(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態の成膜方法を実施するための成膜装置について、
図1〜
図5を参照して説明する。この装置は、
図1〜
図4に示すように、平面形状が概ね円形である真空容器1と、この真空容器1内にて鉛直軸周りに回転自在に構成された回転テーブル2と、を備えており、シリコンからなるウエハWに対して処理ガスのプラズマを用いてALD法により薄膜の成膜処理を行うように構成されている。この装置では、後で詳述するように、下地層であるウエハWに密着させ難い窒化シリコン膜であっても、当該ウエハWの表面に良好に密着させつつ、且つ良好な膜質となるように成膜出来るように構成されている。続いて、この成膜方法について詳述する前に、前記成膜装置について以下に簡単に説明する。
【0022】
真空容器1は、容器本体12と、当該容器本体12から着脱自在に構成された天板11とを備えている。天板11の上面側における中央部には、真空容器1内の中心部領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために、窒素(N2)ガスを分離ガスとして供給するための分離ガス供給管51が接続されている。
図1中13は、容器本体12の上面の周縁部にリング状に設けられたシール部材例えばOリングである。
【0023】
真空容器1の底面部14の上方側には、
図1に示すように、加熱機構であるヒータユニット7が設けられており、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを成膜温度例えば200℃〜450℃に加熱するように構成されている。
図1中71aはヒータユニット7の側方側に設けられたカバー部材、7aはこのヒータユニット7の上方側を覆う覆い部材である。また、
図1中73は、ヒータユニット7に対して下方側から窒素ガスをパージするためのパージガス供給管である。
【0024】
回転テーブル2は、中心部にて概略円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22によって、鉛直軸周りこの例では時計周りに回転自在に構成されている。
図1中23は回転軸22を鉛直軸周りに回転させる駆動部(回転機構)であり、20は回転軸22及び駆動部23を収納するケース体である。このケース体20は、上面側のフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられている。また、このケース体20には、回転テーブル2の下方領域に窒素ガスをパージガスとして供給するためのパージガス供給管72が接続されている。真空容器1の底面部14におけるコア部21の外周側は、回転テーブル2に下方側から近接するようにリング状に形成されて突出部12aをなしている。
【0025】
回転テーブル2の表面部には、
図2〜
図3に示すように、ウエハWを落とし込んで保持するために、円形の凹部24が基板載置領域として設けられており、この凹部24は、当該回転テーブル2の回転方向(周方向)に沿って複数箇所例えば5箇所に形成されている。凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる4本のノズル31、32、41、42が真空容器1の周方向に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。これら各ノズル31、32、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から中心部領域Cに向かってウエハWに対向して水平に伸びるように各々取り付けられている。この例では、後述の搬送口15から見て時計周り(回転テーブル2の回転方向)に、プラズマ発生用ガスノズルを兼用する第2の処理ガスノズル32、分離ガスノズル41、第1の処理ガスノズル31及び分離ガスノズル42がこの順番で配列されている。
【0026】
第1の処理ガスノズル31は、第1の処理ガス供給部をなしており、第2の処理ガスノズル32は、第2の処理ガス供給部及びプラズマ発生用ガス供給部をなしている。また、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給部をなしている。尚、
図2は第2の処理ガスノズル32が見えるように後述のプラズマ処理部80及び筐体90を取り外した状態、
図3はこれらプラズマ処理部80及び筐体90を取り付けた状態を表している。また、
図3では、後述のスリット97の描画を省略している。
【0027】
各ノズル31、32、41、42は、流量調整バルブを介して夫々以下の各ガス供給源(図示せず)に夫々接続されている。即ち、第1の処理ガスノズル31は、Si(シリコン)を含む第1の処理ガス例えばジクロロシラン(DCS)ガスなどの供給源に接続されている。第2の処理ガスノズル32は、窒素(N)を含む第2の処理ガスである例えばアンモニア(NH3)ガスと、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス及び水素(H2)ガスのうち少なくとも1種類のプラズマ発生用のガスと、を供給できるようにこれら各ガスの供給源に接続されている。分離ガスノズル41、42は、分離ガスである窒素ガスのガス供給源に各々接続されている。これらガスノズル31、32、41、42の例えば下面側には、図示しないガス吐出孔が各々形成されており、このガス吐出孔は、回転テーブル2の半径方向に沿って複数箇所に例えば等間隔に配置されている。
