温の気体が上昇する立ち上がり管の上側配管と下側配管との間に介装される伸縮継手であって、
上下端部が各々上記上側配管および下側配管に接続された伸縮管と、
下端部が上記下側配管と一体化されるとともに上記下側配管の上記内壁面と上記伸縮管との間に配置されて上端部が開口する筒状の第1の保護管と、
上端部が上記上側配管と一体化されるとともに上記第1の保護管の内方に隙間を介して配置され、内周面が上記下側配管の内壁面と面一または上記第1の保護管側に位置することにより、下端部と上記下側配管の内壁面との間に上記気体の流れ方向と直交する方向に開口する開口部が形成された筒状の第2の保護管と、
これら第1および第2の保護管の間の上記隙間に介装されたシール部材と、
このシール部材によって封じられた上記第1および第2の保護管の外周面と上記伸縮管の内壁との間に介装された伸縮性を有する断熱材とを備えてなり、
かつ、上記第1および第2の保護管の間の隙間の底部に、当該隙間側から上記開口部側に向けて漸次下方に傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする伸縮継手。
【請求項2】
上記シール部材は、上記隙間に介装された第1のシール部材と、この第1のシール部材の下側に介装されるとともに、上記第1のシール部材よりも気孔率が小さい第2のシール部材とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の伸縮継手。
【請求項3】
上記断熱材は、袋体の内部にセラミックファイバーを充填することにより構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮継手。
【請求項4】
上記下側配管には、先端部が当該下側配管と上記第1の保護管の外周面との間に開口する保守用ノズルが接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の伸縮継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学プラント等において、粉粒体を同伴した高温の気体が上昇する各種の立ち上がり管に介装する際に用いて好適な伸縮継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking)プロセス(以下、FCCプロセスと略す。)は、重油として評価される高沸点の各種の原料油に、高温雰囲気下においてゼオライト系の固体酸触媒(FCC触媒)を接触させて分解することにより、付加価値の高いガソリンやLPG等の分解生成物を得るものであり、石油精製における最も重要なプロセスである。
【0003】
このFCCプロセスは、原料油にFCC触媒を接触させて分解させる分解反応工程と、この分解反応工程において生成した分解生成物をFCC触媒から分離して取り出す分離工程と、分離されたFCC触媒をスチームで洗浄し、その後FCC触媒上の付着コークを燃焼させて触媒を再利用するための再生工程と、再生されたFCC触媒を上記分解反応工程に供給する再生触媒の移送工程によって、概略構成されたものである。
【0004】
図3は、本発明における上記FCCプロセスの概略構成を示すものである。
このプロセスは、ダウンフロー反応器1の上部1aから供給される原料油に、再生触媒保持塔2から送られてくるFCC触媒を、当該ダウンフロー反応器1を落下する過程で接触させて、瞬時に原料油を分解した後に、得られた分解生成物を下部の分離機3で分離して外部に取り出すとともに、FCC触媒を触媒洗浄塔4で洗浄して触媒再生塔5へと送り、当該触媒再生塔5に供給される再生用空気によって再生させて、高温の気体とともに触媒上昇管6から再生触媒保持塔2へと送って再利用するものである。
【0005】
ところで、この種のプロセスを実施するためのFCC用プラントにおいては、ダウンフロー反応器1、再生触媒保持塔2、触媒洗浄塔4あるいは触媒再生塔5などの設備が、構造体によって固定され、これら設備間に上記触媒上昇管6等の各種配管が施工されることになる。
【0006】
他方、上記プラントにおいては、運転時に内部が500℃以上の温度雰囲気下に保持されており、運転条件を変えた際や当該運転を停止した際に、当該操業温度が大きく変化する。このため、一般に、上記設備間の配管には、上記温度変化に起因する配管の膨張・収縮を吸収するための伸縮継手が介装されている。
【0007】
図4は、上記触媒上昇管6に介装される従来の伸縮継手を示すもので、図中符号10がインコネル等の耐熱性金属が蛇腹状に形成されて伸縮可能とされた伸縮管である。
この伸縮管10は、上下端部が各々上記触媒上昇管6の上側配管6aおよび下側配管6bに接合・一体化されたもので、その外周部には、セラミックファイバーからなる断熱材29と、当該伸縮管10の径方向の形状を保持するとともに外部から保護するための保護カバー11が設けられている。
【0008】
