【文献】
Noriyuki MIYATA et al.,Effect of interfacial Si oxidation on interface dipoles in HfO2/Si structures,Journal of Physics D: Applied Physics,2013年 7月 9日,Vol. 46, No. 31,,pp. 315304-1−315304-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁膜は、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化アルミニウム、酸化イットリウムのうち一以上の酸化物を含むことを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶素子。
第1の導電型の半導体基板上に互いに離間対向して第2の導電型の第1及び第2の半導体領域が形成され、前記第1及び第2の半導体領域の間の前記半導体基板の表面上に、金属元素(M1)と酸素(O)と半導体(S)とが化学結合された単分子層程度のM1-O-S層と、前記金属元素(M1)以外の金属元素を含む絶縁膜と、金属電極とが積層されており、前記金属電極をゲート電極とし、前記第1及び第2の半導体領域をそれぞれドレイン領域およびソース領域とする電界効果型トランジスタ構造を備え、
前記ゲート電極に与える電気信号により前記半導体基板と前記絶縁膜との間に誘起される界面ダイポールの強度を変化させることで情報を記憶することを特徴とする三端子型の不揮発性記憶素子。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係る不揮発性記憶素子の一実施形態の断面構造図を示す。同図において、本実施形態の不揮発性記憶素子10は、半導体基板11上に単分子M
1-O-S層12、金属酸化物層13、金属電極14がこの順で積層された断面を有するMIS(Metal Insulator Semiconductor)キャパシタ構造である。すなわち、不揮発性記憶素子10は、金属電極14、絶縁膜である金属酸化物層13、半導体基板11で構成されるキャパシタ構造の金属酸化物層13と半導体基板11との絶縁膜/半導体界面に単分子M
1-O-S層12を設けたMIS構造である。
【0016】
単分子M
1-O-S層12は、一分子層程度の厚さの金属元素(M
1)-酸素(O)-半導体(S)の化学結合層である。金属元素(M
1)は
図1に白丸で模式的に示すように金属酸化物層13側に、半導体(S)は
図1に黒丸で模式的に示すように半導体基板11側に設けられる。金属元素(M
1)としては、金属酸化物層13に含まれる金属元素以外の異種金属元素が用いられ、例えば、マグネシウム、チタン、ストロンチウム、イットリウム、ランタン、タンタル、ガリウム、アンチモンのうちいずれか一つ以上を用いることができる。金属酸化物層13は酸化物を含む絶縁膜で、例えば酸化ハフニウム(HfO
2)が用いられる。なお、HfO
2以外にも、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)などの酸化物を用いることもできる。
【0017】
ところで、本発明者は、過去に不揮発性記憶素子10と同様の1分子層程度の界面Hf-O-Si結合を有するHfO
2/Si構造について、MIS電気測定及びケルビンプローブ測定により、界面に1V程度に達する大きな静電ポテンシャルのズレ(界面ダイポール)が存在することを見出し、文献1〜3にて報告した。ここで、文献1は「Y.Abe,N.Miyata,Y.Shiraki,T.Yasuda,”Dipole formation at direct-contact HfO
2/Si interface”.Applied Physics Letters 90.172906-1-3(2007)」である。文献2は「N.Miyata.T.Yasuda,Y.Abe,”Kelvin Probe Study of Dipole Formation and Annihilation at the HfO
2/Si interface”,Appl.Phys.Exp.3,054101-1-3(2010)」である。文献3は「N.Miyata,T.Yasuda, Y.Abe,”Kelvin probe study on formation of electric dipole at direct-contact HfO
