(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143225
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】地盤応力センサおよび土圧検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
G01L5/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-129950(P2013-129950)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-4585(P2015-4585A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000210908
【氏名又は名称】中央開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】内村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】王 林
(72)【発明者】
【氏名】西江 俊作
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼古 一郎
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−028031(JP,U)
【文献】
特開2008−157830(JP,A)
【文献】
米国特許第04543820(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表から地中に向けて挿入可能で、平面形状が略長方形をした板状の計測本体部と、
地表から地中に向けて挿入可能で、地中への挿入方向に対して反対側の一方が前記計測本体部に固定され、他方が自由端になっており、前記地中側から受ける外力によって前記計測本体部に対して弾性変形可能な片持支持部と、
前記片持支持部における前記計測本体部の支持端側に形成され、前記片持支持部における自由端側の厚みよりも薄く形成された薄肉部と、
前記薄肉部に固定され、前記外力による前記片持支持部が弾性変形する際の前記薄肉部のひずみを電気的に検出するひずみゲージと、
を備えたことを特徴とする地盤応力センサ。
【請求項2】
前記薄肉部は、前記計測本体部の挿入方向に対して直交する方向に延びる溝を利用して形成されており、前記ひずみゲージは、前記溝の底部に対応する前記薄肉部の外面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の地盤応力センサ。
【請求項3】
前記ひずみゲージは、前記溝に充填されたシール剤によって覆われていることを特徴とする請求項2に記載の地盤応力センサ。
【請求項4】
前記計測本体部の挿入端部側は、先端にいくにつれて先細りとなる形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の地盤応力センサ。
【請求項5】
前記計測本体部と前記片持支持部とは、一つの金属部材を加工することにより一体形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の地盤応力センサ。
【請求項6】
前記計測本体部と前記片持支持部との間には、前記片持支持部が前記計測本体部側に変位可能とする干渉防止隙間が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の地盤応力センサ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の地盤応力センサを地表側から地中に挿入することで構成される土圧検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地すべり層などにおける土圧の変化を計測するための地盤応力センサおよび地盤応力センサを用いた地圧検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地すべりなどの災害を未然に予知するには、地すべり層における土圧の変化を計測する必要があり、従来から土圧変化の計測に関連する技術として種々の技術が知られている(例えば特許文献1〜3参照。)。特許文献1の土圧計は、土圧受圧部を介して起歪体の軸心方向に沿って土圧を伝え、周辺の土圧の影響を少なくするようにしている。特許文献2の技術は、光ファイバを用いた河床洗掘・流速センサにより反射波長を歪み量に変換し、土圧または水圧を検出するようにしている。特許文献3の技術は、可撓性のボーリングロッドに光ファイバセンサを取り付け、ボーリングロッドの掘削軌跡を、光ファイバセンサを通過する光の物理値の変化により測定される歪み量に基づいて検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−97787号公報
【特許文献2】特開2004−163219号公報
