(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)(1)フェノール性水酸基の一部が酸によって脱離可能な保護基によって保護されている、下記一般式(1)で表され、重量平均分子量が1,000〜500,000である高分子化合物と、(2)光酸発生剤と、(3)有機溶剤とを含む光パターン形成性膜形成用組成物を用い、1〜30μmの膜厚を持つ光パターン形成性犠牲膜として基板に塗布する工程、
(B)光パターン形成性膜形成用組成物を塗布した基板を加熱する工程、
(C)上記光パターン形成性犠牲膜に第1の高エネルギー線を用いて、パターンレイアウトイメージに沿った照射を行う工程、
(D)アルカリ性現像液による現像で犠牲膜パターンを形成する工程、
(E)得られた犠牲膜パターンに第2の高エネルギー線として紫外線の照射を行う工程、
(F)基板を100〜250℃で加熱する工程
を含み、(C)工程における第1の高エネルギー線の照射量が250mJ/cm
2以下であり、(F)工程後の基板と犠牲膜との側壁角度が80°以上90°以下を保持していることを特徴とするマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法。
【化1】
[式中、R
1、R
3は水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状アルキル基、ハロゲン原子、又はトリフルオロメチル基を表し、R
2はヒドロキシ基、ハロゲン原子、又はトリフルオロメチル基を表し、R
2'は炭素数1〜4の置換可アルキル基、ジトリフルオロメチルヒドロキシ基、又は−OR基を表し、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、又はトリアルキルシリル基を表す。R
4は水素原子、炭素数1〜4
のアルキル基、ジトリフルオロメチルヒドロキシ基、又は−OR基を表し、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、又はトリアルキルシリル基を表す。R
5は水素原子又はメチル基を表し、R
6は水素原子、メチル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、又はトリフルオロメチル基を表し、R
7は炭素数4〜30のアルキル基を表す。また、nは1〜4の整数であり、mは
1〜5の整数である。また、p
は正数であり、q、r、sは0又は正数であるが、q+rは正数であり、少なくともqが正数の場合はR
2'が、rが正数の場合はR
4が、q、rの両者が正数の場合はR
2'とR
4の少なくとも一方が、フェノール性水酸基の水素原子の一部が酸によって脱離可能な保護基で置換されたOR基である。なお、p+q+r+s=1である。]
(F)工程における加熱する工程で、2水準以上の保持温度を有し、少なくとも最も低温側の保持温度と最も高温側の保持温度の温度差が、50℃以上の差である加熱工程である請求項1〜6のいずれか1項記載のマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、MEMS製造時の重要工程である犠牲層エッチング法において、高精度の微細構造の形成が可能であると共に、高温でのシリコン系材料やメタルの成膜に最適なパターン形状を有し、高解像、高感度で、かつ、耐熱性の高い犠牲膜パターンを形成することができる、マイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法及びマイクロ構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、フェノール性水酸基の一部が酸によって脱離可能な保護基によって保護されている高分子化合物と光酸発生剤とを含有する光パターン形成性膜形成用組成物を用い、以下の工程でマイクロ構造体用樹脂構造体及びマイクロ構造体を製造することが、上記目的の達成に有効であることを知見したものである。
【0007】
従って、本発明は、下記のマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法及びマイクロ構造体の製造方法を提供する。
〔1〕 (A)(1)フェノール性水酸基の一部が酸によって脱離可能な保護基によって保護されている、下記一般式(1)で表され、重量平均分子量が1,000〜500,000である高分子化合物と、(2)光酸発生剤と、(3)有機溶剤とを含む光パターン形成性膜形成用組成物を用い、1〜30μmの膜厚を持つ光パターン形成性犠牲膜として基板に塗布する工程、
(B)光パターン形成性膜形成用組成物を塗布した基板を加熱する工程、
(C)上記光パターン形成性犠牲膜に第1の高エネルギー線を用いて、パターンレイアウトイメージに沿った照射を行う工程、
(D)アルカリ性現像液による現像で犠牲膜パターンを形成する工程、
(E)得られた犠牲膜パターンに第2の高エネルギー線として紫外線の照射を行う工程、
(F)基板を100〜250℃で加熱する工程
を含み、(C)工程における第1の高エネルギー線の照射量が250mJ/cm
2以下であり、(F)工程後の基板と犠牲膜との側壁角度が80°以上90°以下を保持していることを特徴とするマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法。
【化1】
[式中、R
1、R
3は水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状アルキル基、ハロゲン原子、又はトリフルオロメチル基を表し、R
2はヒドロキシ基、ハロゲン原子、又はトリフルオロメチル基を表し、R
2'は炭素数1〜4の置換可アルキル基、ジトリフルオロメチルヒドロキシ基、又は−OR基を表し、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、又はトリアルキルシリル基を表す。R
4は水素原子、炭素数1〜4
のアルキル基、ジトリフルオロメチルヒドロキシ基、又は−OR基を表し、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、又はトリアルキルシリル基を表す。R
5は水素原子又はメチル基を表し、R
6は水素原子、メチル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、又はトリフルオロメチル基を表し、R
7は炭素数4〜30のアルキル基を表す。また、nは1〜4の整数であり、mは
1〜5の整数である。また、p
は正数であり、q、r、sは0又は正数であるが、q+rは正数であり、少なくともqが正数の場合はR
2'が、rが正数の場合はR
4が、q、rの両者が正数の場合はR
2'とR
4の少なくとも一方が、フェノール性水酸基の水素原子の一部が酸によって脱離可能な保護基で置換されたOR基である。なお、p+q+r+s=1である。]
〔2〕 式(1)で表される高分子化合物が、下記式で表されるポリマーから選ばれるものである〔1〕記載のマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法。
【化19】
【化20】
(式中、R1〜R7、m、nは上記の通りである。)
〔
3〕 (C)工程の照射量を150mJ/cm
