特許第6147382号(P6147382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6147382塞栓用コイル及び塞栓用コイルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6147382
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】塞栓用コイル及び塞栓用コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20170607BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20170607BHJP
   C22C 5/02 20060101ALI20170607BHJP
   C22F 1/14 20060101ALN20170607BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20170607BHJP
【FI】
   A61B17/12
   A61L31/02
   C22C5/02
   !C22F1/14
   !C22F1/00 625
   !C22F1/00 675
   !C22F1/00 691B
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-43010(P2016-43010)
(22)【出願日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ
(72)【発明者】
【氏名】大久保 道正
(72)【発明者】
【氏名】後藤 研滋
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5582484(JP,B1)
【文献】 特開2013−106829(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/084948(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
A61L 31/02
C22C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Au−Pt合金からなる線材で構成された塞栓用コイルであって、
前記塞栓用コイルを構成する前記線材は、Pt濃度24質量%以上34質量%未満、残部Auの組成を有し、α相マトリックスに、α相のPt濃度に対して1.2〜3.8倍のPt濃度のAu−Pt合金からなるPtリッチ相が分布した材料組織を有しており、
前記線材は、その体積磁化率が−13ppm以上−5ppm以下であり、
更に、前記線材は、その短手方向断面の材料組織において、線分法により測定された2以上の平均結晶粒径の平均値が0.20μm以上0.35μm以下となる、塞栓用コイル。
【請求項2】
線材の短手方向断面の材料組織において、線分法により測定された2以上の平均結晶粒径の標準偏差が、0.025以上0.085以下である請求項1記載の塞栓用コイル。
【請求項3】
線材の引張強度が800MPa以上である請求項1又は請求項2記載の塞栓用コイル。
【請求項4】
2次コイル形状を有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の塞栓用コイル。
【請求項5】
Au−Pt合金からなる線材の線径は、10μm以上100μm以下である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の塞栓用コイル。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の塞栓用コイルの製造方法であって、
Pt濃度24質量%以上34質量%未満、残部Auの組成を有し、α相マトリックスに、α相のPt濃度に対して1.2〜3.8倍のPt濃度のAu−Pt合金からなるPtリッチ相が分布しており、体積磁化率が−13ppm以上−5ppm以下であるAu−Pt合金からなる線材を巻回加工する巻回加工工程を1回以上行い、
前記巻回加工工程中、少なくとも1回、前記線材を巻回した状態で固定しつつ、350℃以上550℃以下の温度で加熱保持する形態安定化処理を行うことを特徴とする塞栓用コイルの製造方法。
【請求項7】
塞栓用コイルは2次コイル形状を有し、
前記2次コイル形状を形成するための巻回加工工程の際に形態安定化処理を行う請求項6記載の塞栓用コイルの製造方法。
【請求項8】
