【文献】
近藤 浩夫, ほか9名,「IFMIF液体金属リチウムターゲット流に関する実験研究」,プラズマ・核融合学会誌,日本,社団法人プラズマ・核融合学会,2008年 9月25日,Vol. 84, No. 9,p. 600-605
【文献】
近藤 浩夫, ほか9名,IFMIF液体金属リチウムターゲット流に関する実験研究,プラズマ・核融合学会誌,日本,社団法人プラズマ・核融合学会,2008年 9月25日,Vol. 84, No. 9,600-605ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体金属を噴射するノズルと当該ノズルから噴射した液体金属を受ける受け部とを有すると共に、前記ノズルと受け部との間の陽子ビームの照射空間に液体金属ターゲットを形成するターゲット形成部と、
起動又は停止時に、前記ノズル及び受け部を液体金属の噴出方向であって且つノズル先端がターゲット形成位置から受け部に至るまで相対移動させるように、前記ノズル及び受け部の一方又は双方を支持する第一の移動支持手段と、
前記ノズル側又は受け部側に設けられ且つ液体金属の噴出方向に伸縮可能な伸縮筒体と、
を備えたことを特徴とする液体金属ターゲット形成装置。
液体金属を噴射するノズルと当該ノズルから噴射した液体金属を受ける受け部とを有すると共に、前記ノズルと受け部との間の陽子ビームの照射空間に液体金属ターゲットを形成するターゲット形成部と、
前記ノズル及び受け部との間の下方に配置されると共に、前記ノズル及び受け部の間隔より長く且つ前記ターゲットの幅より広い幅を有するトレイと、
前記陽子ビームの照射時に前記トレイを前記ノズル及び受け部との間の下方から退避させる退避手段と、
を備え、
前記ノズルは、前記受け部と水平に配置されることを特徴とする液体金属ターゲット形成装置。
液体金属を噴射するノズルと当該ノズルから噴射した液体金属を受ける受け部とを有すると共に、前記ノズルと受け部との間の陽子ビームの照射空間に液体金属ターゲットを形成するターゲット形成部と、
前記受け部側に設けられ且つ液体金属の噴出方向に伸縮可能な伸縮筒体と、
起動又は停止時に、当該伸縮筒体の先端をターゲット形成位置からノズル先端に至るまで移動可能に支持する第二の移動支持手段と、
を備えたことを特徴とする液体金属ターゲット形成装置。
液体金属を噴射するノズルと当該ノズルから噴射した液体金属を受ける受け部とを有すると共に、前記ノズルと受け部との間の陽子ビームの照射空間に液体金属ターゲットを形成するターゲット形成部と、
起動又は停止時に前記ノズル及び受け部を前記液体金属の噴出方向が鉛直方向になる姿勢に移動させる第三の移動支持手段と、
を備えたことを特徴とする液体金属ターゲット形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体金属ループ900の運転を開始すると、バックプレート905上に液体リチウムが流れ、液体リチウムの膜流が形成される。液体リチウムはその噴射時には遠心力が働かないことから、ターゲット形成部901の周囲にこぼれたり或いは飛散するという問題点があった。この発明はかかる問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係る液体金属ターゲット形成装置は、液体金属を噴射するノズルと当該ノズルから噴射した液体金属を受ける受け部とを有すると共に、前記ノズルと受け部との間の陽子ビームの照射空間に液体金属ターゲットを形成するターゲット形成部と、前記ノズル及び受け部を液体金属の噴出方向であって且つノズル先端がターゲット形成位置から受け部に至るまで相対移動させるように、前記ノズル及び受け部の一方又は双方を支持する第一の移動支持手段と、前記ノズル側又は受け部側に設けられ且つ液体金属の噴出方向に伸縮可能な伸縮筒体とを備えたことを特徴とする。
【0006】
この発明ではターゲット形成装置の起動又は停止時において、前記第一の移動支持手段によりノズルと受け部とを当該ノズル先端が受け部に至るように相対移動させる。ノズルと受け部との相対移動は伸縮筒体により吸収される。これにより、ノズルから噴出する液体金属が受け部に直接噴射される。起動時には、ノズル先端を受け部に近づけておき、液体金属の噴射の勢いが安定したら前記第一の移動支持手段により受け部から前記ノズルをターゲット形成位置まで離す。停止時には、移動支持手段によりノズルを受け部まで近づけてから停止する。このようにすれば、液体金属がこぼれたり飛散することがない。