2以下にする〔1〕記載のマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法。
〔
4〕 側壁角度が85°以上90°以下である〔1〕記載のマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法。
〔
5〕 (A)工程におけるパターン形成性膜形成用組成物中に、(4)塩基性化合物を含む〔
4〕記載のマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法。
〔
6〕 (C)工程における第1の高エネルギー線が、200〜450nmの波長の紫外線である〔1〕〜〔
5〕のいずれかに記載のマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法。
〔
7〕 (F)工程における加熱する工程で、2水準以上の保持温度を有し、少なくとも最も低温側の保持温度と最も高温側の保持温度の温度差が、50℃以上の差である加熱工程である〔1〕〜〔
6〕のいずれかに記載のマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法。
〔
8〕 〔1〕〜〔
7〕のいずれかに記載の樹脂構造体に無機材料膜を形成し、残存する犠牲膜を除去し、空隙部を形成させることを特徴とするマイクロ構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法により、高感度に微細構造のパターンを形成し、かつ、耐熱性の高い犠牲層パターンを作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、表面マイクロマシニングによるMEMS製造に有利に使用しうるマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法及びマイクロ構造体の製造方法に関する。
【0010】
本発明のマイクロ構造体の製造に使用される樹脂構造体は、基板に犠牲膜を形成させたものであり、まず、犠牲膜組成物に用いられる化学増幅ポジ型レジスト材料(光パターン形成性膜形成用組成物)について説明する。それは、少なくとも(1)フェノール性水酸基の一部が酸によって脱離可能な保護基(酸不安定基)によって保護されている高分子化合物と、(2)光酸発生剤と、(3)有機溶剤とを含む。
【0011】
具体的には、上記化学増幅ポジ型レジスト材料におけるフェノール性水酸基の一部が酸によって脱離可能な保護基によって保護されている高分子化合物であれば、特に制限はないが、好ましくは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が1,000〜500,000である高分子化合物を用いる。
【0012】
【化2】
[式中、R
1、R
3は水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状アルキル基、ハロゲン原子、又はトリフルオロメチル基を表し、R
2はヒドロキシ基、ハロゲン原子、又はトリフルオロメチル基を表し、R
2'は炭素数1〜4の置換可アルキル基、ジトリフルオロメチルヒドロキシ基、又は−OR基を表し、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、又はトリアルキルシリル基を表す(なお、ヘテロ原子としては酸素原子等が挙げられる)。R
4は水素原子、炭素数1〜4の置換可アルキル基、ジトリフルオロメチルヒドロキシ基、又は−OR基を表し、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、又はトリアルキルシリル基を表す(なお、ヘテロ原子としては酸素原子等が挙げられる)。R
5は水素原子又はメチル基を表し、R
6は水素原子、メチル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、又はトリフルオロメチル基を表し、R
7は炭素数4〜30のアルキル基を表す。また、nは1〜4の整数であり、mは0〜5の整数である。また、p、q、r、sは0又は正数であるが、q+rは正数であり、少なくともqが正数の場合はR
2'が、rが正数の場合はR
4が、q、rの両者が正数の場合はR
2'とR
4の少なくとも一方が、フェノール性水酸基の水素原子の一部が酸によって脱離可能な保護基(酸不安定基)で置換されたOR基である。なお、p+q+r+s=1である。]
【0013】
上記R
1、R
2、R
3、R
5、R
6としては、これらがハロゲン原子を示す場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0014】
上記R
2'とR
4において、直鎖状、分岐状のアルキル基の場合、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。更に、−OR基が酸不安定基の機能を示す場合、種々選定されるが、特に下記式(2)、(3)で示される基、炭素数4〜20の直鎖状、分岐状又は環状の三級アルコキシ基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシロキシ基、炭素数4〜20のオキソアルコキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、テトラヒドロフラニルオキシ基又はトリアルキルシロキシ基であることが好ましい。
【0015】
【化3】
[式中、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12は各々独立して水素原子、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐状の炭素数1〜8のアルキル基を示し、R
10は炭素数1〜18の酸素原子を介在してもよい1価の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。更に、R
8とR
9、R
8とR
10、R
9とR
10は互いに結合して、これらが結合する炭素原子又は炭素原子と酸素原子が共に環を形成してもよく、環を形成する場合は環の形成に関与するR
8、R
9、R
10はそれぞれ炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R
13は炭素数4〜40の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。また、aは0又は1〜4の整数である。]
【0016】
ここで、上記式(2)で示される酸不安定基として、例えばメトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、n−プロポキシエトキシ基、iso−プロポキシエトキシ基、n−ブトキシエトキシ基、iso−ブトキシエトキシ基、tert−ブトキシエトキシ基、シクロヘキシロキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、エトキシプロポキシ基、1−メトキシ−1−メチル−エトキシ基、1−エトキシ−1−メチル−エトキシ基等が挙げられる。一方、上記式(3)で示される酸不安定基として、例えばtert−ブトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルメチルオキシ基、エチルシクロペンチルカルボニルオキシ基、エチルシクロヘキシルカルボニルオキシ基、メチルシクロペンチルカルボニルオキシ基が挙げられる。また、上記トリアルキルシロキシ基としては、トリメチルシロキシ基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
