(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述の手法において、キャリアガスの流量が一定となるように調節を行ったとしても、原料容器内の原料の減少や、これに伴うキャリアガスの滞留時間の変化などに起因して原料の気化流量が変化してしまうことがある。この点、引用文献1には、キャリアガスの流量設定値をどのように調節すれば、所望の量の原料を含む原料ガスが得られるかに関する技術的な言及はない。従って、原料の気化流量をモニタしていたとしても、試行錯誤により、キャリアガスの流量設定値を調整せざるを得ず、正確な気化流量を得るまでに時間がかかってしまう。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な手法で原料ガスに含まれる原料の気化流量を正確に調節することが可能な原料ガス供給装置、成膜装置及び原料ガス供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る原料ガス供給装置は、基板に対する成膜を行う成膜処理部に原料
を含む原料ガスを供給する原料ガス供給装置において、
固体または液体の原料を収容した原料容器と、
キャリアガス流量設定値に基づきキャリアガスの流量を調節するキャリアガス流量調節部が設けられ、前記原料容器にキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給部と、
前記原料容器から流出し、気化した原料を含む原料ガスの流量測定値を出力するための流量測定部と、
前記原料容器から、前記成膜処理部に原料ガスを供給するための原料ガス供給路と、
前記原料ガス供給路から分岐すると共に前記流量測定部が設けられ、前記成膜処理部を介さずに外部へ原料ガスを排出する分岐路と、
前記成膜処理部と
前記分岐路との間で前記原料ガス供給路からの原料ガスの流出先を切り替える切替部と、
前記キャリアガス流量設定値を変化させながら前記キャリアガス供給部から、前記原料容器にキャリアガス
を供給し
て原料ガスを発生させると共に、前記切替部により、前記分岐路へと前記原料ガスの流出先を切り替えることにより、基板への成膜を行わずに前記流量測定部により当該原料ガスの流量を測定し、前記流量測定部の流量測定値と前記キャリアガス流量設定値との差分値から求めた前記原料ガス中に含まれる原料の気化流量を求め、当該気化流量とキャリアガス流量設定値とを対応付けた気化流量テーブルを記憶部に記憶する
第1ステップと、前記気化流量テーブルを用い、指定された気化流量設定値に対応するキャリアガス流量設定値を求める
第2ステップと、当該気化流量設定値から求めたキャリアガス流量設定値に基づいて前記原料容器にキャリアガスを供給して原料ガスを発生させ、
前記切替部により、前記原料ガス供給路へと前記原料ガスの流出先を切り替えられた後の前記成膜処理部に供給する
第3ステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備
えたことを特徴とする。
【0009】
前記原料ガス供給装置は以下の特徴を備えていても良い。
(a)希釈ガス流量設定値に基づき希釈ガスの流量を調節する希釈ガス流量調節部が設けられ、前記成膜処理部に希釈ガスを供給するための希釈ガス供給部を備え、前記制御部は、
前記第3ステップを実行する際に、予め設定されたキャリアガスと希釈ガスとの総流量から、前記成膜処理部に原料ガスを供給する際のキャリアガス流量設定値を差し引いて求めた希釈ガス流量設定値に基づいて、前記成膜処理部に希釈ガスを供給する
第4ステップを実行するように制御信号を出力すること。
(b)前記
第1ステップは、前記
第3ステップにおける前記成膜処理部への原料ガスの供給前に行うこと。
また、他の発明に係る成膜装置は、
上述の原料ガス供給装置と、この原料ガス供給装置の下流側に設けられ、当該原料ガス供給装置から供給された原料ガスを用いて基板に成膜処理を行う
