特許第6146075号(P6146075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146075
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】スケール防止方法及びスケール防止剤
(51)【国際特許分類】
   C02F 5/10 20060101AFI20170607BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20170607BHJP
   C02F 5/08 20060101ALI20170607BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20170607BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   C02F5/10 620Z
   C02F5/00 620B
   C02F5/08 B
   C02F5/10 620A
   C02F5/10 620B
   C02F5/10 620C
   C02F5/10 620D
   C02F5/10 620E
   C02F5/10 620F
   B01D61/04
   C02F1/44 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-59451(P2013-59451)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-184365(P2014-184365A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】西田 育子
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/114953(WO,A1)
【文献】 特開2005−118712(JP,A)
【文献】 特開2010−000455(JP,A)
【文献】 特開2002−210335(JP,A)
【文献】 特開2002−273478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 5/00− 5/14
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素を含む水系に、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとのリン非含有共重合体を添加するスケール防止方法。
【請求項2】
前記共重合体は、マレイン酸60mol%以上と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとを含む単量体成分を共重合して得られる請求項1記載のスケール防止方法。
【請求項3】
前記共重合体は、重量平均分子量が500〜5000である請求項1又は2記載のスケール防止方法。
【請求項4】
フッ素を含む逆浸透膜処理水系に、前記共重合体を添加する請求項1〜3の何れか1項記載のスケール防止方法。
【請求項5】
フッ素を含む水系に添加される、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとのリン非含有共重合体であるスケール防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケール防止方法及びスケール防止剤に関する。より詳しくは、フッ素を含む水系におけるフッ化カルシウムスケールの生成を抑制するスケール防止方法及びスケール防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系、ボイラ水系、膜処理又は地熱発電所の還元井において、水と接触する伝熱面、配管或いは膜面にスケール障害が発生する。省資源・省エネルギーの観点から高濃縮運転をしたとき、また、膜処理の場合は回収率を高くしたとき、水に溶解している塩類が濃縮されて、難溶性の塩となってスケール化する。
【0003】
そして、例えば、熱交換部に生成したスケールは伝熱阻害を、配管に付着したスケールは流量低下を、膜に付着したスケールはフラックス低下を、それぞれ引き起こす。また、生成したスケールが剥離すると、系内を循環し、ポンプ、配管及び熱交換部の閉塞を引き起こし、更に、これらの閉塞に伴い、配管及び熱交換部でのスケール化が促進される。同様の現象は、地熱発電所の還元井でも起こり得る。
【0004】
これらの水系において生成するスケール種としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸亜鉛、水酸化亜鉛及び塩基性炭酸亜鉛等がある。
また、カルシウム系スケールに対するスケール防止剤としては、一般的に、ヘキサメタリン酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウム等の無機ポリリン酸類、アミノメチルホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸及びホスホノブタントリカルボン酸等のホスホン酸類、並びに、マレイン酸、アクリル酸及びイタコン酸等のカルボキシル基含有素材に必要に応じてスルホン酸基を有するビニルモノマーやアクリルアミド等のノニオン性ビニルモノマーを対象水質に応じて組み合わせたコポリマーが、使用されている。
