(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材とを、前記第1の回路電極及び前記第2の回路電極が対向するように配置し、対向配置した前記第1の回路電極と前記第2の回路電極との間に請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルム状回路接続材料を介在させた状態で全体を加熱及び加圧し、前記第1及び前記第2の回路電極が電気的に接続されるように前記第1の回路部材と前記第2の回路部材とを接続する工程を備える、回路部材の接続構造の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの接着剤は、液晶パネル等のフラット・パネル・ディスプレイ(Flat Panel Display、以下「FPD」という)の分野で主に普及してきており、プリント配線板(Printed Wiring Board、以下場合により「PWB」という)と、テープ・キャリア・パッケージ(Tape Carrier Package、以下「TCP」という)又はチップ・オン・フレックス(Chip On Flex、以下「COF」という)との接続に使用され始めている。FPDの分野のフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuits、以下場合により「FPC」という)とPWBとの接続には回路接続材料が使用され、回路には一般的に金めっき処理が施されている。一方、チップやコンデンサ等の部品が実装されるPWBでは、半田による実装が主流である。良好な半田付け性を得るため、回路の表面処理として、イミダゾール化合物を含む樹脂被膜を形成する処理が試みられている。また、大型のマザーボード等には、金を使用せずコストを削減できることから、イミダゾール化合物等の有機樹脂を含む溶液で処理(以下場合により「OSP処理」という)することにより、有機被膜(以下、場合により「OSP膜」という)を形成するのが一般的である。このようなOSP処理された回路基板の実装においても、上記回路接続材料の使用が検討されつつある。
【0006】
また、高密度実装の流れから、回路基板の構造は多層構成が主流となっており、接続時の熱を逃がすために、接続部の近傍にビアホールやスルーホールなどが設けられている。このため、接続部に熱量を与えるには十分な時間が必要なところ、生産効率向上の観点からは短時間の接続が求められている。
【0007】
FPD分野のFPCとPWBとの接続に使用されている速硬化性のラジカル硬化系接着剤は、短時間で硬化可能ではあるが、OSP処理された基板に適用した場合には、金めっき処理された基板に適用した場合と比較して、接続抵抗が上昇しやすい傾向にある。
【0008】
また、速硬化接続を必要としない用途において従来汎用的に使用されてきたエポキシ樹脂のアニオン硬化系の接着剤は、OSP処理基板に対して良好な接着力を示すものの、半田付けのためにリフロー炉を通過した後に接続抵抗が上昇する傾向にある。
【0009】
そこで、本発明は、短時間での硬化が可能であり、かつ、OSP処理された基板に適用した場合に十分に高い接続信頼性を与える回路接続材料、それを用いた回路部材の接続構造及び回路部材の接続構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、上記硬化系接着剤を用いた場合の接続抵抗の上昇は、OSP膜自体が非導電性であること、及び、半田付けのためにリフロー炉を通過したことによって回路基板のOSP膜が硬くなったことが要因であるとの知見を得て、以下の発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料であって、接着剤組成物と、導電粒子とを含有し、導電粒子は、ビッカース硬度300〜1000の金属からなる核体と、該核体の表面を被覆する貴金属からなる最表層とを有する、平均粒径が5〜20μmの塊状の粒子であり、導電粒子の表面に凹凸が形成されている、回路接続材料を提供する。
【0012】
本発明はまた、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料であって、接着剤組成物と、導電粒子とを含有し、導電粒子は、ニッケルからなる核体と、該核体の表面を被覆する貴金属からなる最表層とを有する、平均粒径が5〜20μmの塊状の粒子であり、導電粒子の表面に凹凸が形成されている、回路接続材料を提供する。
【0013】
本発明の回路接続材料は、上述のような導電粒子を接着剤組成物と共に含有することにより、短時間での硬化が可能であり、かつ、OSP処理された基板に対しても良好な接続信頼性を示すことができる。
【0014】
本発明の回路接続材料における導電粒子は、凹凸における高さの差が70nm〜2μmであることが好ましい。凹凸における高さの差が上記範囲であれば、回路電極のOSP膜を貫通しやすく、接続抵抗の上昇を抑制しやすくなる。
【0015】
より短時間での硬化を可能とする観点から、本発明の回路接続材料において、接着剤組成物が、ラジカル重合性物質と、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤とを含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明の回路接続材料における接着剤組成物が、エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤を含む場合、回路部材の接続構造の接続信頼性をより一層向上させることができる。
【0017】
また、本発明の回路接続材料において、対向する回路電極のうち少なくとも一方が、イミダゾール化合物を含む被膜を有することが好ましい。本発明の回路接続材料は、上述のような導電粒子を接着剤組成物と共に含有することにより、回路電極がイミダゾール化合物を含む被膜を有していても、短い接続時間で良好な接続性を得ることが可能となる。
【0018】
本発明は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成され、第2の回路電極が第1の回路電極と対向配置されるように配置された第2の回路部材と、第1の回路基板と第2の回路基板との間に設けられ、第1及び第2の回路電極が電気的に接続されるように第1の回路部材と第2の回路部材とを接続する回路接続部と、を備えた回路部材の接続構造であって、回路接続部が、上記本発明のフィルム状回路接続材料の硬化物である回路部材の接続構造を提供する。
【0019】
