(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来のホールICの製造工程は、まず、リードフレーム上に銀ペーストなどにホール素子を搭載し、次に、ホール素子の電極部とインナーリードをAuワイヤにて接続した後に樹脂封止し、樹脂封止パッケージを成形している。リード端子の成形工程にて発生するリード端子のばらつきに起因して、ホール素子を基板に半田実装する際、リード端子間での半田付け高さ寸法にばらつきが発生する。半田付け高さバラつきが大きい場合には、樹脂封止パッケージの底部が実装基板に押し付けられた状態で、リード端子が基板に半田実装される場合が生じる。
【0003】
このような実装状態の場合、熱応力により、樹脂封止パッケージ部には、常に実装基板の応力を受けた状態が発生し、その応力は、ホール素子にも伝達される。この基板からの応力を低減して、電気特性が安定した高信頼性のホール素子を提供するための手段として、樹脂封止部(樹脂封止パッケージ部)の底面部に、シリコンゴムなどの応力緩和層を形成した素子構造が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、部品点数を増加することなく、熱膨張又は熱収縮による応力を低減することにより、圧電効果によって生ずる出力変動に伴う検出誤差を低減できる磁気検出素子が開示されている。
また、例えば、特許文献3には、4端子ホール素子の配置パターンが十字型パターンであることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホール素子は、電流や磁石など、様々な用途に使用される。特に、ホール素子からの信号を集積回路で演算し、演算した結果を出力するような磁気センサ装置においては、樹脂パッケージ内の中心からずれた位置にホール素子を配置した構成とする必要がある。このように、樹脂パッケージ内の中心からずれた位置にホール素子を配置した場合、特に、磁気センサ装置を平面視したときに、磁気センサ装置の中心から感磁部の中心までの距離が、磁気センサ装置の中心から感磁部の十字型の中心をつないだ直線の軸方向の磁気センサ装置の長さの10%〜32%となる位置に前記感磁部が配置された磁気センサ装置では、湿度環境下での水分の吸湿により生じる特性変化の影響が大きくなるという課題を見出した。
これは、上述した特許文献1のように、樹脂封止部(樹脂封止パッケージ部)の底面部に、シリコンゴム等の応力緩和層を形成した素子構造の構成では、十分に解消できなかった。
【0007】
また、例えば、ホール素子によるON、OFFの検出など、ホール素子影響しない場合には、該特性変化によるセンサ性能に与える影響は小さいが、電流センサ用途や回転角度検出(例えば、特許文献2参照)など、アナログ的な使用方法においては、わずかな特性変動もセンサの出力に影響する。このため、吸湿によるオフセット電圧の特性変動を小さくすることがホール素子に要求されてきている。例えば、125℃24時間乾燥から85℃85%168時間吸湿前後での変動が、5mA印加で、3σで0.5mV以下が期待されている。
【0008】
また、上述した特許文献3のものは、4端子ホール素子の配置パターンが十字型パターンであることが開示されているものの、本発明のように、装置本体の中心から感磁部の中心までの距離が、装置本体の中心から感磁部の十字型の中心をつないだ直線の軸方向の装置本体の長さに関連付けられた位置に感磁部が配置されている点については何ら開示されていない。また、特許文献3には、内部に集積回路を備える構成については一切記載がなく、ホール素子と集積回路が同じ樹脂パッケージ中に設けられた構成における吸湿条件下でのオフセット電圧特性の変化については何ら開示されていない。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、パッケージ内の中心からずれた位置にホール素子を配置した磁気センサ装置であって、湿度環境下での吸湿により生じるオフセット電圧特性の変化が小さい磁気センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討した結果、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、基板(11)と、該基板(11)上又は該基板(11)内に形成された半導体層(12)からなる十字型の感磁部を有するホール素子(10)と、該ホール素子(10)からの信号が入力される集積回路(20)とを備え、
