特許第6146005号(P6146005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社の特許一覧

特許6146005ポリイミド前駆体組成物、該組成物を用いた硬化膜
<>
  • 特許6146005-ポリイミド前駆体組成物、該組成物を用いた硬化膜 図000028
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146005
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体組成物、該組成物を用いた硬化膜
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20170607BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20170607BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20170607BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   C08L79/08 A
   G03F7/037
   G03F7/004 501
   C08K5/56
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-279341(P2012-279341)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-122279(P2014-122279A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】小野 敬司
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大江 匡之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 ケイ子
(72)【発明者】
【氏名】副島 和也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 越晴
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−091572(JP,A)
【文献】 特開2000−039714(JP,A)
【文献】 特開2006−350262(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第2012−0113376(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08G 73
G03F 7
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体、(b)下記一般式(2)で表される金属錯体化合物、及び(c)活性光線照射によりラジカルを発生する化合物を含む樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは4価の有機基である。
は下記式(6)で表される2価の有機基である。
【化2】
(式中、R18及びR19は、各々独立にフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す)
及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
【化3】
(式中、Mは、チタン及びジルコニウムから選択される金属原子である。
mは、0〜4までの整数であり、nは0〜4までの整数であり、mとnの和は4である。
は、各々独立に炭素数1〜18のアルキル基である。
は、各々独立に1価の有機基であり、前記1価の有機基は、水酸基、カルボニル基、及びアミノ基から選択されるMと配位結合可能な基を1以上を有する。)
【請求項2】
前記式(2)で表される金属錯体化合物が下記式(3)で表わされる請求項1に記載の樹脂組成物。
【化4】
(式中、Mは、チタン及びジルコニウムから選択される金属原子である。
aは0〜4までの整数であり、bは0〜4までの整数であり、cは0〜4までの整数であり、aとbとcの和は4である。
は、各々独立に炭素数1〜18のアルキル基である。
及びRは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6の有機基、炭素数1〜6のアルキルアルコール基、又は炭素数1〜6のアミノアルキル基である。
11〜R14は、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルキルアルコール基である。
11〜R14は、さらに水酸基、カルボニル基、及びアミノ基から選択されるMと配位結合可能な基を含んでもよい。)
【請求項3】
前記金属錯体化合物が、前記ポリイミド前駆体100質量部に対して0.005〜15質量部含まれる請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(c)活性光線照射によりラジカルを発生する化合物が、前記(a)ポリイミド前駆体100質量部に対して0.1〜20質量部含まれる請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物から形成される硬化膜。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、得られた塗膜を加熱処理する工程とを含む、硬化膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物から形成されるパターン硬化膜。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、
前記工程で形成した塗膜に活性光線を照射後、現像してパターン樹脂膜を得る工程と、
パターン樹脂膜を加熱処理する工程とを含む、パターン硬化膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体組成物、該組成物を用いた硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(LSI)の保護膜材料として、ポリイミド樹脂等の高い耐熱性を有する有機材料が広く適用されている(例えば、特許文献1及び2)。このようなポリイミド樹脂を用いた保護膜(硬化膜)は、ポリイミド前駆体又はポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して形成した樹脂膜を、加熱して硬化することで得られる。
【0003】
半導体集積回路の微細化に伴い、誘電率を低減するためのlow−k層と呼ばれる層間絶縁膜が必要とされている。low−k層は空孔構造を有するため、機械的強度が低下するという課題が生じている。この様な機械的強度の弱い層間絶縁膜を保護するために、ポリイミド樹脂により形成される硬化膜が用いられる。この硬化膜には、厚膜形成性(例えば5μm以上)や高弾性率化(例えば4GPa以上)といった特性が求められている。しかし、厚膜化及び高弾性率化することによって、硬化後の応力が増大し、半導体ウエハの反りが大きくなって、搬送やウエハ固定の際に不具合が生じる場合があり、応力の低い硬化膜の開発が望まれている。
【0004】
ポリイミド樹脂を低応力にする方法として、例えば、ポリイミドの熱膨張係数をシリコンウエハの熱膨張係数に近づけるために、分子鎖を剛直な骨格にする方法(例えば特許文献3)、シロキサン構造等の柔軟な構造を導入してポリイミドの弾性率を低減する方法(例えば特許文献4)等が挙げられる。
【0005】
一方、保護膜を形成するために用いられるポリイミド樹脂組成物が感光性であると、容易にパターン樹脂膜(パターン形成された樹脂膜)を形成することが可能である。このようなパターン樹脂膜を加熱して硬化することで、容易にパターン硬化膜(パターン形成された硬化膜)を形成することができる。
ポリイミド樹脂組成物を感光性とする方法として、ポリイミドに感光性を付与する方法が挙げられる。ポリイミドに感光性を付与する手法としては、ポリイミド前駆体にエステル結合やイオン結合を介してメタクリロイル基を導入する方法、光重合性オレフィンを有する可溶性ポリイミドを用いる方法、ベンゾフェノン骨格を有し、かつ窒素原子が結合する芳香環のオルト位にアルキル基を有する自己増感型ポリイミドを用いる方法等が知られている(例えば、特許文献5)。中でも、ポリイミド前駆体にエステル結合を介してメタクリロイル基を導入する方法は、ポリイミド前駆体を合成する際、用いるモノマーを自由に選択することが可能であり、また、メタクリロイル基が化学結合を介して導入されていることから、経時安定性に優れているという特徴がある。
【0006】
しかし、低応力のポリイミド樹脂では、共役する芳香環ユニットが分子鎖内に多く含まれることになり、ポリイミド樹脂の前駆体である、ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)の場合においても、紫外線領域に吸収を有してしまう。そのため、パターン樹脂膜を形成するための露光工程において広く用いられているi線(波長365nm)の透過率が低下し、感度及び解像度が低下する傾向がある。即ち、i線透過率の向上と、硬化膜の低応力化をともに実現することは困難であった。また、得られる保護膜を厚膜化した場合、さらにi線透過率が低下して、パターン樹脂膜の形成ができなくなる傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3526829号