【0028】
処理ガスノズル31、32の下方領域は、夫々第1の処理ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1、及びウエハWに吸着した第1の処理ガスの成分と第2の処理ガスのプラズマとを反応させるための第2の処理領域P2となる。分離ガスノズル41、42は、各々第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものである。この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、
図2及び
図3に示すように、概略扇形の凸状部4が設けられており、分離ガスノズル41、42は、この凸状部4内に収められている。従って、分離ガスノズル41、42における回転テーブル2の周方向両側には、各処理ガス同士の混合を阻止するために、前記凸状部4の下面である低い天井面が配置され、この天井面の前記周方向両側には、当該天井面よりも高い天井面が配置されている。凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は、各処理ガス同士の混合を阻止するために、回転テーブル2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、下方側に向かって直角に屈曲している。
【0029】
次に、既述のプラズマ処理部80について説明する。このプラズマ処理部80は、
図3及び
図4に示すように、金属線からなるアンテナ(電力供給部)83をコイル状に巻回して構成されており、平面で見た時に回転テーブル2の中央部側から外周部側に亘ってウエハWの通過領域を跨ぐように配置されている。このアンテナ83は、整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に接続されると共に、真空容器1の内部領域から気密に区画されるように配置されている。即ち、既述の第2の処理ガスノズル32の上方側における天板11は、平面的に見た時に概略扇形に開口しており、例えば石英などからなる筐体90によって気密に塞がれている。この筐体90は、上端側周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出すと共に、中央部が真空容器1の内部領域に向かって窪むように形成されており、この筐体90の内側に前記アンテナ83が収納されている。
図1中91は、筐体90の周縁部を下方側に向かって押圧するための押圧部材である。また
図1中86は、プラズマ処理部80と整合器84及び高周波電源85とを電気的に接続するための接続電極である。
【0030】
筐体90の下面は、当該筐体90の下方領域への窒素ガスやアンモニアガスなどの侵入を阻止するために、
図5に示すように、外縁部が周方向に亘って下方側(回転テーブル2側)に向かって垂直に伸び出して、ガス規制用の突起部92をなしている。そして、この突起部92の内周面、筐体90の下面及び回転テーブル2の上面により囲まれた領域には、既述の第2の処理ガスノズル32が収納されている。この突起部92の外側には、当該突起部92により囲まれる領域を更に外側から囲むように、例えば石英により構成された概略環状の囲み部材93が設けられており、この囲み部材93は、例えば天板11における回転テーブル2の中心側の部位に取り付けられている。この囲み部材93によって、後述の駆動部122を介して筐体90が回転テーブル2から上方側に離間しても、当該筐体90の下方側への窒素ガスやアンモニアガスの侵入を阻止できるように構成されている。尚、
図2では、囲み部材93を一点鎖線にて描画している。
【0031】
筐体90とアンテナ83との間には、
図4及び
図5に示すように、上面側が開口する概略箱型のファラデーシールド95が配置されており、このファラデーシールド95は、導電性の板状体である金属板により構成されると共に接地されている。このファラデーシールド95の底面には、アンテナ83において発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウエハWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウエハWに到達させるために、スリット97が形成されている。このスリット97は、アンテナ83の巻回方向に対して直交する方向に伸びるように形成されており、アンテナ83の長さ方向に沿うように周方向に亘って当該アンテナ83の下方位置に設けられている。ファラデーシールド95とアンテナ83との間には、これらファラデーシールド95とアンテナ83との間の絶縁を取るために、例えば石英からなる絶縁板94が介在している。