【特許文献2】特開2005−156369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の土圧計は、土圧受圧部を介して起歪部の軸心方向に沿って土圧を伝えるので、起歪部の外周面に張り付けられた歪ゲージによって土圧の変化を敏感に捉えることが難しく、土圧の僅かな変化に対して感度が悪いという問題がある。また、特許文献2、3の技術は、光ファイバを用いるので、光ファイバの過度の屈曲などによって計測精度が変化し、計測現場での取扱いが不便であるという問題がある。さらに、地すべりの兆候は、地中の含水率を計測する水分量計を用いることでも把握可能であるが、水分量計は非常に高価であり、計測コストが増加するという問題がある。したがって、これらの問題を解決するためには、地すべり層の土圧の変化を敏感に捉えることができ、しかも計測現場での取扱いが容易で、かつ計測コストを低減することが可能な地盤応力センサおよび土圧検出装置の開発が望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、土圧の僅かな変化を敏感に捉えることができ、しかも計測現場での取扱いが容易で、かつ計測コストを低減することが可能な地盤応力センサおよび土圧検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、地表から地中に向けて挿入可能
で、平面形状が略長方形をした板状の計測本体部と、地表から地中に向けて挿入可能で、
地中への挿入方向に対して反対側の一方が前記計測本体部に固定され、
他方が自由端になっており、前記地中側から受ける外力によって前記計測本体部に対して弾性変形可能な片持支持部と、前記片持支持部における前記計測本体部の支持端側に形成され、前記片持支持部における自由端側の厚みよりも薄く形成された薄肉部と、前記薄肉部に固定され、前記外力による前記片持支持部が弾性変形する際の前記薄肉部のひずみを電気的に検出するひずみゲージと、を備えたことを特徴とする地盤応力センサである。
【0007】
請求項1の発明によれば、片持支持部は地中側から受ける外力によって弾性変形することになるが、この際、片持支持部における計測本体部側の支持端側は薄肉部に形成されているので、薄肉部は僅かな外力の変化によって大きくひずむことになる。薄肉部のひずみは、ひずみゲージによって電気的に検出されるので、土圧の僅かな変化を敏感に捉えることが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地盤応力センサにおいて、前記薄肉部は、前記計測本体部の挿入方向に対して直交する方向に延びる溝を利用して形成されており、前記ひずみゲージは、前記溝の底部に対応する前記薄肉部の外面に固定されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の地盤応力センサにおいて、前記ひずみゲージは、前記溝に充填されたシール剤によって覆われていることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の地盤応力センサにおいて、前記計測本体部の挿入端部側は、先端にいくにつれて先細りとなる形状に形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の地盤応力センサにおいて、前記計測本体部と前記片持支持部とは、一つの金属部材を加工することにより一体形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の地盤応力センサにおいて、前記計測本体部と前記片持支持部との間には、前記片持支持部が前記計測本体部側に変位可能とする干渉防止隙間が形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の地盤応力センサを地表側から地中に挿入することで構成される土圧検出装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、片持支持部における自由端側の厚みよりも薄く形成された薄肉部にひずみゲージを固定しているので、僅かな土圧の変化を敏感に捉えることが可能となり、地すべりの予知の精度を高めることができる。また、ひずみゲージは、ひずみを電気的に検出するので、光ファイバのように過度の屈曲による計測精度に影響を受けることがなく、計測現場での取扱いが容易となる。さらに、ひずみゲージは、地中の含水率を計測する水分量計に比べて著しく安価であるので、計測コストを低減することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、ひずみゲージは、地中への挿入方向に対して直交する方向に延びる溝の底部に位置することになるので、ひずみゲージは溝に収納された状態となる。