特許第6146413号(P6146413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6146413組み合わせ体、プラズマ処理装置用部材、プラズマ処理装置およびフォーカスリングの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146413
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】組み合わせ体、プラズマ処理装置用部材、プラズマ処理装置およびフォーカスリングの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20170607BHJP
   C04B 35/553 20060101ALI20170607BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20170607BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   C04B37/00 C
   C04B35/553
   C23C16/458
   H01L21/302 101G
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-523791(P2014-523791)
(86)(22)【出願日】2013年7月4日
(86)【国際出願番号】JP2013068395
(87)【国際公開番号】WO2014007339
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-151367(P2012-151367)
(32)【優先日】2012年7月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100078189
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆男
(72)【発明者】
【氏名】上原 直保
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−298574(JP,A)
【文献】 特開2000−072554(JP,A)
【文献】 特開2005−317900(JP,A)
【文献】 特開2000−086344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84,37/00−37/04
B23K 20/00
C01F 11/22
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数の部分部材を圧着して構成された組み合わせ体であって、
前記部分部材は、CaF原料粉末が成形、焼結された多結晶体からなり、前記部分部材の結晶粒子の平均粒子径が200μm以上である組み合わせ体。
【請求項2】
請求項1に記載の組み合わせ体において、
前記部分部材の相対密度が94.0%以上である組み合わせ体
【請求項3】
請求項1または2に記載の組み合わせ体からなるプラズマ処理装置用部材。
【請求項4】
請求項に記載のプラズマ処理装置用部材はフォーカスリングであるプラズマ処理装置用部材。
【請求項5】
請求項3または4に記載のプラズマ処理装置用部材を備えるプラズマ処理装置。
【請求項6】
多結晶CaFからなり、結晶粒子の平均粒子径が200μm以上である複数の部分部材を用意することと、
前記複数の部分部材同士を圧着し、一つの多結晶CaF部材を形成することとを有するフォーカスリングの製造方法。
【請求項7】
請求項に記載のフォーカスリングの製造方法において、
前記複数の部分部材同士を圧着する際の保持温度は、1000度以上1200度以下であるフォーカスリングの製造方法。
【請求項8】
請求項に記載のフォーカスリングの製造方法において、
前記複数の部分部材同士を圧着する際の加圧力は、0.9Mpa以上1.8Mpa以下であるフォーカスリングの製造方法。
【請求項9】
請求項に記載のフォーカスリングの製造方法において、
前記複数の部分部材のそれぞれは、前記圧着の際に他の部分部材と接合する接合面を有し、前記接合面の面粗さは1.0μm以下であるフォーカスリングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み合わせ体、プラズマ処理装置用部材、プラズマ処理装置およびフォーカスリングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造装置用の耐プラズマ部材として、複数の部材から構成されるフォーカスリングが知られている(たとえば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2009−290087号公報
