特許第6142871号(P6142871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特許6142871感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及び配線板の製造方法
<>
  • 特許6142871-感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及び配線板の製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142871
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及び配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20170529BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20170529BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20170529BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/004 512
   G03F7/027
   H05K3/06 H
   H05K3/18 D
【請求項の数】6
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-518683(P2014-518683)
(86)(22)【出願日】2013年5月28日
(86)【国際出願番号】JP2013064782
(87)【国際公開番号】WO2013180131
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-125516(P2012-125516)
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板垣 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】進藤 正則
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−294552(JP,A)
【文献】 特開平11−072914(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/015754(WO,A1)
【文献】 特開2011−013623(JP,A)
【文献】 特開2007−047290(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/016658(WO,A2)
【文献】 特開2005−010572(JP,A)
【文献】 特開2008−256769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーポリマーと、
エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
光重合開始剤と、
ベンゾトリアゾール化合物と、
炭素数8〜30の脂肪族ジアミン化合物と、
を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
トリアゾール化合物及びテトラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を更に含有する請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
支持体と、
前記支持体上に設けられる請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物の塗膜である感光層と、
を備える感光性エレメント。
【請求項4】
基板上に、請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物を付与して感光層を形成する感光層形成工程と、
前記感光層の少なくとも一部の領域に、活性光線を照射して前記感光層に光硬化部を形成する露光工程と、
前記光硬化部以外の領域を除去する現像工程と、
を含むレジストパターンの形成方法。
【請求項5】
基板上に、請求項3に記載の感光性エレメントを、前記感光層が前記基板に面するように重層する重層工程と、
前記感光層の少なくとも一部の領域に、活性光線を照射して前記感光層に光硬化部を形成する露光工程と、
前記光硬化部以外の領域を除去する現像工程と、
を含むレジストパターンの形成方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板を、エッチング処理又はめっき処理する工程を含む配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及び配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線板の製造分野においては、エッチング処理又はめっき処理に用いられるレジスト材料として、感光性樹脂組成物が広く用いられている。感光性樹脂組成物は、支持フィルムと、上記支持フィルム上に感光性樹脂組成物を用いて形成された層(以下、「感光層」ともいう)とを備える感光性エレメント(重層体)として用いられることが多い。
【0003】
配線板は、例えば以下のようにして製造される。まず、感光性エレメントの感光層を基板の導体層上に重層(ラミネート)する(重層工程)。次に、支持フィルムを剥離した後、感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を硬化させる(露光工程)。その後、未露光部を基板上から除去(現像)することにより、基板上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるレジストパターンが形成される(現像工程)。得られたレジストパターンをマスクとして、基板に対してエッチング処理又はめっき処理を施して基板上に回路を形成した後(回路形成工程)、最終的にレジストを剥離除去して配線板が製造される(剥離工程)。
【0004】
上記配線板の製造方法において、従来、現像工程中に基板の導体層上に酸化皮膜が生じて基板が変色することで、次工程のエッチング工程又はめっき工程において、加工不具合が発生する場合があるという課題があった。
【0005】
上記変色の課題を解決するために、特定の置換基を有するアミノメチルカルボキシベンゾトリアゾール化合物を添加したり、オクタン酸、イソステアリン酸等の脂肪族カルボン酸;安息香酸、イソフタル酸等の芳香族カルボン酸などを添加したりする手法が検討されてきた(例えば、国際公開第06/016658号パンフレット及び国際公開第08/015754号パンフレット参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、国際公開第06/016658号パンフレットに記載の感光性樹脂組成物は、基板の変色を防止する効果に優れるものの、めっき工程において、めっき浴の汚染を引き起こす場合があるという課題がある。めっき浴の汚染が生じると、めっき工程において必要な場所にめっきを析出することができなくなり回路が正常に形成できない場合が発生するため、めっき浴の交換頻度が高くなる場合があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、基板の変色防止とめっき浴の汚染低減の両立を可能とする感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及び配線板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、まず、国際公開第06/016658号パンフレットに記載の特定の置換基を有するアミノメチルカルボキシベンゾトリアゾール化合物を用いて種々検討を行った。例えば、アミノメチルカルボキシベンゾトリアゾール化合物の含有量を可能な限り少量とし、めっき浴等に溶け込む量を少なくすることで基板の変色防止効果とめっき浴等の汚染性の低減の両立が可能かどうか検討した。しかしながら、アミノメチルカルボキシベンゾトリアゾール化合物の含有量を少なくした場合は、変色防止効果が充分に得られない場合があった。このように、国際公開第06/016658号パンフレットに記載の特定の置換基を有するアミノメチルカルボキシベンゾトリアゾール化合物を含有する感光性樹脂組成物を用いた場合には、基板の変色防止と、めっき浴汚染の更なる低減とを両立させることは困難であった。
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> バインダーポリマーと、
エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
光重合開始剤と、
ベンゾトリアゾール化合物と、
炭素数8〜30の脂肪族ジアミン化合物と、
を含有する感光性樹脂組成物である。
これにより、配線板の製造時における基板の変色を抑制しつつ、めっき浴の汚染をよりいっそう低減することができる。
【0010】
<2> トリアゾール化合物及びテトラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を更に含有する前記<1>に記載の感光性樹脂組成物である。
これにより、基板の変色抑制効果をより高めることができる。
【0011】
<3> 支持体と、
前記支持体上に設けられる前記<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物の塗膜である感光層と、
を備える感光性エレメントである。
上記構成の感光性エレメントを用いることにより、配線板の製造時における基板の変色を抑制しつつ、めっき浴の汚染も充分に低減可能であるため、レジストパターンをより効率的に形成することができる。
【0012】
<4> 基板上に、前記<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物を付与して感光層を重層する重層工程と、
前記感光層の少なくとも一部の領域に、活性光線を照射して前記感光層に光硬化部を形成する露光工程と、
前記光硬化部以外の領域を除去する現像工程と、
を含むレジストパターンの形成方法である。
感光層の重層に上記感光性樹脂組成物を用いることで、配線板の製造時における基板の変色を抑制しつつ、めっき浴の汚染も充分に低減可能であるため、レジストパターンをより効率的に形成することができる。