【0007】
第2の発明に係る液体金属ターゲット形成装置は、液体金属を噴射するノズルと当該ノズルから噴射した液体金属を受ける受け部とを有すると共に、前記ノズルと受け部との間の陽子ビームの照射空間に液体金属ターゲットを形成するターゲット形成部と、前記ノズル及び受け部との間の下方に配置されると共に、前記ノズル及び受け部の間隔より長く且つ前記ターゲットの幅より広い幅を有するトレイと、前記トレイを前記ノズル及び受け部との間の下方から退避させる退避手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この発明ではターゲット形成装置の起動又は停止時において、ノズルから噴出した液体金属がノズルと受け部との間にこぼれ落ちても前記トレイにより受けられる。陽子ビームの照射時は、前記退避手段によりトレイをノズル及び受け部の間の下方から退避させる。このようにすれば、液体金属がこぼれたり或いは飛散することがない。
【0009】
第3の発明に係る液体金属ターゲット形成装置は、液体金属を噴射するノズルと当該ノズルから噴射した液体金属を受ける受け部とを有すると共に、前記ノズルと受け部との間の陽子ビームの照射空間に液体金属ターゲットを形成するターゲット形成部と、前記受け部側に設けられ且つ液体金属の噴出方向に伸縮可能な伸縮筒体と、当該伸縮筒体の先端をターゲット形成位置からノズル先端に至るまで移動可能に支持する第二の移動支持手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明ではターゲット形成装置の起動又は停止時において、前記第二の移動支持手段により伸縮筒体の先端をノズル先端まで移動させる。先端の移動により伸縮筒体が伸びて受け部とノズル先端とが伸縮筒体により接続される。このため、ノズルから噴出した液体金属がノズルと受け部との間にこぼれ落ちても前記伸縮筒体により受けられる。液体金属の噴射の勢いが安定したら前記第二の移動支持手段により伸縮筒体の先端を前記ノズルからターゲット形成位置まで離す。停止時には、移動支持手段により伸縮筒体の先端をノズル先端まで近づけてから停止する。このようにすれば、液体金属がこぼれたり飛散することがない。伸縮筒体は、例えばベローズやテレスコ構造の筒体である。
【0011】
第4の発明に係る液体金属ターゲット形成装置は、液体金属を噴射するノズルと当該ノズルから噴射した液体金属を受ける受け部とを有すると共に、前記ノズルと受け部との間の陽子ビームの照射空間に液体金属ターゲットを形成するターゲット形成部と、前記ノズル及び受け部を前記液体金属の噴出方向が鉛直方向になる姿勢に移動させる第三の移動支持手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この発明ではターゲット形成のための装置の起動又は停止時において、前記第三の移動支持手段によりノズル及び受け部を前記液体金属の噴出方向が鉛直方向になる姿勢に移動させる。この状態で液体金属を噴出することで液体金属は受け部に鉛直に落下するので、液体金属がこぼれることがない。液体金属の噴射の勢いが安定したら前記第三の移動支持手段によりノズル及び受け部を所定位置(水平方向等)に移動させる。停止時には、第三の移動支持手段により、液体金属を噴出した状態で前記姿勢に移動させ、液体金属が受け部に鉛直に落下する状態にする。この状態で液体金属の噴出を停止しても、ノズル先端からこぼれる液体金属は受け部に落ちる。係る構成によれば、液体金属がこぼれたり飛散することがない。
【0013】
第5の発明に係る中性子発生装置は、上記いずれか一つに記載の液体金属ターゲット形成装置を有することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかる液体金属ループを示す構成図であり、(a)は起動及び停止時、(b)は運転時の状態を示す。この液体金属ループ100は、液体リチウムのターゲットTを形成するターゲット形成部1と、ターゲット形成部1に接続されたクエンチタンク2と、クエンチタンク2から延出した配管4に接続した循環ポンプ3とを備え、循環ポンプ3から延出した配管4は再びターゲット形成部1に接続される。
【0016】
