特許第6143014号(P6143014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6143014重合体、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子並びにジアミン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143014
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】重合体、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子並びにジアミン
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20170529BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20170529BHJP
   C07C 219/32 20060101ALI20170529BHJP
   C09K 19/56 20060101ALI20170529BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20170529BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C08G69/26
   C07C219/32CSP
   C09K19/56
   C09K19/38
   G02F1/1337 525
【請求項の数】6
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-511179(P2014-511179)
(86)(22)【出願日】2013年4月9日
(86)【国際出願番号】JP2013060751
(87)【国際公開番号】WO2013157450
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2016年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-94202(P2012-94202)
(32)【優先日】2012年4月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 亮一
(72)【発明者】
【氏名】南 悟志
(72)【発明者】
【氏名】星野 稔
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/091089(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/091088(WO,A1)
【文献】 特開2011−100099(JP,A)
【文献】 特開2003−167139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00−69/50,73/00−73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[I]で表される構造を側鎖として有するポリイミド前駆体、このポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドであることを特徴とする重合体。
【化1】
(式中、Yは原子数が5または6の単環式環、原子数が5または6の2つの隣接する単環式環、原子数が8〜10の二環式の環系、または原子数が13または14の三環式の環系から選択される、非置換または置換の、炭素環式または複素環式の2価の芳香族基であり、Yは、単結合または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合およびウレタン結合からなる群より選択される2価の結合基であり、Yは、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数3〜20の直鎖状アルキル基または炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基である。)
【請求項2】
下記式(1)で表されるジアミンを用いて得られることを特徴とする請求項1に記載の重合体。
【化2】
(式中、Yは原子数が5または6の単環式環、原子数が5または6の2つの隣接する単環式環、原子数が8〜10の二環式の環系、または原子数が13または14の三環式の環系から選択される、非置換または置換の、炭素環式または複素環式の2価の芳香族基であり、Yは、単結合または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合およびウレタン結合からなる群より選択される2価の結合基であり、Yは、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数3〜20の直鎖状アルキル基または炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基であり、Yは単結合、メチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基であり、Yは、単結合、酸素原子、*−OCO−または−CHO−*(ただし、「*」を付した結合手がYと結合する。)である。ただし、Yが単結合であるときYは単結合である。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶配向剤を用いて得られることを特徴とする液晶配向膜。
【請求項5】
請求項4に記載の液晶配向膜を具備することを特徴とする液晶表示素子。
【請求項6】
下記式(1)で表されることを特徴とするジアミン。
【化3】
(式中、Yは原子数が5または6の単環式環、原子数が5または6の2つの隣接する単環式環、原子数が8〜10の二環式の環系、または原子数が13または14の三環式の環系から選択される、非置換または置換の、炭素環式または複素環式の2価の芳香族基であり、Yは、単結合または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合およびウレタン結合からなる群より選択される2価の結合基であり、Yは、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数3〜20の直鎖状アルキル基または炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基であり、Yは単結合、メチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基であり、Yは、単結合、酸素原子、*−OCO−または−CHO−*(ただし、「*」を付した結合手がYと結合する。)である。ただし、Yが単結合であるときYは単結合である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体、ポリイミド及びポリアミド、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子並びにジアミンに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶配向膜は液晶を一定の方向に配向させるという役割を担っている。現在、工業的に利用されている主な液晶配向膜は、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸(ポリアミド酸ともいわれる。)、ポリアミック酸エステルや、ポリイミドの溶液からなるポリイミド系の液晶配向剤を、基板に塗布し成膜することで作製される。また、基板面に対して液晶を平行配向又は傾斜配向させる場合は、成膜した後、更にラビングによる表面延伸処理が行われている。そして、ラビング処理に代わるものとして、偏光紫外線照射等による異方性光化学反応を利用する方法が提案されており、近年では工業化に向けた検討が行われている。
【0003】
このような液晶表示素子の表示特性の向上のために、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステルやポリイミドの構造の変更、特性の異なるポリアミック酸、ポリアミック酸エステルやポリイミドのブレンドや、添加剤を加える等の手法により、液晶配向性や電気特性等の改善、プレチルト角のコントロール等が行われている。例えば、電気特性に優れ高温条件下で長時間使用しても液晶配向性能が劣化しない液晶配向膜を与えることができ印刷性に優れる液晶配向剤を得るために、特定の構造の基を有する重合体を用いることが提案されている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−100099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液晶表示素子の高性能化、大面積化、表示デバイスの省電力化などが進み、液晶配向膜に求められる特性も厳しいものになってきており、液晶表示素子のバックライトの曝露に対する耐性も求められる。特に、従来の液晶配向剤を用いて、偏光紫外線照射等による異方性光化学反応を利用する方法、すなわち、光照射で配向処理をする方法で形成した液晶配向膜は、未反応の光反応性基が液晶配向膜中に存在しているためか、液晶表示素子のバックライトに曝露されることによって、液晶配向性能が劣化するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、バックライトによる液晶配向性能の劣化が抑制された液晶配向膜を提供することを目的とする。すなわち、このような特性を有するポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドを提供し、さらにそれを用いた液晶配向剤及び液晶表示素子並びにジアミンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、側鎖に下記式[I]で表される構造を有するポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドを含む液晶配向剤が、上記の目的を達成するために極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の要旨を有するものである。
1.下記式[I]で表される構造を側鎖として有するポリイミド前駆体、このポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミド及びポリアミドから選択される少なくとも一種であることを特徴とする重合体。
【0009】
【化1】
(式中、Yは原子数が5または6の単環式環、原子数が5または6の2つの隣接する単環式環、原子数が8〜10の二環式の環系、または原子数が13または14の三環式の環系から選択される、非置換または置換の、炭素環式または複素環式の2価の芳香族基であり、Yは、単結合または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合およびウレタン結合からなる群より選択される2価の結合基であり、Yは、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数3〜20の直鎖状アルキル基または炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基である。)