【0005】
上述のスケール防止剤として使用される無機ポリリン酸類及びホスホン酸類は、リンを含むものであるが、近年、排水中のリン濃度が規制されたことに伴い、リンを含まないスケール防止剤が望まれている。こうした背景のもと、従来から、リンを含有しない炭酸カルシウムスケール防止剤が検討されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
例えば、特許文献1に記載の方法では、スケール防止剤として、マレイン酸とアリルスルホン酸の共重合体を使用している。また、特許文献2に記載の処理方法では、マレイン酸とエチルアクリレートとスチレンの三元共重合体で、質量平均分子量が600〜10000のものを、スケール防止剤として使用している。さらに、特許文献3に記載の水系処理用組成物では、質量平均分子量が400〜800のポリマレイン酸と、分子量が800〜9500のアクリル系コポリマーとを、組み合わせて使用している。
【0006】
一方、特許文献4には、フッ化物イオンを含む半導体製造工程回収水に、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム又はホスホン酸系化合物を添加した後、逆浸透膜分離処理する半導体製造工程回収水の処理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−75396号公報
【特許文献2】特開平2−115384号公報
【特許文献3】特開平4−222697号公報
【特許文献4】特開2000−202445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、水資源を有効活用するために、排水を逆浸透膜で回収して使用する場合が増えてきている。例えば、半導体洗浄水を含む半導体や太陽光発電用基板等、ケイ素化合物を利用する工場において、ケイ素化合物をフッ化水素で処理する場合に、排水中にフッ素が含まれることがある。そして、フッ素及びカルシウムを含む排水を、RO膜を用いて回収する場合に、炭酸カルシウムスケールに加えて、フッ化カルシウムスケールが生成し易い場合が増えてきている。
また、前述のとおり、排水のリン濃度の規制に伴い、リンを含まないスケール防止剤が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、フッ素を含む水系において、排水中のリン濃度を増加させることなく、フッ化カルシウムスケールの生成を抑制することができるスケール防止方法及びスケール防止剤を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、排水中にフッ素が含まれ、その水系において、炭酸カルシウムスケールに加えてフッ化カルシウムスケールが生成し易い場合が増加していることに鑑みて、これらのスケールの生成を抑制することについて、鋭意研究を行った。その結果、本発明者は、フッ素を含む水系に対し、マレイン酸/エチルアクリレート/酢酸ビニルターポリマーを添加することで、フッ化カルシウムスケール及び炭酸カルシウムスケールの生成を効果的に抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、フッ素を含む水系に、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとのリン非含有共重合体を添加するスケール防止方法を提供する。
本発明では、リン非含有共重合体をフッ素含有の水系に添加するため、当該水系における排水中のリン濃度を増加させることなく、フッ化カルシウムスケールの生成を抑制することが可能となる。
前記共重合体としては、マレイン酸60mol%以上と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとを含む単量体成分を共重合して得られるものを用いることができる。また、前記共重合体としては、重量平均分子量が500〜5000の範囲にあるものを用いることができる。
本発明のスケール防止方法では、フッ素を含む逆浸透膜処理水系に、前記共重合体を添加することが好ましい。例えば、フッ素及びカルシウムを含む排水を、逆浸透膜を用いて回収する場合に、本発明のスケール防止方法を適用することができる。
【0012】
また、本発明は、フッ素を含む水系に添加される、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとのリン非含有共重合体であるスケール防止剤を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フッ素を含む水系において、排水中のリン濃度を増加させることなく、フッ化カルシウムスケールの生成を抑制することができるスケール防止方法及びスケール防止剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<スケール防止剤>
まず、本開示に係るスケール防止剤について説明する。
