(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水添ブロック共重合体は、
式(1):
B
1−A−B
2−X (1)
(式中、B
1およびB
2は主として共役ジエン化合物由来の構造単位からなる重合体ブロックを示し、Aは主としてビニル芳香族化合物由来の構造単位からなる重合体ブロックを示し、Xはリビングアニオン重合体の活性末端を示す)で表されるリビングポリマーとカップリング剤とを反応させて得られるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体であって;
重合体ブロックB
1の質量のB
1とB
2の合計質量に対する比率が0.10〜0.45であり;
ビニル芳香族化合物由来の構造単位の含有量が水添ブロック共重合体の質量に対して25〜50質量%であ
り;
カップリング未反応のポリマーの重量平均分子量が87000〜145800である水添ブロック共重合体である。
【0012】
本発明の水添ブロック共重合体は下記式(1)に示すリビングポリマーとカップリング剤との反応によって得られたブロック共重合体を水素添加することによって得られる。
式(1):
B
1−A−B
2−X (1)
(式中、B
1、B
2、AおよびXは前記定義のとおりである)
【0013】
該リビングポリマーにおける重合体ブロックAは、主としてビニル芳香族化合物に由来する構造単位からなる。ここで、「主として」とは、重合体ブロックAを構成する構造単位のうち、少なくとも50%がビニル芳香族化合物に由来するものであることを意味し、好ましくは80%以上がビニル芳香族化合物に由来する構造単位からなり、より好ましくは90%以上がビニル芳香族化合物に由来する構造単位からなり、100%であってもよい。ここで、「由来する」とは、該構造単位が、ビニル芳香族化合物が付加重合した結果形成される構造単位であることを示す。該ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ビニルトルエン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらの中でもスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。重合体ブロックAは、これらの芳香族ビニル化合物の1種のみから構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
【0014】
また、上記重合体ブロックAは、本発明の目的および効果の妨げにならない限り、それぞれ他の重合性単量体単位、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエンなどから誘導される単位を少量(好ましくはそれぞれの重合体ブロックの総量に対して20質量%以下)含んでいてもよい。
【0015】
前記リビングポリマーにおける重合体ブロックB
1、B
2は、主として共役ジエン化合物に由来する構造単位からなる。ここで、「主として」とは、重合体ブロックB
1およびB
2を構成する構造単位のうち、少なくとも50%が共役ジエン化合物に由来するものであることを意味し、好ましくは80%以上が共役ジエン化合物に由来する構造単位からなり、より好ましくは90%以上が共役ジエン化合物に由来する構造単位からなり、100%であってもよい。ここで「由来する」とは、該構造単位が、共役ジエン化合物が付加重合した結果形成される構造単位であることを示す。該共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレン、または1,3−ブタジエンおよびイソプレンの混合物が好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンの混合物がより好ましい。重合体ブロックB
1、B
2が1,3−ブタジエンおよびイソプレンの混合物に由来する構造単位から構成されていると、得られる水添ブロック共重合体が後述する非芳香族系ゴム用軟化剤の保持性に優れる。
重合体ブロックB
1、B
2は、これらの共役ジエン化合物の1種のみに由来する構造単位から構成されていても、2種以上に由来する構造単位から構成されていてもよい。重合体ブロックB
1、B
2が2種以上の共役ジエン化合物(例えば1,3−ブタジエンおよびイソプレン)由来の構造単位から構成される場合、その構成比や重合形態(ブロック、ランダムなど)に特に制限はない。また、重合体ブロックB
1、B
2を構成する共役ジエン化合物は同一種であっても良く、異なるものでも良い。
【0016】
前記リビングポリマーにおける重合体ブロックB
1、B
2における共役ジエン化合物の結合形態(ミクロ構造)およびその存在割合は特に制限されない。例えば、ブタジエンの場合は、1,2−結合(ビニル結合)または1,4−結合、イソプレンの場合は、1,2−結合(ビニル結合)、3,4−結合(ビニル結合)または1,4−結合の結合形態をとることができ、それらの結合形態の1種のみが存在していても、2種以上が存在していてもよい。また、それらのいずれの結合形態がどのような割合で存在してもよい。重合体ブロックB
1、B
2が1,3−ブタジエン由来の構造単位のみから構成される場合、水素添加後の水添ブロック共重合体中における結晶化によるエラストマーとしての性能低下を防ぐために、1,2−結合量(ビニル結合量)を25%以上にするのが好ましい。
【0017】
また、上記重合体ブロックB
1、B
2は、本発明の目的および効果の妨げにならない限り、それぞれ他の重合性単量体単位、例えば前記芳香族ビニル化合物などから誘導される単位を少量(好ましくはそれぞれの重合体ブロックの総量に対して20質量%以下)含んでいてもよい。
【0018】
本明細書において、水素添加反応前の重合体ブロックB
1の質量のB
1とB
2の合計質量に対する比率は、例えば、リビングポリマーを合成する際に、用いる共役ジエン化合物の質量から算出できる。具体的には、「重合体ブロックB
1を構築するために用いる共役ジエン化合物の質量」を、「重合体ブロックB
1を構築するために使用する共役ジエン化合物の質量と重合体ブロックB
2を構築するために使用する共役ジエン化合物の質量の合計質量」で除することによって算出できる。(リビングポリマーは理論上、重合に用いたモノマーが全て反応し、分子量分布の狭いポリマーが得られる(分子量のそろったポリマーが得られる)ので、重合体ブロックB
1のB
1とB
2の合計質量に対する比率は上記のような算出が可能である。)
【0019】
上記リビングポリマーにおける重合体ブロックB
1のB
1とB
2の合計質量に対する比率は0.10〜0.45の範囲である必要があり、0.15〜0.40の範囲が好ましく、0.20〜0.35の範囲がより好ましい。重合体ブロックB