【0013】
<5> 基板上に、前記<3>に記載の感光性エレメントを、前記感光層が前記基板に面するように重層する重層工程と、
前記感光層の少なくとも一部の領域に、活性光線を照射して前記感光層に光硬化部を形成する露光工程と、
前記光硬化部以外の領域を除去する現像工程と、
を含むレジストパターンの形成方法である。
感光層の重層に上記感光性エレメントを用いることで、上記第三の態様により得られる効果に加え、ロールツーロールプロセスが実現できる、溶剤乾燥工程が短縮できる等、製造工程の短縮及びコスト低減に大きく貢献することができる。
【0014】
<6> 前記<4>又は<5>に記載のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板を、エッチング処理又はめっき処理する工程を含む配線板の製造方法である。
これにより、基板の変色、めっき浴の汚染等による影響が抑制され、回路パターンをより効率的に形成することができる。
【0015】
<7> 前記脂肪族ジアミン化合物が、炭素数2〜4のアルキレン基と炭素数6〜28の鎖状の脂肪族炭化水素基とを有する化合物である前記<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物である。
【0016】
<8> 前記脂肪族ジアミン化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である前記<1>、<2>及び<7>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物である。
【化1】

【0017】
一般式(1)中、Rは炭素数6〜28の脂肪族炭化水素基を示す。Rは炭素数2〜4のアルキレン基を示す。R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキレンオキシ基又はポリアルキレンオキシ基を示す。
【0018】
<9> 前記脂肪族ジアミン化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である前記<1>、<2>及び<7>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物である。
【化2】
【0019】
一般式(2)中、R1aは炭素数6〜27の脂肪族炭化水素基を示す。nはそれぞれ独立に0〜30の数であり、エチレンオキシ単位の構成単位数を示す。
【0020】
<10> 前記脂肪族ジアミン化合物の含有量が、感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分の総量100質量部中、0.001質量部〜2質量部である、前記<1>、<2>及び<7>〜<9>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物である。
【0021】
<11> 前記ベンゾトリアゾール化合物の含有量が、感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分の総量100質量部中、0.001質量部〜2質量部である、前記<1>、<2>及び<7>〜<10>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物である。
【0022】
<12> 前記バインダーポリマーの重量平均分子量が、20,000〜300,000である、前記<1>、<2>及び<7>〜<11>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物である。
【0023】
<13> 前記光重合性化合物が、下記一般式(3)で表される化合物及び下記一般式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前記<1>、<2>及び<7>〜<12>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物である。
【化3】
【0024】
一般式(3)中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。XO及びYOはそれぞれ独立に、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基を示す。(XO)m、(XO)m、(YO)n、(YO)nは、(ポリ)エチレンオキシ基又は(ポリ)プロピレンオキシ基を示す。m、m、n及びnはそれぞれ独立に、0〜40を示す。XOがエチレンオキシ基、YOがプロピレンオキシ基である場合、m+mは1〜40であり、n+nは0〜20である。XOがプロピレンオキシ基、YOがエチレンオキシ基の場合、m+mは0〜20であり、n+nは1〜40である。m、m、n及びnはそれぞれの構成単位数を示す。
【0025】
【化4】
【0026】
一般式(4)で表される化合物において、AOはアルキレンオキシ基を示す。AOで示されるアルキレンオキシ基は、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基であることが好ましく、プロピレンオキシ基であることがより好ましい。一般式(4)で表される化合物が複数のAOを有する場合、複数のAOは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
<14> 前記光重合開始剤の含有量が、感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分の総量100質量部中、0.05質量部〜10質量部である、前記<1>、<2>及び<7>〜<10>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物である。
【0028】
<15> 前記<1>、<2>及び<7>〜<10>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の感光性エレメントの製造での使用である。
【0029】
<16> 前記<1>、<2>及び<7>〜<10>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物のレジストパターンの形成での使用である。
【0030】
<17> 前記<1>、<2>及び<7>〜<10>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の配線板の製造での使用である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、基板の変色防止とめっき浴の汚染低減の両立を可能とする感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及び配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態に係る感光性エレメントの一例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を意味する。(ポリ)アルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基又は2以上のアルキレン基がエーテル結合で連結したポリオキシアルキレン基の少なくとも1種を意味し、(ポリ)エチレンオキシ基とは、エチレンオキシ基又は2以上のエチレン基がエーテル結合で連結したポリオキシエチレン基の少なくとも1種を意味し、(ポリ)プロピレンオキシ基とは、プロピレンオキシ基又は2以上のプロピレン基がエーテル結合で連結したポリプロピレンオキシ基の少なくとも1種を意味する。更に「EO変性」とは、(ポリ)エチレンオキシ基を有する化合物であることを意味し、「PO変性」とは、(ポリ)プロピレンオキシ基を有する化合物であることを意味し、「EO・PO変性」とは、(ポリ)オキシエチレン基及び(ポリ)オキシプロピレン基の双方を有する化合物であることを意味する。
【0034】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の総量を意味する。
【0035】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、バインダーポリマーと、エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、光重合開始剤と、ベンゾトリアゾール化合物と、炭素数8〜30の脂肪族ジアミン化合物(以下、「特定ジアミン化合物」ともいう)とを含有する。
【0036】
上記構成により、配線板製造時における基板の変色防止とめっき浴汚染のよりいっそうの低減の両立が可能となる。本発明の効果が得られる詳細な理由は明らかではないが、例えば以下のように考えることができる。特定ジアミン化合物は、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジイソプロパノールアミン等のアミノ基を一つだけ有するモノアミン化合物に比べて、感光性樹脂組成物中において凝集することが少なく、ベンゾトリアゾール化合物を感光性樹脂組成物中により均一に分散することを可能にすると考えられる。ベンゾトリアゾール化合物は、基板の変色を抑制可能な一般的な量で用いると、めっき浴等を汚染する傾向がある。しかし、特定ジアミン化合物を併用することで、ベンゾトリアゾール化合物が感光性樹脂組成物中に凝集することなく、より均一に分散した状態となる。その結果、ベンゾトリアゾール化合物が有する光硬化部と基板との密着性向上の効果と、基板の変色抑制効果とを優れたレベルに維持しつつ、めっき浴汚染をよりいっそう低減することが可能となったと考えることができる。
【0037】
(ベンゾトリアゾール化合物)
ベンゾトリアゾール化合物は、感光性樹脂組成物において、例えば、光硬化部と基板との密着促進、基板の変色抑制及びめっき性向上剤として機能するものである。ベンゾトリアゾール化合物としては、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物であれば特に制限されない。ベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、無置換の1H−ベンゾトリアゾール(1,2,3−ベンゾトリアゾール)、カルボキシ基等の置換基を有するカルボキシベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0038】