前記集積回路と前記ホール素子とが、前記基板上に配置されており、前記ホール素子(10)と前記集積回路(20)が矩形状の樹脂パッケージ(30)中に設けられ、装置本体から平面視したときに、前記装置本体の中心から前記感磁部の中心までの距離(L1)が、前記装置本体の中心から前記感磁部の十字型の中心をつないだ直線の軸方向の前記装置本体の長さ(L2)
の10%以上32%以下であり、前記装置本体を平面視したときに、前記感磁部の十字型を構成する2辺がなす軸各々が、前記矩形状の樹脂パッケー
ジの長辺に対して、垂直又は平行であ
り、平面視したときの前記集積回路の面積が、磁気センサ装置の面積の10%以上70%以下であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、半導体層(12)が、InSb、InAs、GaAs及びIn
aAl
bGa
(1-a-b)As
xSb
(1-x)(0≦a+b≦1、0≦x≦1)からなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項
3に記載の発明は、請求項
1又は2に記載の発明において、前記ホール素子が、ホール素子と集積回路の中心を結んでできる仮想線分に平行な2軸上に電極部を有することを特徴とする
。
【0012】
また、請求項
4に記載の発明は、請求項1乃至
3のいずれかに記載の発明において、前記感磁部が、クロス型でかつメサ構造であることを特徴とする。
また、請求項
5に記載の発明は、請求項1乃至
4のいずれかに記載の発明において、前記基板と、前記集積回路とが同一平面上に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂パッケージ内の中心からずれた位置にホール素子を配置した磁気センサ装置において顕著に発生する湿度環境下での水分の吸収により生じる特性変化を抑制し、吸湿前後でのオフセット電圧の特性変動が小さくなるようにした磁気センサ装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。
本実施形態の磁気センサ装置(装置本体)は、基板と、この基板上又はこの基板内に形成された、InSb、InAs、GaAs、およびIn
aAl
bGa
(1−a−b)As
xSb
(1−x)(0≦a+b≦1、0≦x≦1)からなる群より選択される少なくとも一種の半導体層からなる十字型の感磁部を有するホール素子と、ホール素子からの信号が入力される集積回路とを備え、ホール素子と集積回路が矩形状の樹脂パッケージ中に形成され、磁気センサ装置を平面視したときに、磁気センサ装置の中心から感磁部の中心までの距離が、磁気センサ装置の中心から感磁部の十字型の中心をつないだ直線の軸方向の磁気センサ装置の長さの10%以上32%以下となる位置に感磁部が配置された磁気センサ装置であり、この磁気センサ装置を平面視したときに、感磁部の十字型を構成する2辺がなす軸各々が、矩形状の樹脂パッケージの長辺に対して、垂直又は平行であるように構成されている。
【0016】
感磁部の十字型を構成する2辺がなす軸各々が、矩形状の樹脂パッケージの長辺に対して、垂直又は平行であることにより、湿度環境下での水分の吸収により生じる特性変化を抑制し、吸湿前後でのオフセット電圧の特性変動が小さい磁気センサ装置を提供することが可能になる。
また、集積回路との電気的接続を容易にする観点から、本実施形態の磁気センサ装置のホール素子は、ホール素子と集積回路の中心を結んでできる仮想線分に平行な2軸上に電極部を有することが好ましい。
【0017】
また、吸湿時の反りの観点から、本実施形態の磁気センサ装置は、平面視したときの集積回路の面積が磁気センサ装置の面積の10%以上70%以下であることが好ましい。
また、完全に電気的に分離でき特性ばらつきが小さくなる観点から、本実施形態の磁気センサ装置のクロス型の感磁部がメサ構造であることが好ましい。
また、実装性及びAuなどの金属線の接合のしやすさの観点から、本実施形態の磁気センサ装置は、基板と、集積回路とが同一平面上に配置されることが好ましい。
【0018】
[各実施形態]
図1(a),(b)は、本発明に係る磁気センサ装置の第1の実施形態を説明するための構成図で、
図1(a)は平面図、
図1(b)は、
図1のA−A線断面図である。
図2は、本発明に係る磁気センサ装置の第2の実施形態を説明するための構成図である。
図2の実施形態は、
図1の磁気センサ装置のホール素子の構成を置き換えた形態である。
