(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
凹凸パターンが形成された基板の表面の濡れ性を向上させるための前処理用の処理液を、当該基板の中心部を囲む第1のリング状の液溜まりを形成するように供給する第1の処理液供給工程と、
前記第1の処理液供給工程に並行して、あるいは第1の処理液供給工程を行った後に、前記液溜まりに囲まれた領域を前記前処理用の処理液で満たすように当該処理液を前記基板の中心部に供給する第2の処理液供給工程と、
次いで、前記基板の中心部に形成された液溜まりを遠心力により基板の周縁部へと広げるために基板を回転させる処理液展伸工程と、
続いて、回転する基板の中心部に液処理用の処理液を供給し、当該処理液を遠心力により基板の周縁部へと広げて液処理を行う液処理工程と、
を備えたことを特徴とする液処理方法。
前記第1の処理液供給工程は、基板を60rpm以下の回転数で回転させながら、当該基板に前処理用の処理液を供給する工程を含むことを特徴とする請求項1または2記載の液処理方法。
前記基板において第1のリング状の液溜まりが形成される領域よりも外側領域に、前処理用の処理液により第2のリング状の液溜まりを形成する第3の処理液供給工程を備え、
前記第2のリング状の液溜まりは、前記処理液展伸工程により基板の中心部から前記外側領域に前処理用の処理液が到達する前に形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の液処理方法。
前記第3の処理液供給工程は、前記基板の表面上の気流を整流するための整流部材に設けられる前処理用の処理液供給部から、基板に当該処理液を供給する工程を含むことを特徴とする請求項4記載の液処理方法。
第1の処理液供給部、第2の処理液供給部及び第3の処理液供給部から各々基板に供給される処理液のうち少なくとも2つを、互いに異なる温度に調整する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の液処理方法。
前記第2の処理液供給工程は、基板を回転させると共に処理液供給部から基板に対して斜めに前処理用の処理液を供給する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の液処理方法。
前記第1の処理液供給ステップは、基板を60rpm以下の回転数で回転させながら、当該基板に処理液を供給することを特徴とする請求項8または9記載の液処理装置。
前記前処理用の処理液供給部は、基板の中心部を囲む領域に処理液を供給する第1の処理液供給部と、基板の中心部に処理液を供給する第2の処理液供給部と、からなることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一つに記載の液処理装置。
第1のリング状の液溜まりが形成される領域よりも、外側領域に第2のリング状の液溜まりを形成する第3の処理液供給ステップが行われるように前記制御信号が出力され、
前記第2のリング状の液溜まりは、前記処理液展伸ステップにより基板の中心部から前記外側領域に処理液が到達する前に形成されることを特徴とする請求項8ないし12のいずれか一つに記載の液処理装置。
第1の処理液供給部、第2の処理液供給部及び第3の処理液供給部から各々基板に供給される処理液のうち少なくとも2つを、互いに異なる温度に調整するための温度調整部が設けられることを特徴とする請求項8ないし14のいずれか一つに記載の液処理装置。
前記第2の処理液供給ステップは、基板を回転させると共に処理液供給部から基板に対して斜めに処理液を吐出することを特徴とする請求項8ないし15のいずれか一つに記載の液処理装置。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程において、基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)に各種の処理液を供給するにあたり、ウエハの中心部に供給された液をウエハの回転の遠心力によりウエハの周縁部へと展伸させる、スピンコーティングと呼ばれる手法が用いられている。そして、この処理液のウエハ表面における濡れ性を向上させ、使用量を少なくするために、予めウエハの表面を前処理用の処理液で濡らすプリウエットが行われる場合がある。このプリウエットは、ウエハの回転を停止させた状態あるいは比較的低い回転数でウエハを回転させた状態で、ウエハの中心部に前記前処理用の処理液(以下、プリウエット液と記載する)の液溜まり、いわゆるパドルを形成する。そして、比較的高い回転数でウエハを回転させて、このパドルをなすプリウエット液をスピンコーティングする。
【0003】
ところで、その表面にレジストパターンが形成されたウエハに対して、上記のようにプリウエットを行った後、液処理用の処理液を供給する場合がある。
図35に、そのようにプリウエット液11のパドルが形成された状態のウエハWの模式図を示している。前記レジストパターンとしてウエハWの縦横に夫々多数の溝12が形成されている。溝12に区切られた各領域は、半導体装置をなすチップの形成領域13である。
【0004】
レジスト膜の撥水性が低い場合、このようにパターンが形成されていてもウエハWの中心部に供給されたプリウエット液11のパドルは、当該中心部から周方向に均一性高く広がり、
図35に示すように平面視円形となる。この場合、前記スピンコーティングを行うためにウエハWの回転数を上昇させると、ウエハWの周縁部に向けて周方向に均一性高い量のプリウエット液11が供給され、ウエハWの表面全体を濡らすことができる。
【0005】
しかし、レジスト膜の撥水性が高い場合は円形のパドルを形成できないおそれがある。具体的に説明すると、1つのチップ形成領域13から溝12に流れたプリウエット液11が隣のチップ形成領域13上に移動するには、段差を乗り越えなければならず、しかもその段差を構成するレジスト膜の壁面の撥水性は高い。従って、ウエハWの中心部に供給されたプリウエット液11は、ウエハWの微細な傾きなどによって中心部から偏った位置に流れると、その位置からチップ形成領域の1つの配列方向に沿って流れ、この配列方向から他の方向へは広がり難い。
