特許第6143266号(P6143266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6143266新規化合物及びその製造方法並びに抗がん剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143266
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】新規化合物及びその製造方法並びに抗がん剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/40 20060101AFI20170529BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20170529BHJP
   A61K 31/4406 20060101ALN20170529BHJP
【FI】
   C07D213/40
   !A61P35/00
   !A61K31/4406
【請求項の数】6
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2014-509223(P2014-509223)
(86)(22)【出願日】2013年4月5日
(86)【国際出願番号】JP2013060487
(87)【国際公開番号】WO2013151161
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-87973(P2012-87973)
(32)【優先日】2012年4月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000173588
【氏名又は名称】公益財団法人がん研究会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】椎名 勇
(72)【発明者】
【氏名】矢守 隆夫
【審査官】 小川 由美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−179391(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/070856(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/076375(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/113586(WO,A1)
【文献】 Chemistry Letters,1997年,26(9),885-886
【文献】 Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,1998年,8,3439-3442
【文献】 Journal of Industrial Microbiology and Biotechnology,2003年,30,721-731
【文献】 The Journal of Biological Chemistry,2012年 2月 3日,287(6),3885-3897
【文献】 International Journal of Cancer,2011年 8月 8日,131,310-321
【文献】 Organic & Biomolecular Chemistry,2010年,8,1821-1825
【文献】 Tetrahedron Letters,1996年,37(50),8989-8992
【文献】 Tetrahedron Letters,2009年,50,5372-5375
【文献】 Synlett,2008年,(7),1013-1016
【文献】 Tetrahedron Letters,2002年,43,3263-3267
【文献】 Synlett,2011年 9月12日,23,219-222
【文献】 Helvetica Chimica Acta,2010年,93,1933-1944
【文献】 Journal of Medicinal Chemistry,2012年12月 6日,56,150-159
【文献】 日本化学会第93春季年会,2013年,4,1205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
JDreamIII(JST)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)又は(2)で表される化合物の製造方法であって、
【化1】
(式中、R、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子、−OR、−NRのいずれかの基を示し、R10は、−CHOR、−C(O)OR、−C(O)R、−CHNR、−C(O)NRのいずれかの基を示し、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいヘテロアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。)
下記式(15)で表される化合物を酸化した後、下記式(16)で表される化合物を用いて向山アルドール反応を行い、下記式(13)で表される化合物を製造する工程と、
【化2】
(式中、R〜Rは前記と同様の置換基を示す。)
【化3】
(式中、Rは前記と同様の置換基を示す。Wはアルキルチオ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基のいずれかの基を示し、Zはアルキルシリル基を示す。)
【化4】
(式中、R、R〜R、Wは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(13)で表される化合物のヒドロキシ基を保護した後、還元し、下記式(14)で表される化合物を用いてウィティッヒ反応を行い、下記式(12)で表される化合物を製造する工程と、
【化5】
(式中、Rは前記と同様の置換基を示す。R11はアルキル基を示す。)
【化6】
(式中、R、R〜R、R11は前記と同様の置換基を示す。Zはヒドロキシ基の保護基を示す。)
前記式(12)で表される化合物を環化後、還元して下記式(9)又は(10)で表される化合物を製造する工程と、
【化7】
(式中、R、R〜R、Zは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(9)又は(10)で表される化合物を酸化した後、下記式(11)で表されるアルキルホスホン酸エステルを用いてホーナー・ワズワース・エモンス反応を行い、加水分解反応を経て下記式(5)又は(6)で表される化合物を製造する工程と、
【化8】
(式中、R、Rは前記と同様の置換基を示す。R12、R13はアルキル基を示す。)
【化9】
(式中、R、R〜R、Zは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(5)又は(6)で表される化合物から前記式(1)又は(2)で表される化合物を製造する工程と、を含む製造方法。
【請求項2】
下記式(1)又は(2)で表される化合物の製造方法であって、
【化10】
(式中、R、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子、−OR、−NRのいずれかの基を示し、R10は、−CHOR、−C(O)OR、−C(O)R、−CHNR、−C(O)NRのいずれかの基を示し、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいヘテロアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。)
下記式(15)で表される化合物を酸化した後、下記式(22)で表される化合物を用いてエヴァンスアルドール反応を行い、下記式(21)で表される化合物を製造した後、N,O−ジメチルヒドロキシルアミンと反応させて下記式(20)で表される化合物を製造する工程と、
【化11】
(式中、R〜Rは前記と同様の置換基を示す。)
【化12】
(式中、Rは前記と同様の置換基を示す。R14はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基のいずれかの基を示す。)
【化13】
(式中、R、R〜R、R14は前記と同様の置換基を示す。)
【化14】
(式中、R、R〜Rは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(20)で表される化合物のヒドロキシ基を保護した後、還元し、下記式(14)で表される化合物を用いてウィティッヒ反応を行い、下記式(12)で表される化合物を製造する工程と、
【化15】
(式中、Rは前記と同様の置換基を示す。R11はアルキル基を示す。)
【化16】
(式中、R、R〜R、R11は前記と同様の置換基を示す。Zはヒドロキシ基の保護基を示す。)
前記式(12)で表される化合物を環化後、還元して下記式(9)又は(10)で表される化合物を製造する工程と、
【化17】
(式中、R、R〜R、Zは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(9)又は(10)で表される化合物を酸化した後、下記式(11)で表されるアルキルホスホン酸エステルを用いてホーナー・ワズワース・エモンス反応を行い、加水分解反応を経て下記式(5)又は(6)で表される化合物を製造する工程と、
【化18】
(式中、R、Rは前記と同様の置換基を示す。R12、R13はアルキル基を示す。)
【化19】
(式中、R、R〜R、Zは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(5)又は(6)で表される化合物から前記式(1)又は(2)で表される化合物を製造する工程と、を含む製造方法。
【請求項3】
下記式(3)又は(4)で表される化合物の製造方法であって、
【化20】
(式中、R、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子、−OR、−NRのいずれかの基を示し、R10は、−CHOR、−C(O)OR、−C(O)R、−CHNR、−C(O)NRのいずれかの基を示し、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいヘテロアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。)
下記式(15)で表される化合物を酸化した後、下記式(16)で表される化合物を用いて向山アルドール反応を行い、下記式(13)で表される化合物を製造する工程と、
【化21】
(式中、R〜Rは前記と同様の置換基を示す。)
【化22】
(式中、Rは前記と同様の置換基を示す。Wはアルキルチオ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基のいずれかの基を示し、Zはアルキルシリル基を示す。)
【化23】
(式中、R、R〜R、Wは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(13)で表される化合物のヒドロキシ基を保護した後、還元し、下記式(14)で表される化合物を用いてウィティッヒ反応を行い、下記式(12)で表される化合物を製造する工程と、
【化24】
(式中、Rは前記と同様の置換基を示す。R11はアルキル基を示す。)
【化25】
(式中、R、R〜R、R11は前記と同様の置換基を示す。Zはヒドロキシ基の保護基を示す。)
前記式(12)で表される化合物を環化後、還元して下記式(9)又は(10)で表される化合物を製造する工程と、
【化26】
(式中、R、R〜R、Zは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(9)又は(10)で表される化合物を水素化後、酸化反応、下記式(11)で表されるアルキルホスホン酸エステルを用いてホーナー・ワズワース・エモンス反応を行い、加水分解反応を経て下記式(7)又は(8)で表される化合物を製造する工程と、
【化27】
(式中、R、Rは前記と同様の置換基を示す。R12、R13はアルキル基を示す。)
【化28】
(式中、R、R〜R、Zは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(7)又は(8)で表される化合物から前記式(3)又は(4)で表される化合物を製造する工程と、を含む製造方法。
【請求項4】
下記式(3)又は(4)で表される化合物の製造方法であって、
【化29】
(式中、R、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子、−OR、−NRのいずれかの基を示し、R10は、−CHOR、−C(O)OR、−C(O)R、−CHNR、−C(O)NRのいずれかの基を示し、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいヘテロアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。)
下記式(15)で表される化合物を酸化した後、下記式(22)で表される化合物を用いてエヴァンスアルドール反応を行い、下記式(21)で表される化合物を製造した後、N,O−ジメチルヒドロキシルアミンと反応させて下記式(20)で表される化合物を製造する工程と、
【化30】
(式中、R〜Rは前記と同様の置換基を示す。)
【化31】
(式中、Rは前記と同様の置換基を示す。R14はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基のいずれかの基を示す。)
【化32】
(式中、R、R〜R、R14は前記と同様の置換基を示す。)
【化33】
(式中、R、R〜Rは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(20)で表される化合物のヒドロキシ基を保護した後、還元し、下記式(14)で表される化合物を用いてウィティッヒ反応を行い、下記式(12)で表される化合物を製造する工程と、
【化34】
(式中、Rは前記と同様の置換基を示す。R11はアルキル基を示す。)
【化35】
(式中、R、R〜R、R11は前記と同様の置換基を示す。Zはヒドロキシ基の保護基を示す。)
前記式(12)で表される化合物を環化後、還元して下記式(9)又は(10)で表される化合物を製造する工程と、
【化36】
(式中、R、R〜R、Zは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(9)又は(10)で表される化合物を水素化後、酸化反応、下記式(11)で表されるアルキルホスホン酸エステルを用いてホーナー・ワズワース・エモンス反応を行い、加水分解反応を経て下記式(7)又は(8)で表される化合物を製造する工程と、
【化37】
(式中、R、Rは前記と同様の置換基を示す。R12、R13はアルキル基を示す。)