Au−Pt合金の素材に対して加工率50%以上の加工を施すことにより、塞栓用コイルに加工するための線材を製造する請求項6又は請求項7記載の塞栓用コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具の一種である塞栓用コイル及びその製造方法に関する。特に、形態安定性に優れると共に、磁気共鳴画像診断処理装置等の磁場環境内でアーチファクトが生じ難い塞栓用コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
くも膜下出血等の脳血管障害の治療のための脳動脈瘤の破裂防止の処置として、コイル塞栓術が近年注目されている。この医療処置は、大腿等の動脈から挿入されたカテーテルを頭頸部の動脈に誘導し、そこから更に脳動脈瘤内にマイクロカテーテルを挿入しコイルを詰めて留置する方法である。動脈瘤へのコイルの挿入・留置は、動脈瘤を完全に塞ぐまで繰り返し行う。ここで、コイル塞栓術で使用される塞栓用コイルは、極細の金属線を巻回してコイル状に加工したものが使用されており、特に2次コイル形状をしたものが良く知られている。
【0003】
塞栓用コイルは、人体に埋め込まれる医療器具であるから、生体適合性を有すると共に、耐食性に優れることが要求される。このことから、従来から、Pt、Pt−W合金、ステンレス、Ti合金等の金属材料が塞栓用コイルの構成材料に適用されている。
【0004】
ところで、近年の医療現場においては、磁気共鳴画像診断処理装置(MRI)を用いた検査や手術が広く行われるようになっている。そして、MRIによる磁場環境内においては、塞栓用コイルによるアーチファクト(偽像)の発生が懸念される。アーチファクトとは、磁場中の金属の磁化率とその周辺領域における生体組織の磁化率の差により、MRI像にゆがみが生じる現象である。アーチファクトは、正確な診断・手術の妨げとなることから、その発生を極力抑制する必要がある。
【0005】
磁場環境におけるアーチファクトの問題を検討するための材料特性としては、磁化率(体積磁化率)が挙げられる。これは、塞栓用コイルの構成材料の磁化率と、埋め込まれた生体組織の磁化率との差を低下させることでアーチファクトの発生を抑えることができるという考察に基づくものである。具体的には、生体組織の主要構成成分である水の磁化率(−9ppm(−9×10−6))に対して、磁化率差の小さい材料が好適であるといわれている。この点、上記した実用例のある金属材料は、生体組織との磁化率の差が大きいという問題があった。
【0006】
そこで、アーチファクトフリーを考慮した材料開発が必要になっている。この要請に対して、本願出願人は、アーチファクトフリーの金属材料として、24質量%以上34質量%未満のPtと残部Auからなる、所定の金属組織を有するAu−Pt合金を提示している(特許文献1)。このAu−Pt合金は、反磁性金属であるAu(磁化率−34ppm)にPt(磁化率+279ppm)を合金化し、所定の金属相(α相、Ptリッチ相)を適宜に分布させることで合金全体の磁化率を水の磁化率に近似させるようにした金属材料である。
【0007】
具体的には、合金組成として上記範囲を適用すると共に、その材料組織について、α相マトリックス中にα相よりもPt濃度の高いPtリッチ相が析出する混合相構造を発現させることで磁化率を調整している。ここで、α相は、図1のAu−Pt系合金の状態図から推定されるAu−Pt合金相である。また、Ptリッチ相は、α相のPt濃度に対して1.2倍〜3.8倍のPt濃度のAu−Pt合金相である。Ptリッチ相はPt濃度が高いため、その磁化率はα相の磁化率よりプラス側にシフトしている。そして、特許文献1のAu−Pt合金では、合金全体の磁化率が−13ppm以上−5ppm以下となるようにPtリッチ相の分布量が調整されている。このPtリッチ相の分布量は、合金の任意断面において面積率が1〜22%となるようにしている。
【0008】
本願出願人によれば、このAu−Pt合金は、水の磁化率に対し±4ppmの磁化率(−13ppm以上−5ppm以下)を示し、実際のMRI装置による撮像試験によってもアーチファクトフリーであることが確認されており、医療用材料として有望であることが確認されている。また、その構成元素であるAu及びPtは、いずれも生体適合性を有すると共に、耐食性にも優れていることから、本質的な要求特性にも応えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5582484号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
塞栓用コイルについて、これまで構成材料の特性に基づく要求を述べてきたが、医療器具としての機能面からの要求もある。即ち、塞栓用コイルは、血管内を通過して動脈瘤に詰め込まれ、動脈瘤を閉塞するための器具である。そのため、塞栓用コイルは、人体中でデリバリーされている間は変形しても、動脈瘤内に到達したとき、予め付与されていた形状に復元しなければならない。
【0011】
