特許第6148075号(P6148075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148075
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/046 20140101AFI20170607BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20170607BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20170607BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   B23K26/046
   B23K26/00 M
   B23K26/00 Q
   B23K26/02 A
   H01L21/78 B
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-115554(P2013-115554)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-233731(P2014-233731A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢史
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−122894(JP,A)
【文献】 特開2013−22614(JP,A)
【文献】 特開2013−96853(JP,A)
【文献】 特開2008−119714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を集光して照射する対物集光レンズを備えたレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の上面高さ位置を検出する高さ位置検出手段と、該対物集光レンズを該チャックテーブルの保持面に対して垂直な方向(Z軸方向)に移動せしめる集光点位置調整手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向(X軸方向)に相対的に加工送りする加工送り手段と、該チャックテーブルのX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段と、該集光点位置調整手段と該加工送り手段および表示手段に制御信号を出力する制御手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該制御手段は、該加工送り手段を作動して該チャックテーブルに保持された被加工物をX軸方向に移動しつつ該高さ位置検出手段を作動して被加工物の高さ位置を計測して得た高さ計測値と該X軸方向位置検出手段からの検出信号に基づくX座標とを記憶する記憶手段を具備しており、該加工送り手段を作動して該チャックテーブルに保持された被加工物をX軸方向に移動しつつ該記憶手段に記憶されたX座標に対応する高さ計測値に基づいて該集光点位置調整手段を制御するとともにX座標に対応する高さ位置の基準高さ位置に対する変位量をX座標と対応して表示手段に表示して、該表示手段に表示するX座標と対応した該変位量のブレ幅が許容範囲であれば該レーザー光線照射手段の作動を可とし、X座標と対応した該変位量のブレ幅が許容範囲外である場合には該レーザー光線照射手段の作動を不可とする、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該制御手段は、該加工送り手段と該高さ位置検出手段および該集光点位置調整手段を作動しつつ、該記憶手段に記憶されたX座標と対応した該変位量におけるX座標と、該チャックテーブルのX座標との間にズレを生じさせて該変位量のブレ幅が許容範囲になるように調整し、該変位量のブレ幅が許容範囲内になったときのX座標のズレ量を補正値として決定する、請求項1記載のレーザー加工装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持するチャックテーブルに保持された被加工物の上面高さ位置を検出する機能を備えたレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。また、略円板形状であるサファイア基板、炭化珪素基板、窒化ガリウム基板等の表面にn型半導体層およびp型半導体層からなる発光層が積層され格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスを形成して光デバイスウエーハを構成する。そして、光デバイスウエーハを分割予定ラインに沿って分割することにより個々の光デバイスを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の分割予定ラインに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有するパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を位置付けてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法が試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである。(例えば、特許文献1参照。)このように被加工物に形成された分割予定ラインに沿って内部に改質層を形成する場合、被加工物の上面から所定の深さ位置にレーザー光線の集光点を位置付けることが重要である。
【0004】
しかるに、半導体ウエーハ等の板状の被加工物にはウネリがあり、その厚さにバラツキがあるため、均一なレーザー加工を施すことが難しい。即ち、ウエーハの内部に集光点を位置付けてレーザー光線を分割予定ラインに沿って照射することにより改質層を形成する技術においては、レーザー光線のピークパワー密度を高めるために開口数(NA)が0.8程度と高い集光レンズが用いられており、レーザー光線を照射するウエーハの照射面(上面)にウネリ(凹凸)があり上面高さ位置が変化すると、レーザー光線の集光点が適正な位置に位置付けられず所定の深さ位置に均一に改質層を形成することができない。
【0005】