【化38】
(式中、R、R〜R、Zは前記と同様の置換基を示す。)
前記式(7)又は(8)で表される化合物から前記式(3)又は(4)で表される化合物を製造する工程と、を含む製造方法。
【請求項5】
下記式(17)で表される化合物を還元して前記式(15)で表される化合物を製造する工程を含む請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【化39】
(式中、R〜Rは前記と同様の置換基を示す。Yは下記式のいずれかの基を示す。)
【化40】
(式中、Bnはベンジル基を示し、Phはフェニル基を示す。)
【請求項6】
下記式(18)で表される化合物を下記式(19)で表される化合物を用いて不斉アルキル化して前記式(17)で表される化合物を製造する工程を含む請求項5記載の製造方法。
【化41】
【化42】
(式中、R〜R、Yは前記と同様の置換基を示す。Xはハロゲン原子を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物及びその製造方法並びに抗がん剤に関する。
【背景技術】
【0002】
AMF−26は、以下の構造を有する化合物であり、ゴルジ体機能阻害活性、抗がん活性を示す化合物として知られている。
【0003】
【化1】
【0004】
非特許文献1には、AMF−26のヒトがん細胞株39系(肺がん7系,胃がん6系,大腸がん5系,卵巣がん5系,脳腫瘍6系,乳がん5系,腎がん2系,前立腺がん2系及びメラノーマ1系)に対するin vitro 薬剤感受性を測定し,個々のがん細胞株に対する薬剤感受性の違いをフィンガープリントとして表した結果が示されており、AMF−26が、ゴルジ体機能阻害活性を有するブレフェルディンAと非常によく似たフィンガープリントを示したことが記載されている。ブレフェルディンAは高い抗腫瘍活性を示すものの、副作用が強く、薬物として実用に至っていない。このため、ブレフェルディンAと同様の高い抗腫瘍活性を示し、副作用が弱い化合物であれば、抗がん剤としての実用化が期待されるとして、AMF−26が注目されている。
しかし、AMF−26は、これまで、NFS−932株の培養物から単離した、以下の構造を有する(2E,4E)−5−[(1S,2S,4aR,6R,7S,8S,8aS)−7−ヒドロキシ−2,6,8−トリメチル−1,2,4a,5,6,7,8a−オクタヒドロナフタレン−1−イル]−2−メチルペンタ−2,4−ジエン酸を出発原料に、3−(アミノメチル)ピリジンと反応させて酸アミドに変換することによって得られており(特許文献1を参照)、オクタヒドロナフタレン骨格の置換基が異なる化合物や、立体異性体を得ることができなかった。
【0005】
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特開第2005/070856号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ohashi,Y et al,Biochemistry and Molecular Biology,2011年、M111.316125.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、AMF−26及びその類縁体を全合成により製造し、がん治療等において有用な新規化合物を見出し、新規化合物を有効成分として含有する抗がん剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、AMF−26を、天然物を用いずに全合成によって製造する方法を見出し、同様の製造方法によって、新規化合物であるAMF−26類縁体を製造することが可能になり、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下に示される通りのものである。
【0010】
[1] 下記式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物。
【化3】
(式中、R、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子、−OR、−NRのいずれかの基を示し、R10は、−CHOR、−C(O)OR、−C(O)R、−CHNR、−C(O)NRのいずれかの基を示し、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいヘテロアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。ただし、上記式(1)において、R、R、R、Rがメチル基であり、R、R、R、Rが水素原子であり、Rがヒドロキシ基であり、R10がカルボキシル基、メチルエステル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、ピリジン−3−イルメチルカルバモイル基、ピリジン−4−イルメチルカルバモイル基、ピリジン−2−イルメチルカルバモイル基、ベンジルカルバモイル基、3−メトキシベンジルカルバモイル基、4−クロロベンジルカルバモイル基、4−メチルベンジルカルバモイル基、4−ジメチルアミノベンジルカルバモイル基、ピリジン−4−イルエチルカルバモイル基、4−ヒドロキシフェネチルカルバモイル基、4−フェニルブチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、メチルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、t−ブチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ベンジルメチルカルバモイル基、カルバモイル基のいずれかの基である場合を除く。)
【0011】
[2] [1]記載の化合物を有効成分として含有する抗がん剤。
【0012】
[3] [1]記載の化合物を製造するための中間体であって、下記式(5)〜(8)のいずれかで表される化合物。
【化4】
(式中、R、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、Zはヒドロキシ基の保護基を示す。)
【0013】
[4] 下記式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物の製造方法であって、
下記式(5)〜(8)のいずれかで表される化合物から下記式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物を製造する工程を含む製造方法。
【化5】
【化6】
(式中、R、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子、−OR、−NRのいずれかの基を示し、R10は、−CHOR、−C(O)OR、−C(O)R、−CHNR、−C(O)NRのいずれかの基を示し、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいヘテロアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。Zはヒドロキシ基の保護基を示す。)
【0014】
[5] 下記式(9)又は(10)で表される化合物を酸化した後、下記式(11)で表されるアルキルホスホン酸エステルを用いてホーナー・ワズワース・エモンス反応を行い、加水分解反応を経て上記式(5)又は(6)で表される化合物を製造する工程を含む[4]記載の製造方法。
【化7】
【化8】
(式中、R、R〜R、Zは上記と同様の置換基を示す。R12、R13はアルキル基を示す。)
【0015】
[6] 下記式(9)又は(10)で表される化合物を水素化後、酸化反応、下記式(11)で表されるアルキルホスホン酸エステルを用いてホーナー・ワズワース・エモンス反応を行い、加水分解反応を経て上記式(7)又は(8)で表される化合物を製造する工程を含む[4]記載の製造方法。
【化9】
【化10】
(式中、R、R〜R、Zは上記と同様の置換基を示す。R12、R13はアルキル基を示す。)
【0016】
[7] 下記式(12)で表される化合物を環化後、還元して上記式(9)又は(10)で表される化合物を製造する工程を含む[5]又は[6]記載の製造方法。
【化11】
(式中、R、R〜R、Zは上記と同様の置換基を示す。R11はアルキル基を示す。)
【0017】
[8] 下記式(13)又は下記式(20)で表される化合物のヒドロキシ基を保護した後、還元し、下記式(14)で表される化合物を用いてウィティッヒ反応を行い、上記式(12)で表される化合物を製造する工程を含む[7]記載の製造方法。
【化12】
【化13】
【化14】
(式中、R、R〜R、R11は上記と同様の置換基を示す。Wはアルキルチオ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基のいずれかの基を示す。)
【0018】
[9] 下記式(15)で表される化合物を酸化した後、下記式(16)で表される化合物を用いて向山アルドール反応を行い、上記式(13)で表される化合物を製造する工程を含む[8]記載の製造方法。
【化15】
【化16】
(式中、R、R〜R、Wは上記と同様の置換基を示す。Zはアルキルシリル基を示す。)
【0019】
[10]
下記式(15)で表される化合物を酸化した後、下記式(22)で表される化合物を用いてエヴァンスアルドール反応を行い、下記式(21)で表される化合物を製造し、次いでN,O−ジメチルヒドロキシルアミンと反応させて上記式(20)で表される化合物を製造する工程を含む[8]記載の製造方法。
【化17】
【化18】
【化19】
(式中、R、R〜Rは前記と同様の置換基を示し、R14はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基のいずれかの基を示す。)
【0020】
[11] 下記式(17)で表される化合物を還元して上記式(15)で表される化合物を製造する工程を含む[9]又は[10]記載の製造方法。
【化20】
(式中、R〜Rは上記と同様の置換基を示す。Yは下記式のいずれかの基を示す。)
【化21】
(式中、Bnはベンジル基を示し、Phはフェニル基を示す。)
【0021】
[12] 下記式(18)で表される化合物を下記式(19)で表される化合物を用いて不斉アルキル化して上記式(17)で表される化合物を製造する工程を含む[11]記載の製造方法。
【化22】
【化23】
(式中、R〜R、Yは上記と同様の置換基を示す。Xはハロゲン原子を示す。)
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、AMF−26及びその類縁体を、天然物を用いずに全合成によって製造することができ、AMF−26類縁体である上記新規化合物及びその化合物を有効成分として含有する抗がん剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】合成例1で製造した化合物U1及び天然物由来のAMF−26の薬物感受性を表すフィンガープリントの一例を示す図である。
図2】合成例1で製造した化合物U1及び天然物由来のAMF−26のゴルジ体散在化曲線の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<化合物>
本発明の化合物は、下記式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物である。
【0025】
【化24】
【0026】
式中、R、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子、−OR、−NRのいずれかの基を示し、R10は、−CHOR、−C(O)OR、−C(O)R、−CHNR、−C(O)NRのいずれかの基を示し、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいヘテロアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を示す。ただし、上記式(1)において、R、R、R、Rがメチル基であり、R、R、R、Rが水素原子であり、Rがヒドロキシ基であり、R10がカルボキシル基、メチルエステル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、ピリジン−3−イルメチルカルバモイル基、ピリジン−4−イルメチルカルバモイル基、ピリジン−2−イルメチルカルバモイル基、ベンジルカルバモイル基、3−メトキシベンジルカルバモイル基、4−クロロベンジルカルバモイル基、4−メチルベンジルカルバモイル基、4−ジメチルアミノベンジルカルバモイル基、ピリジン−4−イルエチルカルバモイル基、4−ヒドロキシフェネチルカルバモイル基、4−フェニルブチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、メチルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、t−ブチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ベンジルメチルカルバモイル基、カルバモイル基のいずれかの基である場合を除く。
【0027】
、R〜Rのアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖であっても分岐であっても環状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
、R、R、R、R、Rのアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖であっても分岐であっても環状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0029】
、R、R、R、R、Rのアリール基としては、炭素数6〜20の単環式又は多環式芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6〜12の単環式又は多環式芳香族炭化水素基がより好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、トリル基、ジメチルフェニル基、メシル基、エチルフェニル基等が挙げられる。
【0030】
、R、R、R、R、Rのヘテロアリール基としては、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜4個含む、環構成炭素数2〜9の単環式又は多環式芳香族複素環基が好ましく、環構成炭素数3〜5の単環式芳香族複素環基がより好ましい。具体的には、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基等が挙げられる。
【0031】