1のB
1とB
2の合計質量に対する比率が0.10未満の場合は得られる水添ブロック共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久ひずみ性が悪化し、逆に0.45を超えると得られる水添ブロック共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物の力学的特性、特に引張特性における伸度が低下するとともに粘着性が高くなり好ましくない。
【0020】
本発明の水添ブロック共重合体における重合体ブロックB
1、B
2は、耐熱性および耐候性の観点から、共役ジエン化合物に由来する炭素−炭素二重結合の50%以上が水素添加されていることが必要であり、80%以上が水素添加されているのが好ましく、90%以上が水素添加されているのがより好ましい。なお、水素添加率は、重合体ブロックB
1、B
2中の共役ジエン化合物単位に由来する炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加の前後において、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、
1H−NMRスペクトルなどによって測定し、該測定値から求めることができる。
【0021】
本発明の水添ブロック共重合体を構成する上記リビングポリマーは1種であることが好ましい。例えばブロック形態、分子量などが異なる数種のリビングポリマー中にカップリング剤を添加し反応して得られる不均等分岐ブロック共重合体の場合、引張特性や圧縮永久ひずみ性が劣る傾向にある。
【0022】
水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、50,000〜1,000,000の範囲内であることが好ましく、100,000〜800,000の範囲内であることがより好ましく、200,000〜600,000の範囲内であることがさらに好ましい。水添ブロック共重合体の重量平均分子量が50,000未満の場合には、得られる水添ブロック共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久ひずみ性が悪化する傾向があり、1,000,000を超える場合には、得られる水添ブロック共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物の成形性が劣る傾向がある。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0023】
水添ブロック共重合体のMFR(メルトフローレート)は、JIS K 7210に準拠し、温度200℃、試験荷重5kgfの条件において測定したとき、0.5g/10分未満であることが好ましく、0.4g/10分未満であることがより好ましく、0.3g/10分未満であることがさらに好ましい。水添ブロック共重合体のMFRが0.5g/10分以上であると、圧縮永久ひずみ性が悪化する傾向がある。
【0024】
水添ブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物の含有量は、25〜50質量%の範囲内であり、37〜50質量%の範囲内であることが好ましく、37〜47質量%の範囲内であることがさらに好ましく、37〜45質量%の範囲内であることがさらに好ましい。水添ブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物の含有量が25質量%未満の場合には、得られる水添ブロック共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久ひずみ性が悪化し、一方50質量%を超える場合には、柔軟性が悪化する。なお、水添ブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物の含有量は、例えば
1H−NMRスペクトルなどにより求めることができる。
【0025】
水添ブロック共重合体は、本発明の目的および効果の妨げにならない限り、分子鎖中および/または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を1種または2種以上有してもよい。
【0026】
水添ブロック共重合体は、一般的には不活性溶媒中、アルキルリチウム化合物を開始剤として共役ジエン化合物、ビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させてリビングポリマーを調製し、次いでカップリング剤を加えて、カップリング反応をさせ、カップリング率をコントロールしブロック共重合体を得た後、水素添加反応を行うことにより所定の水添ブロック共重合体を得ることができる。
【0027】
上記のアルキルリチウム化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ペンチルリチウムなどが挙げられる。
【0028】
重合は、溶媒の存在下で行うのが好ましく、溶媒としては、開始剤に対して不活性で、反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの飽和脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素が挙げられる。また、重合反応は、通常、0〜100℃の温度範囲で、0.5〜50時間行う。
【0029】
また、重合の際に共触媒としてルイス塩基を用いてもよく、ルイス塩基としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等のアミン類などが挙げられる。これらのルイス塩基は、1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
【0030】
カップリング剤としては公知のものを用いることができ、特に限定されない。具体的には、例えば、ジビニルベンゼン;エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどの多価エポキシ化合物;ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラクロロスズなどのハロゲン化合物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチルなどのエステル化合物;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル等の炭酸エステル化合物;ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)エタンなどのアルコキシシラン化合物などが挙げられる。これらの中でエステル化合物、アルコキシシラン化合物が好ましい。