本発明の回路部材の接続構造においては、第1及び前記第2の回路電極のうち少なくとも一方が、イミダゾール化合物を含む被膜を有することが好ましい。
【0020】
従来の短時間硬化型の回路接続材料を用いた回路部材の接続構造では、回路電極がOSP膜を有している場合、短時間の接続では接続性を向上することが難しい傾向にある。これに対して、本発明の回路部材の接続構造は、回路接続部が上記本発明の回路接続材料の硬化物であることにより、より短い接続時間でも良好な接続性を得ることができる。また、本発明の回路部材の接続構造は、回路電極表面を、イミダゾール化合物を含む材料からなる被膜で形成させているために、回路電極が酸化から守られ、良好な半田付け性を得ることができる。さらに、本発明の接続構造は、上記本発明の回路接続材料により回路部材同士が接続されていることにより、十分に高い接着強度及び接続信頼性を有している。
【0021】
本発明は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材とを、第1の回路電極及び第2の回路電極が対向するように配置し、対向配置した第1の回路電極と第2の回路電極との間に上記フィルム状回路接続材料を介在させた状態で全体を加熱及び加圧し、第1及び第2の回路電極が電気的に接続されるように第1の回路部材と第2の回路部材とを接続する工程を備える、回路部材の接続構造の製造方法を提供する。本発明の回路部材の接続構造の製造方法は、上記本発明の回路接続材料を第1の回路電極と第2の回路電極との間に介在させ、加熱及び加圧することにより、より短い接続時間でも良好な接続性を有する回路部材の接続構造を得ることができる。
【0022】
本発明は、接着剤組成物と、導電粒子とを含有する接着剤であり、導電粒子は、ビッカース硬度300〜1000の金属からなる核体と、該核体の表面を被覆する貴金属からなる最表層とを有する、平均粒径が5〜20μmの塊状の粒子であり、導電粒子の表面に凹凸が形成されている、接着剤の、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料としての応用に関する。
【0023】
また、本発明は、接着剤組成物と、導電粒子とを含有する接着剤であり、導電粒子は、ニッケルからなる核体と、該核体の表面を被覆する貴金属からなる最表層とを有する、平均粒径が5〜20μmの塊状の粒子であり、導電粒子の表面に凹凸が形成されている、接着剤の、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料としての応用に関する。
【0024】
本発明は、接着剤組成物と、導電粒子とを含有する接着剤であり、導電粒子は、ビッカース硬度300〜1000の金属からなる核体と、該核体の表面を被覆する貴金属からなる最表層とを有する、平均粒径が5〜20μmの塊状の粒子であり、導電粒子の表面に凹凸が形成されている、接着剤の、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料の製造のための応用に関する。
【0025】
また、本発明は、接着剤組成物と、導電粒子とを含有する接着剤であり、導電粒子は、ニッケルからなる核体と、該核体の表面を被覆する貴金属からなる最表層とを有する、平均粒径が5〜20μmの塊状の粒子であり、導電粒子の表面に凹凸が形成されている、接着剤の、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料の製造のための応用に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、短時間での硬化が可能であり、かつ、OSP処理された基板に適用した場合に高い接続信頼性を与える回路接続材料、回路部材の接続構造及び回路部材の接続構造の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
本実施形態に係る回路接続材料は、回路電極同士を電気的に接続するために用いられる接着剤である。
図1は回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、回路接続材料1は、樹脂層3と、樹脂層3内に分散している複数の導電粒子8とから構成され、フィルム状の形状を有する。
【0030】
以下、回路接続材料1の各構成材料について説明する。
【0031】
(導電粒子)
導電粒子8は、ビッカース硬度300〜1000の金属からなる核体と、該核体を被覆する貴金属からなる最表層とを有し、導電粒子の表面に複数の凹凸が形成されている塊状の粒子である。また、導電粒子8は、ニッケルからなる核体と、該核体を被覆する貴金属からなる最表層とを有し、導電粒子の表面に複数の凹凸が形成されている塊状の粒子である。ここで、導電粒子の表面の凹凸は、後述する核体の表面の凹凸に由来するものである。
【0032】
図2は導電粒子の外観の一例を示すSEM画像であり、
図3は導電粒子の拡大した表面の一例を示すSEM画像である。
図2及び
図3に示すように、本実施形態の導電粒子は、球状ではなく塊状の粒子であり、その表面に凹凸が形成されている。このような導電粒子8は、回路電極の非導電性のOSP被膜を貫通しやすく、接続抵抗の上昇を抑制しやすい。そのため、上記導電粒子8を含有する回路接続材料1を用いて、接続信頼性に優れる回路部材の接続構造を作製することができる。
【0033】
導電粒子8の核体は、ニッケル、クロム、モリブデン、マンガン、コバルト、鉄、マンガン、バナジウム、チタン、プラチナ、イリジウム、オスミウム、タングステン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、パラジウム等の遷移金属から選ばれる少なくとも一種の金属で構成されることが好ましく、ニッケルで構成されていることがより好ましい。
【0034】
核体を構成する金属のビッカース硬度は、300〜1000であり、400〜800であることがより好ましく、500〜700であることが更に好ましい。核体のビッカース硬度が300未満では、導電粒子8が変形しやすく、電極上のOSP膜の排除性が低下する傾向があり、1000を超えると、導電粒子8が変形しづらく、良好な接続信頼性を与えるのに十分な接触面積を確保でき難くなる。
【0035】
核体は、その表面に凹凸を有する。核体が表面に凹凸を有することによって、導電粒子の表面に凹凸を形成することができる。核体の表面に凹凸を形成する方法は特に限定されず、例えば核体がニッケルである場合には、カルボニル法により、ニッケル鉱石を一酸化炭素と常温で反応させ、ニッケルカルボニル錯体を形成し、さらに100℃以上で加熱することによって一酸化炭素を脱離させ、表面に凹凸が形成されたニッケルを得ることができる。
