特許第6143228号(P6143228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6143228雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143228
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 15/00 20060101AFI20170529BHJP
   H02H 9/04 20060101ALI20170529BHJP
   H05F 7/00 20060101ALN20170529BHJP
【FI】
   H02J15/00 D
   H02H9/04 Z
   !H05F7/00
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-40809(P2014-40809)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-167437(P2015-167437A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新宅 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】枡田 俊久
(72)【発明者】
【氏名】矢野 和明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】本間 文洋
(72)【発明者】
【氏名】竹野 裕正
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−210810(JP,A)
【文献】 特開2000−076984(JP,A)
【文献】 特開2008−117640(JP,A)
【文献】 特開2014−036570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/00
7/10− 7/20
9/00− 9/08
H02J15/00
H02K24/00−27/30
31/00−31/04
35/00−35/06
39/00
47/00−47/30
53/00
99/00
H02N 1/00− 1/12
3/00−99/00
H05F 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雷サージが侵入し得る導電線路の周囲を囲む磁性体と、
前記導電線路と共に前記磁性体に周囲を囲まれた導電線と、
前記導電線が入力端に接続された遅延回路と、
前記遅延回路の出力端に1次側が接続されたトランス部と、
前記トランス部の2次側に入力端が接続された整流回路部と、
前記整流回路の出力端に接続された電力貯蔵部と、
を備えたことを特徴とする雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システム。
【請求項2】
前記遅延回路は、前記導電線を流れる雷サージ電流のサージ波形の立ち上がりを遅らせる回路であることを特徴とする請求項1に記載の雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システム。
【請求項3】
前記トランス部は、直列接続された複数のトランスからなり、
前記整流回路部は、前記複数のトランスのそれぞれに接続された複数の整流回路からなり、
前記電力貯蔵部は、前記複数の整流回路のそれぞれに接続された複数の電力貯蔵装置からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システム。
【請求項4】
前記トランス部は、直列接続された複数のトランスからなり、
前記整流回路部は、前記複数のトランスのそれぞれに接続された複数の整流回路からなり、
前記電力貯蔵部は、前記複数の整流回路に並列接続された1つの電力貯蔵装置からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システム。
【請求項5】
前記整流回路部は、ダイオードを用いた全波整流回路を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システム。
【請求項6】
前記電力貯蔵部は、フィルムコンデンサ、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン・キャパシタおよび超電導エネルギー貯蔵コイル(SMES)の少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルや導波管を経由して無線装置に侵入する雷サージの侵入低減と雷サージによる蓄電を行う雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信センタビルや無線中継所の鉄塔に直撃雷を受けると、直撃雷の一部が同軸ケーブルや導波管を経由して無線装置に侵入し、大地に放流する。その際、無線装置と通信線の接続がある装置および無線装置に給電する整流装置等が破損することがある。このような導波管から各装置に進入する雷サージ電流に起因する被害に対しては、磁性体や金属導体、絶縁電線等を導波管に装着することにより、導波管を通る雷サージ電流を低減させる方法が考案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、昨今の社会情勢として、地球温暖化ならびに電力不足の問題を解消するために、自然エネルギーを活用した発電・貯蔵システムの開発が求められている。雷も1回の放電で平均約900GWもの電力を発生するとされており、この雷電力を蓄電して有効利用しようとする雷充電システムも考案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2926000号公報