前記成膜処理部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、基板への供給を行わずに原料ガスを発生させて、原料ガス中に含まれる原料の流量である気化流量と、キャリアガスの流量とを対応付けた気化流量テーブルを作成する。そしてユーザーから気化流量、即ち、原料の実供給量の設定を直接受け付けてキャリアガスの流量設定値を決定するので、キャリアガスの供給量に対する気化流量が変化しても、簡便に所望の量の原料を成膜処理部に供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1を参照しながら、本発明の原料ガス供給装置を備えた成膜装置の構成例について説明する。成膜装置は、基板であるウエハW対してCVD法による成膜処理を行うための成膜処理部と、この成膜処理部に原料ガスを供給するための原料ガス供給装置と、を備えている。
【0013】
成膜処理部は、枚葉式の成膜装置の本体として構成され、例えば真空容器を成す処理容器11内に、ウエハWを水平保持すると共に、不図示のヒーターを備えた載置台12と、原料ガスなどを処理容器11内に導入するガス導入部13と、を備える。処理容器11内は、真空排気され、この内部に原料ガス供給装置から原料ガスが導入されることにより、加熱されたウエハWの表面にて成膜が進行する。
【0014】
CVD法によりNi(ニッケル)膜を成膜する場合の一例を挙げると、成膜処理は、Ni(II)N,N′−ジ−ターシャリブチルアミジネート(Ni(II)(tBu−AMD)
2、以下「Ni(AMD)
2」と記す)のようなNi有機金属化合物をアンモニアガスなどの還元ガスで還元してウエハWの表面にNi膜を堆積させることにより進行する。
図1には、これらの原料ガスのうち、常温で固体のNi(AMD)
2を加熱して気化させ、キャリアガスと共に成膜処理部へと供給する原料ガス供給装置の構成例を示してある。
【0015】
本例の原料ガス供給装置は、原料のNi(AMD)
2を収容した原料容器3と、この原料容器3にキャリアガスを供給するキャリアガス供給源41とを備えている。
原料容器3は、常温では固体のNi(AMD)
2を加熱して液化させた液体原料300を収容した容器であり、抵抗発熱体を備えたジャケット状の加熱部31で覆われている。原料容器3は、温度検出部34にて検出した原料容器3内の気相部の温度に基づいて、給電部36から供給される給電量を増減することにより、原料容器3内の温度を調節することができる。加熱部31の設定温度は、液体原料300が液化し、且つ、Ni(AMD)
2が分解しない範囲の温度、例えば150℃に設定される。
【0016】
原料容器3内における液体原料300の上方側の気相部には、キャリアガス流路410から原料容器3内にキャリアガスを導入するキャリアガスノズル32と、原料容器3から原料ガス供給路210へ向けて原料ガスを抜き出す抜き出しノズル33と、が挿入されている。
【0017】
キャリアガスノズル32は、開閉バルブV3、MFC(マスフローコントローラー)42が介設されたキャリアガス流路410に接続されており、キャリアガス流路410の上流側にはキャリアガス供給源41が設けられている。キャリアガスは、例えばAr(アルゴン)ガスなどの不活性ガスが用いられる。キャリアガス供給源41、MFC42、キャリアガス流路410は、本例のキャリアガス供給部を構成し、MFC42はキャリアガス流量調節部としての役割を果たす。
【0018】
一方、抜き出しノズル33は開閉バルブV2が介設された原料ガス供給路210に接続されている。原料容器3から抜き出された原料ガスは、この原料ガス供給路210を介して成膜処理部に供給される。原料容器3の内部は、真空ポンプなどからなる真空排気部14により、排気ライン110を介して真空排気され、真空雰囲気に保たれている。
【0019】
また原料ガス供給路210は、処理容器11の手前にて分岐し、処理容器11を介さずに真空排気部14へと接続された分岐路であるバイパス流路220と接続されている。バイパス流路220には、MFM(マスフローメーター)22が介設されており、原料容器3から流出した原料ガス(気化した原料とキャリアガスとを含んでいる)の流量を測定することができる。MFM22は、本例の流量測定部に相当する。