、R、R、R、R、Rのアリールアルキル基としては、上記アリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、上記アリール基で置換された炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。具体的には、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルプロパン−2−イル基等が挙げられる。
【0032】
また、R、R、R、R、R、Rのヘテロアリールアルキル基としては、上記のヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、上記ヘテロアリール基で置換された炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。具体的には、ピリジルメチル基、ピリジルエチル基、ピラジルメチル基、ピリミジニルメチル基、ピリダジニルメチル基、イミダゾリルメチル基、ピラゾリルメチル基等が挙げられる。
【0033】
該アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基が有してもよい置換基としては、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコシキ基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を有するアミノ基、ハロゲン基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基等が好ましい。具体的には、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、クロロ基、フルオロ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0034】
としては、特に−ORが好ましく、Rは、特に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。具体的には、Rとしてヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0035】
10としては、特に−CHOR、−C(O)OR、−C(O)NRが好ましい。Rは、特に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。具体的には、R10としてヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基等が挙げられる。R、Rは、特にいずれか一方がアリールアルキル基又はヘテロアリールアルキル基であることが好ましい。具体的には、ピリジン−3−イルメチル基、ピリジン−4−イルメチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0036】
<抗がん剤>
本発明の抗がん剤は、有効成分として上記式(1)〜(4)で表される化合物を含有し、上記式(1)〜(4)で表される化合物を薬学的に許容しうる担体と共に、混合、溶解、顆粒化、錠剤化、乳化、カプセル封入、凍結乾燥等により、製剤化したものである。上記式(1)〜(4)で表される化合物は、肺がん、大腸がん、胃がん、乳がん等の固形がん細胞に対して高い細胞傷害性をもつ。
【0037】
<製造方法>
本発明に係る上記式(1)〜(4)で表される化合物は、上記式(18)及び(19)で表される化合物を出発原料にして、反応式1及び2にしたがって、(I)〜(VIII)の工程により製造できる。
(I)不斉アルキル化による式(17)で表される化合物の製造
(II)還元による式(15)で表される化合物の製造
(III)酸化、アルドール反応による式(13)又は(20)で表される化合物の製造
(IV)ヒドロキシ基保護、還元、ウィティッヒ反応による式(12)で表される化合物の製造
(V)環化、還元による式(9)又は(10)で表される化合物の製造
(VI)酸化、ホーナー・ワズワース・エモンス反応、加水分解による式(5)又は(6)で表される化合物の製造
(VII)水素化、酸化、ホーナー・ワズワース・エモンス反応、加水分解による式(7)又は(8)で表される化合物の製造
(VIII)式(5)〜(8)のいずれかで表される化合物から式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物の製造
各工程について以下に示す。
【0038】
【化25】
【0039】
【化26】
【0040】
(I)不斉アルキル化
【化27】
【0041】
式中、R〜R,Xは上記と同様の基を示し、Yは不斉補助基である下記式のいずれかの基を示す。Yは好ましくは、(Y1)を示す。
【0042】
【化28】
(式中、Bnはベンジル基を示し、Phはフェニル基を示す。)
【0043】
上記式(18)で表される光学活性化合物に塩基を反応させてエノラートを生成し、これに式(19)で表されるハロゲン化物をアルキル化剤として反応させると、上記式(17)で表される光学活性化合物を製造できる。
【0044】
反応はTHF,エーテル等の溶媒中で行うことが好ましい。塩基としては、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビストリメチルシリルアミド、ナトリウムビストリメチルシリルアミド、カリウムビストリメチルシリルアミド等を用いることが好ましい。更に、触媒としてテトラブチルアンモニウムヨージドを用いてもよい。反応は−78℃〜0℃の低温で行うことが好ましい。
飽和塩化アンモニウム水溶液等で反応を停止させた後、目的物を回収する。
生成物の上記式(17)で表される化合物中の置換基Rの立体配置は、上記式(18)で表される化合物中の配向基((Y1)においてはベンジル基)の立体配置によって決定される。
【0045】
(II)還元
【化29】
【0046】
式中、R〜R,Yは上記と同様の基を示す。
上記式(17)で表される光学活性イソオキサゾリジン誘導体は、還元剤で処理することにより、光学純度を損なうことなく対応する上記式(15)で表されるアルコールに変換することができる。還元剤としては、LiAlH、LiBH−EtOH、NaHAl(OCHCHOMe)等を用いることができる。反応は、THF、エーテル等の溶媒中で行うことが好ましい。
アルカリ水溶液等を加えて反応を停止させた後、目的物を回収する。
【0047】
(III)酸化、アルドール反応
【化30】
【0048】
式中、R、R〜Rは上記と同様の基を示し、R14はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基のいずれかの基を示す。Wはアルキルチオ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基のいずれかの基を、Zはアルキルシリル基を示す。
【0049】
Wのアルキルチオ基、アルキルオキシ基としては、炭素数1〜6のアルキルチオ基、アルキルオキシ基が好ましく、アリールオキシ基としては、炭素数6〜20の単環式又は多環式芳香族炭化水素基を有するアリールオキシ基が好ましく、特には炭素数1〜3のアルキルチオ基がより好ましい。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基が挙げられる。
【0050】
のアルキルシリル基は、トリアルキルシリル基が好ましく、特にはトリメチルシリル基が好ましい。
【0051】
14のアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖であっても、分岐であっても環状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、R14のアリール基としては、炭素数6〜20の単環式又は多環式芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6〜12の単環式又は多環式芳香族炭化水素基がより好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、トリル基、ジメチルフェニル基、メシル基、エチルフェニル基等が挙げられる。また、R14のアリールアルキル基としては、上記アリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、上記アリール基で置換された炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。具体的には、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルプロパン−2−イル基等が挙げられる。これらの中でも、特にベンジル基、イソプロピル基が好ましい。
【0052】
上記式(15)で表されるアルコールを酸化してアルデヒドとした後、向山アルドール反応を行うと、上記式(13)で表される化合物を製造でき、エヴァンスアルドール反応を行うと、上記式(21)で表される化合物を製造できる。
【0053】
酸化反応には弱い酸化剤を用いればよく、ジメチルスルホキシド、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム、デス・マーチン・ペルヨージナン等を用いることができる。反応は、塩化メチレン等の溶媒中行うことが好ましい。生成したアルデヒドは単離せずにそのまま次の反応に用いてもよい。
【0054】
向山アルドール反応は、シリルエノールエーテル(16)を求核剤に用い、スズトリフラート等を触媒に用いるアルドール反応であり、上記のアルデヒドに対して立体選択的に縮合が起こってsyn体である上記式(13)で表される化合物を製造できる。Wは反応性の高いアルキルチオ基が特に好ましい。反応はエーテル、塩化メチレン等の有機溶媒中で行うことが好ましく、−78℃等の低温で行うことが好ましい。
飽和重曹水等を加えて反応を停止し、目的物を回収する。
【0055】
エヴァンスアルドール反応は、キラルオキサゾリジノン基を有する求核剤(22)を用いる不斉アルドール反応であり、ボロントリフラートとアミンを添加すると、syn体である上記式(21)で表される化合物を製造できる。ボロントリフラートによって活性化されたイミドα位プロトンを引き抜くためにトリエチルアミンや2,6−ルチジン等の添加が必要である。R14はベンジル基が特に好ましい。反応は、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等の有機溶媒中行うことが好ましく、−78℃等の低温で行うことが好ましい。
飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、目的物を回収する。
【0056】
上記式(21)で表される化合物のオキサゾリジン基は、N,O−ジメチルヒドロキシルアミンと反応させると、上記式(20)で表されるワインレブアミドへ容易に変換することができる。
【0057】
(IV)ヒドロキシ基保護、還元、ウィティッヒ反応
【化31】
【0058】
式中、R、R〜R、Wは上記と同様の基を示す。R11はアルキル基を、Zはヒドロキシ基の保護基を示す。
【0059】
11のアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0060】
のヒドロキシ基の保護基としては、温和な条件で保護でき、アルカリ条件下で安定な保護基が好ましい。特には、アルキルシリル基が好ましい。具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0061】
上記式(13)で表されるヒドロキシエステル又は上記式(20)で表されるヒドロキシアミドのヒドロキシ基を保護し、次いで還元してアルデヒドとし、上記式(14)で表されるウィティッヒ試薬と反応させると、上記式(12)で表される化合物を製造できる。
【0062】
ヒドロキシ基の保護は、塩化メチレン等の溶媒中、触媒に弱塩基である2、6−ルチジン等を用い、アルキルシリルトリフラートを反応させることが好ましい。飽和重曹水等を加えて反応を停止し、目的物を回収する。
【0063】
チオエステル基、アミド基等の還元は、水素化ジイソブチルアルミニウムを還元剤として用いると、アルデヒドで還元をとめることができるため、好ましい。反応は、THF、トルエン、ヘキサン、塩化メチレン等の溶媒中で行うことが好ましく、−78℃等の低温で行うことが好ましい。メタノールと飽和ロッシェル塩水溶液等を加えて反応を停止し、目的物を回収する。
【0064】
ウィティッヒ反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としては、エーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、トルエン等を用いればよい。上記式(14)で表されるウィティッヒ試薬は比較的安定で反応性が低いので、加熱して反応を行うとよい。上記式(14)で表されるウィティッヒ試薬を用いる反応ではE体のアルケンが主生成物として得られる。上記式(14)中、R11は後で還元する部分であり、メチル基、エチル基等が好ましい。
【0065】
(V)環化、還元
【化32】
【0066】
式中、R、R〜R、R11、Zは上記と同様の基を示す。
上記式(12)で表される化合物を、環化し、次いでエステルをアルコールへ還元すると、上記式(9)又は(10)で表される化合物を製造できる。
【0067】
環化反応は、分子内ディールス・アルダー反応であり、鎖状構造分子中の6π系が、より安定な環状構造分子中の2π+4σ系に変換される駆動力によって促進される。ここでは、加熱により、構造変換の活性化エネルギーが付与され、環化が起こる。このとき、R,Rの立体配置の異なるものが生成するが、次の還元反応を行ってから、これら立体配置の異なる化合物を分離することが好ましい。
【0068】
還元反応は、通常エステル還元に用いられる還元剤を用い溶媒中で行えばよい。還元剤には、水素化アルミニウムリチウムや水素化ホウ素ナトリウム、ボラン、水素化ジイソブチルアルミニウム等を用いることが好ましい。反応後、メタノールと飽和ロッシェル塩水溶液等を加えて反応を停止し、目的のアルコールとして式(9)及び(10)を含む混合物を回収する。生成物中に含まれる立体配置の異なる2つのアルコール式(9)及び(10)で表される化合物は、薄層クロマトグラフィ等で分離し、それぞれを単離することができる。
【0069】
(VI)酸化、ホーナー・ワズワース・エモンス反応、加水分解
上記式(9)又は(10)で表される化合物に、酸化反応、ホーナー・ワズワース・エモンス反応、加水分解反応を行うと、上記式(5)又は(6)で表される化合物を製造できる。
下記には、式(9)で表される化合物から式(5)で表される化合物を製造する方法を例示する。式(10)で表される化合物から式(6)で表される化合物を製造する場合も、同様に製造できる。
【0070】
【化33】
【0071】
