特許第6148108号(P6148108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148108
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/067 20060101AFI20170607BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20170607BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20170607BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20170607BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   B23K26/067
   B23K26/064 Z
   B23K26/53
   H01S3/00 B
   H01S3/10 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-162547(P2013-162547)
(22)【出願日】2013年8月5日
(65)【公開番号】特開2015-30022(P2015-30022A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】沢辺 大樹
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−99914(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/084874(WO,A1)
【文献】 特開2007−931(JP,A)
【文献】 特開2011−5537(JP,A)
【文献】 特開2011−25304(JP,A)
【文献】 特開平4−89192(JP,A)
【文献】 特開2009−39733(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0146796(US,A1)
【文献】 特開2012−210658(JP,A)
【文献】 特表2006−512712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
H01S 3/00
H01S 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする加工送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、パルスレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振手段と、該パルスレーザー光線発振手段が発振したパルスレーザー光線を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射する集光器と、該パルスレーザー光線発振手段と該集光器との間に配設され該パルスレーザー光線発振手段が発振したパルスレーザー光線を分光する分光手段と、を具備し、
該分光手段は、該パルスレーザー光線発振手段が発振したパルスレーザー光線の偏光面の角度を変更する1/2波長板と、該1/2波長板を通過したパルスレーザー光線を常光と異常光に分光する2種類の結晶体が凹面と凸面の湾曲面で結合した複屈折レンズと、該1/2波長板を通過したパルスレーザー光線に直交する方向に該複屈折レンズを移動して該湾曲面に対する入射角を変更して分光角度を調整する分光角度調整手段と、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該複屈折レンズと集光器との間には、該パルスレーザー光線発振手段が発振した直線偏光のパルスレーザー光線を円偏光に変更する1/4波長板が配設されている、請求項1記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスウエーハや半導体ウエーハ等の被加工物にレーザー加工を施すためのレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光デバイス製造工程においては、略円板形状であるサファイア基板、炭化珪素基板、窒化ガリウム基板等の表面にn型半導体層およびp型半導体層からなる発光層が積層され格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスを形成して光デバイスウエーハを構成する。そして、光デバイスウエーハをストリートに沿って分割することにより個々の光デバイスを製造している。
【0003】
上述した光デバイスウエーハのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれている切削装置によって行われている。この切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる切削送り手段とを具備している。切削手段は、回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードおよび回転スピンドルを回転駆動する駆動機構を含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって基台に固定し厚さ20μm程度に形成されている。
【0004】
しかるに、光デバイスウエーハを構成するサファイア基板、炭化珪素基板、窒化ガリウム基板等はモース硬度が高いため、上記切削ブレードによる切断は必ずしも容易ではなく、生産性が悪いという問題がある。
【0005】
上述した問題を解消するために、光デバイスウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を位置付けてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法が試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、ウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線をウエーハの一方の面側から内部に集光点を位置付けてストリートに沿って照射することによりウエーハの内部にストリートに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、ウエーハを分割する技術である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、光デバイスウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線をストリートに沿って照射することによりストリートに沿ってレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝が形成されたストリートに沿って外力を加えることにより、ウエーハを分割する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−114018号公報
【特許文献2】特開2008−311404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、光デバイスウエーハにストリートに沿って改質層やレーザー加工溝を形成した後、光デバイスウエーハを改質層やレーザー加工溝を形成されたストリートに沿って分割すると、分割面が平坦面となって発光層からの一部の光が基板内に閉じ込められ、光デバイスの輝度の低下を招くという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、光デバイスの輝度が向上するように光デバイスウエーハをストリートに沿って分割するためのレーザー加工を施すことができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術的課題を解決するために、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする加工送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、パルスレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振手段と、該パルスレーザー光線振手段が発振したパルスレーザー光線を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射する集光器と、該パルスレーザー光線発振手段と該集光器との間に配設され該パルスレーザー光線発振手段が発振したパルスレーザー光線を分光する分光手段と、を具備し、