MFM22は圧力損失が大きい場合があるので、成膜処理部への原料ガス供給を行う原料ガス供給路210とは別のバイパス流路220にMFM22を設けることにより、成膜時に成膜処理部へ供給される原料ガスの流量低下を抑制することができる。
【0020】
原料ガス供給路210とバイパス流路220との間での流路210、220の切り替えは、各流路210、220に介設された開閉弁V1、V5、V6の開閉により実施される。この観点においてこれらの開閉弁V1、V5、V6は、原料ガス供給路210からの原料ガスの流出先を成膜処理部(処理容器11)とバイパス流路220とで切り替える、切替部としての役割を果たしている。
【0021】
さらに原料ガス供給路210には、処理容器11内のガス導入部13との接続部に、原料ガスと混合される希釈ガスを供給する希釈ガス流路420が合流している。希釈ガス流路420には、開閉バルブV4とMFC44とが介設され、その上流側には、希釈ガスであるArガス(不活性ガス)を供給するための希釈ガス供給源43が設けられている。希釈ガス供給源43、MFC44、希釈ガス流路420は、本例の希釈ガス供給部を構成し、MFC44は希釈ガス流量調節部としての役割を果たす。
【0022】
以上に説明した構成を備えた成膜装置(成膜処理部及び原料ガス供給装置)は、制御部5と接続されている。制御部5は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には成膜装置の作用、即ち載置台12上にウエハWを載置し、処理容器11内を真空排気後、原料ガス供給装置から原料ガスを供給して成膜を行い、しかる後、原料ガスの供給を停止してからウエハWを搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0023】
ここで本例の制御部5は、キャリアガスの流量設定値に対するNi(AMD)
2の気化流量の対応関係を示す気化流量テーブル51を既述の記憶部内に格納している。例えば
図2に示すように気化流量テーブル51には、MFC42の流量調節範囲(50〜300sccm(0℃、1気圧の標準状態基準))を20等分して得られる21点を測定点として、これら測定点のキャリアガス流量設定値に対応付けて気化流量が記憶されている。
【0024】
さらに本例の原料ガス供給装置は、原料容器3に供給するキャリアガス流量を一定にして原料ガスを発生させたとき、液体原料300の減少に伴ってNi(AMD)
2の単位時間当たりの気化量(気化流量)が変化する現象に対応するため、前記気化流量テーブル51を作成、更新する機能を備えている。
【0025】
気化流量テーブル51の作成にあたり、制御部5は原料ガス供給路210を流れる原料ガスの流出先をバイパス流路220に切り替え、MFM22を用いて原料ガス(キャリアガス及び気化した原料を含んでいる)の総流量の流量測定値Aを得る。そして、この流量測定値Aと、MFC42の流量設定値Bとの差分値A−Bを算出することにより、原料ガス中に含まれる原料の流量、即ち、気化流量を得る。キャリアガスの流量を順次変化させて得られた各気化流量は、当該キャリアガスの流量設定値と対応付けて気化流量テーブル51に記憶される(
図2)。
【0026】
また制御部5は、タッチパネルなどの外部とのインターフェース52を介してユーザーから気化流量設定値の指定を受け付けることができる。そして、気化流量テーブル51を利用して前記気化流量設定値からキャリアガス流量設定値を算出し、この結果に基づいてMFC42の流量設定を行う。キャリアガス流量設定値の算出方法として、指定された気化流量設定値が気化流量テーブル51の各測定点と一致している場合には、気化流量テーブル51に記憶されているキャリアガス流量設定値を採用すると良い。
【0027】