上記の通り、塞栓用コイルは2次コイル形状をしたものが一般的である。2次コイル形状は、極細の線材を微小の曲率で巻回加工し(1次コイル加工)、得られた螺旋状の線材を、更に巻回加工(2次コイル加工)して形成される。このとき、1次コイル加工は、加工率が高いので加工戻りのない螺旋状の線材を得ることができる。しかし、2次コイル加工は、1次コイル加工と比較して加工率が低く、加工後に戻りが生じることがある。また、2次コイル加工直後は2次コイル形状を呈していても、塞栓用コイルとして使用する際に形状が崩れる場合もある。
【0012】
このように塞栓用コイルには、設定された形状を保持することができること、及び、使用過程の荷重により変形することがあっても除荷により容易に復元することができること、といった形態安定性が求められる。上記した本願出願人によるAu−Pt合金からなるアーチファクトフリーの金属材料も、加工性そのものは良好であり、材料破断なくコイル加工が可能である。
【0013】
但し、本願出願人によるAu−Pt合金については、具体的用途である塞栓用コイルに加工した場合の形態安定性に関してまで十分な検討はなされていない。そこで本発明は、このAu−Pt合金からなる線材を適用した塞栓用コイルであって形態安定性が良好なもの、及び、これを製造するための方法を提供する。この目的において、アーチファクトフリーを実現するため金属材料が有する磁化率は変化しないことを前提としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、本願出願人によるAu−Pt合金(特許文献1)の適用を前提とし、塞栓用コイルの製造工程を検証した。ここで、塞栓用コイルは、極細の線材(線径100μm以下)を加工して製造される。この線材は、Au−Pt合金の素材(インゴットやインゴットを粗加工した材料)を高加工率で加工して製造する。このような、製造工程は本願出願人によるAu−Pt合金についても同様に適用される。但し、このAu−Pt合金に対しては、合金素材を製造してから塞栓用コイルに加工する過程において、高温加熱を伴う処理を行うことはできない。上記の通り、このAu−Pt合金は、α相とPtリッチ相の混合相組織とすることで磁化率が調整されている。よって、相構成を変化させる可能性がある熱処理は避けられる。
【0015】
その一方で、本発明者等は、線材に加工されたAu−Pt合金に対して形態安定性を付与するためには、何らかの加工熱処理が必要であると予測した。そこで、本発明者等は鋭意検討を行ったところ、Au−Pt合金線材に所定の加工熱処理を加えつつコイル加工することで、コイルに良好な形態安定性が付与されることを見出した。この加工熱処理の詳細については後述するが、本発明者等は、このようにして製造されたコイルのAu−Pt合金線材について検討した結果、材料組織上の観点から特徴付けが可能となることを見出した。
【0016】
即ち、本発明は、Au−Pt合金からなる線材で構成された塞栓用コイルであって、前記塞栓用コイルを構成する前記線材は、Pt濃度24質量%以上34質量%未満、残部Auの組成を有し、α相マトリックスに、α相のPt濃度に対して1.2〜3.8倍のPt濃度のAu−Pt合金からなるPtリッチ相が分布した材料組織を有しており、前記線材は、その体積磁化率が−13ppm以上−5ppm以下であり、更に、前記線材は、その短手方向断面の材料組織において、線分法により測定された2以上の平均結晶粒径の平均値が0.20μm以上0.35μm以下となる、塞栓用コイルである。
【0017】
以下、本発明に係る塞栓用コイルについて、その構成を詳細に説明する。上記の通り、本発明は、所定のAu−Pt合金線材から構成される塞栓用コイルである。そこで、まず、Au−Pt合金及び塞栓用コイルを構成するAu−Pt合金線材について説明する。これまで述べたように、本発明が適用するAu−Pt合金は、その組成と相構成において本願出願人による特許文献1のAu−Pt合金と同等である。Au−Pt合金を適用するのは、反磁性金属であるAuにPtを固溶することで磁化率が調整された合金相を発現させることができるからである。図1のAu−Pt系状態図から分かるように、PtとAuは合金化が容易で、全率固溶体であるα相領域を含む組成範囲が比較的広くなっている。本発明で適用されるAu−Pt合金は、Pt濃度24質量%以上34質量%未満の合金組成を有するが、この組成範囲は、安定した磁化特性を有するα相が析出可能な組成である。
【0018】
そして、本発明で適用されるAu−Pt合金は、α相をマトリックスして、ここにPtリッチ相が分布した混合相からなる材料組織を有する。α相中にPtリッチ相を析出させ、両相の磁化率の差を利用しつつ合金全体の磁化率を調整するものである。Ptリッチ相は、α相のPt濃度に対して1.2倍〜3.8倍のPt濃度のAu−Pt合金相である。Ptリッチ相の分布量は、合金全体の磁化率が−13ppm以上−5ppm以下となるように調整されている。