他方、上側配管6aおよび下側配管6bは、例えば炭素鋼からなるもので、その内周面には、それぞれ耐火ライニング12、13が施工されており、これにより当該耐火ライニング12、13の表面が上側配管6aおよび下側配管6bにおける内壁面12a、13aになっている。
【0009】
このため、伸縮管10の内側には、当該伸縮管10の伸縮性を担保したうえで、その耐火性を確保するとともに、上側配管6aおよび下側配管6bの内壁面12a、13aと連続させるための耐火構造が設けられている。
【0010】
この耐火構造は、上端部が上側配管6aと一体化されるとともに上側配管6aの内壁面12aよりも伸縮管10側に配置されて下端部が開口する外側保護管14と、この外側保護管14の内方に隙間を介して配置され、耐摩耗ライニング15aが施された内周面が下側配管6bの内壁面13aと面一に位置する内側保護管15とを備えたものである。
【0011】
そして、内側保護管15の上端部と上側配管6aの内壁面12aとの間に、内外保護管14、15の軸線方向への相対変位を許容する開口部16が形成され、かつ内外保護管14、15の隙間にシール部材17としてワイヤーメッシュ入りのホースブレードが介装されるとともに、このシール部材17によって封じられた内外保護管14、15の外周面と伸縮管10の内壁との間に、断熱材18が充填されることにより、上記耐火構造が構成されている。
【0012】
このような構成からなる伸縮継手を介装した触媒上昇管6内には、運転時に下方の触媒再生塔5から上方の再生触媒保持塔2へと、多量のFCC触媒を同伴した約550℃の気体が上昇する。そして、当該FCC触媒を含む高温気体の流れ方向を考慮して、上記FCC触媒が極力内外保護管14、15間に浸入しないように、開口部16を上記流れ方向の下流側、すなわち伸縮継手の上部側に形成したのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、上記従来の伸縮継手を用いて試験運転を行ったところ、当該運転およびその停止を長期間繰り返した後に、上記伸縮継手が十分に伸縮できなくなり、よって伸縮継手としての機能を十分に発揮できなくなるという現象が確認された。
【0014】
そこで、上記伸縮継手をオーバーホールして、内部の状況を確認したところ、断熱材18が殆ど消失するとともに、当該空間がFCC触媒によって満たされた結果、伸縮管10の伸縮が妨げられていることが判った。また、この原因は、開口部16が伸縮継手の上方に形成され、かつ隙間が当該開口部16よりも下方に延在していることから、特に運転停止時に、触媒上昇管6内を落下するFCC触媒が、上記開口部16から上記隙間内に浸入したものと考えられた。
【0015】
そして、開口部16から浸入したFCC触媒が、次第に上記シール部材17上に堆積して行くことに加えて、シール部材17として、気孔率が大きなワイヤーメッシュ入りのホースブレードを用いていたのに対して、FCC触媒は、40〜80μmの微粒子状に造粒されたものであるために、当該シール部材17が、FCC触媒の浸入を阻止するために十分機能していなかったものと推測された。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、運転停止時においても立ち上がり管内を落下する粉粒体が伸縮管の内側に設けられた断熱材側に浸入して、当該伸縮管の伸縮機能を損なうことを防止することが可能になる伸縮継手を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、耐火ライニングによって内壁面が画成され、粉粒体を同伴した高温の気体が上昇する立ち上がり管の上側配管と下側配管との間に介装される伸縮継手であって、上下端部が各々上記上側配管および下側配管に接続された伸縮管と、下端部が上記下側配管と一体化されるとともに上記下側配管の上記内壁面と上記伸縮管との間に配置されて上端部が開口する筒状の第1の保護管と、上端部が上記上側配管と一体化されるとともに上記第1の保護管の内方に隙間を介して配置され、内周面が上記下側配管の内壁面と面一または上記第1の保護管側に位置することにより、下端部と上記下側配管の内壁面との間に上記気体の流れ方向と直交する方向に開口する開口部が形成された筒状の第2の保護管と、これら第1および第2の保護管の間の上記隙間に介装されたシール部材と、このシール部材によって封じられた上記第1および第2の保護管の外周面と上記伸縮管の内壁との間に介装された伸縮性を有する断熱材とを備えてなり、かつ、上記第1および第2の保護管の間の隙間の底部に、当該隙間側から上記開口部側に向けて漸次下方に傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
なお、上記傾斜面の傾斜角度は、上記粉粒体が落下し易い角度であれば良く、具体的には、水平面に対して、20〜70°の範囲であることが好ましい。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記シール部材は、上記隙間に介装された第1のシール部材と、この第1のシール部材の下側に介装されるとともに、上記第1のシール部材よりも気孔率が小さい第2のシール部材とを備えてなることを特徴とするものである。
