【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、経済産業省、研究題目「航空機用先進システム基盤技術開発(耐雷・帯電特性解析技術開発)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る
光観測方法について添付図面を参照して説明する。
【0012】
(構成および機能)
図1は本発明の実施形態に係る第1の光観測システムの構成図、
図2は
図1に示す第1の光観測システムを用いたスパーク光観測試験に先だつスパーク光観測試験に使用される第2の光観測システムの構成図、
図3は
図1に示す第1の光観測システム及び
図2に示す第2の光観測システムを用いた雷撃試験に使用される試験機体の一例を示す図である。
【0013】
第1の光観測システム1及び第2の光観測システム2は、航空機の雷撃試験に使用されるシステムである。第1の光観測システム1及び第2の光観測システム2を用いた航空機の雷撃試験は、雷撃を模擬した電流を試験機体3に流し、試験機体3に流した電流によって生じるスパーク光Sの有無を観測することによって行われる。そのため、雷撃試験の際には、
図3に示すように航空機の試験機体3に雷電流発生器4が接続される。そして、雷電流発生器4により発生させた電流が試験機体3に流される。また、雷撃試験では、第1の光観測システム1を用いたスパーク光Sの観測試験に先だって第2の光観測システム2を用いたスパーク光Sの観測試験が実施される。
【0014】
第1の光観測システム1は、
図1に示すように光ファイバ5、検出系6及びレーザ照射系7を設けて構成される。光ファイバ5は、試験機体3の被検領域において発生したスパーク光Sを入射させて検出系6に伝送するために設けられる。光ファイバ5は、ガラスやプラスチック等の細い繊維で形成されており、可撓性を有する。このため、狭い空間であっても点検口や開口部等から挿入し、被検領域に光ファイバ5の先端を向けて容易に配置することができる。
図1に示す例では、板状の部材に突起部を設けた試験機体3の被検領域に向けて光ファイバ5が配置されている。
【0015】
スパーク光Sを入射させるための光ファイバ5の数は任意である。従って原理的には、少なくとも1本の光ファイバ5を用いてスパーク光Sを検出系6に伝送することができる。但し、光ファイバ5の本数を多くすることによって検出系6に出力されるスパーク光Sの強度及び第1の光観測システム1におけるスパーク光Sの検出能を向上させることができる。従って、検出系6における感度に応じた十分なスパーク光Sが検出系6に出力されるように、十分な本数の光ファイバ5を束ねた光ファイバ束を用いることが実用的である。
【0016】
検出系6は、光ファイバ5により伝送されるスパーク光Sを検出するためのシステムである。検出系6は、
図1に例示されるように光電変換装置8及びオシロスコープ9を用いて構成することができる。すなわち、光ファイバ5の反被検領域側の一端を光電変換装置8の入力側と接続し、光電変換装置8の出力側をオシロスコープ9の入力側と接続することができる。
【0017】
光電変換装置8は、フォトトランジスタ等の受光素子を用いて構成することができる。光電変換装置8は、光ファイバ5により伝送されたスパーク光Sを光電変換し、スパーク光Sの強度を振幅とする電気信号に変換する装置である。従って、光ファイバ5にスパーク光Sが入射すると、スパーク光Sの強度に応じた振幅の電気信号がオシロスコープ9に出力される。
【0018】
オシロスコープ9は、光電変換装置8において生成された電気信号の波形を2次元のグラフとしてディスプレイに表示させる装置である。すなわち、スパーク光Sの強度に応じた振幅を有する電気信号は、横軸を時間とし、縦軸を電気信号の電圧とするグラフ上に表示させることができる。このため、ユーザがオシロスコープ9のディスプレイを目視することによって、スパーク光Sの発生の有無を電圧の時間変化として確認することができる。
【0019】