【0019】
本発明に係る塞栓用コイルは、以上のような構成材料であるAu−Pt合金についての組成的な基本構成を具備しつつ、塞栓用コイルに成形された後のAu−Pt合金線材の材料組織において特徴を有する。この材料組織上の特徴として本発明で挙げられるのが平均結晶粒径である。平均結晶粒径とは、当該材料について任意に設定された観察領域内において、顕在化した結晶粒界に囲まれた結晶の粒径の平均値である。つまり、ここでの平均結晶粒径は、結晶の種類(α相、Ptリッチ相)を区別することなく計算される。本発明では、平均結晶粒径の値を複数測定し、更に、それらの平均値を求める。そして、当該平均値が0.20μm以上0.35μm以下であることを要件とする。
【0020】
上記の通り、平均結晶粒径とは、特定の結晶(相)に着目しない全体的な粒度を示すものである。このような、本発明の塞栓用コイルを構成する線材に対する材料組織上の特徴は、合金素材から線材を製造するための加工過程と、線材をコイル形状にするための加工過程の双方により形成される。
【0021】
既に述べたように、Au−Pt合金の素材から線材を製造する過程においては、素材を高温加熱することはできない。本発明のAu−Pt合金は、α相とPtリッチ相との混合相組織を発現させることで好適な磁化率を有する。高温加熱するとこの混合相組織が崩れることとなるからである。そのため、Au−Pt合金線材への加工は、組織変化が生じない比較的低温での加工・冷間加工による。また、この素材から塞栓用コイル用の極細の線材への加工は高加工率で実施される。そのため、線材への加工過程においては、α相とPtリッチ相との混合相組織は維持されるが、それらの結晶粒は微細化する。
【0022】
製造された線材は、コイル形状に巻回加工されて塞栓用コイルとなる。本発明では、このコイル形状とする過程で形状安定性付与のための形態安定化処理を行う。この処理の詳細は後述するが、形態安定化処理とは線材をコイル形状に固定して加熱する熱処理の一種である。熱処理であることから、微細なα相とPtリッチ相との混合相組織が変化し得る。本発明者等は、好適な形態安定化処理が施され、形態安定性及び磁化率が良好となった塞栓用コイルのAu−Pt合金線材の材料組織を検討した結果、結晶粒径(平均結晶粒径)が所定範囲にあることを見出したのである。
【0023】
そして、本発明ではAu−Pt合金線材の短手方向断面の材料組織について、平均結晶粒径を0.20μm以上0.35μm以下と規定した。平均結晶粒径が0.20μm未満であると、形態安定性が十分になく、実質的にコイル形状とする前の線材と変化がない。また、平均結晶粒径が0.35μmを超えたAu−Pt合金線材は、磁化率が好適範囲から外れておりアーチファクトフリーの塞栓用コイルとはいえなくなる。また、磁化率の観点から平均結晶粒径は、0.25μm以上0.33μm以下であるものがより好ましい。
【0024】
本発明では、この平均結晶粒径として線分法により測定された値を採用する。線分法は平均結晶粒径を測定するに際して、比較的簡易な方法でありながら、適切な運用により正確な値を得ることができる方法である。線分法による測定方法ついては公知の方法が採用できるが、後述する実施例において具体例を説明する。
【0025】
本発明では、短手方向断面の組織観察画像の同一視野内において、線分法による平均結晶粒径の測定を複数回行い、それら複数の平均結晶粒径値の平均値により規定する。平均結晶粒径の測定は、好ましくは20回以上、更に好ましくは30回以上行い、それらの平均値を算出する。測定回数の上限については、多いことが好ましいが、効率と測定精度とのバランスから50回以下とするのが好ましい。
【0026】
このように、Au−Pt合金線材を形態安定化処理しつつ加工するとき、その混合相組織にまず生じる変化が結晶粒径(平均結晶粒径)である。ここで、本発明者等の検討によれば、結晶粒径の変化の他に生じ得る組織変化として、分離相の生成・成長がある。分離相とは、その発生前までに存在していた相(α相、Ptリッチ相)の一部から発生する相である。本発明者等は、分離相はα相に対してPt濃度の高いPtリッチ相に類似する合金相と推察している。分離相の組成は明らかである必要はないが、磁化率を適正範囲に維持するためには、その発生は忌避されるべきである。
【0027】
分離相の析出を検証するためには、測定された複数の平均結晶粒径のバラツキを検討するのが便宜である。分離相の粒径は、その発生段階では周囲よりも微小な状態にある。よって、分離相の量によって平均結晶粒径が変動すると予測されるからである。そこで、本発明の塞栓用コイルでは、Au−Pt合金線材に分離相の少ない状態として、測定された複数の平均結晶粒径値の標準偏差が0.025以上0.085以下であることが好ましいとする。この標準偏差のより好適な範囲は、0.030以上0.082以下である。
【0028】