上述した問題を解消するために、被加工物を保持するチャックテーブルに保持されたウエーハに形成された分割予定ラインの上面高さ位置を計測して各分割予定ラインの上面高さ位置情報を作成し、ウエーハの内部に集光点を位置付けてレーザー光線を分割予定ラインに沿って照射することにより改質層を形成する際には、上記上面高さ位置情報に基づいて集光レンズによる集光点を調整する集光点位置調整手段を上面高さ位置に対応して制御するようにした技術が下記特許文献2、特許文献3、特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献2】特開2011−122894号公報
【特許文献3】特開2012−2604号公報
【特許文献4】特開2009−63446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、チャックテーブルに保持された被加工物の上面高さ位置情報に基づいて集光点位置調整手段を作動しても高さ位置情報に追随せず僅かに遅れて作動することがあり、適正な位置にレーザー光線の集光点を位置付けることができず加工精度が悪化するという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、チャックテーブルに保持された被加工物の上面高さ位置情報に追随して集光点位置調整手段が作動しているか否かを確認する機能を備えたレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術的課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を集光して照射する対物集光レンズを備えたレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の上面高さ位置を検出する高さ位置検出手段と、該対物集光レンズを該チャックテーブルの保持面に対して垂直な方向(Z軸方向)に移動せしめる集光点位置調整手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向(X軸方向)に相対的に加工送りする加工送り手段と、該チャックテーブルのX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段と、該集光点位置調整手段と該加工送り手段および表示手段に制御信号を出力する制御手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該制御手段は、該加工送り手段を作動して該チャックテーブルに保持された被加工物をX軸方向に移動しつつ該高さ位置検出手段を作動して被加工物の高さ位置を計測して得た高さ計測値と該X軸方向位置検出手段からの検出信号に基づくX座標とを記憶する記憶手段を具備しており、該加工送り手段を作動して該チャックテーブルに保持された被加工物をX軸方向に移動しつつ該記憶手段に記憶されたX座標に対応する高さ計測値に基づいて該集光点位置調整手段を制御するとともにX座標に対応する高さ位置の基準高さ位置に対する変位量をX座標と対応して表示手段に表示して、該表示手段に表示するX座標と対応した該変位量のブレ幅が許容範囲であれば該レーザー光線照射手段の作動を可とし、X座標と対応した該変位量のブレ幅が許容範囲外である場合には該レーザー光線照射手段の作動を不可とする、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0010】
上制御手段は、加工送り手段と高さ位置検出手段および該集光点位置調整手段を作動しつつ、記憶手段に記憶されたX座標と対応した変位量におけるX座標と、チャックテーブルのX座標との間にズレを生じさせて変位量のブレ幅が許容範囲になるように調整し、変位量のブレ幅が許容範囲内になったときのX座標のズレ量を補正値として決定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるレーザー加工装置においては、制御手段は、加工送り手段を作動してチャックテーブルに保持された被加工物をX軸方向に移動しつつ高さ位置検出手段を作動して被加工物の高さ位置を計測して得た高さ計測値とX軸方向位置検出手段からの検出信号に基づくX座標とを記憶する記憶手段を具備しており、加工送り手段を作動してチャックテーブルに保持された被加工物をX軸方向に移動しつつ記憶手段に記憶されたX座標に対応する高さ計測値に基づいて集光点位置調整手段を制御するとともにX座標に対応する高さ位置の基準高さ位置に対する変位量をX座標と対応して表示手段に表示して、表示手段に表示するX座標と対応した変位量のブレ幅が許容範囲であれば該レーザー光線照射手段の作動を可とし、X座標と対応した変位量のブレ幅が許容範囲外である場合にはレーザー光線照射手段の作動を不可とするので、チャックテーブルに保持された被加工物の上面高さ位置情報に追随して集光点位置調整手段が作動しているか否かを確認することができるため、適正な位置にレーザー光線の集光点を位置付けることができ加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備される位置検出兼レーザー照射ユニットを構成する位置検出装置およびレーザー光線照射手段のブロック構成図。
図3図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
図4】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
図5図4に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着された保護テープの表面に貼着された状態を示す斜視図。
図6図4に示す半導体ウエーハが図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブルの所定位置に保持された状態における座標位置との関係を示す説明図。
図7図1に示すレーザー加工装置に装備された高さ位置検出手段によって実施される高さ位置検出工程の説明図。
図8図1に示すレーザー加工装置に装備された高さ位置検出手段によって実施された高さ位置検出工程で作成された高さ位置変位マップ。
図9図1に示すレーザー加工装置によって実施された集光点位置調整手段の作動確認工程の説明図。
図10図9に示す集光点位置調整手段の作動確認工程において被加工物からの反射光を受光した受光素子が出力するX座標に対応する電圧値を示す説明図。