【0031】
リビングポリマーとカップリング剤とを反応させる際のカップリング率は50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。上記カップリング率が50%未満では、得られる熱可塑性エラストマー組成物の力学的強度が低下するため好ましくない。ここでいうカップリング率とは、得られた水添ブロック共重合体のゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られた溶出曲線を使用し、カップリング反応によって生成したポリマーの面積(高分子量側のピークの面積)を、カップリング反応によって生成したポリマーの面積とカップリング未反応ポリマーの面積(低分子量側のピークの面積)との和によって除することにより求めることができる。カップリング反応によって生成したポリマーの溶出曲線は、リビングポリマーが二量化したもの、三量化したもの、四量化したものなど数種類のカップリング反応により生成したポリマーがひとつのピーク(ピーク1)として検出され、カップリング未反応のポリマーのピーク(ピーク2)は前記ピーク1と別のピークとして検出され、二峰性の溶出曲線になる場合がほとんどである。ピーク1とピーク2に重なる部分がある場合、ピーク間の谷となる部分の頂点から、溶出曲線全体のベースラインと垂直な線を引き、ピーク1、ベースライン、前記垂直な線とで囲まれた部分をカップリングにより生成したポリマーの面積、ピーク2、ベースライン、前記垂直な線とで囲まれた部分をカップリング未反応のポリマーの面積としてカップリング率を計算する。カップリング率はカップリング剤の添加量を多くしたり、反応温度を高くしたり、反応時間を長くしたりすることによって高めることができる。
【0032】
水添ブロック共重合体の分岐係数は、2.3以上が好ましく、2.4以上がより好ましく、2.6以上がさらに好ましい。分岐係数を高めることにより圧縮永久ひずみ性を向上させることが出来る。ここで本明細書における分岐係数とは、得られた水添ブロック共重合体のゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られる、カップリング反応によって生成したポリマーの重量平均分子量(Mw)をカップリング未反応のポリマーの重量平均分子量(Mw)で除することにより求められる係数である。なお、前述のように、ピーク1とピーク2が重なる場合、上記と同様に、ピーク1とピーク2の二つの間に引かれた垂直線で分離することによって、カップリングによって生成したポリマーのMwとカップリング未反応のポリマーのMwをそれぞれ求める。分岐係数は、カップリング剤のリビングアニオン重合体の活性末端と反応しうる官能基数によってコントロールすることができる。通常リビングアニオン重合体の活性末端と反応しうる官能基が多いカップリング剤を用いることによって、分岐係数が高いブロック共重合体を得ることができ、3官能以上で反応しうるカップリング剤を使用することで分岐係数を2.3以上に高めることができる。
【0033】
カップリング反応と水素添加反応は引き続いて行ってもよいし、ブロック共重合体を一旦単離してから水素添加しても良い。
【0034】
ブロック共重合体を単離する場合、上記した方法により重合を行った後、重合反応液をメタノールなどのブロック共重合体の貧溶媒に注いでブロック共重合体を凝固させるか、または重合反応液をスチームと共に熱水中に注いで溶媒を共沸によって除去(スチームストリッピング)した後、乾燥させることにより、ブロック共重合体を単離することができる。
【0035】
ブロック共重合体の水素添加反応は、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、珪藻土等の担体に担持させた不均一触媒;遷移金属化合物(オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、コバルトアセチルアセトナート等)とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物または有機リチウム化合物等との組み合わせからなるチーグラー系触媒;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛またはマグネシウム等からなる有機金属化合物の組み合わせからなるメタロセン系触媒などの水素添加触媒の存在下に、通常、反応温度20〜200℃、水素圧力0.1〜20MPa、反応時間0.1〜100時間の条件下で行うことができる。
【0036】
カップリング反応と水素添加反応を引き続いて行う場合、水添ブロック共重合体の単離は、水素添加反応液を、メタノールなどの水添ブロック共重合体の貧溶媒に注いで凝固させるか、または水素添加反応液をスチームと共に熱水中に注いで溶媒を共沸によって除去(スチームストリッピング)した後、乾燥することにより単離することができる。
【0037】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を構成する水添ブロック共重合体は1種類のものを使用しても良いし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0038】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記水添ブロック共重合体と非芳香族ゴム軟化剤とを含む。本発明でいう非芳香族系ゴム用軟化剤とは芳香族環の炭素数が分子全体の炭素数の35%未満のものをいう。
【0039】
非芳香族系ゴム用軟化剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等の鉱物油;落花生油、ロジン等の植物油;燐酸エステル;低分子量ポリエチレングリコール;流動パラフィン;低分子量エチレン、エチレン−α−オレフィン共重合オリゴマー、液状ポリブテン、液状ポリイソプレンまたはその水素添加物、液状ポリブタジエンまたはその水素添加物等の合成油などが挙げられる。これらの中でも、水添ブロック共重合体との相溶性の点からパラフィン系プロセスオイル、流動パラフィンなどパラフィン鎖の炭素数が分子全体の炭素数の50%以上を占めるオイルが好適に使用される。なお、非芳香族系ゴム用軟化剤の動粘度としては、40℃における動粘度が10〜500mm
2/sの範囲内のものが好ましく、15〜400mm
2/sの範囲内のものがより好ましく、20〜300mm