一方、指定された気化流量設定値が気化流量テーブル51の測定点間の中間の値である場合には、隣り合う測定点間の対応関係を直線近似してキャリアガス流量設定値を特定する手法などが考えられる。例えば気化流量設定値として12sccmが指定されたときには、隣り合う2つの測定点9.75、14.5sccmにおけるキャリアガス流量設定値62.5、75sccmから、62.5+(75−62.5)*{(12−9.75)/(14.5−9.75)}=68.4sccmが算出される。
【0028】
また上述のように原料容器3内の液体原料300の状態によってキャリアガス流量設定値が変化するので、制御部5は、キャリアガスの流量の変化に応じて希釈ガスの供給量を調節する機能も備えている。即ち、制御部5は、原料ガス中のキャリアガスと、希釈ガスとの総流量が一定となるように希釈ガスの流量を増減する。
【0029】
具体的には、キャリアガスと希釈ガスとの総流量Cから、MFC42の流量設定値Bを差し引いた差分値C−BがMFC44の流量設定値(希釈ガス流量設定値)となる。
例えばキャリアガスと希釈ガスの総流量が200sccmに設定されているとき、気化流量テーブル51に基づいて上述のキャリアガス流量設定値68.4sccmが算出されたとする。このとき希釈ガス流量設定値は200−68.4=131.6sccmとなる。
【0030】
以下、
図3、
図4を参照しながら本例の原料ガス供給装置及び成膜装置の作用について説明する。
例えば、停止していた成膜装置を稼働させるタイミングにて(
図3のスタート)、原料ガスの供給を開
始する前に気化流量テーブル51の作成(更新)を行う(同図ステップS
【0031】
気化流量テーブル51の作成においては、
図4に示すように、気化流量テーブル51作成のためのキャリアガス流量設定値の決定を行う(ステップS201)。本例ではMFC42の流量調整範囲及び気化流量テーブル51の仕様に基づいて、
図2に示すように測定点のキャリアガス流量設定値が固定されている。このとき、ユーザーからMFC42の流量調節範囲や測定点数の設定を受け付け、これらの値を変更できるようにしても良い。
【0032】
次いで、原料ガス供給路210の接続先をバイパス流路220側に切り替えると共に(ステップS202)、原料容器3側においては加熱部31に電力を供給してNi(AMD)
2を溶融させ、液体原料300を準備する。
原料容器3内が設定温度となり、原料ガスを発生させる準備が整ったら、測定回数のカウンタをリセット(測定回数n=1)して(ステップS203)、開閉バルブV2、V3を開き、1点目のキャリアガス流量設定値(
図2の例では50sccm)にMFC42によって流量調節されたキャリアガスを原料容器3に供給する。
【0033】
この状態で予め設定された時間だけ待機し、原料容器3から流出する原料ガスの流量が安定したら、バイパス流路220に設けられたMFM22にて原料ガス流量を測定する(
図4のステップS204)。次いで。MFM22から得られた原料ガスの流量測定値Aから、キャリアガス流量設定値Bを差し引き、原料の気化流量A−Bを算出する(ステップS205)。
【0034】
算出した気化流量は、キャリアガス流量設定値と対応付けて気化流量テーブル51に記憶し(ステップS206)、カウンタをインクリメントして(ステップS207)、必要な測定数(本例では21)との比較を行う(ステップS208)。全測定点の測定が完了していない場合には(ステップS208;NO)、ステップS204〜207の動作を繰り返し、各測定点における気化流量を気化流量テーブル51に記憶する。
測定が完了した場合には(ステップS208;YES)、原料容器3へのキャリアガスの供給を停止し(開閉バルブV2、V3を閉じ)、原料ガス供給路210の接続先を成膜処理部(処理容器11)側に切り替えて(ステップS209)、気化流量テーブル51の作成に係る動作を終える(エンド)。
図4のステップS201〜S208を参照して説明した作用は、特許請求の範囲に記載の「第1ステップ」に対応する。
【0035】
ここで原料ガスの流量の安定などを考慮すると、各測定点の気化流量取得動作(ステップS204〜206)には、数分程度かかる場合がある。そこでこのような時間が無い場合に備えて、インターフェース52を介してユーザーから気化流量テーブル51の作成動作の中止命令を受け付ける、アボート機能を設けても良い。この場合には、キャリアガス流量設定値の算出に当たり、前回作成した気化流量テーブル51が用いられる。