【特許文献2】日本国特開2011−3730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の部材を接合する際に用いられる接着剤やバンド部材が汚染源となるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、数の部分部材を圧着して構成された組み合わせ体であって、部分部材は、CaF原料粉末が成形、焼結された多結晶体からなり、前記部分部材の結晶粒子の平均粒子径が200μm以上である。
本発明の第2の態様によると、第1の態様の組み合わせ体において、部分部材の相対密度が94.0%以上であることが好ましい。
本発明の第の態様によると、プラズマ処理装置用部材は、第1または2組み合わせ体からなる。
本発明の第の態様によると、第3の態様のプラズマ処理装置用部材はフォーカスリングである。
本発明の第5の態様によると、プラズマ処理装置は、第3または4の態様のプラズマ処理装置用部材を備える。
本発明の第の態様によると、フォーカスリングの製造方法は、多結晶CaFからなり、結晶粒子の平均粒子径が200μm以上である複数の部分部材を用意することと、複数の部分部材同士を圧着し、一つの多結晶CaF部材を形成することとを有する。
本発明の第の態様によると、第の態様のフォーカスリングの製造方法において、複数の部分部材同士を圧着する際の保持温度は、1000度以上1200度以下であることが好ましい。
本発明の第の態様によると、第の態様のフォーカスリングの製造方法において、複数の部分部材同士を圧着する際の加圧力は、0.9Mpa以上1.8Mpa以下であることが好ましい。
本発明の第の態様によると、第の態様のフォーカスリングの製造方法において、複数の部分部材のそれぞれは、圧着の際に他の部分部材と接合する接合面を有し、接合面の面粗さは1.0μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の多結晶体の接合面が圧着により接合された組み合わせ体からなる多結晶CaF部材が得られるので、接着剤やバンド部材に起因する汚染のないフォーカスリングが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態によるフォーカスリングの外観を示す図
図2】フォーカスリングを備えるプラズマ処理装置の模式図
図3】面粗さと、保持温度と、加圧力とを異ならせた場合の試料の圧着結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照しながら、本発明の実施の形態による多結晶CaF(フッ化カルシウム)部材の一例であるフォーカスリングについて説明する。本実施の形態のフォーカスリングは、プラズマ処理装置に用いられる部材であり、多結晶CaFから製造された複数の部分部材が圧着により接合されることにより製造される。なお、この実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
【0009】
図1に実施の形態によるフォーカスリング1の構成を示す。図1(a)に示すように、フォーカスリング1は、3つの部分部材2を接合してなる組み合わせ体であり、環状に形成されている。フォーカスリング1を構成する1つの部分部材2は、図1(b)に示す形状を有する。部分部材2は、他の部分部材2と接合される接合面21と、段差部22とを有し、3つの部分部材2が接合面21を介して接合されることでフォーカスリング1が形成される。フォーカスリング1は、被処理物をプラズマ処理装置でプラズマエッチングする際、非均一なプラズマ分布によって起こる被処理物のエッチング速度の非均一性を低減させるために、被処理物の周囲に設けられる部材である。また、段差部22で被処理物を支持することができるので、被処理物を移動させる際やハンドリングの際の支持具としても用いられる。被処理物がドライエッチング工程においてプラズマに暴露される際には、フォーカスリング1も同様にプラズマに暴露されエッチングされる。そのため、フォーカスリング1には高い耐エッチング性が要求される。
【0010】
フォーカスリング1を形成する部分部材2の個数は、上記の3個のものに限定されるものではなく、フォーカスリング1の大きさ等に応じて最適な個数の部分部材2により形成されればよい。なお、フォーカスリング1の製造方法についての詳細は、説明を後述する。