2/sの範囲内のものがさらに好ましい。これらは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物における非芳香族系ゴム用軟化剤の含有量は、水添ブロック共重合体100質量部に対して170〜2000質量部の範囲内が好ましく、200〜1500質量部の範囲内がより好ましく、250〜1300質量部の範囲内がさらに好ましい。非芳香族系ゴム用軟化剤の含有量が170質量部未満の場合には、得られる熱可塑性エラストマー組成物の成形性が低下し、2000質量部を越える場合には、得られる熱可塑性エラストマー組成物の強度が著しく低下する傾向がある。
【0041】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物における非芳香族系ゴム用軟化剤の含有量は、該熱可塑性エラストマー組成物全体に対する非芳香族系ゴム用軟化剤の含有量が50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。非芳香族系ゴム用軟化剤の含有量が50質量%未満である場合には、得られる熱可塑性エラストマー組成物の成形性が低下する傾向がある。
【0042】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、上記成分に加えて本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、各種フィラー、防曇剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、架橋剤、導電性付与剤、防菌剤、防黴剤、発泡剤等を挙げることができ、これらの中から任意のものを1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。添加剤を配合する場合、その配合量は、引張り強さの観点から、上記水添ブロック共重合体と非芳香族系ゴム用軟化剤の合計100質量部あたり、10質量部以下であるのが好ましい。
【0043】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、上記成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて他の熱可塑性樹脂を配合することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ノネン共重合体、エチレン−1−デセン共重合体、などのエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体またはこれらを無水マレイン酸などで変性した樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリパラメチルスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、無水マレイン酸−スチレン樹脂、ポリフェニレンエーテルなどのポリスチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アミド系エラストマー、エステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。他の熱可塑性樹脂を配合する場合、その配合量は、柔軟性の観点から、上記水添ブロック共重合体と非芳香族系ゴム用軟化剤の合計100質量部あたり、50質量部以下であるのが好ましい。
【0044】
上記した水添ブロック共重合体および非芳香族系ゴム用軟化剤を混合することにより、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造することができる。この混合は、従来から慣用されている方法で行うことができ、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等の混合装置を用いて均一に混合した後、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、一軸または二軸押出機等の混練装置を用いて溶融混練することにより行うことができる。混練は一般に120〜250℃で行われる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において水添ブロック共重合体、および熱可塑性エラストマー組成物の物性は次の方法により評価した。
【0046】
(1)水素添加率、スチレン含有量、ビニル結合量
1H−NMRスペクトルから算出した。
装置:JNM−Lambda 500(日本電子(株)製)
溶媒:重クロロホルム
測定温度:50℃
【0047】
(2)重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)によって、カップリング反応により生成したポリマーとカップリング未反応のポリマーの全体(水添ブロック共重合体)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)をポリスチレン換算で求めた。また、カップリング反応によって生成したポリマー、カップリング未反応のポリマーそれぞれの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を同様に求めた。カップリング反応により生成したポリマーの溶出曲線のピーク(ピーク1)とカップリング未反応のポリマーのピーク(ピーク2)が重なる場合、二つのピーク間の谷の頂点からベースラインに対して垂直な線を引き、高分子量側のピークをカップリング反応により生成したポリマーのピーク、低分子量側のピークをカップリング未反応のポリマーとして、Mw、Mnを求めた。
装置:GPC−8020(東ソー(株)製)
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:40℃、流速:1ml/分
注入量:150μl
濃度:5mg/10cc(水添ブロック共重合体/THF)
【0048】
(3)カップリング率
上記GPCで得られた、カップリング反応によって生成したポリマーのピーク面積を、カップリング反応によって生成したポリマーの面積とカップリング未反応ポリマーの面積との和によって除することにより求めた。
【0049】
(4)分岐係数
上記GPCで得られた、カップリングしたポリマーの重量平均分子量(Mw)をカップリング未反応のポリマーの重量平均分子量(Mw)で除して算出した。
【0050】
(5)MFR
JIS K 7210に準拠し、温度200℃、試験荷重5kgfの条件で水添ブロック共重合体のMFRを測定した。
【0051】
(6)引張特性