ベンゾトリアゾール化合物は、無置換のベンゾトリアゾール化合物及びカルボキシ基を有するベンゾトリアゾール化合物であることが好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲で、芳香環上にカルボキシ基以外の置換基を有するベンゾトリアゾール化合物であってもよい。カルボキシ基以外の置換基としては、例えば、メチル基及びアミノ基が挙げられる。
【0039】
カルボキシ基を有するベンゾトリアゾール化合物は、4−カルボキシベンゾトリアゾール及び5−カルボキシベンゾトリアゾールの少なくとも一方であることが好ましく、4−カルボキシ1,2,3−ベンゾトリアゾール及び5−カルボキシ1,2,3−ベンゾトリアゾールの少なくとも一方であることがより好ましい。カルボキシ基を有するベンゾトリアゾール化合物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、芳香環上にカルボキシ基以外の置換基を更に有していてもよい。なお、カルボキシ基を有するベンゾトリアゾールは、4位にカルボキシ基を有していても5位にカルボキシ基を有していてもよく、両者の混合物であってもよい。
【0040】
感光性樹脂組成物におけるベンゾトリアゾール化合物の含有量は、感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分(以下、「不揮発分」ともいう)の総量100質量部中に、0.001質量部〜2質量部であると好ましく、0.005質量部〜0.5質量部であるとより好ましく、0.01質量部〜0.3質量部であると更に好ましい。上記含有量が、0.001質量部以上であると、導体層に対する感光性樹脂組成物の光硬化物であるレジストの密着性が充分に得られ、めっき処理又はエッチング処理時にレジストの剥離等をより効果的に抑制することができる。また導体層自体に腐食(錆)が発生して変色が発生することをより効果的に抑制できる。一方、上記含有量が2質量部以下であると、感光性樹脂組成物の感度がより向上する傾向にあり、硬化に要するエネルギーを低減できるほか、レジストの剥離性がより向上する傾向にある。
【0041】
感光性樹脂組成物が、ベンゾトリアゾール化合物を含むことは、通常用いられる分析方法により分析することが可能である。具体的には、核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル、質量分析スペクトル等を用いることで、感光性樹脂組成物に含まれるベンゾトリアゾール化合物の種類と含有量を分析することができる。
【0042】
(ジアミン化合物)
感光性樹脂組成物は、ベンゾトリアゾール化合物に加えて、炭素数8〜30の脂肪族ジアミン化合物(特定ジアミン化合物)を含有することで、基板の変色抑制とめっき浴の汚染性の低減とをより効果的に両立できる。特定ジアミン化合物は、2つの窒素原子に脂肪族基が結合する化合物である。前記脂肪族基は、1つの窒素原子に結合する1価の基、及び2つの窒素原子の双方に結合する2価の基を含む。炭素数8〜30として勘定される炭素原子は、前記脂肪族基のうち脂肪族炭化水素基における炭素原子をいい、特定ジアミン化合物が2以上の脂肪族炭化水素基を有する場合、すべての脂肪族炭化水素基の炭素数の総和を意味する。脂肪族炭化水素基は鎖状の脂肪族炭化水素基であっても、環状の脂肪族炭化水素基であってもよい。また飽和脂肪族炭化水素基であっても、不飽和脂肪族炭化水素基であってよい。中でも感光性樹脂組成物中への分散性の観点から、鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0043】
特定ジアミン化合物に含まれる脂肪族炭化水素基の数は特に制限されず、1つであっても2以上であってもよい。中でも脂肪族炭化水素基の数は2〜5であることが好ましく、2〜3であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
【0044】
特定ジアミン化合物に含まれる炭素数は8〜30であり、ベンゾトリアゾール化合物を感光性樹脂組成物中により均一に分散させる観点から、10〜30であることが好ましく、12〜25であることがより好ましく、15〜25であることが更に好ましく、17〜21であることが特に好ましい。
【0045】
特定ジアミン化合物は、感光性樹脂組成物中への分散性の観点から、炭素数2〜4のアルキレン基と炭素数6〜28の鎖状の脂肪族炭化水素基とを有するジアミン化合物であることが好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基と炭素数12〜25の鎖状の脂肪族炭化水素基とを有するジアミン化合物であることがより好ましく、炭素数3のアルキレン基と炭素数12〜18の鎖状の脂肪族炭化水素基とを有するジアミン化合物であることが更に好ましい。
【0046】
特定ジアミン化合物としては、オクタンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン等の1つの脂肪族炭化水素基を有するジアミン化合物;ドデシルプロピレンジアミン、テトラデシルプロピレンジアミン、ヘキサデシルプロピレンジアミン、オクタデシルプロピレンジアミン、オレイルプロピレンジアミン、エイコシルプロピレンジアミン、ドコシルプロピレンジアミン、ドデシルエチレンジアミン、テトラデシルエチレンジアミン、ヘキサデシルエチレンジアミン、オクタデシルエチレンジアミン、オレイルエチレンジアミン、エイコシルエチレンジアミン、ドコシルエチレンジアミン、ドデシルエチレンジアミン、テトラデシルエチレンジアミン、ヘキサデシルエチレンジアミン、オクタデシルエチレンジアミン、エイコシルエチレンジアミン、ドコシルエチレンジアミン等の2つの脂肪族炭化水素基を有するジアミン化合物などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
特定ジアミン化合物の中でも、めっき浴汚染をより低減させる観点から、ドデシルプロピレンジアミン、テトラデシルプロピレンジアミン、ヘキサデシルプロピレンジアミン、オクタデシルプロピレンジアミン、オレイルプロピレンジアミン、ドデシルエチレンジアミン、テトラデシルエチレンジアミン、ヘキサデシルエチレンジアミン、オクタデシルエチレンジアミン、及びオレイルエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、ドデシルプロピレンジアミン、テトラデシルプロピレンジアミン、ヘキサデシルプロピレンジアミン、オクタデシルプロピレンジアミン、及びオレイルプロピレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0048】
特定ジアミン化合物は、基板の変色をより効果的に抑え、めっき浴汚染をより低減させる観点から、炭素数2〜4のアルキレン基と炭素数6〜28の脂肪族炭化水素基を有するジアミン化合物であることが好ましく、下記一般式(1)で表される化合物であることがより好ましく、下記一般式(2)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0049】
【化5】

【0050】
一般式(1)中、Rは炭素数6〜28の脂肪族炭化水素基を示す。Rは炭素数2〜4のアルキレン基を示す。R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキレンオキシ基又はポリアルキレンオキシ基を示す。Rは炭素数12〜25であることが好ましく、12〜18であることがより好ましい。Rは炭素数2〜4であることが好ましく、炭素数2〜3であることがより好ましい。R〜Rにおけるアルキレンオキシ基の炭素数は2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。更にR〜Rにおけるポリアルキレンオキシ基の構成単位数は1〜30であることが好ましく、1〜25であることがより好ましく、1〜20であることが更に好ましい。ここでポリアルキレンオキシ基の構成単位数は、単一の分子においては整数値を示し、複数種の分子の集合体としては平均値である有理数を示す。以下、構成単位数については同様に規定する。
【0051】
【化6】

【0052】
一般式(2)中、R1aは炭素数6〜27の脂肪族炭化水素基を示す。nはそれぞれ独立に0〜30の数であり、エチレンオキシ単位の構成単位数を示す。一般式(2)においてR1aは炭素数12〜25の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、R1aは炭素数12〜18の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。またnは0〜25であることが好ましく、0〜20であることがより好ましい。
【0053】
一般式(1)で表される化合物は、牛脂アルキル−プロピレンジアミン、硬化牛脂アルキル−プロピレンジアミン、及びオレイルプロピレンジアミンが、それぞれニッサンアミンDT、ニッサンアミンDT−H、及びニッサンアミンDOB−R(いずれも日油株式会社製)として商業的に入手可能である。
【0054】
また、一般式(1)で表される化合物は、硬化牛脂プロピレンジアミン及び牛脂プロピレンジアミンが、それぞれジアミンR−86及びジアミンRRT(いずれも花王株式会社製)として商業的に入手可能である。これらは1種類を単独で又は2種類以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0055】
また、一般式(1)で表される化合物のうち、N,N’N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−アルキル(牛脂)−1,3−ジアミノプロパンが、エソデュオミンT/13(ライオン株式会社製、製品名)として、N,N’N’−ポリオキシエチレン−N−アルキル(牛脂)−1,3−ジアミノプロパンが、エソデュオミンT/25(ライオン株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0056】
