【実施例】
【0028】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。
まず、本化合物の製造例を記載する。
製造例1
2−アミノチオフェノール4.00gとトルエン26mlとの混合物に、塩化プロピオニル2.79mlとトルエン14mlとの混合物を約10分間で滴下した。その後、ディーン・スターク・トラップで水を除去しながら、該混合物を約5時間加熱還流下に攪拌した。反応マスを室温まで冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlを加え、酢酸エチル50mlで2回抽出した。合一した有機層を飽和食塩水50mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール(以下、本化合物2と記す。)2.85gを得た。
本化合物2:
1H-NMR (CDCl
3) δ:7.97(d, 1H, J=7.8Hz), 7.85(d, 1H, J=7.8Hz), 7.45(m, 1H), 7.35(m, 1H), 3.16(q, 2H, J=7.6Hz), 1.48(t, 3H, J=7.6Hz)
【0029】
製造例2
2−アミノチオフェノール4.00gとトルエン26mlとの混合物に、塩化イソブチリル3.37mlとトルエン14mlとの混合物を約10分間で滴下した。その後、ディーン・スターク・トラップで水を除去しながら、該混合物を約11時間加熱還流下に攪拌した。反応マスを室温まで冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlを加え、酢酸エチル50mlで2回抽出した。合一した有機層を飽和食塩水50mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、2−イソプロピル−1,3−ベンゾチアゾール(以下、本化合物3と記す。)3.37gを得た。
本化合物3:
1H-NMR (CDCl
3) δ:7.98(d, 1H, J=8.4Hz), 7.85(d, 1H, J=8.4Hz), 7.45(m, 1H), 7.34(m, 1H), 3.43(m, 1H), 1.49(d, 6H, J=6.8Hz)
【0030】
製造例3
2−アミノチオフェノール4.00gとトルエン26mlとの混合物に、塩化ペンタノイル3.87mlとトルエン14mlとの混合物を約10分間で滴下した。その後、ディーン・スターク・トラップで水を除去しながら、該混合物を約10時間加熱還流下に攪拌した。反応マスを室温まで冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlを加え、酢酸エチル50mlで2回抽出した。合一した有機層を飽和食塩水50mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、2−ブチル−1,3−ベンゾチアゾール(以下、本化合物4と記す。)3.84gを得た。
本化合物4:
1H-NMR (CDCl
3) δ:7.97(d, 1H, J=8.4Hz), 7.84(d, 1H, J=8.4Hz), 7.44(m, 1H), 7.34(m, 1H), 3.12(t, 2H, J=7.8Hz), 1.87(m, 2H), 1.48(m, 2H), 0.98(t, 3H, J=7.2Hz)
【0031】
製造例4
2−アミノチオフェノール3.00gとトルエン20mlとの混合物に、塩化イソバレリル2.89gとトルエン10mlとの混合物を約10分間で滴下した。その後、ディーン・スターク・トラップで水を除去しながら、該混合物を約10時間加熱還流下に攪拌した。反応マスを室温まで冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40mlを加え、酢酸エチル40mlで2回抽出した。合一した有機層を飽和食塩水40mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、2−イソブチル−1,3−ベンゾチアゾール(以下、本化合物5と記す。)3.10gを得た。
本化合物5:
1H-NMR (CDCl
3) δ:7.98(d, 1H, J=8.0Hz), 7.84(d, 1H, J=8.4Hz), 7.44(m, 1H), 7.36(m, 1H), 2.99(d, 2H, J=7.2Hz), 2.23(m, 1H), 1.04(d, 6H, J=6.8Hz)
【0032】
製造例5
2−アミノチオフェノール4.27mlとトリフルオロ酢酸5.93mlとの混合物を70℃で約2時間撹拌した。反応マスを室温まで冷却した後、減圧下に濃縮した。残渣に1N塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、2−トリフルオロメチル―1,3−ベンゾチアゾール(以下、本化合物6と記す。)2.39gを得た。
本化合物6:
1H-NMR (CDCl
3) δ:8.21(d, 1H, J=8.0Hz), 8.01(d, 1H, J=8.8Hz), 7.60(m, 2H)