図36は、そのようにプリウエット液11が配列方向に流れて偏って形成されたパドルを示している。点線の枠内には、前記パドルの界面付近の溝12とチップ形成領域13とを拡大して示している。
【0006】
プリウエット液11の供給量を増やすことでこのような偏りを防ぐことが考えられるが、プリウエット液11はウエハW上を既に濡らされて撥水性が低下した方向へさらに流れやすい。そして、同様にパターンの凹凸と撥水性とによってプリウエット液11の液流れが制限され、前記配列方向から他の方向へは広がり難いので、
図37に示すように前記配列方向にさらにプリウエット液11が流れ、ウエハWの中心から周方向に見てパドルの形状がさらに偏ってしまうおそれがある。
【0007】
上記の
図36、
図37に示すようにパドルが形成された状態でスピンコーティングを行うと、ウエハWにプリウエット液11が供給されなかったり、供給量が不十分となる箇所が発生してしまうおそれがある。その結果、プリウエット後にスピンコーティングされる処理液も、供給されない箇所が発生したり、供給量が少ない箇所が発生するおそれがある。
【0008】
このようにパターンによって、プリウエット液11のパドルの形状が影響されるので、チップ形成領域13の大きさがこのパドルの偏り具合に影響する場合もある。また、各図では省略しているがチップ形成領域13内においてもレジストパターンが形成されているので、この形成領域13内のパターンがパドルの形状を偏らせてしまうことも考えられる。このようなパターンによる処理の不具合の発生を防ぐためには、プリウエット液の供給量を更に多くすると共に、前記処理液の供給量も多くしなければならなかった。
【0009】
特許文献1、2には、プリウエット液を回転するウエハの中心から外れた位置に供給する技術について記載されている。しかし、これら特許文献1、2においては、凹凸パターン及び撥水性により起こる問題の対処については記載されていない。また、特許文献1については、前記プリウエット液供給中の回転速度が1000rpmと高く、供給された液はその場に留まらず、ウエハWの周縁部へと速やかに移動してしまうので、本発明の技術と異なる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るウエハWの液処理装置2について、
図1の縦断側面図と、
図2の平面図とを参照して説明する。液処理装置2に搬送される前記ウエハWの表面には、撥水性のネガ型レジストからなる膜が形成されている。このレジスト膜の表面の水に対する静的接触角は、50°以上である。そして、このレジスト膜には、背景技術の項目で説明したようにレジストパターンである多数の溝12が形成され、溝12により互いに区画された矩形状のチップ形成領域12が平面視ウエハWの縦横に多数配列されている。
図1及び
図2中の点線の矢印の先に、多数のチップ形成領域12の内の一部を拡大して示している。溝12の底面には、前記レジスト膜の下層膜が露出し、この下層膜の撥水性は前記レジスト膜の撥水性よりも小さい。ウエハWの直径は例えば300mmであるが、この大きさには限られない。
【0016】
液処理装置2は、前記ウエハWに純水によるプリウエットを行った後、シュリンク材を含む塗布液(便宜上、シュリンク液と記載する場合がある)を塗布して塗布膜を形成する。この塗布膜が形成されたウエハWは、液処理装置2の外部へ搬送されて加熱処理を受けた後、当該塗布膜の除去処理を受ける。前記加熱処理によって塗布膜を構成する成分が当該レジストに染み込み、レジストパターンの開口部(溝または孔部)が縮小される。
図3中の上段は、液処理装置2で処理前の開口部14を示し、
図3中の下段は、前記加熱処理を受けた後の当該開口部14を示す。この開口部14は、前記チップ形成領域12に形成されている。ただし、
図1、
図2ではその図示を省略している。
【0017】
図1、
図2に戻って説明すると、図中21はスピンチャックであり、ウエハWの裏面中央部を真空吸着することにより当該ウエハWを水平に保持する基板保持部である。図中22は回転駆動機構であり、軸部23を介してスピンチャック21に接続されており、当該スピンチャック21を鉛直軸回りに回転させる。図中24は軸部23を囲む円形板であり、図中25は、円形板24を上下に貫く昇降ピンである。昇降ピン25は実際には3本設けられ、液処理装置2の外部の搬送機構と前記スピンチャック21との間でのウエハWの受け渡しを仲介する。図中26は昇降機構であり、昇降ピン25を昇降させる。
【0018】
前記スピンチャック21を取り囲むように、カップ3が設けられている。カップ3は、回転するウエハWより飛散したり、こぼれ落ちた廃液を受け止めると共に、当該廃液を液処理装置2の外部に排出するためにガイドする。図中31は、その断面が山型に形成された山型ガイド部である。図中32は、回転するウエハWの裏面の周縁部に例えば純水である洗浄液を供給する洗浄ノズルであり、前記山型ガイド部31に設けられている。前記洗浄液はウエハWの側面に回り込んで、当該側面も洗浄する。図中33は、山型ガイド部31の外周端から下方に伸びる垂直ガイドである。図中34は垂直な筒状部であり、山型ガイド部31の外側を取り囲む。
【0019】
図中35、36は上側ガイド部、下側ガイド部であり、前記筒状部34の上縁、当該上縁よりも下方の位置から内側上方へ向けて夫々斜めに伸びる。37は、下側ガイド部36においてその厚さ方向に開口された開口部である。筒状部34の下方側は環状且つ凹部状の液受け部38を形成する。前記山型ガイド部31、垂直ガイド33、筒状部34、上側ガイド部35、下側ガイド部36及び液受け部38により上記のカップ3が形成される。図中27は、液受け部38の液を除去するための排液管である。図中28は排気管であり、図示しない排気ダンパに接続され、所望の排気量でカップ3内を排気する。
【0020】
図中41は前処理用の処理液供給部であるプリウエット液供給ノズルであり、この例では円形の細孔から鉛直下方にプリウエット液として純水を供給する。
図1中42は純水の供給源であり、ポンプなどを含む。