これにより、地中の異物とひずみゲージとの干渉を防止することができ、ひずみゲージを異物との干渉から保護することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、溝の底部に固定されたひずみゲージは溝に充填されたシール剤によって覆われているので、ひずみゲージを確実に溝内に固定することができるとともに、ひずみゲージの損傷を防止することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、計測本体部の挿入端部側は、先端にいくにつれて先細りとなる形状に形成されているので、計測本体部を地中へ挿入する際の抵抗が少なくなり、計測準備作業が容易となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、計測本体部と片持支持部とは同一の金属部材により一体形成されているので、例えば機械加工や放電加工を用いて一つの金属部材から計測本体部と片持支持部を形成することができ、地盤応力センサの加工精度を高めることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、計測本体部と片持支持部との間には、片持支持部が計測本体部側に変位可能とする干渉防止用隙間が形成されているので、片持支持部が計測本体部側に変位した際に、計測本体部との干渉を防止することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1から6に記載の地盤応力センサを地表側から地中に挿入することで構成されるので、土圧の変化を高い精度で捉えることができる土圧検出装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係わる地盤応力センサの正面図である。
【
図3】
図1の地盤応力センサを用いた土圧検出装置の概要図である。
【
図4】
図1の地盤応力センサを用いた土圧の変化を示す特性図と水分量計による含水率の変化を示す特性図である。
【
図5】
図1の地盤応力センサによる土圧計測の応用例を示す断面図である。
【
図6】
図1の地盤応力センサによる土圧計測の別の応用例を示す断面図である。
【
図7】
図1の地盤応力センサによる土圧計測のさらに別の応用例を示す断面図である。
【
図8】
図1の地盤応力センサにロッドを連結した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0023】
図1ないし
図9は、本発明の実施の形態を示している。
図1および
図2に示すように、地盤応力センサ1は、計測本体部2と、片持支持部3と、干渉防止隙間4と、ひずみゲージ5と、溝6と、ケーブル7、シール剤9を有している。この実施の形態においては、計測本体部2と片持支持部3は、一つの金属部材であるステンレス鋼を機械加工や放電加工などを施すことにより、一体形成されている。計測本体部2と片持支持部3をステンレス鋼から構成したのは、ステンレス鋼は耐食性に優れ、薄肉部が存在しても必要な強度を確保することができるからであるが、耐食性および強度などの条件を満たす部材であればステンレス鋼以外の部材を採用してもよい。
【0024】
計測本体部2は、平面形状が略長方形をした板状に形成されている。この実施の形態においては、計測本体部2は、例えば縦方向の長さが15cmに、横方向の長さが7cmにそれぞれ設定されている。計測本体部2は、
図8および
図9に示すように、地表Gから地中に向けて挿入可能となっている。計測本体部2の挿入端部2a側は、先端にいくにつれて先細りとなる形状に形成されている。計測本体部2の挿入端部2a側は、鋭角に形成されており,地表Gから地中に向けての挿入が容易となっている。計測本体部2の上端2bは、平坦面に形成されている。計測本体部2の上端2b側の両端部2cは、面取り加工されている。
【0025】
片持支持部3は、一方が計測本体部2に固定され、他方が自由端となっている。片持支持部3は、地中側から受ける外力Pによって計測本体部2に対して弾性変形可能となっている。片持支持部3における計測本体部2の支持端側は、薄肉部3bに形成されている。薄肉部3bは、片持支持部3における自由端3a側の厚みよりも薄く形成されている。この実施の形態においては、薄肉部3bは、計測本体部2の挿入方向に対して直交する方向に延びる溝6を利用して形成されている。片持支持部3は、薄肉部3bの形成により、僅かな外力Pによって計測本体部2側に弾性変形可能となっている。
【0026】
計測本体部2と片持支持部3との間には、片持支持部3が計測本体部2側に変位可能とする干渉防止用隙間4が形成されている。本実施の形態においては、干渉防止用隙間4は、放電加工により形成されている。
図2に示すように、干渉防止用隙間4は側面からみた形状が略L字状となっている。干渉防止用隙間4は、片持支持部3の薄肉部3bから自由端部3aの先端まで延びている。干渉防止用隙間4における自由端部3aの先端4aは、開口している。干渉防止用隙間4の少なくとも一部には、地中内の土砂が干渉防止用隙間4内に侵入するのを防止するためのスポンジや弾性シール材などの弾性部材(図示略)が設けられている。スポンジや弾性シール材などの弾性部材は、非常に柔らかい部材から構成されており、土圧による片持支持部3の弾性変形に影響を与えない。