2/Si interfaces”,Journal of Applied Physics,110 074115-1-8(2011)」である。
【0018】
この界面ダイポールは、界面近傍の酸化物側に負電荷、シリコン側に正電荷を有する構造である。更に、上記文献3では同界面ダイポールの発生が、
図2(a)、(b)に示す電荷分布モデルで説明できることも報告している。
図2(a)、(b)に示す位置(1)の左側のSiでは
図2(b)に実線で示す静電ポテンシャルが一定(値「0」)であり、位置(3)の右側のHf側では
図2(b)に破線で示す静電率が一定(値「20」)である。更に位置(2)の酸素原子とSi原子との界面、酸素原子とHf原子との界面では静電ポテンシャル及び誘電率が変化する。ここで重要な概念は、僅か数原子層程度の界面近傍領域における電荷の偏りと誘電率の変化によって、1eVにも達する界面の静電ポテンシャルの変化(ダイポール)が発生する点である。仮に、この界面ダイポールを外部から変化させることが可能となれば、MIS構造の電気特性(容量、リーク電流、閾値等)を大きく変調させることが可能となる。
【0019】
そこで、界面近傍の各原子の位置と電荷に着目し、外部の電気刺激として外部から電場が加えられた際の変化を考察してみる。
図3は、1分子層程度のM
1-O-Si結合を有するHfO
2/Si界面において外部電気刺激による界面近傍の原子移動が界面ダイポールの変調を生じる機構を説明する模式図を示す。
図1の金属酸化物層13に相当するHfO
2膜の上の金属電極14に負電圧が印加されると、
図3(a)に模式的に示すように、Si基板(
図1の半導体基板11に相当)から金属電極に向かう電界Eによって、正に帯電した金属原子(M
1)は電極方向へ、負に帯電した酸素原子(O)はSi基板方向へ引っ張られる力が発生する。仮に、僅かでもこれらの原子の移動が起こるならば、
図2に示した原理で発生する界面ダイポールの大きさは、減少又は反転することが予想される。
【0020】
一方、金属電極に正電圧が印加されると、
図3(b)に模式的に示すように、金属電極からSi基板(
図1の半導体基板11に相当)に向かう電界Eによって、正に帯電した金属原子(M
1)はSi方向へ、負に帯電した酸素原子(O)は金属電極方向へ引っ張られる力が発生する。仮に、僅かでもこれらの原子の移動が起こるならば、
図2に示した原理で発生する界面ダイポールの大きさは、増加することが予想される。以上の原理により、金属電極への電圧印加により界面ダイポールが変調されると期待される。
【0021】
より具体的に金属電極からの電気刺激によってHfO
2/Si界面構造が変化することについて
図4とともに説明する。
図4は、1原子層程度の異種金属元素(M
1)を含むHfO
2/Si界面に対して予想される外部電気刺激による界面近傍の原子移動及び配位数変化の一例を示す。金属元素(M
1)の原子は、配位数を変えることで
図4(a)、(b)に示す電荷量と原子位置が異なる二つの安定構造をとる。HfO
2/Si界面の金属元素(M
1)の原子に着目すると、
図4(a)に模式的に示す配位数の界面近傍において、金属電極に正電圧が印加されると、正に帯電した金属元素(M
1)の原子にはSiの半導体基板側へ向かう力が働き、この力が十分に大きければ、
図4(b)に模式的に示すように一部のM
1-O結合が切断され、M
1原子は5配位から3配位へと変化して構造が安定化する。
【0022】
外部からの電気刺激により、この二つの安定構造を可逆的に変化させることができれば、二値の情報を記憶でき、更に面内のダイポールの変化割合を制御することで、多値記憶の可能性も期待される。以上の概念を基に本発明は創案され、動作原理を実証されたものである。以上のように、本実施形態の不揮発性記憶素子10は、金属/絶縁膜/半導体キャパシタ構造中に誘起される界面ダイポールの強度又は極性をゲート電極からの電気的刺激で変化させる(変調する)ことで不揮発性の情報記憶動作を実現することができる。
【0023】
[実施例1]
次に、本発明について更に具体的に説明する。
図1に示した断面構造の実施形態の不揮発性記憶素子10は、電子ビーム蒸着法などの表面反応を抑制できる堆積方法を用いれば、容易に作製することが可能である。また、界面のM
1原子量は、X線光電子分光法で確認が可能である。ここでは、作製の一例として、電子ビーム蒸着法を用いてHfO
2/M
1原子/Si(100)構造のキャパシタの作製工程を説明する。
【0024】