図11図1に示すレーザー加工装置によって実施する改質層形成工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置1は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記X軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設された位置検出兼レーザー照射ユニット5とを具備している。
【0015】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面である保持面上に被加工物である例えば円形形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、半導体ウエーハ等の被加工物を保護テープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0016】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0017】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は、上記チャックテーブル36のX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。X軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することによりチャックテーブル36のX軸方向位置を求める。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。
【0018】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段384を備えている。このY軸方向位置検出手段384は、チャックテーブル36が配設された第2の滑動ブロック33のY軸方向位置を検出する。図示の実施形態におけるY軸方向位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することによりチャックテーブル36のY軸方向位置を求める。なお、上記Y軸方向位置検出手段384の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。
【0020】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上にY軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0021】
図示の実施形態のおける位置検出兼レーザー照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられた円筒形状のユニットハウジング52を具備しており、ユニットホルダ51が上記可動支持基台42の装着部422に一対の案内レール423、423に沿って移動可能に配設されている。ユニットホルダ51に取り付けられたユニットハウジング52には、上記チャックテーブル36に保持された被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出手段およびチャックテーブル36に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段が配設されている。この高さ位置検出手段およびレーザー光線照射手段について、図2を参照して説明する。
【0022】
図2には、干渉式高さ位置検出手段の一例が示されている。図示の実施形態における高さ位置検出手段6は、所定の波長領域を有する光を発する発光源61と、該発光源61からの光を第1の経路6aに導くとともに該第1の経路6aを逆行する反射光を第2の経路6bに導く第1の光分岐手段62と、第1の経路6aに導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズ63と、該コリメーションレンズ63によって平行光に形成された光を第3の経路6cと第4の経路6dに分ける第2の光分岐手段64とを具備している。
【0023】
発光源61は、例えば波長が820〜870nm領域の光を発光するLED、SLD、LD、ハロゲン電源、ASE電源、スーパーコンティニアム電源を用いることができる。上記第1の光分岐手段62は、偏波保持ファイバーカプラ、偏波保持ファイバーサーキュレーター、シングルモードファイバーカプラ、シングルモードファイバーカプラサーキュレーターなどを用いることができる。上記第2の光分岐手段64は、図示の実施形態においてはビームスプリッター641と、方向変換ミラー642とによって構成されている。なお、上記発光源61から第1の光分岐手段62までの経路および第1の経路6aは、光ファイバーによって構成されている。
【0024】
上記第3の経路6cには、第3の経路6cに導かれた光をチャックテーブル36に保持された被加工物Wに導く対物集光レンズ65と、該対物集光レンズ65と上記第2の光分岐手段64との間に集光レンズ66が配設されている。この集光レンズ66は、第2の光分岐手段64から第3の経路6cに導かれた平行光を集光し対物集光レンズ65内に集光点を位置付けて対物集光レンズ65からの光を擬似平行光に生成する。このように対物集光レンズ65と第2の光分岐手段64との間に集光レンズ66を配設して対物集光レンズ65からの光を擬似平行光に生成することにより、チャックテーブル36に保持された被加工物Wで反射した反射光が対物集光レンズ65と集光レンズ66と第2の光分岐手段64およびコリメーションレンズ63を介して逆行する際に第1の経路6aを構成する光ファイバーに収束させることができる。なお、対物集光レンズ65はレンズケース651に装着されており、このレンズケース651はボイスコイルモータやリニアモータ等からなる集光点位置調整手段650によって図2において上下方向即ちチャックテーブル36の保持面に対して垂直な集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動せしめられるようになっている。この集光点位置調整手段650は、後述する制御手段によって制御される。
【0025】