このターゲット形成部1は、陽子ビームBの照射領域を横切るように液体リチウムを平面的に噴射するノズル11と、噴射された液体リチウムを受ける受け部12とから構成される。ノズル11には、先端に例えば各辺が直線又は平滑な短冊状又は長方形の吐出口が形成される(図示省略)。この吐出口から高圧で噴射された液体リチウムは、膜状の噴流となり前記受け部12により緩衝されつつ受けられる。
【0017】
受け部12はクエンチタンク2の上部側面に対して略水平方向に接続されている。なお、受け部12は、配管を介してクエンチタンク2に接続されても良い。また、受け部12の開口は前記ノズル11の先端が挿入可能な形状及び寸法となる。ノズル11は液体リチウムの噴出方向に移動する移動支持部13により支持されている。この移動支持部13は、液体リチウムの噴出方向にレールが配置されたリニアガイド14のブロック15により、前記ノズル11を支持する構成である。その他、スライド式の直動ガイドを採用しても良い。ノズル11の移動は、油圧シリンダー或いはボールネジとサーボモータの組み合わせ等からなる直動アクチュエータにより行う(図示省略)。直動アクチュエータは、コントローラ16により制御される。
【0018】
また、ノズル11には、伸縮可能なベローズ17が前記液体リチウムの噴出方向に設けられている。このベローズ17の伸縮可能なスパンは、液体リチウムによるターゲット形成時におけるターゲット長に略等しい。ベローズ17は、複数のリング状部材から構成され、隣接するリング状部材の外周同士又は内周同士を溶接して伸縮可能な構造にしたものである。
【0019】
次に、この液体金属ループ100の動作について説明する。運転していない起動前や停止時においては、
図1(a)に示すように、ベローズ17が伸びて前記ノズル11の先端が受け部12に挿入された状態にある。この状態で前記循環ポンプ3を運転して液体リチウムをターゲット形成部1のノズル11に供給することで、当該ノズル11から液体リチウムが噴出する。起動時には液体リチウムがノズル11の吐出口から受け部12に直接噴射された状態になる。そして、噴射開始後、前記コントローラ16により前記直動アクチュエータを動かし、ベローズ17を縮め、ノズル11を受け部12から次第に離す。ノズル11の吐出口からは液体リチウムが所定の流速で噴出しているので、ノズル11を受け部12から離しても、液体リチウムがノズル11と受け部12との間にこぼれることがない。
【0020】
ノズル11はターゲットTを形成するための所定位置(ターゲット形成位置)まで移動して停止する。この状態で、ノズル11と受け部12との間に膜状の液体リチウムによる所定長さを持ったターゲットTが形成される。この膜状の液体リチウムのターゲットTに陽子ビームBを照射するとその背後に中性子Nが生成される。陽子ビームBの照射により加熱された液体リチウムは受け部12から入り、クエンチタンク2に導入される。
【0021】
一方、運転を停止する際は、コントローラ16が直動アクチュエータを駆動し、ベローズ17を伸ばしてノズル11を受け部12方向に移動させる。ノズル11の先端が受け部12に挿入された後、コントローラ16は、循環ポンプ3の運転を停止し、ノズル11への液体リチウムの供給を停止させる。ノズル11の吐出口から吐出を停止した際にこぼれる液体リチウムは受け部12により受けられるので、液体リチウムがノズル11と受け部12との間にこぼれることがない。
【0022】
上記のように、ターゲット形成部1は、ノズル11と受け部12との間に液体リチウムの噴流を飛ばしてターゲットTを形成するものであり、従来のように湾曲したバックウォールに液膜を形成する構成ではないので、当該ノズル11と受け部12との間に構造物がない。このため、起動時及び停止時においてノズル11と受け部12との間で液体リチウムがこぼれることになるところ、上記のように起動時及び停止時にノズル11の先端を受け部12に挿入しておくことで、これを防止できる。
【0023】
また、ターゲット形成部20を、
図2に示すように、受け部12が移動する形態としても良い。この液体金属ループ150では、
図2に示すように、受け部12とクエンチタンク2との間に上記同様の伸縮可能なベローズ17を配置する。ベローズ17の伸縮可能なスパンは、液体リチウムによるターゲット形成時におけるターゲット長に略等しい。受け部12は、上記同様の移動支持部13により支持される。
【0024】