【0036】
導電粒子8の表面に形成された凹凸における高さの差は、70nm〜2μmであることが好ましく、90nm〜1.5μmであることがより好ましく、120nm〜1μmであることが更に好ましい。凹凸における高さの差が70nm以上であると、OSP膜を有する回路電極に対して食い込みやすくなり、信頼性試験後の接続抵抗が抑制される傾向にある。また、凹凸における高さの差が2μm以内であると、凹凸における凸部の根本部に接着剤組成物が残留しにくくなり、やはり信頼性試験後の接続抵抗が抑制される傾向にある。
【0037】
導電粒子8の平均粒径は5〜20μmであり、8〜20μmであることが好ましく、8〜15μmであることがより好ましい。平均粒径が5μm未満では、導電粒子8と電極とが接触する前に樹脂層3の硬化が進行し、20μmを越えると、導電粒子8の曲率半径が大きいために、電極上のOSP膜の排除性が低下し、いずれの場合も電気的導通が取れづらくなる。なお、本願で規定する導電粒子の平均粒径は、SEM画像により導電粒子(n数50個)を観察することによって得られる測定値であり、例えば最も長い粒径部分と最も短い粒径部分とを平均することによって算出することができる。
【0038】
導電粒子8の最表層は貴金属からなり、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニルム、オスミウム等の貴金属から選ばれる少なくとも一種の金属で構成されていることが好ましく、金又は白金で構成されていることがより好ましく、金で構成されていることが更に好ましい。導電粒子8の最表層をこれらの金属で構成することにより、回路接続材料1のポットライフを十分に長くできる。
【0039】
導電粒子8の最表層の厚みは、0.03〜0.4μmであることが好ましく、0.08〜0.2μmであることがより好ましい。最表層の厚みが0.03μm以上であると、導電粒子8の導電性が維持され接続抵抗が抑制される傾向にあり、0.4μm以内であると、核体に最表層を形成する際のコストが抑えられ、廉価性に優れる傾向がある。なお、核体はその全面が貴金属からなる最表層で覆われていることが好ましいが、本発明の効果を逸脱しない範囲で核体の一部、例えば、核体の表面の凹凸が最表層から露出していてもよい。
【0040】
導電粒子8の回路接続材料1における配合量は用途により適宜設定されるが、通常、接着剤組成物(すなわち、回路接続材料1のうち導電粒子8以外の樹脂層3の部分)100体積部に対して0.1〜30体積部の範囲内である。更に、同一回路基板上で隣り合う回路電極同士の短絡を防止する観点からは、導電粒子8の配合量は0.1〜10体積部であることがより好ましい。
【0041】
(接着剤組成物)
樹脂層3を形成する接着剤組成物は、遊離ラジカルを発生する硬化剤と、ラジカル重合性物質とを含有することができる。言い換えると、回路接続材料1は、遊離ラジカルを発生する硬化剤とラジカル重合性物質とを含む接着剤組成物と、導電粒子8とを含有することができる。回路接続材料1が加熱されたときにラジカル重合性物質の重合により接着剤組成物において架橋構造が形成され、回路接続材料1の硬化物が形成される。この場合、回路接続材料1は、ラジカル硬化型の接着剤として機能する。
【0042】
回路接続材料1に用いられる遊離ラジカルを発生する硬化剤は、過酸化化合物、アゾ系化合物などの加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものであり、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定される。配合量は回路接続材料1の全体質量を基準として、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%(回路接続材料1の全体質量を100質量部として、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部)がより好ましい。遊離ラジカルを発生する硬化剤は、具体的には、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等から選定できる。また、回路部材の接続端子の腐食を抑えるために、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドから選定されることが好ましく、高反応性が得られるパーオキシエステルから選定されることがより好ましい。
【0043】
ジアシルパーオキサイド類としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5,−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。
【0044】
パーオキシジカーボネート類としては、例えば、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート及びジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートが挙げられる。
【0045】
パーオキシエステル類としては、例えば、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート及びt−ブチルパーオキシアセテートが挙げられる。
【0046】
パーオキシケタール類としては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1、1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン及び2,2−ビス−(t−ブチルパーオキシ)デカンが挙げられる。
【0047】
ジアルキルパーオキサイド類としては、例えば、α,α’ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びt−ブチルクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0048】
ハイドロパーオキサイド類としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド及びクメンハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0049】
これらの遊離ラジカルを発生する硬化剤は、単独又は混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるため好ましい。