【0032】
以上説明した筐体90(詳しくは後述の支持部材123)の上面には、
図1に示すように、当該筐体90と共にアンテナ83、ファラデーシールド95及び絶縁板94を一体的に昇降させるための駆動部122から伸びる昇降軸121が接続されている。この駆動部122によって、真空容器1の内部を気密に保ちながら、回転テーブル2の表面に対する筐体90の下面(アンテナ83)の高さ位置、即ち当該回転テーブル2の上方側に形成されるプラズマ空間におけるプラズマ強度が調整できるように構成されている。即ち、筐体90と天板11との間には、上面側外縁部が水平方向に外側に向かってフランジ状に伸び出す概略環状の支持部材123が設けられている。そして、この支持部材123の前記外縁部の下面側と真空容器1の天板11との間には、環状のフレキシブル壁124が設けられている。このフレキシブル壁124は、内部にばねなどの弾性体が気密に収納されており、上端面及び下端面が夫々支持部材123及び天板11に気密に固定されている。従って、筐体90を回転テーブル2に対して昇降させても、真空容器1の内部領域が気密に維持される。
図5中125はシール部材である。尚、既述の
図1では、支持部材123やフレキシブル壁124については描画を省略している。
【0033】
回転テーブル2の外周側において当該回転テーブル2よりも僅かに下位置には、環状のサイドリング100が配置されており、このサイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように2箇所に排気口61、62が形成されている。これら2つの排気口61、62のうち一方及び他方を夫々第1の排気口61及び第2の排気口62と呼ぶと、第1の排気口61は、第1の処理ガスノズル31と、当該第1の処理ガスノズル31よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。第2の排気口62は、第2の処理ガスノズル32と、当該第2の処理ガスノズル32よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。
【0034】
第1の排気口61は、第1の処理ガス及び分離ガスを排気するためのものであり、第2の排気口62は、第2の処理ガス及び分離ガスを排気するためのものである。そして、筐体90の外縁側におけるサイドリング100の上面には、当該筐体90を避けてガスを第2の排気口62に通流させるための溝状のガス流路101が形成されている。これら第1の排気口61及び第2の排気口62は、
図1に示すように、各々バタフライバルブなどの圧力調整部65の介設された排気管63により、真空排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0035】
天板11の下面における中央部には、
図3などに示すように、凸状部4における中心部領域C側の部位と連続して周方向に亘って概略リング状に形成されると共に、その下面が凸状部4の下面と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。この突出部5よりも回転テーブル2の回転中心側におけるコア部21の上方側には、中心部領域Cにおいて第1の処理ガスと第2の処理ガスとが互いに混ざり合うことを抑制するために、回転テーブル2側と天板11側との一方側から他方側に向かって伸びる壁部111が回転テーブル2の半径方向に交互に配置されている。
【0036】
真空容器1の側壁には、
図2〜
図4に示すように、図示しない外部の搬送アームと回転テーブル2との間においてウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGより気密に開閉自在に構成されている。また、この搬送口15を臨む位置における回転テーブル2の下方側には、回転テーブル2の貫通口を介してウエハWを裏面側から持ち上げるための昇降ピン(いずれも図示せず)が設けられている。
【0037】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部200が設けられており、この制御部200のメモリ内には後述の成膜処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部201から制御部200内にインストールされる。
【0038】
次に、上述実施の形態の作用について説明する。ここで、本発明の成膜方法は、以下に詳述するように、ALD法を用いて薄膜の成膜を行うにあたり、薄膜を上下2層に分けて、下層側及び上層側に夫々個別の成膜条件を適用したいわば2段階の成膜シーケンスを組み合わせる手法を採っている。このように2段階の成膜手法を用いた理由について、従来の1段階だけの成膜手法で薄膜を成膜した場合に生じる問題点と共に、以下に説明する。
【0039】