感光性樹脂組成物における特定ジアミン化合物の含有量は、感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分(不揮発分)の総量100質量部中に、0.001質量部〜2質量部であると好ましく、0.001質量部〜0.5質量部であるとより好ましく、0.001質量部〜0.1質量部であると更に好ましい。上記含有量が、0.001質量部以上であると、感光性樹脂組成物からなるレジストの導体層に対する密着性が充分に得られ、めっき処理又はエッチング処理時にレジストの剥離等がより効果的に抑制される。また、導体層自体に腐食(錆)が発生して変色することをより効果的に抑制できる。一方、上記含有量が、2質量部以下であると、感光性樹脂組成物の感度がより向上する傾向にあり、硬化に要するエネルギーを低減することができ、レジストの剥離性がより向上する傾向にある。
【0057】
ベンゾトリアゾール化合物に対する特定ジアミン化合物の含有比(特定持アミン化合物/ベンゾトリアゾール化合物)は、質量基準で、0.1〜10であると好ましく、0.5〜5.0であるとより好ましい。上記含有率が、0.1以上であると、ベンゾトリアゾール化合物の溶解性により優れる傾向にある。一方、上記含有率が、10以下であると、感度と密着性がより優れる傾向にある。
【0058】
感光性樹脂組成物が、特定ジアミン化合物を含むことは、通常用いられる分析方法により分析することが可能である。具体的には、核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル、質量分析スペクトル等を用いることで、感光性樹脂組成物に含まれる特定ジアミン化合物の種類と含有量を分析することができる。
【0059】
(バインダーポリマー)
感光性樹脂組成物は、バインダーポリマーを含有する。バインダーポリマーは、感光性樹脂組成物にフィルム形成性を付与する機能を主として有するものである。バインダーポリマーとしては、このような特性を有しているものであれば、特に制限なく適用できる。具体的には、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、及びフェノール系樹脂が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、得られたレジストがアルカリ水溶液に現像可能となる特性を有するものが好ましい。かかる観点からは、バインダーポリマーとしては、アクリル系樹脂が好ましい。
【0060】
これらのバインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより得ることができる。重合性単量体としては、スチレン;ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体;アクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類;(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸;α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸誘導体;マレイン酸;マレイン酸無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル;フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
バインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、カルボキシ基を含有するものであることが好ましい。カルボキシ基を有するバインダーポリマーは、例えば、カルボキシ基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより得ることができる。このカルボキシ基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸が好ましい。また、バインダーポリマーは、可とう性の見地からスチレン又はスチレン誘導体を重合性単量体として更に用いて得られたものが好ましい。これらの観点から、バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びスチレン又はスチレン誘導体を含む重合性単量体組成物を共重合して得られる共重合体が特に好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0063】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、これらの構造異性体が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
(メタ)アクリル酸を共重合成分として用いる場合、アルカリ現像性及び密着性の観点から、(メタ)アクリル酸の含有率が、5質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜45質量%であることがより好ましく、10質量%〜45質量%であることが更に好ましく、15質量%〜45質量%であることが特に好ましく、15質量%〜40質量%であることが極めて好ましい。
【0065】
スチレン又はスチレン誘導体を共重合成分として用いる場合、密着性及び剥離性の観点から、スチレン又はスチレン誘導体の含有率が3質量%〜30質量%であることが好ましく、4質量%〜28質量%であることがより好ましく、5質量%〜27質量%であることが更に好ましい。この含有率が3質量%以上であると、密着性により優れる傾向がある。また30質量%以下であると剥離片が大きくなりすぎることを抑制し、剥離時間がより短くなる傾向がある。
【0066】
バインダーポリマーの重量平均分子量は特に制限されない。中でも20,000〜300,000であると好ましく、20,000〜200,000であるとより好ましく、30,000〜150,000であると更に好ましく、40,000〜120,000であることが特に好ましく、60,000〜120,000であることが極めて好ましい。この重量平均分子量が20,000以上であると、耐現像液性がより向上する傾向にある。また300,000以下であると、現像時間がより短くなる傾向にある。なお、バインダーポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して得られる。GPCの測定条件は、後述の実施例に準ずる。
【0067】
これらのバインダーポリマーは、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて含有させることができる。2種類以上を組み合わせる場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーが挙げられる。また、特開平11−327137号公報記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを使用することもできる。
【0068】
感光性樹脂組成物におけるバインダーポリマーの含有量は、感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分(不揮発分)の総量100質量部中に、20質量部〜80質量部であると好ましく、40質量部〜70質量部であるとより好ましい。バインダーポリマーの含有量が20質量部以上であると、得られるレジストが強靱化して、メッキ処理、エッチング処理等に対する耐久性がより向上する傾向にある。一方、バインダーポリマーの含有量が80質量部以下であると、感光性樹脂組成物の感度がより向上する傾向にある。
【0069】
(エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物)
感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物(以下、単に「光重合性化合物」ともいう)を含有する。光重合性化合物は、主として活性光線の照射により重合して感光性樹脂組成物を硬化させる作用を有する成分である。かかる光重合性化合物は、光及び後述する光重合開始剤の少なくとも一方の作用によって架橋可能な官能基を有する単量体又は共重合体であり、分子内に重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物である。その構造は特に制限されず、脂肪族、芳香族、脂環式、複素環等のいずれの構造を有していてもよく、また、分子内にエステル結合、ウレタン結合、アミド結合等を有していてもよい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0070】
光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物、水添ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー;ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート;フタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート化合物;及びトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
光重合性化合物の中でも、ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物、水添ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物、分子内にウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート化合物、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の光重合性化合物を含有することが好ましい。
【0072】
ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0073】
【化7】
【0074】
一般式(3)中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。XO及びYOはそれぞれ独立に、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基を示す。(XO)m、(XO)m、(YO)n、(YO)nは、(ポリ)エチレンオキシ基又は(ポリ)プロピレンオキシ基を示す。m、m、n及びnはそれぞれ独立に、0〜40を示す。XOがエチレンオキシ基、YOがプロピレンオキシ基である場合、m+mは1〜40であり、n+nは0〜20である。XOがプロピレンオキシ基、YOがエチレンオキシ基の場合、m+mは0〜20であり、n+nは1〜40である。m、m、n及びnはそれぞれの構成単位数を示す。