但し、電気信号に対する信号処理によって自動的にスパーク光Sの発生の有無を判別する判別器を設けてもよい。スパーク光Sの有無を判別するための信号処理は、電気信号に対する閾値処理とすることができる。その場合の閾値は、典型的なスパーク光Sの強度に対応する振幅を有する電気信号が抽出される一方、ノイズが除去されるように経験的又はシミュレーションによって予め決定することができる。
【0020】
一方、レーザ照射系7は、光ファイバ5の向きを確認するためのレーザ光を被検領域に向けて照射するためのシステムである。レーザ光は、スパーク光Sを検出系6に伝送するための光ファイバ5Aを用いて被検領域に向けて照射することができる。或いは、スパーク光Sを検出系6に伝送するための光ファイバ5Aと少なくとも被検領域側の端部において束ねられる他の光ファイバ5Bを通じてレーザ光を照射するようにしてもよい。
【0021】
図1に示す例では、スパーク光Sを検出系6に伝送するための光ファイバ5Aとは別に、レーザ光を被検領域に向けて照射するための他の光ファイバ5Bが設けられている。従って、レーザ照射系7の出力側が、レーザ光の照射用の当該他の光ファイバ5Bと接続されている。
【0022】
図4は、光ファイバ束の一部をレーザ光の照射用に分岐させた例を示す拡大図である。
【0023】
図4に示すように、スパーク光Sを入射させるために複数の光ファイバ5を束ねたファイバ束10を用いることができる。実用性を考慮すると、50本前後の光ファイバ5を用いてファイバ束10を構成することが好適である。そして、少なくとも1本の光ファイバ5Bをファイバ束10から分岐させ、分岐させた光ファイバ5Bをレーザ照射系7と接続することができる。また、残りの光ファイバ5Aを検出系6と接続することができる。
【0024】
一方、スパーク光Sを検出系6に伝送するための光ファイバ5と、レーザ光を被検領域に向けて照射するための光ファイバ5を共通とする場合には、同一の光ファイバ5をレーザ照射系7及び検出系6に対して着脱すればよい。或いは、光ファイバ5の反被検領域側における光路をレーザ照射系7側と検出系6側との間で切換えるための光学系を設けるようにしてもよい。すなわち、レーザ照射系7は、レーザ照射系7の出力側に光ファイバ5を着脱又はレーザ照射系7の出力側を光ファイバ5に切換えることによって、光ファイバ5を通じてレーザ光を被検領域に照射するように構成することができる。
【0025】
このように、スパーク光Sを検出系6に伝送するための光ファイバ5と、レーザ光を被検領域に向けて照射するための光ファイバ5を共通とすれば、より正確にスパーク光Sを検出系6に伝送するための光ファイバ5の向きを確認することができる。逆に、スパーク光Sを検出系6に伝送するための光ファイバ5Aとは別に、レーザ光を被検領域に向けて照射するための他の光ファイバ5Bを設ければ、第1の光観測システム1の構成を簡易にすることができる。或いは、レーザ照射系7への光ファイバ5を着脱を不要にすることができる。
【0026】
レーザ照射系7から光ファイバ5を通じて被検領域に向けてレーザ光を照射すると、被検領域の物体表面に輝点としてマーキングを行うことができる。このため、ユーザは、スパーク光Sを入射させるための光ファイバ5の先端の向きを目視により確認することができる。
【0027】
更に、レーザ照射系7には、被検領域において反射したレーザ光の反射光を受光し、受光した反射光に基づいて光ファイバ5の先端からレーザ光の反射位置までの距離を測定するレーザ測定器としての機能を設けることが好適である。反射光のレーザ照射系7への伝送についてもスパーク光Sを検出系6に伝送するための光ファイバ5A又はレーザ光を被検領域に向けて照射するための他の光ファイバ5Bを用いることができる。すなわち、レーザ光の照射に用いた光ファイバ5を用いて反射光がレーザ照射系7に伝送される。そして、光ファイバ5の長さが既知であることからレーザ光の照射タイミングと反射光の受光タイミングとの時間差に基づく公知の原理によって、スパーク光Sを検出系6に伝送するための共通の光ファイバ5又はレーザ光を被検領域に向けて照射するための他の光ファイバ5Bの先端からレーザ光の反射位置までの距離を測定することができる。