図1中43は流量調整部であり、バルブやマスフローコントローラを含み、純水供給源42からプリウエット液供給ノズル41への純水の供給量を調整する。
図1中44は液処理用の処理液供給部であるシュリンク液供給ノズル、45はシュリンク液の供給源、46は流量調整部であり、夫々供給する液、貯留する液、供給量を調整する液がシュリンク液であることを除いて、プリウエット液供給ノズル41、純水供給源42、流量調整部43と同様に構成される。
【0021】
図2中51は、供給ノズル41、44をその先端部にて支持する支持アームであり、その基端部に接続された移動機構52により、水平方向に移動できる。この移動により、供給ノズル41、44からスピンチャック21に保持されたウエハWへ供給される液の位置が、当該ウエハWの直径に沿って移動される。図中53は移動機構46のガイドである。図中54は、供給ノズル41、44をカップ3の外側で待機させるための待機領域であり、供給ノズル41、44の移動路に設けられる。
【0022】
液処理装置2には、コンピュータである制御部20が設けられている。制御部20には、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)及びメモリーカードなどの記憶媒体に格納されたプログラムがインストールされる。インストールされたプログラムは、液処理装置2の各部に制御信号を送信してその動作を制御するように命令(各ステップ)が組み込まれている。具体的には、回転駆動機構22によるウエハWの回転数の変更、昇降ピン25の昇降、供給ノズル41、44の移動、及び流量調整部43、46による各液の流量調整などの動作が、前記プログラムにより制御される。
【0023】
上述の液処理装置2を用いた処理について、
図4のウエハWの回転数の変化を示すタイミングチャートを参照しながら説明する。ウエハWの表面を示す各平面図も適宜参照する。この各平面図では、図示の煩雑化を防ぐために、溝12及びチップ形成領域13の表示は省略する。図示しない搬送機構によりウエハWが液処理装置2に搬送されて、昇降ピン25に受け渡され、その裏面の中央部がスピンチャック21に吸着されて水平に保持される。待機領域54から供給ノズル41、44がウエハW上に移動すると共に、ウエハWが例えば30rpmで回転する。
【0024】
ウエハWの回転が続けられる一方で、ウエハWの中心部から外れた位置にプリウエット液供給ノズル41からプリウエット液11が供給される(チャート中、時刻t1)。
図5に示すウエハWの中心P1とプリウエット液11の供給位置の中心P2との距離L1は、例えば30mmである。ウエハWの回転数が低いため、ウエハWに供給されたプリウエット液11に働く遠心力は弱く、当該プリウエット液11は供給された位置に留まる。ウエハWの回転が続けられ、プリウエット液11の供給を開始してから1回転し、当該プリウエット液11によりウエハWにリング状のパドル(液溜まり)15が形成されると、プリウエット液11の供給が停止する(
図6)。パドル15は第1のリング状の液溜まりである。
【0025】
供給ノズル41が移動した後、引き続きウエハWが30rpmで回転しながら、ウエハWの中心部にプリウエット液11が供給され、パドル16が形成される(
図7)。プリウエット液11の供給が続けられ、パドル16がウエハWの中心部上を濡れ広がり、その外周縁がパドル15の内周縁に接触すると、パドル16はパドル15の表面張力により、当該パドル15に向かって引き寄せられ(
図8)、パドル16、15が一体化し、円形のパドル17が形成されると共に、プリウエット液11の供給が停止する(
図9、時刻t2)。
【0026】
図7では、パドル16がウエハWの周縁部に均等に、つまり円形となった状態で広がるように示しているが、このように広がる代わりに、背景技術の項目で説明したように、チップ形成領域13の配列方向に沿って広がった状態を
図10に示す。パドル16がパドル15に接触すると、当該パドル15の表面張力によりパドル15のリングの形成方向に向かう力を受け、パドル15の外側へ流れ出すことが抑えられる。そして、パドル15とパドル16とが一体化すると共に、プリウエット液11の供給が続けられることで、パドル15に囲まれる領域にプリウエット液11が満たされ(
図11)、上記の
図9に示した円形のパドル17が形成されるとプリウエット液11の供給が停止する。このようにパドル15は、円形のパドル17を形成するために、パドル16を構成するプリウエット液11の広がりを規制する役割を有する。
【0027】
上記のように供給ノズル41からのプリウエット液11の供給が停止されると、シュリンク液供給ノズル44がウエハWの中心部上に移動する。そしてウエハWの回転数が例えば2000rpmになるように上昇し(時刻t3)、遠心力によりパドル17はウエハWの周縁部へ向けて広げられ、スピンコーティングされる。パドル17が平面視円形であるため、このスピンコーティングによりウエハWの周方向に均一性高くプリウエット液11が供給され、ウエハWの表面全体で塗布液(シュリンク液)に対する濡れ性が向上する。そして、シュリンク液供給ノズル44からウエハWの中心部にシュリンク液が供給される(時刻t4)。上記のようにウエハW全体がプリウエット液により濡らされているため、供給されるシュリンク液が少量であっても当該シュリンク液はウエハW表面を塗り残しが無いように広がり、ウエハWの表面全体に塗布膜18が形成される(
図13)。
【0028】
前記シュリンク液の供給が停止された後、ウエハWの回転数が低下し(時刻t5)、ウエハWの径方向における膜厚分布が調整された後、ウエハWの回転数が上昇し(時刻t6)、塗布膜18が乾燥される。然る後、回転数が上昇し、洗浄ノズル32からのウエハWの裏面及び側面への洗浄液の供給が行われ(時刻t7)、所定の時間経過後に当該洗浄液の供給が停止されると、ウエハWの回転が停止し、ウエハWへの塗布処理が終了する。その後、図示しない搬送機構によって、ウエハWは、液処理装置2から搬出される。
【0029】