図中符号10はホール素子、11は基板、12は半導体層、13は電極部、14,15はワイヤボンディング、20は集積回路、30は樹脂パッケージ、40は配線基板を示している。
【0019】
第1の実施形態の磁気センサ装置は、配線基板40と、基板11と半導体層12と電極部13とを有するホール素子10と、集積回路20とを備え、それぞれが矩形状の樹脂パッケージ30中に形成されている。ホール素子10の各電極部は13、集積回路20の一端にワイヤボンディング14により電気的に接続され、集積回路20の他端は、配線基板40にワイヤボンディング15により電気的に接続されている。
【0020】
磁気センサ装置の中心(
図1(a)中×印)から感磁部の中心までの距離L1が、磁気センサ装置の中心から感磁部の十字の中心をつないだ直線の軸方向の磁気センサ装置の長さ(L2)の10%以上32%以下となる位置に感磁部が配置される。距離L1が距離L2に対して10%以上32%以下となる位置に感磁部を配置することにより、吸湿により生じるオフセット電圧特性の変化を抑制することが可能になる。検出対象物の位置や、集積回路20を設置するスペースを考慮すると、20%以上32%以下が好ましく、25%以上32%以下がより好ましい。
【0021】
<ホール素子>
第1の実施形態のホール素子10は、基板11と十字型の半導体層12と電極部13とを有し、磁界に応じた信号を出力するものであれば特に制限されず、各要素の構成元素やドープの種類、半導体層のシート抵抗の値は所望のものを用いることが出来る。
ホール素子10の感磁部を構成する半導体層12の具体例としては、例えば、InSb、InAs、Si、やGaAsのバルク又はInSb、InAs、GaAs及びIn
aAl
bGa
(1−a−b)As
xSb
(1−x)(0≦a+b≦1、0≦x≦1)の薄膜などが好ましく、より好ましくは、GaAsである。また、半導体層12は、Siや、Sn、S、Se、Te、Ge又はCなどの不純物がドープされていても良い。生産効率の面からGaAsにSiを打ち込み、加熱による活性化を行った半導体層12を有するホール素子がより好ましい。
【0022】
また、電流感度が高くなることから、ホール素子の半導体層12のシート抵抗は600〜2000Ω/□であることが好ましい。
また、第1の実施形態のホール素子10の半導体層は、十字型の形状であり、十字型を構成する2辺がなす軸各々が、矩形状の樹脂パッケージ30の長辺に対して、垂直又は平行である。例えば、
図3に示す比較例としての磁気センサ装置は、十字型を構成する2辺がなす軸各々は、矩形状の樹脂パッケージ30の長辺に対して±45度傾いているが、
図1及び
図2に示す第1及び第2の実施形態の磁気センサ装置は、矩形状の樹脂パッケージ30の長辺に対して、垂直又は平行である。なお、磁気センサ装置が正方形の場合、いずれか一辺に対して垂直又は平行であればよい。
【0023】
ホール素子と集積回路を電気的に接続する配線(ワイヤ)に起因して発生する電磁場による測定誤差を抑制する観点から、
図1に示す様に、ホール素子の十字型を構成する2辺それぞれの端部に接続される配線の長さの和を略同じなることが好ましい。具体的には、隣り合う電極同士を結んで出来る仮想四角形の各辺が、矩形状の樹脂パッケージの辺に対して垂直または平行になる構成が挙げられる。さらに具体的には、
図1の様にホール素子の半導体層と電極部とが卍型形状になることが挙げられる。
【0024】
十字型の半導体層を形成する方法としては、十字型に不純物を注入して形成してもよく、半導体層を十字型にエッチングしてメサ構造の半導体層を形成しても良い。完全に電気的に分離でき特性ばらつきが小さくなる観点から、十字型にエッチングしてメサを形成する方が好ましい。
また、ホール素子の基板11としては、半導体層の構成や必要特性に応じて所望の材料からなる基板を用いることが出来る。具体的には、GaAs、Si、GaN、AlN、GaPなどが挙げられる。量産性と高い移動度が得られるという観点からGaAs、Siが好ましく、GaAsがより好ましい。
【0025】
また、ホール素子の電極部13の各々は、半導体層12と電気的に接続されており、ワイヤボンディング14により後述する集積回路と電気的に接続される。第1の実施形態の磁気センサ装置では、ワイヤボンディングにより電気的接続を行っているが、本発明はこれに限られず、例えば、導電性バンプを介して他の素子との電気的接続をとってもよい。
また、ワイヤボンディングにより集積回路との電気的接続を取る場合、
図1に示すように、ホール素子10と集積回路20の中心を結んでできる仮想線分に平行な2軸上に電極部が形成されることが好ましいが、