【特許文献2】特許第4524808号
【特許文献3】特開平5−295115号
【特許文献4】特開平7−304950号
【特許文献5】特開平7−242744号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ポリマーの骨格によらず、応力の低い硬化膜を形成できる樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いた硬化膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下の樹脂組成物等が提供される。
1.(a)下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体、及び(b)下記一般式(2)で表される金属錯体化合物を含む樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは4価の有機基である。
は2価の有機基である。
及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
【化2】
(式中、Mは、チタン及びジルコニウムから選択される金属原子である。
mは、0〜4までの整数であり、nは0〜4までの整数であり、mとnの和は4である。
は、各々独立に炭素数1〜18のアルキル基である。
は、各々独立に1価の有機基であり、前記1価の有機基は、水酸基、カルボニル基、及びアミノ基から選択されるMと配位結合可能な基を1以上を有する。)
2.前記式(2)で表される金属錯体化合物が下記式(3)で表わされる1に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式中、Mは、チタン及びジルコニウムから選択される金属原子である。
aは0〜4までの整数であり、bは0〜4までの整数であり、cは0〜4までの整数であり、aとbとcの和は4である。
は、各々独立に炭素数1〜18のアルキル基である。
及びRは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6の有機基、炭素数1〜6のアルキルアルコール基、又は炭素数1〜6のアミノアルキル基である。
11〜R14は、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルキルアルコール基である。
11〜R14は、さらに水酸基、カルボニル基、及びアミノ基から選択されるMと配位結合可能な基を含んでもよい。)
3.前記金属錯体化合物が、前記ポリイミド前駆体100質量部に対して0.005〜15質量部含まれる1又は2に記載の樹脂組成物。
4.さらに(c)活性光線照射によりラジカルを発生する化合物を含有する1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
5.前記(c)活性光線照射によりラジカルを発生する化合物が、前記(a)ポリイミド前駆体100質量部に対して0.1〜20質量部含まれる4に記載の樹脂組成物。
6.1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物から形成される硬化膜。
7.1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、得られた塗膜を加熱処理する工程とを含む、硬化膜の製造方法。
8.4又は5に記載の樹脂組成物から形成されるパターン硬化膜。
9.4又は5に記載の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、
前記工程で形成した塗膜に活性光線を照射後、現像してパターン樹脂膜を得る工程と、
パターン樹脂膜を加熱処理する工程とを含む、パターン硬化膜の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリマーの骨格によらず、応力の低い硬化膜を形成できる樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いた硬化膜の製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の樹脂組成物を用いた半導体装置の一実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(a)下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体、及び(b)下記一般式(2)で表される金属錯体化合物を含む。
【化4】
(式中、Rは4価の有機基である。
は2価の有機基である。
及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
【化5】
(式中、Mは、チタン及びジルコニウムから選択されるいずれかの金属原子である。
mは、0〜4までの整数であり、nは0〜4までの整数であり、mとnの和は4である。
は、各々独立に炭素数1〜18のアルキル基である。
は、各々独立に炭素数1〜6の2価の有機基、又はアミノアルキレン基であり、前記炭素数1〜6の2価の有機基及びアミノアルキレン基は、各々独立に水酸基、カルボニル基又はアミノ基を置換基として含んでもよい。
は、各々独立に水酸基、カルボニル基及びアミノ基から選択される基である。)
【0013】
本発明の樹脂組成物は、上記の様な構成とすることで、得られる硬化膜の応力を低くすることができる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0014】
[(a)ポリイミド前駆体]
本発明の樹脂組成物は、(a)成分として、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を含む。
【化6】
(式中、Rは4価の有機基である。
は2価の有機基である。
及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
【0015】
式(1)のRの4価の有機基は、式(1)のポリイミド前駆体の製造原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物に由来する構造を有する基である。当該テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス{4’−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2’−ビス{4’−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2’−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−スルホニルジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは単独もしくは2種類以上の組み合わせで使用される。
【0016】
特に硬化膜の応力の観点から、Rの4価の有機基のテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0017】
硬化膜の熱膨張係数を低下させる観点から、式(1)のRの4価の有機基は、好ましくは下記式で表わされる有機基のいずれかである。
【化7】
(式中、X及びYは、各々独立に、各々が結合するベンゼン環と共役しない2価の基、又は単結合を示す。)
【0018】
式(1)のRの2価の有機基は、式(1)のポリイミド前駆体の製造原料として用いるジアミンに由来する構造を有する基である。当該ジアミンとしては、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(フルオロ)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、ベンジジン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルスルフィド、o−トリジン、o−トリジンスルホン、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジイソプロピルアニリン)、2,4−ジアミノメシチレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ベンゾフェノンジアミン、ビス−{4−(4’−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2−ビス{4−(4’−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス{4−(3’−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン,ジアミノポリシロキサン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上の組み合わせで使用される。
【0019】
特に低応力性、良好なi線透過率及び耐熱性等の観点から、Rの2価の有機基のジアミンは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(フルオロ)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニルが好ましい。