この標準偏差が0.085を超えるAu−Pt合金線材においては、分離相の生成が過度に生じており、磁化率が好適範囲にあるアーチファクトフリーの塞栓用コイルにはならない。また、標準偏差は低いことが好ましいが、本発明者等の検討では、標準偏差が0.025未満の塞栓用コイルは形態安定性に劣る傾向がある。
【0029】
そして、本発明に係る塞栓用コイルは、Au−Pt合金線材の引張強度が800MPa以上であるものが好ましく、1000MPa以上であるものがより好ましい。Au−Pt合金線材の引張強度については、高ければ高いほど好ましいが、その上限は1500MPaとするのが好ましい。
【0030】
以上説明した本発明に係る塞栓用コイルについて、その形状は特に限定されない。塞栓用コイルは、ストレートの線材を1回以上巻回加工したコイル形状を有するが、巻回加工の回数は特に限定しない。コイルの巻き数、径、長さも限定されない。現在のところ、2回の巻回加工(1次コイル加工と2次コイル加工)により製造される2次コイル形状を有する塞栓用コイルが知られており、かかる2次コイル形状であっても良い。
【0031】
そして、Au−Pt合金からなる線材の線径についても、人体の内部(血管)で移送される塞栓用コイルの用途に対応できる範囲であれば、線径を制限する必要はない。一般には、10μm以上100μm以下の線径が好ましいとされている。
【0032】
次に、本発明に係る塞栓用コイルの製造方法について説明する。本発明に係る塞栓用コイルは、上記で述べた構成を有するAu−Pt合金線材を巻回加工してコイル形状を付与することで製造できる。巻回加工工程は、少なくとも1回行われる。2次コイル形状を有する塞栓用コイルの製造の際には、極小径の螺旋状の線材(1次コイル)を製造し、この1次コイルを更に巻回加工して2次コイル形状を付与する。
【0033】
そして、本発明においては、巻回加工により成形された塞栓用コイルについて、形態安定性を与えるための処理(形態安定化処理)として、加工中の線材を巻回した状態で固定しながら、所定の温度範囲で加熱する。加熱により、線材はそのとき受けている加工の際の形状にくせ付けされる。形態安定化処理が成されたコイルは、巻回加工の荷重解除後も加工時の形状を維持し、更に、その後の変形に対する形状の復元性を発揮し得る。
【0034】
ここで、形態安定化処理の加熱温度を350℃以上550℃以下としたのは、形態安定化効果を発揮させながら、アーチファクトフリーという塞栓用コイルに根本的に要求される特性を確保するためである。即ち、加熱温度が350℃未満と低すぎる場合、形態安定化の効果を得ることができず、巻回加工後のコイルは形態が安定しない。一方、加熱温度が高すぎる場合、材料組織に過度の変化が生じて線材の磁化率が大きく変動する。
【0035】
本発明者等によれば、Au−Pt合金線材を350℃以上で加熱すると、線材の材料組織において、結晶粒径が変化し始める。また、分離相の生成もこの温度以上で懸念されるようになる。そして、550℃以上で加熱したAu−Pt合金線材は、結晶粒径(平均結晶粒径の平均値)が過大となる。また、分離相生成による測定値のばらつきも大きくなる。このときの線材は、磁化率が加工前に対して変化している。このことから、形態安定化処理の加熱温度の上限を550℃以下とした。尚、加熱温度のより好適な範囲としては、400℃以上500℃以下とする。
【0036】
形態安定化処理は、巻回加工の一部として行われる。巻回加工は、線材(1次加工され螺旋状となった線材を含む)を、棒状・円筒状等の適宜の冶具に繰り返し巻き付け固定してコイル形状を付与するものである。この巻回加工において線材を冶具に巻き付け・固定したときに加熱することで形態安定化処理を行うことができる。
【0037】
形態安定化処理は、1回以上行われる巻回加工で少なくとも1回行うことを要する。2次コイル形状の塞栓用コイルの製造では、1次コイルを得る1回目の巻回加工では加工率が高いので形態安定化処理が必要になることはないが、2次コイル形状とするときの巻回加工で形態安定化処理を行うことが好ましい。
【0038】
尚、本発明で塞栓用コイルに加工するための、Au−Pt合金からなる線材は、Au−Pt合金のインゴットやインゴットを粗加工した合金素材を用意し、これを細線に加工して得る。この素材から塞栓用コイルに加工するための線材を製造するための加工率は、50%以上100%未満に設定されるのが通常である。また、上記の通り、Au−Pt合金の磁化率を変動させることの内容な温度域で加工する。加工温度としては、300℃以下とする。加工の様式としては、引抜き加工、圧延加工等の公知の加工様式が単独又は組合わせて実施される。このAu−Pt合金素材は、加工性も良好であり割れ・破断なく線材に加工することができる。
【0039】