本開示のスケール防止剤は、フッ素を含む水系に添加されるものであり、その主成分は、リン非含有の共重合体である。そして、この共重合体は、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとのターポリマー(三元共重合体)が好適であり、実質的にリンを含有しないものである。
【0016】
本開示のスケール防止剤が適用される対象水系としては、フッ素を含む水系(以下、「フッ素含有水系」ともいう。)であれば、特に限定されないが、フッ素及びカルシウムの両方を含む水系が好適である。対象水系としては、例えば、フッ素が含まれ得る、冷却水系、ボイラ水系、膜処理水系、及び集塵水系等が挙げられる。
【0017】
また、半導体洗浄水を含む半導体及び太陽光発電用基板等、ケイ素化合物を利用する工場において、ケイ素化合物をフッ化水素で処理する場合に、排水中にフッ素が含まれることがある。そのため、本開示のスケール防止剤は、ケイ素化合物が利用される工場等の施設から回収される被処理水(例えば、半導体製造工程や基板製造工程等からの排水や回収水)に好適に用いられる。
【0018】
本開示のスケール防止剤は、好ましくは膜処理水系に、より好ましくは逆浸透膜処理水系に用いられ、さらに好ましくは逆浸透膜(Reverse Osmosis Membrane:RO膜)を用いてフッ素及びカルシウムを含む排水を回収する場合に用いられる。
【0019】
本開示のスケール防止剤に用いられる上記共重合体は、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとを含む単量体成分を共重合して得られる。そのため、この共重合体は、マレイン酸に由来する構成単位と、エチルアクリレートに由来する構成単位と、酢酸ビニルに由来する構成単位と、を有するものといえる。
この共重合体を構成する単量体成分中の各成分の含有量(使用量)は、特に限定されないが、マレイン酸は単量体成分中に60mol%以上含むことが好ましい。
【0020】
上記共重合体を構成する単量体成分は、マレイン酸60〜98mol%と、エチルアクリレート1〜39mol%と、酢酸ビニル1〜39mol%とを含むことが好ましい。
また、上記共重合体を構成する単量体成分は、マレイン酸64〜90mol%と、エチルアクリレート3〜33mol%と、酢酸ビニル3〜33mol%とを含むことがより好ましい。
上記共重合体を合成する際に、各成分が上記使用量範囲にて使用されることで、フッ化カルシウムスケールを効果的に抑制することが可能なスケール防止剤が得易くなる。
【0021】
上記共重合体は、重量平均分子量が500〜5000のものを用いることができる。スケールの生成を抑制し易いスケール防止剤を得る観点からは、共重合体の重量平均分子量は、1700〜4000であることが好ましく、1800〜3000であることがより好ましく、1900〜2500であることがさらに好ましい。
なお、本開示において、「重量平均分子量」は、ポリアクリル酸ナトリウムを標準物質として用い、ゲル浸透クロマトグラフィにより測定した重量平均分子量である。
【0022】
上記共重合体は、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとのリン非含有共重合体であればよく、これらの単量体成分に由来する構成単位を有するターポリマーが好適であるが、本開示の目的を阻害しない範囲であれば、四元以上の共重合体であってもよい。
【0023】
上記共重合体の製造方法及び重合方法は特に限定されない。例えば、マレイン酸、エチルアクリレート、及び酢酸ビニルをそれぞれ所定量用いて、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、及び塊状重合等の重合方法により、上記共重合体を合成することができる。
この共重合体の重合に用いる開始剤としては、公知の過酸化物開始剤を適宜選択して使用することができる。具体的には、ジベンゾイルペルオキシド、第三ブチルペルペンゾエート、ジクミルペルオキシド、第三ブチルヒドロペルオキシド、及び第三ブチルペルオキシド等を使用することができる。この場合の重合形式は、回分式及び連続式の何れでもよく、重合時間は、例えば2〜5時間の範囲で行うことが可能であり、重合温度は例えば40〜100℃の範囲で行うことが可能である。
【0024】
また、上記共重合体は水性媒体中で合成する水性重合によって得ることも可能である。水性重合においては、例えば、上記共重合体を構成する各単量体成分を含む、水溶液又は水分散液を調整し、必要に応じてpHの調整を行い、不活性ガスにより雰囲気を置換した後、50〜100℃に加熱し、水溶性重合開始剤を添加すればよい。その際使用する水溶性重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、アゾビス−N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン二塩酸塩及び4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)−2−ナトリウム等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等の過硫酸塩、並びに過酸化水素及び過ヨウ素酸ナトリウム等の過酸化物を使用することができる。