【0020】
i−線透過率の観点から、式(1)のRの2価の有機基は、好ましくは下記式(5)又は(6)で表わされる2価の有機基であり、入手し易さの観点から、より好ましくは下記式(6)で表わされる2価の有機基である。
【化8】
(式中、R10〜R17は、各々独立に水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表し、R10〜R17の少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である)
【化9】
(式中、R18及びR19は、各々独立にフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す)
【0021】
式(1)のR及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。
炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基は、例えばアルキル基の炭素数が1〜10のアクリロキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のメタクリロキシアルキル基を含む。
【0022】
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
アルキル基の炭素数が1〜10のアクリロキシアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられ、アルキル基の炭素数が1〜10のメタクリロキシアルキル基としてはメタクリロキシエチル基、メタクリロキシプロピル基、メタクリロキシブチル基等が挙げられる。
【0023】
本発明の樹脂組成物を感光性樹脂とする場合、R及び/又はRが、アルキル基の炭素数が1〜10のアクリロキシアルキル基、又はアルキル基の炭素数が1〜10のメタクリロキシアルキル基のような炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基であることが望ましい。
(a)成分が上記である組成物は、(c)活性光線照射によってラジカルを発生する化合物と組み合わせて、ラジカル重合による分子鎖間の架橋が可能となる。
【0024】
式(1)で表されるポリイミド前駆体を基材に塗布し、加熱硬化して得られる硬化膜の残留応力は、硬化膜の膜厚が10μmの場合では、好ましくは35MPa以下であり、より好ましくは27MPa以下であり、さらに好ましくは25MPa以下である。
膜厚10μmの硬化膜の残留応力が35MPa以下であれば、本発明の組成物から得られる膜厚10μmの硬化膜のウエハの反りをより充分抑制することができ、ウエハの搬送や吸着固定において生じる不具合をより抑制することができる。
尚、残留応力は、薄膜ストレス測定装置(KLA Tencor社製FLX−2320)を用いて、ウエハの反り量を測定後、応力に換算する方法により測定することができる。
【0025】
ポリイミド前駆体の分子量は、ポリスチレン換算での重量平均分子量が10000〜100000であることが望ましく、15000〜100000であることがより望ましく、20000〜85000であることがさらに望ましい。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量が10000より小さいと、硬化後の応力が充分に低下しない恐れがあり、100000より大きいと、溶剤への溶解性が低下し、溶液の粘度が増大して取り扱い性が低下する恐れがある。尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定することができ、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求めることができる。
【0026】
本発明の(a)ポリイミド前駆体は、上述のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを付加重合させて合成することができる。また、式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物をジエステル誘導体にした後、式(5)で表される酸塩化物に変換し、式(6)で表されるジアミンとを反応させることによっても合成することができる。
【化10】
(式中、R〜Rは式(1)と同じである。)
【0027】
式(5)で表されるテトラカルボン酸モノ(ジ)エステルジクロリドは、式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(7)で表される化合物とを反応させてテトラカルボン酸モノ(ジ)エステルを調製し、得られたテトラカルボン酸モノ(ジ)エステルと塩化チオニルもしくはジクロロシュウ酸等の塩素化剤を反応させることで得られる。
【化11】
(式中、R15は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
【0028】
式(7)で表されるアルコール類としては、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基を有するアルコール、炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基(例えばアルキル基の炭素数が1〜10のアクリロキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のメタクリロキシアルキル基)を有するアルコールを用いることができる。
式(7)で表わされるアルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t-ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
塩素化剤は、テトラカルボン酸モノ(ジ)エステル1モルに対して、通常2モル当量の塩素化剤を、塩素化剤に対して2倍量の塩基性化合物存在下で反応させることによって用いて行うが、合成されるポリイミド前駆体の分子量を制御するために、当量を適宜調整してもよい。
塩素化剤の当量としては1.5〜2.5モル当量が望ましく、1.6〜2.4モル当量がより望ましく、1.7〜2.3モル当量がさらに望ましい。
1.5モル当量未満の場合、ポリイミド前駆体の分子量が低いため硬化後の低応力性が充分に発現しない可能性がある。一方、2.5モル当量超の場合には、塩基性化合物の塩酸塩が多量にポリイミド前駆体中に残存し、硬化後のポリイミドの電気絶縁性が低下するおそれがある。
【0030】
塩基性化合物としては、例えばピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン等を用いることができる。
塩基性化合物は、塩素化剤に対して、1.5〜2.5倍量用いることが望ましく、1.7〜2.4倍量であることがより望ましく、1.8〜2.3倍量であることがさらに望ましい。1.5倍量より少ないと、ポリイミド前駆体の分子量が低くなって、硬化後の応力が充分低下しないおそれがあり、2.5倍量より多いと、ポリイミド前駆体が着色するおそれがある。
【0031】
上記の他、テトラカルボン酸二無水物と一般式(7)を、塩基性触媒の存在下で反応させることでも式(5)で表わされるテトラカルボン酸モノ(ジ)エステルジクロリドを合成することができる。
塩基性触媒としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン等があげられる。
【0032】
ポリイミド前駆体を合成する際のテトラカルボン酸二無水物とジアミンのモル比は、通常1.0で行うが、分子量や末端残基を制御する目的で、0.7〜1.3の範囲のモル比で行ってもよい。モル比が0.7未満もしくは1.3超の場合、得られるポリイミド前駆体の分子量が小さくなり、硬化後の低応力性が充分に発現しない恐れがある。
【0033】
上述の付加重合、縮合反応、ジエステル誘導体の合成、及び酸塩化物の合成は、有機溶媒中で行うことが望ましい。
使用する有機溶媒としては、合成されるポリイミド前駆体を完全に溶解する極性溶媒が望ましく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
また、極性溶媒以外に、ケトン類、エステル類、ラクトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類等も用いることができる。例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
上記の有機溶媒は、単独又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
[(b)金属錯体化合物]
本発明の樹脂組成物は、(b)成分として、下記一般式(2)で表される金属錯体化合物を含む。
【化12】
(式中、Mは、チタン及びジルコニウムから選択される金属原子である。
mは、0〜4までの整数であり、nは0〜4までの整数であり、mとnの和は4である。
は、各々独立に炭素数1〜18のアルキル基である。
は、各々独立に1価の有機基であり、前記1価の有機基は、水酸基、カルボニル基、及びアミノ基から選択されるMと配位結合可能な基を1以上を有する。)
【0035】