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を1mm厚に成形したシートから幅25mm、長さ75mm、標線間距離20mmの短冊状試験片を打ち抜き、インストロン引張試験機を使用して、測定温度23℃、引張速度500mm/minで引張応力、破断伸びを測定した。破断伸びは500%以上が好ましく、700%以上がより好ましく、900%以上がさらに好ましい。
【0052】
(7)圧縮永久ひずみ
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて作成したJIS K 6262記載の小型試験片を用いて測定温度40℃、試験時間22hの条件で圧縮永久ひずみを測定した。圧縮永久ひずみは70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。
【0053】
(8)溶融粘度
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物の溶融粘度をブルックフィールド形回転粘度計を使用して測定した。
装置:DV−II+(ブルックフィールド社製)
溶融粘度は測定温度160℃において、1,000,000mPa・s以下が好ましく、500,000mPa・s以下がより好ましく、100,000mPa・s以下がさらに好ましい。
【0054】
また、以下の実施例および比較例で使用した各成分の内容は以下のとおりである。
水添ブロック共重合体
参考例1
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム5.9mlを仕込み、50℃に昇温した後、イソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を126ml加えて2時間重合した。引き続いてスチレンを206ml加えて1時間重合を行い、さらにイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を306ml加えて2時間重合を行い、その後70℃に昇温させた後、フタル酸ジメチルの5wt%テトラヒドロフラン(THF)溶液を6.12g添加して3時間カップリング反応をさせた後、メタノール0.25mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。得られたブロック共重合体の重合体ブロックB
1の質量のB
1とB
2の合計質量に対する比率(B
1ジエン質量比率、以下B
1/(B
1+B
2)と表記する)は、0.29であった。
(2) この反応混合液に水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を23.4g添加し、水素圧力2MPa、150℃で10時間水素添加反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(R−1)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(R−1)のスチレン含有量は39質量%、水添率は98.2%、ビニル結合量は3.2%、重量平均分子量は286,300、カップリング率は78%、分岐係数は2.9であった。これらをまとめて表1に示す。
【0055】
参考例2
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム7.9mlを仕込み、50℃に昇温した後、イソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を136ml加えて2時間重合した。引き続いてスチレンを223ml加えて1時間重合を行い、さらにイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を330ml加えて2時間重合を行い、その後70℃に昇温させた後、フタル酸ジメチルの5wt%THF溶液を8.52g添加して3時間カップリング反応をさせた後、メタノール0.35mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。得られたブロック共重合体のB
1/(B
1+B
2)は、0.29であった。
(2) この反応混合液に水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を25.3g添加し、後は参考例1(2)と同様に、水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(R−2)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(R−2)のスチレン含有量、水添率、ビニル結合量、重量平均分子量、カップリング率、分岐係数をまとめて表1に示す。
【0056】
参考例3
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム6.9ml、THFを6.3g加え50℃に昇温した後、ブタジエンを90ml加えて2時間重合した。引き続いてスチレンを191ml加えて1時間重合を行い、さらにブタジエンを385ml加えて2時間重合を行った。その後70℃に昇温させた後、フタル酸ジメチルの5wt%THF溶液を7.30g添加して3時間カップリング反応をさせた後、メタノール0.30mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。得られたブロック共重合体のB
1/(B
1+B
2)は0.19であった。
(2) この反応混合液を参考例1(2)と同様に、水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(R−3)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(R−3)のスチレン含有量、水添率、ビニル結合量、重量平均分子量、カップリング率、分岐係数をまとめて表1に示す。
【0057】
参考例4
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム5.6mlを仕込み、50℃に昇温した後、イソプレンを136ml加えて2時間重合した。引き続いてスチレンを232ml加えて1時間重合を行い、さらにイソプレンを242ml加えて2時間重合を行い、その後70℃に昇温させた後、フタル酸ジメチルの5wt%THF溶液を5.76g添加して3時間カップリング反応をさせた後、メタノール0.24mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。得られたブロック共重合体のB
1/(B
1+B
2)は0.36であった。