即ち、シリコンからなるウエハWに窒化シリコン膜をALD法により1段階の成膜処理にて成膜しようとした場合、既述のように、第1の処理ガス及び第2の処理ガスとして、夫々シリコン含有ガス及び窒素含有ガスが用いられる。そして、この窒素含有ガスとしては、例えばアンモニアガスが用いられると共に、ウエハW上に吸着したシリコン成分の窒化を行うために、アンモニアガスがプラズマ化(活性化)される。従って、良好な(緻密な)膜質を得るためには、ウエハWの内部に形成されたデバイスにダメージが加わらない程度に、アンモニアガスのプラズマ化の度合いをできるだけ高くしておくことが好ましい。
【0040】
しかしながら、窒化シリコン膜は、ウエハWを構成するシリコン層と比べて、内部応力が極めて大きい。そのため、窒化シリコン膜の緻密化を図ろうとする程、前記応力が大きくなり、従ってウエハWからの膜剥がれが発生しやすくなる。後述の実施例に示す
図16及び
図17は、このような窒化シリコン膜の膜剥がれを示すSEM(電子顕微鏡)写真であり、円状の膜剥がれがウエハWの表面において多数箇所で発生している。従って、ウエハW上に窒化シリコン膜を形成する場合には、当該窒化シリコン膜の緻密さ(密度)を向上させることと、窒化シリコン膜とウエハWとの密着性を確保することとがトレードオフの関係になり、膜剥がれを抑制しながら緻密な窒化シリコン膜を得ることは極めて困難である。
【0041】
そこで、本発明では、ウエハWからの膜剥がれを抑制しつつ、緻密な窒化シリコン膜を成膜するために、2段階の成膜手法を採っている。以下に、装置の具体的な使用方法を含めて、この成膜手法を説明する。先ず、
図2に示すゲートバルブGを開放して、回転テーブル2を間欠的に回転させながら、図示しない搬送アームにより搬送口15を介して回転テーブル2上に例えば5枚のウエハWを載置する。次いで、ゲートバルブGを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内の処理雰囲気を引き切りの状態にする。
図6は、本発明の成膜方法の一実施形態を示すシーケンス図である。そして、回転テーブル2の回転数を例えば30rpmに向かって増加させながら、アンテナ83には給電せずに、即ち処理ガスのプラズマ化は行わずに、第2の処理ガスノズル32からアルゴンガスとアンモニアガスとを真空容器1内に例えば夫々2000sccm及び3500sccmの流量で供給する(時刻t0)。また、分離ガスノズル41、42、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、72からも窒素ガスを所定の流量で吐出する。
【0042】
次いで、
図1に示すヒータユニット7によるウエハWの加熱温度が例えば400℃程度に落ち着いた後、
図5などに示すアンテナ83への給電を例えば3000Wにて時刻t1において開始する(着火する)。そして、アルゴンガスの供給を停止すると共に、アンモニアガスの流量を8000sccmまで増加させて、ウエハWの表面の窒化処理を行う(時刻t2)。即ち、
図7に示すように、真空容器1内に搬入された時のウエハWの表面には、大気雰囲気を搬送されたことに伴って自然酸化膜300が形成されている。そのため、このウエハWの表面に対してアンモニアガスのプラズマを供給すると、
図8に示すように、このプラズマに含まれる活性種により前記自然酸化膜300が窒化されて窒化層301が形成される。こうして各ウエハWの自然酸化膜300が除去されるまで、即ち回転テーブル2が予め設定された回数回転するまで、当該自然酸化膜300の窒化処理を継続する。
【0043】
続いて、時刻t3において、例えば900sccmにて真空容器1内へのジクロロシランガスの供給を開始すると共に、アンテナ83への給電電力を5000Wに増加させる。回転テーブル2により第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを交互に通過している各ウエハWの表面には、第1の処理領域P1にてジクロロシランガスの成分が吸着する。次いで、ジクロロシランガスの成分が表面に吸着したウエハWが第2の処理領域P2に到達すると、
図9に示すように、前記成分がアンモニアガスのプラズマ(活性種)により窒化されて、薄膜の一部をなす反応生成物である窒化シリコン膜が第1の膜302として形成される。
【0044】
この第1の膜302は、回転テーブル2の回転数を30rpm程度の比較的速い速度に設定していることから、それ程緻密化しない。即ち、詳述したように、回転テーブル2上のウエハWは、第2の処理領域P2を速やかに通過するので、当該第2の処理領域P2における滞留時間が極僅かであり、従ってアンモニアガスのプラズマによってそれ程強く窒化されない。従って、
図10に模式的に示すように、第1の膜302は、いわば窒化シリコン分子が疎に配置された構成を採る。そのため、この第1の膜302は、下層側のウエハW(詳しくは窒化層301)に対して、それ程大きな応力差が生じない。尚、
図10では、既述の窒化層301の描画を省略している。後述の
図11も同様である。
【0045】