【0028】
従って、レーザ照射系7をレーザ測定器で構成すれば、スパーク光Sを入射させるための光ファイバ5の向き及び位置を把握することができる。特に、光ファイバ5の先端から被検領域までの距離を自動計測することができる。その結果、スパーク光Sを光ファイバ5に入射させることが可能な範囲を、レーザ光の反射位置として生じた輝点から所定の距離の範囲内の領域として把握することができる。特に、被検領域が平面であれば、スパーク光Sを光ファイバ5に入射させることが可能な領域を、輝点を中心とする円形の領域として把握することができる。
【0029】
具体的には、
図1に示すように光ファイバ5の受光角度を離軸角θで表し、光ファイバ5の先端から被検領域までの距離をLとすると、スパーク光Sを入射させることが可能な円形領域の直径Dは、式(1)により計算することができる。
L=D/(2tanθ) (1)
【0030】
逆に、スパーク光Sを光ファイバ5に入射させることが可能な直径Dの円形領域を確保するためには、被検領域から式(1)により計算される距離L以上離れた位置に光ファイバ5を配置することが必要であるということになる。式(1)の計算は、ユーザがマニュアルで実行するようにしても良いし、レーザ照射系7に離軸角θ及び距離Lに基づいて領域の直径Dを自動計算する機能を設けるようにしても良い。
【0031】
尚、離軸角θは、スパーク光Sを入射させるための光ファイバ5の先端の形状に依存して定まる。そこで、十分な離軸角θが確保できるように光ファイバ5の先端形状を決定することができる。
【0032】
図5は、
図1に示す光ファイバ5の先端形状のバリエーションを示す斜視図である。
【0033】
図5(a), (b), (c)に示すように、スパーク光Sの検出範囲を適切な範囲とするために、光ファイバ5の先端形状を様々な形状にすることができる。
【0034】
例えば、
図5(a)に示すように、光ファイバ5の先端に、端部側に向かって内径が徐々に大きくなる筒状の遮蔽物20を取付けることができる。この場合、スパーク光Sの入射範囲を決定する離軸角θを、中心軸に対する遮蔽物20自体の傾斜角度にすることができる。また、遮蔽物20によって光ファイバ5への不要な方向からの光の入射を防止することができる。
【0035】
一方、
図5(b)に示すように、光ファイバ5の先端に凸レンズ21を設けることもできる。これにより、離軸角θを大きくすることができる。逆に、
図5(c)に示すように、光ファイバ5の先端に凹レンズ22を設けることもできる。
【0036】
そして、予め第2の光観測システム2によって観測されたスパーク光Sの発生領域が、第1の光観測システム1の光ファイバ5にスパーク光Sを入射させることが可能な領域内となるように、光ファイバ5の向き及び光ファイバ5と被検領域との間における距離Lを調整することができる。
【0037】
尚、レーザ照射系7にレーザ測定機能を設けない場合であっても、メジャー等で光ファイバ5と被検領域との間における距離Lを測定することによって、光ファイバ5にスパーク光Sを入射させることが可能な領域を把握することができる。従って、レーザ照射系7としてレーザポインタ等の簡易な機器を用いるこよもできる。例えば、スパーク光Sを入射させるための光ファイバ5の先端にレーザポインタを取付けるのみでも、光ファイバ5にスパーク光Sを入射させることが可能な領域を把握することができる。
【0038】
一方、第2の光観測システム2は、上述したように、スパーク光Sの概略的な発生領域を特定するためのシステムである。そのために、第2の光観測システム2は、
図2に示すように、複数の光ファイバ2Aで構成されるファイバ束2Bの一端を検出系2Cに接続して構成することができる。
【0039】
第2の光観測システム2のファイバ束2Bの他端側は、各光ファイバ2Aの先端が互いに異なる複数の方向に向くように分岐される。
図2に示す例では、各光ファイバ2Aの先端がリング状の固定具2Dに所定の間隔で固定されている。そして、分岐したファイバ束2Bは、試験機体3の被検領域に配置される。