【0020】
ここで、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記断熱材が、袋体の内部にセラミックファイバーを充填することにより構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、上記下側配管には、先端部が当該下側配管と上記第1の保護管の外周面との間に開口する保守用ノズルが接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1〜4のいずれかに記載の発明によれば、上側配管と一体化された第2の保護管と下側配管との間の伸縮管の伸び縮みを吸収するための開口部が、気体の流れ方向と直交する方向に開口しているために、通常の運転時においては、流速の速い気体に同伴して上昇する粉粒体が上記開口部から第1の保護管と第2の保護管との間の隙間に浸入することがない。
【0023】
他方、運転の停止時に、上記粉粒体が立ち上がり管内を落下する場合にも、上記開口部が第1の保護管と第2の保護管との間の隙間の下部に形成されているために、上記粉粒体が上記隙間に浸入することが抑制される。
【0024】
加えて、上記第1および第2の保護管の間の隙間の底部に、上記隙間側から開口部側に向けて漸次下方に傾斜する傾斜面を形成しているために、上記開口部から隙間内に浸入しようとする粉粒体を、重力により上記傾斜面に沿って管内に落下させることができる。
【0025】
また、仮に上記粉粒体が、開口部から隙間内に浸入した場合にも、上記隙間内にシール部材を介装しているために、当該シール部材によって粉粒体の上方への混入を防ぐことができ、特に請求項2に記載の発明によれば、上記シール部材を、上方に位置する第1のシール部材と、この第1のシール部材の下側に位置する第2のシール部材とを備えた構成とし、かつ開口部側に位置する第2のシール部材として、第1のシール部材よりも気孔率が小さいものを用いているために、粒径の小さな粉粒体に対しても、浸入阻止の機能を十分に発揮させることができる。
【0026】
加えて、請求項3に記載の発明においては、上記断熱材を、袋体の内部にセラミックファイバーを充填することによって構成しているために、万一粉粒体がシール部材を通過して断熱材側に浸入した場合においても、従来のように上記断熱材が散逸して粉粒体と置換することを防止することができる。
【0027】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、下側配管に、先端部が当該下側配管と第1の保護管の外周面との間に開口する保守用ノズルを設けているために、当該保守用ノズルから内部の断熱材の状態を確認することができる。また、上記断熱材に粉粒体が混入した場合には、上記保守ノズルを用いて断熱材を充填した第1および第2の保護管の外周面と伸縮管の内壁との間の空間のエアパージ等を行うことも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る伸縮継手の一実施形態を示す縦断面図である。
図2図2のシール部材を示す要部の斜視図である。
図3】FCCプロセスの概略構成図である。
図4図3のプロセスに用いられた従来の伸縮継手を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1および図2は、本発明に係る伸縮継手を、図3に示したFCCプロセスにおける触媒上昇管(立ち上がり管)6に介装する伸縮継手に適用した一実施形態を示すもので、図4に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0030】
図1に示すように、この伸縮継手においては、伸縮管10と下側配管6bの耐火ライニング13の内壁面13aとの間に、下端部が下側配管6bに接合されて上端部が開口する外側保護管(第1の保護管)20が配置されている。そして、この外側保護管20の内方に、隙間Sを介して下端部が開口する内側保護管(第2の保護管)21が配置され、この内側保護管21の上端部が上側配管6aに接合されている。
【0031】
これら外側保護管20および内側保護管21は、それぞれ内周面に耐摩耗ライニング22、23が施工されており、内側保護管21の耐摩耗ライニング23の表面が、上側および下側配管6a、6bの耐火ライニング12、13の内壁面12a、13aと面一状に配置されている。そして、内側保護管21の下端部と、下側配管6bの耐火ライニング13との間に、気体の流れ方向と直交する方向に開口して、伸縮管10の伸び縮みを担保する開口部24が形成されている。
【0032】
さらに、外側保護管20の耐摩耗ライニング22の下部は、上記隙間S側から開口部24側に向けて漸次下方に傾斜する傾斜面22aが形成されている。ここで、傾斜面22aの傾斜角度は、粉粒体が落下し易い角度であれば良く、具体的には水平面に対して、20〜70°の範囲であることが好ましい。