この液処理装置2によれば、ウエハWの中心部を囲むリング状にプリウエット液11によるパドル15を形成した後、このパドル15に囲まれる領域がプリウエット液11で満たされるように当該プリウエット液11を形成し、平面視円形のパドル17を形成する。そして、ウエハWの回転数を上昇させて当該パドル17を構成するプリウエット液11をウエハWの周縁部へ行き渡らせている。このようにプリウエットを行うことで、チップ形成領域13の大きさ、レジストパターンの形状及び当該レジスト膜の撥水性の影響によって、ウエハWの中心部に形成されるパドルが周方向に偏って広がることを防ぐことができる。従って、ウエハWの周方向に均一性高くプリウエット液を供給し、ウエハW表面にプリウエット液が供給されない領域が発生することを防ぐことができる。その結果として、シュリンク液によるウエハWの被覆性を向上させることができるので、当該シュリンク液が供給されない、あるいは供給量が不足する領域が発生することを抑えて、歩留りを向上させることができる。言い換えれば、シュリンク液の供給量が少なくても当該シュリンク液がウエハWを被覆できるので、処理コストの低減を図ることができる。
【0030】
上記の例ではリング状のパドル15を形成するにあたり、ウエハWを30rpmで1回転する間にプリウエット液11を供給している。つまり、パドル15を形成するために2秒要している。このパドル15を形成するためにプリウエット液11を供給するときのウエハWの回転数が大きいほど速やかにパドル15を形成することができるので、スループットを向上させることができる。ただし、当該回転数が大きすぎると、遠心力によりウエハWに供給されたプリウエット液11が当該ウエハWの外周へ弾き飛ばされてしまい、パドル15を形成することができない。つまり、ウエハWの中心部に前記プリウエット液11を供給したときに、その液溜まりであるパドル16の形状を規制できず、円形のパドルを形成できなくなってしまう。そこで、前記パドル15を形成するときのウエハWの回転数は、60rpm以下とすることが好ましい。
【0031】
パドル16を形成するために、ウエハW中心部にプリウエット液11を供給するときは、ウエハWの回転を停止させた状態で当該プリウエット液11を供給してもよい。また、上記の例ではパドル15を形成後、供給ノズル41がウエハWの中心部上に移動する間、プリウエット液11の供給を停止させているが、供給ノズル41がそのように移動する間もプリウエット液11の供給を行うようにしてもよい。
【0032】
(第2実施形態)
第2実施形態の液処理装置61について、その平面図である
図14を参照しながら、上記の液処理装置2との差異点を説明する。この液処理装置61においては、プリウエット液供給ノズル41に加えて、当該供給ノズル41と同様に構成されたプリウエット液供給ノズル62が設けられている。この供給ノズル62は、図示しない専用の流量調整部43を介して
図1で説明したプリウエット液供給源42に接続され、供給ノズル41とは独立してウエハWにプリウエット液11を供給することができる。図中63はこの供給ノズル62を支持する支持アームである。64はガイド53に沿って支持アーム63を水平方向に移動させる移動機構であり、供給ノズル41とは独立して供給ノズル62を移動させることができる。65は、供給ノズル62の待機領域である。
【0033】
この液処理装置61では、供給ノズル62がパドル15形成用のノズルとして、供給ノズル41がパドル16形成用のノズルとして夫々用いられる。プリウエットを行うときには、供給ノズル41がウエハWの中心部上に位置すると共に、供給ノズル62がウエハW上の所定の位置に位置する。このノズル62の位置は、例えば
図5で説明したように、液が供給される位置の中心P2がウエハWの中心P1から距離L1離れる位置である。
【0034】
上記のように各供給ノズル41、62を位置させた後、ウエハWを回転させた状態で、各供給ノズル41、62から並行してプリウエット液11を供給してパドル15、パドル16を各々形成する。それによって、円形のパドル17を形成する。上記のように、リング状のパドル15によりパドル16のウエハWにおける広がりを規制するため、供給ノズル41からの液量は、前記パドル15がウエハWの中心部の全周を囲むように形成される前に、当該パドル15の形成領域にパドル16が濡れ広がらないような量とする。このように各供給ノズル41、62から並行してプリウエット液11を吐出することで、パドル17を速やかに形成することができる。従って、液処理装置61では、液処理装置2で得られる上記の効果に加えて、プリウエットに要する時間を短縮することができるという利点を有する。
【0035】
(第2実施形態の第1変形例)
第2実施形態の第1変形例である液処理装置66について、その平面図である
図15を参照しながら上記の液処理装置61との差異点を中心に説明する。この液処理装置66は、液処理装置61と同様にパドル15形成用のプリウエット液供給ノズル62を備えているが、この供給ノズル62は支持アーム63に支持される代わりに回動アーム67の先端部に支持されている。
図16は回動アーム67の側面図である。回動アーム67の基端側は、支持アーム51上に設けられ、垂直な回転軸68まわりに回動自在に構成されている。回動アーム67の回動によって、供給ノズル41、62間の距離が変化する。プリウエットを行うときには、各供給ノズル41,62が、例えば液処理装置61で説明した位置に夫々位置して並行して液を供給し、上記のパドル17が形成される。
【0036】
この液処理装置66においても、液処理装置61と同様の効果が得られる。ところで、供給ノズル41、62は支持アーム51に設けるようにしてもよい。つまり、供給ノズル41、62間の距離が固定される構成であってもよい。しかし、液処理装置61、66のように供給ノズル41、62間の距離を任意に変更できる構成とする方が、ウエハWの撥水性やパターン形状に応じてプリウエット液を供給する位置を容易に調整でき、パドル17の形状が偏ることを防ぐことができるため有利である。
【0037】
(第2実施形態の第2変形例)
第2実施形態の第2変形例である塗布膜形成装置71について、その平面図である