上記第4の経路6dには、第4の経路6dに導かれた平行光を反射して第4の経路6dに反射光を逆行せしめる反射ミラー67が配設されている。この反射ミラー67は、図示の実施形態においては上記対物集光レンズ65のレンズケース651に装着されている。
【0026】
上記第2の経路6bには、コリメーションレンズ68と回折格子69と集光レンズ70およびラインイメージセンサー71が配設されている。コリメーションレンズ68は、反射ミラー67によって反射し第4の経路6dと第2の光分岐手段64とコリメーションレンズ63および第1の経路6aを逆行して第1の光分岐手段62から第2の経路6bに導かれた反射光と、チャックテーブル36に保持された被加工物Wで反射し対物集光レンズ65と集光レンズ66と第2の光分岐手段64とコリメーションレンズ63および第1の経路6aを逆行して第1の光分岐手段62から第2の経路6bに導かれた反射光を平行光に形成する。上記回折格子69は、コリメーションレンズ68によって平行光に形成された上記両反射光の干渉を回折し、各波長に対応する回折信号を集光レンズ70を介してラインイメージセンサー71に送る。上記ラインイメージセンサー71は、回折格子69によって回折した反射光の各波長における光強度を検出し、検出信号を後述する制御手段に送る。
【0027】
後述する制御手段は、ラインイメージセンサー71による検出信号から分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、第3の経路6cにおけるチャックテーブル36に保持された被加工物Wまでの光路長と第4の経路6dにおける反射ミラー67までの光路長の光路長差を求め、該光路長差に基づいてチャックテーブル36の表面からチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面までの距離、即ち被加工物Wの上面高さ位置を求める。なお、分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて実行するフーリエ変換理論に基づく波形解析については、例えば特開2011−122894号公報に記載されており、詳細な説明は省略する。
【0028】
図2に基づいて説明を続けると、位置検出兼レーザー照射ユニット5のユニットハウジング52(図1参照)に配設されたレーザー光線照射手段8は、パルスレーザー光線発振手段81と、該パルスレーザー光線発振手段81から発振されたパルスレーザー光線を上記対物集光レンズ65に向けて方向変換するダイクロイックミラー82を具備している。パルスレーザー光線発振手段81は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器811と、これに付設された繰り返し周波数設定手段812とから構成されており、例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を発振する。ダイクロイックミラー82は、上記集光レンズ66と対物集光レンズ65との間に配設され、集光レンズ66からの光は通過させるが、パルスレーザー光線発振手段81から発振された例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を対物集光レンズ65に向けて方向変換する。従って、パルスレーザー光線発振手段81から発振されたパルスレーザー光線(LB)は、ダイクロイックミラー82によって90度方向変換されて対物集光レンズ65に入光し、対物集光レンズ65によって集光されてチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射される。従って、対物集光レンズ65は、レーザー光線照射手段8を構成する対物集光レンズとしての機能を有する。
【0029】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は、ユニットホルダ51を可動支持基台42の装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)即ちチャックテーブル36の保持面に対して垂直な方向に移動させるための集光点位置付け手段53を具備している。集光点位置付け手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、上記位置検出兼レーザー照射ユニット5を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することにより位置検出兼レーザー照射ユニット5を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することにより位置検出兼レーザー照射ユニット5を下方に移動するようになっている。
【0030】
図示の実施形態における位置検出兼レーザー光線照射ユニット5は、位置検出兼レーザー照射ユニット5を構成するユニットハウジング52の集光点位置調整方向(Z軸方向)位置を検出するためのZ軸方向位置検出手段54を具備している。Z軸方向位置検出手段54は、上記案内レール423、423と平行に配設されたリニアスケール54aと、上記ユニットホルダ51に取り付けられユニットホルダ51とともにリニアスケール54aに沿って移動する読み取りヘッド54bとからなっている。このZ軸方向位置検出手段54の読み取りヘッド54bは、図示の実施形態においては0.1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。
【0031】
上記位置検出兼レーザー照射ユニット5を構成するユニットハウジング52の前端部には、撮像手段85が配設されている。この撮像手段85は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0032】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は、図3に示す制御手段9を具備している。制御手段9はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)91と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)92と、後述する制御マップや被加工物の設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)93と、カウンター94と、入力インターフェース95および出力インターフェース96とを備えている。このように構成された制御手段9の入力インターフェース95には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向位置検出手段384、Z軸方向位置検出手段54、高さ位置検出手段6のラインイメージセンサー71、撮像手段85、入力手段90等からの検出信号が入力される。そして、制御手段9の出力インターフェース96からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、集光点位置調整手段650、レーザー光線照射手段8のパルスレーザー光線発振器811および繰り返し周波数設定手段812、表示手段900等に制御信号を出力する。