【0050】
回路接続材料1に用いられるラジカル重合性物質とは、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、アクリレート、メタクリレート、マレイミド化合物、シトラコンイミド樹脂、ナジイミド樹脂等が挙げられる。ラジカル重合性物質の配合量は、回路接続材料1の全体質量を100質量部として、20〜50質量部が好ましく、30〜40質量部がより好ましい。ラジカル重合性物質は、モノマー及びオリゴマーのいずれの状態でも用いることが可能であり、モノマーとオリゴマーを併用することも可能である。
【0051】
上記アクリレート(対応するメタクリレートも含む、以下同じ)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート及びウレタンアクリレートが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができ、必要によりハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を適宜用いてもよい。また、ジシクロペンテニル基及び/又はトリシクロデカニル基及び/又はトリアジン環を有する場合は、耐熱性が向上するので好ましい。
【0052】
上記マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するもので、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−4,8−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン及び2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
上記シトラコンイミド樹脂とは、分子中にシトラコンイミド基を少なくとも1個有しているシトラコンイミド化合物を重合させたもので、シトラコンイミド化合物としては、例えば、フェニルシトラコンイミド、1−メチル−2,4−ビスシトラコンイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−p−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスシトラコンイミド、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン及び2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
上記ナジイミド樹脂とは、分子中にナジイミド基を少なくとも1個有しているナジイミド化合物を重合したもので、ナジイミド化合物としては、例えば、フェニルナジイミド、1−メチル−2,4−ビスナジイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスナジイミド、N,N’−p−フェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスナジイミド、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−ナジイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン及び2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
回路接続材料1は、遊離ラジカルを発生する硬化剤及びラジカル重合性物質に加えて、他の成分を含有していてもよい。例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含有することができる。
【0056】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等を使用できる。
【0057】
熱可塑性樹脂としてTg(ガラス転移温度)が40℃以上で分子量10000以上の水酸基含有樹脂が好ましく使用することができ、例えばフェノキシ樹脂を好適に使用することができる。フェノキシ樹脂は、二官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子量になるまで反応させるか、又は、二官能エポキシ樹脂と二官能フェノール類を重付加反応させることにより得られる。
【0058】
熱硬化性樹脂としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂等が挙げられる。
【0059】
上記熱可塑性樹脂を含有する場合、取り扱い性もよく硬化時の応力緩和に優れるため好ましい。また、上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は水酸基等の官能基を有する場合、接着性が向上するためより好ましく、エポキシ基含有エラストマー、ラジカル重合性の官能基によって変性されていてもよい。ラジカル重合性の官能基で変性したものは耐熱性が向上するため好ましい。
【0060】
上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、10000以上であることが製膜性などの観点から好ましいが、1000000以上になると混合性が悪くなる傾向にある。なお、本願で規定する重量平均分子量とは、以下の条件に従ってゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定したもののことをいう。
【0061】
<GPC条件>
使用機器:日立L−6000型(日立製作所(株)製)
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)(日立化成工業(株)製)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/分
検出器:L−3300RI(日立製作所(株)製)
【0062】
また、接着剤組成物(樹脂層3)は、遊離ラジカルを発生する硬化剤及びラジカル重合性物質に替えて、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤とを含有することもできる。すなわち、回路接続材料1は、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤とを含む接着剤組成物と、導電粒子8とを含有することができる。回路接続材料1が加熱されたときにエポキシ樹脂の硬化により接着剤組成物において架橋構造が形成され、回路接続材料1の硬化物が形成される。この場合、回路接続材料1は、エポキシ硬化型の接着剤として機能する。