【0017】
上記R
7のアルキル基が三級アルキル基の場合、種々選定されるが、特に下記一般式(4)、(5)で示される基が特に好ましい。
【化4】
(但し、式中R
14は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ビニル基、アセチル基、フェニル基、ベンジル基又はシアノ基であり、bは0〜3の整数である。)
【0018】
【化5】
(但し、式中R
15は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基又はシアノ基である。)
【0019】
一般式(4)の環状アルキル基としては、5員環がより好ましい。具体例としては、1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−ビニルシクロペンチル、1−アセチルシクロペンチル、1−フェニルシクロペンチル、1−シアノシクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、1−イソプロピルシクロヘキシル、1−ビニルシクロヘキシル、1−アセチルシクロヘキシル、1−フェニルシクロヘキシル、1−シアノシクロヘキシル等が挙げられる。
【0020】
一般式(5)の具体例としては、t−ブチル基、1−ビニルメチルエチル基、1−ベンジルメチルエチル基、1−フェニルメチルエチル基、1−シアノメチルエチル基等が挙げられる。
【0021】
また、繰り返し単位sとして以下に例示する繰り返し単位も好ましく、この繰り返し単位において三級エステルとなるアルキル基もR
7として好ましい。
【0023】
更に、本発明の化学増幅ポジ型レジスト材料の特性を考慮すると、上記式(1)において、nは0又は1〜4の整数であり、mは0又は1〜5の整数である。そして、p、q、r、sは0又は正数であるが、少なくともpとqのいずれか一方は正数である。なお、0≦p≦0.8であることが好ましく、特に0.3≦p≦0.8であることが好ましい。0≦q≦0.5、0≦r≦0.5、0≦s≦0.35であることが好ましいが、少なくともq、rの一方は正数である(即ち、0<q≦0.5及び/又は0<r≦0.5)。特に、0≦q≦0.3、0≦r≦0.3であることが好ましく、この場合も少なくともq、rの一方が正数である(即ち、0<q≦0.3及び/又は0<r≦0.3)。なお、上記式(1)の高分子化合物がq単位及び/又はr単位を必ず含む構造であれば、アルカリ溶解速度のコントラストが大きく、高解像度となる。そして、0<p≦0.8であれば、未露光部のアルカリ溶解速度が適度に保たれ、解像度を低下させる懸念がない。また、p、q、r、sはその値を上記範囲内で適宜選定することにより、パターンの寸法制御、パターンの形状コントロールを任意に行うことができる。
【0024】
上記式(1)で示されるポリマーとしては、下記二成分系のポリマー[(1)−1]、[(1)−2]、三成分系のポリマー[(1)−3]、[(1)−4]、[(1)−5]、[(1)−6]、四成分系のポリマー[(1)−7]が好適に用いられる。なお、下記式において、R
1〜R
7、m、nは上記の通りである。
【0025】
【化7】
(0.5≦p≦0.8、0.2≦q≦0.5、p+q=1)
【0026】
【化8】
(0.5≦p≦0.8、0.2≦r≦0.5、p+r=1)
【0027】
【化9】
(0.4≦p≦0.8、0<q≦0.5、0<s≦0.3、p+q+s=1)
【0028】
【化10】
(0.4≦p≦0.8、0<r≦0.5、0<s≦0.3、p+r+s=1)
【0029】
【化11】
(0.4≦p≦0.8、0<q≦0.5、0.1≦r≦0.5、p+q+r=1)
【0030】
【化12】
(0<q≦0.5、0.2≦r<0.5、0<s≦0.3、q+r+s=1)
【0031】
【化13】
(0.3≦p≦0.8、0<q≦0.5、0.1≦r≦0.5、0<s≦0.3、p+q+r+s=1)
【0032】
上記高分子化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量は、レジストパターンの形成とその耐熱性の観点から、1,000〜500,000、好ましくは2,000〜30,000である。
【0033】
更に、上記高分子化合物においては、上記式(1)の多成分共重合体の分子量分布が広い、つまり分子量分布Mw/Mnの値が大きい場合、低分子量や高分子量の高分子化合物が存在するために、露光後にレジストパターン上に異物が見られたり、レジストパターンの形状が悪化したりする。それ故、パターンルールが微細化するに従って、このような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられる化学増幅ポジ型レジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜3.0、特に1.0〜2.0と狭分散であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0034】
また、上記高分子化合物について、更にフェノール性水酸基部分に対して、一般式(2)、一般式(3)で示される酸不安定基を導入することも可能である。例えば、高分子化合物のフェノール性水酸基を、ハロゲン化アルキルエーテル化合物を用いて、塩基の存在下、上記高分子化合物と反応させることにより、部分的にフェノール性水酸基がアルコキシアルキル基で保護された高分子化合物を得ることも可能である。
【0035】
更に、上記高分子化合物について、本発明に悪影響を与えない範囲で不飽和結合を有する重合可能なモノマー単位を共重合しても構わない。
【0036】
本発明で用いられる化学増幅ポジ型レジスト材料における光酸発生剤としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド型光酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0037】
スルホニウム塩はスルホニウムカチオンとスルホネートの塩である。スルホニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル2−ナフチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム等が挙げられ、スルホネートとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4−(4−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられ、これらの組み合わせのスルホニウム塩が挙げられる。
【0038】