図17を参照しながら上記の液処理装置61との差異点を中心に説明する。この塗布膜形成装置71は、液処理装置61と同様に支持アーム63及び移動機構64を備えるが、支持アーム63の先端にはプリウエット液供給ノズル62の代わりに、プリウエット液供給ノズル72が設けられている。この供給ノズル72は、その形状を除き供給ノズル62と同様に構成されており、スリット状に開口したプリウエット液の吐出口73を備え、ウエハWの直径に沿ってプリウエット液を供給することができる。この供給ノズル72がパドル15の形成に用いられる。
【0038】
この塗布膜形成装置71においては、液処理装置61で説明したように供給ノズル41、72から並行してプリウエット液11を供給してもよいし、パドル15を形成して供給ノズル72による液供給を停止した後に、供給ノズル41からプリウエット液11の供給を開始してもよい。
図18はパドル15の形成が終わり、供給ノズル72からの液の供給が終了する一方で、供給ノズル41からのプリウエット液の供給が行われている状態を示す。前記供給ノズル72の吐出口73がスリット状であるため、パドル15のリングの径が大きく、ウエハWが1回転する間に比較的広いエリアにプリウエット液11を供給することができる。従って、このパドル15形成後、パドル15に囲まれる領域を満たすために供給ノズル41から供給するプリウエット液は少量で済むので、速やかにパドル17を形成することができる。つまり、この塗布膜形成装置71は液処理装置61と同様の効果を有し、さらに、より確実にスループットの向上を図ることができるという利点がある。
【0039】
(第3の実施形態)
続いて、第3実施形態の液処理装置81について
図19の平面図を参照しながら説明する。この液処理装置81は、上記の塗布膜形成装置71の構成に加えて、プリウエット液供給ノズル82を備えている。この供給ノズル82は、
図14で説明した液処理装置61の供給ノズル62と同様に構成されている。
図19中83は、供給ノズル82を支持する支持アーム、84は支持アームを水平方向に移動させる移動機構、85は供給ノズル82の待機領域である。
【0040】
図20に示すように、プリウエット液供給ノズル82は、プリウエット液供給ノズル72による液供給位置よりもウエハWの周縁部寄りに液を供給する。供給ノズル62によるプリウエット液の供給位置の中心P3とウエハWの中心P1との距離は例えば120mmである。この供給ノズル82は、供給ノズル72と同様にウエハWにリング状のパドルを形成するために用いられる。図中、このパドルを86として示している。
【0041】
前記パドル86を形成する理由を説明する。スピンコーティングにより中心部から周縁部に向かって供給される所定の面積あたりのプリウエット液11の量は、ウエハWの周縁部に近づくほど少なくなる。従って、パドル17を構成する液量が少ないと、ウエハWの周縁部においてプリウエット液11の供給量が不足し、当該周縁部においてプリウエット液11が供給されない領域が発生する懸念がある。特にウエハWの周縁部において、チップ形成領域13のウエハWの周縁側の角部では、そのように供給されるプリウエット液11が少なくなることと、レジストの撥水性の高さとにより、プリウエット液11の液流れが特異的となることで、プリウエット液11が供給されないことが懸念される。
図21は、プリウエット液11に被覆されない領域が発生したウエハWの一部を模式的に示している。
【0042】
そこで前記パドル86を形成し、このパドル86のプリウエット液11をウエハWの回転により、ウエハWの周縁部に広げておく。パドル17のプリウエット液11がウエハWの周縁部に到達したときには、前記パドル86のプリウエット液11により当該周縁部の一部または全部が濡れているため、パドル17のプリウエット液11の当該周縁部における消費量が抑えられる。つまり、ウエハWの周縁部におけるプリウエット液11による被覆性が高くなる。また、このようにパドル86を形成することで、前記周縁部におけるプリウエット液による被覆性を高めるためにパドル17の液量を増やす必要が無くなる。つまりウエハWの中心部へ供給するプリウエット液の量が抑えられるので、スループットの向上を図ることができる。
【0043】
具体的に、この液処理装置81のプリウエットの手順の一例を説明する。例えば供給ノズル72、82からプリウエット液11を供給すると共にウエハWを回転させる(
図22)。このときの回転数は、第1実施形態で説明したように、液溜まりを形成することが可能な60rpm以下の回転数である。ウエハWの回転が続けられ、プリウエット液11の供給開始からウエハWが1回転してパドル15、86が形成されると、供給ノズル72、82からのプリウエット液11の供給が停止する。そして、供給ノズル41によりウエハWの中心部にプリウエット液11が供給され、パドル16が形成される。既述の
図22は、このときのウエハWを示している。第1の実施形態で説明したように、パドル16が広がってパドル17が形成されると、供給ノズル41からのプリウエット液11の供給が停止される(
図23)。
【0044】
然る後、ウエハWの回転数が上昇し、パドル17及びパドル86が夫々ウエハWの周縁部に向けて展伸される。上記のように、ウエハWの周縁部が前記パドル86のプリウエット液11に濡らされる(
図24)。そのような状態になった周縁部へパドル17のプリウエット液11が到達し、パドル86のプリウエット液11に濡らされていない領域があっても、このパドル17のプリウエット液11により濡らされる(
図25)。これによって、ウエハWの周縁部において当該プリウエット液11が供給されない領域が発生することが防がれる。
【0045】
パドル86の役割としては、上記のようにパドル17のプリウエット液11がウエハWの周縁部に到達するまでに当該周縁部の濡れ性を改善することにあるため、上記のようなタイミングで形成することに限られない。具体的には、前記パドル17のプリウエット液11が、パドル86が形成される領域に到達するまでに当該パドル86がウエハWの中心部の全周を囲むように形成されていればよい。従って、例えばパドル15を形成する前にパドル86を形成してもよい。
【0046】
(第3実施形態の第1変形例)
第3実施形態の第1変形例である液処理装置91について、その縦断側面図である
図26及び平面図である