【0075】
一般式(3)で表される化合物のうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業株式会社製、製品名)又はFA−321M(日立化成〔(旧)日立化成工業〕株式会社製、製品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。これらは1種類を単独で又は2種類以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0076】
感光性樹脂組成物が光重合性化合物としてビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物を含む場合、その含有量としては、感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分(不揮発分)の総量100質量部中に、10質量部〜50質量部であることが好ましく、15質量部〜40質量部であることがより好ましい。
【0077】
光重合性化合物は、感光性樹脂組成物の硬化物(硬化膜)の可とう性を向上させる観点から、その他の光重合性化合物としてポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが好ましい。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートにおけるオキシアルキレン基の構成単位数は特に制限されないが、3〜15であることが好ましく、4〜14であることがより好ましい。
【0078】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートにおける(ポリ)オキシアルキレン基としては、(ポリ)オキシエチレン基及び(ポリ)オキシプロピレン基が挙げられ、これらのうちの1種単独で有していてもよく、2種の双方を有していてもよく、少なくとも(ポリ)オキシプロピレン基を有することが好ましい。(ポリ)オキシアルキレン基としては(ポリ)オキシプロピレン基のみを有することがより好ましい。その中でも、オキシプロピレン基の構成単位数が4〜15であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0079】
光重合性化合物がポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む場合、その含有量は、例えば、感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分(不揮発分)の総量100質量部中に、5質量部〜30質量部であることが好ましく、5質量部〜25質量部であることがより好ましい。
【0080】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、感光性樹脂組成物の硬化物(硬化膜)の可とう性を向上させる観点から、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0081】
【化8】
【0082】
一般式(4)で表される化合物において、AOはアルキレンオキシ基を示す。AOで示されるアルキレンオキシ基は、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基であることが好ましく、プロピレンオキシ基であることがより好ましい。一般式(4)で表される化合物が複数のAOを有する場合、複数のAOは互いに同一であっても異なっていてもよい。また一般式(4)で表される化合物が異なる複数のAOを有する場合、複数のAOはそれぞれ独立にエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基であることが好ましい。更に、一般式(4)で表される化合物が複数の異なるAOとしてエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を有する場合、これらはブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。
【0083】
41及びR42は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。耐現像液性が向上することから、R41及びR42は水素原子であることが好ましい。また、一般式(4)で表される化合物において、nはアルキレンオキシ基の構成単位数であり、0〜50を示す。従ってnは、単一の分子においては整数値を示し、複数種の分子の集合体としては平均値である有理数を示す。以下、構成単位数については同様である。
テント信頼性がより向上することから、nは4〜25であることが好ましく、6〜24であることがより好ましく、6〜14であることが更に好ましく、6〜10であることが特に好ましい。
【0084】
一般式(4)で表される化合物としては、二(メタ)アクリル酸無水物(n=0)、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=1〜50)、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=1〜50)、及び(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=1〜50)が挙げられる。これらの中でも、密着性及び解像度の観点から、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=1〜50)、及び(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=1〜50)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=1〜50)であることがより好ましい。
【0085】
(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、例えば、(ポリ)アルキレングリコールに(メタ)アクリル酸を反応させることにより得られる。商業的に入手可能な一般式(4)で表される化合物としては、9G、14G、23G(いずれも、新中村化学工業株式会社製、商品名)等のポリエチレングリコールジメタクリレート、A−200、A−400、A−600、A−1000(いずれも、新中村化学工業株式会社製、商品名)等のポリエチレングリコールジアクリレート、APG100、APG200、APG400、APG700(いずれも、新中村化学工業株式会社製、商品名)等のポリプロピレングリコールジアクリレート、9PG(新中村化学工業株式会社製、商品名)等のポリプロピレングリコールジメタアクリレートなどが挙げられる。
【0086】
光重合性化合物は、解像度、密着性及び剥離性といった感光特性と、基板変色の防止及びめっき浴汚染性の低減といった基板に対する特性を両立させる観点から、一般式(3)で表される化合物及び一般式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、一般式(3)で表される化合物及び一般式(4)で表される化合物の両方を含むことがより好ましい。
【0087】
感光性樹脂組成物における光重合性化合物の含有量は、感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分(不揮発分)の総量100質量部中に30質量部〜70質量部とすることが好ましく、35質量部〜65質量部とすることがより好ましく、35質量部〜50質量部とすることが更に好ましい。上記含有量が30質量部以上であると、充分な感度及び解像度が得られ易くなる傾向がある。上記含有量が70質量部以下であると、フィルム(感光性樹脂組成物層、感光層)を形成し易くなる傾向があり、また良好なレジスト形状が得られ易くなる傾向がある。
【0088】
(光重合開始剤)
感光性樹脂組成物は光重合開始剤の少なくとも1種を含む。光重合開始剤は、活性光線を照射されることにより、上述した光重合性化合物等の重合を開始させ得る成分である。このような光重合開始剤としては、従来、光開始剤として用いられる公知の化合物を用いることができる。
【0089】
具体的には、例えば、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N,N’,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(EAB)、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体(B−CIM)、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体;クマリン系化合物;及びチオキサントン化合物が挙げられる。これらは1種類を単独で、又は2種類以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0090】
光重合開始剤は、感度及び密着性を向上させる観点から、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体及び芳香族ケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体を含むことがより好ましい。2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体は、その構造が対称であっても非対称であってもよい。
【0091】
光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分(不揮発分)の総量100質量部中に、0.05質量部〜10質量部であると好ましく、0.1質量部〜6質量部であるとより好ましく、0.3質量部〜4質量部であると更に好ましい。光重合開始剤の含有量が0.05質量部以上であると、感光性樹脂組成物の硬化が充分に進行し、より良好なレジストが得られ易い傾向にある。一方、10質量部以下であると、感光性樹脂組成物からの光重合開始剤の析出を抑制することができ、また解像度をより向上させることができる。
【0092】
(有機溶剤)