ヨードニウム塩はヨードニウムカチオンとスルホネートの塩である。ヨードニウムカチオンとしては、例えば、ジフェニルヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、4−tert−ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム等のアリールヨードニウムカチオンが挙げられ、スルホネートとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4−(4−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられ、これらの組み合わせのヨードニウム塩が挙げられる。
【0039】
スルホニルジアゾメタンとしては、例えば、ビス(エチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2−メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(パーフルオロイソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2−ナフチルスルホニル)ジアゾメタン、4−メチルフェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、tert−ブチルカルボニル−4−メチルフェニルスルホニルジアゾメタン、2−ナフチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、4−メチルフェニルスルホニル−2−ナフトイルジアゾメタン、メチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、tert−ブトキシカルボニル−4−メチルフェニルスルホニルジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタンとスルホニルカルボニルジアゾメタンが挙げられる。
【0040】
N−スルホニルオキシイミド型光酸発生剤としては、例えば、コハク酸イミド、ナフタレンジカルボン酸イミド、フタル酸イミド、シクロヘキシルジカルボン酸イミド、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、7−オキサビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸イミド等のイミド骨格と、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等の組み合わせの化合物が挙げられる。
【0041】
ベンゾインスルホネート型光酸発生剤としては、例えば、ベンゾイントシレート、ベンゾインメシレート、ベンゾインブタンスルホネート等が挙げられる。
【0042】
ピロガロールトリスルホネート型光酸発生剤としては、例えば、ピロガロール、フロログリシン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンのヒドロキシル基の全てを、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等で置換した化合物が挙げられる。
【0043】
ニトロベンジルスルホネート型光酸発生剤としては、例えば、2,4−ジニトロベンジルスルホネート、2−ニトロベンジルスルホネート、2,6−ジニトロベンジルスルホネートが挙げられ、スルホネートとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられる。またベンジル側のニトロ基をトリフルオロメチル基で置き換えた化合物も同様に用いることができる。
【0044】
スルホン型光酸発生剤の例としては、例えば、ビス(フェニルスルホニル)メタン、ビス(4−メチルフェニルスルホニル)メタン、ビス(2−ナフチルスルホニル)メタン、2,2−ビス(フェニルスルホニル)プロパン、2,2−ビス(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン、2,2−ビス(2−ナフチルスルホニル)プロパン、2−メチル−2−(p−トルエンスルホニル)プロピオフェノン、2−(シクロヘキシルカルボニル)−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2,4−ジメチル−2−(p−トルエンスルホニル)ペンタン−3−オン等が挙げられる。
【0045】
グリオキシム誘導体型の光酸発生剤としては、例えば、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(シクロヘキシルスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等が挙げられる。
【0046】
また、上記化学増幅ポジ型レジスト材料に用いられる高分子化合物の酸不安定基の切れ易さ等により、発生する酸の最適なアニオンは異なるが、一般的には揮発性がないもの、極端に拡散性の高くないアニオンが選ばれる。この場合、好適なアニオンは、例えば、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、4−(4−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンである。
【0047】
上記光酸発生剤の中で、第1の高エネルギー線として、水銀ランプのi線、g線、もしくはブロードバンド光を利用する場合には、ナフタルイミジル、スルホニルオキシイミノ等を好適に用いることができる。また、同様に第1の高エネルギー線として、KrFエキシマーレーザーや水銀の254nm線などの300nm以下の短波長の光源を利用する場合には、スルホニルオキシイミノ、ビススルホニルジアゾメタン等を好適に用いることができる。
【0048】
上記光酸発生剤の添加量としては、感度かつ解像度の観点から、化学増幅ポジ型レジスト材料中のベース樹脂固形分100質量部に対して0.05〜15質量部、好ましくは0.1〜10質量部である。上記光酸発生剤は単独又は2種以上混合して用いることができる。更に、露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0049】
本発明で用いられる化学増幅ポジ型レジスト材料における溶剤として、例えば酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸シクロヘキシル、酢酸3−メトキシブチル、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3−エトキシエチルプロピオネート、3−エトキシメチルプロピオネート、3−メトキシメチルプロピオネート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ジアセトンアルコール、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、γブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、テトラメチレンスルホン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいものは、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、乳酸アルキルエステルである。これらの溶剤は単独でも2種以上混合してもよい。好ましい混合溶剤の例はプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートと乳酸アルキルエステルの組み合わせである。なお、本発明におけるプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートのアルキル基は炭素数1〜4のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられるが、特にメチル基、エチル基が好適である。また、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートには1,2置換体と1,3置換体があり、かつ、置換位置の組み合わせによる3種の異性体があるが、単独あるいは混合物のいずれの場合でもよい。また、乳酸アルキルエステルのアルキル基は炭素数1〜4のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられるが、特にメチル基、エチル基が好適である。