(2) この反応混合液を参考例1(2)と同様に、水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(R−4)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(R−4)のスチレン含有量、水添率、ビニル結合量、重量平均分子量、カップリング率、分岐係数をまとめて表1に示す。
【0058】
参考例5
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム5.1mlを仕込み、50℃に昇温した後、イソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を129ml加えて2時間重合した。引き続いてスチレンを206ml加えて1時間重合を行い、さらにイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を303ml加えて2時間重合を行い、その後70℃に昇温させた後、フタル酸ジメチルの5wt%THF溶液を5.14g添加して3時間カップリング反応をさせた後、メタノール0.21mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。得られたブロック共重合体のB
1/(B
1+B
2)は0.30であった。
(2) この反応混合液を参考例1(2)と同様に、水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(R−5)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(R−5)のスチレン含有量、水添率、ビニル結合量、重量平均分子量、カップリング率、分岐係数をまとめて表1に示す。
【0059】
参考例6
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム5.5mlを仕込み、50℃に昇温した後、イソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を130ml加えて2時間重合した。引き続いてスチレンを144ml加えて1時間重合を行い、さらにイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を389ml加えて2時間重合を行い、その後70℃に昇温させた後、フタル酸ジメチルの5wt%THF溶液を5.54g添加して3時間カップリング反応をさせた後、メタノール0.23mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。得られたブロック共重合体のB
1/(B
1+B
2)は0.25であった。
(2)この反応混合液を参考例1(2)と同様に、水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(R−6)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(R−6)のスチレン含有量、水添率、ビニル結合量、重量平均分子量、カップリング率、分岐係数をまとめて表1に示す。
【0060】
参考例7
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム7.4mlを仕込み、50℃に昇温した後、イソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を126ml加えて2時間重合した。引き続いてスチレンを206ml加えて1時間重合を行い、さらにイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を306ml加えて2時間重合を行い、その後70℃に昇温させた後、フタル酸ジメチルの5wt%THF溶液を11.1g添加して3時間カップリング反応をさせた後、メタノール0.33mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。得られたブロック共重合体のB
1/(B
1+B
2)は0.29であった。
(2) この反応混合液を参考例1(2)と同様に、水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(R−7)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(R−7)のスチレン含有量、水添率、ビニル結合量、重量平均分子量、カップリング率、分岐係数をまとめて表1に示す。
【0061】
参考例8
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム7.4mlを仕込み、50℃に昇温した後、イソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を37ml加えて2時間重合した。引き続いてスチレンを206ml加えて1時間重合を行い、さらにイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を395ml加えて2時間重合を行い、その後70℃に昇温させた後、フタル酸ジメチルの5wt%THF溶液を7.90g添加して3時間カップリング反応をさせた後、メタノール0.33mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。得られたブロック共重合体のB
1/(B
1+B
2)は0.09であった。
(2) この反応混合液を参考例1(2)と同様に、水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(H−1)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(H−1)のスチレン含有量、水添率、ビニル結合量、重量平均分子量、カップリング率、分岐係数をまとめて表2に示す。
【0062】
参考例9
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム7.4mlを仕込み、50℃に昇温した後、イソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を215ml加えて2時間重合した。引き続いてスチレンを206ml加えて1時間重合を行い、さらにイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を217ml加えて2時間重合を行い、その後70℃に昇温させた後、フタル酸ジメチルの5wt%THF溶液を7.90g添加して3時間カップリング反応をさせた後、メタノール0.33mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。得られたブロック共重合体のB
1/(B
1+B