また、Au−Pt合金の製造方法は、基本的な工程として、Pt濃度24質量%以上34質量%未満、残部Auで組成調整された合金を、α相からなる過飽和固溶体合金とし、これを600〜1000℃で熱処理してPtリッチ相を析出させて製造される。
【0040】
Au−Pt合金の製造において、まず、α相単相の過飽和固溶体を用意し、それからPtリッチ相を析出させるのは、Ptリッチ相の析出量を好適範囲に制御して磁化率を調整するためである。Au−Pt合金のα相単相の過飽和固溶体を形成する方法としては、溶解鋳造等で合金インゴット製造した後、α相領域に加熱し急冷する一般的な溶体化処理が挙げられる。
【0041】
α相単相の過飽和固溶体合金を得るため、好適な方法として、合金インゴットに対して、単相化処理を複数回行うことが好ましい。この単相化処理とは、溶解鋳造された合金インゴットに対して、これを冷間加工(冷間圧延、冷間鍛造、冷間伸線、冷間押出等)する工程と、合金組成に応じて設定されるα相領域温度異常の温度(1150〜1250℃が好ましい)で熱処理する工程とを1セットとするものである。単相化処理における冷間加工は、溶解鋳造による鋳造組織を破壊し、その後の熱処理による原子の移動を容易にさせる処理である。熱処理は、鋳造による偏析を解消し、更に、合金の相構成をα相にするための処理であり、合金中の析出物をα相に戻し、最終的に析出物を消失させる処理である。そして、この冷間加工と熱処理とからなる単相化処理を複数回(2回以上が好ましい)繰り返すことで、偏析の解消と共に析出物の消失が生じ材料組成の均一化と相構成の単相化がなされる。
【0042】
以上のようにして得られるα相単相の過飽和固溶体合金を熱処理してPtリッチ相を析出させることで、本発明で適用するAu−Pt合金が製造できる。Ptリッチ相析出のための熱処理は、状態図における(α+α)領域内でα相領域に達しない温度での加熱処理であり、具体的な温度範囲は600〜1000℃とする。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように、本発明に係る塞栓用コイルは、形態安定性が良好である。そして、所定のAu−Pt合金で構成されており、適切な磁化率を有する。本発明に係る塞栓用コイルは、MRI等の磁場環境においてもアーチファクトを生じさせることなく使用可能である。更に、その構成元素に基づき、生体適合性、耐食性等の医療用器具として要求される特性も確保されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】Au−Pt系合金の状態図。
図2】形態安定化処理後の合金線材の短手方向断面組織。
図3】各処理温度で形態安定化処理を行って製造した2次コイルの外観写真。
図4】各処理温度で製造した2次コイルの内径戻り率と体積磁化率の測定結果を示す図。
図5】各処理温度で製造した2次コイルの引張強度と体積磁化率の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、適正な磁化率を有するAu−Pt合金インゴットを製造し、これを素材として線材に加工した後、2次コイル形状に加工して塞栓用コイルを製造した。このコイル加工の工程では、2度の巻回加工を行うこととなるが、2次コイル加工の際に形態安定化処理を行った。本実施形態では、形態安定化処理の条件を複数設定して加工を行い、製造された塞栓用コイルの形態安定性、体積磁化率等の特性を評価しつつ、構成材料の組織の相違も検討した。
【0046】
Au−Pt合金素材の製造
本実施形態では、Pt濃度30質量%のAu−Pt合金を製造した。純Au及び純Pt(いずれも純度99.99%:田中貴金属工業(株)製)を目的組成になるように秤量し、これを高周波溶解して合金インゴットを鋳造した。合金インゴットは60gを目安に製造した。この溶解鋳造した合金インゴットについて熱間鍛造を行った。この鍛造温度は1000℃で行った。
【0047】
次に、合金インゴットについて単相化処理を行い、α相単相の過飽和固溶体合金を製造した。単相化処理として、まず合金インゴットを冷間溝圧延して冷間加工した(加工率40%)。そして、合金インゴットを1200℃で1時間以上加熱した。その後水中に投入して急冷した。この冷間加工と熱処理との組合せからなる単相化処理は3回行った。
【0048】
そして、単相化処理後の合金について、引抜き加工を行った上で熱処理を行いPtリッチ相を析出させた。この熱処理温度は、800℃に設定した。熱処理は、合金を加熱し、時間経過後に氷水中に投入して急冷した。この熱処理によりAu−Pt合金素材(線径:2mm)を得た。
【0049】
Au−Pt合金線材の製造
上記で製造したAu−Pt合金素材を、塞栓用コイルに加工するためのAu−Pt合金線材に加工した。線材への加工は、複数のダイスを用いて冷間引抜き加工してAu−Pt合金からなる線材(線径:38μm)を製造した。加工率は99.97%となった。
【0050】
塞栓用コイルの製造