【0010】
2.下記式(1)で表されるジアミンを用いて得られることを特徴とする1に記載の重合体。
【化2】
(式中、Yは原子数が5または6の単環式環、原子数が5または6の2つの隣接する単環式環、原子数が8〜10の二環式の環系、または原子数が13または14の三環式の環系から選択される、非置換または置換の、炭素環式または複素環式の2価の芳香族基であり、Yは、単結合または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合およびウレタン結合からなる群より選択される2価の結合基であり、Yは、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数3〜20の直鎖状アルキル基または炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基であり、Yは単結合、メチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基であり、Yは、単結合、酸素原子、*−OCO−または−CHO−*(ただし、「*」を付した結合手がYと結合する。)である。ただし、Yが単結合であるときYは単結合である。)
【0011】
3.1または2に記載の重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【0012】
4.3に記載の液晶配向剤を用いて得られることを特徴とする液晶配向膜。
【0013】
5.4に記載の液晶配向膜を具備することを特徴とする液晶表示素子。
【0014】
6.下記式(1)で表されることを特徴とするジアミン。
【化3】
(式中、Yは原子数が5または6の単環式環、原子数が5または6の2つの隣接する単環式環、原子数が8〜10の二環式の環系、または原子数が13または14の三環式の環系から選択される、非置換または置換の、炭素環式または複素環式の2価の芳香族基であり、Yは、単結合または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合およびウレタン結合からなる群より選択される2価の結合基であり、Yは、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数3〜20の直鎖状アルキル基または炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基であり、Yは単結合、メチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基であり、Yは、単結合、酸素原子、*−OCO−または−CHO−*(ただし、「*」を付した結合手がYと結合する。)である。ただし、Yが単結合であるときYは単結合である。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バックライトによる液晶配向性能の劣化が抑制された液晶配向膜を得ることができる新規なポリイミド前駆体、ポリイミド及びポリアミドを提供することができる。そして、この液晶配向膜はバックライトに曝露されても液晶配向性能が劣化し難いため、該液晶配向膜を有する液晶表示素子は、長期間表示特性に優れるという効果を奏する。また、この液晶配向膜は、AC駆動による液晶配向性能の劣化も抑制され焼き付きが生じにくいものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の重合体は、上記式[I]で表される構造を側鎖として有するポリイミド前駆体、上記式[I]で表される構造を側鎖として有するポリイミド、及び、上記式[I]で表される構造を側鎖として有するポリアミドである。なお、ポリイミド前駆体とは、ポリアミック酸やポリアミック酸エステル等である。上記式[I]で表される構造は、ポリアミック酸やポリアミック酸エステル等のポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドの主鎖、すなわち、ポリアミック酸骨格、ポリイミド骨格やポリイミド骨格に直接結合していてもよく、また、適当な結合基を介して結合していてもよい。
【0017】
式[I]において、Yは、上述したように、原子数が5または6の単環式環、原子数が5または6の2つの隣接する単環式環、原子数が8〜10の二環式の環系、または、原子数が13または14の三環式の環系から選択される、非置換または置換の、炭素環式または複素環式の2価の芳香族基である。原子数が5または6の単環式環としては、ベンゼン環やピリジン環等が挙げられる。原子数が5または6の2つの隣接する単環式環としては、ビフェニル等が挙げられる。原子数が8〜10の二環式の環系としては、ナフタレン等が挙げられる。また、原子数が13または14の三環式の環系としては、アントラセンやフルオレン等が挙げられる。そして、上述したように、これらは、水素原子が例えば炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシル基やハロゲン等で置換されていてもよい。Yは、単結合または、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−または−OCO−)、アミド結合(−CONH−または−NHCO−)およびウレタン結合(−NHCOO−または−OCONH−)からなる群より選択される2価の結合基である。Yは、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数3〜20の直鎖状アルキル基または炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基である。好ましくは、Yはフェニレン基または2価のナフタレン(−C10−)であり、Yは単結合またはエーテル結合であり、Yはシクロヘキシル基またはビシクロへキシル基である。
【0018】
このような上記式[I]で表される構造を側鎖として有するポリアミック酸、ポリアミック酸エステル等のポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドを含有する液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜は、バックライトの照射による液晶配向性能の劣化が抑制されたものとなる。具体的には、このような式[I]で表される構造を側鎖として有するポリアミック酸、ポリアミック酸エステル等のポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドを含有する液晶配向剤を用い、偏光紫外線照射等による異方性光化学反応を利用する方法、すなわち、光照射で配向処理をする方法で形成した液晶配向膜(「光配向膜」ともいう)としても、バックライトの照射による液晶配向性能の劣化が抑制されたものとなる。したがって、該液晶配向膜を有する液晶表示素子は、長期間使用しても液晶配向性能が良好なため、長期間表示特性に優れるという効果を奏する。また、上記式[I]で表される構造を側鎖として有するポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドを用いて形成された液晶配向膜は、長期間AC(交流)を印加して駆動しても、液晶配向性能の劣化が抑制されたものである。したがって、該液晶配向膜を有する液晶表示素子は、長期間ACで駆動しても、焼き付きが生じにくい。
【0019】
このようなバックライトの照射による液晶配向性能の劣化が抑制されるという効果は、本発明の上記式[I]で表される構造が、オキシアクリレート基を有し、且つ、313nm付近に吸収極大を持つシンナモイル基等の比較的長波長の紫外線領域に吸収極大を持つ基を有さないためと推測される。一方、従来の液晶配向剤、例えば、オキシアクリレート基の代わりに、特許文献1のようにシンナモイル基を有する構造のものを用いると、液晶配向膜が有する未反応の光反応性基であるシンナモイル基がバックライトからの光によって液晶配向膜中で反応し液晶の配向を乱すためか、バックライトの照射による液晶配向性能の劣化が大きい。
【0020】
また、長期間AC駆動しても液晶配向性能の劣化が抑制されるという効果は、上記式[I]で表される構造が、比較的長鎖のアルキル基や環構造を有し、高い垂直配向性能を有するためと推測される。
【0021】
本発明の上記式[I]で表される構造を側鎖として有するポリイミド前駆体は、例えば、上記式[I]で表される構造を側鎖として有するジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸成分とを反応させることにより、得られる。なお、ポリアミック酸エステルは、ポリアミック酸のカルボキシル基をエステルに変換する方法でも得られる。また、本発明のポリイミド前駆体は、上記式[I]で表される構造を側鎖として有するテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させることによっても得られる。そして、これらポリアミック酸またはポリアミック酸エステル等のポリイミド前駆体をイミド化することで、本発明の上記式[I]で表される構造を側鎖として有するポリイミドが得られる。また、本発明の上記式[I]で表される構造を側鎖として有するポリアミドは、上記式[I]で表される構造を側鎖として有するジアミンを含むジアミン成分とジカルボン酸のハライドとを塩基存在下で反応させる、または、上記式[I]で表される構造を側鎖として有するジアミンを含むジアミン成分とジカルボン酸とを適当な縮合剤、塩基の存在下にて反応させることによって得られる。また、本発明のポリアミドは、上記式[I]で表される構造を側鎖として有するジカルボン酸のハライドとジアミン成分とを塩基存在下で反応させる、または、上記式[I]で表される構造を側鎖として有するジカルボン酸とジアミン成分とを適当な縮合剤、塩基の存在下にて反応させることによっても得られる。かかるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル等のポリイミド前駆体、ポリイミド及びポリアミドのいずれも液晶配向膜を得るための重合体として有用である。なお、ジアミン成分に含まれる式[I]で表される構造を側鎖として有するジアミンは、1種類でも2種類以上でもよく、また、ジアミン成分は、式[I]で表される構造を側鎖として有するジアミン以外のその他のジアミンを1種類または2種類以上含んでいてもよい。また、式[I]で表される構造を側鎖として有するテトラカルボン酸成分やジカルボン酸等も、1種類でも2種類以上でもよく、また、式[I]で表される構造を側鎖として有するテトラカルボン酸成分やジカルボン酸等以外のその他のテトラカルボン酸やジカルボン酸を1種類または2種類以上含んでいてもよい。
【0022】
上記式[I]で表される構造を側鎖として有するジアミンとしては、上記式(1)で表されるジアミンが挙げられる。なお、上記式(1)で表されるジアミンは、文献未載の新規化合物である。式(1)において、Y、Y、Yについては、それぞれ式[I]におけるY、Y、Yと同じである。また、Yは単結合、メチレン基または炭素数2〜6のアルキレン基である。そして、Yは、単結合、酸素原子、*−OCO−または−CHO−*(ただし、「*」を付した結合手がYと結合する。)である。なお、Yが単結合であるときYは単結合である。式(1)において、好ましくは、Yはフェニレン基または2価のナフタレン(−C10−)であり、Yは単結合またはエーテル結合であり、Yはシクロヘキシル基またはビシクロへキシル基であり、Yは単結合であり、Yは単結合もしくは−CHO−である。