まず、半導体基板11とする例えばn型のSi(100)基板の表面酸化物を希釈フッ化水素(HF)溶液(〜1.5%)により完全に除去する。続いて、表面酸化物除去後のSi基板の表面に電子ビーム蒸着法により単分子M
1-O-Si層12を形成する。ここで、大気に曝すことなくX線光電子分光法を用いて基板表面のM
1量を測定し、約一原子層になるように調整する。次に、電子ビーム蒸着法により金属酸化物層13として5nmのHfO
2膜を堆積する。続いて、同じ堆積装置内で、450℃の後熱処理を施し、堆積装置より大気中に取り出す。そして、取り出し後、直ちに抵抗加熱蒸着法によりHfO
2膜の表面に金属電極14として金電極を堆積し、実施例1の不揮発性記憶素子の作製を終了する。
【0025】
図5は、HfO
2/n型Si界面に単分子M
1-O-S層を設けた素子の容量対ゲート電圧特性(C-V特性)の一例と、単分子M
1-O-S層を設けていない素子の容量対ゲート電圧特性(C-V)特性とを対比して示す。
図5において、実線Iは上記実施例1のように、HfO
2/n型Si界面へ異種金属元素(M
1)を1原子層程度添加した不揮発性記憶素子のC-V特性の一例を示す。
図5の縦軸は規格化した容量値を示し、横軸は金属電極に印加されるゲート電圧を示す。実施例1のC-V特性は、実線Iで示すように反時計回りの大きなヒステリシス特性を示す。これに対し、HfO
2/n型Si界面に単分子M
1-O-S層を設けていない素子のC-V特性は、一点鎖線IIのように時計回りの小さなヒステリシス特性や、あるいは点線IIIで示す特性を示す。本実施例のC-V特性Iにおいて特に注目すべき点は、負バイアスから正バイアスへ掃引した際の容量に比べ、逆方向にバイアスを掃引した際の容量が増加する反時計回りのヒステリシス特性を示すことである。
【0026】
図6は上記のヒステリシス特性の発生原理を示す。
図6において「Si」はシリコン基板、「絶縁膜」は金属酸化物層であるHfO
2、「電極」は金属電極を示す。本実施例の
図5に実線Iで示した特異なヒステリシス特性は
図6(a)のダイポール変調機構で説明される。すなわち、前述したように、界面ダイポールがゲートバイアスで変調された際に生じるフラットバンド電圧(V
FB)の負のシフトが、異種金属元素(M
1)が添加された単分子M
1-O-S層を設けたHfO
2/Si界面で生じることによるものと推測される。
【0027】
一方、
図6(b)は異種金属元素(M
1)が添加されていない一般的なHfO
2/Si界面近傍におけるHfO
2中の電子捕獲によるV
FBシフトを示す。この場合、正バイアス印加によって、シリコン基板側から電子が絶縁膜に注入され、絶縁膜内に捕獲されるため、正のV
FBシフトが生じる。すなわち、一般的な電子捕獲現象では、V
FBシフトは
図6(a)に示したダイポール変調機構とは逆の動きとなり、時計回りのヒステリシスが生じることになる。また、外部電界により界面ダイポールが消滅した場合も、同様の時計回りのヒステリシスである。以上の考察により、
図5の実線Iが示すC-V特性のヒステリシス特性は、界面ダイポールが変調されていることで生じていると推測される。
【0028】
図7は、HfO
2/n型Si界面に単分子M
1-O-S層を設けた素子のリーク電流対ゲート電圧特性(I-V特性)の一例と、単分子M
1-O-S層を設けていない素子のリーク電流対ゲート電圧特性(I-V)特性とを対比して示す。
図7において、実線IVは上記実施例1のように、HfO
2/n型Si界面に単分子M
1-O-S層を設けた不揮発性記憶素子のI-V特性の一例を示す。
図7の縦軸は規格化したリーク電流値を示し、横軸は金属電極に印加されるゲート電圧を示す。実施例1のI-V特性は、実線IVで示すように反時計回りのヒステリシス特性を示す。これに対し、HfO
2/n型Si界面に単分子M
1-O-S層を設けていない素子のI-V特性は、点線Vで示すように無視できる程度である。実線IVで示した実施例1のI-V特性が反時計回りのヒステリシス特性を示すことは、C-V特性と同様に、
図6(a)に示した界面ダイポール変調によるV
FBシフトによって説明できる。以上のC-V特性及びI-V特性より、単分子のM
1-O-S層12を導入することにより、界面ダイポールがゲート電圧によって変調されていると結論できる。
【0029】
次に、本実施例の情報の保持特性及び書き換え耐性について
図8及び
図9とともに説明する。
図8は、HfO
2/n型Si界面に単分子M