即ち、既述のように、緻密な窒化シリコン膜をウエハWの表面に形成しようとすると、当該窒化シリコン膜の内部応力によってウエハWから膜剥がれを起こしやすい。しかしながら、第1の膜302のように窒化シリコン分子が疎に分散していると、当該第1の膜302の内部に応力が生じようとしても、それ程大きな応力が発生しないし、また第1の膜302では前記窒化シリコン分子が動きやすくなっており、従って応力が緩和されやすい。そのため、この第1の膜302は、下層側のウエハWに対して、良好な密着性で密着する。こうしてジクロロシランガスの成分の吸着処理と、当該成分の窒化処理と、からなる成膜ステップを設定回数分だけ繰り返すと、例えば5nm程度の膜厚となるように前記第1の膜302が積層される。この第1の膜302の成膜工程は、第1の工程をなす。また、第1の膜302は、応力緩和層をなす。
【0046】
その後、時刻t4において、回転テーブル2の回転数を10rpmもの低速に下げて、同様に成膜ステップを多数回に亘って各ウエハWに対して行う。このように回転テーブル2の回転数を低速度に設定していることから、各ウエハWは、既述の第1の工程と比べて、第2の処理領域P2における滞留時間が長くなり、従ってアンモニアガスのプラズマ(活性種)の供給量が多くなる。言い換えると、回転テーブル2の回転数を低速に設定して成膜を行う工程を「第2の工程」と呼ぶと、この第2の工程の各成膜ステップにて各ウエハWに供給されるアンモニアガスの活性種の量は、第1の工程における各々の成膜ステップにて各ウエハWに供給されるアンモニアガスの活性種の量よりも多くなる。そのため、単位膜厚当たりに供給される活性種の量は、第1の工程よりも第2の工程の方が多い。即ち、第2の工程にて成膜される第2の膜303におけるある任意の膜厚を見た時、当該任意の膜厚全体に供給された活性種の量は、この任意の膜厚と同じ膜厚の第1の膜302に供給された活性種の量よりも多くなる。
【0047】
従って、この第2の工程にて成膜される窒化シリコン膜は、
図11に示すように、下層側の第1の膜302よりも密度の高い第2の膜(緻密層)303となる。この第2の膜303は、シリコン層との間における応力差が極めて大きい。しかしながら、この第2の膜303とウエハWとの間に、第1の膜302を介在させていることから、この第1の膜302によって第2の膜303とウエハWとの間の応力差が緩和されて、当該第2の膜303の膜剥がれが抑制される。こうして成膜ステップを繰り返すことにより、
図12に示すように、これら第1の膜302と第2の膜303とによって薄膜が形成される。第2の膜303の膜厚寸法は、例えば15nm〜50nmとなる。従って、薄膜の膜厚全体(第1の膜302と第2の膜303との合計の膜厚)に対する第1の膜302の膜厚寸法の占める割合は、10%〜25%となる。
【0048】
上述の実施の形態によれば、ジクロロシランガスとアンモニアガスのプラズマとをウエハWに交互に供給する成膜ステップを多数回に亘って行って窒化シリコン膜からなる薄膜を形成するにあたって、当該薄膜について、下層側の第1の膜302と上層側の第2の膜303とにより構成している。そして、第1の膜302を形成する時の成膜ステップにてウエハWに供給される活性種の量について、第2の膜303を形成する時の成膜ステップにてウエハWに供給される活性種の量よりも小さくしている。そのため、良好な密度を持つと共に内部の応力がウエハWとは大きく異なる第2の膜303を成膜しても、第1の膜302によってこれら第2の膜303とウエハWとの間の応力差を緩和できる。そのため、薄膜の膜剥がれを抑制しながら、良好な密度を持つ第2の膜303をウエハWの露出面(最表面)に形成できる。
【0049】
また、第1の工程では第2の工程よりも高速で回転テーブル2を回転させているので、この第1の工程の成膜速度が第2の工程よりも速い。従って、成膜初期から成膜終了時まで第2の工程と同程度の回転数で回転テーブル2を回転させる場合と比べて、薄膜を速やかに成膜出来る。
図13は、従来の1段階だけの成膜処理で任意の膜厚の薄膜を成膜した場合におけるガス流量やプラズマ電力などの時系列データを示しており、既述の
図6と比べると、本発明よりも薄膜の成膜処理に要する時間が長くなっている。
そして、以上説明した窒化シリコン膜は、最表面に第2の膜303が形成されていることから、例えばフッ酸への耐エッチング性が要求されるデバイス、例えば当該窒化シリコン膜をエッチングストップ膜として利用する場合に良好に適用できる。即ち、第2の膜303よりも密度の低い第1の膜302が薄膜の下層側に形成されていても、この第1の膜302が薄膜の表面には露出していないので、しかも当該第1の膜302の膜厚寸法が薄膜全体の膜厚寸法に比べて極めて小さいので、本発明の手法により得られた薄膜は、エッチングストップ膜として良好に機能できる。
【0050】
以上のように上述実施の形態では、応力緩和層である第1の膜302を成膜するときのプラズマ処理は、緻密層である第2の膜303を成膜するときのプラズマ処理に比べて、ALDの1サイクル時におけるウエハWに対する活性種の供給量が少ない状態で行われる。即ち上述の実施の形態は、第1の膜302を成膜するときの回転テーブル2の回転数を、第2の膜303を成膜するときの回転数よりも高くすることにより、ALDの1サイクル時におけるウエハWに対する活性種の供給量が少ない状態を作り出している。
【0051】