本発明の樹脂組成物が、(b)式(2)で表される金属錯体化合物を含むことで、得られる硬化膜の熱膨張係数を小さくし、且つ応力を低くすることができる。これは(b)成分が、ポリイミド硬化膜の配向性を向上させるためと考えられる。
【0036】
式(2)において、Mは、チタン及びジルコニウムから選択されるいずれかの金属原子であり、硬化膜の機械強度の観点から、好ましくはチタンである。
mは0〜4までの整数であり、nは0〜4までの整数であり、mとnの和は4である。
保存安定性の観点から、mが0〜2であることが好ましく、nが1〜4であることが好ましい。
【0037】
は、各々独立に炭素数1〜18のアルキル基を示す。
炭素数1〜18のアルキル基は、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。保存安定性の観点から、イソプロピル基であることが好ましい。
【0038】
は、各々独立に1価の有機基であり、当該1価の有機基は、水酸基、カルボニル基、及びアミノ基から選択されるMと配位結合可能な基を1以上を有する。
の1価の有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。Rは、例えばアルキル基及びアミノ基からなるアミノアルキル基;アルキル基、水酸基及びアミノ基からなるアルコールアミノ基;並びにアルキル基、カルボニル基及び水酸基からなるヒドロキシ酸の1価の残基を含む。
の炭素数1〜6のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基が挙げられ、入手容易性の観点から好ましくはエチル基である。
の具体例としては、メタノールアミノ基、エタノールアミノ基、ジエタノールアミノ基、トリエタノールアミノ基、プロパノールアミノ基、ブタノールアミノ基、ペンタノールアミノ基、ヘキサノールアミノ基、アセチルアセト基、エチルアセチルアセテート基、エチルラクテート基等が挙げられる。
入手しやすさのの観点から、Rは、アセチルアセト基であることが好ましい。
【0039】
式(2)で表わされる金属錯体化合物は、好ましくは下記式(2’)で表わされる金属錯体化合物である。
【化13】
(式中、M、R、m、及びnは式(2)と同様である。
6’は、各々独立に炭素数1〜6の2価の有機基、又はアミノアルキレン基であり、当該炭素数1〜6の2価の有機基及びアミノアルキレン基は、各々独立に水酸基、カルボニル基又はアミノ基をさらに含んでもよい。
は、各々独立に水酸基、カルボニル基及びアミノ基から選択される基である。)
【0040】
式(2)で表わされる金属錯体化合物は、入手し易さから、好ましくは下記式(3)で表わされる金属錯体化合物である。
【化14】
(式中、Mは、チタン及びジルコニウムから選択される金属原子である。
aは0〜4までの整数であり、bは0〜4までの整数であり、cは0〜4までの整数であり、aとbとcの和は4である。
は、各々独立に炭素数1〜18のアルキル基である。
及びRは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6の有機基、炭素数1〜6のアルキルアルコール基、又は炭素数1〜6のアミノアルキル基である。
11〜R14は、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルキルアルコール基である。
11〜R14は、さらに水酸基、カルボニル基、及びアミノ基から選択されるMと配位結合可能な基を含んでもよい。)
【0041】
式(3)において、Mは、チタン及びジルコニウムから選択される金属原子であり、硬化膜の機械強度の観点から、好ましくはチタンである。
aは0〜4までの整数であり、bは0〜4までの整数であり、cは0〜4までの整数であり、aとbとcの和は4である。入手しやすさの観点から、aが0〜2であることが好ましく、bが1〜4であることが好ましく、cが0〜2であることが好ましい。さらに好ましくは、aとcの和が4であるか、又はbが4であることが好ましい。
【0042】
は、各々独立に炭素数1〜18のアルキル基であり、炭素数1〜18のアルキル基の具体例は、式(2)のRと同様である。
【0043】
及びRは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6の有機基、炭素数1〜6のアルキルアルコール基又は炭素数1〜6のアミノアルキル基である。
及びRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、メタノールアミノ基、エタノールアミノ基、ジエタノールアミノ基、トリエタノールアミノ基、プロパノールアミノ基、ブタノールアミノ基、ペンタノールアミノ基、ヘキサノールアミノ基等が挙げられ、入手しやすさの観点から、好ましくはメチル基である。
【0044】
11〜R14は、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルキルアルコール基である。R11〜R14は、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、メタノールアミノ基、エタノールアミノ基、ジエタノールアミノ基、トリエタノールアミノ基、プロパノールアミノ基、ブタノールアミノ基、ペンタノールアミノ基、ヘキサノールアミノ基等が挙げられる。
【0045】
(b)成分である式(2)の金属錯体化合物において、Mがチタンである式(2)で笑わされる化合物の具体例としては、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニウムジ−2−エチルヘキソキシビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテートが挙げられる。
(b)成分である式(2)の金属錯体化合物において、Mがジルコニウムである化合物の具体例としては、モノブトキシトリスアセチルアセトナトジルコニウム、ジブトキシビスアセチルアセトナトジルコニウム、トリブトキシアセチルアセトナトジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ブトキシトリスエチルアセチルアセテートジルコニウム、ジブトキシビスエチルアセトアセテートジルコニウム、トリブトキシモノエチルアセチルアセテートジルコニウム、テトラキスエチルラクテートジルコニウム、ジブトキシビスエチルラクテートジルコニウム、ビスアセチルアセトナトビスエチルアセチルアセトナトジルコニウム、モノアセチルアセトトリスエチルアセチルアセトナトジルコニウム、モノアセチルアセトナトビスエチルアセチルアセトナトブトキシジルコニウム、ビスアセチルアセトナトビスエチルラクトナトジルコニウム等が挙げられる。
これらの金属錯体化合物は単独又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
特に低応力性及び保管安定性の観点から、(b)成分である金属錯体化合物は、好ましくはチタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、又はジルコニウムテトラアセチルアセトネートである。
【0047】
(b)成分の金属錯体化合物の配合量としては、(a)成分100重量部に対して、0.005〜15重量部であることが望ましく、0.01〜10重量部であることがより望ましく、0.01〜5重量部であることがさらに望ましい。配合量が0.005重量部より少ないと、硬化時に(a)成分との架橋反応及び、(a)成分の配向制御性が発現せず、15重量部より多いと硬化膜の破断伸び率が低下する恐れがある。
【0048】
[活性光線によりラジカルを発生する化合物]
本発明の組成物は、式(1)で表わされるポリイミド前駆体のR及び/又はRが炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の基である場合、組成物が(c)活性光線を照射するとラジカルを発生する化合物をさらに含むことにより、感光性樹脂組成物とすることができる。
本発明の樹脂組成物は、さらに(c)成分である活性光線を照射するとラジカルを発生する化合物を含むことで、i線透過率を向上させることができる。
【0049】
(c)成分は、活性光線照射によりラジカルを発生する化合物であれば特に制限はない。(c)成分は、ラジカル発生性の観点から、下記式(7)で表される構造を含む化合物が好ましい。
【化15】
(式中、R10は、1価の芳香環基又はヘテロ環基であり、芳香環基及びヘテロ環基はそれぞれ置換基を有していてもよい。)
【0050】
(c)成分としては、例えば、後述するオキシムエステル類に分類される化合物、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)等のN,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等の芳香環と縮環したキノン類、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体が挙げられる。
【0051】
上記の他、(c)成分として下記式(17)で表わされる化合物が挙げられる。
【化16】