【0023】
また、式(1)において、アミノ基の位置は特に限定されず、ジアミンであれば特に限定はないが、液晶配向性や合成のし易さの観点から、例えば、それぞれオキシアクリレート基に対して、ベンゼン環上の2,3の位置、2,4の位置、2,5の位置、2,6の位置、3,4の位置または3,5の位置が挙げられる。なかでも、重合体を合成する際の反応性の観点から、2,4の位置、2,5の位置または3,5の位置が好ましい。
【0024】
式(1)で表されるジアミンの具体例としては、下記ジアミンが挙げられる。
【化4】
【0025】
このような上記式(1)で表されるジアミンの合成方法は、特に限定されず、例えば後述する合成例に従って製造することができる。例えば、式(1)で表されるジアミンは、対応する下記式(1’)で表されるジニトロ化合物を合成し、さらにニトロ基を還元しアミノ基に変換することで得られる。ジニトロ化合物を還元する方法には特に制限はなく、通常、パラジウム−炭素、酸化白金、ラネーニッケル、鉄、塩化スズ、白金黒、ロジウム−アルミナ、硫化白金炭素などを触媒として用いることができるが、オレフィンを還元せずに残したままニトロ基のみを高収率で選択的に還元するという観点からは、鉄や塩化スズを用いた化学還元法を用いることが有効である。溶媒としては、酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノールなどのアルコール系溶媒、還元剤としては、水素ガス、ヒドラジン、塩化水素、塩化アンモニウムなどを用いた反応によって行う方法がある。
【0026】
【化5】
(式中、Y、Y、Y、Y、Yは、それぞれ式(1)におけるY、Y、Y、Y、Yと同じである。)
【0027】
式(1’)で表されるジニトロ化合物の合成方法は特に限定されず、任意の方法により合成することができるが、その具体例としては、例えば、以下の反応に示すような方法で合成することができる。
【0028】
【化6】
【0029】
この反応において、ジニトロ化合物Aと水酸基を有する化合物Bとを、例えば、酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタンなどの有機溶媒中、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)やDMAP(4−N,N−ジメチルアミノピリジン)などの塩基性触媒を用いて反応させることにより、合成することができる。
【0030】
上記ジニトロ化合物Aにおいて、Y、Yは、それぞれ式(1)におけるY、Yと同じであり、側鎖末端にアルキン構造を有していれば、構造は特に限定されない。また、上記水酸基を有する化合物Bにおいて、Y、Y、Yは、それぞれ式(1)におけるY、Y、Yと同じであり、例えば、フェノールおよびその誘導体が挙げられるが特に限定されるものではない。
【0031】
上記式(1)で表されるジアミンは、ジアミン成分全量に対して10モル%以上で本発明の効果を発現することができるが、30〜100モル%であることが好ましく、さらに好ましくは50〜100モル%である。なお、本明細書において、特に記載がなければ、割合は、モル数を基準とするものである。
【0032】
また、式(1)で表されるジアミン以外のその他のジアミンとしては、下記式(2)で表されるジアミンが挙げられる。
【0033】
【化7】
(式(2)中、Rは単結合、−O−又は二価の有機基であり、X、X、Xはそれぞれ独立して二価のベンゼン環又はシクロヘキサン環であり、p、q、rはそれぞれ独立して0又は1の整数であり、Rは、水素原子、炭素数1〜22のアルキル基又はステロイド骨格を有する炭素数12〜25の1価の有機基である。)
【0034】
式(2)中、Rは、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合であることが好ましい。Rは、炭素数12〜18のアルキル基であることが好ましい。炭素数1〜22のアルキル基は、直鎖状でもよいし、分岐状でもよい。
【0035】
式(2)で表されるジアミンは、液晶のプレチルト角(液晶配向膜に対する液晶の傾斜角度)を大きくすることに貢献するものであり、長鎖アルキル基、パーフルオロアルキル基、芳香族環状基、脂肪族環状基、及びこれらを組み合わせた置換基、ステロイド骨格基などを有するジアミンであることが好ましい。
【0036】
式(2)で表されるジアミンは、ジアミン成分全量に対して5〜50モル%であることが好ましく、さらに好ましくは、10〜30モル%である。
【0037】
また、上記式(1)で表されるジアミン以外のその他のジアミンとして、p−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノール、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェニル、3,3’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、2,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、2,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−スルホニルジアニリン、3,3’−スルホニルジアニリン、ビス(4−アミノフェニル)シラン、ビス(3−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(4−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(3−アミノフェニル)シラン、4,4’−チオジアニリン、3,3’−チオジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルアミン、3,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2’−ジアミノジフェニルアミン、2,3’−ジアミノジフェニルアミン、N−メチル(4,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,3’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,2’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,3’−ジアミノジフェニル)アミン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,4−ジアミノナフタレン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、2,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,8−ジアミノナフタレン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4アミノフェニル)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、1,4−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,4−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3−アミノフェニル)イソフタレート、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)イソフタルアミド、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)へキサン、1,6−ビス(3−アミノフェノキシ)へキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7−(3−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,8−ビス(3−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,9−ビス(3−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−(4−アミノフェノキシ)デカン、1,10−(3−アミノフェノキシ)デカン、1,11−(4−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11−(3−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12−(4−アミノフェノキシ)ドデカン、1,12−(3−アミノフェノキシ)ドデカン、4−(アミノメチル)アニリン、3−(アミノメチル)アニリン、3−((アミノメチル)メチル)アニリン、4−(2−アミノエチル)アニリンまたは3−(2−アミノエチルアニリン)などの芳香族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンまたはビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカンまたは1,12−ジアミノドデカンなどの脂肪族ジアミンも挙げられる。
【0038】
上記のその他のジアミンは、液晶配向膜とした際の液晶配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0039】
テトラカルボン酸成分とは、テトラカルボン酸及びテトラカルボン酸誘導体から選択される少なくとも一種である。テトラカルボン酸誘導体としては、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド、テトラカルボン酸ジエステル等が挙げられる。例えば、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸二無水物などとジアミン成分とを反応させることで、ポリアミック酸を得ることができる。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミン成分との反応や、テトラカルボン酸ジエステルとジアミン成分とを適当な縮合剤や塩基の存在下等にて反応させることにより、ポリアミック酸エステルを得ることができる。なお、テトラカルボン酸成分は、1種類でも2種類以上でもよい。
【0040】
テトラカルボン酸成分として、下記式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0041】
【化8】
(式(3)中、Zは炭素数4〜6の非芳香族環状炭化水素基を含有する炭素数4〜13の4価の有機基である。)
【0042】
式(3)中、Zの具体例としては、下記式(3a)〜式(3j)で表される4価の有機基が挙げられる。
【0043】
【化9】
(式(3a)中、Z〜Zは水素原子、メチル基、塩素原子またはベンゼン環であり、それぞれ、同じであっても異なってもよく、式(3g)中、ZおよびZは水素原子またはメチル基であり、それぞれ、同じであっても異なってもよい。)
【0044】
式(3)中、Zの特に好ましい構造は、重合反応性や合成の容易性から、式(3a)、式(3c)、式(3d)、式(3e)、式(3f)または式(3g)である。なかでも、式(3a)、式(3e)、式(3f)または式(3g)が好ましい。
【0045】
