特許第6147631号(P6147631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6147631
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 V
   H01L21/78 B
   H01L21/78 F
   H01L21/78 X
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-199624(P2013-199624)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-65385(P2015-65385A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】淀 良彰
【審査官】 梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−6386(JP,A)
【文献】 特開2011−176069(JP,A)
【文献】 特開2010−245571(JP,A)
【文献】 特開2010−153812(JP,A)
【文献】 米国特許第7015064(US,B1)
【文献】 特開2011−253879(JP,A)
【文献】 特表2014−526143(JP,A)
【文献】 特開2012−209386(JP,A)
【文献】 特開2005−86111(JP,A)
【文献】 特開2011−129551(JP,A)
【文献】 特開2012−156377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する複数の分割予定ラインで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイスウェーハの加工方法であって、
デバイスウェーハの表面に耐熱性のプレートを配設するプレート配設ステップと、
該プレート配設ステップを実施した後、デバイスウェーハの裏面を研削して所定の厚みに薄化する薄化ステップと、
該薄化ステップを実施した後、デバイスウェーハの裏面に補強フィルムを貼着する補強フィルム貼着ステップと、
該補強フィルム貼着ステップを実施した後、該プレートが配設され該補強フィルムが貼着されたデバイスウェーハを加熱して該補強フィルムを硬化させる硬化ステップと、
該硬化ステップを実施した後、デバイスウェーハを補強フィルムとともに該分割予定ラインに沿って分割する分割ステップと、を備える加工方法。
【請求項2】
少なくとも前記補強フィルム貼着ステップを実施する前に、デバイスウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点をデバイスウェーハ内部に位置付けた状態で前記分割予定ラインに沿って該レーザビームをデバイスウェーハの裏面に向かって照射してデバイスウェーハの内部に該分割予定ラインに沿った改質層を形成する改質層形成ステップを備え、
前記分割ステップでは、デバイスウェーハの裏面に貼着された前記補強フィルムの上面に拡張シートを貼着するとともに前記プレートをデバイスウェーハの表面から剥離した後、該拡張シートを拡張することによりデバイスウェーハに外力を付与して該分割予定ラインに沿って該補強フィルムとともにデバイスウェーハを個々のチップへと分割する、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記分割ステップでは、デバイスウェーハの裏面に貼着された前記補強フィルムの上面に拡張シートを貼着するとともに前記プレートをデバイスウェーハの表面から剥離した後、前記分割予定ラインに沿って切削ブレードまたはレーザビームでデバイスウェーハを該補強フィルムとともにダイシングして個々のチップへと分割する、請求項1に記載の加工方法。
【請求項4】
前記硬化ステップを実施した後、前記分割ステップを実施する前に前記補強フィルムの前記分割予定ラインで区画された各領域にそれぞれ識別マークを形成するマーク形成ステップを備える、請求項1,2または3に記載の加工方法。
【請求項5】
デバイスウェーハは表面に前記分割予定ラインで区画された各領域において突起電極を有し、