【0011】
部分部材2は、上述したように多結晶CaFから製造され、優れた加工性および耐腐食性を有している。部分部材2が優れた加工性を有するようにするために、部分部材2を形成する多結晶CaFの相対密度は94.0%以上に設定される。より好ましい態様としては、多結晶CaFの相対密度を99.0%以上とすることができる。また、部分部材2が耐腐食性を有するために、部分部材2を形成する多結晶CaFの結晶粒子の平均粒子径は200μm以上とすることが好ましい。
【0012】
なお、本願における多結晶CaFの相対密度は、多結晶CaFの密度をアルキメデス法を用いて測定し、当該多結晶CaFの密度の単結晶CaFの密度に対する比をパーセンテージで示したものとして求めることができる。また、多結晶CaFの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で1試料の任意の3視野を観察し、JISR1670「ファインセラミックスのグレインサイズ測定方法」に準じて、それぞれの視野内の結晶粒子の長軸と短軸とを計測し、その平均をとることで求められる。
【0013】
以下、CaF、単結晶CaFおよび多結晶CaFが有する性質について説明する。CaFは、フッ化物であるMgF、BaFと比較して、潮解性が低い安定したフッ化物である。また、CaFは、耐フッ素プラズマ性、耐HF(フッ化水素)性、耐薬品性、耐熱性に優れているので、耐プラズマ部材、るつぼ部材として有効である。単結晶CaFは、高い紫外域から赤外域に渡って高い透過率特性を有しているので、レンズ材として用いられる。しかし、単結晶CaFは、へき開性を有するため、振動や衝撃により割れ易い性質を有している。これに対して、多結晶CaFは、微小な結晶が結合して構成されているため、バルクとしてはへき開性を有していない点で単結晶CaFよりも割れにくい。
【0014】
次に、多結晶CaFの結晶粒子の平均粒子径と耐腐食性との関係について説明する。多結晶CaFの結晶粒子の耐腐食性として、特に、エッチングへの耐性(耐エッチング性)について説明する。本実施の形態の部分部材2の製造に用いられる多結晶CaFの結晶粒子の平均粒子径は200μm以上である。本発明者の研究により、多結晶CaFでは、結晶粒子径が増大するにつれて耐腐食性が高くなり、結晶粒子径が200μm以上となると耐腐食性が飽和することが明らかとなっている。エッチングは結晶界面から進行するので、結晶粒子径が増大することにより結晶界面が減少すればエッチングされやすい界面が減少する。このため、多結晶CaFの結晶粒子径が増大するにつれて耐腐食性が高くなる。本実施の形態で用いられる多結晶CaFは、結晶粒子の平均粒子径を200μm以上とすることによって、その耐腐食性が単結晶CaFの有する耐腐食性に近づいたものとなっていると推定される。したがって、実施の形態で用いる多結晶CaFは、へき開性を有しないという多結晶体が有する利点に加えて、耐腐食性に優れているという単結晶体が有する利点を兼ね備えることになる。
【0015】
上述した特性を有する多結晶CaFからなる部分部材2の製造方法は以下の通りである。まず、相対密度が94.0%以上であり、かつ結晶粒子の平均粒子径が200μm以上となる多結晶CaFを次のようにして得る。
CaFの粉末原料の粒径(メジアン径)は、好ましくは3μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。CaFの粉末原料の粒径が大きい場合には、ボールミル等により予め粉砕してから用いるのが好ましい。
【0016】
上記のCaF粉末原料を用いて、たとえばCIP法(冷間静水等方圧プレス)、鋳込み法を用いて成形を行う。CIP法は、CaF粉末原料を金型プレスにより仮成形し、仮成形体を真空パックにした後、CIP装置にセットして、例えば100MPaにて1分間の圧力保持を行うことにより、成形体を作成する方法である。鋳込み法は、CaF粉末原料と水とを混合して作成したスラリーを石膏型に入れ、例えば室温にて48時間以上静置させて成形体を得た後、この成形体を石膏型から取り出して80℃にて48時間、乾燥炉で乾燥させる方法である。
【0017】
上述のようにして得られた成形体を真空焼結炉に導入して、真空雰囲気で焼結させる。焼結工程時の真空度は、緻密化およびCaFの酸化防止の目的から、10Pa以下であることが望ましい。焼結工程では、成形体は、1400℃以下で6時間以上焼結させる。なお、1400℃は、CaFの融点以下の温度である。この結果、相対密度が94.0%以上であり、かつ結晶粒子の平均粒子径が200μm以上となる多結晶CaFの成形体が得られる。
【0018】