【0050】
溶剤として、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート又は乳酸アルキルエステルを単独で添加する際、適正な粘度が保たれるという塗布性の観点及びパーティクル又は異物が発生しないという溶解性の観点から、それぞれ全溶剤量に対して50質量%以上とすることが好ましい。また、溶剤として、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートと乳酸アルキルエステルの混合溶剤を用いる際、その合計量が全溶剤量に対して50質量%以上であることが好ましく、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートを60〜95質量%、乳酸アルキルエステルを5〜40質量%の割合とすることが特に好ましい。
【0051】
上記溶剤の添加量は、化学増幅ポジ型レジスト材料のベース樹脂である高分子化合物固形分100質量部に対して300〜2,000質量部、好ましくは400〜1,000質量部であるが、既存の成膜方法で成膜可能な上記高分子化合物の濃度であれば、これに限定されるものではない。
【0052】
本発明では、必要に応じて、塩基性化合物、架橋剤、界面活性剤、染料、溶解促進剤、密着向上剤、安定化剤など、公知の添加剤を含むことができる。
【0053】
本発明で用いられる化学増幅ポジ型レジスト材料における塩基性化合物は、光酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適する。そして、上記塩基性化合物の添加により、レジスト層中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制し、基板や環境依存性を少なくし、露光条件の余裕度やレジストパターン形状等を向上することができる。
【0054】
このような塩基性化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。
【0055】
具体的には、第一級の脂肪族アミン類として、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が例示され、第二級の脂肪族アミン類として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N−ジメチルメチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルテトラエチレンペンタミン等が例示され、第三級の脂肪族アミン類として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0056】
また、混成アミン類としては、例えば、ジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が例示される。芳香族アミン類及び複素環アミン類の具体例としては、アニリン誘導体(例えば、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等)、ジフェニル(p−トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール誘導体(例えば、ピロール、2H−ピロール、1−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、N−メチルピロール等)、オキサゾール誘導体(例えば、オキサゾール、イソオキサゾール等)、チアゾール誘導体(例えば、チアゾール、イソチアゾール等)、イミダゾール誘導体(例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えば、ピロリン、2−メチル−1−ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えば、ピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えば、ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1−メチル−2−ピリジン、4−ピロリジノピリジン、1−メチル−4−フェニルピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H−インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えば、キノリン、3−キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が例示される。
【0057】
更に、カルボキシル基を有する含窒素化合物としては、例えば、アミノ安息香酸、インドールカルボン酸、アミノ酸誘導体(例えば、ニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、メトキシアラニン等)等が例示され、スルホニル基を有する含窒素化合物として、3−ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム等が例示され、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物としては、2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシユロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド等が例示される。アミド誘導体としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド等が例示される。イミド誘導体としては、フタルイミド、サクシンイミド、マレイミド等が例示される。
【0058】
更に、下記一般式(7)で示される塩基性化合物から選ばれる1種又は2種以上を添加することもできる。
N(X)
n(Y)
3-n (7)
【0059】
式中、n=1、2又は3である。側鎖Xは同一でも異なっていてもよく、下記一般式(8)〜(10)で表すことができる。側鎖Yは同一又は異種の、水素原子もしくは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20のアルキル基を示し、エーテル基もしくはヒドロキシル基を含んでもよい。また、X同士が結合して環を形成してもよい。