式中、R、R〜R、Zは上記と同様の基を示す。R12、R13はアルキル基を示す。
【0072】
12、R13のアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0073】
上記式(9)で表される化合物の酸化反応は、通常アルコールからアルデヒドへの酸化反応に用いられる弱い酸化剤を用いて行えばよい。過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム、デス・マーチン・ベルヨージナン等の酸化剤を用いることが好ましい。生成したアルデヒドは単離せずに次の工程のホーナー・ワズワース・エモンス反応に用いてもよい。
【0074】
次のホーナー・ワズワース・エモンス反応は、上記式(11)で表されるアルキルホスホン酸エステルに塩基を作用させてカルボアニオンを発生させ、これをアルデヒドと反応させ、アルケンを生成する反応である。塩基には、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミド等を用いることが好ましい。R12、R13はメチル基、エチル基が好ましい。テトラヒドロフラン、塩化メチレン等の有機溶媒中で、−78℃等の低温条件下で反応を行うことが好ましい。E体が選択的に生成する。
【0075】
次に生成物のエステル部位を加水分解すれば上記式(5)で表される化合物が製造できる。ヒドロキシ基の保護基を維持したまま加水分解反応をするには、塩基触媒下で行えばよく、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等を触媒として用いることが好ましい。
【0076】
(VII)水素化、酸化、ホーナー・ワズワース・エモンス反応、加水分解
上記式(9)又は(10)で表される化合物に、水素化反応、酸化反応、ホーナー・ワズワース・エモンス反応、加水分解反応を行うと、上記式(7)又は(8)で表される化合物を製造できる。
下記には、式(9)で表される化合物から式(7)で表される化合物を製造する方法を例示する。式(10)で表される化合物から式(8)で表される化合物を製造する場合も、同様に製造できる。
【0077】
【化34】
【0078】
式中、R、R〜R、R12、R13、Zは上記と同様の基を示す。
上記式(9)で表される化合物の水素化は、通常のアルケンの水素化反応と同様に行えばよく、パラジウム、白金、ニッケル等の触媒を用いて行うことができる。これらの触媒を用いる水素化反応は水素がsyn付加するので、Rの立体配置は上記の反応式に示したようになる。
【0079】
水素化後は(VI)の工程と同様に、酸化反応、ホーナー・ワズワース・エモンス反応、加水分解反応を行えば、上記式(7)で表される化合物を製造できる。
【0080】
(VIII)式(5)〜(8)のいずれかで表される化合物から式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物の製造
上記式(5)〜(8)のいずれかで表される化合物は、カルボキシル基をR10に変換した後、−OZから保護基Zを脱離してヒドロキシ基とし、次にRへ変換することにより、上記式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物を製造できる。上記式(5)で表される化合物から上記式(1)で表される化合物を製造する場合を、反応式10に示す。
【0081】
【化35】
【0082】
式中、R〜R10、Zは上記と同様の基を示す。
上記式(5)で表される化合物において、カルボキシル基からR10へ変換するには、通常有機合成で用いられる方法により行えばよく、例えばエステル化、アミド化、ハロゲン化、酸無水物化、エーテル化、アミノ化、酸化、還元、カップリング反応、保護、脱保護等を種々組み合わせて行えばよい。反応例を反応式11に示す。
【0083】
【化36】
【0084】
式中、R、R〜R、R〜R、Zは上記と同様の基を示す。
上記式(5)で表される化合物のカルボキシル基を水素化アルミニウムリチウム等の還元剤を用いて還元し、RXで表されるハロゲン化アルキルと反応させるウィリアムソン合成を行えば、R10が−CHORの化合物へ変換できる。また、カルボキシル基を、NHRで表されるアミンと脱水縮合反応させれば、R10が−C(O)NRの化合物へ変換できる。R10が−C(O)NRの化合物を水素化アルミニウムリチウム等の還元剤を用いて還元すればR10が−CHNRの化合物へと変換できる。また、カルボキシル基を、ROHで表されるアルコールと脱水縮合反応させれば、R10が−C(O)ORの化合物へ変換できる。カルボキシル基を還元してヒドロキシメチル基にした後、酸化してホルミル基とし、RMgXで表されるグリニャール試薬と反応させると、R10が−CHROHの化合物へ変換できる。これを酸化すれば、R10が−CORの化合物へ変換できる。
【0085】
上記反応式11のようにカルボキシル基をR10へ変換した化合物は、次に−OZをRへ変換すれば、目的とする上記式(1)で表される化合物を製造できる。−OZからRへ変換するには、通常有機合成で用いられる方法により行えばよく、例えばエステル化、エーテル化、ハロゲン化、アミノ化、酸化、還元、保護、脱保護等を種々組み合わせて行えばよい。変換する中間体として、R10にヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基等が導入された場合、その後に行う反応において必要があればこれらの基の保護、脱保護を行えばよい。反応例を反応式12に示す。
【0086】
【化37】
【0087】
式中、R、R〜R10、R〜R、Zは上記と同様の基を示す。
まず、−OZから保護基Zを脱離させ、ヒドロキシ基とした後、種々の基へ変換する。ヒドロキシ基をRXで表されるハロゲン化アルキルと反応させるウィリアムソン合成を行えば、Rが−ORの化合物へ変換できる。ヒドロキシ基をRCOOHで表されるカルボン酸と脱水縮合反応させれば、Rが−O(CO)Rの化合物へ変換できる。ヒドロキシ基を有するアルコールを酸化してケトンとし、これを水素化ジイソブチルアルミニウム等の還元剤を用いて還元すると、R及びRの置換基の向きの反対側からヒドリド攻撃が進行するので、立体が反転したアルコールが得られる。このアルコールのヒドロキシ基を、アゾジカルボン酸ジエチルとトリフェニルホスフィンで活性化させ、RNHと反応させる光延反応を行えば、再度立体が反転したアミノ基が導入され、Rが−NRの化合物へ変換できる。また、ヒドロキシ基を1,1’−チオカルボニルジイミダゾールと反応させてチオカルバマートとした後、水素化トリブチルスズ、アゾビスイソブチロニトリルを用いてラジカル還元を行うと、Rが水素原子の化合物へ変換できる。
【0088】
上記式(6)〜(8)で表される化合物から上記式(2)〜(4)で表される化合物の製造も同様にして行うことができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例では、式(1)〜(4)で表される化合物として、下記の化合物U1〜U5を製造した。
【0090】
【化38】
【0091】
[合成例1]
<(2E,4E)−5−((1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−ヒドロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチル−N−((ピリジン−3−イル)ペンタ−2,4−ジエンアミド(U1)の製造>
【0092】
【化39】
【0093】
<不斉アルキル化>
(S)−4−ベンジル−3−プロピオニルオキサリゾリジン−2−オン(a1)(1.12g,4.81mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(12.0mL)に対し、−78℃でナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドのテトラヒドロフラン溶液(1.0M,9.6mL,9.61mmol)を滴下した。反応混合液を−78℃で15分間撹拌した後、(2E,4E)−1−ブロモヘキサ−2,4−ジエン(b1)(1.55g,9.61mmol)とテトラブチルアンモニウムヨージド(177mg,0.481mmol)を加え、室温まで昇温し1時間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を0℃で加え反応を停止し、酢酸エチルを加え有機層を分取後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製し、(S)−3−((R,4E,6E)−2−メチルオクタ−4,6−ジエノイル)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン(c1)(1.31g,87%)を得た。物性値は以下の通りである。
【0094】
IR(neat):1782,1697cm−1
H NMR(CDCl):δ
7.38−7.08(m,5H,Ph),
6.05(dd,J=11.0,14.5Hz,1H,6−H),
6.03(dd,J=11.0,14.5Hz,1H,5−H),
5.61(dq,J=7.0,14.5Hz,1H,7−H),
5.55(ddd,J=7.0,7.5,14.5Hz,1H,4−H),
4.71(m,1H,1’−H),
4.18(dd,J=9.0,17.0Hz,1H,Bn),
4.14(dd,J=3.0,9.0Hz,1H,Bn),
3.85(ddq,J=7.0,7.0,13.5Hz,1H,2−H),
3.23(dd,J=3.5,13.5Hz,1H,1’−H),
2.68(dd,J=10.0,13.5Hz,1H,2’−H),
2.51(ddd,J=7.0,7.0,14.0Hz,1H,3−H),
2.24(ddd,J=7.5,7.5,14.0Hz,1H,3−H),
1.72(d,J=7.0Hz,3H,8−H),
1.18(d,J=7.0Hz,3H,2−Me);
HR MS:calcd for C1923NNa(M+Na)336.1570,found 336.1576.
【0095】
【化40】
【0096】
<還元>
水素化アルミニウムリチウム(472mg,12.5mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(12.0mL)に対し、0℃で(S)−3−((R,4E,6E)−2−メチルオクタ−4,6−ジエノイル)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン(c1)(1.3g,4.15mmol)のテトラヒドロフラン溶液(5.0mL)を滴下し、反応混合液を室温で12時間撹拌した。反応系に水と4N水酸化ナトリウム水溶液を0℃で加え反応を停止し、セライト濾過後、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィで精製し、(R,4E,6E)−2−メチルオクタ−4,6−ジエン−1−オール(d1)(473mg,81%)を得た。物性値は以下の通りである。
【0097】
IR(neat):3340cm−1
H NMR(CDCl):δ
6.10−5.96(m,2H,5−H,6−H),
5.68−5.47(m,2H,4−H,7−H),
3.51(ddd,J=5.7,10.8,10.8Hz,1H,1−H),
3.46(ddd,J=6.0,10.8,11.7Hz,1H,1−H),
2.17(ddd,J=6.6,6.6,13.5Hz,1H,3−H),
1.95(ddd,J=6.9,6.9,13.5Hz,1H,3−H),
1.77−1.55(m,1H,2−H),
1.74(d,J=5.7Hz,3H,8−H),
1.30(dd,J=5.4,5.7Hz,1H,OH),
0.92(d,J=6.9Hz,3H,2−Me);
HR MS:calcd for C1923NNa(M+Na)140.1201,found 140.1202.
【0098】
【化41】
【0099】
<酸化>
モレキュラーシーブス4Å(401mg)と(R,4E,6E)−2−メチルオクタ−4,6−ジエン−1−オール(d1)(93.7mg,0.669mmol)の塩化メチレン溶液(6.7mL)に0℃でN−メチルモルホリン−N−オキシド(235mg,2.01mmol)と過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(23.5mg,0.0669mmol)を加え、反応混合物を30分間撹拌した。ゲル濾過後、減圧濃縮して粗生成物を得、精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0100】
<向山アルドール反応>
スズ(II)トリフラート(362mg,0.870mmol)の塩化メチレン溶液(3,7mL)に対し、室温でN−(((R)−1−メチルピロリジン−2−イル)メチル)ナフタレン−1−アミン(225mg,0.937mmol)とジブチルスズ(IV)ジアセテート(330mg,0.937mmol)を加えた。反応混合液を−78℃にした後、上記の粗生成物と((Z)−1−(エチルチオ)プロパ−1−エニロキシ)トリメチルシラン(e1)(152mg,0.803mol)を加え、3時間撹拌した。反応系に飽和重曹水を−78℃で加え反応を停止し、セライト濾過後、塩化メチレンを加え有機層を分取し、水層を塩化メチレンで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層カラムクロマトグラフィで精製し、(2R,3S,4R,6E,8E)−S−エチル 3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルデカ−6,8−ジエンチオアート(f1)(106mg,62%)を得た。物性値は以下の通りである。
【0101】
IR(neat):3502,1681cm−1
H NMR(CDCl):δ
6.10−5.93(m,2H,7−H,8−H),
5.70−5.52(m,1H,9−H),
5.60−5.40(m,1H,6−H),
3.71(ddd,J=4.5,5.7,5.7Hz,1H,3−H),
2.88(dq,J=7.5,12.5Hz,1H,SEt),
2.87(dq,J=7.5,12.5Hz,1H,SEt),
2.84(dq,J=5.7,6.9Hz,1H,2−H),
2.14(ddd,J=6.9,6.9,13.8Hz,1H,5−H),
2.06(d,J=4.5Hz,1H,OH),
1.96(ddd,J=7.2,7.2,13.8Hz,1H,5−H),
1.74(d,J=6.0Hz,3H,10−H),
1.66(dddq,J=5.7,6.9,6.9,7.2Hz,1H,4−H),
1.26(t,J=7.5Hz,3H,SEt),
1.24(d,J=6.9Hz,3H,2−Me),
0.96(d,J=6.9Hz,3H,4−Me);
HR MS:calcd for C1424SNa(M+Na)279.1389,found 279.1379.