【0033】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図4には、被加工物としての半導体ウエーハの斜視図が示されている。図4に示す半導体ウエーハ10は、例えば厚みが200μmのシリコンウエーハからなっており、表面10aには格子状に形成された複数の分割予定ライン101によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように形成された半導体ウエーハ10は、図5に示すように環状のフレームFに装着されたポリオレフィン等の合成樹脂シートからなる例えば厚みが100μmの保護テープTに表面10a側を貼着する(保護テープ貼着工程)。従って、半導体ウエーハ10は、裏面10bが上側となる。
【0034】
上述したレーザー加工装置を用い、上記半導体ウエーハ10の分割予定ライン101に沿ってレーザー光線を照射し、半導体ウエーハ10の内部に分割予定ライン101に沿って改質層を形成するレーザー加工の実施形態について説明する。なお、半導体ウエーハ10の内部に改質層を形成する際に、半導体ウエーハの厚さにバラツキがあると、所定の深さに均一に改質層を形成することができない。そこで、レーザー加工を施す前に、上述した高さ位置検出手段6によってチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10の上面高さ位置を計測する。
【0035】
チャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10の上面高さ位置を計測するには、先ず上述した図1に示すレーザー加工装置1のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ10の保護テープT 側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、保護テープTを介して半導体ウエーハ10をチャックテーブル36上に吸引保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル36上に保護テープTを介して保持された半導体ウエーハ10は、裏面10bが上側となる。このようにして、ウエーハ保持工程を実施したならば、加工送り手段37を作動して半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36を撮像手段85の直下に位置付ける。
【0036】
チャックテーブル36が撮像手段85の直下に位置付けられると、撮像手段85および制御手段9によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段85および制御手段9は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されている分割予定ライン101と、該分割予定ライン101に沿って半導体ウエーハ10の位置検出兼レーザー照射ユニット5を構成する高さ位置検出手段6の対物集光レンズ65との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、検出位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ10に形成されている所定方向と直交する方向に形成されている分割予定ライン101に対しても、同様に検出位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ10の分割予定ライン101が形成されている表面10aは下側に位置しているが、撮像手段85が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面10bから透かして分割予定ライン101を撮像することができる。
【0037】
上述したようにアライメントが行われると、チャックテーブル36上の半導体ウエーハ10は、図6の(a)に示す座標位置に位置付けられた状態となる。なお、図6の(b)はチャックテーブル36即ち分割予定ラインを図6の(a)に示す状態から90度回転した状態を示している。
【0038】
なお、図6の(a)および図6の(b)に示す座標位置に位置付けられた状態における光デバイスウエーハ10に形成された各分割予定ライン101の送り開始位置座標値(A1,A2,A3・・・An)と送り終了位置座標値(B1,B2,B3・・・Bn)および送り開始位置座標値(C1,C2,C3・・・Cn)と送り終了位置座標値(D1,D2,D3・・・Dn)は、その設計値のデータが制御手段9のランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納されている。
【0039】