また、テトラカルボン酸成分全量に対する式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物の割合は特に限定されず、例えば、テトラカルボン酸成分が上記式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物のみでもよい。勿論、テトラカルボン酸成分は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸やテトラカルボン酸誘導体を含んでいてもよい。その際、テトラカルボン酸成分全量の1モル%以上が上記式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、より好ましくは、5モル%以上、さらに好ましくは、10モル%以上である。
【0046】
上記式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物以外のその他テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸または1,3−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸が挙げられる。
【0047】
テトラカルボン酸ジエステルも特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
脂肪族テトラカルボン酸ジエステルの具体的な例としては1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸ジアルキルエステル、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸ジアルキルエステル、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸ジアルキルエステル、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸−3,4:7,8−ジアルキルエステル、ヘキサシクロ[6.6.0.12,7.03,6.19,14.010,13]ヘキサデカン−4,5,11,12−テトラカルボン酸−4,5:11,12−ジアルキルエステル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンー1,2−ジカルボンジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0048】
芳香族テトラカルボン酸ジアルキルエステルとしては、ピロメリット酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,3’,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテルジアルキルエステル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンジアルキルエステル、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸ジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0049】
本発明のポリアミドを得るためにジアミン成分と反応させるジカルボン酸等は特に限定されない。ポリアミドを得るためにジアミン成分と反応させるジカルボン酸またはその誘導体の脂肪族ジカルボン酸の具体例として、マロン酸、蓚酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ムコン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライイン酸、セバシン酸およびスベリン酸等のジカルボン酸を挙げることができる。
【0050】
脂環式系のジカルボン酸としては、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、1,2−シクロプロパンジカルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、3,4−ジフェニル−1,2−シクロブタンジカルボン酸、2,4−ジフェニル−1,3−シクロブタンジカルボン酸、1−シクロブテン−1,2−ジカルボン酸、1−シクロブテン−3,4−ジカルボン酸、1,1−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−(2−ノルボルネン)ジカルボン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3−ジカルボン酸、2,5−ジオキソ−1,4−ビシクロ[2.2.2]オクタンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、4,8−ジオキソ−1,3−アダマンタンジカルボン酸、2,6−スピロ[3.3]ヘプタンジカルボン酸、1,3−アダマンタン二酢酸、カンファー酸等を挙げることができる。
【0051】
芳香族ジカルボン酸としては、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−アミノイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、テトラメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−アントラセンジカルボン酸、1,4−アントラキノンジカルボン酸、2,5−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,5−ビフェニレンジカルボン酸、4,4"−ターフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルプロパンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビベンジルジカルボン酸、4,4’−スチルベンジカルボン酸、4,4’−トランジカルボン酸、4,4’−カルボニル二安息香酸、4,4’−スルホニル二安息香酸、4,4’−ジチオ二安息香酸、p−フェニレン二酢酸、3,3’−p−フェニレンジプロピオン酸、4−カルボキシ桂皮酸、p−フェニレンジアクリル酸、3,3’−[4,4’−(メチレンジ−p−フェニレン)]ジプロピオン酸、4,4’−[4,4’−(オキシジ−p−フェニレン)]ジプロピオン酸、4,4’−[4,4’−(オキシジ−p−フェニレン)]二酪酸、(イソプロピリデンジ−p−フェニレンジオキシ)二酪酸、ビス(p−カルボキシフェニル)ジメチルシラン等のジカルボン酸を挙げることができる。
【0052】
複素環を含むジカルボン酸としては、1,5−(9−オキソフルオレン)ジカルボン酸、3,4−フランジカルボン酸、4,5−チアゾールジカルボン酸、2−フェニル−4,5−チアゾールジカルボン酸、1,2,5−チアジアゾール−3,4−ジカルボン酸、1,2,5−オキサジアゾール−3,4−ジカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0053】
上記の各種ジカルボン酸は酸ジハライドあるいは無水の構造のものであってもよい。これらの中でも、テレフタル酸、イソテレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルプロパンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジカルボン酸、2,2−ビス(フェニル)プロパンジカルボン酸、4,4"−ターフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸またはこれらの酸ジハライド等が好ましく用いられる。これらの化合物には異性体が存在するものもあるが、それらを含む混合物であってもよい。また、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0054】
上記式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物や、その他のテトラカルボン酸及びテトラカルボン酸誘導体、ジカルボン酸等は、液晶配向膜とした際の液晶配向性、電圧保持率および蓄積電荷などの所望の特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0055】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、有機溶媒中で行う。その際に用いる有機溶媒としては、生成したポリアミック酸等のポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライムまたは4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0056】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを有機溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸成分をそのまま、または有機溶媒に分散、あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸成分を有機溶媒に分散、あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、これらのいずれの方法を用いてもよい。また、ジアミン成分またはテトラカルボン酸成分を、それぞれ複数種用いて反応させる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、さらに個別に反応させた低分子量体を混合反応させてもよい。その際の重合温度は−20℃〜150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは−5℃〜100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量のポリイミド前駆体(ひいてはポリイミド)を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となる。そのため、ジアミン成分及びテトラカルボン酸成分の総量の濃度は、反応液中で好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0057】
ポリアミック酸等のポリイミド前駆体の重合反応においては、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸成分の合計モル数の比は0.8〜1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリイミド前駆体の分子量は大きくなる。
【0058】
なお、ポリアミック酸エステルは、上記のようにテトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミン成分との反応や、テトラカルボン酸ジエステルとジアミン成分を適当な縮合剤、塩基の存在下にて反応させることにより得ることができる。または、上記の方法で予めポリアミック酸を合成し、高分子反応を利用してポリアミック酸のカルボキシル基をエステル化することでも得ることができる。
【0059】