【0040】
図2に示す例では、試験機体3である航空機の燃料タンク3A内に点検孔3Bを介してファイバ束2Bが挿入されている。このため、燃料タンク3A内を空間的な被検領域として、360度方向からのスパーク光Sをいずれかの光ファイバ2Aに入射させることができる。つまり、空間的な被検領域内において不特定の方向から生じたスパーク光Sを複数の光ファイバ2Aのいずれかに入射させることができる。
【0041】
第2の光観測システム2の検出系2Cについても、第1の光観測システム1の検出系と同様な構成とすることができる。すなわち、第2の光観測システム2の検出系2Cを、光電変換装置2E及びオシロスコープ2Fを用いて構成することができる。そして、第2の光観測システム2においても第1の光観測システム1と同様な信号処理によってスパーク光Sの有無を判定することができる。但し、第2の光観測システム2では、空間領域においてスパーク光Sの発生方向及び発生領域を特定することができる。
【0042】
尚、各光ファイバ2A及びスパーク光Sの入射方位を識別するために、光電変換装置2Eにおいて光ファイバ2Aごとに異なる周波数の電気信号に変換することが好適である。複数の光ファイバ2Aに、互いに異なる周波数を割り当てる技術については、特願2012−68770の明細書及び図面に詳細が記載されている。
【0043】
(動作および作用)
次に第1の光観測システム1及び第2の光観測システム2を用いた航空機の雷撃試験のための光観測方法について説明する。
【0044】
図6は、
図1に示す第1の光観測システム1及び第2の光観測システム2を用いた航空機の雷撃試験の流れを示すフローチャートである。
【0045】
まずステップS1において、
図3に示すような雷電流発生器4を用いて、航空機の試験機体3に雷撃を模擬した第1の電流が流される。そして、
図2に示すような第2の光観測システム2を用いて複数の異なる方位からのスパーク光Sの有無が観測される。
【0046】
具体的には、第1の被検領域として決定された試験機体3の空間領域に向けて第2の光観測システム2の第1の光ファイバ束2Bが配置される。このため、第1の電流によって試験機体3の第1の被検領域において第1のスパーク光Sが発生すると、発生した第1のスパーク光Sは、端部が互いに異なる複数の方向に向けられた第1の複数の光ファイバ2Aを束ねたファイバ束2Bに直接光又は間接光として入射する。第1のファイバ束2Bに入射した第1のスパーク光Sは、第1のファイバ束2Bを経由して第2の光観測システム2の検出系2Cに伝送される。
【0047】
第1のファイバ束2Bにより伝送された第1のスパーク光Sが検出系2Cに出力されると、検出系2Cにおいて第1のスパーク光Sが検出される。すなわち、第1のスパーク光Sは光電変換装置2Eにおいて第1のスパーク光Sの強度に応じた振幅を有する電気信号に変換される。光電変換装置2Eにおいて生成された電気信号は、オシロスコープ2Fに出力される。このため、オシロスコープ2Fのディスプレイには、第1のスパーク光Sに対応する電気信号の波形が表示される。
【0048】
次に、ステップS2において、第1のスパーク光Sが観測されたか否かが判定される。第1のスパーク光Sが第1の被検領域において発生しなかった場合には、オシロスコープ2Fのディスプレイに第1のスパーク光Sに対応する電気信号の波形が表示されない。このため、ユーザは第1のスパーク光Sが観測されなかったと判定することができる。
【0049】
また、第2の光観測システム2の検出系2Cに第1のスパーク光Sが観測されたか否かを電気信号に対する閾値処理によって自動判定する機能を設けた場合には、検出系2Cにおいて第1のスパーク光Sが観測されたか否かを自動判定することができる。
【0050】
そして、第1のスパーク光Sが観測されなかったと判定された場合には、ステップS3において、第1の被検領域について試験機体3は雷撃試験に合格したと判定される。これにより、第1の被検領域における雷撃試験は終了する。
【0051】