該分光手段は、該パルスレーザー光線発振手段が発振したパルスレーザー光線の偏光面の角度を変更する1/2波長板と、該1/2波長板を通過したパルスレーザー光線を常光と異常光に分光する2種類の結晶体が凹面と凸面の湾曲面で結合した複屈折レンズと、該1/2波長板を通過したパルスレーザー光線に直交する方向に該複屈折レンズを移動して該湾曲面に対する入射角を変更して分光角度を調整する分光角度調整手段と、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0011】
上記複屈折レンズと集光器との間には、該パルスレーザー光線発振手段が発振した直線偏光のパルスレーザー光線を円偏光に変更する1/4波長板が配設されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーザー加工装置においては、レーザー光線照射手段は、パルスレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振手段と、該パルスレーザー光線発振手段が発振したパルスレーザー光線を集光してチャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射する集光器と、パルスレーザー光線発振手段と集光器との間に配設されパルスレーザー光線発振手段が発振したパルスレーザー光線を分光する分光手段とを具備し、分光手段は、パルスレーザー光線発振手段が発振したパルスレーザー光線の偏光面の角度を変更する1/2波長板と、該1/2波長板を通過したパルスレーザー光線を常光と異常光に分光する2種類の結晶体が凹面と凸面の湾曲面で結合した複屈折レンズと、該複屈折レンズを1/2波長板を通過したパルスレーザー光線に直交する方向に移動して湾曲面に対する入射角を変更して分光角度を調整する分光角度調整手段と具備しているので、パルスレーザー光線発振手段によって発振されたパルスレーザー光線を常光と異常光に分光するとともに、常光の集光点と異常光の集光点をX軸方向およびY軸方向に互いに間隔をもって位置付けることができる。従って、例えば光デバイスウエーハのストリートに沿って破断起点となる改質層またはレーザー加工孔を形成する際に、X軸方向およびY軸方向に互いに間隔をもって改質層またはレーザー加工孔を形成することができるため、光デバイスウエーハを改質層またはレーザー加工孔が形成されたストリートに沿って個々の光デバイスに分割すると、破断面がジグザグな形状に形成されるので、光デバイスの輝度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段のブロック構成図。
図3図2に示すレーザー光線照射手段のパルスレーザー光線発振手段が発振したパルスレーザー光線を分光する分光手段を構成する分光角度調整手段の斜視図。
図4図2に示すレーザー光線照射手段のパルスレーザー光線発振手段が発振したパルスレーザー光線を分光する分光手段を構成する複屈折レンズにおけるパルスレーザー光線の入射位置を示す説明図。
図5図2に示すレーザー光線照射手段の集光レンズによって集光された常光と異常光の集光点を示す説明図。
図6図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
図7】被加工物としての光デバイスウエーハの斜視図および要部拡大断面図。
図8図7に示す光デバイスウエーハの表面に保護テープを貼着する保護部材貼着工程を示す説明図。
図9図1に示すレーザー加工装置によって実施する改質層形成工程の説明図。
図10図9に示す改質層形成工程が実施された光デバイスウエーハが分割された光デバイスの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記矢印Xで示す方向と直角な矢印Yで示す割り出し方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示す焦点位置調整方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0015】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上に矢印Xで示す方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上に矢印Xで示す方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成され被加工物保持面361を備えており、チャックテーブル36上に被加工物としてのウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。また、チャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。
【0016】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面に矢印Yで示す方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられる。
【0017】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿って矢印Yで示す方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0018】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面に矢印Zで示す方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿って矢印Yで示す方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段6を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、矢印Zで示す方向に移動可能に支持される。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す方向に移動させるための集光点位置調整手段53を具備している。集光点位置調整手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転または逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザー光線照射手段6を一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においては、パルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段6を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段6を下方に移動するようになっている。
【0021】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射手段6は、上記ユニットホルダ51に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング61を含んでいる。このレーザー光線照射手段6について、図2を参照して説明する。