次に、多結晶CaFの成形体を所望の形状に加工する。そして、フォーカスリング1を形成する際の接合面(図1の符合21)の表面粗さRaを1.0μm以下となるように機械加工により研磨する。その結果、部分部材2が製造される。
【0019】
上記のようにして製造された一の部分部材2の接合面21と他の部分部材2の接合面21とを接触させ、真空雰囲気もしくは不活性ガス雰囲気中で所定の温度に加熱し、接合面21の接触面に1MPa以上の荷重がかかるように各部分部材2を加圧する。その結果、図1に示すフォーカスリング1が製造される。フォーカスリング1は、本実施の形態の多結晶CaFを用いて製造された部分部材2を接合することにより、耐腐食性、加工性に優れ、かつ容易に大型化することができる。
【0020】
図1(c)はフォーカスリング1の変形例である。図1(c)に示すフォーカスリング100は、3つの部分部材200と3つの部分部材300の合計6つの部分部材を接合してなる組み合わせ体である。部分部材200及び部分部材300は、図1(d)に示す形状を有している。フォーカスリング100の径方向における部分部材200の幅L1と部分部材300の幅L2とは異なる長さに設定されており、幅L1よりも幅L2の長さの方が長くなっている。部分部材200同士は接合面201を介して接合され、部分部材300同士は接合面301を介して接合される。また、部分部材200と部分部材300とは、接合面202と接合面302とを介して接合される。なお、部分部材300の幅L2が部分部材200の幅L1よりも長く設定されていることにより、部分部材300の接合面302と同一平面上に、部分部材200が接合されない面303を設けることができる。この部分部材200が接合されない面303はフォーカスリング100の段差部として機能する。
【0021】
フォーカスリング100を形成するには、6つの部分部材をフォーカスリング形状に組み立て、当該6つの部分部材を同時に圧着するようにしてもよいし、部分部材200同士からなる環状部材と部分部材300同士からなる環状部材を形成し、当該環状部材同士を上下に組み合わせて圧着するようにしてもよい。なお、フォーカスリング100を形成する部分部材200および300の個数は、上記の6つのものに限定されるものではなく、フォーカスリング100の大きさ等に応じて最適な個数の部分部材200及び300により形成されればよい。
【0022】
図2は、上記のフォーカスリング1を備えるプラズマ処理装置の模式図である。図2のプラズマ処理装置10は、ガス供給口6およびガス排出口7を有するチャンバー5内に、上部電極8および下部電極9が設けられている。下部電極9の上面には、被処理物3を支持するための静電チャック11とフォーカスリング1とが備えられている。静電チャック11はフォーカスリング1で囲まれるように配置されており、静電チャック11上に被処理物3を配置することで、被処理物3の周囲がフォーカスリング1に囲まれる。
【0023】
プラズマ処理装置10を用いて被処理物3をプラズマエッチングするためには、まず、チャンバー5内を真空排気した状態で、ガス供給口6からエッチングガスを供給する。このとき、上部電極8および下部電極9に高周波電圧を印加する。上部電極8および下部電極9の間に形成された高周波電界は、エッチングガスをプラズマ化して、プラズマを生成する。このプラズマにより被処理物3のエッチングが行われる。
【0024】
以上のように被処理物3のプラズマエッチングが行われる間、フォーカスリング1も被処理物3と同様にプラズマに曝される。そのため、フォーカスリング1の材料として、耐腐食性に優れた本実施の形態による多結晶CaFが好適に用いることができる。
【0025】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[試料の作製]
メジアン径が32.7μmのCaF粉末原料を準備し、ボールミルにて粉砕処理することにより、メジアン径が3μm以下の原料を調整した。この原料を用いて、上述した鋳込み法を用いて成形を行った。すなわち、CaF原料を水と混合して作製したスラリーを石膏型に入れ、室温にて48時間以上静置させた後、石膏型から取り出して乾燥炉内で80℃にて48時間乾燥させて成形体を作製した。
【0026】
得られた成形体を真空中にて1250℃で6時間加熱して焼結させる。焼結後に取り出された成形体を切断および研削加工により、試料サイズ3mm×4mm×5mmの試料を切り出した。その後、試料の両面を鏡面研磨して、接合面の表面粗さRaを0.16〜1.64μmとした。
【0027】
(実施例1〜8、比較例1〜4)