前記分割ステップで形成された個々のチップを、該突起電極を介して基板に実装する実装ステップを有する請求項1,2,3または4に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の薄型化を可能とするために、フリップチップ実装が広く採用されている。フリップチップ実装は、デバイスウェーハの表面にバンプと称される突起電極を形成し、バンプを介して実装基板にデバイスウェーハのチップを接続する実装技術である。
【0003】
特に近年においては、フリップチップ実装を行う際に、バンプと実装基板との間にのみ封止樹脂であるアンダーフィルを充填して固定し、チップの裏面が露出した形態も増えている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−252027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようなフリップチップ実装では、チップの裏面が露出した状態となるため、チップの強度に不安があるという問題がある。この問題は、特にチップ厚みが薄い場合に顕著となっており、デバイスウェーハの加工時に、例えばチップに割れや欠けなどが発生することがある。
【0006】
本発明は,上記の事情にかんがみてなされたものであり、チップの強度不安を解消しうるデバイスウェーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、デバイスウェーハの加工方法であって、デバイスウェーハの表面に耐熱性のプレートを配設するプレート配設ステップと、該プレート配設ステップを実施した後、デバイスウェーハの裏面を研削して所定の厚みに薄化する薄化ステップと、該薄化ステップを実施した後、デバイスウェーハの裏面に補強フィルムを貼着する補強フィルム貼着ステップと、該補強フィルム貼着ステップを実施した後、該プレートが配設され該補強フィルムが貼着されたデバイスウェーハを加熱して該補強フィルムを硬化させる硬化ステップと、該硬化ステップを実施した後、デバイスウェーハを補強フィルムとともに該分割予定ラインに沿って分割する分割ステップと、を備える。
【0008】
少なくとも上記補強フィルム貼着ステップを実施する前に、デバイスウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点をデバイスウェーハ内部に位置付けた状態で上記分割予定ラインに沿って該レーザビームをデバイスウェーハの裏面に向かって照射してデバイスウェーハの内部に該分割予定ラインに沿った改質層を形成する改質層形成ステップを備え、上記分割ステップでは、デバイスウェーハの裏面に貼着された上記補強フィルムの上面に拡張シートを貼着するとともに上記プレートをデバイスウェーハの表面から剥離した後、該拡張シートを拡張することによりデバイスウェーハに外力を付与して該分割予定ラインに沿って該補強フィルムとともにデバイスウェーハを個々のチップへと分割することができる。
【0009】
上記分割ステップでは、デバイスウェーハの裏面に貼着された上記補強フィルムの上面に拡張シートを貼着するとともに上記プレートをデバイスウェーハの表面から剥離した後、該分割予定ラインに沿って切削ブレードまたはレーザビームでデバイスウェーハを該補強フィルムとともにダイシングして個々のチップへと分割することができる。
【0010】
本発明では、上記硬化ステップを実施した後、上記分割ステップを実施する前に上記補強フィルムの上記分割予定ラインで区画された各領域にそれぞれ識別マークを形成するマーク形成ステップを実施することができる。
【0011】
さらに、本発明では、デバイスウェーハは表面に上記分割予定ラインで区画された各領域において突起電極を有しており、上記分割ステップで形成された個々のチップを、該突起電極を介して基板に実装する実装ステップを実施することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる加工方法では、補強フィルム貼着ステップ及び硬化ステップを実施してデバイスウェーハの裏面に補強フィルムを貼着し補強フィルムを熱硬化させた後、分割ステップを実施するため、補強フィルムごとデバイスウェーハを個々のチップに分割することができ、個々のチップの裏面には補強フィルムが貼着されている。したがって、チップに欠けや割れが発生することを防止し、チップの強度不安を解消することができる。
また、プレート配設ステップを薄化ステップの前に実施して耐熱性のプレートを薄化前のデバイスウェーハの表面に配設するため、薄化後のデバイスウェーハのハンドリングを容易にすることができる上、硬化ステップにおいてデバイスウェーハを加熱して補強フィルムを硬化させることが可能となり、容易に補強フィルムを硬化させることができる。