具体的には、例えば、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミン成分とを塩基と有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1時間〜4時間反応させることによって、ポリアミック酸エステルを合成することができる。
【0060】
塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンが使用できるが、反応が穏和に進行するためピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜4倍モルであることが好ましい。
【0061】
また、テトラカルボン酸ジエステルとジアミン成分を、縮合剤存在下にて重縮合する場合、塩基として、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニル、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジンー2−イル)4−メトキシモルホリウムクロリド n−水和物などを使用できる。
【0062】
また、上記縮合剤を用いる方法において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量は反応させるジアミンまたはテトラカルボン酸ジエステルに対して0.1〜1.0倍モル量であることが好ましい。
【0063】
上記の反応に用いる溶媒は、上記にて示したポリアミック酸を合成する際に用いられる溶媒と同様の溶媒で行なうことができるが、モノマーおよびポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、重合体の析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドやテトラカルボン酸ジエステル等のテトラカルボン酸誘導体とジアミン成分の反応溶液中での合計濃度が1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることがよく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0064】
このようにして重合されたポリイミド前駆体は、例えば、下記式[a]で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0065】
【化10】
(式[a]中、R11は、原料のテトラカルボン酸成分に由来する4価の有機基であり、R12は、原料のジアミン成分に由来する2価の有機基であり、A11およびA12は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なってもよく、jは正の整数を示す。)
【0066】
上記式[a]において、R11およびR12がそれぞれ1種類であり同一の繰り返し単位を有する重合体でもよく、また、R11やR12が複数種であり異なる構造の繰り返し単位を有する重合体でもよい。
【0067】
上記式[a]において、R11は原料である下記式[c]等で示されるテトラカルボン酸成分に由来する基である。また、R12は原料である下記式[b]等で示されるジアミン成分に由来する基、例えば、R12が上記式(1)で表されるジアミン化合物由来の基であれば、ベンゼン環に2つ結合手を有するC−Y−Y−OCO−CH=CH−O−Y−Y−Yである。
【0068】
【化11】

(式[b]および式[c]中、R11およびR12は、式[a]で定義したものと同じである。)
【0069】
そして、このようなポリイミド前駆体を脱水閉環させることにより、ポリイミドが得られる。
【0070】
ポリイミド前駆体をイミド化させる方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化またはポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
【0071】
ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100℃〜400℃、好ましくは120℃〜250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0072】
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミンまたはトリオクチルアミンなどを挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸または無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0073】
なお、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル等のポリイミド前駆体や、ポリイミドの反応溶液から、生成したポリイミド前駆体やポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼンまたは水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させたポリイミド前駆体やポリイミドは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収したポリイミド前駆体やポリイミドを、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2〜10回繰り返すと、ポリイミド前駆体やポリイミド中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類または炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0074】
ポリイミドのアミド酸基の脱水閉環率(イミド化率)は必ずしも100%である必要はなく、0%から100%の範囲で用途や目的に応じて任意に選ぶことが出来るが、30%〜80%が好ましい。
【0075】
ポリアミドもポリアミック酸エステル同様にして合成することができる。
【0076】
本発明のポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドの分子量は、得られる重合体被膜(液晶配向膜)の強度、重合体被膜形成時の作業性、重合体被膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000〜1,000,000とするのが好ましく、より好ましくは、10,000〜150,000である。
【0077】
本発明の液晶配向剤は、上記式[I]で表される構造を側鎖として有する本発明のポリアミック酸、ポリアミック酸エステル等のポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドを含有するものである。液晶配向剤とは液晶配向膜を形成するための溶液であり、液晶配向膜を形成するための重合体成分を有機溶媒に分散または溶解した溶液である。なお、液晶配向膜とは液晶を所定の方向に配向させるための膜である。そして、本発明においては、上記重合体成分として、本発明の上記ポリイミド前駆体、ポリイミド及びポリアミドから選択される少なくとも一種を含有する。
【0078】
本発明の液晶配向剤において、含有する重合体成分は、全てが本発明の上記ポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドであってもよく、また、本発明の上記ポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドに、その他の重合体が混合されていてもよい。重合体成分としてその他の重合体を含有する場合、重合体成分全量におけるその他の重合体の含有量は0.5質量%〜80質量%、好ましくは40質量%〜80質量%である。
【0079】
このようなその他の重合体としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物成分やジカルボン酸等と反応させるジアミン成分として、本発明の上記式[I]で表される構造を側鎖として有するジアミン以外のジアミンのみを使用して得られるポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドなどが挙げられる。さらには、ポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミド以外の重合体、具体的には、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリシロキサンや、ポリスチレンなども挙げられる。
【0080】
本発明の液晶配向剤において、本発明のポリイミド前駆体、ポリイミド及びポリアミドから選択される少なくとも一種、及び、必要に応じて混合するその他の重合体の含有割合は、重合体成分全量で1質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは3質量%〜15質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。
【0081】
本発明の液晶配向剤が含有する溶媒は、本発明のポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミド等の重合体成分を溶解できる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0082】
本発明の液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向剤を塗布した際の重合体被膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる有機溶媒(貧溶媒ともいわれる)または化合物を含有してもよい。さらに、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などを含有してもよい。
【0083】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる貧溶媒の具体例としては、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステルまたは乳酸イソアミルエステルなどの低表面張力を有する有機溶媒などが挙げられる。
【0084】
これらの貧溶媒は1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上記のような溶媒を用いる場合は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。