【0036】
また、21個の測定点のうち、予め設定した一部の測定点の気化流量を算出した段階で、これらの気化流量が前回作成した気化流量テーブル51の同一のキャリアガス流量設定値に対応する気化流量に対して許容差範囲(例えば±3%以内)にあるときは、自動的に気化流量テーブル51の更新をスキップしても良い。また、前回作成分の気化流量テーブル51を利用しても気化流量の変化が小さいことをユーザーに通知して、アボート機能の活用を促しても良い。
【0037】
以上に説明した動作により、気化流量テーブル51を作成したら、ユーザーから気化流量設定値の指定を受け付け(
図3のステップS102)、気化流量テーブル51を利用してキャリアガス流量設定値を算出する(ステップS103)。また、これに合わせて希釈ガス流量設定値の算出も行う(ステップS104)。
図3のステップS102、S103を参照して説明した作用は、特許請求の範囲に記載の「第2ステップ」に対応する。
【0038】
一方、成膜処理部においては載置台12上にウエハWを載置し、処理容器11内を真空排気してウエハWの加熱を行う。こうして成膜を行う準備が整ったら、原料容器3の開閉バルブV2、V3を開き、ステップS103で算出したキャリアガス流量設定値に基づき流量調節されたキャリアガスを原料容器3に供給し、原料ガスを発生させて成膜処理部に供給する(ステップS105)。また、希釈ガス流路420の開閉バルブV4を開き、ステップS104で算出した希釈ガス流量設定値に基づきMFC44によって流量調節された希釈ガスを原料ガスに混合する(同じくステップS105)。以上に説明した動作に基づき、気化流量テーブル51の作成やキャリアガス、希釈ガスの流量設定値の設定を行い、成膜処理部における成膜処理の進行に応じて原料ガスや希釈ガスの給断を実行する(エンド)。
図3のステップS105を参照して説明した原料ガスの供給に係る作用は、特許請求の範囲に記載の「第3ステップ」に対応する。また、図3のステップS104、S105を参照して説明した希釈ガスの供給に係る作用は、特許請求の範囲に記載の「第4ステップ」に対応する。
【0039】
成膜処理部では、原料ガス供給装置による原料ガス(Ni(AMD)
2)の供給と並行して、不図示のアンモニアガスの供給ラインから成膜処理部へと所定量のアンモニアガスが供給される。この結果、処理容器11内でNi(AMD)
2の還元反応が進行し、ウエハWの表面にNi膜が成膜される。
しかる後、所定時間成膜を行ったら原料ガス及びアンモニアガスの供給を停止し、処理容器11からウエハWを搬出して、次のウエハWの搬入を待つ。
【0040】
本実施の形態に係る原料ガス供給装置によれば以下の効果がある。成膜処理部への原料ガスの供給開始前に、原料ガス中に含まれる原料(Ni(AMD)
2)の気化流量と、キャリアガスの流量とを対応付ける気化流量テーブル51を作成する。そしてユーザーから気化流量、即ち、原料の実供給量の設定を直接受け付けてキャリアガスの流量設定値を決定するので、キャリアガスの供給量に対する気化流量が変化しても、簡便に所望の量の原料を成膜処理部に供給することができる。
【0041】
例えば、制御部5は、原料ガスの総流量AとMFC42の流量設定値Bとの差分値A−Bとして原料の気化流量を把握しているので、この差分値と予め設定した原料の気化流量の目標値とを比較し、差分値が目標値と一致するようにキャリアガスの流量設定値を増減する制御手法も考えられる。しかしながら、原料容器3が大きいなどの理由により、キャリアガスの流量設定値を変更してから、原料の気化流量が安定するまでの応答時間が長い場合には、迅速な気化流量調節を行うことができず、ハンチングが発生してしまうおそれがある。この点、予め作成しておいた気化流量テーブル51に基づいてキャリアガスの流量を設定し、必要に応じてこの気化流量テーブル51を更新することにより、迅速かつ、安定した制御を行うことができる。