しかしALDの1サイクル時におけるウエハWに対する活性種の供給量の調整(制御パラメータの調整値)は、回転テーブル2の回転数を調整することに限られるものではない。活性種の供給量の調整パラメータとしては、プラズマが発生している領域の圧力(真空度)、アンモニアガスの流量、プラズマを発生させるアンテナ83とウエハWとの離間距離、アンテナ83に対する供給電力、及びH2(水素)ガスの添加などを挙げることができる。
この場合、第2の膜303の成膜時に対して、第1の膜302の成膜時における前記活性種の供給量を小さくするためには、圧力を高くする、アンモニアガスの流量を少なくする、前記離間距離を大きくする、前記供給電力を小さくする、水素ガスの添加量を少なくするという調整を挙げることができ、これらの調整の複数を組み合わせてもよい。
【0052】
具体的には、水素ガスの添加量を増やす事により、後述の
図28から分かるように、薄膜内のストレスは縮退方向(Compressive)へ向かう。即ち、窒化シリコン膜を成膜するための第1の処理ガスである既述のDCSガスには、塩素(Cl)元素が含まれている。そのため、このDCSガスを窒化シリコン膜の成膜に用いると、当該窒化シリコン膜には塩素成分が不純物として取り込まれてしまう可能性がある。そのため、第2の処理ガスに水素ガスを添加すると、薄膜中に含まれる塩素成分が水素ガスの活性種の働きによって脱離してより純粋な(緻密な)窒化膜になる。
【0053】
また、以上説明した本発明の成膜方法を実施するための装置としては、既述のミニバッチ式の装置に代えて、枚葉装置を用いても良いし、あるいは多数枚のウエハWに対して一括して成膜を行うバッチ式の装置を用いても良い。
図14及び
図15は、このような装置のうちバッチ式の縦型熱処理装置を示しており、反応管401の内部には多数のウエハWを棚状に積載するウエハボート402が下方側から気密に収納されている。
【0054】
反応管401の内部には、ウエハボート402を介して対向するように、2本のガスインジェクター403、404が当該反応管401の長さ方向に亘って配置されている。第2の処理ガスであるアンモニアガスを供給するためのガスインジェクター404とウエハボート402との間には、アンモニアガスをプラズマ化するための一対の電極405、405が配置されている。
【0055】
この縦型熱処理装置では、ガスインジェクター403から各ウエハWに対してジクロロシランガスを供給した後、反応管401の上端部に設けられた排気口406から反応管401の雰囲気を排気して、次いでアンモニアガスのプラズマを各ウエハWに供給して、既述の成膜ステップが行われる。この例についても、第1の膜302を形成する時にウエハWに供給されるアンモニアガスの活性種の量は、第2の膜303を形成する時にウエハWに供給されるアンモニアガスの活性種の量よりも小さく設定される。
図14中410はウエハボート402を鉛直軸周りに回転させるためのモータ、411は真空ポンプである。
【0056】
また、以上の各例において、第2の処理領域P2における回転テーブル2の回転方向下流側の位置であって、且つ第1の処理領域P1における回転テーブル2の回転方向上流側の位置に、反応生成物のプラズマ改質処理を行う改質領域を設けても良い。即ち、既述のプラズマ処理部80(アンテナ83)や筐体90などの部材について、搬送口15から見て回転テーブル2の回転方向上流側の位置にも別途設けると共に、当該回転方向上流側の位置にて既述のアンモニアガスの活性種の供給処理を行う。
【0057】
そして、搬送口15から見て回転テーブル2の回転方向下流側におけるプラズマ処理部80において、既述のプラズマ改質処理を行う。即ち、プラズマ改質処理は、アルゴンガスなどのプラズマ発生用ガス、あるいは当該プラズマ発生用ガス及び第2の処理ガス(アンモニアガス)をプラズマ化すると共に、このプラズマ化によって得られたプラズマ(活性種)をウエハWに供給することにより行われる。このプラズマ改質処理にてウエハWに供給されるプラズマは、薄膜の品質に関与する活性種に相当する。従って、ウエハWの表面に薄膜を成膜する時に、当該薄膜の品質に関与する活性種とは、第2の処理ガスのプラズマ化により得られた活性種と、薄膜(反応生成物)の改質を行う時にウエハWに供給されるプラズマ発生用ガスのプラズマ化によって得られた活性種と、の少なくとも一方である。
【0058】
以上説明した薄膜としては、窒化チタン(TiN)膜などの窒化膜であっても良いし、あるいはシリコン酸化膜(SiO2膜)であっても良い。シリコン酸化膜を成膜する時は、第2の処理領域P2では、酸素(O2)ガスやオゾン(O3)ガスなどのプラズマ(活性種)がウエハWに供給される。このようなシリコン酸化膜を成膜する時に既述のプラズマ改質処理を行う場合には、第2の処理ガス(オゾンガス)の活性種を生成させる手法としては、アンテナ83によるプラズマ化の手法に代えて、オゾナイザーを用いてオゾンガスを発生させる手法を採っても良い。
【0059】