この液体金属ループ150では、運転していない起動前や停止時においては、ベローズ17が伸びて前記受け部12がノズル11の先端に挿入された状態にある。起動時には、循環ポンプ3を運転して液体リチウムをターゲット形成部20のノズル11に供給することで、液体リチウムがノズル11の吐出口から受け部12に直接噴射される。そして、噴射開始後、前記コントローラ16により直動アクチュエータを動かしてベローズ17を縮め、受け部12をノズル11から次第に離す。液体リチウムは、ノズル11の吐出口から所定の流速で噴出しているので、受け部12をノズル11から離しても、液体リチウムがノズル11と受け部12との間にこぼれることがない。
【0025】
受け部12はターゲットTを形成するための所定位置(ターゲット形成位置)まで移動して停止する。この状態で、ノズル11と受け部12との間に膜状の液体リチウムによる所定長さを持ったターゲットTが形成される。この膜状の液体リチウムのターゲットTに陽子ビームBを照射するとその背後に中性子Nが生成される。陽子ビームBの照射により加熱された液体リチウムは受け部12から入り、ベローズ17内を通ってクエンチタンク2に導入される。
【0026】
一方、運転を停止する際は、コントローラ16が直動アクチュエータを駆動してベローズ17を伸ばし、受け部12をノズル11方向に移動させる。受け部12がノズル11の先端に挿入された後、コントローラ16は、循環ポンプ3の運転を停止し、ノズル11への液体リチウムの供給を停止させる。ノズル11の吐出口から吐出を停止したときにこぼれる液体リチウムは受け部12により受けられるので、液体リチウムがノズル11及び受け部12の間にこぼれることがない。
【0027】
(実施の形態2)
図3は、この発明の実施の形態2に係る液体金属ループを示す構成図であり、(a)は起動及び停止時、(b)は運転時の状態を示す。
図4は、この液体金属ループのターゲット形成部付近を示す平面図である。この液体金属ループ200は、液体リチウムのターゲットTを形成するターゲット形成部21と、ターゲット形成部21に接続されたクエンチタンク2と、クエンチタンク2から延出した配管4に接続した循環ポンプ3とを備え、循環ポンプ3から延出した配管4は再びターゲット形成部21に接続される。
【0028】
このターゲット形成部21は、陽子ビームBの照射領域を横切るように液体リチウムを平面的に噴射するノズル11と、噴射された液体リチウムを受ける受け部12とから構成される。ノズル11には、先端に例えば各辺が直線又は平滑な短冊状又は長方形の吐出口が形成される。この吐出口から高圧で噴射された液体リチウムは、膜状の噴流となる。噴流となった液体リチウムは受け部12により緩衝される。前記受け部12はクエンチタンク2の上部側面に対して水平方向に連結して接続されている。なお、受け部12は、配管4を介してクエンチタンク2に接続されても良い。
【0029】
ターゲット形成部21は、ノズル11と受け部12との間に液体リチウムの噴流を飛ばしてターゲットTを形成するものであるから当該ノズル11と受け部12との間に構造物がない。このため、起動時及び停止時においてノズル11と受け部12との間で液体リチウムがこぼれることになるので、こぼれ防止構造22をノズル11と受け部12との間の下方に設ける。
【0030】
こぼれ防止構造22は、短辺方向断面が凹状の樋状のトレイ23と、トレイ23を回動させる回動装置24と、トレイ23で受けた液体リチウムをクエンチタンク2に入れるドレン配管25とから構成される。トレイ23の長さは、ターゲットT形成時の前記ノズル11と受け部12との間隔より大きな寸法とする。トレイ23の幅は、形成されるターゲットT(ノズル11の吐出口)の幅より大きく設定する。また、トレイ23の端部には排出管26が設けられている。
【0031】
前記回動装置24は、液体リチウムへの磁力の影響がない油圧ロータリーアクチュエータを用いるのが好ましい。回転軸はトレイ23のノズル11側に設けられる。回動装置24への油圧供給等はコントローラ16により制御される。クエンチタンク2に接続するドレン配管25の先端は上方に曲げられその端部に受け皿27が設けられている。
【0032】
次に、この液体金属ループ200の動作について説明する。運転していない起動前や停止時においては、
図3(a)に示すように、トレイ23が液体リチウムの噴出方向に沿ってノズル11と受け部12との空間の下方に位置している。起動時に前記循環ポンプ3を運転して液体リチウムをターゲット形成部21のノズル11に供給すると、ノズル11から下方にこぼれた液体リチウムがトレイ23上に落ちる。トレイ23上の液体リチウムは、排出管26から排出され、受け皿27で集められてドレン配管25を通じてクエンチタンク2に導入される。