【0063】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、F、AD等のビスフェノールのグリシジルエーテルであるビスフェノール型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック又はクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂が代表的なエポキシ樹脂である。その他の例として、ナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及び複素環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して用いられる。
【0064】
上記エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が分子量の異なるグレードが広く入手可能で、接着性や反応性等を任意に設定できることから好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。ビスフェノールF型エポキシ樹脂の粘度は低く、フェノキシ樹脂との組み合わせて用いることにより、回路接続材料1の流動性を容易に広範囲に設定できる。また、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、回路接続材料1に良好な粘着性を付与し易いという利点も有する。
【0065】
不純物イオン(Na
+、Cl
−等)濃度又は加水分解性塩素が300ppm以下であるエポキシ樹脂を用いることが、エレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0066】
潜在性硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであればよい。また、潜在性硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して架橋構造中に取り込まれる化合物であってもよいし、エポキシ樹脂の硬化反応を促進する触媒型硬化剤であってもよい。両者を併用することも可能である。
【0067】
触媒型硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂のアニオン重合を促進するアニオン重合型潜在性硬化剤、及びエポキシ樹脂のカチオン重合を促進するカチオン重合型潜在性硬化剤が挙げられる。
【0068】
アニオン重合型潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ素ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド及びこれらの変性物が挙げられる。イミダゾール系のアニオン重合型潜在性硬化剤は、例えば、イミダゾール又はその誘導体をエポキシ樹脂に付加して形成される。
【0069】
カチオン重合型潜在性硬化剤としては、例えば、エネルギー線照射によりエポキシ樹脂を硬化させる感光性オニウム塩(芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が主として用いられる)が好ましい。また、エネルギー線照射以外に加熱によって活性化しエポキシ樹脂を硬化させるものとして、脂肪族スルホニウム塩がある。この種の硬化剤は、速硬化性という特徴を有することから好ましい。
【0070】
これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質、ニッケル、銅等の金属薄膜及びケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長できるため好ましい。
【0071】
潜在性硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して30〜60質量部であることが好ましく、40〜55質量部であることがより好ましい。潜在性硬化剤の配合量が30質量部以上であると回路接続材料1の硬化収縮による被着体に対する締め付け力が低下しにくくなる。その結果、導電粒子8と回路電極との接触が保持され、信頼性試験後の接続抵抗が抑制されやすくなる傾向にある。一方、潜在性硬化剤の配合量の60質量部以内であると締め付け力が強くなりすぎないため、回路接続材料1の硬化物における内部応力が大きくなりにくく、接着強度の低下を抑制しやすくなる傾向にある。
【0072】
回路接続材料1がエポキシ樹脂系の接着剤である場合、フィルム形成材を含有することが好ましい。フィルム形成材は、液状物を固形化し構成組成物をフィルム形状とした場合に、そのフィルムの取扱いを容易とし、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械的特性等を付与するものであり、通常の状態(常温常圧)でフィルムとしての取扱いができるものである。
【0073】
フィルム形成材として、上述した熱可塑性樹脂を用いることができ、接着性、相溶性、耐熱性及び機械的強度に優れることからフェノキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0074】
フェノキシ樹脂は、2官能性フェノール類とエピハロヒドリンとを高分子化するまで反応させるか、又は2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類とを重付加させることにより得られる樹脂である。フェノキシ樹脂は、例えば、2官能性フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985〜1.015モルとをアルカリ金属水酸化物等の触媒の存在下、非反応性溶媒中で40〜120℃の温度で反応させることにより得ることができる。
【0075】
また、フェノキシ樹脂としては、樹脂の機械的特性や熱的特性の観点からは、特に2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類との配合当量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9〜1/1.1とし、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下、沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中で、反応固形分が50質量%以下の条件で50〜200℃に加熱して重付加反応させて得たものが好ましい。