【0027】
片持支持部3の薄肉部3bには、外力Pによる片持支持部3が弾性変形する際の薄肉部3bのひずみを電気的に検出するひずみゲージ(ストレインゲージ)5が固定されている。すなわち、ひずみゲージ5は、溝6の底部に対応する薄肉部3bの外面に固定されている。ひずみゲージ5は、接着剤を介して薄肉部3bに固定されている。ひずみゲージ5は、第1のゲージ5aと、第2のゲージ5bと、第3のゲージ5cと、第4のゲージ5dから構成されている。各ゲージ5a〜5dは、同じ種類のひずみゲージから構成されている。第1のゲージ5aと第2のゲージ5bは、同じ向きに固定されており、第3のゲージ5cと第4のゲージ5dは、第1のゲージ5aと第2のゲージ5bに対して直交する方向に固定されている。各ゲージ5a〜5dは、接着剤を介して薄肉部3bに固定されている。各ゲージ5a〜5dは、ひずみを測定するための力学的センサであり、薄い絶縁体上にジグザグ形状にレイアウトされた金属の抵抗体が取付けられた構造をしており、変形による電気抵抗の変化を測定することにより、ひずみ量を算出することができる。この実施の形態におけるひずみゲージ5を構成する各ゲージ5a〜5dの特性は、ひずみ(STRAIN)と応力(STRESS)との関係がリニア(線形)となっている。ひずみゲージ5は、温度によって特性が変化することから、溝6内に温度補正用の温度センサを設ける構成とするのが望ましい。
【0028】
各ゲージ5a〜5dからなるひずみゲージ5は、溝6に充填されたシール剤としてのシリコン(シリコンシール剤)9によって覆われている。シール剤としてのシリコン9は、溝6のほぼ全体にわたって充填されており、各ゲージ5a〜5dおよび各ゲージ5a〜5dに接続されるケーブル7は、シリコン9の充填によって溝6内に保持されるようになっている。この実施の形態においては、各ゲージ5a〜5dに接続されるケーブル7を上方に導くために、溝6の一方は計測本体部2の上端2bまで延びている。
【0029】
図8および
図9に示すように、計測本体部2の上端2bには、ロッド8が連結可能となっている。ロッド8と計測本体部2は、計測本体部2に形成された雌ネジ(図示略)にロッド8の先端部に形成された雄ネジ(図示略)をねじ込むことにより連結可能となっている。計測本体部2と連結されたロッド8は、計測本体部2の上端2bから直線状に上方に延びている。ロッド8の長さは、計測本体部2および片持支持部3の地中への挿入距離を考慮して設定されている。片持支持部3からロッド8側に延びるケーブル7の他端側は、ひずみゲージ5からの電気信号が入力可能な計測器(図示略)に接続されている。
【0030】
図3は、
図1および
図2に示す地盤応力センサ1を地表G側から地中に挿入することで構成される土圧検出装置10を示している。
図3に示すように、傾斜面Kには地中の含水率を計測する水分量計11が所定の距離をおいて3つ配置されている。この実施の形態においては、3つの水分量計11のうち最も低位置に配置された水分量計11のみに地盤応力センサ1が併設されている。水分量計11および地盤応力センサ1の挿入深さは、挿入限界ラインL1よりも浅い位置に設定されている。また、傾斜面Kにおける最も低位置に配置された水分量計11および地盤応力センサ1の斜め下方の区域Bは、地滑り発生の可能性のある場所を示している。
【0031】
つぎに、本発明に係る地盤応力センサ1および土圧検出装置10の使用手順および作用について説明する。
【0032】
地盤応力センサ1を地表Gから地中に向けて挿入する際には、
図8および
図9に示すように、地盤応力センサ1の上端にはロッド8が取り付けられており、この状態でロッド8の上端を矢印F方向からハンマーなどで叩くことにより、計測本体部2および片持支持部3は地中に徐々に侵入することになる。計測本体部2および片持支持部3の双方が所定の深さだけ地中に侵入した状態では、片持支持部3は地中側からの外力Pを受けることが可能となる。ここで、片持支持部3は、地中側から受ける外力Pによって弾性変形することになるが、片持支持部3における計測本体部2側の支持端側は薄肉部3bに形成されているので、薄肉部3bは僅かな外力Pの変化によっても大きくひずみが変化することになる。薄肉部3bのひずみは、ひずみゲージ5によって電気的に検出されるので、土圧の僅かな変化を敏感に捉えることが可能となる。地盤は、崩れる前に地中内に作用する力が緩むので、地盤応力センサ1を用いて地中に作用する力を把握することで、事前に崩落などを予知することが可能となる。
【0033】
図4は、
図3における最も低位置に配置された水分量計11と地盤応力センサ1とによる計測記録を示している。
図4の上側のグラフに示す地盤応力センサ1による応力(土圧)の特性C1と、