【0042】
ここで上述の実施の形態においては、成膜装置の稼働開始時等の原料ガスの供給を開
始する前のタイミングにて気化流量テーブル51を作成する例を示したが、気化流量テーブル51の作成は、成膜装置が稼働しているときに行っても良い。例えば、所定の時間間隔毎、所定の数のロットを処理する毎、または所定枚数のウエハWを成膜する毎に原料ガスの流出先をバイパス流路220に切り替え、気化流量テーブル51に基づいて算出された原料ガスの流量(キャリアガス流量及び原料の気化流量の総流量)とMFM22における実際の原料ガスの流量測定値との比較を行っても良い。そしてこれらの流量の差分値が、予め設定されたしきい値を超えている場合には、新たな気化流量テーブル51の作成を促すように、ユーザーへの通知を行っても良い。
【0043】
また、原料ガスの流量測定を行うMFM22の圧力損失等の影響が小さい場合には、バイパス流路220を用いずに原料ガス供給路210上にMFM22を設けて成膜装の構成を簡素化しても良い。またこの場合は、上述の気化流量テーブル51に基づき算出したキャリアガス流量設定値の根拠となる気化流量設定値と、MFM22による流量測定値とキャリアガス流量設定値から求めた実際の原料ガス流量の差分値をリアルタイムで監視することも可能となる。そこで、この差分値が予め設定したしきい値を超えたら、成膜処理部で成膜を行っていないタイミングを見て気化流量テーブル51の更新を行うと良い。
【0044】
そして、ユーザーから受け付ける流量の指定は、標準状態の換算流量(例えばsccm)で設定する場合に限らず、質量流量(例えばg/min)の指定を受け付けても良い。この場合は、ユーザーから受け付けた質量流量の設定値を気化流量に換算して気化流量テーブル51からキャリアガス流量設定値を特定しても良いし、気化流量の単位を質量流量とした気化流量テーブル51を作成しても良い。
【0045】
また、原料容器3内に収容されている原料は液体原料300に限られず、固体原料を直接、気化(昇華)させて原料ガスを発生させても良い。さらに成膜処理部の構成についても載置台12に1枚ずつウエハWを載置して成膜処理を行う枚葉式の場合の他、多数枚のウエハWを保持するウエハボートにウエハWを保持して成膜を行うバッチ式の成膜処理部への原料ガスの供給に、本発明の原料ガス供給装置を適用しても良い。
【0046】
さらにまた、成膜の手法についても
図1に示した成膜処理部の例に示した熱CVD法の他、原料ガスと反応ガスをプラズマの存在下で活性化して反応させ連続的な成膜を行うプラズマCVD法などの各種のCVD法や、原料ガスを吸着させたウエハWの表面にて反応ガスとの反応をさせて反応生成物を堆積させるALD法などにおける原料ガスの供給にも本発明は適用することができる。
【0047】
これらに加え、本発明の原料ガス供給装置を用いて供給可能な原料ガスは、既述のNi以外に、例えば周期表の第3周期の元素であるAl、Si等、周期表の第4周期の元素であるTi、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ge等、周期表の第5周期の元素であるZr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag等、周期表の第6周期の元素であるBa、Hf、Ta、W、Re、lr、Pt等の元素を含む原料ガスであっても良い。更に、複数の原料ガス供給装置を設け、成膜処理部に対して2種類以上の原料ガスを供給して合金や複合金属酸化物等の成膜に適用しても良い。
【0048】
これらの原料ガスは有機金属化合物や無機金属化合物などを用いる場合が挙げられる。原料ガスと反応させる反応ガスは、O
2、O
3、H
2O等を利用した酸化反応、NH
3、H
2、HCOOH、CH
3COOH等の有機酸、CH
3OH、C
2H
5OH等のアルコール類等を利用した還元反応、CH
4、C
2H
6、C
2H
4、C
2H
2等を利用した炭化反応、NH
3、NH
2NH
2、N
2等を利用した窒化反応等の種々の種反応を利用できる。