【0076】
2官能性エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂を用いることができる。2官能性フェノール類は2個のフェノール性水酸基を有するものであり、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物が挙げられる。
【0077】
フェノキシ樹脂は、ラジカル重合性の官能基により変性されていてもよい。フェノキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0078】
さらに、回路接続材料1は、充填材、軟化材、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤及びイソシアネート類等を含有することもできる。充填材を含有した場合、接続信頼性等の向上が得られるので好ましい。充填材の最大径が導電粒子8の粒径未満であれば使用でき、配合量は、5〜60体積%の範囲が好ましい。5〜60体積%であれば信頼性向上の効果が維持されやすくなる。カップリング剤としては、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基、及びイソシアネート基含有物が、接着性の向上の点から好ましい。必要に応じて、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を適宜用いてもよい。
【0079】
本実施形態の回路接続材料は、上述のとおり回路電極同士を電気的に接続するために用いられる接着剤である。
【0080】
すなわち、本実施形態の接着剤は、接着剤組成物と、導電粒子とを含有する接着剤であり、導電粒子は、ビッカース硬度300〜1000の金属からなる核体と、該核体の表面を被覆する貴金属からなる最表層とを有する、平均粒径が5〜20μmの塊状の粒子であり、導電粒子の表面に凹凸が形成されている。本接着剤は、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料として応用できる。また、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料の製造のために応用できる。
【0081】
また、本実施形態の接着剤は、接着剤組成物と、導電粒子とを含有する接着剤であり、導電粒子は、ニッケルからなる核体と、該核体の表面を被覆する貴金属からなる最表層とを有する、平均粒径が5〜20μmの塊状の粒子であり、導電粒子の表面に凹凸が形成されている。本接着剤は、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料として応用できる。また、対向する回路電極同士を電気的に接続するための回路接続材料の製造のために応用できる。
【0082】
次に、回路接続材料1を用いた本実施形態の回路部材の接続構造について説明する。回路接続材料1は、半導体チップ、抵抗体チップ及びコンデンサチップ等のチップ部品、並びにプリント配線板のような、1又は2以上の回路電極(接続端子)を有する回路部材同士が接続された接続構造を形成するために好適に用いられる。
【0083】
図4は、回路部材の接続構造の一実施形態を示す断面図である。
図4に示す回路部材の接続構造100は、第1の回路基板11及びこれの主面上に形成された第1の回路電極13を有する第1の回路部材10と、第2の回路基板21及びこれの主面上に形成された、第2の回路電極23を有し、第2の回路電極23と第1の回路電極13とが対向するように配置された第2の回路部材20と、第1の回路部材10及び第2の回路部材20の間に介在する接続部1aとを備える。
【0084】
接続部1aは、回路接続材料1が硬化して形成された硬化物であり、導電粒子8を含んでいる。接続部1aは、対向する第1の回路電極13と第2の回路電極23とが電気的に接続されるように、第1の回路部材10と第2の回路部材20とを接着している。対向する第1の回路電極13と第2の回路電極23とは、導電粒子8を介して電気的に接続されている。なお、接続部1aが導電粒子8を含有していない場合でも、回路接続材料1を介して第1の回路電極13と第2の回路電極23とは電気的な接続が可能である。
【0085】
第1の回路基板11は、ポリエステルテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂フィルムである。第1の回路電極13は、電極として機能し得る程度の導電性を有する材料(好ましくは金、銀、錫、白金族の金属及びインジウム−錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種)から形成されている。
【0086】
第2の回路基板21は、半導体チップ類のシリコンやガリウム・ヒ素等や、ガラス、セラミックス、ガラス・エポキシ複合体、プラスチック等の絶縁基板で形成される多層配線板である。第2の回路電極23は、導体部23aと、回路電極23の表面のうち接続部1aと接する部分を形成する被膜23bとを有し、被膜23bは導電粒子8の表面に形成された凹凸によって貫通されて電気的に接続していることが好ましい。導体部23aは回路電極23が電極として機能し得る程度の導電性を有する材料(好ましくは金、銀、錫、白金族の金属及びインジウム−錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種)から形成されている。
【0087】
被膜23bは、有機樹脂を含む材料からなる被膜であり、イミダゾール化合物等の有機樹脂を含むことが好ましい。被膜23bは、第2の回路基板21をOSP(Organic Solderability Preservative)処理することで形成される。ここで、OSP処理とは、水溶性プリフラックスとも呼ばれる基板の処理方法であり、一般には、イミダゾール化合物を含む溶液で基板を処理することでOSP膜を形成している。イミダゾール化合物を含む被膜とは、イミダゾール系誘導体と金属から生じた錯体が、電極表面上でお互いに結合することによって形成された膜である。すなわち、イミダゾール化合物を含む被膜は、回路電極が形成された基板を、イミダゾール化合物を含む溶液でOSP処理することにより形成できる。イミダゾール化合物としては、耐熱性の観点からベンズイミダゾール系誘導体が好適に用いられる。OSP処理は、例えば、市販されているものとしては、四国化成(株)製の商品名タフエースF2、F2(LX)、又は(株)三和研究所製ドーコートGVII、又はEnthone.Inc製Entek106A、106A(X)、又はメック(株)製メックシールCL−5824S、CL−5018、CL−5018Sを用いて行うことができる。