【0025】
また、水性重合の場合の重合条件は、特に限定されるものではないが、例えば、2〜6時間重合した後、放冷することにより、重合体水溶液又は水分散液を得ることができる。なお、上記共重合体の重合は、水性媒体中に限らず、一般的な有機溶媒中での溶液重合、懸濁重合及び乳化重合等によっても行うことができる。
【0026】
本開示のスケール防止剤には、前述したマレイン酸/エチルアクリレート/酢酸ビニルの共重合体に加えて、本開示の目的を阻害しない範囲において、他の添加剤を含んでいてもよい。当該他の添加剤としては、例えば、スライムコントロール剤、酵素、殺菌剤、着色剤、香料、水溶性有機溶媒及び消泡剤等が挙げられる。
スライムコントロール剤としては、例えば、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩、クロルメチルトリチアゾリン、クロルメチルイソチアゾリン、メチルイソチアゾリン、エチルアミノイソプロピルアミノメチルチオトリアジン、次亜塩素酸、次亜臭素酸、及び次亜塩素酸とスルファミン酸の混合物等を使用することができる。
【0027】
以上詳述したように、本開示のスケール防止剤は、リン非含有のマレイン酸/エチルアクリレート/酢酸ビニルの共重合体を主成分としている。そのため、本開示のスケール防止剤は、フッ素含有水系における排水中のリン濃度を増加させることなく、フッ化カルシウムスケール及び炭酸カルシウムスケールの析出を抑制することができる。
【0028】
本開示のスケール防止剤は、エチルアクリレート/酢酸ビニルの共重合体単位を有することにより、フッ素含有水系において生成したスケール粒子の分散効果を高めることが可能であると考えられる。そして、その分散効果が高いために、生成したスケール粒子のサイズを小さく維持することが可能となると考えられる。そのため、フッ素を含有する排水等の被処理水を、RO膜を用いて回収する場合、RO膜の膜面での閉塞を防止することができると考えられる。
【0029】
また、重量平均分子量が1700〜4000(好適には、1800〜3000)の範囲にある上記共重合体は、フッ化カルシウム及び炭酸カルシウムの析出をより効果的に抑制することができ、また、ゲル化し難いことから、RO膜処理におけるスケール防止剤として好適であると考えられる。
【0030】
<スケール防止方法>
次に、本開示に係るスケール防止方法について説明する。
本開示のスケール防止方法は、フッ素を含む水系に、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとのリン非含有共重合体であるスケール防止剤を添加することである。このスケール防止剤をフッ素含有水系に添加することで、当該フッ素含有水系において生成するおそれのあるフッ化カルシウムスケール及び炭酸カルシウムスケールの発生を抑制することが可能となる。なお、本開示のスケール防止方法で用いられるリン非含有共重合体は、本開示に係るスケール防止剤の説明で上述したとおりのものである。
【0031】
本開示のスケール防止方法において、スケール防止剤の添加方法は、特に限定されるものではなく、スケールの付着を防止したい場所やその直前等で添加すればよい。また、スケール防止剤の添加量も、特に限定されるものではなく、水系における水質に応じて適宜選択することができる。
例えば、本開示のスケール防止剤を上記共重合体の濃度が0.01〜100mg/Lとなるように添加することが好ましい。RO膜を用いてフッ素を含む排水を回収する場合等のRO膜処理水系においては、RO膜等の膜面の閉塞防止の観点から、上記共重合体の濃度が0.1〜10mg/Lとなるように、本開示に係るスケール防止剤を添加することがより好ましい。
【0032】
本開示のスケール防止方法では、フッ素含有水系に対して、上記共重合体を添加することに加えて、必要に応じて、他のスケール防止剤を添加してもよい。他のスケール防止剤の添加方法としては、上記共重合体に混合して添加してもよく、別々に添加してもよい。
【0033】
本開示に係るスケール防止剤と併用する他のスケール防止剤としては、例えば、ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル酸、マレイン酸/(メタ)アクリル酸共重合体、マレイン酸/イソブチレン共重合体、マレイン酸/スルホン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/ノニオン基含有モノマー共重合体、及びアクリル酸/スルホン酸/ノニオン基含有モノマー三元共重合体等が挙げられる。なお、本開示において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方が含まれることを意味する。
【0034】
上記他のスケール防止剤として用い得る共重合体における「スルホン酸」としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2―メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸4−スルホブチル、アリルオキシベンゼンスルホン酸、及びメタリルオキシベンゼンスルホン酸、並びにそれらの金属塩等が挙げられる。