【0102】
【化42】
【0103】
<ヒドロキシ基保護>
(2R,3S,4R,6E,8E)−S−エチル 3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルデカ−6,8−ジエンチオアート(f1)(96.7mg,0.378mmol)を含む塩化メチレン溶液(1.9mL)に対し、0℃で2,6−ルチジン(0.17mL,1.51mmol)とt−ブチルジメチルシリルトリフラート(0.20mL,0.755mmol)を加え、反応混合液を0℃で1時間撹拌した。反応系に飽和重曹水を0℃で加え反応を停止し、塩化メチルを加え有機層を分取後、水層を塩化メチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィで精製し、(2R,3S,4R,6E,8E)−S−エチル−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−2,4−ジメチルデカ−6,8−ジエンチオアート(g1)(137mg,98%)を得た。物性値は以下の通りである。
【0104】
IR(neat):1685cm−1
H NMR(CDCl):δ
6.01(dd,J=13.5,23.5Hz,1H,8−H),
5.99(dd,J=13.5,23.5Hz,1H,7−H),
5.58(dq,J=6.5,13.5Hz,1H,9−H),
5.46(dq,J=6.5,8.5,13.5Hz,1H,6−H),
3.89(dd,J=3.0,6.5Hz,1H,3−H),
2.85(q,J=7.5Hz,2H,SEt),
2.78(dq,J=6.5,7.0Hz,1H,2−H),
2.21(ddd,J=5.5,6.5,14.0Hz,1H,5−H),
1.88(ddd,J=8.5,9.0,14.0Hz,1H,5−H),
1.73(d,J=6.5Hz,3H,10−H),
1.75−1.57(m,1H,4−H),
1.24(q,J=7.5Hz,3H,SEt),
1.18(d,J=7.0Hz,3H,2−Me),
0.90(s,9H,TBS),
0.87(d,J=7.0Hz,3H,4−Me),
0.06(s,3H,TBS),
0.04(s,3H,TBS);
HR MS:calcd for C2038SSiNa(M+Na)393.2254,found 393.2246.
【0105】
【化43】
【0106】
<還元>
(2R,3S,4R,6E,8E)−S−エチル−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−2,4−ジメチルデカ−6,8−ジエンチオアート(g1)(86.9mg,0.235mmol)を含む塩化メチレン溶液(4.7mL)に対し、−78℃で水素化ジイソブチルアルミニウムのn−ヘキサン溶液(1.0M,0.755mL,0.755mmol)を加え、5分間撹拌した。反応系にメタノールと飽和ロッシェル塩水溶液を−78℃で加え反応を停止し、塩化メチルを加え有機層を分取後、水層を塩化メチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得、精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0107】
<ウィティッヒ反応>
上記の粗生成物を含むトルエン溶液(2.4mL)に対し、室温で(トリフェニルホスホラニリデン)酢酸エチル(h1)(245mg,0.705mmol)を加え、120℃まで昇温し3時間撹拌した。反応混合液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィで精製し、(2E,4S,5S,6R,8E,10E)−エチル 5−tert−ブチルジメチルシロキシ−4,6−ジメチルドデカ−2,8,10−トリエノアート(i1)(73.9mg,83%)を得た。物性値は以下の通りである。
【0108】
IR(neat):1720cm−1
H NMR(CDCl):δ
6.99(dd,J=8.5,15.5Hz,1H,3−H),
6.01(dd,J=12.5,23.5Hz,1H,10−H),
5.99(dd,J=12.0,23.5Hz,1H,9−H),
5.77(d,J=15.5Hz,1H,2−H),
5.58(dq,J=7.0,13.5Hz,1H,11−H),
5.46(ddd,J=7.0,7.5,14.5Hz,1H,8−H),
4.19(q,J=7.0Hz,2H,OEt),
3.51(dd,J=4.0,6.5Hz,1H,5−H),
2.51(ddq,J=6.5,7.5,8.5Hz,1H,4−H),
2.14(ddd,J=6.5,7.0,13.5Hz,1H,7−H),
1.73(d,J=7.0Hz,3H,12−H)
1.90(ddd,J=6.0,8.5,13.5Hz,1H,7−H),
1.68−1.54(m,1H,6−H),
1.29(t,J=7.0Hz,3H,OEt),
1.04(d,J=7.5Hz,3H,4−Me),
0.91(s,9H,TBS),
0.82(d,J=7.5Hz,3H,6−Me),
0.06(s,3H,TBS),
0.05(s,3H,TBS);
HR MS:calcd for C2240SiNa(M+Na)403.2639,found 403.2651.
【0109】
【化44】
【0110】
<酸化及びエヴァンスアルドール反応>
(R,4E,6E)−2−メチルオクタ−4,6−ジエン−1−オール(d1)(110mg,0.784mmol)の塩化メチレン溶液(3.93mL)に、室温でジメチルスルホキシド(0.20mL)とトリエチルアミン(0.20mL)を加えた。反応混合液を0℃にした後、三酸化イオウ−ピリジン錯体(374mg,2.35mmol)を加えて室温で反応混合物を1時間撹拌した。この反応混合物を、別途調製したボランエノラート溶液にカニュレーションで加えて1時間撹拌後、0℃に昇温し1時間撹拌した。反応系にメタノール、緩衝溶液(pH7)及び過酸化水素水を加えて30分間撹拌した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルを加え有機層を分取後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィで精製し、(4S)−3−((2R,3S,4R,6E,8E)−3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルデカー6,8−ジエノイル)−4−ベンジルオキサゾリジノン−2−オン(p1)(273mg,94%)を得た。
【0111】
上記のボランエノラート溶液は、以下のように調製した。(R)−4−ベンジル−3−プロピオニルオキサリゾリジン−2−オン(n1)(220mg,0.943mmol)の塩化メチレン溶液(3.93mL)に、0℃でジブチルボロントリフラートの塩化メチレン溶液(1.0M,0.940mL,0.940mmol)とトリエチルアミン(0.130mL,0.983mmol)を加えた。反応混合液を0℃で10分間撹拌したものを直ちに反応に用いた。
【0112】
(4S)−3−((2R,3S,4R,6E,8E)−3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルデカー6,8−ジエノイル)−4−ベンジルオキサゾリジノン−2−オン(p1)の物性値は以下の通りである。
[α]24 −39.9(c 1.01,CHCl);
IR(neat):3471,1782cm−1
H NMR(CDCl):δ
7.40−7.10(m,5H,Ph),
6.10−5.90(m,2H,7’−H,8’−H),
5.60(qd,J=7.0,13.0Hz,1H,9’−H),
5.51(td,J=7.0,14.5Hz,1H,6’−H),
4.73−4.60(m,1H,4’−H),
4.21(dd,J=8.5,12.5Hz,1H,Bn),
4.19(dd,J=2.5,12.5Hz,1H,Bn),
3.99(dq,J=3.5,6.0Hz,1H,2’−H),
3.71(ddd,J=3.5,4.0,7.5Hz,1H,3’−H),
3.25(dd,J=2.5,13.5Hz,1H,5−H),
2.78(dd,J=8.5,13.5Hz,1H,5−H),
2.59(d,J=3.5Hz,1H,OH),
2.20(ddd,J=6.0,7.0,13.0Hz,1H,5’−H),
1.94(ddd,J=7.5,8.5,13.0Hz,1H,5’−H),
1.80−1.63(m,1H,4’−H),
1.73(d,J=7.0Hz,3H,10’−H),
1.28(d,J=6.0Hz,3H,2’−Me),
0.98(d,J=7.5Hz,3H,4’−Me);
13C NMR(CDCl):δ177.3(1’),152.8(2),135.0(Ph),132.2(7’),131.5(8’),129.4(Ph),129.0(6’),128.9(Ph),127.4(Ph),127.3(9’),74.7(3’),66.1(Bn),55.1(4’),39.9(2’),37.7(5),36.5(5’),35.9(4’),17.9(10’),15.0(4’−Me),11.5(2’−Me);
HR MS:calcd for C2229NNa(M+Na)394.1989,found 3394.1981.
【0113】
【化45】
【0114】
<ワインレブアミドへの変換>
N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(1.63g,16.7mmol)のテトラヒドロフラン溶液(45.7mL)に対し、0℃でトリメチルアルミニウムのn−ヘキサン溶液(1.0M,16.7mL,16.7mmol)を加え反応混合液を0℃で15分間撹拌した後、室温まで昇温して15分間撹拌した。反応混合液に0℃で(4S)−3−((2R,3S,4R,6E,8E)−3−ヒドロキシ−2,4−ジメチルデカー6,8−ジエノイル)−4−ベンジルオキサゾリジノン−2−オン(p1)(2.68g,7.21mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10.0mL)を加えて15分間撹拌した。反応系に1M塩酸を加え反応を停止し、塩化メチレンを加え有機層を分取後、水層を塩化メチレンで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製し、(2R,3S,4R,6E,8E)−3−ヒドロキシ−N−メトキシ−2,4−ジメチルデカ−6,8−ジエナミド(q1)(1.75g,95%)を得た。物性値は以下の通りである。
【0115】
[α]27 +1.9(c 1.28,CHCl);
IR(neat):3433,1643cm−1
H NMR(CDCl):δ
6.10−5.93(m,2H,7−H,8−H),
5.65−5.45(m,2H,6−H,9−H),
3.70(d,J=5.0Hz,3H,OMe),
3.64−3.56(m,1H,3−H),
3.52−3.44(m,1H,OH),
3.20(d,J=4.0Hz,3H,NMe),
3.20−3.08(m,1H,2−H),
2.25−2.10(m,1H,5−H),
2.00−1.90(m,1H,5−H),
1.80−1.63(m,1H,4−H),
1.72(d,J=6.0Hz,3H,10−H),
1.17(d,J=7.0Hz,3H,2−Me),
1.00(d,J=6.5Hz,3H,4−Me);
13C NMR(CDCl):δ178.0(1),132.1(8),131.4(7),129.1(9),127.2(6),75.0(3),61.5(OMe),36.6(4),36.2(2),35.4(5),31.9(NMe),17.9(10),15.2(2−Me),11.1(4−Me);
HR MS:calcd for C1425NNa(M+Na)278.1727,found 278.1735.