【0085】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、F173、R−30(大日本インキ製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子製)などが挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤に含有される重合体成分の100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0086】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物としては、官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物が挙げられ、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンまたはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0087】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、液晶配向剤に含有される重合体成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。使用量が0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶の配向性が悪くなる場合がある。
【0088】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、さらには、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物を添加してもよい。
【0089】
本発明の液晶配向剤は、基板上に塗布、焼成した後、光照射で配向処理をして、液晶配向膜として用いることができる。このような本発明の液晶配向膜は、上記式[I]で表される構造を側鎖として有するポリイミド前駆体、ポリイミドやポリアミドを含有するため、バックライトによって液晶配向性能が劣化し難く、また、AC駆動による液晶配向性能が劣化し難いものである。なお、本発明の液晶配向剤は、上述した光照射で配向処理して形成した液晶配向膜(光配向膜)以外の用途でも用いることができる。具体的には、焼成した後、垂直配向用途などでラビング処理をして、もしくは、配向処理無しで形成した液晶配向膜として用いることができる。
【0090】
基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板なども用いることができる。プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO(Indium Tin Oxide)電極などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウェハなどの不透明な基板も使用でき、この場合の電極としてはアルミなどの光を反射する材料も使用できる。また、TFT型の素子のような高機能素子においては、液晶駆動のための電極と基板の間にトランジスタの如き素子が形成されたものが用いられる。
【0091】
液晶配向剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷またはインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法またはスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0092】
液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブンまたはIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により50〜300℃、好ましくは80〜250℃で溶媒を蒸発させて液晶配向膜(重合体被膜)とすることができる。焼成後の液晶配向膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜100nmである。液晶を、垂直配向、水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成後の液晶配向膜に、偏光紫外線等の放射線を照射する、または、ラビング処理をすればよい。
【0093】
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製し、液晶表示素子としたものである。一例を挙げるならば、対向するように配置された2枚の基板と、基板間に設けられた液晶層と、基板と液晶層との間に設けられ本発明の液晶配向剤により形成された上記液晶配向膜とを有する液晶セルを具備する液晶表示素子である。このような本発明の液晶表示素子としては、垂直配向(VA:Vertical Alignment)方式、ツイストネマティック(TN:Twisted Nematic)方式や、水平配向(IPS:In-Plane Switching)方式、OCB配向(OCB:Optically Compensated Bend)等、種々のものが挙げられる。なお、液晶配向膜は、2枚の基板のうち、少なくとも一方に設けられていればよい。
【0094】
本発明の液晶表示素子に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されないが、通常は、基板上に液晶を駆動するための透明電極が形成された基板である。具体例としては、上記液晶配向膜で記載した基板と同様のものを挙げることができる。
【0095】
また、液晶配向膜は、この基板上に本発明の液晶配向剤を塗布した後焼成し、必要に応じて偏光紫外線等の放射線を照射することにより形成されるものであり、詳しくは上述したとおりである。
【0096】
本発明の液晶表示素子の液晶層を構成する液晶材料は特に限定されず、正の誘電異方性を有するポジ型液晶や負の誘電異方性を有するネガ型液晶を用いることができる。具体例としては、従来の垂直配向方式で使用される液晶材料、例えばメルク社製のMLC−6608、MLC−6609などを用いることができる。
【0097】
液晶セル作製の一例を挙げるならば、液晶配向膜の形成された1対の基板を用意し、一方の基板の液晶配向膜上にビーズ等のスペーサーを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう一方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサーを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが例示できる。このときのスペーサーの厚みは、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmである。
【0098】
以上のようにして、本発明の液晶配向剤を用いて作製された液晶表示素子は、バックライトの照射による液晶配向性能の劣化が抑制された液晶配向膜を有するため、長期間表示特性に優れたものとなる。また、長期間ACを印加して駆動しても液晶配向性能の劣化が抑制された液晶配向膜を有するため、長期間ACで駆動しても焼き付きが生じにくい液晶表示素子となる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例に基づいてさらに詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0100】
本実施例で使用した略号は以下のとおりである。
(テトラカルボン酸二無水物)
CBDA:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
【0101】
(ジアミン)
DA−1:下記式で表される(E)−3,5−diaminobenzyl 3−(4−(trans−4−heptylcyclohexyl)phenoxy)acrylate
DA−2:下記式で表される(E)−3,5−diaminobenzyl 3−(4−(trans−4’−pentyl−[1,1’−bi(cyclohexan)]−4−yl)phenoxy)acrylate
PCH:1,3−ジアミノ−4−[4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ]ベンゼン
【0102】
【化12】
【0103】
(有機溶媒)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
【0104】
<ポリマー分子量測定>
ポリマー(ポリアミック酸等)の分子量はセンシュー科学社製 常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(SSC−7200)、Shodex社製カラム(KD−803、KD−805)を用い以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・HO)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量約900,000、150,000、100,000、30,000)、および、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)。
【0105】
<合成例1>DA−1((E)-3,5-diaminobenzyl 3-(4-(trans-4-heptylcyclohexyl)phenoxy)acrylate)の合成
【0106】
【化13】
(上記反応式中、シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である。)
【0107】
1L四つ口フラスコに、化合物[A](11.00g、55.5mmol)、トリフェニルホスフィン(16.02g、61.1mmol)、テトラヒドロフラン(80g)(以下、THFとも表記)を加え、窒素置換した後、反応溶液を0℃に冷却した。そこに、プロピオール酸[B](4.67g、66.6mmol)、アゾジカルボン酸イソプロピル(12.34g、61.1mmol)、THF(120g)の混合溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、反応溶液を23℃に戻し、さらに撹拌を行なった。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で反応追跡を行い、反応終了確認後、エバポレーターで溶媒を留去して化合物[C]の粗物を得た。
【0108】
次に、上記で得られた化合物[C]に化合物[D](15.23g、55.5mmol)及びTHF(140g)を加え、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(以下、DABCOとも表記)(622mg、5.55mmol)を加え、23℃で撹拌を行なった。HPLCで反応追跡を行い、反応終了確認後、10wt%水酸化ナトリウム水溶液200gを加え、酢酸エチル(200mL)/ヘキサン(600mL)混合溶液で抽出した。水層を除去した後、飽和食塩水(500g)で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、エバポレーターで溶媒を留去し、化合物[E]の粗物を得た。その後、得られた化合物[E]の粗物に2−プロパノール(以下、IPAとも表記)(200g)を加え30分加熱撹拌を行なった後、30℃まで放冷し、ろ過、減圧乾燥を行い、化合物[E]を得た(15.4g、収率53%)。得られた化合物[E]をNMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):9.01(1H, t), 8.57-8.56(2H, m), 7.88(1H, d), 7.23-7.01(2H, m), 7.01-6.98(2H, m), 5.58(1H, d), 5.35(2H, s), 2.53-2.44(1H, m), 1.88-1.85(4H, m), 1.49-1.00(17 m), 0.89(3H, t).