【0033】
製造例6
〔工程1〕
一硫化水素ナトリウムn水和物23.9gとエタノール240mlとの混合物を50℃に加熱し、そこに2−フルオロ−3−ニトロトルエン13.2gとエタノール100mlとの混合物を約1時間で滴下した。該混合物を同温度で約30分間攪拌した後、室温まで冷却し、反応混合物の量が約3分の1程度になるまで減圧下に濃縮した。残渣に水150mlを加え、氷冷下で濃塩酸30mlを滴下し、液性が酸性を呈することを確認して、同条件で約20分間攪拌した。反応マスに酢酸エチル200mlを加えた後に、不溶物をろ別し、分液した。有機層を飽和食塩水100mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下に濃縮し、2−メチル−6−ニトロベンゼンチオールを含む粗生成物を得た。
〔工程2〕
工程1で得られた2−メチル−6−ニトロベンゼンチオール粗生成物に、酢酸100mlおよび電解鉄粉9.50gを加え、35時間加熱還流下に攪拌した。反応マスを室温まで冷却した後、メタノール100mlを加え、セライトでろ過し、ろ上物はメタノール50mlで3回洗浄した。ろ液と洗浄液とを合一し、減圧下に濃縮した。残渣にシリカゲル50gとヘキサン:酢酸エチル=1:1の混合溶媒150mlを加え、室温で30分攪拌し、ろ過し、ろ上物はヘキサン:酢酸エチル=1:1の混合溶媒100mlで5回洗浄した。ろ液と洗浄液とを合一し、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、2,7−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾール(以下、本化合物12と記す。)2.67gを得た。
本化合物12:
1H-NMR (CDCl
3) δ:7.79(d, 1H, J=8.0Hz), 7.36(m, 1H), 7.14(d, 1H, J=7.2Hz), 2.85(s, 3H), 2.54(s, 3H)
【0034】
製造例7
〔工程1〕
2−アセトトルイジン5.00gとテトラヒドロフラン75mlとの混合物に、ローソン試薬9.48gを加え、約5時間加熱還流下に攪拌した。反応マスを室温まで冷却し、水100mlを加え、酢酸エチル100mlで2回抽出した。合一した有機層を飽和食塩水100mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、N−(2−メチルフェニル)エタンチオアミド6.60gを得た。
〔工程2〕
ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム22.1gと水35mlとの混合物に、工程1で得られたN−(2−メチルフェニル)エタンチオアミド6.60g、水酸化ナトリウム3.69gおよび水50mlの混合物を加え、40℃で約2時間攪拌した。反応マスを室温まで冷却し、酢酸エチル50mlで2回抽出した。合一した有機層を飽和食塩水50mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、2,4−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾール(以下、本化合物13と記す。)2.82gを得た。
本化合物13:
1H-NMR (CDCl
3) δ:7.66(m, 1H), 7.24(m, 2H), 2.85(s, 3H), 2.73(s, 3H)
【0035】
製造例8
2−アミノチオフェノール4.27ml、アセトン4.42mlおよび酸化アルミニウム15gの混合物を室温で2時間撹拌した。反応マスを減圧ろ過し、ろ上物をクロロホルムで洗浄した。ろ液と洗浄液とを合一し、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、2,2−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾチアゾール(以下、本化合物14と記す。)6.00gを得た。
本化合物14:
1H-NMR (CDCl
3) δ:7.06(d, 1H, J=6.8Hz), 6.91(t, 1H, J=6.8Hz), 6.76(m, 1H), 6.66(m, 1H), 3.97(br, 1H), 1.72(s, 6H)
【0036】
次に、本化合物の具体例を例示する。
尚、下表においてMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、iPrはイソプロピル基を表し、Buはブチル基を表し、iBuはイソブチル基を意味する。
【0037】
式(1A)で示される化合物。
【0038】
【表1】
【0039】
式(1B)で示される化合物。
【0040】
【表2】
【0041】
次に、本発明忌避剤の製剤例を記載する。
製剤例1