【0033】
起動後、一定時間経過すると、液体リチウムの噴流が膜状になり受け部12に直接入るようになる。液体リチウム噴流によりターゲットTが形成された後は、液体リチウムが下方にこぼれることはないので、
図3(b)に示すように、コントローラ16は回動装置24を駆動してトレイ23を90度回転させる。これにより、ターゲットTの下方からトレイ23が退避される。このターゲットTに陽子ビームBを照射するとその背後に中性子Nが生成される。陽子ビームBの照射により加熱された液体リチウムは受け部12から入り、クエンチタンク2に導入される。なお、陽子ビームBは、ターゲットTの上方及び下方のいずれの方向からでも照射できる。
【0034】
一方、運転を停止する際は、コントローラ16が回動装置24を駆動して、
図3(a)に示すように、前記トレイ23を90度回転させ再びターゲットTの下方に位置させる。この状態で前記コントローラ16は、循環ポンプ3の運転を停止し、ノズル11への液体リチウムの供給を停止させる。ノズル11の吐出口から吐出を停止したときにこぼれる液体リチウムはトレイ23により受けられ、クエンチタンク2に導入されるので、液体リチウムがノズル1と受け部12との間にこぼれることがない。
【0035】
(実施の形態3)
図5は、この発明の実施の形態3に係る液体金属ループを示す構成図であり、(a)は起動及び停止時、(b)は運転時の状態を示す。この液体金属ループ300は、実施の形態2の液体金属ループ200のこぼれ防止構造22をベローズ31により構成した点に特徴がある。この液体金属ループ300のこぼれ防止構造32は、伸縮自在のベローズ31により構成され、当該ベローズ31の一端が受け部12に接続され、他端31aが可動状態とされる。他端31aは、液体リチウムの噴出方向に移動する移動手段33により支持される。この移動手段33は、液体リチウムの噴出方向にレールが配置されたリニアガイド34のブロック35によりノズル11の他端を支持する構成である。その他、スライド式の直動ガイドを採用しても良い。ノズル11の移動は、油圧シリンダー或いはボールネジとサーボモータの組み合わせ等からなる直動アクチュエータにより行う。直動アクチュエータはコントローラ16により制御される。
【0036】
このベローズ31の伸縮可能なスパンは、液体リチウムによるターゲット形成時におけるターゲット長に略等しい。ベローズ31は、ターゲットTを囲むような複数のリング状部材から構成され、隣接するリング状部材の外周同士又は内周同士を溶接して伸縮可能な構造にした一般的なものである。
【0037】
次に、この液体金属ループ300の動作について説明する。運転していない起動前や停止時においては、
図5(a)に示すように、ベローズ31が伸び、その他端31aがノズル11の先端に挿入された状態になる。循環ポンプ3を運転して液体リチウムをターゲット形成部30のノズル11に供給すると、当該ノズル11から液体リチウムが噴出する。噴出時には液体リチウムが受け部12に直接届かないためベローズ31により受けられる。このため、液体リチウムがノズル11と受け部12との間にこぼれることがない。
【0038】
噴出から所定時間経過後、ノズル11と受け部12との間に膜状の液体リチウムによる所定長さを持ったターゲットTがベローズ31内に形成される。コントローラ16は、ベローズ31の他端31aを直動アクチュエータにより動かして当該他端31aをノズル11から離し、所定位置まで退避させる。これによりベローズ31の退避によりターゲットTが現れる。この膜状の液体リチウムのターゲットTに陽子ビームBを照射するとその背後に中性子Nが生成される。陽子ビームBの照射により加熱された液体リチウムは受け部12から入り、クエンチタンク2に導入される。
【0039】
一方、運転を停止する際は、コントローラ16が直動アクチュエータを駆動してベローズ31の他端31aをターゲットTに被せるように移動させる。ベローズ31の他端31aをノズル11の先端に被せた後、コントローラ16は、循環ポンプ3の運転を停止し、ノズル11への液体リチウムの供給を停止させる。ノズル11の吐出口から吐出を停止した際にこぼれる液体リチウムはベローズ31により受けられるので、液体リチウムがノズル11と受け部12との間にこぼれることがない。