(式(17)中、R31は、炭素数1〜20のアルキル基;1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2〜20のアルキル基;炭素数1〜12のアルコキシ基;炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェニル基;フェニル基;炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜12のアルケニル基、1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2〜18のアルキル基及び/又は炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェニル基;又はビフェニリル基である。
32は、下記式(18)で表される基であるか、上記R31と同じの基である。
33〜R35は、各々独立に炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。)
【化17】
(式(18)中、R36〜R38は、各々独立に式(17)のR33〜R35と同じ基である)
【0052】
上述の(c)成分のうち、特にオキシムエステル類は、より感度に優れ、上記(5)又は(6)で表されるジアミン残基を有するポリマー、特には(6)で表されるジアミン残基を有するポリイミド前駆体を含む感光性樹脂組成物において格段に良好なパターンを与え、より好ましい。
【0053】
特に式(6)で表されるジアミン残基を有する(a)成分の場合、従来の樹脂組成物ではしばしば良好な感光特性が得られないことがあった。そのような(a)成分であっても良好な感度、残膜率が得られる観点で、特に好ましいオキシムエステル類は、下記式(8)にて表される化合物である。
【化18】
(式(8)中、R21〜R27は、各々独立に1価の基を表す。)
【0054】
21〜R27の1価の基の好ましい基は、それぞれ異なり、例えば以下である。
21は、好ましくはフェニル基(但し、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、−OR39’、−SR40’もしくは−N(R41’)(R42’)の1個以上で置換されてもよい。R39’〜R42’は、炭素数1〜20のアルキル基である);炭素数1〜20のアルキル基(但し、アルキル基の炭素数が2〜20の場合、主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有するか、及び/又は1個以上の水酸基で置換されてもよい。);炭素数5〜8のシクロアルキル基;炭素数2〜20のアルカノイル基;ベンゾイル基(但し、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、−OR39’、−SR40’もしくは−N(R41’)(R42’)の1個以上で置換されてもよい。R39’〜R42’は、炭素数1〜20のアルキル基である);炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基(但し、アルコキシル基の炭素数が2〜11の場合、該アルコキシル基は主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有するか、及び/又は1個以上の水酸基で置換されてもよい。);フェノキシカルボニル基(但し、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、−OR39’もしくは−N(R41’)(R42’)の1個以上で置換されてもよい。R39’、R41’、R42’は、炭素数1〜20のアルキル基である);シアノ基;ニトロ基;−CON(R41)(R42);炭素数1〜4のハロアルキル基;−S(O)−R43(但し、R43は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜12のアルキル基で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基を示し、mは1又は2である。);炭素数1〜6のアルコキシスルホニル基;炭素数6〜10のアリーロキシスルホニル基;又はジフェニルホスフィノイル基を示す。
【0055】
22は、好ましくは炭素数2〜12のアルカノイル基(但し、ハロゲン原子もしくはシアノ基の1個以上で置換されてもよい。);二重結合がカルボニル基と共役していない炭素数4〜6のアルケノイル基;ベンゾイル基(但し、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、−OR39、−SR40もしくは−N(R41)(R42)の1個以上で置換されてもよい);炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基;又はフェノキシカルボニル基(但し、炭素数1〜6のアルキル基もしくはハロゲン原子の1個以上で置換されてもよい。)を示す。
【0056】
23、R24、R25、R26及びR27は、好ましくは各々独立に水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜12のアルキル基;シクロペンチル基;シクロヘキシル基;フェニル基(但し、−OR39、−SR40もしくは−N(R41)(R42)の1個以上で置換されてもよい);ベンジル基;ベンゾイル基;炭素数2〜12のアルカノイル基;炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基(但し、アルコキシル基の炭素数が2〜11の場合、該アルコキシル基は主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有するか、及び/又は1個以上の水酸基で置換されてもよい。);フェノキシカルボニル基;−OR39(但し、−OR39は、フェニル環中もしくはフェニル環への置換基中の一つの炭素原子と結合して5員環もしくは6員環を形成してもよい。);−SR40(但し、−SR40は、フェニル環中もしくはフェニル環への置換基中の一つの炭素原子と結合して5員環もしくは6員環を形成してもよい。);−S(O)R40(但し、−SR40は、フェニル環中もしくはフェニル環への置換基中の一つの炭素原子と結合して5員環もしくは6員環を形成してもよい。);−SO40(但し、−SR40は、フェニル環中もしくはフェニル環への置換基中の一つの炭素原子と結合して5員環もしくは6員環を形成してもよい。);又は−N(R41)(R42)(但し、−NR41及び/又は−NR42は、フェニル環中もしくはフェニル環への置換基中の一つの炭素原子と結合して5員環もしくは6員環を形成してもよい。)を示す。
但し、R23、R24、R25、R26及びR27の少なくとも1つは−OR39、−SR40又は−N(R41)(R42)である。
【0057】
39は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、置換された炭素数2〜6のアルキル基{但し、置換基は、水酸基、メルカプト基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数3〜6のアルケニルオキシ基、2−シアノエトキシ基、炭素数4〜7の2−(アルコキシカルボニル)エトキシ基、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、カルボキシル基もしくは炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基の1個以上からなる。}、主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有する炭素数2〜6のアルキル基、炭素数2〜8のアルカノイル基、−(CHCHO)H(但し、nは1〜20の整数である。)、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のアルケノイル基、シクロヘキシル基、フェニル基(但し、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシル基で置換されてもよい。)、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、又は−Si(R49(R503−r(但し、R49は、炭素数1〜8のアルキル基を示し、R50はフェニル基を示し、rは1〜3の整数である。)を示す。
【0058】
40は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のアルケニル基、シクロヘキシル基、置換された炭素数2〜6のアルキル基{但し、置換基は、水酸基、メルカプト基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数3〜6のアルケニルオキシ基、2−シアノエトキシ基、炭素数4〜7の2−(アルコキシカルボニル)エトキシ基、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、カルボキシル基もしくは炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基の1個以上からなる。}、主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子もしくは硫黄原子を有する炭素数2〜12のアルキル基、フェニル基(但し、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシル基で置換されてもよい。)、又は炭素数7〜9のフェニルアルキル基を示す。