【0013】
本発明にかかる加工方法では、少なくとも補強フィルム貼着ステップを実施する前に改質層形成ステップを実施するため、デバイスウェーハにレーザビームを照射するにあたって補強フィルムが障害になることはなく、デバイスウェーハの内部にレーザビームを照射して容易に改質層を形成することができる。このように改質層が内部に形成されデバイスウェーハの強度が低下しても、デバイスウェーハの表面にはプレートが固定されているため、改質層形成ステップ実施後のデバイスウェーハのハンドリングが容易となる。
【0014】
さらに、本発明にかかる加工方法では、デバイスウェーハの裏面に貼着された補強フィルムに識別マークを形成するマーク形成ステップを実施するため、デバイスウェーハの裏面に直接レーザマーキングする必要がなく、それぞれのチップの裏面に対応する位置の補強フィルムに識別マークを形成することができる。これにより、チップの抗折強度が低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】デバイスウェーハの一例を示す斜視図である。
図2】デバイスウェーハの構成を示す断面図である。
図3】(a)はプレート配設ステップを示す斜視図、(b)は同ステップ実施後のデバイスウェーハ及びプレートを示す断面図である。
図4】改質層形成ステップを示す断面図である。
図5】薄化ステップを示す斜視図である。
図6】補強フィルム貼着ステップ及び硬化ステップの実施後のデバイスウェーハ、プレート及び補強フィルムを示すを示す断面図である。
図7】マーク形成ステップを示す断面図である。
図8】分割ステップにおいてデバイスウェーハを拡張シートに貼着する状態を示す断面図である。
図9】分割ステップにおいて拡張シートをエキスパンドしてデバイスウェーハを個々のチップに分割する状態を示す断面図である。
図10】実装ステップを示す断面図である。
図11】補強フィルムの貼着されたデバイスウェーハに改質層を形成する状態を示す断面図である。
図12】切削ブレードで分割ステップを行う状態を示す斜視図である。
図13】切削ブレードで分割ステップを行う状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すデバイスウェーハWは、個々のチップに分割される円形の被加工物であって、例えばWL−CSP(Wafer Level‐Chip Size Package)ウェーハである。WL−CSPウェーハとは、ウェーハ表面に再配線層や突起電極であるバンプが形成され表面側が樹脂封止されて形成されたものを指す。デバイスウェーハWは、例えばシリコン基板1を備え、シリコン基板1の表面1aには、格子状の分割予定ライン2によって区画されたそれぞれの領域において図2に示すデバイス3を複数有している。表面1aと反対側の面となる裏面1bには、デバイス3を有していない。
【0017】
図2に示すように、シリコン基板1の表面1a上には、再配線層4が形成されており、再配線層4には、デバイス3の電極5に接続される導電ポスト6が複数配設されている。導電ポスト6の先端部には、実装基板に接続されるボール状のバンプ7が形成されている。シリコン基板1の表面1a側は、導電ポスト6が埋設された封止樹脂層8で封止されている。以下では、このように構成されるデバイスウェーハWの加工方法について説明する。
【0018】
(1)プレート配設ステップ
図3(a)に示すように、円形のプレート9をデバイスウェーハWの表面1aに対面させ、図3(b)に示すように、耐熱性の接着剤10によってデバイスウェーハWの表面1aにプレート9を貼着し配設する。その結果、デバイスウェーハWの封止樹脂層8上において接着剤10を介してプレート9が強固に固定される。プレート9は、例えばガラスやシリコンにより形成されており、剛性及び耐熱性を有する。このように構成されるプレート9をデバイスウェーハWの保護部材として使用することにより、接着テープをデバイスウェーハWに貼着するのに比べて、デバイスウェーハWの表面1aに形成されたバンプ7の凹凸を吸収して平坦にすることができる。
【0019】
(2)改質層形成ステップ