図2に示すように、3軸又はそれ以上の軸上に形成されていてもよい。
【0026】
<集積回路>
各実施形態の磁気センサ装置における集積回路20は、Siなどの吸湿がほとんどない材料を基板として構成される。また、集積回路20具体的構成は、特に制限されず、加算減算、信号増幅などの所望の演算を実現するアナログ演算部やデジタル演算部を有する集積回路が挙げられる。また、集積回路20は、少なくとも一つの端子からホール素子に対して電力を供給できるものである事が好ましい。
【0027】
<配線基板>
各実施形態の磁気センサ装置は、ホール素子10及び集積回路20をダイボンドし、かつ、集積回路20からの信号を外部に取り出すための配線基板40を有する。配線基板40は、所望のものを用いることが出来、例えば、Cuからなるリードフレームや銅を含む非磁性のリードフレームなどが挙げられる。
図1及び
図2に示した実施形態では、磁気センサ装置として4端子となるものを例示したが、これに限られず、いかなる端子数となっていてもよい。
【0028】
<磁気センサ装置の製造方法>
図1に示した第1の実施形態の磁気センサ装置を得るためには種々の手法が考えられるが、その製造方法の一例を説明する。
まず、基板11上に化合物半導体からなる半導体層12を形成する。そして、化合物半導体に感磁部のパターンを、例えば、十字型に露光・現像した後に、化合物半導体を塩酸・過酸化水素系やリン酸・過酸化水素系のエッチング液で所望の形状にメサエッチングして、ホール素子を形成する。この形状は、パターニングによって平面形状を、例えば、
図1に示したように、十字型とすることができ、メサエッチングによって断面形状をメサ形状とすることができる。感磁部のパターンの形成方法は、ドライ方式であっても良く、他のエッチング液を用いてもよい。
【0029】
その後、半導体層12上に窒化シリコン膜からなる保護膜を、高周波プラズマCVD法により感磁部上に形成する。
感磁部パターンの形成方法は、オフセット電圧ばらつきの観点から感磁部以外を除去する方法がより好ましいが、例えば、酸化シリコンや酸化シリコンなどの保護膜を先に形成し、感磁部パターンの形状にシリコンなどの不純物をインプラントし、加熱により活性化する方法でも良い。
【0030】
保護膜形成工程に続く工程では、保護膜の電極を形成する部分の窒化シリコン膜を、電極を形成する部分よりも狭い範囲で反応性イオンエッチング装置を用いて除去した後、電極13を形成する。最後に、ホール素子の感磁部面上に、軟樹脂層(図示せず)を形成する。本発明は、軟樹脂層の有無や材質を限定するものではないが、外力を緩和するために軟樹脂層を形成する方が好ましい。
【0031】
得られたホール素子の基板11底面を、配線基板40上に、Agペーストなどの接着剤を用いて接着する。このとき、集積回路20も配線基板上に、Agペーストなどの接着剤を用いて接着する。このときの集積回路の大きさは小さすぎると吸湿時の反り抑制効果が十分に得られないため、パッケージ面積の10%以上70%以下の大きさが好ましい。より好ましくはパッケージ面積の10%以上50%以下であり、さらに好ましくは20%以上40%以下である。
【0032】
次に、ホール素子10と集積回路20、集積回路20と配線基板40をAuなどの金属線又はバンプを介して電気的に接続する。最後に、モールド樹脂により樹脂パッケージ30によりホール素子10、集積回路20、配線基板40を封止することで、本実施形態の磁気センサ装置を得ることが可能になる。
なお、4端子のホール素子で説明を行ったがこれに限定されるものではなく、また、パッケージの種類を限定するものでもない。また、窒化シリコン膜除去の方法は、反応性イオンエッチングではなく他のドライエッチングやウエットエッチング方式であっても良い。また、電極の形成は、保護膜の前に電極を形成し、その後、保護膜を形成して金属線と接合する部分の保護膜を除去する方法でもよく、さらに、続いて開口した電極上に新たに金属線と接続するための電極を形成する方法であっても良い。
【0033】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、以下の実施例は、本発明の説明のための幾つかの例にすぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではないことに留意されたい。
【実施例1】
【0034】
厚さ0.63mmの半絶縁性GaAs単結晶基板に、加速電圧250keVでSiイオン注入を行って導電体層を形成した。このときのシート抵抗は400Ω/□であった。