上述したようにチャックテーブル36上に保持されている半導体ウエーハ10に形成されたストリート101を検出し、検出位置のアライメントが行われたならば、チャックテーブル36を移動して図6の(a)において最上位のストリート101を位置検出兼レーザー照射ユニット5を構成する高さ位置検出手段6の対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、更に図7示すように半導体ウエーハ10のストリート101の一端(図7において左端)である送り開始位置座標値(A1)(図6の(a)参照)を対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、高さ位置検出手段6を作動するとともに、チャックテーブル36を図7において矢印X1で示す方向に所定の送り速度(例えば、200mm/秒)で移動し、X軸方向位置検出手段374からの検出信号に基づいて送り終了位置座標値(B1)まで移動する(高さ位置検出工程)。この結果、半導体ウエーハ10の図6の(a)において最上位のストリート101に沿って上面の高さ位置が高さ位置検出手段6によって上述したように計測される。この計測された高さ位置は、上記制御手段9のランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納される。そして、制御手段9は、ランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納された図6の(a)において最上位のストリート101における開始位置座標値(A1)から送り終了位置座標値(B1)までの高さ位置の基準高さ位置に対する変位量を求め、図8に示す高さ位置変位マップを作成しランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納する。この高さ位置検出工程を半導体ウエーハ10に形成された全てのストリート101に沿って実施し、上記高さ位置変位マップを作成してランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納する。
【0040】
上述した高さ位置検出工程を実施したならば、計測された半導体ウエーハ10の高さ位置の基準高さ位置に対する変位量を求めた高さ位置変位マップに従って、上記集光点位置調整手段650が追随して作動するか否かを確認する集光点位置調整手段の作動確認工程を実施する。この集光点位置調整手段の作動確認工程は、上記高さ位置変位マップを作成する際における、制御手段9に入力されたX軸方向位置検出手段374からの検出信号と高さ位置検出手段6からの高さ位置信号が信号伝達経路等の関係で必ずしも同時刻に検出された信号でない場合があり、この信号のズレを確認するとともに、集光点位置調整手段650の応答遅れを確認するために実施する。
【0041】
集光点位置調整手段650の作動確認工程は、先ず、高さ位置検出工程が実施された半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル36を移動して例えば図6の(a)において最上位のストリート101を位置検出兼レーザー照射ユニット5を構成する高さ位置検出手段6の対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、更に図9に示すように半導体ウエーハ10のストリート101の一端(図9において左端)である送り開始位置座標値(A1)(図6の(a)参照)を対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、制御手段9は、集光点位置付け手段53を作動して対物レンズ65の集光点位置を基準高さ位置に位置付ける。次に、制御手段9は、加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を図9において矢印X1で示す方向に所定の送り速度(例えば、200mm/秒)で移動しつつ、ランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納された高さ位置変位マップのX座標における基準高さ位置に対する変位量に対応して集光点位置調整手段650を制御するとともに、高さ位置検出手段6を作動して高さ位置検出手段6が検出する高さ情報をX軸方向位置検出手段374からの検出信号に基づくX座標と対応して求める。そして、制御手段9はX座標に対応する高さ位置の基準高さ位置に対する変位量を求め、図10の(a)または(b)に示すように表示手段900に表示する。
【0042】
上述した集光点位置調整手段の作動確認工程において表示手段900に表示されたX座標に対応する高さ位置の基準高さ位置に対する変位量は、高さ位置変位マップが制御手段9に入力されたX軸方向位置検出手段374からの検出信号と高さ位置検出手段6からの高さ位置信号が同時刻に検出された信号に基づいて作成され、且つ、集光点位置調整手段650の作動遅れがない場合には、集光点位置調整手段650の作動が半導体ウエーハ10の高さ位置に適正に追随して図10の(a)に示すようにX軸に沿って略直線となる。一方、高さ位置変位マップが制御手段9に入力されたX軸方向位置検出手段374からの検出信号と高さ位置検出手段6からの高さ位置信号が時間的にズレた信号に基づいて作成されたものであり、または、集光点位置調整手段650の作動遅れがある場合には、集光点位置調整手段650の作動が半導体ウエーハ10の高さ位置に適正に追随せず、図10の(b)に示すようにX座標に対応する高さ位置の基準高さ位置に対する変位量が大きくブレル。このX座標に対応する高さ位置の基準高さ位置に対する変位量のブレ幅が許容範囲であれば、制御手段9は高さ位置変位マップに基づく制御は適正であると判断して表示手段900に適正表示をする。一方、X座標に対応する高さ位置の基準高さ位置に対する変位量のブレ幅が許容範囲外である場合には、制御手段9は高さ位置変位マップおよび/または集光点位置調整手段650の応答性は適正でないと判断して表示手段900に不可表示をする。
【0043】
上述したように表示手段900に不可表示されたらオペレータは、上記X座標に対応する高さ位置の基準高さ位置に対する変位量のブレ幅に対応する補正値を求め補正値検出工程を実施する。即ち、オペレータが入力手段90から補正値検出指示信号を入力すると、制御手段9は、上記作動確認工程と同様に加工送り手段37、高さ位置検出手段6、集光点位置調整手段650を作動しつつ、ランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納された高さ位置変位マップにおけるX座標と、チャックテーブルのX座標との間にズレを生じさせて高さ位置の基準高さ位置に対する変位量のブレ幅が許容範囲になるように調整していく。そして、制御手段9は、高さ位置の基準高さ位置に対する変位量のブレ幅が許容範囲内になったときのX座標のズレ量(xμm)を補正値として決定し、ランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納するとともに、表示手段900に表示する。
【0044】