1-O-S層を設けた本実施例の容量値の時間変化特性の一例を示す。同図において、本実施例の不揮発性記憶素子のゲート電圧として+4Vを印加した後、断続的にゲート電圧+1Vのときの容量値を測定したところVIに示すように、100分ほどの容量保持が可能であった。同様に、ゲート電圧として−4Vを印加した後、断続的にゲート電圧−1Vのときの容量値を測定したところ
図8にVIIで示すように、100分ほどの容量保持が可能であった。これらの保持特性の時間変化から本実施例は1000分以上の保持が可能であると推測され、不揮発性記憶素子として実用上十分利用できる保持特性を有しているといえる。
【0030】
図9は、HfO
2/p型Si界面に単分子M
1-O-S層を設けた他の実施例のC-V特性の繰り返し測定に対する容量の時間変化特性の一例を示す。書き換え耐性を調べるため、
図9は、上記他の実施例のゲート電圧を−3.5Vから+3Vまで掃引(負→正バイアス掃引)した後、+3Vから−3.5Vまで掃引(正→負バイアス掃引)することを例えば1分の周期で繰り返すことを300回行った時の容量値の変化を示す。容量値の測定は、負→正バイアス掃引時及び正→負バイアス掃引時の両方ともに掃引途中のゲート電圧が+2Vの時点毎に行った。
図9の横軸の「繰り返し回数」は上記の掃引回数のことである。
図9から分かるように、300回の繰り返し電圧測定後も、掃引方向による容量差が十分に確保されており、この実施例は不揮発性記憶素子として実用上十分な書き換え耐性を有しているといえる。
【0031】
次に、本実施形態における単分子M
1-O-S層12の存在が必須であることについて、比較例1及び2との比較に基づいて説明する。
[比較例1]
比較例1はHfO
2/Si界面へ異種金属M
1を添加していないHfO
2/Si構造の素子である。比較例1の作製方法は、M
1-O-Si結合形成のための異種金属M
1を堆積する工程を省いた以外は、前述の実施例1の作製方法と同じである。すなわち、比較例1は希釈HF処理により表面酸化物除去後のSi基板の表面に、電子線蒸着法を用いてHfO
2膜、金属電極を順次に積層したキャパシタ構造である。比較例1ではM
1堆積を行っていないため、界面には単分子程度のHf-O-Si結合が形成されている。
【0032】
図5の点線IIIが比較例1のC-V特性を示し、実施例1と比較してヒステリシスは小さく、ダイポールの変調や電荷捕獲の効果は極めて小さいことが分かる。また、
図5の一点鎖線IIが絶縁破壊に近い電圧までゲートバイアスを印加したときの比較例1のC-V特性を示す。このC-V特性IIはヒステリシスは発生するが時計回りの特性である。これは、前述したように、
図6(b)に示した電荷捕獲やダイポール消滅に起因するヒステリシスと推測される。また、
図7に点線Vで示した比較例1のI-V特性からもヒステリシスが極めて小さいことが分かる。
【0033】
以上の結果より、前述の実施例1で観察されたC-V特性及びI-V特性における反時計回りのヒステリシス特性は金属酸化物層に含まれる金属以外の異種金属元素(M
1)の添加によるもので、比較例1におけるHf-O-Si結合の界面ではダイポールを変調できないと結論される。従って、記憶動作を可能にするためには、実施例1や実施形態のように、金属酸化物層に含まれる金属以外の異種金属元素(M
1)の導入が必須であると結論される。
【0034】
[比較例2]
単分子M
1-O-S層の効果を確認するため、HfO
2/SiO
2界面に異種金属M
1を堆積した構造の比較例2を作製して評価した。比較例2は、約3mmの厚さのアモルファスSiO
2膜をシリコンの熱酸化法で形成したSiO
2/n型Si基板上に、前述の実施例と同様の条件で異種金属M
1を堆積し、その表面にHfO
2膜を形成した構造である。
図10は、比較例2の容量対ゲート電圧特性(C-V特性)を示す。
図10に示すように、比較例2のC-V特性は大きなヒステリシスは観察されず、僅かな時計回りのヒステリシスが生じている。すなわち、ダイポール変調は生じず、僅かな時計回りのヒステリシスは
図6(b)に示した電荷捕獲によるヒステリシスであると考えられる。
【0035】
この結果は、比較例2のSiO
2膜がアモルファスであるため、整列したM
1-O-Si結合が形成されず、界面ダイポール自身が極めて小さいことが原因と推測される。以上の結果より、ダイポール変調においては、Si単結晶基板表面に形成した、整列したM
1-O-Si化学結合(単分子M
1-O-S層)の存在が重要であることが結論される。