ここで、式(8)〜(10)において、R
300、R
302、R
305は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R
301、R
304は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、又はラクトン環を1あるいは複数含んでいてもよい。R
303は単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R
306は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、又はラクトン環を1あるいは複数含んでいてもよい。
【0061】
一般式(7)で表される化合物は具体的には下記に例示される。トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、4,7,13,18−テトラオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.5.5]エイコサン、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザビシクロオクタデカン、1−アザ−12−クラウン−4、1−アザ−15−クラウン−5、1−アザ−18−クラウン−6、トリス(2−フォルミルオキシエチル)アミン、トリス(2−ホルミルオキシエチル)アミン、トリス(2−アセトキシエチル)アミン、トリス(2−プロピオニルオキシエチル)アミン、トリス(2−ブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−イソブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−バレリルオキシエチル)アミン、トリス(2−ピバロイルオキシキシエチル)アミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(アセトキシアセトキシ)エチルアミン、トリス(2−メトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス(2−tert−ブトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス[2−(2−オキソプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−(メトキシカルボニルメチル)オキシエチル]アミン、トリス[2−(tert−ブトキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス[2−(シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス(2−メトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−エトキシカルボニルエチル)アミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−アセトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(4−ホルミルオキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(2−ホルミルオキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−メトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−ヒドロキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−アセトキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−メトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]アミン、N−メチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−エチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−メチルビス(2−ピバロイルオキシキシエチル)アミン、N−エチルビス[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、N−エチルビス[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、トリス(メトキシカルボニルメチル)アミン、トリス(エトキシカルボニルメチル)アミン、N−ブチルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、N−ヘキシルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、β−(ジエチルアミノ)−δ−バレロラクトンを例示できるが、これらに制限されない。
【0062】
なお、本発明で用いられる化学増幅ポジ型レジスト材料における塩基性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その添加量は、高感度化の観点から、化学増幅ポジ型レジスト材料中のベース樹脂である高分子化合物固形分100質量部に対して0〜2質量部、特に0.01〜1質量部を混合したものが好適である。
【0063】
界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352(株式会社トーケムプロダクツ製)、メガファックF171,F172,F173(DIC株式会社製)、フロラードFC430,FC431(住友スリーエム株式会社製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106、サーフィノールE1004,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40(旭硝子株式会社製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業株式会社製)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社化学株式会社製)が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0064】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト材料中の界面活性剤の添加量としては、化学増幅ポジ型レジスト材料中のベース樹脂固形分100質量部に対して2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。
【0065】
その他前述の添加剤の例としては、特開2011−95662号公報に例示されているような溶解促進剤や特開2011−227416号公報に例示されているようなアゾ化合物などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