図27を参照しながら、上記の液処理装置81との差異点を中心に説明する。液処理装置91においてはウエハWの周縁部に沿って形成され、当該周縁部を覆うリング部材92が設けられている。リング部材92は水平な板状に形成されており、図中93はリング部材92の中心の開口部である。図中94はリング部材92を昇降させる昇降機構であり、
図26中に実線で示す下降位置と、鎖線で示す上昇位置との間でリング部材92を昇降させる。
【0047】
前記下降位置はウエハWを処理するときの位置で、前記上昇位置はウエハWのスピンチャック21に対する受け渡しを妨げない位置である。このリング部材92は、シュリンク液の塗布時において上記のようにウエハWが比較的高い回転数で回転するときに当該ウエハWの周縁部上に乱流が発生することを抑える役割を有する。それによって、前記シュリンク液による塗布膜の周縁部に凹凸が形成され、結果としてパターンの形状に不具合が発生することを防ぐ。
図26中点線の矢印で、リング部材92の周囲の気流の流れを示している。
【0048】
速やかにシュリンク液の塗布を行えるように、当該リング部材92は、前記シュリンク液の塗布時だけでなくプリウエット時にも前記下降位置に位置する。このようなリング部材92を設けても、ウエハWの周縁部に上記のパドル86を形成できるように、リング部材92の下面に既述のプリウエット液供給ノズル82が設けられており、ウエハWの周縁部にプリウエット液11を供給することができる。
【0049】
この例では供給ノズル82は2つ設けられ、各供給ノズル82はウエハWの中心から等距離離れた位置にプリウエット液11を供給することができる。つまり、
図22で説明したようにウエハWを一回転させる間に供給ノズル82からプリウエット液を供給する場合、プリウエット液11はウエハWの同じ位置に重ねて供給されることになる。また、各供給ノズル82から液が供給される位置が、互いにウエハWの中心から異なる距離離れるようにし、同心円状に複数のパドル86が形成されるようにしてもよい。
【0050】
ウエハWの径が大きいほど回転中のウエハWの周縁部上に前記乱流が発生しやすいので、この液処理装置91の構成は、例えば直径が450mmのウエハWを処理するために有効である。ただし直径が450mmよりも小さいウエハW、例えば既述の直径が300mmのウエハWを処理する場合にも、当該液処理装置91の構成を適用することができる。
【0051】
(第3実施形態の第2変形例)
第3実施形態の第2変形例である液処理装置95について、その側面図である
図28を参照しながら、第3実施形態の液処理装置81との差異点を中心に説明する。
図28ではカップ3の図示を省略している。この液処理装置95において各供給ノズル41、72、82と、各ノズルに対応する流量調整部43とを接続する配管には、配管温度調整部96が設けられている。各配管温度調整部96はヒーターを備え、各配管を流通するプリウエット液の温度を個別に調整することができる。
【0052】
各供給ノズルから供給されるプリウエット液の温度を互いに異なる温度にすることで、プリウエット後、シュリンク液を供給する直前におけるウエハWの径方向の温度を各箇所で互いに異なる温度にすることができる。ウエハWの温度によって、前記シュリンク処理液の流動性が変化し、膜厚が変化する。つまり、上記のように各プリウエット液を温度調整して、ウエハWの径方向における温度を調整し、当該径方向各部の塗布膜の膜厚を調整することができる。従って、ウエハWに処理を行う前に実験を行うことで当該各部の膜厚の均一性が高くなるような各プリウエット液の温度を把握しておき、そのような温度に調整されたプリウエット液をウエハWに供給して、前記膜厚の均一性を高めることができる。
【0053】
このように3つの供給ノズルから供給される3つのプリウエット液の温度は、全て互いに異なるようにしなくてもよく、3つのうちいずれか2つが異なる温度になるようにしてもよい。また、第2実施形態の液処理装置61のように、供給ノズルが2つのみ設けられる場合は、この2つの供給ノズルから供給されるプリウエット液の温度を互いに異なるようにしてもよい。
【0054】
(第3実施形態の第3変形例)
図29は、第3実施形態における第3変形例である液処理装置101の側面図について示したものである。この
図29でも、カップ3など既述の各部の図示は省略している。液処理装置101と、既述の第3実施形態の液処理装置81との差異点としては、プリウエット液供給ノズル41が傾いて設けられることが挙げられる。側方から見て、供給ノズル41からのプリウエット液の供給方向と水平面とのなす角θは例えば45°である。なお、
図29は、第3実施形態の
図20で説明したように各供給ノズルからプリウエット液を供給して、パドルを形成した状態を示しているが、図を見やすくするために、その
図20とは供給ノズル72、82の位置関係を変更して示している。
【0055】
この液処理装置101についても液処理装置81と同様の手順で処理が行われる。プリウエット液供給ノズル41からウエハW中心部にプリウエット液を供給する際には、当該供給ノズル41が傾いているため、回転するウエハW表面に供給されたプリウエット液11は、供給ノズル41からの吐出の勢いにより
図29に示すように横方向において比較的広い範囲に供給される。そして、供給ノズル41からのプリウエット液11の供給が続けられ、当該プリウエット液11によるパドル16が濡れ広がり、その外端がパドル15に接触して、既述のパドル17が形成される。このように供給ノズル41からプリウエット液を斜めに吐出することで、ウエハW中心部に供給されたプリウエット液11が、ウエハWの表面の撥水性が高い領域においてその液流れが停止してしまうことを防ぐことができ、より確実にパドル17を形成することができる。
【0056】