【0035】
また、上記他のスケール防止剤として用い得る共重合体における「ノニオン基含有モノマー」としては、例えば、炭素数1〜5のアルキルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、付加モル数が1〜30の(ポリ)エチレン/プロピレンオキサイドのモノ(メタ)アクリレート、及び付加モル数が1〜30のモノビニルエーテルエチレン/プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0036】
以上のとおり、本開示に係るスケール防止方法では、上述のリン非含有共重合体を主成分とするスケール防止剤をフッ素含有水系に添加するため、フッ素含有水系における排水中のリン濃度を増加させることなく、フッ化カルシウムスケール及び炭酸カルシウムスケールの析出を抑制することができる。
【0037】
本開示に係るスケール防止方法は、使用するスケール防止剤がエチルアクリレート/酢酸ビニルの共重合構成単位を有することで、フッ素含有水系において生成したスケール粒子の分散効果を高めることが可能であると考えられる。そして、その分散効果が高いために、生成したスケール粒子のサイズを小さく維持することが可能となり、フッ素含有水系における排水を回収する場合に用いるRO膜等の膜面での閉塞を防止することが可能になると考えられる。
【0038】
また、本開示に係るスケール防止方法は、スケール防止剤として使用する上記共重合体が重量平均分子量1700〜4000(好適には、1800〜3000)の範囲にあり、ゲル化し難いことから、RO膜処理水系において好適に用いられる。
【0039】
本開示に係るスケール防止方法を、対象水系の処理等を管理するための装置(例えば、パーソナルコンピュータ等)のCPU等を含む制御部及び記録媒体(不揮発性メモリ(USBメモリ等)、HDD、CD等)等を備えるハードウェア資源にプログラムとして格納し、制御部によって実現させることも可能である。
【0040】
なお、本開示のスケール防止剤及びスケール防止方法が適用される水系において、その水系の水質条件及び運転条件は特に限定されない。
【0041】
本開示に係るスケール防止方法及びスケール防止剤は、以下のような構成をとることもできる。
[1] フッ素を含む水系に、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとのリン非含有共重合体を添加するスケール防止方法。
[2] 前記リン非含有共重合体が、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとの三元共重合体である上記[1]に記載のスケール防止方法。
[3] 前記リン非含有共重合体は、マレイン酸60mol%以上と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとを含む単量体成分を共重合して得られる上記[1]又は[2]に記載のスケール防止方法。
[4] 前記リン非含有共重合体は、マレイン酸60〜98mol%と、エチルアクリレート1〜39mol%と、酢酸ビニル1〜39mol%とを含む単量体成分を共重合して得られる上記[1]〜[3]の何れか1つに記載のスケール防止方法。
[5] 前記リン非含有共重合体は、重量平均分子量が、500〜5000である上記[1]〜[4]の何れか1つに記載のスケール防止方法。ここで、前記リン非含有共重合体の重量平均分子量は、好ましくは1700〜4000、より好ましくは1800〜3000、さらに好ましくは1900〜2500である。
[6] フッ素を含む逆浸透膜処理水系に、前記リン非含有共重合体を添加する上記[1]〜[5]の何れか1つに記載のスケール防止方法。
[7] フッ素を含む水系に添加される、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとのリン非含有共重合体であるスケール防止剤。
[8] 前記リン非含有共重合体が、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとの三元共重合体である上記[7]に記載のスケール防止剤。
[9] 前記リン非含有共重合体は、マレイン酸60mol%以上と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとを含む単量体成分を共重合して得られるものである上記[7]又は[8]に記載のスケール防止剤。
[10] 前記リン非含有共重合体は、マレイン酸60〜98mol%と、エチルアクリレート1〜39mol%と、酢酸ビニル1〜39mol%とを含む単量体成分を共重合して得られるものである上記[7]〜[9]の何れか1つに記載のスケール防止剤。
[11] 前記リン非含有共重合体は、重量平均分子量が、500〜5000である上記[7]〜[10]の何れか1つに記載のスケール防止剤。ここで、リン非含有共重合体の重量平均分子量は、好ましくは1700〜4000、より好ましくは1800〜3000、さらに好ましくは1900〜2500である。
[12] 前記リン非含有共重合体は、フッ素を含む逆浸透膜処理水系に添加されるものである上記[7]〜[11]の何れか1つに記載のスケール防止剤。