その後、基板表面にフォトレジストを均一に塗布し、露光・現像した後に、燐酸・過酸化水素系のエッチング液でメサエッチングし、十字型の半導体層を形成し、
図1に示したような構成の半導体層を得た。
【0035】
次に、電極形成のためのレジストパターンを形成した後、ウエハ全面に電極金属として基板側から順にAuGe200nm、Ni50nm、Au300nmを順次蒸着した。その後、リフトオフを行い、合金化により導電層部分とオーミック接合をとった。保護膜として窒化シリコン薄膜をプラズマCVD法で300nm形成した。その後、再度フォトレジストを塗布した後に、電極を形成する部分の窒化シリコンを反応性イオンエッチングで除去した。
【0036】
続いて、フォトレジストを塗布して、電極を形成するための露光・現像を行い、真空蒸着法で電極を蒸着し、リフトオフ法で電極構造を形成した。次に、モールド樹脂による圧力や面内応力を緩和するために、ホール素子の感磁部面上に、ゴム系樹脂を形成した。このようにして、半導体薄膜を感磁部とするホール素子を多数作製した。
続いて、裏面研削によってGaAs基板を所定の厚さに研磨した後、ダイシングにより個別のホール素子に切離した。Cu製リードフレーム上に接着剤で接着した後に、モールド樹脂で封止し、4端子のホール素子を作成した。このとき、
図1のように、最終的な磁気センサ装置を平面視したときに、感磁部の十字型を構成する2辺がなす軸各々が、矩形状の樹脂パッケージの長辺に対して、垂直又は平行になるように、ホール素子をAgペーストの接着剤を用いてリードフレーム上に接着した。
【0037】
さらに、最終的な磁気センサ装置を平面視したときの面積の30%となるような大きさの集積回路を、同一リードフレーム上に接着した。この時の磁気センサ装置の中のホール素子の位置は、磁気センサ装置を平面視したときに、磁気センサ装置の中心から感磁部の中心までの距離が、磁気センサ装置の中心から感磁部の十字型の中心をつないだ直線の軸方向の磁気センサ装置の長さの31%の位置であった。
【0038】
得られたホール素子と集積回路をAuの金属線で接続した。また、リードフレームとホール素子の電極部とを、Auの金属線で接続した。最後に、モールド樹脂で封止した。
このようにして得られた磁気センサ装置を、125℃24時間乾燥した後に5mAの電流を印加して得られる出力と、温度85℃湿度85%で168時間処理した後に同様に5mAの電流を印加して得られる出力の変動を評価したところ、平均0.0mV、σ0.1mVと非常に小さい値となった。
【実施例2】
【0039】
図2に示したように、ホール素子と集積回路の中心を結んでできる仮想線分に平行な3軸上に4つの電極部を有するホール素子を用いた以外は実施例1と同様の方法で磁気センサ装置を作製し、同様の評価をしたところ、出力の変動は、平均0.0mV、σ0.1mVと非常に小さい値となった。
【実施例3】
【0040】
集積回路の大きさを、最終的な磁気センサ装置を平面視したときの面積の11%となるような大きさとし、この時の磁気センサ装置の中のホール素子の位置が、磁気センサ装置を平面視したときに、磁気センサ装置の中心から感磁部の中心までの距離が、磁気センサ装置の中心から感磁部の十字型の中心をつないだ直線の軸方向の磁気センサ装置の長さの10%の位置として、同一リードフレーム上に接着したことを除けば、実施例1と同様の方法で磁気センサ装置を作製し、同様の評価をしたところ、出力の変動は、平均0.0mV、σ0.1Vと非常に小さい値となった。
【実施例4】
【0041】
集積回路の大きさを、最終的な磁気センサ装置を平面視したときの面積の48%となるような大きさとしたことを除けば、実施例1と同様の方法で磁気センサ装置を作製し、同様の評価をしたところ、出力の変動は、平均0.0mV、σ0.1Vと非常に小さい値となった。
【0042】
[比較例]
図3は、比較例の磁気センサ装置の構成を示す平面図である。磁気センサ装置を平面視したときに、感磁部の十字型を構成する2辺がなす軸各々が、矩形状の樹脂パッケージの長辺に対して±45度傾くようにホール素子を配置した以外は、実施例1と同様の方法で磁気センサ装置を作製し、同様の評価をしたところ、出力の変動は平均0.6mV、σ0.1mVと大きい値となった。
このように、上述した本発明の各実施形態によれば、樹脂パッケージ内の中心からずれた位置にホール素子を配置した磁気センサ装置において顕著に発生する、湿度環境下での水分の吸収により生じる特性変化を抑制し、吸湿前後でのオフセット電圧の特性変動が小さくなるようにした磁気センサ装置を提供することが可能になる。