ところで、各プリウエット液供給ノズルから、供給されるプリウエット液は、互いに異なる種類のプリウエット液であってもよい。各プリウエット液としては、ウエハW表面のレジストパターンにダメージを与えない液が用いられる。さらに説明すると、複数種類のプリウエット液を用いた場合には、これらの液がウエハW上で接触することになるが、互いに濃度を薄めようとして混ざり合う。この混ざり合うときに生じるエネルギーが大きいと前記ダメージが発生するおそれがあるので、このエネルギーが小さく、互いに相溶性が高い液が用いられる。そして、プリウエット液はウエハW表面を濡らすことが目的であるため、このウエハW表面において濡れ性が比較的よい、即ち表面張力が小さい液が選択される。一例として、上記のようにプリウエット液の1つに純水を用いた場合には、他のプリウエット液としてはIPA(イソプロピルアルコール)が用いられる。
【0057】
そのように2種類のプリウエット液を用いた処理の一例について説明する。例えば、
図17、
図18で説明した第2実施形態の第2変形例の塗布膜形成装置71において、プリウエット液供給ノズル41から水が、プリウエット液供給ノズル72からIPAが吐出されるものとする。例えば、プリウエット液供給ノズル72からウエハWの中心部にプリウエット液(IPA)を供給しながらウエハWを回転させ、スピンコーティングによりウエハW全体をIPAにより濡らす。然る後、
図17、
図18で説明したように供給ノズル72によりIPAによるパドル15を形成し、供給ノズル41によりパドル15に囲まれるウエハWの中心部に純水であるプリウエット液を供給する。この純水は、既にウエハW表面にIPAが供給され、撥水性が低下しているため、周方向の偏りが抑えられるように、即ち円形に広がる。そして、パドル15を構成するIPAと混ざり、既述のパドル17が形成される。純水であるプリウエット液が、上記のように円形に広がることで、パドル17も円形から偏った形状になることが抑えられるので、ウエハW全体に十分な量のプリウエット液を供給することができる。
【0058】
上記の各実施形態及びその変形例は互いに組み合わせることができる。例えば第1実施形態の液処理装置2に、第3実施形態で説明したプリウエット液供給ノズル82を設けてもよい。また、リング状のパドル15、86を形成するにあたって、上記の各実施形態ではウエハWを回転させながら各供給ノズルからプリウエット液を吐出しているが、リング状の吐出口を備えた供給ノズルを用いれば、ウエハWを回転させなくてもよい。
【0059】
本発明は円形の基板に塗布膜を形成する場合の他に、矩形の基板に塗布膜を形成する場合についても、基板の周方向におけるプリウエット液の供給量のばらつきを抑えることができる。それによって、基板にプリウエット液が十分に供給されない領域が発生することを防ぐことができるので有効である。また、リング状の液溜まりを形成するにあたり、例えば移動機構によりノズルを前記矩形の基板の辺に沿って移動させながらプリウエット液を供給し、矩形のリング状の液溜まりを形成してもよい。その後は、当該基板の中心部にプリウエット液を供給して、この液溜まりに囲まれる領域に当該プリウエット液を満たし、上記のパドル17に相当する矩形状の液溜まり(パドル)を形成する。このように基板の中心部に形成されるプリウエット液の液溜まりは、基板全体に当該プリウエット液を十分に供給することができれば円形に限られず、矩形としてもよい。
【0060】
ところで、本発明はシュリンク液を塗布することに適用されることに限られない。例えばレジストパターンが形成されたレジスト膜に、液浸露光によりさらにパターンを形成する場合がある。その場合、液浸露光を行う前にレジスト膜を被覆するように撥水性の保護膜を形成するための薬液を塗布する場合がある。このような場合にも、本発明を適用することができる。また、レジスト膜としてはネガ型に限られずポジ型であってもよい。
【0061】
続いて、第1実施形態の液処理装置2が適用される塗布、現像装置111について説明する。
図30〜
図32は、夫々塗布、現像装置111の平面図、斜視図、概略縦断側面図である。この塗布、現像装置1は、キャリアブロックD1と、処理ブロックD2と、インターフェイスブロックD3と、を直線状に接続して構成されている。インターフェイスブロックD3に前記露光装置D4が接続されている。以降の説明ではブロックD1〜D3の配列方向を前後方向とする。また、塗布、現像装置111においてウエハWが載置される場所をモジュールとする。キャリアブロックD1は、ウエハWを複数枚含むキャリアCを塗布、現像装置1内に搬入出する役割を有し、キャリアCの載置台112と、開閉部113と、開閉部113を介してキャリアCからウエハWを搬送するための移載機構114とを備えている。
【0062】
処理ブロックD2は、ウエハWに液処理を行う第1〜第7の単位ブロックB1〜B7が下から順に積層されて構成されている。説明の便宜上ウエハWに下層側の反射防止膜を形成する処理を「BCT」、ウエハWにレジスト膜を形成する処理を「COT」、露光後のウエハWにレジストパターンを形成するための処理を「DEV」、前記シュリンク液によるレジストパターンの開口部を縮小するための処理を「シュリンク」と夫々表現する場合がある。この例では、
図31に示すように下からBCT層、COT層、DEV層が2層ずつ積み上げられている。同じ単位ブロックにおいて互いに並行してウエハWの搬送及び処理が行われる。また、これらの層にシュリンク層が積層されている。
【0063】
ここでは単位ブロックのうち代表して第7の単位ブロックであるシュリンク層B7を、
図30を参照しながら説明する。キャリアブロックD1からインターフェイスブロックD3へ向かう搬送領域115の左右の一方側には棚ユニットUが、前後方向に複数配置されている。前記左右の他方側には夫々液処理モジュールであるシュリンク液処理モジュール116、膜除去モジュール117が前後方向に並べて設けられている。シュリンク液処理モジュール116は、上記の液処理装置2に相当する。膜除去モジュール117は、シュリンク液処理モジュールと略同様に構成され、ウエハWに純水を供給して、塗布膜を剥離する。棚ユニットUは、加熱モジュールを備えている。前記搬送領域115には、ウエハWの搬送機構である搬送アームF7が設けられている。
【0064】
他の単位ブロックB1〜B6は、ウエハWに供給する処理液が異なることを除き、単位ブロックB7と同様に構成される。単位ブロックB1、B2は、シュリンク液処理モジュール116の代わりに反射防止膜形成モジュールを備え、単位ブロックB3、B4は、シュリンク液処理モジュール116の代わりにネガ型のレジスト膜形成モジュールを備える。単位ブロックB5、B6は、前記レジスト膜を現像するための現像モジュールを備える。