一方、第1のスパーク光Sが観測されたと判定された場合には、ステップS4において、第1のスパーク光Sの発生領域が特定される。第1のスパーク光Sの発生領域は、第1のスパーク光Sが入射した第1の光ファイバ2Aの先端の向きに基づいて特定することができる。従って、第1のスパーク光Sが入射した第1の光ファイバ2Aが特定される。
【0052】
第1のスパーク光Sが入射した第1の光ファイバ2Aの特定は、例えば、予め光ファイバ2Aごとに異なる電気信号の周波数を対応付けることにより実行することができる。すなわち、各光ファイバ2Aにより伝送された第1のスパーク光Sを、各光ファイバ2Aに固有の周波数を有する電気信号に変換することができる。そして、電気信号の周波数を調べることにより、第1のスパーク光Sが入射した第1の光ファイバ2Aを特定することができる。そうすると、各光ファイバ2Aの先端の向き及び位置は既知であるから、第1のスパーク光Sが発生した位置を粗い精度で推定することができる。
【0053】
第1のスパーク光Sが入射した第1の光ファイバ2Aの特定及び第1のスパーク光Sの発生領域の特定は、第2の光観測システム2の検出系2Cによって自動的に行うようにすることができる。例えば、オシロスコープ2Fに代えて、或いはオシロスコープ2Fに加えて、第1のスパーク光Sに対応する電気信号の振幅及び周波数を検出する信号処理装置を検出系2Cに設けることによって、第1のスパーク光Sが入射した第1の光ファイバ2A及び第1のスパーク光Sの発生領域の一方又は双方を自動的に検出することができる。
【0054】
或いは、ユーザがオシロスコープ2Fのディスプレイを観察することによって、第1のスパーク光Sが入射した第1の光ファイバ2A及び第1のスパーク光Sの発生領域を把握するようにしてもよい。
【0055】
第1のスパーク光Sの発生領域が特定されると、特定された第1のスパーク光Sの発生領域が第2の被検領域に決定される。そして、第2の被検領域に対する第1の光観測システム1による第2のスパーク光Sの観測試験が実施される。すなわち、第1の光観測システム1により、指向型の第2の光ファイバ5を用いた第2のスパーク光Sの観測が実施される。
【0056】
そのために、ステップS5において、第1の光観測システム1に設けられる指向型の第2の光ファイバ5の位置決めが実施される。すなわち、第1のスパーク光Sの発生領域である第2の被検領域において再び第2のスパーク光Sが生じた場合に、第2のスパーク光Sを入射させることが可能な位置に第1の光観測システム1の第2の光ファイバ5が配置される。
【0057】
但し、第2の光ファイバ5の先端が第2の被検領域に向いているか否かを目視により正確に確認することは困難である場合が多い。また、第2のスパーク光Sを第2の光ファイバ5に入射させることが可能な範囲は、式(1)に示すように第2の光ファイバ5と試験機体3との間における距離に依存して変化する。更に、第2のスパーク光Sを十分な強度で観測するためには、第2の光ファイバ5と試験機体3との間における距離を適切な距離とすることが重要である。
【0058】
そこで、第1の光観測システム1のレーザ照射系7から第2の被検領域に向けて、第2の光ファイバ5A又は第2の光ファイバ5Aと少なくとも第2の被検領域側の端部において束ねられる他の光ファイバ5Bを通じて第2の光ファイバ5の向きを確認するためのレーザ光が照射される。この結果、試験機体3の表面に第2の光ファイバ5の向きが輝点として現れる。
【0059】
これによりユーザは第2の光ファイバ5の向きを目視により確認することができる。また、第2の光ファイバ5の先端から試験機体3の表面までの距離をメジャー等によって測定することができる。これにより、第2のスパーク光Sを第2の光ファイバ5に入射させることが可能な範囲を把握することができる。
【0060】
更に、レーザ照射系7がレーザ測定器である場合には、第2の光ファイバ5の先端から試験機体3の表面までの距離が正確に自動計測される。このため、ユーザは、一層正確に第2のスパーク光Sを第2の光ファイバ5に入射させることが可能な範囲を把握することができる。そして、第2のスパーク光Sを第2の光ファイバ5に入射させることが可能な範囲が、第1のスパーク光Sの発生領域である第2の被検領域をカバーする範囲となるように、第2の光ファイバ5の先端の位置決めが実行される。