【0109】
500mL四つ口フラスコに、化合物[E](14.81g、28.2mmol)、鉄分(9.46g、169mmol)、10wt%塩化アンモニウム水溶液(45g)、酢酸エチル(130g)を加え、70℃で加熱撹拌を行なった。HPLCで反応を追跡し、反応終了確認後、固形分をセライトろ過で除去し、酢酸エチルと蒸留水で洗浄した。ろ液を分析し、水層を除去した後、有機層を蒸留水(500g)で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、エバポレーターで溶媒を留去して化合物DA−1の粗物を得た。この粗物にメタノール(30g)を加え、30分室温撹拌した後、ろ過、メタノール洗浄を行い減圧乾燥し、化合物DA−1を得た(9.9g、収率76%)。得られた化合物DA−1をNMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.81(1H, d), 7.20-7.18(2H, m), 6.98-6.96(2H, m), 6.11(2H, d), 5.98(1H, t), 5.54(1H, m), 4.99(2H, s), 3.60(4H, brs), 2.48-2.42(1H, m), 1.87-1.85(4H, m), 1.42-1.20(14H, m), 1.08-0.99(3H, m), 0.89-0.87(3H, m).
【0110】
<合成例2>DA−2((E)-3,5-diaminobenzyl 3-(4-(trans-4'-pentyl-[1,1'-bi(cyclohexan)]-4-yl)phenoxy)acrylate)の合成
【0111】
【化14】
(上記反応式中、シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である。)
【0112】
200mL四つ口フラスコに、プロピオール酸[B](3.23g、46.2mmol)、及びN,N’−ジメチルホルムアミド(40g)(以下、DMFと表記)を加え、23℃で撹拌しながら、炭酸水素ナトリウム(7.76g、92.4mmol)を粉末のまま少しずつ加え、30分室温で撹拌を行なった。その後、溶液を50℃に加熱し、3,5−ジニトロベンジルクロリド[F](10.00g、46.2mmol)のDMF(60g)溶液を徐々に滴下した。HPLCで反応追跡を行い、反応終了後、酢酸エチル(600g)、ヘキサン(200g)、および蒸留水(600g)を加え、分液操作を行い、水層を除去した。有機層を蒸留水(500g)で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、エバポレーターで溶媒を留去し、化合物[C]を得た(11.05g、収率96%)。得られた化合物[C]をNMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):9.06-9.05(1H, m), 8.60-8.59(2H, m), 5.41(2H, s), 3.04(1H, s).
【0113】
200mL四つ口フラスコに、化合物[C](11.05g、44.2mmol)、化合物[G](14.51g、44.2mmol)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(495mg、4.42mmol)及びテトラヒドロフラン(140g)を加え、23℃で撹拌した。HPLCで反応追跡を行い、反応終了後、10wt%水酸化ナトリウム水溶液(100g)を加え、さらに酢酸エチル(200g)を加え、分液操作により、水層を除去した。有機層を飽和食塩水(500g)で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、エバポレーターで溶媒を留去して化合物[H]の粗物を得た。この粗物に2−プロパノール(180g)を加え、30分加熱還流撹拌を行なった後、40℃まで冷却し、ろ過、IPA洗浄を行った後、減圧乾燥を行い、化合物[H]を得た(25.3g、収率98%)。得られた化合物[H]をNMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):9.00(1H, t), 8.57-8.56(2H, m), 7.88(1H, d), 7.22-7.21(2H, m), 7.00-6.98(2H, m), 5.58(1H, d), 5.36(2H, s), 2.50-2.37(1H, m), 1.94-0.84(30H, m).
【0114】
500mL四つ口フラスコに、化合物[H](25.3g、44.2mmol)、鉄分(14.80g、265mmol)、10wt%塩化アンモニウム水溶液(71g)、酢酸エチル(230g)を加え、70℃で加熱撹拌を行なった。HPLCで反応を追跡し、反応終了確認後、固形分をセライトろ過で除去し、酢酸エチルと蒸留水で洗浄した。ろ液を分析し、水層を除去した後、有機層を蒸留水(500g)で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、エバポレーターで溶媒を留去して化合物DA−2の粗物を得た。この粗物にメタノール(50g)を加え、30分室温撹拌した後、ろ過、メタノール洗浄を行い減圧乾燥し、化合物DA−2を得た(14.7g、収率64%)。得られた化合物DA−2をNMRで測定した結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):7.81(1H, d), 7.20-7.18(2H, m), 6.98-6.96(2H, m), 6.11(2H, d), 5.98(1H, t), 5.54(1H, m), 4.99(2H, s), 3.59(4H, brs), 2.53-2.38(1H, m), 1.87-0.90(30H, m).