以上のようにして集光点位置調整手段の作動確認工程および補正値検出工程を実施したならば、半導体ウエーハ10の内部に分割予定ライン101に沿って改質層を形成する改質層形成工程を実施する。
この改質層形成工程を実施するためには、先ずチャックテーブル36を移動して図6の(a)において最上位の分割予定ライン101を対物集光レンズ65の直下に位置付ける。そして、更に図11の(a)で示すように分割予定ライン101の一端(図11の(a)において左端)である送り開始位置座標値(A1)(図6の(a)参照)を対物集光レンズ65の直下に位置付ける。そして、レーザー光線照射手段8を構成する対物集光レンズ65から照射されるパルスレーザー光線の集光点Pを分割予定ライン101の裏面10b(上面)から所定の深さ位置に位置付ける。次に、レーザー光線照射手段8を作動し、対物レンズ65から半導体ウエーハ10に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度(例えば、200mm/秒)で移動せしめる(改質層形成工程)。そして、図11の(b)で示すように対物集光レンズ65の照射位置が分割予定ライン101の他端(図11の(b)において右端)に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともに、チャックテーブル36の移動を停止する。この改質層形成工程においては、制御手段9はランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納された半導体ウエーハ10の分割予定ライン101における高さ位置変位マップに基いて、集光点位置調整手段650を制御し、対物集光レンズ65をZ軸方向(集光点位置調整方向)に移動して図11の(b)で示すように半導体ウエーハ10の分割予定ライン101における裏面10b(上面)の高さ位置に対応して上下方向に移動せしめる。このとき、上記補正値検出工程に求めたズレ量(xμm)(補正値)が設定されている場合には、X軸方向位置検出手段374からの検出信号をズレ量(xμm)(補正値)によって補正した値をチャックテーブルのX座標とする。この結果、光デバイスウエーハ10の内部には、図11の(b)で示すように裏面10b(上面)から所定の深さ位置に裏面10b(上面)と平行に改質層110が形成される。
【0045】
上記改質層形成工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4レーザー
波長 :1064nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :100kHz
平均出力 :0.5W
パルス幅 :120ns
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :200mm/秒
【0046】
以上のようにして、半導体ウエーハ10の所定方向に延在する全ての分割予定ライン101に沿って上記改質層形成工程を実行したならば、チャックテーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各分割予定ライン101に沿って上記改質層形成工程を実行する。このようにして、半導体ウエーハ10に形成された全ての分割予定ライン101に沿って上改質層形成工程を実行したならば、半導体ウエーハ10を保持しているチャックテーブル36は、最初に半導体ウエーハ10を吸引保持した位置に戻され、ここで半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、半導体ウエーハ10は、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【0047】
以上のように、図示の実施形態におけるレーザー加工装置1においては、制御手段9は、加工送り手段37を作動してチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10をX軸方向に移動しつつ高さ位置検出手段6を作動して半導体ウエーハ10の高さ位置を計測して得た高さ計測値とX軸方向位置検出手段374からの検出信号に基づくX座標とを記憶する記憶手段としてのランダムアクセスメモリ(RAM)93を具備しており、ランダムアクセスメモリ(RAM)93に記憶されている高さ位置変位マップに従って加工送り手段37を作動してチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10をX座標に沿って移動しつつX座標に対応する高さ計測値に基づいて集光点位置調整手段650を制御してX座標における高さ位置検出手段6が検出する高さ情報を表示手段900に表示することで、チャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10の上面高さ位置情報に追随して集光点位置調整手段650が作動しているか否かを確認することができるため、適正な位置にレーザー光線の集光点を位置付けることができ加工精度を向上させることができる。
【0048】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。例えば、上述した実施形態においては高さ位置検出手段として干渉式の高さ位置検出手段を例示して説明したが、高さ位置検出手段としては共焦点光学系検出手段、非焦点収差検出手段、レーザー変位系(三角法)検出手段等を用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1:レーザー加工装置
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
374:X軸方向位置検出手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:位置検出兼レーザー照射ユニット
6:高さ位置検出手段
61:発光源
62:第1の光分岐手段
63:コリメーションレンズ
64:第2の光分岐手段
65:対物集光レンズ
650:集光点位置調整手段
66:集光レンズ
67:反射ミラー
68:コリメーションレンズ
69:回折格子
70:集光レンズ
71:ラインイメージセンサー
8:レーザー光線照射手段
81:パルスレーザー光線発振手段
82:ダイクロイックミラー
9:制御手段
10:半導体ウエーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11