【0088】
本実施形態に係る回路接続材料は、第1及び第2の回路電極のうち少なくとも一方が、有機樹脂を含む材料からなる被膜を有している回路部材の接続に用いることができる。なお、
図5に示す回路部材の接続構造の一実施形態を示す断面図のように、第2の回路電極23だけでなく、第1の回路電極13が、導体部13aと、回路電極13の表面のうち接続部1aと接する部分を形成する被膜13bとを有してもよく、第1の回路電極13の被膜13bも導電粒子8の表面に形成された凹凸によって貫通されて電気的に接続していることが好ましい。被膜13bは被膜23bと同様の方法で形成される。
【0089】
本実施形態の回路部材の接続構造の製造方法は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材とを、第1の回路電極及び第2の回路電極が対向するように配置し、対向配置した第1の回路電極と第2の回路電極との間に本実施形態のフィルム状回路接続材料を介在させた状態で全体を加熱及び加圧し、第1及び第2の回路電極が電気的に接続されるように第1の回路部材と第2の回路部材とを接続する工程を備える。
【0090】
回路部材の接続構造100は、例えば、第1の回路部材10と、上述のフィルム状の回路接続材料1と、第2の回路部材20とを、第1の回路電極13と第2の回路電極23とが対峙するようにこの順に積層した積層体を加熱及び加圧することにより、第1の回路電極13と第2の回路電極23とが電気的に接続されるように第1の回路部材10と第2の回路部材20とを接続する製造方法によって、得られる。
【0091】
この製造方法においては、例えば、支持フィルム上に形成されているフィルム状の回路接続材料1を第2の回路部材20上に貼り合わせた状態で加熱及び加圧して回路接続材料1を仮接着し、支持フィルムを剥離してから、第1の回路部材10を、回路電極が対向するように位置合わせしながら載せて、積層体を準備することができる。接続の際の加熱によって発生する揮発成分による接続への影響を防止するために、接続工程の前に回路部材を予め加熱処理しておくことが好ましい。
【0092】
上記積層体を加熱及び加圧する条件は、回路接続材料中の組成物の硬化性等に応じて、回路接続材料が硬化して十分な接着強度が得られるように、適宜調整される。また、回路接続材料中の組成物に応じて、光照射で接続することもできる。
【0093】
接続構造を構成する回路部材が有する基板は、シリコン及びガリウム・ヒ素等の半導体チップ、並びに、ガラス、セラミックス、ガラス・エポキシ複合体、及びプラスチック等の絶縁基板であってもよい。
【実施例】
【0094】
以下、本発明の内容を、実施例を用いてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
(1)回路接続材料の作製
(1−1)接着剤組成物を構成する各成分の準備
「パーヘキサ25O」:2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)ヘキサン(日本油脂製、商品名)
「UN5500」:ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業製、商品名)
「DCP−A」:ジシクロペンタジエン型ジアクリレート(東亞合成製、商品名)
「M−215」:イソシアヌル酸EO変成ジアクリレート(東亞合成製、商品名)
「P−2M」:2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学製、商品名)
「HX3941HP」:アニオン重合型潜在性硬化剤含有エポキシ樹脂(イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤を35質量%含有、旭化成ケミカルズ製、商品名)
「UR−8200」:ポリエステルウレタン(東洋紡績製、商品名)
「EV40W」:エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル製、商品名)
「PKHC」:ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(重量平均分子量45000、インケム・コーポレーション製、商品名)
「アクリルゴムA」:ブチルアクリレート40質量部−エチルアクリレート30質量部−アクリロニトリル30質量部−グリシジルメタクリレート3質量部の共重合体(重量平均分子量約85万)
「SH6040」:シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーニング・シリコーン製、商品名)
【0096】
(1−2)導電粒子の準備
「導電粒子A」として、表面に複数の凹凸が形成されたNi粒子からなる核体と、該核体に金めっきを施して形成された金からなる最表層とを有する、平均粒径10μmの導電粒子を準備した。「導電粒子B」として、表面に複数の凹凸が形成されたNi粒子からなる核体と、該核体にパラジウムめっきを施して形成された金からなる最表層とを有する、平均粒径10μmの導電粒子を準備した。また、「導電粒子C」として、球状のNi粒子からなる核体と、該核体に金めっきを施して形成された金からなる最表層とを有する、平均粒径10μmの導電粒子を準備した。「導電粒子D」として、球状のNi粒子からなる核体と、該核体に金めっきを施して形成された金からなる最表層とを有する、平均粒径10μmの導電粒子を準備した。また、「導電粒子E」として、表面に凹凸が形成されたNi粒子からなる核体のみを有する、平均粒径10μmの導電粒子を準備した。「導電粒子F」として、球状のNi粒子である核体のみを有する、平均粒径10μmの導電粒子を準備した。ここで、表面に複数の凹凸が形成されたNi粒子からなる核体は、ニッケル鉱石を一酸化炭素と25℃環境下で反応させ、ニッケルカルボニル錯体を形成し、該ニッケルカルボニル錯体を100℃で加熱し、一酸化炭素を脱離させ(カルボニル法)、得たものである。
【0097】
(実施例1)