試料は真空炉に導入されて、接合面を接触させた状態で荷重を加え、炉内雰囲気を10MPa以下とした。その後、6時間かけて所望の温度まで昇温を行い、目的温度で保持することにより試料の圧着を行った。この目的温度を保持温度と呼ぶ。保持温度での保持は6時間行い、その後、冷却して試料を取り出した。保持温度と、加圧力と、試料の面粗さRaとを異ならせた種々の条件下において、試料が圧着するか否かを確認した。
【0028】
保持温度の下限は500℃である。保持温度が800℃を超えると試料が圧着しやすくなる。また、1400℃を超えると試料が溶解するので、保持温度は1400℃以下とするが、1250℃を超えると試料の素材が有する物性に影響が生じるので、保持温度は1250℃を超えないことが好ましい。したがって、試料を圧着させる際の保持温度を800℃〜1200℃とした。
【0029】
試料に加わる加圧力は高いほど試料は圧着する。しかし、加圧力が高過ぎる場合、試料が割れやすくなるとともに、製造装置のコストが高くなるので、加圧力は低い方が好ましい。したがって、試料を圧着させる際の加圧力は0.9〜1.8MPaとした。
【0030】
図3に、面粗さRaと、保持温度と、加圧力とを異ならせた実施例1〜8、比較例1〜4の圧着結果を示す。図3に示すように、実施例1〜3は、保持温度を1200℃、加圧力を1.8MPaにて、試料の面粗さRaを異ならせた場合の圧着結果を示している。実施例4〜6は、保持温度を1200℃、加圧力を0.9MPaにて、試料の面粗さRaを異ならせた場合の圧着結果を示している。実施例7,8および比較例1は、保持温度を1000℃、加圧力を0.9MPaにて、試料の面粗さRaを異ならせた場合の圧着結果を示している。比較例2〜4は、保持温度を800℃、加圧力を0.9MPaにて、試料の表面粗さRaを異ならせた場合の圧着結果を示している。図3では、○は試料が圧着したことを示し、×は試料が圧着しなかったことを示す。すなわち、実施例1〜8の試料は圧着し、比較例1〜4は圧着していないことを示している。
【0031】
実施例4、7および比較例2において、それぞれの試料の面粗さRaは0.16μm、0.19μm、0.17μmであり、実質的に等しい面粗さRaと見なせる。この場合、図3に示すように、比較例2の試料、すなわち保持温度を800℃とした場合には、試料は圧着しなかった。この結果、保持温度は1000℃以上が望ましいといえることがわかる。
【0032】
実施例7,8および比較例1において、保持温度が1000℃、加圧力が0.9MPaで圧着処理を行う場合、表面粗さRaが1.67μmである比較例1の試料は圧着しなかった。この結果、圧着処理のためには、面粗さRaが低いほど好ましいことがわかる。保持温度が1000℃以上の実施例1〜8において、面粗さRaが最も低い試料は、実施例6の試料であり、その面粗さRaは1.0μmである。したがって、試料を圧着させるためには、接合面の面粗さRaは1.0μm以下であることが望ましい。
【0033】
上記の実施例1〜8、比較例1〜4の結果に基づいて、部分部材2を圧着してフォーカスリング1を製造する場合、保持温度を1000℃以上、部分部材2の接合面21の面粗さRaを1.0μm以下にすることが好ましい。
【0034】
多結晶CaFからなる複数の部分部材2を用いて、図3に示す結果に基づいて、部分部材2の接合面21同士を圧着により接合してフォーカスリング1を製造することができる。その結果、接着剤やバンド部材等の被処理物3への汚染源となる材料を用いることなくフォーカスリング1を製造することができる。
【0035】
プラズマ処理装置用のフォーカスリングに代表される耐プラズマ部材は、シリコンウエハの大口径化にともない大型化する傾向にある。CaFから大型のフォーカスリングを製造する場合、環状に形成するために焼結した材料の中心部を抜き取る必要があるので、材料歩留りや製造歩留りが低くなり、コストが増大するという問題があった。これに対して、複数の部分部材2を接合することにより、材料歩留りや製造歩留りの低下を防ぎ、コストの増加を抑制してフォーカスリング1の大型化が可能となる
【0036】
さらに、部分部材2は、相対密度が94.0%以上、結晶粒子の平均粒子径を200μm以上とする多結晶CaFからなる。したがって、これらの部分部材2を接合することにより、加工性および耐腐食性に優れたフォーカスリング1を提供することができる。
【0037】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2012年第151367号(2012年7月5日出願)
【符号の説明】
【0039】
1、100…フォーカスリング、 2、200、300…部分部材、
10…プラズマ処理装置


図1
図2
図3