【0116】
【化46】
【0117】
<ヒドロキシ基保護>
(2R,3S,4R,6E,8E)−3−ヒドロキシ−N−メトキシ−2,4−ジメチルデカ−6,8−ジエナミド(q1)(1.75g,6.86mmol)を含む塩化メチレン溶液(68.6mL)に対し、0℃で2,6−ルチジン(3.16mL,27.4mmol)とt−ブチルジメチルシリルトリフラート(2.77mL,10.3mmol)を加え、反応混合液を0℃で30分間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を0℃で加え反応を停止し、塩化メチレンを加え有機層を分取後、水層を塩化メチレンで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製し、(2R,3S,4R,6E,8E)−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メトキシ−2,4−ジメチルデカ−6,8−ジエナミド(r1)(2.53g,99%)を得た。物性値は以下の通りである。
【0118】
[α]25 +5.6(c 0.720,CHCl);
IR(neat):1666cm−1
H NMR(CDCl):δ
6.08−5.90(m,2H,7−H,8−H),
5.56(qd,J=7.0,21.0Hz,1H,9−H),
5.48(td,J=7.5,14.5Hz,1H,6−H),
3.89(d,J=7.5,8.5Hz,1H,3−H),
3.69(s,3H,OMe),
3.16(s,3H,NMe),
3.30−2.95(m,1H,3−H),
2.33−2.15(m,1H,5−H),
2.00−1.80(m,1H,5−H),
1.72(d,J=7.5Hz,3H,10−H),
1.63−1.44(m,1H,4−H,),
1.14(d,J=7.0Hz,3H,2−Me),
0.92(s,9H,TBS),
0.81(d,J=6.0Hz,3H,4−Me),
0.10(s,3H,TBS),
0.08(s,3H,TBS);
13C NMR(CDCl):δ177.0(1),131.7(8),131.5(7),130.8(9),126.7(6),77.0(3),61.4(OMe),38.9(2),38.6(4),37.2(5),32.2(NMe),26.2(TBS),18.4(TBS),18.0(10),15.8(2−Me),13.5(4−Me),−3.69(TBS),−3.72(TBS);
HR MS:calcd for C2039NNa(M+Na)392.2591,found 392.2607.
【0119】
【化47】
【0120】
<還元>
(2R,3S,4R,6E,8E)−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メトキシ−2,4−ジメチルデカ−6,8−ジエナミド(r1)(1.23g,3.33mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(33.3mL)に対し、−78℃で水素化ジイソブチルアルミニウムのn−ヘキサン溶液(1.0M,8.32mL,8.32mmol)を加え、2.5時間撹拌した。反応系にメタノールと飽和ロッシェル塩水溶液を−78℃で加え反応を停止し、酢酸エチルを加え有機層を分取後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得、精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0121】
<ウィティッヒ反応>
上記の粗生成物を含むトルエン溶液(33.3mL)に対し、室温で(トリフェニルホスホラニリデン)酢酸エチル(h1)(3.48g,9.99mmol)を加え、110℃まで昇温し1.5時間撹拌した。反応混合液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製し、(2E,4S,5S,6R,8E,10E)−エチル 5−tert−ブチルジメチルシロキシ−4,6−ジメチルドデカ−2,8,10−トリエノアート(i1)(1.22g,96%)を得た。
【0122】
【化48】
【0123】
<環化>
(2E,4S,5S,6R,8E,10E)−エチル 5−tert−ブチルジメチルシロキシ−4,6−ジメチルドデカ−2,8,10−トリエノアート(i1)(71.5mg,0.188mmol)を含むトルエン溶液(9.4mL)を140℃まで昇温し3日間撹拌した。反応混合液を減圧濃縮して粗生成物を得、精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0124】
<還元>
上記の粗生成物を含む塩化メチレン溶液(9.4mL)に対し、0℃で水素化ジイソブチルアルミニウムのn−ヘキサン溶液(1.0M,0.560mL,0.560mmol)を加え、30分間撹拌した。反応系にメタノールと飽和ロッシェル塩水溶液を0℃で加え反応を停止し、塩化メチルを加え有機層を分取後、水層を塩化メチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィで精製し、(1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−8−(ヒドロキシメチル)−1,3,7−トリメチルナフタレン−2−tert−ブチルジメチルシロキシオール(j1)(24.4mg,38%)と(1S,2S,3R,4aS,7R,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−8−(ヒドロキシメチル)−1,3,7−トリメチルナフタレン−2−tert−ブチルジメチルシロキシオール(j2)(30.3mg,48%)とを得た。物性値は以下の通りである。
【0125】
1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−8−(ヒドロキシメチル)−1,3,7−トリメチルナフタレン−2−tert−ブチルジメチルシロキシオール(j1)
IR(neat):3348cm−1
H NMR(CDCl):δ
5.72(ddd,J=3.0,3.5,9.0Hz,1H,5−H),
5.60(ddd,J=2.5,2.5,9.0Hz,1H,4−H),
3.78(ddd,J=4.0,7.5,11.0Hz,1H,1−H),
3.52(ddd,J=5.0,5.5,11.0Hz,1H,1−H),
2.88(dd,J=9.0,9.5Hz,1H,9−H),
1.88−1.74(m,3H,2−H,6−H,7−H),
1.59−1.49(m,1H,8−H),
1.49−1.38(m,1H,10−H),
1.19(d,J=5.7Hz,3H,3−Me),
1.09−1.00(m,2H,7−H,11−H),
1.02(d,J=6.0Hz,3H,8−Me),
0.98(d,J=6.0Hz,3H,10−Me),
0.92(s,9H,TBS),
0.06(s,3H,TBS),
0.05(s,3H,TBS);
HR MS:calcd for C2038SiNa(M+Na)361.2533,found 361.2520.
【0126】
1S,2S,3R,4aS,7R,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−8−(ヒドロキシメチル)−1,3,7−トリメチルナフタレン−2−tert−ブチルジメチルシロキシオール(j2)
IR(neat):3309cm−1
H NMR(CDCl):δ
5.54(ddd,J=2.5,3.0,10.0Hz,1H,5−H),
5.38(dd,J=1.0,10.0Hz,1H,4−H),
3.56(dd,J=7.5,10.5Hz,1H,1−H),
3.52(dd,J=7.0,10.5Hz,1H,1−H),
2.83(dd,J=8.5,9.5Hz,1H,9−H),
2.20−2.28(m,1H,6−H),
2.03−1.93(m,2H,2−H,3−H),
1.75−1.60(m,2H,7−H,8−H),
1.58−1.45(m,2H,10−H,11−H),
1.36(s,1H,1−OH),
1.28(dddd,J=2.0,5.0,12.5,13.5Hz,1H,7−H),
1.11(d,J=7.0Hz,3H,3−Me),
1.00(d,J=6.5Hz,3H,8−Me),
0.92(d,J=7.0Hz,3H,10−Me),
0.9(s,9H,TBS),
0.078(s,6H,TBS);
HR MS:calcd for C2038SiNa(M+Na)361.2533,found 361.2529.
【0127】
【化49】
【0128】
<酸化>
1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−8−(ヒドロキシメチル)−1,3,7−トリメチルナフタレン−2−tert−ブチルジメチルシロキシオール(j1)(20.3mg,0.0601mmol)の塩化メチレン溶液(0.60mL)に0℃でN−メチルモルホリン−N−オキシド(21.1mg,0.180mmol)と過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(2.1mg,0.000601mmol)を加え、反応混合物を30分間撹拌した。ゲル濾過後、減圧濃縮して粗生成物を得、精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0129】
<ホーナー・ワズワース・エモンス反応>
(E)−エチル ジエチルホスホノ−3−メチルブタ−3−エノアート(31.7mg,0.120mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(1.0mL)に対し、−78℃でリチウムビス(トリメチルシリル)アミドのテトラヒドロフラン溶液(1.0M,0.110mL,0.110mmol)を滴下した。反応混合液を−78℃で10分間撹拌した後、上記の粗生成物のテトラヒドロフラン溶液(0.50mL)を加え、室温まで昇温し14時間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を0℃で加え反応を停止し、酢酸エチルを加え有機層を分取後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製し、(2E,4E)−エチル 5−((1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチルペンタ−2,4−ジエノアート(k1)(18.9mg,71%)を得た。物性値は以下の通りである。
【0130】
IR(neat):1705,1635cm−1
H NMR(CDCl):δ
7.18(ddd,J=0.5,1.0,10.0Hz,1H,3−H),
6.24(dd,J=11.5,15.0Hz,1H,4−H),
6.09(dd,J=10.5,15.0Hz,1H,5−H),
5.58(ddd,J=3.0,4.5,9.5Hz,1H,8−H),
5.47(ddd,J=2.0,2.5,9.5Hz,1H,9−H),
4.21(dq,J=1.0,7.5Hz,2H,OEt),
2.85(dd,J=9.5,9.5Hz,1H,13−H),
2.46(ddd,J=5.5,9.0,10.5Hz,1H,6−H),
2.25−2.14(m,1H,7−H),
1.93(s,3H,2−Me),
1.91−1.82(m,1H,10−H),
1.74(ddd,J=3.0,3.5,13.0Hz,1H,11−H),
1.59−1.48(m,1H,12−H),
1.44−1.32(m,1H,14−H),
1.31(t,J=7.0Hz,3H,OEt),
1.10−0.80(m,2H,11−H,15−H)
1.00(d,J=6.5Hz,3H,7−Me),
0.98(d,J=6.5Hz,3H,14−Me),
0.95(d,J=7.0Hz,3H,12−Me),
0.90(s,9H,TBS),
0.06(s,6H,TBS);
HR MS:calcd for C2746SiNa(M+Na)469.3108,found 469.3102.