【0036】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図11は、本発明に係る不揮発性記憶素子の他の実施形態の断面構造図を示す。同図において、本実施形態の不揮発性記憶素子20は、ゲート積層構造中に界面ダイポールを挿入した構造の電界効果型トランジスタである。すなわち、
図11において、不揮発性記憶素子20は、p型半導体基板21上にn
+半導体領域22及び23が互いに離間対向してドレイン領域およびソース領域として形成され、p型のチャネル表面に単分子M
1-O-S層12、金属酸化物膜13、ゲート電極となる金属電極14が積層された構造の電界効果型トランジスタである。また、金属電極14は、高濃度の不純物を含むポリシリコンであってもよい。この電界効果型トランジスタは、ゲート電極に与える電気信号によりM
1-O-S層12が誘起する界面ダイポールの強度又は極性を変化させることで情報を記憶する、金属/金属酸化物/半導体積層構造の三端子型の不揮発性記憶素子である。
【0037】
この不揮発性記憶素子20では、界面ダイポールを変調することで、トランジスタの閾値が変化し、ソース・ドレイン間の電流値が変化することで情報記憶と読み出しが可能となる。例えば、金属電極14としてイリジウムを用いた場合、0.5V程度の界面ダイポールの形成によって閾値は0.7Vから0.2V程度まで減少すると予想される。すなわち、適当なゲート電圧Vg(例えば、0.5V程度)でソース・ドレイン電流値を検出すると、界面ダイポールの変調により3桁以上の電流変化として捉えることが可能となる。
【0038】
本実施形態の三端子型の不揮発性記憶素子20の動作原理は、界面ダイポール変調による閾値変化を利用するもので、ゲート積層構造にトラップされる電荷による閾値変化を利用するNANDフラッシュメモリとほぼ同じである。なお、本実施形態の三端子型の不揮発性記憶素子20は、その構成要素がシリコンデバイスとして一般的なもので、特別なプロセス技術も必要でないことから、現状のNANDフラッシュメモリ製造工程への導入も比較的容易に可能である。
【0039】
次に、本発明の不揮発性記憶素子を用いた応用例について説明する。
図12は、本発明の界面ダイポールの変調を利用した不揮発性記憶素子を用いたメモリセルアレイ回路の各例の回路図を示す。本発明のメモリセル回路によれば、本発明の不揮発性記憶素子を用いて高集積・大容量化が可能な回路構成を実現できる。
【0040】
図12(a)は、抵抗変化特性を利用したセルアレイ回路を示す。このセルアレイ回路は、平行に配線されたワード線とソース線に対して直交して配線されたビット線との各交差部にセルが配置された構成である。各セルは、電界効果型トランジスタのゲートがワード線に接続され、ソースがソース線に接続され、ドレインが
図12(d)に示すシンボル31で表される、
図1に示した不揮発性記憶素子10と同様の構成の不揮発性記憶素子32に接続された構成である。不揮発性記憶素子の一方の電極は電界効果型トランジスタのドレインに接続され、金属電極14がビット線に接続されている。
【0041】
図12(b)は、ポテンシャル変化特性を用いたセルアレイ回路を示す。このセルアレイ回路は、平行に配線されたワード線とソース線に対して直交して配線されたビット線との各交差部にセルが配置された構成である。各セルは、電界効果型トランジスタのゲートが
図12(d)のシンボル31で表される
図1に示した不揮発性記憶素子10と同様の構成の不揮発性記憶素子32に接続され、電界効果型トランジスタのソースがソース線に接続され、ドレインがビット線に接続された構成である。不揮発性記憶素子の一方の電極は電界効果型トランジスタのゲートに接続され、金属電極14がワード線に接続されている。
【0042】
図12(c)は、三端子FET素子を用いたセルアレイ回路を示す。このセルアレイ回路は、平行に配線されたワード線とソース線に対して直交して配線されたビット線との各交差部にセルが配置された構成である。各セルは
図12(e)に示すシンボル33で表される
図11に示した不揮発性記憶素子20と同様構成の電界効果型トランジスタのゲートがワード線に接続され、ソースがソース線に接続され、ドレインがビット線に接続された構成である。
【0043】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、例えば
図11の半導体基板21はn型とし、半導体領域22及び23はp
+型としてもよい。