次に、上記で製造したAu−Pt合金線材について、2度の巻回加工を行い、2次コイル形状の塞栓用コイルを製造した。まず、Au−Pt合金線材(線径:38μm)を極細の芯線(外径1mm、SUS304製)に巻き付ける1次加工を行い、外径0.25mm、内径0.18mmの螺旋状の線材(1次コイル)に加工した。この螺旋状の線材を、芯棒(外径1.2mm、SUS304製)に巻き付け固定した。この2次コイル加工では、外径2.0mm、内径1.5mmを基準値(目標値)として2次コイル形状に加工している。
【0051】
そして、2次コイル加工の際に形態安定化処理を行った。形態安定化処理は、芯棒に巻回して固定した線材(1次コイル)を、熱処理用ボートに載せ、横型管状炉に挿入して熱処理した。熱処理温度として、100℃〜800℃の複数の温度での処理を試行した。熱処理時間は30分と共通にした。
【0052】
このAu−Pt合金線材のコイル加工の際には、各温度で形態安定化処理を行ったサンプルについて、組織観察及び平均結晶粒径測定、磁化率、形態安定性評価の各種測定・評価を行った。
【0053】
組織観察・平均結晶粒径測定
2次コイル加工後のAu−Pt合金線材の短手方向断面についてSIM(走査イオン顕微鏡)像観察を行った。SIM像観察の際には、Au−Pt合金線材をFIB加工(集束イオンビーム加工:装置名FB−2000A)にて精密切断して観察面を形成した。SIM像により断面組織を観察し、そのSIM像を基に平均結晶粒径を測定した。本実施例においては、平均結晶粒径の測定は、約16000倍の拡大倍率で、一辺が8μmの視野のSIM像を基に行った。
【0054】
線分法による平均結晶粒径の測定について、300℃、500℃、700℃で形態安定化処理を行いつつコイル加工したAu−Pt合金線材の断面組織を示しつつ説明する。図2は、これらの温度で処理した合金線材の断面組織である。線分法による平均結晶粒径の測定は、以下の作業による。
【0055】
(i)組織写真について、粒界に沿ってペン等で線を引いて粒界を顕在化させる。
(ii)写真に任意の位置で線を引く。線は複数引く。
(iii)(ii)の線と粒界とが交差する点(交点)の数(n)をカウントする。
(iv)(ii)の線の長さを観察領域のスケールと対比し、実際の長さ(L)に補正する。
(v)下記式により、平均結晶粒径(R)を算出する。
【数1】
【0056】
以上の線分法による平均結晶粒径の測定において、(ii)で引く線を複数とし、ここの線で平均結晶粒径を算出する。本実施形態では、30本の直線を引き、それぞれで平均結晶粒径を算出した。そして、30点のデータについて、平均値(XRA)と標準偏差(σRA)を算出した。尚、標準偏差(σRA)の算出は下記式による。
【数2】
【0057】
本実施形態で形態安定化処理を300℃、500℃、700℃で行った線材の平均結晶粒径の測定結果の例を表1〜表3に示す。本実施形態では、これらの他、350℃、550℃の形態安定化処理の線材と、コイル加工前(形態安定化処理なし)の線材の平均結晶粒径の測定を行った。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
体積磁化率の測定
Au−Pt合金線材の体積磁化率を測定した。磁化率測定は、高感度小型磁気天秤MSB−AUTO(Sherwood Scientific社製)にて行った(測定温度:27℃)。各種温度で形態安定化処理した線材と、コイル加工前(形態安定化処理なし)の線材の磁化率を測定している。
【0062】
形態安定性の評価
形態安定性の評価については、形態安定化処理と共に行った2次コイル加工後の塞栓用コイルについての内径戻り率を測定した。2次コイル化交互の塞栓用コイルを芯棒から取り外し、製造した2次コイルの内径をデジタルスコープ((株)キーエンス社製、VHX−900)で測定した。この測定値と下記式から、芯棒から取外した際の除荷による内径戻り率(K)を算出した。
【数3】
【0063】
また、上記内径戻り率の測定に加えて引張試験を行ない、各線材の引張強度を測定した。引張強度を測定したのは、塞栓用コイルの使用時における形態安定性を評価するためである。熱処理により引張強度が変化(低下)すると、塞栓用コイルとして使用したときに容易に変形おそれがあるので、そのおそれの有無を検討する測定である。引張試験は、ストロングライフEII−L05(東洋精機製作所製)にて行い、50Nのロードセルを使用し、10mm/分の試験速度で行った。
【0064】
以上説明した各種の測定・評価項目について、その結果を説明する。まず、平均結晶粒径に関する結果を表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
表4から、平均結晶粒径の平均値(XRA)についてみると、350℃の形態安定化処理を行ったコイルの線材から変化が生じた。標準偏差(σRA)についても同様である。XRA及びσRAは、形態安定化処理の温度の上昇と共に増大する傾向がある。