2)は0.50であった。
(2)この反応混合液を参考例1(2)と同様に、水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(H−2)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(H−2)のスチレン含有量、水添率、ビニル結合量、重量平均分子量、カップリング率、分岐係数をまとめて表2に示す。
【0063】
参考例10
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム5.6mlを仕込み、50℃に昇温した後、イソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を115ml加えて2時間重合した。引き続いてスチレンを103ml加えて1時間重合を行い、さらにイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を461ml加えて2時間重合を行い、その後70℃に昇温させた後、フタル酸ジメチルの5wt%THF溶液を5.72g添加して3時間カップリング反応をさせた後、メタノール0.24mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。得られたブロック共重合体のB
1/(B
1+B
2)は0.20であった。
(2) この反応混合液を参考例1(2)と同様に、水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(H−3)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(H−3)のスチレン含有量、水添率、ビニル結合量、重量平均分子量、カップリング率、分岐係数をまとめて表2に示す。
【0064】
参考例11
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム2.3mlを仕込み、50℃に昇温した後、スチレンを49ml加えて1時間重合を行い、さらにイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を317ml加えて2時間重合を行い、その後さらにスチレンを49ml加えて1時間重合を行い、メタノール0.07mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。
(2) この反応混合液に水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を14.7g添加し、後は参考例1(2)と同様に、水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(H−4)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(H−4)のスチレン含有量、水添率、ビニル結合量、重量平均分子量をまとめて表2に示す。
【0065】
参考例12
(1) 窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3400ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec−ブチルリチウム4.1mlを仕込み、50℃に昇温した後、スチレンを80ml加えて1時間重合を行い、さらにイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を497ml加えて2時間重合を行い、その後さらにスチレンを80ml加えて1時間重合を行い、メタノール0.16mlを添加し重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。
(2)この反応混合液を参考例1(2)と同様に、水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(H−5)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(H−5)のスチレン含有量、水添率、ビニル結合量、重量平均分子量をまとめて表2に示す。
【0066】
上記参考例で得られた水添ブロック共重合体R−1〜R−7およびH−1〜H−5の構造および物性を以下の表1および表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
非芳香族系ゴム用軟化剤
パラフィン系プロセスオイル(商品名:ダイアナプロセスオイルPW−32、出光興産(株)製、40℃での動粘度:30.98mm
2/s)
【0070】
酸化防止剤
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:IRGANOX1010、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)
【0071】
実施例1〜
7、参考例13、比較例1〜5
水添ブロック共重合体R−1〜R−7、H−1〜H−5、非芳香族系ゴム用軟化剤、酸化防止剤を表3および表4に示す質量割合で配合し、予め予備混合し、その後ブラベンダーミキサーを用いて180℃で5分間溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物を得た。その後、プレス成形機を用いてシート状、および圧縮永久ひずみ測定用試験片を得た。得られた試験片を用いて、前述した(6)〜(8)の方法に従って熱可塑性エラストマー組成物の性能評価を行った。結果を表3および表4に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
表3および表4の結果より、本発明の実施例1〜
7で得られた熱可塑性エラストマー組成物は流動性、圧縮永久ひずみ性、柔軟性のいずれにも優れることが分かる。
これに対して比較例1〜5の結果は次のとおりであった。
1)比較例1では、使用した水添ブロック共重合体のB
1/(B
1+B
2)の値が本発明で規定する範囲より小さいため、得られる熱可塑性エラストマー組成物が圧縮永久ひずみ性に劣ることが分かる。
2)比較例2では、使用した水添ブロック共重合体のB
1/(B
1+B
2)の値が本発明で規定する範囲より大きいため、得られる熱可塑性エラストマー組成物が破断伸びに劣ることが分かる。
3)比較例3では、使用した水添ブロック共重合体のビニル芳香族化合物由来の構造単位の含有量が低いため、得られる熱可塑性エラストマー組成物が圧縮永久ひずみ性に劣ることが分かる。
4)比較例4、5では、使用した水添ブロック共重合体がABA型であるため、非常に溶融粘度が高く成形性に劣ることが分かる。