そして、図1および図2に示すように、外側保護管20および内側保護管21の間の隙間Sには、上部シール部材(第1のシール部材)25および下部シール部材(第2のシール部材)26が介装されている。
【0033】
ここで、上部シール部材25は、外周が、線径0.4mmφのSUS310Sのワイヤーによって編まれたホース内に、0.254mmφSUS310Sのワイヤーが194Kg/m3の密度で充填されたホースブレードである。また、下部シール部材26は、外周が、同じく線径0.4mmφのSUS310Sのワイヤーによって編まれたホース内に、平均繊維径が2.5μmのAl23およびSiO2からなるセラミックスファイバーが、60〜250Kg/m3の密度で充填されたホースブレードである。これにより、下部シール部材26は、上部シール部材25よりも気孔率が小さくなっている。
【0034】
そして、これら上下部シール部材25、26によって封じられた外側保護管20および内側保護管21の外周面と伸縮管10の内壁との間に、伸縮管10の伸縮を妨げない伸縮性を備えた断熱材27が介装されている。この断熱材27は、SiO2等のセラミックスファイバーからなるクロスの袋体の内部に、Al23およびSiO2からなるセラミックスファイバーが、128〜160Kg/m3の密度で充填されたものである。
【0035】
また、下側配管6bには、先端部が下側配管6bの内部に開口する保守用ノズル28が接続されており、この保守用ノズル28によって、下側配管6bと外側保護管20との間に介装されている上記断熱材27の状態が目視可能になっている。
【0036】
以上の構成からなる伸縮継手によれば、上側配管6aと一体化された内側保護管21と下側配管6bの耐火ライニング13との間に形成されて、伸縮管10の伸び縮みを吸収するための開口部24が、下方から上方へと流れる気体の流れ方向と直交する方向に開口しているために、通常の運転時においては、流速の速い気体に同伴して上昇するFCC触媒が開口部24から外側保護管20と内側保護管21との間の隙間Sに浸入することがない。
【0037】
また、運転の停止時に、上記FCC触媒が触媒上昇管6内を落下する場合にも、開口部24が外側保護管20と内側保護管21との間の隙間Sの下部に形成されているために、上記FCC触媒が隙間Sに浸入することが抑制される。しかも、上記隙間Sとなる外側保護管20の耐摩耗ライニング22の下部に、上記隙間S側から開口部24側に向けて漸次下方に傾斜する傾斜面22aを形成しているために、開口部24から隙間Sに浸入しようとするFCC触媒を、重力によりこの傾斜面22aに沿って管内に落下させることができる。
【0038】
また、仮に上記FCC触媒が、開口部24から隙間S内に浸入した場合にも、隙間S内に上部シール部材25および下部シール部材26を介装するとともに、開口部24側に位置する下部シール部材26として、上部シール部材25よりも気孔率が小さいものを用いているために、粒径が100μm以下といった微細なFCC触媒粉粒体に対しても、浸入阻止の機能を十分に発揮させることができる。
【0039】
さらに、袋体の内部にセラミックファイバーを充填することによって断熱材27を構成しているために、万一FCC触媒が上下部シール部材25、26を通過して断熱材27側に浸入した場合においても、従来のように断熱材27が散逸してFCC触媒と置換することを防止することができる。
【0040】
この結果、運転停止時においても、触媒上昇管6内を落下するFCC触媒が、伸縮管10の内側に設けられた断熱材27側に浸入して、伸縮管10の伸縮機能を損なうことを確実に防止することができる。
【0041】
加えて、下側配管6bに、先端部が下側配管6b内に開口する保守用ノズル28を設けているために、この保守用ノズル28から内部の断熱材27の状態を確認することができるとともに、万一断熱材27の充填箇所にFCC触媒が混入した場合には、保守ノズル28を用いて外側保護管20および内側保護管21の外周面と伸縮管10の内壁との間の空間のエアパージ等を行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
化学プラント等において、粉粒体を同伴した高温の気体が上昇する各種の立ち上がり管に介装する伸縮継手として利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
6 触媒上昇管(立ち上がり管)
6a 上側配管
6b 下側配管
10 伸縮管
12、13 耐火ライニング
12a、13a 内壁面
20 外側保護管(第1の保護管)
21 内側保護管(第2の保護管)
22、23 耐摩耗ライニング
22a 傾斜面
24 開口部
25 上部シール部材(第1のシール部材)
26 下部シール部材(第2のシール部材)
27 断熱材
28 保守用ノズル
29 外部断熱材
S 隙間
図1
図2
図3
図4