【0059】
41及びR42は、各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、フェニル基(但し、炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシル基の1個以上で置換されてもよい。)、炭素数2〜3のアルカノイル基、炭素数3〜6のアルケノイル基、又はベンゾイル基を示す。
また、R41とR42が一緒になって炭素数2〜6のアルキレン基(但し、主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子もしくは−NR39−を有するか、及び/又は水酸基、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数2〜4のアルカノイルオキシ基もしくはベンゾイルオキシ基の1個以上で置換されてもよい。)を示す。
【0060】
これらの中でも、式(8)において、R23、R24、R25、R26及びR27の少なくとも1つが−SR40である化合物は、感度、残膜率が特に優れるので好ましい。
【0061】
式(8)おいて、R21として好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくは炭素数4〜7のアルキル基、特に好ましくはヘキシル基である。好ましくはR23〜R27のうち4つが水素であり、より好ましくはR23,R24,R25,R26が水素であり、残りが、−SR40である。この−SR40は、好ましくはシクロヘキシル基、フェニル基、又は炭素数7〜10のフェニルアルキル基であり、より好ましくはフェニル基又は炭素数7〜10のフェニルアルキル基であり、特に好ましくはフェニル基である。
【0062】
(c)活性光線によりラジカルを発生する化合物は、さらにより低応力で高感度な感光性樹脂組成物を与える観点で、極めて好ましいものは下記式(3)で表わされる化合物である。
【化19】
【0063】
本発明の組成物が(c)成分を含有する場合、(c)活性光線照射によりラジカルを発生する化合物の含有量としては、(a)成分100質量部に対して、0.01〜30質量部であることが望ましく、0.01〜15質量部であることがより望ましく、0.05〜10質量部であることがさらに望ましい。
(c)成分の含有量が0.01質量部以上であれば、露光部の架橋が充分し、より感光特性が良好となり、(c)成分の含有量が30質量部以下であるとより硬化膜の耐熱性が向上する傾向がある。
【0064】
本発明の樹脂組成物は、上記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分のほかに、以下に示す溶剤等のその他の成分を含んでもよい。
[(d)溶剤]
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて(d)成分として溶剤を含んでもよい。
溶剤は、ポリイミド前駆体を完全に溶解する極性溶剤が望ましく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレンカーボネート、乳酸エチル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
[(e)付加重合性化合物]
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて(e)成分として付加重合性化合物を含んでもよい。
付加重合性化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
付加重合性化合物を含有する場合の含有量は、(a)ポリイミド前駆体100質量部に対して、1〜100質量部とすることが望ましく、1〜75質量部とすることがより望ましく、1〜50質量部とすることがさらに望ましい。
付加重合性化合物の含有量が1質量部以上であれば、より良好な感光特性を付与することができ、100質量部以下であれば、より硬化膜の耐熱性を向上することができる。
【0067】
[(f)ラジカル重合禁止剤又はラジカル重合抑制剤]
本発明の樹脂組成物は、良好な保存安定性を確保するために、ラジカル重合禁止剤又はラジカル重合抑制剤を含んでもよい。
ラジカル重合禁止剤又はラジカル重合抑制剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ジフェニル−p−ベンゾキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ピロガロール、フェノチアジン、レゾルシノール、オルトジニトロベンゼン、パラジニトロベンゼン、メタジニトロベンゼン、フェナントラキノン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、クペロン、2,5−トルキノン、タンニン酸、パラベンジルアミノフェノール、ニトロソアミン類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明の樹脂組成物がラジカル重合禁止剤又はラジカル重合抑制剤を含有する場合の含有量は、(a)ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.01〜30質量部であることが望ましく、0.01〜10質量部であることがより望ましく、0.05〜5質量部であることがさらに望ましい。含有量が0.01質量部以上であればより保存安定性が良好となり、30質量部以下であれば、より硬化膜の耐熱性を向上することができる。
【0069】
[(g)有機シラン化合物]
本発明の樹脂組成物は、硬化後のシリコン基板等への密着性をより向上させるために、有機シラン化合物を含んでいてもよい。
有機シラン化合物としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバメート、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N―フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
有機シラン化合物の含有量は、所望の効果が得られるように適宜調整される。
【0070】
[(h)アルミニウム錯体化合物]
本発明の樹脂組成物は、得られる硬化膜の熱膨張係数(CTE)をさらに低くする観点から、下記一般式(4)で表される金属錯体化合物(アルミニウム錯体)をさらに含んでもよい。式(4)で表わされる化合物は、ポリイミド硬化膜の配向性を向上する作用を有するため、熱膨張係数を小さくすることができると考えられる。
【化20】
(式中、R45〜R50は、各々独立に水素原子又は1価の有機基である。)
【0071】
45〜R50の1価の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基等が挙げられる。3つの配位子は、同一でも異なってもよい。
炭素数1〜20のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられ、炭素数1〜20のアルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシル基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げらる。
【0072】
式(4)で表される化合物としては、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート等が挙げられ、好ましくはアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネートが挙げられる。
これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
本発明の樹脂組成物が式(4)で表わされるアルミニウム錯体を含む場合の含有量は、膨潤抑制性及び膜物性の観点から、(a)ポリイミド前駆体100重量部に対して0.5〜50重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましく、0.5〜10重量部がさらに好ましい。
【0074】
本発明の樹脂組成物は、(a)成分及び(b)成分、並びに任意に(c)〜(h)成分を含めばよく、これら成分から実質的になる、又はこれら成分のみからなってもよい。
上記「実質的になる」とは、例えば(a)成分、(b)成分、及び任意の(c)〜(h)成分の合計量が組成物全体の90重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、98重量%以上又は99重量%以上であることを意味する。
【0075】
[パターン硬化膜及びパターン硬化膜の製造方法]
本発明のパターン硬化膜は、本発明の樹脂組成物により形成されるパターン硬化膜であり、樹脂組成物が(c)成分を含有する光感性樹脂組成物である場合に形成できる。
【0076】
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、形成した塗膜に活性光線を照射後、現像してパターン樹脂膜を得る工程と、パターン樹脂膜を加熱処理する工程とを含む。
以下、まずパターン硬化膜の製造方法の各工程について説明する。
【0077】
上樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程において、樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、スピンコート法が挙げられる。