次に、本発明に係るマイクロ構造体用樹脂構造体の製造方法を説明すると、本発明の製造方法は下記(A)〜(F)の工程を含む。
(A)上記化学増幅ポジ型レジスト組成物(光パターン形成性膜形成用組成物)を用いて光パターン形成性犠牲膜として基板に塗布する工程
(B)光パターン形成性膜形成用組成物を塗布した基板を加熱する工程
(C)上記光パターン形成性犠牲膜に第1の高エネルギー線を用いて、パターンレイアウトイメージに沿った照射を行う工程
(D)アルカリ性現像液による現像で犠牲膜パターンを形成する工程
(E)得られた犠牲膜パターンに第2の高エネルギー線として紫外線の照射を行う工程
(F)基板を100〜250℃で加熱する工程
でマイクロ構造体用樹脂構造体を得ることができる。
【0067】
更に、上記(F)工程後、
(G)上記犠牲膜パターン上に無機材料膜を被覆、形成する工程
(H)無機材料膜の一部に犠牲膜パターンに通じる開口部を設ける工程
(I)上記開口部を通じて犠牲膜パターンを除去する工程
を経て、上記犠牲膜パターンの形状を持つ空間を有するマイクロ構造体を得ることができる。
【0068】
ここで、(A)の工程においては、上述した化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて基板上に犠牲膜として成膜する。成膜法は公知の方法が多く知られ、特に限定されないが、通常、目的の基板上にポジ型レジスト組成物を含有する溶液をスピンコート法、スプレーコート法や印刷法等の公知の方法などいずれの塗工方法も適用しうる。
【0069】
基板としては、Si、SiO
2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG等の基板に加え、Au、Ti、W、Cu、Ni−Fe、Ta、Zn、Co、Pb等の金属基板、有機反射防止膜等の基板が挙げられ、100mm以上のウェハや液晶大型基板の大型基板まで対応可能である。
【0070】
なお、犠牲膜の膜厚は1〜30μmであり、好ましくは2〜20μm、更に好ましくは3〜10μmである。
【0071】
(B)の工程では、上記、塗布成膜をした後、ホットプレートやオーブンを用いて、80〜130℃程度の温度で熱処理することで、マイクロ構造体の空洞や空間に必要な膜厚である1〜30μmの光パターン形成性犠牲膜を形成する。80℃より低いと溶剤が残存する可能性があり、130℃より高いと極端に感度が低下したり、光酸発生剤によっては分解が始まることがあるため、好ましくない場合がある。なお、熱処理時間は通常1分〜2時間である。
【0072】
(C)の工程である、光パターン形成性犠牲膜に第1の高エネルギー線によるパターン照射を行う工程は、上記(A)の工程で得られた光パターン形成性犠牲膜の不要な部分を次工程の現像で溶解除去されるように溶解性変化をさせる工程である。第1の高エネルギー線によるパターン照射に用いる高エネルギー線は、光酸発生剤が感度を持つものであれば特に限定されないが、好ましくは200〜450nmの範囲の紫外線が好適に用いられる。また、最適な照射量は用いる光パターン形成性犠牲膜に依存して決まるため、予めパターン形成に必要な最適な露光量を求め、得られたものをパターン照射に用いる。この際、250mJ/cm
2を超える照射量であると、量産工程では、スループット速度の遅さから、現実的な照射時間とならないため、250mJ/cm
2以下、より好ましくは150mJ/cm
2以下、最も好ましくは100mJ/cm
2以下であり、また10mJ/cm
2以上の照射エネルギーであることが望ましい。
【0073】
(D)の工程である、アルカリ性現像液による現像でポジ型の犠牲膜パターンを形成する工程は、水性アルカリ性現像液を用い、上記(C)の工程で高エネルギー線が照射された部分を溶解除去する工程である。水性アルカリ性現像液としては、例えば、1.0〜3.5質量%、好ましくは1.3〜3.0質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用い、現像処理を行って、紫外線が照射された部分の樹脂膜を溶解除去することで、目的とする犠牲膜パターンを得る。なお、水性アルカリ性現像液については、上記のような有機現像液に限らず、例えば、KOH等を用いた無機現像液であっても、所望の現像速度が得られるのであれば、使用することに何ら制限はなく、水性アルカリ性現像液であれば、使用可能である。また、この工程後にパターン側壁角度が80°以上90°以下、好ましくは85°以上90°以下となっていなければ、この後の熱工程で膜の側壁角度が低下してしまうおそれがあるため、本発明の効果を得ることができない。
【0074】
(E)の工程は、犠牲膜パターンに熱耐性を与える工程で、得られた犠牲膜パターンに第2の高エネルギー線として、254nmの波長を含む紫外線の照射を行う操作であり、更に30〜220℃の範囲で加熱を行いながら、254nmの波長を含む紫外線の照射を行うこともできる。30℃より低いと効果が充分に現れず、220℃を超えると架橋で充分に硬化される前にパターンがフローしてしまうことがある。
【0075】
上記第2の高エネルギー線の照射は、紫外線を照射することによって、前述の光酸発生剤から酸が発生し、保護基によって保護されているフェノール性水酸基の保護基が外れた部位及び/又はフェノール性水酸基の部位との架橋が形成される。
【0076】
この工程における第2の高エネルギー線照射は、基板全体に対して一括の照射によって行うことができ、従って、254nmの波長のみの紫外線を用いてもよいし、254nmを含むブロードバンドの紫外線(200〜600nm)を用いてもよい。この照射の際に、照射を行いながら、基板を30〜220℃の範囲で加熱を行うことにより、更に効果的に架橋を形成することができる。この温度は、一段でも、多段の加熱を行っても、構わない。ここでの照射量は、特に制限はないが、効果的な架橋形成のためには、第1の高エネルギー線の照射に用いたエネルギー量の1〜5,000倍、より好ましくは5〜1,000倍、更に好ましくは10〜500倍のエネルギー量の照射が好ましい。
【0077】
更に、(F)の工程は、架橋反応を促進するために必要な工程で、80〜250℃の温度で熱処理を行う。高エネルギー線照射後の加熱工程では、ホットプレートやオーブンのような装置による加熱が通常用いられるが、特段制約はない。また、この温度は前記の温度範囲内であれば1段でも構わないが、より本発明の効果を得るためには、2水準以上の保持温度を有し、少なくとも最も低温側の保持温度と最も高温側の保持温度の温度差が、50℃以上の差である加熱条件であることがパターン形状をより保持する点で好ましい。この際、80℃未満の温度で加熱を行うと、架橋が十分に進まず、犠牲膜としての性能が得られないために、好ましくない。また、250℃を超えると脱ガス等が生じる場合があるため、好ましくない。
【0078】
この場合、まず80〜150℃、特に100〜150℃で20〜180分間、特に30〜90分間の加熱処理を行い、その後50℃以上の差をもって180〜250℃、20〜180分間、特に180〜230℃、30〜90分間の加熱処理を行うことが好ましい。
【0079】
本発明の光酸発生剤を用いた架橋形成を膜形成として行うと、高効率に架橋が導入されるため、より容易に高い耐熱性が確保でき、上記(F)の工程で得られた構造体の側壁角度が80°以上90°以下、好ましくは85°以上90°以下である犠牲膜パターンの形状を、例えば200℃の熱に暴露した場合にも形状変化が抑制された犠牲膜パターンを有する樹脂構造体を容易に得ることができる。