図32では各単位ブロックB1〜B6の搬送アームは、F1〜F6として示している。
【0065】
処理ブロックD2におけるキャリアブロックD1側には、各単位ブロックB1〜B7に跨って上下に伸びるタワーT1と、タワーT1に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な受け渡し機構である受け渡しアーム118とが設けられている。タワーT1は、互いに積層された複数のモジュールにより構成されており、単位ブロックB1〜B7の各高さに設けられるモジュールは、当該単位ブロックB1〜B7の各搬送アームF1〜F7との間でウエハWを受け渡すことができる。これらのモジュールとしては、実際には各単位ブロックの高さ位置に設けられた受け渡しモジュールTRS、ウエハWの温度調整を行う温調モジュールCPL、複数枚のウエハWを一時的に保管するバッファモジュール、及びウエハWの表面を疎水化する疎水化処理モジュールなどが含まれている。説明を簡素化するために、前記疎水化処理モジュール、温調モジュール、前記バッファモジュールについての図示は省略している。
【0066】
インターフェイスブロックD3は、単位ブロックB1〜B7に跨って上下に伸びるタワーT2、T3、T4を備えており、タワーT2とタワーT3に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な受け渡し機構であるインターフェイスアーム119と、タワーT2とタワーT4に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な受け渡し機構であるインターフェイスアーム120と、タワーT2と露光装置D4の間でウエハWの受け渡しを行うためのインターフェイスアーム121が設けられている。
【0067】
タワーT2は、受け渡しモジュールTRS、露光処理前の複数枚のウエハWを格納して滞留させるバッファモジュール、露光処理後の複数枚のウエハWを格納するバッファモジュール、及びウエハWの温度調整を行う温調モジュールなどが互いに積層されて構成されているが、ここでは、バッファモジュール及び温調モジュールの図示は省略する。なお、タワーT3、T4にも夫々モジュールが設けられているが、ここでは説明を省略する。
【0068】
この塗布、現像装置111及び露光装置D4からなるシステムのウエハWの搬送経路について説明する。ウエハWは、キャリアCから移載機構114により、処理ブロックD2におけるタワーT1の受け渡しモジュールTRS0に搬送される。この受け渡しモジュールTRS0からウエハWは、単位ブロックB1、B2に振り分けられて搬送される。例えばウエハWを単位ブロックB1に受け渡す場合には、タワーT1の受け渡しモジュールTRSのうち、単位ブロックB1に対応する受け渡しモジュールTRS1(搬送アームF1によりウエハWの受け渡しが可能な受け渡しモジュール)に対して、前記TRS0からウエハWが受け渡される。またウエハWを単位ブロックB2に受け渡す場合には、タワーT1の受け渡しモジュールTRSのうち、単位ブロックB2に対応する受け渡しモジュールTRS2に対して、前記TRS0からウエハWが受け渡される。これらのウエハWの受け渡しは、受け渡しアーム118により行われる。
【0069】
このように振り分けられたウエハWは、TRS1(TRS2)→反射防止膜形成モジュール→加熱モジュール→TRS1(TRS2)の順に搬送され、続いて受け渡しアーム118により単位ブロックB3に対応する受け渡しモジュールTRS3と、単位ブロックB4に対応する受け渡しモジュールTRS4とに振り分けられる。
【0070】
このように振り分けられたウエハWは、TRS3(TRS4)→レジスト膜形成モジュールCOT→加熱モジュール→タワーT2の受け渡しモジュールTRSの順で搬送される。前記受け渡しモジュールTRSに搬送されたウエハWは、インターフェイスアーム119、121により、タワーT3を介して露光装置D4へ搬入される。露光後のウエハWは、インターフェイスアーム120によりタワーT2、T4間を搬送されて、単位ブロックB5、B6に対応するタワーT2の受け渡しモジュールTRS5、TRS6に夫々搬送される。然る後、加熱モジュール→現像モジュール→タワーT1の単位ブロックB5、B6に対応する受け渡しモジュールTRS51、TRS61に受け渡される。
【0071】
これら受け渡しモジュールTRS51、61のウエハWは、受け渡しアーム118により単位ブロックB7に対応する受け渡しモジュールTRS71に搬送され、シュリンク液処理モジュール116→加熱モジュールの順に搬送されて、上記したようにプリウエット、塗布膜の形成、加熱が順に行われる。然る後、ウエハWは膜除去モジュール117に搬送されて、塗布膜が除去される。その後、当該ウエハWは、単位ブロックB7に対応する受け渡しモジュールTRS72に搬送され、移載機構114を介してキャリアCに戻される。
【0072】
(評価試験)
評価試験として、上記の液処理装置2により、第1実施形態で説明した手順に従って、ウエハWにプリウエットを行い、その後にスピンコーティングにより塗布膜を形成した。比較試験として、上記のリング状の液溜まり15を形成しない他は、前記評価試験と同様にウエハWにプリウエットを行い、塗布膜を形成した。各試験で処理したウエハWの表面には、実施形態で説明したようにレジストパターンにより多数のチップ形成領域13が形成されており、チップ形成領域13内においてもパターンが形成されている。
【0073】
図33は評価試験の結果を示すウエハWの画像であり、
図34は比較試験の結果を示すウエハWの画像である。これら画像を比較して明らかなように、比較試験では、ウエハWの中心部から周縁部に向かって放射状の筋が形成されている。これは塗布膜の塗布斑によるものであり、塗布不良となっている。しかし、評価試験のウエハWではこのような塗布斑が形成されていなかった。従って、本発明の効果が確認された。