感光性樹脂組成物は、必要に応じて有機溶剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤;トルエン等の芳香族炭化水素溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤;塩化メチレン等のハロゲン溶剤;及びビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジイソプロパノールアミン等のモノアミン溶剤が挙げられる。これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。感光性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、その含有率は例えば、感光性樹脂組成物の総質量中に40質量%〜70質量%とすることが好ましい。
【0093】
(トリアゾール化合物、テトラゾール化合物等)
感光性樹脂組成物は、トリアゾール化合物及びテトラゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「特定含窒素化合物」ともいう)を更に含むことが好ましい。これにより基板の変色をより効果的に抑制することができる。トリアゾール化合物及びテトラゾール化合物としては、3−アミノトリアゾール、5−アミノテトラゾール等を挙げることができる。これらの中でも、アミノ基を有するトリアゾール化合物及びアミノ基を有するテトラゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、3−アミノトリアゾール及び5−アミノテトラゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0094】
感光性樹脂組成物が、特定含窒素化合物を更に含む場合、その含有量は感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分(不揮発分)の総量100質量部中に、0.001質量部〜1質量部であることが好ましく、0.001質量部〜0.1質量部であることがより好ましく、0.001質量部〜0.05質量部であることが更に好ましい。
【0095】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて特定ジアミン化合物に加えて、モノアミン化合物を更に含んでいてもよい。モノアミン化合物としては、例えば、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジイソプロパノールアミン等の2級アミン化合物を挙げることができる。
【0096】
感光性樹脂組成物がモノアミン化合物を更に含む場合、その含有量は感光性樹脂組成物における有機溶剤を除く成分(不揮発分)の総量100質量部中に、0.001質量部〜2質量部であることが好ましく、0.001質量部〜0.5質量部であることがより好ましい。
【0097】
(その他の成分)
感光性樹脂組成物は、上述したバインダーポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤、ベンゾトリアゾール化合物、特定ジアミン化合物等に加えて、これら以外のその他の成分を更に含有していてもよい。
【0098】
その他の成分としては、有機ハロゲン化物が挙げられる。有機ハロゲン化物としては、ペンタブロモエタン、トリブロモアセトフェノン、ビス(トリブロモメチル)スルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン等が挙げられる。このような有機ハロゲン化物を含有させると、感光性樹脂組成物の感度が更に向上する傾向にある。
【0099】
更に感光性樹脂組成物には、必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモメチルフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを含有させることもできる。
【0100】
感光性樹脂組成物がその他の成分を含む場合、その含有量は、上述したバインダーポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤、ベンゾトリアゾール化合物、及び特定ジアミン化合物の総量100質量部に対して、各々0.01質量部〜20質量部程度とすることができる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて含有させることができる。
【0101】
更にまた感光性樹脂組成物は必要に応じてフィラーを含有してもよい。フィラーとしてはシリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、水和アルミナ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、エーロジル、炭酸カルシウム等の無機粒子、粉末状エポキシ樹脂、粉末状ポリイミド粒子等の有機粒子、粉末状テフロン(登録商標)粒子等が挙げられる。これらのフィラーには予めカップリング処理されていてもよい。これらは、ニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール等の既知の装置により混練して感光性樹脂組成物中に分散することができる。
【0102】
感光性樹脂組成物がフィラーを含む場合、その含有率は解像性及び難燃性が低下しない範囲であれば特に制限されない。例えば、フィラーの含有率は、感光性樹脂組成物の不揮発分の総質量中に2質量%〜20質量%程度、好ましくは5質量%〜15質量%程度とすることができる。
【0103】
(感光性エレメント)
本発明の感光性エレメントは、支持体と、支持体上に設けられる上述の感光性樹脂組成物の塗膜である感光層と、を備える。
次に、好適な実施形態に係る感光性エレメントについて説明する。図1は実施形態に係る感光性エレメントの一例を示す模式断面図である。図1では、感光性フィルム1は、支持体11と、この支持体上に設けられた上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光層12と、この感光層12上に設けられた保護フィルム13とを有している。なお、感光層12は、感光性樹脂組成物が未硬化状態のものである。
【0104】
支持体11としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムなどが挙げられる。また、感光性フィルム1における支持体11の厚みは特に制限されない。例えば、支持体11の厚みは5μm〜150μmであると好ましく、5μm〜50μmであるとより好ましく、8μm〜30μmであると更に好ましく、10μm〜20μmであると特に好ましい。この厚みが5μm以上であると現像前に支持体11を剥離する際に支持体11が破れることを抑制しやすくなる傾向にある。一方、150μm以下であると、感光層12の解像度がより向上する傾向にある。ここで感光性エレメント1における支持体11の厚みは、ダイヤルゲージ(測定点数;3点)又はβ線厚さ計(測定点数;10点)を用いて測定される厚みの算術平均値である平均厚みを意味し、感光層12及び保護フィルム13の厚みについても同様である。
【0105】
また、支持体11のヘーズは特に制限されない。例えば、0.001〜5.0であると好ましく、0.001〜2.0であるとより好ましく、0.01〜1.8であると更に好ましい。このヘーズが2.0以下であると感光層12の解像度がより向上する傾向にある。ヘーズは、JIS K 7375(2008年度)に準拠して測定することができ、例えば、NDH−1001DP(日本電色工業株式会社製、商品名)の市販の濁度計等で測定が可能である。
【0106】
感光層12は、上述した実施形態の感光性樹脂組成物から形成される塗膜であり、その厚みは特に制限されない。例えば、感光層12の厚みは1μm〜150μmであると好ましく、5μm〜100μmであるとより好ましく、10μm〜50μmであると更に好ましい。感光層12の厚みが1μm以上であると、工業的な塗工が容易になり、生産性が向上する傾向にある。一方、樹脂層12の厚みが150μm以下であると、密着性及び解像度がより向上する傾向がある。
【0107】
支持体11上に感光層12を形成する方法としては、例えば、上記感光性樹脂組成物を溶媒等と混合して溶液又はワニスとし、かかる溶液等を支持体11上に塗布した後、溶媒等を除去する方法が挙げられる。ここで、感光性樹脂組成物と混合する溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤;トルエン等の芳香族炭化水素溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤;塩化メチレン等のハロゲン溶剤などが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。かかる溶液又はワニスとしては、不揮発分を30質量%〜60質量%程度に調整することが好ましい。
【0108】
上述した溶液又はワニスを支持体11上に塗布する方法としては、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の装置を用いる方法が挙げられる。また、溶媒等の除去は、溶液が塗布された支持体を、例えば、70℃〜150℃、5分〜30分間程度加熱することにより行うことができる。なお、溶媒を除去した後の感光層12中の溶媒残存量は、その後の工程における溶媒の拡散を防止する観点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0109】
保護フィルム13としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムなどが挙げられる。なお、後述するように感光性エレメント1を用いて配線板に感光層を形成する際、保護フィルム13の剥離を容易に行う観点から、保護フィルム13は、感光層12に対する密着性が支持体11よりも小さいことが好ましい。このような保護フィルム13としては、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムのようなポリオレフィンフィルムからなるものが好ましい。
【0110】
保護フィルム13の厚みは特に制限されない。例えば、保護フィルム13の厚みは5μm〜30μmであると好ましく、10μm〜28μmであるとより好ましく、15μm〜25μmであると更に好ましい。この厚みが5μm以上であると、感光性エレメント1を銅張り重層板等にラミネートを行う際に保護フィルム13が破れることを抑制できる傾向にある。一方、30μm以下であると感光性エレメント1の製造コストの上昇を抑制できる傾向にある。