【特許文献2】特開2008−117640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、雷サージの侵入対策においては、雷サージを蓄電装置に充電できる形で抽出・貯蔵することは想定されておらず、雷充電システムにおいては、同軸ケーブルや導波管を経由して侵入する雷サージの抽出・貯蔵には対応していないという課題がある。すなわち、従来技術では、雷サージの侵入対策とエネルギー貯蔵は別個の構成を必要とするという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、導電線路に侵入する直撃雷サージを低減し、かつ、直撃雷のエネルギーを抽出・貯蔵するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムであって、雷サージが侵入し得る導電線路の周囲を囲む磁性体と、前記導電線路と共に前記磁性体に周囲を囲まれた導電線と、前記導電線が入力端に接続された遅延回路と、前記遅延回路の出力端に1次側が接続されたトランス部と、前記トランス部の2次側に入力端が接続された整流回路部と、前記整流回路の出力端に接続された電力貯蔵部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムにおいて、前記遅延回路は、前記導電線を流れる雷サージ電流のサージ波形の立ち上がりを遅らせる回路であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムにおいて、前記トランス部は、直列接続された複数のトランスからなり、前記整流回路部は、前記複数のトランスのそれぞれに接続された複数の整流回路からなり、前記電力貯蔵部は、前記複数の整流回路のそれぞれに接続された複数の電力貯蔵装置からなることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムにおいて、前記トランス部は、直列接続された複数のトランスからなり、前記整流回路部は、前記複数のトランスのそれぞれに接続された複数の整流回路からなり、前記電力貯蔵部は、前記複数の整流回路に並列接続された1つの電力貯蔵装置からなることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかの雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムにおいて、前記整流回路部は、ダイオードを用いた全波整流回路を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかの雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムにおいて、前記電力貯蔵部は、フィルムコンデンサ、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン・キャパシタおよび超電導エネルギー貯蔵コイル(SMES)の少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、通信センタビルや無線中継所の鉄塔が直撃雷を受けた際、その一部が同軸ケーブルや導波管を経由して無線装置等に侵入するのを低減することができるとともに、雷サージのエネルギーを抽出・貯蔵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係る雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムの詳細な構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態2に係る雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムの詳細な構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態3に係る雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムの詳細な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムの構成を示す。無線装置201とアンテナ203との間の同軸ケーブル、導波管等の導電線路である伝送線路202に雷サージ抽出回路101を設置する。雷サージ抽出回路101で抽出した雷サージは、変成回路102において電圧・電流レベルや波形を電力貯蔵回路103の特性に合わせて変成される。変成回路102で変成された電力は、電力貯蔵回路103に貯蔵される。
【0017】
本発明では、設備への雷サージ侵入対策と同時にエネルギーの貯蔵を行うことができる。本発明は、磁性体を使用することにより、磁性体の中に集中した磁束を活用して効率的にエネルギーの抽出を行い、貯蔵装置の性能に合わせて、抽出したサージ波形の立ち上がり速度や電圧値を変成することができる。さらに、貯蔵装置に整流回路を設けることで、正極性、負極性のどちらの極性の雷にも対応できる。
【0018】
(実施形態1)
図2に、本発明の実施形態1に係る雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムの詳細な構成を示す。雷サージ抽出回路101は、伝送線路202の周囲を囲む環状の磁性体104と、伝送線路202と共に磁性体104に周囲を囲まれた導電線105からなる。導電線105には、伝送線路202に電流が流れると相互誘導によりに電流が流れる。
【0019】
変成回路102は、導電線105が入力端に接続された遅延回路106と、遅延回路106の出力端が1次側に接続されトランス107とからなる。遅延回路106は、電力貯蔵回路103の性能との整合を図るため、抽出したサージ波形の立ち上がりを遅らせる回路であり、例えばLC回路とすることができる。トランス107の1次側と2次側の巻数比は、電力貯蔵回路103の特性に合わせて適宜設定される。
【0020】
電力貯蔵回路103は、トランス107の2次側に接続された整流回路108と、整流回路108から出力される電力を貯蔵する電力貯蔵部109とからなる。直撃雷には負極性と正極性があり、極性によって雷サージ電流の流れる向きも異なる。整流回路108を、例えばダイオードを用いた全波整流回路とすることで、直撃雷の極性に関わらず電力を貯蔵することができる。電力貯蔵部109には、例えば、フィルムコンデンサ、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン・キャパシタ、超電導エネルギー貯蔵コイル(SMES)等を用いることができる。
【0021】
(実施形態2)
図3に、本発明の実施形態2に係る雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムの詳細な構成を示す。実施形態1に対して実施形態2では、変成回路102は、複数のトランス107−1〜107−nを備え、電力貯蔵回路103は、複数の整流回路108−1〜108−nと複数の電力貯蔵部109−1〜109−nを備えている。
【0022】
実施形態1では、電圧低減をトランス107の巻数比のみで行う構成であるが、実施形態2では、巻数比に加え、複数のトランスの分圧によって電圧低減を行うことができる。
【0023】
(実施形態3)
図4に、本発明の実施形態3に係る雷サージ侵入低減ならびにエネルギー貯蔵システムの詳細な構成を示す。実施形態2に対して実施形態3では、複数の整流回路108−1〜108−nから出力される電力を1つの電力貯蔵部109に貯蔵する構成としている。
【符号の説明】
【0024】
101 雷サージ抽出回路
102 変成回路
103 電力貯蔵回路
104 磁性体
105 導電線
106 遅延回路
107 トランス
108 整流回路
109 電力貯蔵部
図1
図2
図3
図4