【0115】
<合成例3>DA−3の合成
特許文献1の合成例1−1に従って、DA−3を合成した。
【0116】
<合成例4>DA−4の合成
特表2001−517719号公報の実施例1に従って、DA−4を合成した。
【0117】
<液晶配向剤A1の作成>
CBDA(0.288g、1.50mmol)及びDA−1(0.697g、1.5mmol)をNMP(5.58g)中で混合し、室温で10時間反応させ、ポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液に、BCS(4.93g)及びNMP(4.93g)を加えポリアミック酸濃度を6質量%に希釈し、室温で5時間攪拌することにより、液晶配向剤A1を得た。このポリアミック酸の数平均分子量は14000、重量平均分子量は74000であった。
【0118】
<液晶配向剤A2の作成>
CBDA(0.485g、2.50mmol)及びDA−2(1.297g、2.5mmol)をNMP(10.1g)中で混合し、室温で10時間反応させ、ポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液に、BCS(8.91g)及びNMP(8.91g)を加えポリアミック酸濃度を6質量%に希釈し、室温で5時間攪拌することにより、液晶配向剤A2を得た。このポリアミック酸の数平均分子量は3500、重量平均分子量は5300であった。
【0119】
<液晶配向剤A3の作成>
CBDA(0.485g、2.50mmol)及びDA−3(1.052g、2.5mmol)をNMP(8.71g)中で混合し、室温で10時間反応させ、ポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液に、BCS(7.68g)及びNMP(7.68g)を加えポリアミック酸濃度を6質量%に希釈し、室温で5時間攪拌することにより、液晶配向剤A3を得た。このポリアミック酸の数平均分子量は5500、重量平均分子量は13000であった。
【0120】
<液晶配向剤A4の合成>
CBDA(1.537g、7.8mmol)、DA−4(2.832g、6.4mmol)、PCH(0.609g、1.6mmol)をNMP(19.91g)中で混合し、室温で10時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液に、NMP(33.19g)及びBCS(24.89g)を加えポリアミック酸濃度を6質量%に希釈し、室温で5時間攪拌することにより液晶配向剤A4を得た。このポリアミック酸の数平均分子量は12000、重量平均分子量は24000であった。
【0121】
<実施例1>
液晶配向剤A1を用いて、下記に示す手順により液晶配向膜を作製し、UV(紫外線)吸収スペクトルを測定した。また、液晶配向剤A1を用いて、下記に示す手順で液晶セルを作製し、プレチルト角の評価、AC(交流)焼き付きの評価及びバックライト耐性の評価を行った。
【0122】
[UV吸収スペクトルの測定]
液晶配向剤A1を石英基板にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。この液晶配向膜が形成された基板を、島津製作所製UV−3600を用いてUV吸収スペクトルを測定し、最大吸収波長(λmax)を求めた。結果を表1に示す。
【0123】
[液晶セルの作製]
液晶配向剤A1を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板のITO膜が形成された面にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。この液晶配向膜が形成された基板に対して、照射強度2.0mW/cm−2の254nmの直線偏光UVを、露光量0〜1000mJの間で変化させ、照射した。入射光線の方向は基板法線方向に対して40°傾斜していた。直線偏光UVは高圧水銀ランプの紫外光に254nmのバンドパスフィルターを通した後、254nmの偏光板を通すことで調製した。
【0124】
上記の基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜上に4μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(協立化学製 XN−1500T)を印刷した。次いで、2枚の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板への直線偏光UVの光軸の投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で105分かけてシール剤を熱硬化させた。この空セルにネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を減圧注入法によって注入し、120℃のオーブン中でIsotropic処理(加熱による液晶の再配向処理)を行い、液晶セルを作製した。
【0125】
[プレチルト角の評価]
液晶セルのプレチルト角を、Axo Metrix社製の「Axo Scan」を用いてミューラーマトリックス法により測定した。結果を表1に示す。
【0126】
[AC焼き付きの評価]
液晶セル作製後、プレチルト角を測定した液晶セルを16Vppの交流電圧にて240時間駆動後、駆動停止してから1時間後に再び液晶セルのプレチルト角を測定し、AC駆動前後でのプレチルト角の変化を評価した。AC駆動前後でのプレチルト角の変化(ACΔangle=AC駆動前のプレチルト角−AC駆動後のプレチルト角)が0.2°未満であるときAC焼き付き特性が良好であると判断した。ACΔangleを表1に示す。
【0127】
[バックライト耐性の評価]
液晶セル作製後、プレチルト角を測定した液晶セルを、40inch型液晶TV用(波長400〜800nm)バックライト(BL)上にて240時間放置(エージング)した後、BL上からはずして1時間後に再び液晶セルのプレチルト角を測定し、エージング前後でのプレチルト角の変化を評価した。エージング前後でのプレチルト角の変化(BLΔangle=BL照射前のプレチルト角−BL照射後のプレチルト角)が0.1°未満であるときBL耐性が良好であると判断した。BLΔangleを表1に示す。
【0128】
<実施例2>
液晶配向剤A1のかわりに液晶配向剤A2を用いた以外は実施例1と同様にして、液晶配向膜を作製し、得られた液晶配向膜のUV吸収スペクトルを測定した。
【0129】
また、液晶配向剤A1のかわりに液晶配向剤A2を用いた以外は実施例1と同様にして液晶セルを作製し、得られた液晶セルについて、プレチルト角の評価、AC焼き付きの評価及びバックライト耐性の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0130】
<比較例1>
液晶配向剤A1のかわりに液晶配向剤A3を用いた以外は実施例1と同様にして、液晶配向膜を作製し、得られた液晶配向膜のUV吸収スペクトルを測定した。
【0131】
また、液晶配向剤A1のかわりに液晶配向剤A3を用い、また、直線偏光UVの照射波長を313nmに変更した以外は実施例1と同様にして、液晶セルを作製し、得られた液晶セルについて、プレチルト角の評価、AC焼き付きの評価及びバックライト耐性の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0132】
<比較例2>
液晶配向剤A1のかわりに液晶配向剤A4を用いた以外は実施例1と同様にして、液晶配向膜を作製し、得られた液晶配向膜のUV吸収スペクトルを測定した。
【0133】
また、液晶配向剤A1のかわりに液晶配向剤A4を用い、また、直線偏光UVの照射波長を313nmに変更した以外は実施例1と同様にして、液晶セルを作製し、得られた液晶セルについて、プレチルト角の評価、AC焼き付きの評価及びバックライト耐性の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
上記表1の結果から、本発明の式[I]で表される構造を側鎖に有する重合体を用いた実施例1及び実施例2の液晶表示素子は、プレチルト角が高い、すなわち高い垂直配向能を有するためか、AC駆動前後でプレチルト角の変化が少なく、良好なAC焼き付き特性を示すことが確認された。また、本発明の式[I]で表される構造は低波長領域である254nm付近にUV吸収帯を持つためか、実施例1及び実施例2の液晶表示素子は、バックライトからの影響を受けにくく、長時間バックライト上で暴露されてもプレチルト角の変化をほとんど起こさないことが確認された。一方、従来のシンナモイル基を有するジアミンを用いた比較例1及び比較例2は、300nm付近に吸収を持つためか、バックライトの影響を受けやすく、長期間バックライトにさらされると徐々にプレチルト角の変化を起こすことがわかった。