【0111】
感光層12上に保護フィルム13を重ね合わせる方法としては、例えば、上述した感光性樹脂組成物を含む溶液等を支持体11上に塗布して乾燥させて塗膜を形成した後、乾燥後の感光層12上に保護フィルム13を重ね、これらを加熱して圧着させる方法が挙げられる。
【0112】
このような構成を有する感光性エレメント1は、シート状の形態、又は巻芯等にロール状に巻き取った状態で保管することができる。ロール状に巻き取った状態で保管する場合、かかるロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが更に好ましい。また、これらを梱包する際には、透湿性の低いブラックシートに包むことが好ましい。
【0113】
好適な実施形態の感光性エレメント1は上述した構成を有するものであるが、支持体11、感光層12及び保護フィルム13の他に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層、保護層などを更に備えるものであってもよい。また、必ずしも保護フィルム13を備えていなくてもよく、支持体11及び感光層12を備える基本的に2層構造のものであってもよい。
【0114】
(レジストパターンの形成方法)
次に、上記感光性樹脂組成物又は感光性エレメントを用いたレジストパターンの形成方法について説明する。レジストパターンは、例えば、基板上に、上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光層を形成する感光層形成工程と、この感光層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射して上記感光層に光硬化部を形成する露光工程と、感光層におけるこの光硬化部以外の領域を除去する現像工程と、を有する方法によって好適に形成することができる。
【0115】
この形成方法においては、まず、レジストパターンを形成すべき基板を準備することが好ましい。基板としては、樹脂材料等からなる絶縁性基板、このような絶縁性基板の片面又は両面に導体層が形成された導体層付き基板などが挙げられる。後者の導体層付き基板における導体層の構成材料としては、例えば、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金などの金属が挙げられる。中でも銅、銅系合金又は鉄系合金が好ましい。
【0116】
次いで、これらの基板の表面上に、上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光層を形成する。感光層の形成方法としては、基板上に、上述した感光性樹脂組成物を含む溶液又はワニスを公知の塗布方法により塗布して塗布膜を形成した後、形成された塗布膜から溶媒を除去する方法;上述した感光性エレメントの感光層を基板上に重ね合わせる方法等が挙げられる。基板上に形成される感光層の厚みとしては、通常、10μm〜150μmの範囲とされる。なお、得られた感光層は、主として上記溶液又はワニス等から溶媒の大部分が除去された後の成分により構成されるものとなる。
【0117】
感光性エレメントを用いて感光層を形成する場合、まず、感光性エレメント1の保護フィルム13を剥離した後、基板上に、感光層12が面するように感光性エレメント1を重ね、ホットロールラミネータ等を用いてこれらを圧着する。このときの圧着条件は、温度70℃〜130℃程度、圧力0.1MPa〜1MPa程度(1kgf/cm〜10kgf/cm程度)とすることが好ましく、密着性及び追従性の見地から減圧下で圧着を行うことがより好ましい。この際、基板に対する感光層12の密着性を向上させる観点から、基板に予熱等を施してもよい。
【0118】
レジストパターンの形成においては、こうして基板上に感光層12を形成した後、この感光層12の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成させる(露光工程)。露光の方法としては、例えば、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法が挙げられる。この際、感光層12上に感光性エレメント1における支持体11を有している場合には、支持体11を剥離除去した後に露光を行うことができるが、支持体11が活性光線を透過可能であれば支持体11を介して露光を行ってもよい。また、マスクは感光層12に直接接触させてもよく、また活性光線を透過可能なフィルムを介して接触させてもよい。
【0119】
露光の際の活性光線の光源としては、公知の光源として、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するもの、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものなどを好適に用いることができる。
【0120】
露光後、感光層12上に感光性エレメント1に由来する支持体11が存在している場合には、この支持体11を除去した後、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウェット現像、ドライ現像等により、未露光部の感光層12を除去する現像処理を行い、レジストパターンを形成する。
【0121】
ウェット現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1質量%〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液等が挙げられる。これらのアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。
【0122】
現像の方式としては、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。なお、現像後の処理として、必要に応じて60℃〜250℃程度の加熱又は0.2J/cm〜10J/cm程度の露光を行うこともできる。これにより、レジストパターンを更に硬化することができ、後のめっき処理等の工程における耐久性を更に向上させることができる。
【0123】
(配線板の製造方法)
次に、上述した方法によりレジストパターンの形成された基板を用いて配線板を製造する方法について説明する。配線板の製造方法としては、必要な導体部分をめっき処理により形成する方法(アディティブ法)、基板上に設けられた導体層の不要部分をエッチング処理により除去する方法(サブトラクティブ法)等が挙げられる。
【0124】
アディティブ法は、例えば、表面に導体層が形成されていない基板(例えば、上述した絶縁性基板)を用い、上記方法によりレジストパターンが形成された基板をめっき処理した後、このレジストパターンを除去することにより行うことができる。この方法において、基板上に形成されたレジストパターンはめっきレジストとして用いられる。めっき処理により、基板上におけるレジストパターンに覆われていない部分に所望の形状の回路パターンを形成することができる。
【0125】
めっき方法としては、例えば、硫酸銅めっき、ピロリン酸銅めっき等の銅めっき;ハイスローはんだめっき等のはんだめっき;ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき、スルファミン酸ニッケルめっき等のニッケルめっき;硫酸スズめっき;及びハード金めっき、ソフト金めっき等の金めっきが挙げられる。
【0126】
また、サブトラクティブ法は、例えば、レジストパターンの形成方法で説明したような導体層付き基板を用い、(1)上記実施形態の方法によりレジストパターンが形成された導体層付き基板をエッチング処理した後、レジストパターンを除去する方法、(2)レジストパターンが形成された導体層付き基板をめっき処理し、続いてレジストパターンを除去し、その後、導体層上のめっき処理されていない部分をエッチングする方法、等により行うことができる。
【0127】
(1)の方法において、レジストパターンはエッチングレジストとして機能する。そして、導体層におけるエッチングレジストの形成されていない部分がエッチング処理により除去されることにより、基板上に所望の形状を有する回路パターンが形成される。
【0128】
一方、(2)の方法においては、まず、レジストパターンがめっきレジストとして機能し、これにより導体層のめっきレジストに覆われていない部分にめっき層が形成される。そして、レジストパターンを除去した後、このめっき層がエッチングレジストとして機能し、エッチング処理により導体層におけるめっき層が形成されていない部分が除去され、これにより所望の形状を有する回路パターンが形成される。この場合のめっき処理は、上述したアディティブ法におけるのと同様の方法により行うことができる。
【0129】
これらの方法において、エッチング処理は、公知のエッチング液を用い、このエッチング液に導体層を溶解して除去することにより行うことができる。エッチング液としては、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素系エッチング液等が挙げられる。エッチファクタが良好な点から、エッチング液としては、塩化第二鉄溶液が好ましい。なお、上記(2)の方法の場合、エッチング液としては、めっき層以外の部分を選択的に除去できるような溶解性を有するものを選択して用いることが望ましい。
【0130】
そして、これらの方法におけるレジストパターンの除去は、例えば、レジストパターン形成の際の現像工程に用いたアルカリ性水溶液よりも強いアルカリ性の水溶液を用いてレジストパターンを剥離することにより行うことができる。強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1質量%〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液及び1質量%〜10質量%水酸化カリウム水溶液が挙げられる。剥離方式としては、例えば、浸漬方式及びスプレー方式が挙げられ、これらの方法の1種を単独で適用してもよく、2種以上の方法を併用してもよい。
【0131】
上述した配線板の製造方法におけるめっき処理又はエッチング処理に対するレジストは、いずれも上記感光性樹脂組成物を用いて形成されたレジストパターンからなるものである。このようなレジストパターンは、上述の如く、解像度が高く、金属等からなる導体層に対する密着性にも極めて優れ、更にめっき処理等の処理を行った場合であっても導体層の変色を引き起こすことが極めて少ないものである。よって、このような製造方法によれば、微細なパターンを有しており、またラインの縁部の形状が良好であり、しかも表面の変色等が極めて少ない回路パターンを有する配線板を製造することが容易となる。