[13] フッ素を含む水系に、マレイン酸と、エチルアクリレートと、酢酸ビニルとのリン非含有共重合体を添加するように前記水系を制御する制御部を備えるスケール防止システム。
【実施例】
【0042】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本開示に係るスケール防止方法及びスケール防止剤の効果について具体的に説明する。
【0043】
実施例1〜3及び比較例1〜5のスケール防止剤について、フッ化カルシウムスケールが生成する場合と、フッ化カルシウムスケール及び炭酸カルシウムスケールの両方が生成する場合を想定し、以下に説明する試験を行った。
【0044】
<フッ化カルシウム析出抑制試験>
500mlのコニカルビーカーに超純水を500ml入れ、そこに、塩化カルシウムを500mgCaCO3/L、後述する実施例1〜3及び比較例1〜5の各例で用いたスケール防止剤を1mg/L、並びにフッ化ナトリウムを50mg/L加えた後、少量の水酸化ナトリウム水溶液と硫酸水溶液でpHを7に調製して、密栓後、30℃の恒温槽中で3時間撹拌した。その後、孔径0.1μmの濾紙を用いて、EDTA法により、濾液のカルシウム硬度を定量した。
この試験における水質条件は、カルシウム硬度500mg/L、フッ素濃度50mg/L、及びpH7であった。
【0045】
<フッ化カルシウム及び炭酸カルシウムの同時生成時の析出抑制試験>
500mlのコニカルビーカーに超純水を500ml入れ、そこに、塩化カルシウムを500mgCaCO3/L、後述する実施例1〜3及び比較例1〜5の各例で用いたスケール防止剤を2mg/L、フッ化ナトリウムを50mg/L、並びに炭酸水素ナトリウムを500mgCaCO3/L加えた後、少量の水酸化ナトリウム水溶液と硫酸水溶液でpHを8.5に調製して、密栓後、30℃の恒温槽中で3時間撹拌した。その後、孔径0.1μmの濾紙を用いて、EDTA法により、濾液のカルシウム硬度を定量した。
この試験における水質条件は、カルシウム硬度500mg/L、フッ素濃度50mg/L、Mアルカリ度は500mg/L、及びpH8.5であった。
【0046】
実施例1〜3及び比較例1〜3の各例では、表1及び表2に記載のモノマー成分(組成)を当該表に記載のモル比にて重合して得たスケール防止剤を用いた。これらのスケール防止剤の重量平均分子量Mを表1及び表2に示す。また、比較例4及び5では、モノマーをスケール防止剤として用いた。実施例及び比較例の各スケール防止剤を用いて、上述の析出抑制試験により定量したカルシウム硬度の結果を表1及び表2にまとめて示す。
なお、「フッ化カルシウム析出抑制試験」の結果は、表中の「フッ化カルシウム」の欄に示し、「フッ化カルシウム及び炭酸カルシウムの同時生成時の析出抑制試験」の結果は、表中の「フッ化カルシウム+炭酸カルシウム」の欄に示す。
また、表1及び表2において、MAはマレイン酸、EAはエチルアクリレート、VAは酢酸ビニル、AAはアクリル酸、SAはスルホン酸、SHMPはヘキサメタリン酸、HEDPはヒドロキシエチリデンホスホン酸を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
実施例1〜3のスケール防止剤では、「フッ化カルシウム析出抑制試験」及び「フッ化カルシウム及び炭酸カルシウムの同時生成時の析出抑制試験」の両試験結果において、濾液のカルシウム硬度が490mg/L以上となり、初期のカルシウム硬度を維持できていることが確認された。
よって、実施例1〜3のスケール防止剤をフッ素及びカルシウムを含む水系に添加することで、フッ化カルシウムスケール及び炭酸カルシウムスケールの生成を抑制することが可能となる。よって、フッ素及びカルシウムを含む排水を、RO膜を用いて回収する場合に、RO膜へのフッ化カルシウムスケール及び炭酸カルシウムスケールの付着を効果的に防止することが可能となる。
【0050】
比較例1及び2のスケール防止剤では、「フッ化カルシウム析出抑制試験」及び「フッ化カルシウム及び炭酸カルシウムの同時生成時の析出抑制試験」の両試験結果において、濾液のカルシウム硬度が490mg/Lより小さく、フッ化カルシウムの析出を抑制できていないことが確認された。比較例1及び2のスケール防止剤では、マレイン酸を含まないため、フッ化カルシウムスケールの析出を抑制できなかったと考えられる。
【0051】
比較例3〜5のスケール防止剤では、「フッ化カルシウム及び炭酸カルシウムの同時生成時の析出抑制試験」において、濾液のカルシウム硬度が490mg/Lより小さく、フッ化カルシウムと炭酸カルシウムが同時に析出する場合に、それらのスケールの析出を抑制できないことが確認された。
【0052】
以上の結果より、マレイン酸を60mol%以上含む分子量500〜5000のマレイン酸/エチルアクリレート/酢酸ビニルターポリマーは、フッ化カルシウム及び炭酸カルシウムのスケールの生成を抑制できることがわかった。したがって、例えば、フッ素及びカルシウムを含む排水を、RO膜を用いて回収する場合等において、RO膜にフッ化カルシウムスケール及び炭酸カルシウムスケールが付着されるのを効果的に抑制することが可能となり、RO膜を安定して運転することができる。