基材としては、例えばシリコンウエハ、金属基板、セラミック基板等が挙げられる。本発明の樹脂組成物は、低応力の硬化膜を形成可能であるので、特に、12インチ以上の大口径のシリコンウエハへの適用に好適である。
【0078】
塗布後の乾燥によって溶剤を加熱除去し、粘着性の無い塗膜を形成することができる。
乾燥工程は、PMC社製:DATAPLATE(Digital Hotplate)等の装置を用いることができ、乾燥温度としては90〜130℃が好ましく、乾燥時間としては100〜400秒が好ましい。
【0079】
形成した塗膜に活性光線を照射後、現像してパターン樹脂膜を得る工程により、所望のパターンが形成された樹脂膜を得ることができる。
本発明の樹脂組成物はi線露光用に好適であるが、照射する活性光線としては、紫外線、遠紫外線、可視光線、電子線、X線等を用いることができる。
現像液としては、特に制限はないが、1,1,1−トリクロロエタン等の難燃性溶媒、炭酸ナトリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液等のアルカリ水溶液、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、酢酸エステル類等の良溶媒、これら良溶媒と低級アルコール、水、芳香族炭化水素等の貧溶媒との混合溶媒等が用いられる。現像後は必要に応じて貧溶媒等でリンス洗浄を行う。
【0080】
パターン樹脂膜を加熱処理する工程において、加熱処理は、縦型拡散炉(光洋リンドバーク製)等の装置を用いることができ、加熱温度80〜400℃で行なうことが好ましく、加熱時間は5〜300分間であることが好ましい。
ポリイミド前駆体のイミド化を進行させてポリイミドに変換する上記加熱温度は、100〜400℃がより好ましく、200〜400℃であることがさらに好ましい。80℃以下ではイミド化が充分進行せず、耐熱性が低下するおそれがあり、400℃より高い温度で行うと、硬化して得られるポリイミドが劣化してしまうおそれがある。
この工程によって、樹脂組成物中のポリイミド前駆体のイミド化を進行させてポリイミド樹脂を含有するパターン硬化膜を得ることができる。
【0081】
[硬化膜及び硬化膜の製造方法]
本発明の硬化膜は、本発明の樹脂組成物から形成される硬化膜であり、パターンが形成されていない硬化膜を含む。
本発明の硬化膜の製造方法は、樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、塗膜を加熱処理する工程とを含み、塗膜を形成する工程、加熱処理する工程は、上記パターン硬化膜の製造方法と同様である。
【0082】
本発明の硬化膜又はパターン硬化膜は、半導体装置の表面保護層、層間絶縁層、再配線層等として用いることができる。
図1は本発明の一実施形態である再配線構造を有する半導体装置の概略断面図である。本実施形態の半導体装置は多層配線構造を有している。層間絶縁層(層間絶縁膜)1の上にはAl配線層2が形成され、その上部にはさらに絶縁層(絶縁膜)3(例えばP−SiN層)が形成され、さらに素子の表面保護層(表面保護膜)4が形成されている。配線層2のパット部5からは再配線層6が形成され、外部接続端子であるハンダ、金等で形成された導電性ボール7との接続部分である、コア8の上部まで伸びている。さらに表面保護層4の上には、カバーコート層9が形成されている。再配線層6は、バリアメタル10を介して導電性ボール7に接続されているが、この導電性ボール7を保持するために、カラー11が設けられている。このような構造のパッケージを実装する際には、さらに応力を緩和するために、アンダーフィル12を介することもある。
【0083】
本発明の硬化膜又は本発明のパターン硬化膜は、図1に示したように半導体装置のカバーコート材、再配線用コア材、半田等のボール用カラー材、アンダーフィル材等、いわゆるパッケージ用途に使用することができる。
また、本発明の硬化膜又はパターン硬化膜は、メタル層や封止剤等との接着性に優れるとともに耐銅マイグレーション性に優れ、応力緩和効果も高いため、本発明の硬化膜又はパターン硬化膜を有する半導体素子は、極めて信頼性に優れるものとなる。
【0084】
本発明の電子部品は、本発明の硬化膜又はパターン硬化膜を用いたカバーコート、再配線用コア、半田等のボール用カラー、フリップチップ等で用いられるアンダーフィル等を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらにより制限を受
けない。
【0086】
合成例1(ピロメリッド酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステルの合成)
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24h乾燥させたピロメリット酸二無水物43.624g(200mmol)とメタクリル酸2−ヒドロキシエチル54.919g(401mmol)とハイドロキノン0.220gをN−メチルピロリドン394gに溶解し、1,8−ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加の後に、室温下(25℃)で24時間撹拌し、エステル化を行い、ピロメリッド酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。得られた溶液をPMDA(HEMA)溶液とする。
【0087】
合成例2(3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジエステルの合成)
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24h乾燥させた3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物30.893g(105mmol)とメタクリル酸2−ヒドロキシエチル28.833g(210mmol)とハイドロキノン0.110gをN−メチルピロリドン239gに溶解し、1,8−ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加の後に、室温下(25℃)で24時間撹拌し、エステル化を行い、ピロメリッド酸−ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。得られた溶液をs−BPDA(HEMA)溶液とする。
【0088】
合成例3(4,4’−オキシジフタル酸ジエステルの合成)
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24時間乾燥させた4,4’−オキシジフタル酸49.634g(160mmol)とメタクリル酸2−ヒドロキシエチル44.976g(328mmol)とハイドロキノン0.176gをN−メチルピロリドン378gに溶解し、1,8−ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加の後に、室温下(25℃)で48時間撹拌し、エステル化を行い、4,4’−オキシジフタル酸−ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。得られた溶液をODPA(HEMA)溶液とする。
【0089】
合成例4(ポリマIの合成)s−BPDAHEMA//TFDB
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に合成例2で得られたs−BPDA(HEMA)溶液282.125gを入れ、その後、氷冷下で塩化チオニル25.9g(217.8mmol)を反応溶液温度が10度以下を保つように滴下ロウトを用いて滴下した。塩化チオニルの滴下が終了した後、氷冷下で1時間攪拌を行いs−BPDA(HEMA)クロリドの溶液を得た。次いで、滴下ロウトを用いて、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン31.696g(99.0mmol)、ピリジン34.457g(435.6mmol)、ハイドロキノン0.076g(0.693mmol)のN−メチルピロリドン90.211g溶液を氷冷化で反応溶液の温度が10℃を超えないように注意しながら滴下した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミド酸エステルを得た。
得られたポリアミド酸エステルの標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は85,000であった。これをポリマIとする。
【0090】
ポリマIのGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量の測定条件は、以下の通りである。ポリマー0.5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1(容積比)]1mLの溶液を用いて測定した。下記合成例においても同様にして重量平均分子量を測定した。
測定装置:検出器 株式会社日立製作所製L4000 UV
ポンプ:株式会社日立製作所製L6000
株式会社島津製作所製C−R4A Chromatopac
測定条件:カラム Gelpack GL−S300MDT−5 x2本