【実施例】
【0132】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り、使用した化合物には試薬を用いた。
【0133】
[感光性樹脂組成物の調製]
(実施例1〜6、比較例1〜6)
まず、以下に示すようにして、バインダーポリマーを合成した。すなわち、攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、質量比3:2でメチルセロソルブ及びトルエンを配合した混合溶媒500gを加え、窒素ガスを吹き込みながら攪拌して、80℃まで加熱した。
【0134】
一方、共重合単量体としてメタクリル酸100g、メタクリル酸エチル200g、アクリル酸エチル100g及びスチレン100gと、アゾビスイソブチロニトリル0.8gとを混合して得た溶液(以下、「溶液a」という)を用意し、80℃に加熱された上記混合溶媒に、溶液aを4時間かけて滴下した後、80℃で攪拌しながら更に2時間保温した。
【0135】
更に、上記の混合溶媒100gに、アゾビスイソブチロニトリル1.2gを溶解した溶液を、10分かけてフラスコ内に滴下した。滴下後の溶液を攪拌しながら80℃で更に3時間保温した後、30分かけて90℃に加温した。そして、この溶液を90℃で更に2時間保温した後、冷却してバインダーポリマーの溶液を得た。得られた溶液に、アセトンを加え、不揮発分(固形分)が45質量%となるように調製した。
【0136】
こうして得られたバインダーポリマーの重量平均分子量は、80,000であった。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより算出した。GPCの条件は以下に示すとおりである。
【0137】
<GPC測定条件>
機種:日立L6000
検出:L3300RI
カラム:Gelpack GL−R440 + GL−R450 + GL−R400M(いずれも、日立化成〔(旧)日立化成工業〕株式会社製、商品名)
カラム仕様:10.7mmφ×300mm
試料濃度:不揮発分40%に調製したバインダーポリマーの溶液を120mg採取、5mLのTHFに溶解(濃度:120mg/5mL)
注入量:200μL
圧力:4.8MPa(49kgf/cm
流量:2.05mL/min
【0138】
次いで、得られたバインダーポリマーの溶液と、表1に示す配合量(単位:g)の各成分と混合して、実施例1〜6及び比較例1〜6の感光性樹脂組成物を調製した。なお、バインダーポリマーの配合量は不揮発分に相当する量である。
【0139】
【表1】

【0140】
表1中の略号等は以下の通りである。
FA−321M:EO変性ビスフェノールAジメタクリレート、EO平均付加量10モル、日立化成〔(旧)日立化成工業〕株式会社製、一般式(3)で表される化合物。
APG400:ポリプロピレングリコールジアクリレート、プロピレンオキシ基の平均構成単位数7、新中村化学工業株式会社製、一般式(4)で表される化合物。
B−CIM:2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体
EAB:N,N,N’,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン
LCV:ロイコクリスタルバイオレット
TPS:トリブロモメチルフェニルスルホン
ジアミン1:牛脂アルキルトリメチレンジアミン(花王株式会社製、商品名:ジアミンRRT)
ジアミン2:牛脂アルキル−プロピレンジアミン(日油株式会社製、商品名:ニッサンアミンDT)
【0141】
(感光性エレメントの作製)
上記で得られた感光性樹脂組成物のそれぞれについて、脱泡機を用いて1時間、脱泡処理した後、コンマコータを用いて厚み16μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム社製、商品名:G2)上にそれぞれ塗布して塗布膜を形成した。次いで、塗布膜を95℃で10分間乾燥して厚み40μmの感光層を形成した。次いで感光層上に保護フィルムとして厚み19μmのポリエチレンフィルム(タマポリ社製、商品名:NF−13)を張り付けて、実施例1〜6及び比較例1〜6の感光性エレメントをそれぞれ得た。
【0142】
[特性評価]
(レジストパターンの形成)
まず、基板の両面に銅箔を備える銅張り重層板(日立化成〔(旧)日立化成工業〕株式会社製、商品名:MCL E−67)を準備し、その銅箔表面をバフ研磨機により研磨して水洗した。次いで、上記で得られた各感光性エレメントの保護フィルムを剥がした後、これらを銅張り重層板における一方の銅箔表面上にその感光層が面するようにして重ねた後、ドライフィルム用ラミネータ(A60、日立化成〔(旧)日立化成工業〕株式会社製)を用いて110℃で熱圧着した。これにより銅張り重層板上に感光層及びPETフィルムがこの順で重ね合わせた構成を有する重層体をそれぞれ得た。
【0143】
得られた重層体のそれぞれについて、所定のパターンを有するネガマスクを介してPETフィルム側から活性光線を照射して、感光層の露光処理を行った。このとき、活性光線の光源としては、5kWの高圧水銀灯(HMW−201GX、オーク製作所社製)を用いた。露光処理後の重層体からPETフィルムを除去した後、感光層に対して、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30秒間スプレーする(スプレー圧0.2MPa)ことにより現像処理を行って、レジストパターンを形成した。
【0144】
(レジストパターンの密着性の評価)
レジストパターンが形成された各重層体について、そのレジストパターンの端部を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して、レジストパターンに浮きが生じているか否かを観察した。浮きの発生が少ないレジストパターンほど密着性に優れることを示している。得られた結果を表3に示す。表3においては、レジストパターン端部の浮きの有無及び程度を、以下に示す基準に従ってA、B及びCの3段階で評価した結果を示している。
【0145】
−評価基準−
A:レジストパターン端部に浮きがない。
B:レジストパターン端部に浮きが生じており、この端部と銅箔との距離が僅かであり5μm未満である。
C:レジストパターン端部に浮きが生じており、この端部と銅箔との距離が5μm以上である。
【0146】
(レジストパターンの解像度の評価)
レジストパターンが形成された各重層板におけるレジストパターンの形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、レジストパターン最上部の幅(W1)とレジストパターンの銅箔との接着部における幅(W2)とを比較することにより、レジストパターンの裾引き(W1に対してW2が大きくなる現象)の有無及びその程度を評価した。裾引きが小さいレジストパターンほど、めっき時の剥離等が生じ難く、解像性に優れることを示している。得られた結果を表3に示した。なお、表3においては、裾引きの程度を、以下に示す基準に従ってA、B及びCの3段階で評価した結果を示している。
【0147】
−評価基準−
A:裾引きが殆どない。
B:(W2/W1)×100の値が100よりも大きく105以下である。
C:(W2/W1)×100の値が105よりも大きい。
【0148】
(レジストパターンの剥離性の評価)
レジストパターンが形成された各重層板について、室温(25℃)で一昼夜放置した後、表2に示す条件で剥離を行った。剥離後の剥離片のサイズ(最大長さ)を目視にて観察し、以下の基準で評価した。剥離片サイズが小さいほど剥離特性が良好であることを意味する。
【0149】
−評価基準−
A:20mm以下(細分化)
B:20mmを超えて40mm以下(パターン部は短い紐)
C:シート状(剥離片が割れていない又はパターン部が長い紐状になる)
【0150】
【表2】
【0151】
(基板変色の評価)
レジストパターンが形成された各重層体について、回路パターンが形成される予定領域を観察し、処理を施す前の上記銅張り重層板と比較して、基板上の銅箔に変色が生じているか否かを評価した。得られた結果を表3に示した。なお、表3においては、銅箔の変色を以下に示す基準に従ってA、B、C及びDの4段階で評価した結果を示している。
【0152】
−評価基準−
A:変色なし。
B:淡赤褐色になった。
C:赤褐色になった。
D:褐色になった。
【0153】
(めっき浴汚染性の評価)
レジストパターンが形成された各重層体を、40℃の酸性脱脂剤水溶液中に60秒浸漬してスプレー水洗を行った後、約1質量%の過硫酸アンモニウム水溶液に60秒浸漬してスプレー水洗を行い、更に、約15質量%の硫酸水溶液に60秒浸漬した。その後、この重層体を硫酸銅めっき槽(硫酸銅75g/L、硫酸190g/L、塩素イオン50ppm、温度25℃)に入れて、2.0A/dmで60分間、銅めっき処理を行った。
【0154】
銅めっき終了後、直ちにレジストパターンが形成された重層体を水洗し、約15質量%のホウフッ化水素酸水溶液に浸漬した後、はんだめっき槽(45質量%ホウフッ化鉛22mL/L、42質量%ホウフッ化水素酸200mL/L、温度25℃)に入れて、1.5A/dmで20分間、はんだめっき処理を行い、その後、水洗した。めっき処理後の重層体から、レジストパターンを除去した後、めっきされていない領域の銅箔をエッチングにより除去して、配線板を得た。得られた結果を表3に示した。なお、表3においては、めっきの析出状態を以下に示す基準に従ってA、B及びCの3段階で評価した結果を示している。
【0155】
−評価基準−
A:析出異常なし。
B:析出するが、上記条件では、析出時間が不足する。
C:析出不良があり、析出厚みにムラがある。
【0156】
【表3】

【0157】
表3より、実施例1〜6の感光性樹脂組成物を用いた場合、銅箔に対する密着性及び耐めっき性に優れ、なお且つ銅箔の変色を引き起こし難いレジストパターンを形成できることが判明した。これに対し、比較例1〜6の感光性樹脂組成物を用いた場合、銅箔への密着性が不充分であるか、銅箔の変色、めっき液汚染によるめっき析出不良等を引き起こし易いレジストパターンが形成されることが判明した。
【0158】
なお、日本出願2012−125516の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1