図4の下側のグラフに示す水分量計11による体積含水比の特性C2は、対応していることがわかる。すなわち、地盤応力センサ1による土圧の変化と水分量計11による体積含水比の変化には明確な相関関係があり、地盤応力センサ1を用いて体積含水比の変化を推定することが可能となる。水分量計11は、従来技術で説明したように、高価な機器であり、水分量計11を地盤応力センサ1で代用できれば、計測コストを大幅に低減することが可能となる。
【0034】
図5は、地盤応力センサ1を傾斜面Kの不安定性のモニタリングに適用した場合を示している。この場合は、2つの地盤応力センサ1を用いており、各地盤応力センサ1は約50cmの深さに挿入されている。ここでは、上側の地盤応力センサ1が位置している地盤が緩むと、下側の地盤応力センサ1が位置している下方の地盤に力が加わり、土圧が変化することになる。この土圧の変化を地盤応力センサ1により長期的に監視することにより、土圧の変化による傾斜面Kの不安定性の有無を把握することが可能となる。
【0035】
図6は、地盤応力センサ1を地盤の掘削時のモニタリングに適用した場合を示している。この場合は、1つの地盤応力センサ1を用いている。地盤は、掘削によっても土圧が変化するので、掘削部分K1に近い地中の位置に地表Gから地盤応力センサ1を挿入し、土圧の変化を短期的に監視することにより、掘削による地盤の影響の有無を把握することが可能となる。
【0036】
図7は、地盤応力センサ1を近接施工時のモニタリングに適用した場合を示している。地盤応力センサ1を用いることにより、例えば既存の配管M1に対して新設する施設M2に必要な掘削工事などが悪影響を与えるか否かを把握することが可能となる。すなわち、既存の配管M1と新設する施設M2との間の地盤に地表Gから地盤応力センサ1を挿入することで、新設工事が配管M1に対して影響があるか否かを把握することが可能となる。
【0037】
このように、本発明では、片持支持部3における自由端3a側の厚みよりも薄く形成された薄肉部3bにひずみゲージ5を固定しているので、僅かな土圧の変化を敏感に捉えることが可能となり、地すべりの予知の精度を高めることができる。また、ひずみゲージ5は、ひずみを電気的に検出するので、光ファイバのように過度の屈曲による計測精度に影響を受けることがなく、計測現場での取扱いが著しく容易となる。さらに、ひずみゲージ5は、地中の含水率を計測する水分量計に比べて著しく安価であるので、計測コストを低減することができる。
【0038】
ひずみゲージ5は、地中への挿入方向に対して直交する方向に延びる溝6の底部に位置するので、ひずみゲージ5は溝6に収納された状態となる。これにより、地中側の異物とひずみゲージ5との干渉を防止することができ、ひずみゲージ5を異物との干渉から保護することができる。さらに、ひずみゲージ5は、溝6に充填されたシール剤9によって覆われているので、ひずみゲージ5を確実に溝6内に固定することができるとともに、ひずみゲージ5の損傷を防止することができる。
【0039】
計測本体部2の挿入端部2a側は、先端にいくにつれて先細りとなる形状に形成されているので、計測本体部2を地中へ挿入する際の抵抗が少なくなり、計測準備作業が容易となる。また、計測本体部2と片持支持部3とは一つの金属部材により一体形成されているので、例えば機械加工や放電加工を用いて一つの金属部材から計測本体部2と片持支持部3を形成することができ、地盤応力センサ1の加工精度を高めることができる。そして、計測本体部2と片持支持部3との間には、片持支持部3が計測本体部2側に変位可能とする干渉防止用隙間4が形成されているので、片持支持部3が計測本体部3側に大きく変位した際でも、片持支持部3と計測本体部との干渉を確実に防止することができる。
【0040】
図3に示すように、少なくとも地盤応力センサ1を地表G側から地中に挿入することで構成されるので、土圧の変化を高い精度で捉えることができる土圧検出装置10を得ることができる。この実施の形態においては、
図3に示すように、水分量計11を用いた既存の斜面監視装置に地盤応力センサ1を付加した装置としているが、
図4の特性からも判るように、水分量計11の代用として地盤応力センサ1を用いることが可能となるので、水分量計11の採用を廃止し、地盤応力センサ1のみを用いることにより、装置のコストを大幅に低減することが可能となる。
【0041】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。上述の実施の形態においては、計測本体部2と片持支持部3は、一つの金属部材を加工することにより一体形成されているが、計測本体部2と片持支持部3とをそれぞれ別部材から構成し、合わせ板構造としてもよい。また、計測本体部2および片持支持部3は、平面形状が略長方形をした板状に形成されているが、形状は限定されず、筒状であってもよい。さらに、この実施の形態においては、地盤応力センサ1は、上方から地表Gに向けて挿入するようにしているが、地盤応力センサ1の挿入方向は横からでもよく、挿入方向は問わない。
【符号の説明】
【0042】
1 地盤応力センサ
2 計測部本体
2a 挿入端部
3 片持支持部
3b 薄肉部
4 干渉防止用隙間
5 ひずみゲージ
6 溝
7 ケーブル
8 ロッド
9 シール剤
10 土圧検出装置