【0131】
【化50】
【0132】
<加水分解>
(2E,4E)−エチル 5−((1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチルペンタ−2,4−ジエノアート(k1)(17.1mg,0.0383mmol)のテトラヒドロフラン(0.50mL)とメタノール(0.25mL)の混合溶液に0℃で4N水酸化リチウム水溶液(0.30mL)を加え、室温まで昇温し1日間撹拌した。反応系に1N塩酸水溶液を0℃で加え反応を停止し、酢酸エチルを加え有機層を分取後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物は精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0133】
<アミド化>
上記の粗生成物を含む塩化メチレン溶液(1.3mL)に対し、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物(18.4mg,0.0536mmol)と4−ジメチルアミノピリジン(14.0mg,0.115mmol)を加えた。反応混合液を10分間撹拌した後、3−アミノメチルピリジン(0.0400mL,0.383mmol)を加え室温で14時間撹拌した。そのまま反応混合液をカラムクロマトグラフィで精製し、(2E,4E)−5−((1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチル−N−((ピリジン−3−イル)ペンタ−2,4−ジエンアミド(m1)(19.2mg,99%)を得た。物性値は以下の通りである。
【0134】
IR(neat):1643,1520cm−1
H NMR(CDCl):δ
8.63−8.45(m,2H,Py),
7.72−7.60(m,1H,Py),
6.95(d,J=10.0Hz,1H,3−H),
6.20(dd,J=11.0,14.5Hz,1H,4−H),
6.14−6.02(m,1H,Py),
6.05(dd,J=10.5,14.5Hz,1H,5−H),
5.56(ddd,J=2.5,4.0,9.5Hz,1H,8−H),
5.46(ddd,J=2.0,2.5,9.5Hz,1H,9−H),
4.56(d,J=6.5Hz,1H,Bn),
4.54(d,J=6.5Hz,1H,Bn),
2.85(dd,J=9.0,9.5Hz,1H,13−H),
2.45(ddd,J=6.0,8.5,10.0Hz,1H,6−H),
2.25−2.10(m,1H,7−H),
1.96(s,3H,2−Me),
1.90−1.80(m,1H,10−H),
1.73(ddd,J=3.5,4.0,13.0Hz,1H,11−H),
1.68−1.55(m,1H,NH),
1.60−1.45(m,1H,12−H,),
1.42−1.30(m,1H,14−H),
1.05−0.80(m,2H,11−H,15−H),
0.99(d,J=6.5Hz,3H,7−Me),
0.96(d,J=6.5Hz,3H,14−Me),
0.93(d,J=7.0Hz,3H,12−Me),
0.90(s,9H,TBS),
0.06(s,6H,TBS);
HR MS:calcd for C3148SiNa(M+Na)531.3377,found 531.3352.
【0135】
【化51】
【0136】
<脱保護>
(2E,4E)−5−((1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチル−N−((ピリジン−3−イル)ペンタ−2,4−ジエンアミド(m1)(17.7mg,0.0348mmol)のテトラヒドロフラン(0.80mL)とメタノール(0.80mL)の混合溶液に0℃で12N塩酸(0.16mL)を加え、室温まで昇温し14時間撹拌した。反応系に4N水酸化リチウム水溶液を0℃で加え反応を停止し、ジエチルエーテルを加え有機層を分取後、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製し、(2E,4E)−5−((1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−ヒドロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチル−N−((ピリジン−3−イル)ペンタ−2,4−ジエンアミド(13.0mg,95%)(U1)を得た。物性値は以下の通りである。
この化合物は、国際特許第2005/070856の実施例5の化合物と同じ化合物であり、物性値は一致していた。
【0137】
IR(neat):3317,1643cm−1
H NMR(CDCl):δ
8.63−8.45(m,2H,Py),
7.67(d,J=8.0Hz,1H,Py),
6.97(d,J=10.0Hz,1H,3−H),
6.23(dd,J=11.0,15.0Hz,1H,4−H),
6.15−6.03(m,1H,Py),
6.10(dd,J=5.5,15.0Hz,1H,5−H),
5.58(ddd,J=3.0,4.0,9.5Hz,1H,8−H),
5.47−5.40(m,1H,9−H),
4.45(d,J=6.5Hz,2H,Bn),
2.73(dd,J=9.5,9.5Hz,1H,13−H),
2.47(ddd,J=5.0,9.5,10.5Hz,1H,6−H),
2.25−2.12(m,1H,7−H),
1.96(s,3H,2−Me),
1.92−1.81(m,1H,10−H),
1.75(ddd,J=3.5,3.5,14.0Hz,1H,11−H),
1.58−1.40(m,2H,12−H,NH),
1.35−1.20(m,2H,11−H,14−H),
1.13−0.97(m,1H,15−H),
1.07(d,J=6.5Hz,3H,7−Me),
1.04(d,J=6.5Hz,3H,14−Me),
0.94(d,J=6.5Hz,3H,12−Me);
HR MS:calcd for C2534Na(M+Na)417.2512,found 417.2507.
【0138】
[合成例2]
<(2E,4E)−5−((1S,2S,3R,4aS,7R,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−ヒドロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチル−N−((ピリジン−3−イル)ペンタ−2,4−ジエンアミド(U2)の製造>
合成例1において、中間体として得られた、1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−8−(ヒドロキシメチル)−1,3,7−トリメチルナフタレン−2−tert−ブチルジメチルシロキシオール(j1)の代わりに、1S,2S,3R,4aS,7R,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−8−(ヒドロキシメチル)−1,3,7−トリメチルナフタレン−2−tert−ブチルジメチルシロキシオール(j2)を用いる他は、合成例1と同様に反応を行った。
【0139】
【化52】
【0140】
<酸化>
1S,2S,3R,4aS,7R,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−8−(ヒドロキシメチル)−1,3,7−トリメチルナフタレン−2−tert−ブチルジメチルシロキシオール(j2)(16.0mg,0.0473mmol)の塩化メチレン溶液(0.47mL)に0℃でN−メチルモルホリン−N−オキシド(16.6mg,0.142mmol)と過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(1.7mg,0.000473mmol)を加え、反応混合物を30分間撹拌した。ゲル濾過後、減圧濃縮して粗生成物を得、精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0141】
<ホーナー・ワズワース・エモンス反応>
(E)−エチル ジエチルホスホノ−3−メチルブタ−3−エノアート(40.0mg,0.151mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(0.50mL)に対し、−78℃でリチウムビス(トリメチルシリル)アミドのテトラヒドロフラン溶液(1.0M,0.140mL,0.140mmol)を滴下した。反応混合液を−78℃で10分間撹拌した後、上記の粗生成物のテトラヒドロフラン溶液(0.50mL)を加え、室温まで昇温し14時間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を0℃で加え反応を停止し、酢酸エチルを加え有機層を分取後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製し、(2E,4E)−エチル−5−((1S,2S,3R,4aS,7R,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチルペンタ−2,4−ジエノアート(k2)(13.7mg,65%)を得た。物性値は以下の通りである。
【0142】
IR (neat):1705,1635cm−1
H NMR(CDCl):δ
7.16(d,J=12.0Hz,1H,3−H),
6.30(dd,J=12.0,15.0Hz,1H,4−H),
6.04(dd,J=8.5,15.0Hz,1H,5−H),
5.57(ddd,J=2.5,3.0,10.0Hz,1H,8−H),
5.50(ddd,J=2.0,2.5,10.0Hz,1H,9−H),
4.20(q,J=7.0Hz,3H,OEt),
2.94(dd,J=7.5,8.0Hz,1H,9−H),
2.53(ddd,J=4.0,4.5,8.5Hz,1H,6−H),
2.37−2.28(m,1H,10−H),
2.11−2.00(m,1H,7−H),
1.93(s,3H,2−Me),
1.79−1.63(m,2H,11−H,14−H),
1.63−1.53(m,1H,12−H),
1.39(ddd,J=4.5,5.0,9.5Hz,1H,15−H),
1.30(t,J=7.0Hz,2H,OEt),
1.24(ddd,J=5.0,10.0,14.0Hz,1H,11−H),
1.07(d,J=7.0Hz,3H,7−Me),
1.02(d,J=6.5Hz,3H,14−Me),
0.94(d,J=6.5Hz,3H,12−Me),
0.90(s,9H,TBS),
0.04(s,6H,TBS);
HR MS:calcd for C2746SiNa(M+Na)469.3108,found 469.3104.
【0143】
【化53】
【0144】
<加水分解>
(2E,4E)−エチル−5−((1S,2S,3R,4aS,7R,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチルペンタ−2,4−ジエノアート(k2)(10.9mg,0.0244mmol)のテトラヒドロフラン(0.60mL)とメタノール(0.30mL)の混合溶液に0℃で4N水酸化リチウム水溶液(0.30mL)を加え、室温まで昇温し16時間撹拌した。反応系に1N塩酸水溶液を0℃で加え反応を停止し、酢酸エチルを加え有機層を分取後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物は精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0145】
<アミド化>
上記の粗生成物を含む塩化メチレン溶液(1.3mL)に対し、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物(10.1mg,0.0293mmol)と4−ジメチルアミノピリジン(8.9mg,0.0732mmol)を加えた。反応混合液を10分間撹拌した後、3−アミノメチルピリジン(0.0240mL,0.244mmol)を加え室温で12時間撹拌した。そのまま反応混合液をカラムクロマトグラフィで精製し、(2E,4E)−5−((1S,2S,3R,4aS,7R,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチル−N−((ピリジン−3−イル)ペンタ−2,4−ジエンアミド(m2)(12.4mg,100%)を得た。物性値は以下の通りである。
【0146】
IR(neat):1643,1527cm−1
H NMR(CDCl):δ
8.63−8.43(m,2H,Py),
7.72−7.58(m,1H,Py),
6.91(d,J=11.0Hz,1H,3−H),
6.27(dd,J=11.0,15.0Hz,1H,4−H),
6.18−6.06(m,1H,Py),
5.98(dd,J=8.0,15.5Hz,1H,5−H),
5.56(ddd,J=2.5,3.0,10.0Hz,1H,8−H),
5.49(ddd,J=2.0,2.5,10.0Hz,1H,9−H),
4.54(d,J=5.5Hz,2H,Bn),
2.94(dd,J=7.5,8.0Hz,1H,13−H),
2.50(ddd,J=4.0,4.5,9.0Hz,1H,6−H),
2.34−2.25(m,1H,10−H),
2.10−1.98(m,1H,7−H),
1.96(d,J=1.0Hz,3H,2−Me),
1.80−1.60(m,2H,11−H,14−H),
1.37(ddd,J=4.0,5.0,9.5Hz,1H,15−H),
1.30−1.17(m,2H,11−H,NH),
1.05(d,J=7.0Hz,3H,7−Me),
1.01(d,J=7.0Hz,3H,14−Me),
0.94(d,J=7.0Hz,3H,12−Me),
0.90(s,9H,TBS),
0.03(s,6H,TBS);
HR MS:calcd for C3148SiNa(M+Na)531.3377,found 531.3370.