溶離液:THF/DMF=1/1 (容積比)
LiBr(0.03mol/L)、HPO(0.06mol/L)
流速:1.0mL/min
検出器:UV270nm
【0091】
1gのポリマIをN−メチルピロリドン1.5gに溶解させ、ガラス基板上にスピンコートで塗布し、100℃のホットプレート上で180秒過熱し溶剤を揮発させて厚さ20μmの塗膜を形成した。この時、得られた塗膜のi−線透過率は60%であった。
尚、上記i−線透過率は、分光光度計(HITACHI社製U−3310)を用いて測定した。下記合成例においても同様にしてi−線透過率を評価した。
【0092】
合成例5(ポリマIIの合成)PMDAHEMA/ODPAHEMA//TFDB
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に合成例1で得られたPMDA(HEMA)溶液195.564gと合成例3で得られたODPA(HEMA)溶液58.652gを入れ、その後、氷冷下で塩化チオニル25.9g(217.8mmol)を反応溶液温度が10度以下を保つように滴下ロウトを用いて滴下した。塩化チオニルの滴下が終了した後、氷冷下で2時間反応を行いPMDA(HEMA)とODPA(HEMA)の酸クロリドの溶液を得た。次いで、滴下ロウトを用いて、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン31.696g(99.0mmol)、ピリジン34.457g(435.6mmol)、ハイドロキノン0.076g(0.693mmol)のN−メチルピロリドン90.211g溶液を氷冷化で反応溶液の温度が10℃を超えないように注意しながら滴下した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミド酸エステルを得た。
得られたポリアミド酸エステルの標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は34,000であった。これをポリマIIとする。
【0093】
1gのポリマIIをN−メチルピロリドン1.5gに溶解させ、ガラス基板上にスピンコートで塗布し、100℃のホットプレート上で180秒過熱し溶剤を揮発させて厚さ20μmの塗膜を形成した。この時、得られた塗膜のi−線透過率は30%であった。
【0094】
合成例6(ポリマIIIの合成)PMDAHAMA/ODPAHEMA//TFDB/DMAP
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に合成例1で得られたPMDA(HEMA)溶液150.152gと合成例3で得られたODPA(HEMA)溶液118.335gを入れ、その後、氷冷下で塩化チオニル25.9g(217.8mmol)を反応溶液温度が10度以下を保つように滴下ロウトを用いて滴下した。塩化チオニルの滴下が終了した後、氷冷下で2時間反応を行いPMDA(HEMA)とODPA(HEMA)の酸クロリドの溶液を得た。次いで、滴下ロウトを用いて、2,2’−ジメチルベンジジン6.305g(29.7mmol)と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン22.187g(69.3mmol)、ピリジン34.457g(435.6mmol)、ハイドロキノン0.076g(0.693mmol)のN−メチルピロリドン113.968g溶液を氷冷化で反応溶液の温度が10℃を超えないように注意しながら滴下した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミド酸エステルを得た。
標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は34,000であった。これをポリマIIIとする。
【0095】
1gのポリマIIIをN−メチルピロリドン1.5gに溶解させ、ガラス基板上にスピンコートで塗布し、100℃のホットプレート上で180秒過熱し溶剤を揮発させて厚さ20μmの塗膜を形成した。この時、得られた塗膜のi−線透過率は15%であった。
【0096】
合成例7(ポリマIVの合成)ODPAHEMA//DMAP
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に合成例3で得られたODPA(HEMA)溶液181.944gを入れ、その後、氷冷下で塩化チオニル25.9g(217.8mmol)を反応溶液温度が10度以下を保つように滴下ロウトを用いて滴下した。塩化チオニルの滴下が終了した後、氷冷下で1時間攪拌を行いODPA(HEMA)クロリドの溶液を得た。次いで、滴下ロウトを用いて、2,2’−ジメチルベンジジン21.017g(99.0mmol)、ピリジン34.457g(435.6mmol)、ハイドロキノン0.076g(0.693mmol)のN−メチルピロリドン59.817g溶液を氷冷化で反応溶液の温度が10℃を超えないように注意しながら滴下した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミド酸エステルを得た。得られたポリアミド酸エステルの標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は35,000であった。これをポリマIVとする。
【0097】
1gのポリマIVをN−メチルピロリドン1.5gに溶解させ、ガラス基板上にスピンコートで塗布し、100℃のホットプレート上で180秒過熱し溶剤を揮発させて厚さ20μmの塗膜を形成した。この時、得られた塗膜のi−線透過率は40%であった。
【0098】
実施例1−17及び比較例1−8
表1に示す成分及び配合量にて樹脂組成物溶液を調製した。
表1において、括弧内の数字は、(a)成分であるポリマー100質量部に対する、(b)成分及び(c)成分のそれぞれの配合質量部である。また、溶剤としてN−メチルピロリドンを用い、使用量は、いずれも(a)成分100重量部に対して1.5倍で用いた。
尚、実施例1−17及び比較例1−8において、(c)成分を含む感光性樹脂組成物である場合は、当該組成物について、さらにテトラエチレングリコールジメタクリレートを(a)成分に対して20重量部配合した。
【0099】
組成物の調製に用いた各種成分は以下の通りである。
[(b)成分]
b1:チタンテトラアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル、TC−401)
b2:チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)(マツモトファインケミカル、TC−400)
b3:チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル、TC−750)
b4:ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル、ZC−150)
b5:アルミニウムトリスアセチルアセトネート(川研ファインケミカル、アルミキレートA(w))
b6:アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート(川研ファインケミカル:アルミキレートD)
【0100】
[(c)成分]
c1:1−フェニル−1,2−プロパンジオン‐2‐(o−エトキシカルボニル)オキシム
c2:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、IRGACURE OXE−01、下記構造化合物)
【化21】
【0101】
実施例1−17及び比較例1−8で調製した樹脂組成物を、それぞれ6インチシリコンウエハ上にスピンコート法によって塗布し、100℃のホットプレート上で3分間加熱し、溶剤を揮発させ硬化後膜厚が約10μmとなる塗膜をそれぞれ得た。
得られた塗膜を、光洋リンドバーク製縦型拡散炉を用いて、窒素雰囲気下、375℃で1時間加熱硬化して、ポリイミド膜を得た。得られた硬化ポリイミド膜の残留応力を、薄膜ストレス測定装置(KLATencor社製FLX−2320)を用いて室温において測定した。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
実施例1−17の組成物から得られる硬化膜では、低応力となる剛直なポリイミドに、チタン錯体化合物又はジルコニウム錯体化合物を添加することで、さらに応力が低下することが確認できる。また、応力の数値が40以上であるポリマーIVにチタン錯体化合物又はジルコニウム錯体化合物を添加することで、応力が35MPaまで低下することが確認できた。
一方、例えば比較例1−8に示すように、金属錯体化合物を含まない又はアルミニウム錯体化合物では、応力低下の効果が確認できず、例えば比較例7及び8では、応力は40MPaを超えてしまう。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の樹脂組成物は、半導体装置等の電子部品を形成する、カバーコート材、再配線用コア材、半田等のボール用カラー材、アンダーフィル材等のいわゆるパッケージ用途に使用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 層間絶縁層
2 Al配線層
3 絶縁層
4 表面保護層
5 配線層のパット部
6 再配線層
7 導電性ボール
8 コア
9 カバーコート層
10 バリアメタル
11 カラー
12 アンダーフィル
図1