本化合物のいずれか1種の化合物9部を、キシレン37.5部およびN,N−ジメチルホルムアミド37.5部に溶解し、これにポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル10部およびドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム6部を加え、撹拌混合して乳剤を得る。
【0042】
製剤例2
本化合物のいずれか1種の化合物20部に、ソルポール5060(東邦化学登録商標名)5部を加え、よく混合して、カープレックス#80(塩野義製薬登録商標名、合成含水酸化ケイ素微粉末)42部、300メッシュ珪藻土33部を加え、ジュースミキサーで混合して、水和剤を得る。
【0043】
製剤例3
本化合物のいずれか1種の化合物3部、合成含水酸化珪素微粉末5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部、ベントナイト30部およびクレー57部を加え、よく撹拌混合し、ついでこれらの混合物に適当量の水を加え、さらに撹拌し、増粒機で製粒し、通風乾燥して粒剤を得る。
【0044】
製剤例4
本化合物のいずれか1種の化合物0.5部をジクロロメタン10部に溶解し、これをアイソパーM(イソパラフィン:エクソン化学登録商標名)89.5部に混合して油剤を得る。
【0045】
製剤例5
本化合物のいずれか1種の化合物0.1部およびネオチオゾール(中央化成株式会社)49.9部をエアゾール缶に入れ、エアゾールバルブを装着した後、25部のジメチルエーテル及び25部のLPGを充填し、アクチュエータを装着することにより油性エアゾールを得る。
【0046】
製剤例6
本化合物のいずれか1種の化合物5部および軟質塩化ビニル樹脂95部とを密閉式加圧ニーダー(森山製作所製)で溶融混練し、得られた混練物を押出し成型機から成型ダイスを介して押出し、長さ15cm、直径3mmの棒状成型体を得る。
【0047】
製剤例7
本化合物のいずれか1種の化合物5部および軟質塩化ビニル樹脂95部とを密閉式加圧ニーダー(森山製作所製)で溶融混練し、得られた混練物を押出し成型機から成型ダイスを介して押出しながら、ホットカットして樹脂ペレットを得た。この樹脂ペレットを射出成型機を用いて、金型に流し込み、格子状の板状成型体を得た。
【0048】
製剤例8
本化合物のいずれか1種の化合物0.5gをセルロース繊維製ろ紙(直径70mm、アドバンテック東洋製)に均一になるように含浸させ、シート状忌避剤を得た。
【0049】
次に、本化合物がネズミ目動物に対して優れた忌避活性を有することを試験例にて示す。なお、本化合物は表1および表2の化合物番号で示し、比較に用いた化合物は表3の化合物記号で示す。
【0050】
【表3】
【0051】
試験例1(試験動物:ハツカネズミ)
<試験装置>
忌避試験は、
図1記載の忌避試験用の装置を用いて行った。装置は中央部に試験動物の居住区を配し、両端に食料を配置する試験区1と試験区2とを配し、試験区1と居住区とが円筒形状(直径0.05m、長さ2.08m)の通路で接続され、試験区2と居住区とも円筒形状の通路で接続されている。試験区1および試験区2は樹脂製の直方体形状(0.68m×0.40m×0.32m)の容器であり、通路との接続部は開放されている。居住区も樹脂製の直方体形状(0.28m×0.45m×0.16m)であるが、上部は空気が取り込めるように鉄製の網となっている。居住区と通路との接続部は開閉可能な扉が設置されている。居住区の底部には床敷用チップ:クリーンチップSP(日本クレア製)を敷き詰めた。
【0052】
<馴化作業>
忌避試験前に、試験動物を試験装置に馴れさせる為に、馴化作業を行った。
試験区1および試験区2に重量を測定したエサ(固型飼料CE−2飼育繁殖用、日本クレア製)約10g(初期エサ重量)をそれぞれ配置した後、居住区に雌のマウス(Jcl:ICR系統)1匹を入れた。1日後に両試験区に残ったエサの重量をそれぞれ測定し、以下の式により喫食率を算出した。両試験区の喫食率に大きな差がある場合には、エサを新しいものに交換し、喫食率が安定し、両試験区の喫食率がほぼ同等になるまで、馴化作業を数日間繰り返した。
喫食率(%)=100×喫食量(g)/初期エサ重量(g)
【0053】
<忌避試験>
馴化作業を終えた後、両試験区に同じエサ(固型飼料CE−2飼育繁殖用、日本クレア社製)約10gをそれぞれ入れた。居住区と通路の接続部の扉を閉めた状態で、馴化作業において喫食率が高かった側の試験区のみに、供試化合物を担持させたろ紙を
図2に記載の位置に設置した。当該ろ紙を設置後1時間、居住区と通路との接続部の扉を閉止した状態に保ち、その後に該扉を開放した。試験開始より1日経過した後に両試験区に残ったエサの重量を測定した。試験を1日以上継続する場合は、1日ごとに両試験区のエサを交換し、毎日残ったエサの重量を測定した。
以下の式により忌避率を算出した。尚、供試化合物が処理されたろ紙(直径70mm、アドバンテック東洋製)を設置した側の試験区を処理区とし、当該ろ紙を設置しなかった側の試験区を無処理区とする。
忌避率(%)=100×(無処理区喫食量−処理区喫食量)
/(無処理区喫食量+処理区喫食量)
【0054】
忌避試験結果を表4に示す。
【表4】