プレート配設ステップを実施した後、図4に示すレーザビーム照射ヘッド30からデバイスウェーハWの内部にレーザビームを集光して破断起点となる改質層11を形成する。まず、デバイスウェーハWをレーザビーム照射ヘッド30の下方に移動させる。レーザビーム照射ヘッド30は、レーザビームの集光点32をデバイスウェーハWの内部に位置付ける。そして、デバイスウェーハWを例えば矢印X方向に水平移動させつつ、レーザビーム照射ヘッド30は、図1に示した分割予定ライン2に沿ってデバイスウェーハWに対し透過性を有する波長のレーザビーム31をデバイスウェーハWの裏面1bに向けて照射し、デバイスウェーハWの内部に改質層11を形成する。第一の実施例では、改質層形成ステップは、少なくとも後述する補強フィルム貼着ステップの前に実施する。そして、デバイスウェーハWのすべての分割予定ライン2に沿ってレーザビーム31を照射し改質層11を形成したら、改質層形成ステップを終了する。
【0020】
(3)薄化ステップ
改質層形成ステップを実施した後、図5に示す研削手段20によってデバイスウェーハWを薄化する。研削手段20は、鉛直方向の軸心を有するスピンドル21と、スピンドル21の下端においてマウント22を介して連結された研削ホイール23と、研削ホイール23の下部に環状に固着された研削砥石24とを少なくとも備えている。図示しないモータによってスピンドル21を回転させると、研削ホイール23を所定の回転速度で回転させることができる。
【0021】
デバイスウェーハWを薄化するために、図5に示すように、保持テーブル25の上面にプレート9側を載置してデバイスウェーハWの裏面1bを上向きに露出させ、図示しない吸引源によってデバイスウェーハWを保持テーブル25で吸引保持する。その後、保持テーブル25を、例えば矢印A方向に回転させつつ、スピンドル21を回転させて研削ホイール23を矢印A方向に回転させながらデバイスウェーハWの裏面1bに接近する方向に研削手段20を下降させる。そして、研削砥石24でデバイスウェーハWの裏面1bを押圧しながら所望の厚みに至るまで研削する。
【0022】
なお、図3(b)に示したデバイスウェーハWの表面1aには、プレート9が強固に固定されているため、内部に応力を有するデバイスウェーハWが、図4に示した研削砥石24による研削にともない薄化されても、デバイスウェーハWに大きく反りが発生することはない。
【0023】
(4)補強フィルム貼着ステップ
薄化ステップを実施した後、図6に示すように、薄化されたデバイスウェーハWの裏面1bに補強フィルム12を貼着する。補強フィルム12としては、例えばリンテック株式会社製のLCテープを使用することができ、補強フィルム12を裏面1bに貼着することにより、デバイスウェーハWを分割する際に裏面1bを保護・補強する。
【0024】
(5)硬化ステップ
補強フィルム貼着ステップを実施した後、補強フィルム12を硬化する。例えばヒータを用いて130℃で補強フィルム12をベークして熱硬化させる。これにより、後の分割ステップにおいて、デバイスウェーハWの裏面1bから補強フィルム12が剥離しないように固定される。
【0025】
(6)マーク形成ステップ
硬化ステップの実施後、次の分割ステップの実施前に、図7に示すレーザマーキング用照射ヘッド33により、デバイスウェーハWの裏面1bに貼着された補強フィルム12に識別マークを形成する。
【0026】
まず、補強フィルム12が貼着されたデバイスウェーハWをレーザマーキング用照射ヘッド33の下方に移動させる。次いで、デバイスウェーハWを例えば矢印X方向及び矢印X方向に対して水平な方向に直交する方向に水平移動させつつ、レーザマーキング用照射ヘッド33は、図2で示した各デバイス3に対応する位置にある裏面1bに貼着された補強フィルム12にレーザビーム34を照射して識別情報を含む識別マークを形成する。識別情報は、例えばメーカー名、ロットナンバー、固体識別番号などである。このように、補強フィルム12にレーザ印字が可能となっているため、デバイスウェーハWの裏面1bに直接レーザ印字しなくて済み、デバイスの抗折強度が低下するのを防止できる。
【0027】
(7)分割ステップ
マーク形成ステップを実施した後、デバイスウェーハWを個々のチップに分割する。まず、図8に示すように、中央部が開口された環状のフレーム14の下部に伸縮性を有する拡張シート13を貼着し、フレーム14の中央開口部から露出した拡張シート13にデバイスウェーハWの裏面1bに貼着された補強フィルム12側を貼着する。そして、上向きに露出したデバイスウェーハWの表面1aからプレート9を接着剤10とともに剥離する。
【0028】