【0040】
なお、上記ベローズ31に代えて、
図6に示すようなテレスコ構造の筒体36を用いても良い。この液体金属ループ350の場合、筒体36の一端が受け部12に接続され、他端36aが前記移動手段33により支持される。テレスコ構造の筒体36によりこぼれ防止構造32を構成した場合でも、
図6(a)に示すように、起動又は停止時に、筒体をノズル11まで伸ばして被せることで液体リチウムのこぼれを防止できる。運転時(ビーム照射時)には、
図6(b)に示すように、筒体36を縮めてターゲットTを露出し、陽子ビームBを照射する。かかる構成においても、上記同様の効果が得られる。
【0041】
(実施の形態4)
図7は、この発明の実施の形態4に係る液体金属ループを示す構成図であり、(a)は起動及び停止時、(b)は運転時の状態を示す。この液体金属ループ400は、液体リチウムのターゲットを形成するターゲット形成部40と、ターゲット形成部40から配管4を通して接続されたクエンチタンク2と、クエンチタンク2から延出した配管4に接続した循環ポンプ3とを備え、循環ポンプ3から延出した配管4は再びターゲット形成部40に接続される。
【0042】
このターゲット形成部40は、陽子ビームBの照射領域を横切るように液体リチウムを平面的に噴射するノズル11と、噴射された液体リチウムを受ける受け部12とから構成される。ノズル11には、先端に例えば各辺が直線又は平滑な短冊状又は長方形の吐出口が形成される。この吐出口から高圧で噴射された液体リチウムは、膜状の噴流となる。噴流となった液体リチウムは受け部12により緩衝される。
【0043】
また、ターゲット形成部40は、液体リチウムの噴出方向を水平方向と鉛直方向とに切り換え可能な構造である。具体的には、ノズル11及び受け部12は、水平方向に対して45度の角度を有する回転軸41に配管4を介して軸支されている。ノズル11及び受け部12に接続される配管4には、回転継ぎ手42が設けられる。回転継ぎ手42は、配管4上において、前記回転軸41を中心として回転可能な位置に設けられる。ターゲット形成部40の回転は、図示しないアクチュエータにより行う。
【0044】
次に、この液体金属ループ400の動作について説明する。運転していない起動前や停止時においては、
図7(a)に示すように、ターゲット形成部40の液体金属の噴出方向が鉛直方向となるように前記ノズル11及び受け部12が鉛直方向に位置する。循環ポンプ3を運転して液体リチウムをターゲット形成部40のノズル11に供給することで、当該ノズル11から液体リチウムが下方に噴出する。下方には受け部12が位置しているため、噴出時には液体リチウムが受け部12に直接落ちることになる。このため、液体リチウムがこぼれることがない。
【0045】
噴出から所定時間経過後、ノズル11と受け部12との間に膜状の液体リチウムによるターゲットTが形成される。コントローラ16は、
図7(b)に示すように、アクチュエータを駆動して前記ターゲット形成部40の液体リチウムの噴出方向が水平方向になるまで前記ノズル11及び受け部12を前記回転軸41を中心として回転させる。液体リチウムは高速で噴出しているので、回転させても噴出状態を維持できる。そして水平方向となったターゲットTに陽子ビームBを照射するとその背後に中性子Nが生成される。陽子ビームBの照射により加熱された液体リチウムは受け部12から入り、クエンチタンク2に導入される。
【0046】
一方、運転を停止する際は、コントローラ16がアクチュエータを駆動し、前記回転軸41を中心にターゲット形成部40を再び回転させ、液体リチウムの噴出方向が鉛直方向となるようにする。この状態で、コントローラ16は、循環ポンプ3の運転を停止し、ノズル11への液体リチウムの供給を停止させる。ノズル11の吐出口から吐出を停止したときにこぼれる液体リチウムはそのまま受け部12に落下して受けられるので、液体リチウムがこぼれることがない。
【0047】
また、
図7(a)に示す状態において、水平方向から陽子ビームBを照射することで中性子Nを発生させても良い。この場合、患者は座った又は立った状態で治療を受けることになる。例えば、顔や体の側面の治療を行う際に有用である。
【0048】
なお、上記実施の形態1〜4のターゲット形成部は、陽子ビームBを照射することで中性子Nを発生させる中性子発生装置と観念できる。また、液体金属は、上記実施の形態において開示した液体リチウムに限定されない。