「パーヘキサ25O」の50質量%炭化水素溶媒溶液8質量部(不揮発分換算で4質量部)、ラジカル重合性物質として、「UN5500」の50質量%トルエン溶液60質量部(不揮発分換算で30質量部)、「DCP−A」8質量部、「M−215」8質量部、「P−2M」2質量部、「UR−8200」の30質量%メチルエチルケトン/トルエン(=50/50)溶液を150質量部(不揮発分換算で45質量部)及び「EV40W」の20質量%トルエン溶液50質量部(不揮発分換算で10質量部)を配合し、更に、「導電粒子A」10質量部を配合した。この混合溶液をアプリケータでPETフィルム上に塗布し、70℃10分の熱風乾燥により、樹脂層の厚みが35μmであるフィルム状の回路接続材料を得た。
【0098】
(実施例2)
導電粒子として、導電粒子Bを10質量部用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0099】
(実施例3)
導電粒子として、導電粒子Aを20質量部用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0100】
(実施例4)
「HX3941HP−SS」50質量部、「PKHC」の40質量%トルエン/酢酸エチル(=50/50)溶液37.5質量部(不揮発分換算で15質量部)、「アクリルゴムA」の10質量%トルエン/酢酸エチル(=50/50)溶液350質量部(不揮発分換算で35質量部)及び「SH6040」2質量部を配合し、更に、「導電粒子A」10質量部を配合した。この混合溶液をアプリケータでPETフィルム上に塗布し、70℃10分の熱風乾燥により、樹脂層の厚みが35μmであるフィルム状の回路接続材料を得た。
【0101】
(実施例5)
導電粒子として、導電粒子Bを10質量部用いた以外は、実施例4と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0102】
(実施例6)
導電粒子として、導電粒子Aを20質量部用いた以外は、実施例4と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0103】
(比較例1)
導電粒子として、導電粒子Cを10質量部用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0104】
(比較例2)
導電粒子として、導電粒子Dを10質量部用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0105】
(比較例3)
導電粒子として、導電粒子Eを10質量部用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0106】
(比較例4)
導電粒子として、導電粒子Fを10質量部用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0107】
(比較例5)
導電粒子として、導電粒子Cを10質量部用いた以外は、実施例4と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0108】
(比較例6)
導電粒子として、導電粒子Dを10質量部用いた以外は、実施例4と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0109】
(比較例7)
導電粒子として、導電粒子Eを10質量部用いた以外は、実施例4と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0110】
(比較例8)
導電粒子として、導電粒子Fを10質量部用いた以外は、実施例4と同様にしてフィルム状の回路接続材料を得た。
【0111】
実施例1〜6及び比較例1〜8の回路接続材料の組成を質量部(不揮発分換算)で表1及び表2に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
(2)回路部材の接続構造の作製
(2−1)OSP処理されたプリント配線板(PWB)の作製
ガラス・エポキシ多層プリント配線板上に、ライン幅100μm、ピッチ400μm、厚み35μmの銅回路電極を形成させた(これを以下「PWB」という)。更にPWBの銅回路電極表面に、ベンズイミダゾール化合物(四国化成(株)製、商品名「タフエース」)を用いてOSP処理をし、厚み0.10〜0.32μmのベンズイミダゾール系樹脂錯体の被膜を形成させた(これを以下「OSP−PWB」という)。
【0115】
(2−2)OSP処理されたフレキシブルプリント配線板(FPC)の作製
厚み25μmのポリイミドフィルム上に、ライン幅100μm、ピッチ400μm、厚み18μmの銅回路電極が直接形成されたフレキシブルプリント配線板(これを以下「FPC」という)を用意した。これに上記OSP−PWBと同様にして、OSP処理を施し、厚み0.10〜0.32μmのベンズイミダゾール系樹脂錯体の被膜を形成させた(これを以下「OSP−FPC」という)。
【0116】
(2−3)回路電極の接続(PWBとFPCの接続)
接続する前に、リフロー炉通過の模擬処理として、OSP−PWB及びOSP−FPCを250℃のホットプレート上で30秒間加熱処理した。OSP−PWB上に、上記のフィルム状の回路接続材料の接着面を貼り付けた後、70℃、1MPaで2秒間加熱及び加圧して仮接続し、その後、PETフィルムを剥離した。次に、OSP−FPCの回路電極とOSP−PWBの回路電極とが向かい合うように位置合わせした後、実施例1〜3及び比較例1〜4については160℃、4MPaで6秒間加熱及び加圧した。また、実施例4〜6及び比較例5〜8については170℃、4MPaで20秒間加熱した。FPCとPWBとの基板間の幅は2mmであった。
【0117】
(3)回路部材の接続構造の評価
(3−1)接続抵抗の測定
作製した接続構造の回路接続部を含む回路間の抵抗値を、デジタルマルチメータを用いて4端子法で測定した。接続抵抗の測定は、接続直後、85℃、85%RHの恒温恒湿槽中に1000時間保持する高温高湿処理を行った後、及び、−40℃〜+100℃の熱衝撃試験1000サイクル処理を行った後にそれぞれ測定した。信頼性試験後の4端子法による接続抵抗が100mΩ以下の範囲を良好と判断した。結果を表3に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
表3に示すように、実施例1〜6の回路接続材料は、高温高湿処理後及び熱衝撃試験後のいずれにおいても接続抵抗の上昇が小さく、接続信頼性に優れることが確認された。一方、比較例1〜8の回路接続材料は、高温高湿処理後及び熱衝撃試験後のいずれにおいても100mΩを超える接続抵抗を示し、接続信頼性に劣っていた。