次に、図9に示すように、分割手段40によってデバイスウェーハWをエキスパンドして個々のチップに分割する。分割手段40は、拡張シート13に貼着された補強フィルム12及びデバイスウェーハWを保持する保持部41と、保持部41の外周側に連設されフレーム14が載置される載置部42と、載置部42に載置されたフレーム14をクランプするクランプ部43と、載置部42の下方に連結され載置部42を上下方向に昇降させる移動手段44と、を少なくとも備えている。移動手段44は、シリンダ44aと、シリンダ44aによって駆動されて昇降するピストン44bとを備えており、ピストン44bが上下方向に移動することにより載置部42及びクランプ部43を同方向に昇降させることができる。
【0029】
図9(a)に示すように、拡張シート13を下向きにしてデバイスウェーハWを分割手段40の保持部41に載置するとともに、載置部42にフレーム14を載置する。その後、クランプ部43がフレーム14の上部を押さえてフレーム14が動かないように固定する。
【0030】
図9(b)に示すように、ピストン44bが下方に移動することにより、載置部42を下降させる。これにより、拡張シート13が径方向に拡張し、デバイスウェーハWの内部に形成された改質層11が破断起点となってデバイスウェーハWが個々のチップ100に分割される。
【0031】
(8)実装ステップ
分割ステップを実施した後、図10に示すように、個々のチップ100を実装基板15に実装する。実装基板15は、その表面に複数の電極15aが形成されている。チップ100の表裏を反転させ、チップ100の表面1aと実装基板15の電極15aとを対面させて個々の電極15a上にそれぞれ各バンプ7を載置し、リフロー炉に投入するなどにより、電極15aとバンプ7とを電気的に接続する。このようにしてフリップチップ実装を行う。
【0032】
上記の第一の実施例における分割ステップは、デバイスウェーハWの裏面1bに補強フィルム12を貼着する前にデバイスウェーハWの内部に改質層11をあらかじめ形成してから実施しているが、この順番に限定されるものではない。具体的には、第二の実施例として、補強フィルム貼着ステップ及び硬化ステップを実施後、図11に示すレーザビーム照射ヘッド30aが、レーザビームの集光点36をデバイスウェーハWの内部に位置付けて、デバイスウェーハW及び補強フィルム12に対し透過性を有する波長のレーザビーム35を照射してデバイスウェーハWの内部に改質層11aを形成した後、図9に示した分割手段40によって改質層11aを破断起点としてデバイスウェーハWを個々のチップ100に分割してもよい。
【0033】
また、分割ステップは、図9で示したエキスパンドによって実施する場合に限定されるものではない。分割ステップは、改質層形成ステップを実施せずに、図12に示す切削手段50によって分割予定ライン2を切削して個々のチップ100に分割してもよい。また、分割ステップは、改質層形成ステップを実施せずに、レーザビームの照射によりデバイスウェーハWをフルカットして個々のチップ100に分割してもよいし、レーザビームの照射によりデバイスウェーハWをハーフカットして溝を形成した後、図9で示した分割手段40により拡張シート13をエキスパンドして当該溝を破断起点としてデバイスウェーハWを個々のチップ100に分割してもよい。以下では、図12に示す切削手段50によって分割ステップを実施する場合について説明する。
【0034】
図12に示す切削手段50は、Y軸方向の軸心を有するスピンドル51と、スピンドル51を回転可能に囲繞するハウジング52と、スピンドル51の先端に装着された切削ブレード53と、を少なくとも備えており、スピンドル51の回転によって切削ブレード53も回転するようになっている。
【0035】
まず、中央部が開口した環状のフレーム14aの下方にテープ17を貼着し、フレーム14aの中央開口部から露出したテープ17に図6に示した補強フィルム12が貼着されたデバイスウェーハWの裏面1b側を貼着する。その後、フレーム14aと一体となったデバイスウェーハWを切削手段50の下方に移動させる。
【0036】
デバイスウェーハWをX軸方向に移動させながら、Y軸方向を中心として切削ブレード53を所定の回転速度で回転させつつ切削手段50をZ軸方向に下降させ、回転する切削ブレード53をデバイスウェーハWの表面1aに切り込ませる。このとき、切削ブレード53を、デバイスウェーハWの裏面1bに貼着された補強フィルム12が切断されるまで切り込ませる。分割予定ライン2に沿ってデバイスウェーハWの外周の一端から他端に至るまで切削ブレード53を切り込ませて切削することにより溝16を形成し、このような切削をすべての分割予定ライン2に沿って行うことにより、デバイスウェーハWを図10に示した個々のチップ100に分割する。