【0080】
上記のようにして犠牲膜パターンを形成した後、(G)の工程として、犠牲膜パターン上に無機材料膜を被覆、形成する。無機材料膜としてはアモルファスシリコン膜やシリコン酸化膜等が挙げられる。また、無機材料膜を形成する方法としては、いわゆるスパッタ法のようなPVD法や、CVD法等を採用することができる。特に、アモルファスシリコンCVDは、容易に均一な無機材料膜を得ることができる好ましい方法であるが、この方法を採用した場合には基板表面の温度が200℃以上に上昇しやすく、本発明が有利に採用される。また、上記無機材料膜の厚さは、目的とする装置にもよるが、0.1〜3μmであることが好ましい。もしくは一般的に0.3〜1μmである。
【0081】
なお、通常、上述の方法によって高い精度で形状が維持された犠牲膜パターン上に成膜された無機材料膜は、更に目的に応じて追加の加工や成形が行われるが、この段階で、(H)の工程として、上記無機材料膜の一部には犠牲膜パターンをエッチング除去するための開口部が設けられる。なお、開口部の形成に用いる方法は、目的とする装置の機能や形状によって好ましい方法を用いればよく、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィー方法による開口部形成(スルーホール形成)や、CMPによる天井面の剥離等の公知の方法を用いることができる。
そして、(I)の工程として、この開口部を通じて犠牲膜パターンは通常用いられているRFプラズマ法等のアッシング方法により、エッチング除去されることで犠牲膜パターンの形状を持つ空間が完成し、マイクロ構造体が得られる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0083】
[実施例1〜5]
下記に示す繰り返し単位を有するベース樹脂(Polym−1,2)、下記式(PAG−1,2)で示される光酸発生剤、塩基性化合物として下記式(Amine−1)、界面活性剤としてX−70−093(信越化学工業株式会社製)を下記表1に示した配合量で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、レジスト溶液を調製した後、0.5μmのメンブランフィルターで濾過した。得られたレジスト溶液を75mmシリコン基板上にスピンコートし[工程(A)]、ホットプレート上において、100℃で120秒間のソフトベークを行い、厚さ4.0μmのレジスト膜を形成した[工程(B)]。
【0084】
その後、株式会社ニコン製i線ステッパー(NSR−1755i7A,NA=0.5)により365nmで表2に示す照射量において露光を行い[工程(C)]、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)2.38質量%のアルカリ現像液を用いて50秒間で2回の現像を行い[工程(D)]、電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−4100)を用いて断面の形状観察を行い、4μmのラインとスペース幅が同じになる露光量を感度として算出し、側壁角度を測定した。
【0085】
次いで、ウシオ電機株式会社製UVキュア装置(UMA−802−HC551)により254nmを含む紫外線を用いて、7,500mJ/cm
2照射し[工程(E)]、オーブンにより220℃、1時間の熱処理を行い[工程(F)]、電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−4100)を用いて断面の形状観察を行った。
【0086】
これを、プラズマCVDによる無機材料膜の形成を想定し、工程(G)として、250℃で30分間熱処理し、その膜厚を光干渉式膜厚計(ナノメトリクス社製、M−6100)によって測定したところ、前後で膜厚の変動は見られず、かつ、そのパターン側壁角度の変動も生じなかった。この熱処理を終えたパターンを有するウェハ上に、アモルファスシリコンを成膜するため、プラズマCVD装置(PD−220、サムコ株式会社製)にて、上記で作製したラインアンドスペースパターンを持つ基板上に、0.4μm膜厚のアモルファスシリコン膜を、250℃,30分間の処理によって形成した。その後、走査電子顕微鏡S−4100を用いて、パターン側壁部分の欠陥を観察した。
【0087】
更に、上記犠牲膜パターン上のアモルファスシリコン膜の上に一般的なクレゾールノボラック樹脂を利用したi線露光用ポジ型レジスト組成物SIPR−9740(信越化学工業株式会社製)を膜厚2μmでコート、パターン形成を行い、次いで、このフォトレジストパターンをマスクとしてSF
6によるフッ素系プラズマエッチングにより、アモルファスシリコンの一部に上記犠牲膜パターンにつながる開口部を設けた。その後、アセトンで上記SIPR−9740によるパターンを溶解除去した。次いで、RFプラズマ法による酸素プラズマにより10分間アッシングを行い、構造体中に空隙部を形成させた後、電子顕微鏡S−4100を用いて、基板の表面状態を確認した。
【0088】
【化15】
x/(x+y)=0.28
重量平均分子量;18,900
分散度;1.3
【0089】
【化16】
重量平均分子量;7,400
分散度;1.05
【0090】
【化17】
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
この結果より、本発明の方法により形成された犠牲膜パターンは、無機材料膜等の犠牲層エッチング法による表面マイクロマシニングに好適な特性を有していることが確認された。
【0094】
[比較例1〜8]
比較例1〜5については、上記実施例1〜5について、現像後、UVキュアすることなく、オーブンで加熱を行い、電子顕微鏡S−4100により、その形状の確認を行った。
比較例6は、実施例1において、(F)工程のオーブン処理を50℃で60分間に設定した以外は同様に処理を行い、その形状を確認した。
【0095】
【表3】
【0096】
また、比較例7及び8については、下記表4に示す組成で照射量を表5にした以外は実施例1と同様の工程を行った。その結果を下表に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
比較例7及び8については、成膜したアモルファスシリコン膜に、ところどころピンホールが見られ、この原因は、ラインのトップ形状が、T−top気味の形状であったことに起因しているものと判断した。
なお、ウェハ等の基板の径又は面積が大きくなると、時間が大きくなりすぎ、スループットの低下を起こすので、好ましくない。
【0100】
[実施例6〜8]
また、ウシオ電機株式会社製UVキュア装置によるUVキュア後、以下のオーブン条件で硬化条件を変更した以外は実施例1と同様に処理を行い、側壁形状の確認を行った。更にオーブンで250℃、30分間の熱処理を行い、側壁角度を確認した。
【0101】
【表6】
【0102】
[実施例9]
下記Polym−3を用いた以外は、実施例1と同様に処理した。
【化18】
重量平均分子量;16,800
分散度;1.72
【0103】
【表7】
【0104】
【表8】
【0105】
250℃での形状変化が抑制されていることから、本発明の材料は250℃以下の耐熱性を有する。