【0061】
指向型の第2の光ファイバ5の位置決めが完了すると、ステップS6において、第2の光ファイバ5をセンサとする第1の光観測システム1によって第2のスパーク光Sの観測が行われる。
【0062】
具体的には、
図3に示すような雷電流発生器4を用いて、試験機体3に再び雷撃を模擬した第2の電流が流される。このため、第2の電流によって第2の被検領域において第2のスパーク光Sが発生する。すなわち、第1のスパーク光Sが発生した位置と考えられる位置において、第2のスパーク光Sが発生する。発生した第2のスパーク光Sは、第2の光ファイバ5に直接光として入射し、第1の光観測システム1の検出系に伝送される。
【0063】
このため、第1の光観測システム1の検出系において、第2の光ファイバ5により伝送された第2のスパーク光Sが検出される。すなわち、第2のスパーク光Sが光電変換装置8において第2のスパーク光Sの強度に応じた振幅を有する電気信号に変換される。光電変換装置8において生成された電気信号は、オシロスコープ9に出力される。このため、オシロスコープ9のディスプレイには、第2のスパーク光Sに対応する電気信号の波形が表示される。
【0064】
そして、ユーザは、第2の光ファイバ5に直接光として入射した第2のスパーク光Sの強度を、オシロスコープ9のディスプレイに表示される電気信号の振幅として把握することができる。また、雷撃試験の結果として、第2のスパーク光Sの強度及び発生位置を記録することができる。
【0065】
つまり以上のような第1の光観測システム1及び第2の光観測システム2は、可撓性を有する光ファイバ2A、5を用いることによって、狭い被検領域においてスパーク光Sの観測を行えるようにしたものである。特に、第1の光観測システム1は、指向性を有する光ファイバ束10の一部をレーザ測定器等のレーザ照射系7と接続することにより、レーザ光で光ファイバ5の向き及び光ファイバ5から試験機体3までの距離を確認できるようにしたものである。
【0066】
(効果)
このため第1の光観測システム1及び第2の光観測システム2を併用することによって、全方位型の観測システムである第2の光観測システム2によってスパーク光Sを直接観測できなかった場合でも指向型の観測システムである第1の光観測システム1によって直接光として正確にスパーク光Sを観測することができる。また、第1の光観測システム1及び第2の光観測システム2は、いずれも光ファイバ2A、5をセンサとするシステムであるため、狭い空間であっても容易にスパーク光Sを観測することが可能である。
【0067】
更に、第1の光観測システム1によれば、レーザ光で光ファイバ5の指向性を確認することができる。このため、光ファイバ5の向き及び位置を容易かつ適切に調整することが可能となる。特に、スパーク光Sの観測視野が円形となる場合には、観測視野の直径が目的とする直径となるような位置に光ファイバ5を配置することができる。すなわち、目的とする領域において発生するスパーク光Sを確実に直接光として検出系において受光できるように、レーザ測定された距離を参照しながら、光ファイバ5と試験機体3との間における距離を調節することができる。
【0068】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【0069】
例えば、上述した実施形態では、第1の光観測システム1を用いたスパーク光Sの観測において光ファイバ5の向きをレーザ光で確認する例について説明したが、ユーザが目視により確認するようにしてもよい。或いは、レーザ光以外の手段によって、光ファイバ5の向きを確認するようにしてもよい。例えば、光ファイバ5の先端から指向性のない可視光を試験機体3に向けて照射し、可視光によって照らされる領域を確認することによってスパーク光Sの観測領域を把握するようにしてもよい。