【0037】
分割ステップは、改質層形成ステップを実施せずに、かつ、図12に示したテープ17に補強フィルム12を貼着せずに、図13に示すように、補強フィルム12が貼着されたデバイスウェーハWの裏面1b側から切削して個々のチップ100に分割してもよい。すなわち、図13に示すように、スピンドル51を回転させることにより切削ブレード53を所定の回転速度で例えば矢印B方向に回転させながら、切削手段50をZ軸方向に下降させ、デバイスウェーハWの裏面1bに貼着された補強フィルム12側からプレート9に達するまで図12に示した分割予定ライン2に沿って切削ブレード53を切り込ませる。このようにして切削することにより所望の深さの溝16aを形成し、このような切削をすべての分割予定ライン2に沿って行うことにより、デバイスウェーハWを個々のチップ100に分割する。デバイスウェーハWを個々のチップ100に分割した後は、補強フィルム12の上に図示していないシートを貼着し、シートを介してリングフレームに装着する。これにより、デバイスウェーハWの表面1aからプレート9を剥離しても、チップ100がバラバラになることはなくハンドリングが容易になる。
【0038】
なお、補強フィルム12としてレーザビームを透過させる材質のものを使用する場合には、補強フィルム12側から照射したレーザビームをデバイスウェーハ1に集光して分割してもよい。
【0039】
以上のとおり、補強フィルム貼着ステップ及び硬化ステップを実施してデバイスウェーハWの裏面1bに補強フィルム12を貼着し補強フィルム12を熱硬化させた後、分割ステップを実施するため、補強フィルム12ごとデバイスウェーハWを個々のチップ100に分割することができ、チップ100に欠けや割れが発生することを防止してチップ100の強度不安を解消することができる。
また、プレート配設ステップを薄化ステップの前に実施して耐熱性のプレート9を薄化前のデバイスウェーハWの表面1aに配設するため、薄化後のデバイスウェーハWのハンドリングを容易にすることができる上、硬化ステップにおいてデバイスウェーハWを加熱して補強フィルムを硬化させることが可能となり、容易に補強フィルム12を硬化させることができる。
【0040】
改質層形成ステップは、少なくとも補強フィルム貼着ステップを実施する前に実施することにより、デバイスウェーハWにレーザビームを照射するにあたって補強フィルムが障害になることはなく、レーザビーム31をデバイスウェーハWの内部に照射して容易に改質層11を形成することができる。また、補強フィルムにはレーザビームに対する透過性が必要とされず、レーザビームの波長についても補強フィルムに対する透過性を考慮する必要がない。
また、改質層11が内部に形成されデバイスウェーハWの強度が低下しても、デバイスウェーハWの表面1aにはプレート9に固定されているため、改質層形成ステップ実施後のデバイスウェーハWのハンドリングが容易となる。
【0041】
さらに、分割ステップの前にマーク形成ステップを実施するため、デバイスウェーハWの裏面1bに直接レーザマーキングする必要がなく、それぞれのチップ100の裏面に対応する位置の補強フィルム12に識別マークを形成することができる。これにより、チップ100の抗折強度が低下するのを防止できる。
【符号の説明】
【0042】
1:デバイスウェーハ 1a:表面 1b:裏面 2:分割予定ライン
3:デバイス 4:再配線層 5:電極 6:導電ポスト 7:バンプ 8:封止樹脂層
9:プレート 10:接着剤 11,11a:改質層 12:補強フィルム
13:拡張シート 14,14a:フレーム 15:実装基板 15a:電極
16,16a:溝 17:テープ
100:チップ
20:研削手段 21:スピンドル 22:マウント 23:研削ホイール
24:研削砥石 25:保持テーブル
30,30a:レーザビーム照射ヘッド 31:レーザビーム 32:集光点
33:レーザマーキング用照射ヘッド 34,35:レーザビーム 36:集光点
40:分割手段 41:保持部 42:載置部 43:クランプ部
44:移動手段 44a:シリンダ 44b:ピストン
50:切削手段 51:スピンドル 52:ハウジング 53:切削ブレード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13