更に、ウエハW上に薄膜を成膜する手法としては、ALD法に代えて、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いても良い。即ち、既述の第1の処理ガスと、第2の処理ガスのプラズマ化によって得られたプラズマとをウエハWに対して同時に供給して、薄膜を成膜しても良い。この場合であっても、第1の膜302を成膜する時にウエハWに供給される活性種の単位膜厚当たりの量は、第2の膜303を成膜する時にウエハWに供給される活性種の単位膜厚当たりの量よりも少なくなるように制御パラメータの調整値が調整される。
【0060】
CVD法を用いる場合には、タングステン(W)系の膜などの金属膜を成膜しても良い。このような金属膜を成膜する時は、第2の処理ガスとして例えば水素(H2)ガスやシラン(Si―H系化合物)ガスが用いられ、このガスがプラズマ化される。
また、薄膜を成膜する下地層としては、シリコンからなるウエハWに代えて、当該ウエハWの表面に形成した前記窒化膜、金属膜あるいはシリコン酸化膜などであっても良い。
【実施例】
【0061】
次いで、本発明にて得られた実施例について説明する。初めに、従来の1段階の成膜処理にて緻密な窒化シリコン膜を成膜した時の様子を
図16及び
図17に示す。ウエハWの表面には、直径寸法が数十μm程度の概略円状の膜剥がれが多数箇所に発生しており、この膜剥がれは、水平方向に膜収縮しようとする圧縮性の応力が窒化シリコン膜の内部に発生し、この応力が窒化シリコン膜とウエハWとの間の密着力よりも大きくなったことが原因で発生したものと考えられる。
【0062】
そこで、ウエハWに供給されるアンモニアガスの活性種の量を種々変えた時に、このような膜剥がれがどのように変化するか実験を行った。具体的には、回転テーブル2上のウエハWと、筐体90の下面(詳しくはアンテナ83の下方位置における筐体90の下面)と、の間の離間寸法を種々変えた時に、ウエハWの表面に発生する膜剥がれの分布を観察した。尚、前記離間寸法以外の成膜条件については、各例にて共通の条件に設定した。
【0063】
その結果、
図18に示すように、前記離間寸法が30mmとなるまで筐体90を回転テーブル2に近接させると、膜剥がれが発生していた。一方、この時の薄膜の膜厚の均一性は、
図19に示すように、前記離間寸法が小さい程、良好な結果となっていた。この理由としては、ウエハWに筐体90を近接させると、当該ウエハWに接触するプラズマ領域が広くなり、面内に亘って良好なプラズマ処理が行われるためだと考えられる。従って、筐体90の高さ位置により、ウエハWに供給されるアンモニアガスの活性種の量を調整できることが分かった。薄膜の膜厚については、前記離間寸法を45mm以下に設定した場合には、前記離間寸法が90mmの場合と比べて良好な結果となっていた。尚、
図18では、ウエハWの表面において膜剥がれが発生した部位に灰色の着色を付しており、膜剥がれの発生量に応じて前記着色を濃くしている。後述の
図20も同様である。
【0064】
そこで、
図18にて膜剥がれが生じなかった条件のうち、できるだけアンモニアガスの活性種の供給量が多い条件(前記離間寸法:37.5mm)において、真空容器1内の真空度を高くすると共に、アンテナ83への給電電力を大きくしたところ、
図20のように、膜剥がれが発生していた。従って、ウエハWに供給されるアンモニアガスの活性種の供給量が多くなる程、窒化シリコン膜の膜剥がれが発生しやすくなることが分かった。
【0065】
この時、
図20の条件にて薄膜の成膜処理を行う前に、当該薄膜の下層側に既述の第1の膜302を形成したところ、
図21に示すように、膜剥がれが見られなかった。また、膜厚の均一性についても改善されていた。従って、既述の2段階の成膜シーケンスを経ることにより、膜剥がれの発生及び膜厚の均一性のいずれについても良好な結果が得られることが分かった。
図22は、既述の離間寸法(筐体90と回転テーブル2との間の寸法:ギャップ)を種々変えて窒化シリコン膜を成膜した時、当該窒化シリコン膜の内部における応力が圧縮性になっているか、引っ張り性になっているかを測定した結果を示している。その結果、ギャップによって窒化シリコン膜内部の応力の性状が変わることが分かった。この結果から、薄膜内に圧縮性の応力が発生することによって、既述の膜剥がれの発生に繋がっていることが分かる。
【0066】
また、
図23は、以下の条件11、12、13にて窒化シリコン膜を成膜した時の応力を示している。
(条件11)
第2の処理ガス:アンモニアガス(3.5slm)
高周波電力:4.5kW
回転テーブル2の回転数:10rpm
(条件12)
第2の処理ガス:アンモニアガス(7slm)、アルゴンガス(1slm)
高周波電力:5kW
回転テーブル2の回転数:10rpm
(条件13)
第2の処理ガス:アンモニアガス(3.5slm)
高周波電力:4.5kW
回転テーブル2の回転数:5rpm
【0067】
これら結果から、プラズマ発生用のガス(第2の処理ガス)の成分、第2の処理ガスの流量、回転テーブル2の回転数及びプラズマ発生用の高周波電力に応じて、窒化シリコン膜内の応力が変化することが分かった。
【0068】
図24は、以下の条件21、22、23にて成膜した時における窒化シリコン膜内の応力を測定した結果を示している。
(条件21:1段階の成膜処理)