【0067】
ここで、形態安定化処理の温度と磁化率及び形態安定性との関係について検討する。図3は、各種温度(100℃〜800℃)で形態安定化処理を行いつつ製造した2次コイル(塞栓用コイル)の外観写真である。この写真から分かるように、100℃、200℃の低温では、2次コイル加工が完了しておらず、除荷後に加工前の1次コイルに近い形状に戻っている。また、300℃で処理したコイルも、除荷後に内径が大きくなっている。
【0068】
図4は、各処理温度で製造した2次コイルの内径戻り率と体積磁化率の測定結果を示す図である。300℃以下の熱処理では内径戻り率が100%以上となり、加工直後から形態安定性が得られていないことが分かる。350℃以上の処理で内径戻り率が50%を切ることができる。
【0069】
図5は、各処理温度で製造した2次コイルの引張強度と体積磁化率の測定結果を示す図である。この図から、熱処理温度が高いとき(600℃以上)、引張強度の急激な低下が見られることが分かる。
【0070】
ここで、図4図5を併せて検討する。形態安定化処理の熱処理温度は、内径戻り率、引張強度、体積磁化率のいずれにも影響を及ぼす。これらの傾向に関し、まず、アーチファクトフリーの観点から検討すると、500℃を超える600℃の熱処理を行うと、体積磁化率は加工前(−12.5ppm)から大きくプラス側にシフトし−5ppmよりプラスとなる。よって、アーチファクトフリーを実現し得る塞栓用コイル(体積磁化率:−13ppm以上−5ppm以下)を得るためには、550℃以下の熱処理とする必要があると推定される。
【0071】
更に、塞栓用コイルとして求められる形態安定性の観点からみる。まず、2次加工の直後に2次コイル形状を維持できることが最低限必要であるが、これについて戻り率を基準として評価すると、300℃以下の熱処理では戻り率が大き過ぎる。100℃、200℃で熱処理した試料のように、そもそも2次コイル形状とならないものもある。よって、加工直後(製造直後)の形状に関しては350℃以上の温度で処理することが求められる。
【0072】
もっとも、如何に安定した2次コイル形状を得ることができるとしても、適度な強度がなければ実際の使用の際に形態安定性を発揮できない。そこで、引張強度の結果をみると、600℃以上では強度低下が激しすぎて好適な塞栓用コイルを得ることができないと考えられる。
【0073】
このように、戻り率と引張強度との両者を考慮すると、形態安定化処理の温度は350℃以上550℃以下の温度範囲で設定すべきである。この温度範囲で製造されコイルは、体積磁化率も好適な範囲(体積磁化率:−13ppm以上−5ppm以下)を示す。
【0074】
以上の通り、磁化率と形態安定性とのバランスを考慮したとき、態安定化処理の温度は350℃以上550℃以下の温度範囲で設定すべきである。ここで、この温度範囲で処理されたAu−Pt合金線材の材料組織について考察する。表4の結果から、350℃以上の処理により平均結晶粒径の増大がみられた。また、平均結晶粒径の標準偏差の変化から分離相の生成も、この温度以上で発現し得ると考えられる。この結晶粒径の増大や分離相の生成は、本来忌避されるべきものであるが、ある程度は許容できる減少といえる。350℃以上の処理であって過度に処理温度が高くなければ、磁化率を好適範囲内にすることができるからである。そして、磁化率の変化を考慮しつつ、本発明に係るAu−Pt合金線材の材料組織を規定するならば、平均結晶粒径の平均値を0.20μm以上0.35μm以下に設定することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係るAu−Pt合金からなる塞栓用コイルは、アーチファクト抑制のために好適な磁化率を有する。そして、形態安定性にも優れ、その使用過程で好適な挙動で患部に導入・処置することができる。また、生体適合性、耐食性も良好な医療用器具である。
【要約】
【解決課題】Au−Pt合金線材を適用した塞栓用コイルであって、形態安定性が良好なものを提供する。
【解決手段】本発明は、Au−Pt合金からなる線材で構成された塞栓用コイルであって、前記塞栓用コイルを構成する前記線材は、Pt濃度24質量%以上34質量%未満、残部Auの組成を有し、α相マトリックスに、α相のPt濃度に対して1.2〜3.8倍のPt濃度のAu−Pt合金からなるPtリッチ相が分布した材料組織を有しており、前記線材は、その体積磁化率が−13ppm以上−5ppm以下であり、更に、前記線材は、その短手方向断面の材料組織において、線分法により測定された2以上の平均結晶粒径の平均値が0.20μm以上0.35μm以下となる、塞栓用コイルである。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5