【0147】
【化54】
【0148】
<脱保護>
(2E,4E)−5−((1S,2S,3R,4aS,7R,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチル−N−((ピリジン−3−イル)ペンタ−2,4−ジエンアミド(20.1mg,0.0396mmol)のテトラヒドロフラン(0.35mL)とメタノール(0.35mL)の混合溶液に0℃で12N塩酸(0.07mL)を加え、室温まで昇温し10時間撹拌した。反応系に4N水酸化リチウム水溶液を0℃で加え反応を停止し、ジエチルエーテルを加え有機層を分取後、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過、減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製し、(2E,4E)−5−((1S,2S,3R,4aS,7R,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−ヒドロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチル−N−((ピリジン−3−イル)ペンタ−2,4−ジエンアミド(15.0mg,96%)(U2)を得た。物性値は以下の通りである。
【0149】
IR(neat):3317,1644cm−1
H NMR(CDCl):δ
8.60−8.45(m,2H,Py),
7.70−7.60(m,1H,Py),
6.90(d,J=11.5Hz,1H,3−H),
6.26(ddd,J=1.0,11.0,15.0Hz,1H,4−H),
6.12−6.00(m,1H,Py),
6.04(dd,J=8.0,15.0Hz,1H,5−H),
5.60(ddd,J=3.0,3.0,10.0Hz,1H,8−H),
5.46(dd,J=1.0,10.0Hz,1H,9−H),
4.54(d,J=6.0Hz,2H,Bn),
2.70(dd,J=9.0,9.5Hz,1H,13−H),
2.58−2.50(m,1H,6−H),
2.34−2.25(m,1H,10−H),
2.18−12.08(m,1H,7−H),
1.96(d,J=1.0Hz,3H,2−Me),
1.71(ddd,J=3.5,4.0,14.0Hz,1H,11−H),
1.68−1.54(m,1H,14−H),
1.54−1.38(m,2H,12−H,NH),
1.36(ddd,J=3.5,4.0,10.5Hz,1H,15−H),
1.25(ddd,J=5.0,12.5,14.0Hz,1H,11−H),
1.11(d,J=7.5Hz,3H,7−Me),
1.10(d,J=6.5Hz,3H,14−Me),
0.99(d,J=6.5Hz,3H,12−Me);
HR MS:calcd for C2534Na(M+Na)417.2512,found 417.2508.
【0150】
[合成例3]
<(2E,4E)−5−((1S,2S,3R,4aS,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−2−ヒドロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−メチル−N−((ピリジン−3−イル)ペンタ−2,4−ジエンアミド(U3)の合成>
合成例1において、中間体として得られた、1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−8−(ヒドロキシメチル)−1,3,7−トリメチルナフタレン−2−tert−ブチルジメチルシロキシオール(j1)を水素化する工程を更に含む他は、合成例1と同様に反応を行った。得られた化合物U3の物性値は以下の通りである。
【0151】
【化55】
【0152】
H NMR(CDCl):δ
8.56−8.52(m,2H,Py),
7.67(d,J=7.0Hz,1H,Py),
7.28−7.26(m,1H,NH),
6.96(d,J=10.0Hz,1H,3−H),
6.19−6.16(dd,J=11.0,15.0Hz,2H,4−H,Py),
6.09(dd,J=10.5,15.0Hz,1H,5−H),
4.55(d,J=6.0Hz,2H,NCH),
2.69(dd,J=9.5,9.5Hz,1H,6’−H),
2.25−2.15m,1H,4’−H),
1.95(s,3H,2−Me),
1.85−0.86(m,20H,1’−H,2’−H,3’−H,4’a−H,5’−H,7’−H,8’−H,8’a−H,3’−Me,5’−Me,7’−Me),
HR MS:calcd for C2537(M+H)397.2850,
found 397.2834.
【0153】
[合成例4]
<(2E,4E)−5−((1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−ヒドロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−2−エチル−N−((ピリジン−3−イル)ペンタ−2,4−ジエンアミド(U4)の製造>
合成例1において、上記式(11)に該当する化合物として、(E)−エチル ジエチルホスホノ−3−メチルブタ−3−エノアートの代わりに(E)−エチル ジエチルホスホノ−3−エチルブタ−3−エノアートを用いる他は、合成例1と同様に反応を行った。得られた化合物U4の物性値は以下の通りである。
【0154】
【化56】
【0155】
IR(neat):3317,1643,1597cm−1
H NMR(CDCl):δ
8.60−8.45(m,2H,Py),
7.72−7.58(m,1H,Py),
7.30−7.21(m,1H,Py),
6.77(d,J=10.8Hz,1H,3−H),
6.30−6.12(m,1H,NH),
6.22(dd,J=10.8,14.8Hz,1H,4−H),
6.04(dd,J=10.4,14.8Hz,1H,5−H),
5.57(ddd,J=2.8,4.4,9.6Hz,1H,2’−H),
5.44(ddd,J=1.6,2.0,9.6Hz,1H,1’−H),
4.54(d,J=5.6Hz,2H,NCH),
2.72(dd,J=9.6,9.6Hz,1H,6’−H),
2.53−2.33(m,1H,4’−H),
2.42(q,J=7.6Hz,2H,2−Et),
2.25−2.06(m,1H,3’−H),
1.90−1.80(m,1H,8’a−H),
1.74(ddd,J=3.2,3.8,13.2Hz,1H,8’−H),
1.55−1.36(m,1H,7’−H),
1.36−1.30(m,1H,5’−H),
1.13−0.84(m,2H,4’a−H,8’−H),
1.05(t,J=7.6Hz,3H,2−Et),
1.05(d,J=6.4Hz,3H,5’−Me),
1.03(d,J=6.8Hz,3H,7’−Me),
0.94(d,J=7.2Hz,3H,3’−Me);
13C NMR(CDCl):δ169.2(1),149.1(Py),148.8(Py),146.7(5),135.7(Py),134.7(3),134.3(Py),133.2(2’),132.7(1’),131.5(2),123.7(4 or Py),123.6(Py or 4),82.1(6’),49.7(4’),45.9(4’a),43.8(5’),41.8(8’a),41.3(NCH),39.5(7’),39.2(8’),36.5(3’),20.6(2−Et),19.1(7’−Me),18.0(5’−Me),16.5(3’−Me),14.2(2−Et);
HR MS:calcd for C2637(M+H)409.2850,found 409.2844.
【0156】
[合成例5]
<(2E,4E)−5−((1S,2S,3R,4aR,7S,8S,8aS)−1,2,3,4,4a,7,8,8a−オクタヒドロ−2−ヒドロキシ−1,3,7−トリメチルナフタレン−8−イル)−N−((ピリジン−3−イル)ペンタ−2,4−ジエンアミド(U5)の製造>
合成例1において、上記式(11)に該当する化合物として、(E)−エチル ジエチルホスホノ−3−メチルブタ−3−エノアートの代わりに(E)−メチル ジエチルホスホノブタ−3−エノアートを用いる他は、合成例1と同様に反応を行った。得られた化合物U5の物性値は以下の通りである。
【0157】
【化57】
【0158】
H NMR(CDCl):δ
8.54−8.51(m,2H,Py),
7.66(d,J=7.5Hz,1H,Py),
7.31−7.24(m,2H,3−H,NH),
6.17−6.14(m,1H,4−H),
6.09−6.06(m,1H,2−H),
5.87(br s,1H,Py),
5.80−5.76(m,1H,5−H),
5.57−5.56(m,1H,2’−H),
5.46−5.44(m,1H,1’−H),
4.54(d,J=6.5Hz,2H,NCH),
2.73(dd,J=9.5,10.0Hz,1H,6’−H),
2.43−2.42(m,1H,4’−H),
2.25−2.12(m,1H,3’−H),
1.90−0.86(m,15H,4’a−H,5’−H,7’−H,8’−H,8’a−H,3’−Me,5’−Me,7’−Me),
HR MS:calcd for C2433(M+H)381.2537,found 381.2531.
【0159】
<抗がん性試験>
[試験例1]
合成例1で得られた化合物U1及び天然物由来の日本新薬製AMF−26について、ヒト培養がん細胞に対する細胞増殖抑制活性を調べた。がん細胞として、ヒトがん細胞株39系(肺がん7系、胃がん6系、大腸がん5系、卵巣がん5系、脳腫瘍6系、乳がん5系、腎がん2系、前立腺がん2系及びメラノーマ1系)を使用した。各細胞を96ウェルプレートに播いて一晩培養し、翌日段階希釈した各化合物を添加し、2日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色定量で測定した。細胞増殖曲線から、50%細胞増殖抑制濃度(GI50)を算出した。表1にLogGI50を示す。また、各化合物ごとにLogGI50の平均値を求め、平均値と個々の細胞でのLogGI50との差を、平均値を中心とした棒グラフに表したフィンガープリントを作成した。平均値に比べてLogGI50が小さい細胞株は薬剤感受性が高いことを示している。また、図1には化合物のがん種の選択性を示唆するフィンガープリントを示す。
合成品の化合物U1は天然物由来のAMF−26と同様の細胞増殖抑制活性を示した。
【0160】
【表1】
【0161】
[試験例2]
合成例2で得られた化合物U2について、ヒト培養がん細胞に対する細胞増殖抑制活性を調べた。がん細胞として、乳がん細胞株HBC−5、MCF−7、大腸がん細胞株KM−12、HCT−15、HCT−116、肺がん細胞株NCI−H23、胃がん細胞株MKN45を使用した。各細胞を96ウェルプレートに播いて一晩培養し、翌日段階希釈した各化合物を添加し、2日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色定量で測定した。細胞増殖曲線から、50%細胞増殖抑制濃度(GI50)を算出した。表2に、化合物U2のLogGI50を、試験例1で得られた化合物U1及びAMF−26の結果と共に示す。化合物U1の立体異性体である化合物U2も、化合物U1、AMF−26と同様に細胞増殖抑制活性を示した。
【0162】
【表2】
【0163】
<ゴルジ体散在化能評価試験>
化合物U1及びAMF−26について、ヒト培養がん細胞に対するゴルジ体散在化活性を調べた。がん細胞としてヒト乳がん細胞株HBC−4及びBSY−1を用いた。
各細胞を24ウェルガラス底プレートに播いて二晩培養後、段階希釈した化合物を添加し、1時間培養した。次いで細胞を固定し、ゴルジ体マーカーである抗GBF1抗体を用いて免疫蛍光細胞染色を行い、視野中の全細胞におけるゴルジ体散在化細胞の割合を計測した。薬物濃度と正常なゴルジ体を有する細胞の割合との関係を示すゴルジ体散在化曲線を図2に示す。図2に示すように、薬剤濃度の増加につれてゴルジ体散在率が上昇し、添加薬剤がゴルジ体阻害を起こすことが示された。また、図2より50%散在化濃度(EC50)を算出した。表3にLogEC50を示す。合成品の化合物U1は天然物由来のAMF−26と同様のゴルジ体散在化活性を示した。
【0164】
【表3】
図1
図2