第2の処理ガス:アンモニアガス(5slm)
高周波電力:4.5kW
回転テーブル2の回転数:10rpm
(条件22:2段階の成膜処理)
第2の処理ガス:アンモニアガス(8slm)
高周波電力:5kW
回転テーブル2の回転数:30rpm(1段階目)→10rpm(2段階目)
(条件23:1段階の成膜処理)
第2の処理ガス:アンモニアガス(8slm)
高周波電力:5kW
回転テーブル2の回転数:10rpm
【0069】
この方式により、1段目を30rpmに設定して疎な膜を形成した後、2段目で回転テーブル2の回転数を低速回転に変更することでアンモニアガスの吸着確率が上がり、緻密な薄膜(第2の膜303)の成膜が可能になる。これらの結果からも、第2のガスの流量及び高周波電力により窒化シリコン膜内部の応力が変化すると共に、上層側の窒化シリコン膜とウエハWとの間に別の窒化シリコン膜(第1の膜302)を介在させることによって同様に膜内の応力が変化していた。そのため、別の言い方をすると、これら回転テーブル2の回転数、第2のガスの流量及び高周波電力を夫々適宜設定することにより、ある任意のストレス(応力)を持つ薄膜(第1の膜302や第2の膜303)を成膜できる。
【0070】
図25は、ウエハWの加熱温度について、400℃(条件31、32)及び450℃(条件33、34)に設定すると共に、窒化シリコン膜の膜厚を50nm(条件31、条件33)及び25nm(条件32、条件34)に設定した時に当該膜内に生じる応力を測定した結果を示している。ウエハWの加熱温度及び窒化シリコン膜の膜厚についても、同様に応力を変える要因になっていることが分かった。
【0071】
図26は、窒化シリコン膜の膜厚を25nmに固定した時、ウエハWの加熱温度が窒化シリコン膜内の応力に与える影響を調べた結果を示している。具体的には、前記加熱温度について、条件41から条件46に向かって、200℃から50℃ずつ高くしている。この
図26においても、
図25と同様の結果が得られた。
【0072】
図27は、窒化シリコン膜の成膜温度と、当該窒化シリコン膜のフッ酸に対するウエットエッチングレートと、の相関を示した結果を示している。成膜処理には、
図1に示したセミバッチ式の装置と、
図14に示したバッチ式の縦型熱処理装置と、を用いて夫々ALD法により成膜を行った結果を示している。
図1のセミバッチ装置では、成膜温度が400℃もの低温でも、縦型熱処理装置において550℃で得られた特性と同レベルの窒化シリコン膜が得られることが分かった。また、いずれの装置においても、成膜温度が高くなる程、ウエットエッチングレートが低くなり、従って窒化シリコン膜の緻密化が進行していることが分かった。
【0073】
そのため、第2の膜303を成膜する時、第1の膜302を成膜する時よりも成膜温度を高くすることにより、第2の膜303が第1の膜302よりも緻密になるので、言い換えると第2の膜303の下層側に当該第2の膜303よりも軟質な応力緩和層を形成できるので、既述の例と同じ効果が得られる。このように薄膜の成膜途中で成膜温度を上げる場合には、例えば成膜初期(第1の膜302を成膜する時)には例えば200℃にて成膜処理を行う。次いで、第1の膜302の膜厚に相当する分だけ成膜が進行した後、成膜温度を例えば400℃まで高くして、第2の膜303の成膜を行う。
【0074】
図28は、以下の各条件において窒化シリコン膜を成膜した場合に、当該窒化シリコン膜に残存する応力を測定した結果を示している。尚、処理圧力及びアンテナ83への供給電力としては、各条件51〜53のいずれの例についても夫々93.3Pa(0.7Torr)及び5000Wに設定した。また、筐体90と回転テーブル2との間の離間距離については各々30mmに設定した。
(条件51)
第2の処理ガス:アンモニア/水素=5000sccm/0sccmm)
(条件52)
第2の処理ガス:アンモニア/水素=5000sccm/600sccmm)
(条件53)
第2の処理ガス:アンモニア/水素=300sccm/600sccmm)
【0075】
その結果、既述のように、水素ガスの添加量(第2の処理ガス全体に含まれる水素ガスの割合)を増やす程、窒化シリコン膜が緻密化しており、従って水素ガスの添加量(水素ガスの活性種の量)によっても薄膜の緻密さを調整できることが分かる。水素ガスの添加によって既述の第1の膜302及び第2の膜303の緻密さを調整する場合には、具体的には以下の手法が採られる。即ち、第1の膜302を成膜する時には、第2の処理ガスとして例えば水素ガスを使用せずに、アンモニアガスだけを用いる。そして、第2の膜303を成膜する時には、水素ガスを添加したアンモニアガスを第2の処理ガスとして用いる。言い換えると、第2の膜303を成膜する時に用いる第2の処理ガスには、第1の膜302を成膜する時に用いる第2の処理ガスと比べて、水素ガスの添加量(第2の処理ガスに占める水素ガスの添加割合)を多くすることにより、既述の各例と同様の効果が得られる。尚、
図28などにおける実験結果は、各々の条件において得られたものであり、処理圧力やガス流量などのパラメータを適宜変更した場合には、種々異なる結果が得られることは当然である。