図2に示すレーザー光線照射手段6は、ケーシング61内に配設されたパルスレーザー光線発振手段62と、このパルスレーザー光線発振手段62が発振するパルスレーザー光線の出力を調整する出力調整手段63と、該出力調整手段63によって出力が調整されたパルスレーザー光線のビーム径を縮小する(例えば、ビーム径をφ4mmからφ1mmに縮小する)ビームエキスパンダー64と、該ビームエキスパンダー64によってビーム径が縮小されたパルスレーザー光線を分光する分光手段65と、該分光手段65によって分光された直線偏光のパルスレーザー光線を円偏光に変更する1/4波長板66と、該1/4波長板66によって円偏光に変換されたパルスレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射せしめる集光器67と、を含んでいる。パルスレーザー光線発振手段62は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器621と、これに付設された繰り返し周波数設定手段622とから構成されている。このように構成されたパルスレーザー光線発振手段62は、直線偏光のパルスレーザー光線LBを発振する。
【0022】
レーザー光線照射手段6を構成する分光手段65は、図示の実施形態においては1/2波長板651と複屈折レンズ652と分光角度調整手段653を具備している。1/2波長板651は、回動することによりパルスレーザー光線発振手段62によって発振されビームエキスパンダー64によってビーム径が縮小されたパルスレーザー光線LBの偏光面を複屈折レンズ652に対して45度となるように調整する。複屈折レンズ652は、凹面を有するYVO4結晶体652a と、凸面を有するLASF35ガラス体652bとによって互いに凹面と凸面の湾曲面で結合して構成されており、ビームエキスパンダー64によってビーム径が縮小されたパルスレーザー光線LBを常光LB1と異常光LB2に分光する。
【0023】
分光手段65を構成する分光角度調整手段653は、複屈折レンズ652を1/2波長板651を通過したパルスレーザー光線LBに直交する方向に移動して凹面と凸面の湾曲面に対する入射角を変更して分光角度を調整する機能を有する。この分光角度調整手段653について、図3を参照して説明する。
図3に示す実施形態における分光角度調整手段653は、上記複屈折レンズ652を保持するレンズ保持ケース654と、該レンズ保持ケース654を矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に支持する移動テーブル655と、該移動テーブル655を矢印Yで示す割り出し方向に移動可能に支持する一対の案内レール656、656と、レンズ保持ケース654を矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめる第1の移動手段657と、移動テーブル655を矢印Yで示す割り出し方向に移動せしめる第2の移動手段658とからなっている。なお、第1の移動手段657は、第1のパルスモータ657aと、該第1のパルスモータ657aに連結された雄ネジロッド657bと、レンズ保持ケース654に結合され雄ネジロッド657bが螺合する雌ネジブロック657cとによって構成され、第1のパルスモータ657aによって雄ネジロッド657bを正転および逆転駆動することにより、レンズ保持ケース654を矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめる。また、第2の移動手段658は、第2のパルスモータ658aと、該第2のパルスモータ658aに連結された雄ネジロッド658bと、レンズ保持ケース654に結合され雄ネジロッド658bが螺合する雌ネジブロック658cとによって構成され、第2のパルスモータ658aによって雄ネジロッド658bを正転および逆転駆動することにより、移動テーブル655を矢印Yで示す割り出し方向に移動せしめる。このように構成された分光角度調整手段653は、第1のパルスモータ657aを作動してレンズ保持ケース654を矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめるとともに、第2のパルスモータ658aを作動して移動テーブル655を矢印Yで示す割り出し方向に移動せしめることにより、複屈折レンズ652における上記パルスレーザー光線LBの入射位置を図4の(a)に示すように複屈折レンズ652の中心(O)から例えばxa,ybに位置付ける。この複屈折レンズ652におけるパルスレーザー光線LBの入射位置が変更することにより、複屈折レンズ652を構成する凹面を有するYVO4結晶体652a と凸面を有するLASF35ガラス体652bとが互いに凹面と凸面が結合された湾曲面に対する入射角を変更することができ、図4の(b)に示すようにパルスレーザー光線LBの入射位置に応じて常光LB1と異常光LB2との分光角度は変化する。即ち、パルスレーザー光線LBの入射位置が複屈折レンズ652の中心(O)の場合には分光されないが、パルスレーザー光線LBの入射位置が(a)の場合は常光LB1と異常光LB2が(α )の分光角度で分光し、パルスレーザー光線LBの入射位置が(b)の場合は常光LB1と異常光LB2が(β )の分光角度で分光する。このように、パルスレーザー光線LBの入射位置が複屈折レンズ652の中心(O)から外周側に位置付けられる程、常光LB1と異常光LB2の分光角度が大きくなる。
【0024】
上記1/4波長板66は、複屈折レンズ652によって分光された直線偏光の常光LB1と異常光LB2を円偏光に変更する。このように1/4波長板66を用いて直線偏光の常光LB1と異常光LB2を円偏光に変更するのは、常光LB1と異常光LB2による加工精度を一致させるためである。
【0025】
レーザー光線照射手段6を構成する集光器67は、上記複屈折レンズ652によって分光され1/4波長板66によって円偏光に変更された常光LB1と異常光LB2を図2において下方即ちチャックテーブル36に向けて方向変換する方向変換ミラー671と、該方向変換ミラー671によって方向変換された常光LB1と異常光LB2をそれぞれ集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射せしめる集光レンズ672とからなっている。この集光レンズ672によって集光された常光LB1と異常光LB2は、分光角度調整手段653によって距離が調整されるとともに常光LB1と異常光LB2を結ぶ線がX軸またはY軸に対して所定の角度に調整される。そして、図示の実施形態においては図5に示すように常光LB1と異常光LB2を結ぶ線がX軸に対して60゜で間隔d1が3μmとなるようにX軸方向およびY軸方向に互いにXaおよびYbの間隔をもって集光されるように調整されている。
【0026】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段6を構成するケーシング61の前端部には、上記レーザー光線照射手段6によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段7が配設されている。この撮像手段7は、図示の実施形態においては可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0027】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図6に示す制御手段8を具備している。制御手段8はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)81と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)82と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)83と、入力インターフェース84および出力インターフェース85とを備えている。制御手段8の入力インターフェース84には、撮像手段7や入力手段80等からの検出信号が入力される。そして、制御手段8の出力インターフェース85からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、パルスレーザー光線発振手段62を構成するパルスレーザー光線発振器621および繰り返し周波数設定手段622、出力調整手段63、分光角度調整手段653を構成する第1のパルスモータ657aおよび第2のパルスモータ658a等に制御信号を出力する。
【0028】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図7の(a)および(b)には、上記レーザー加工装置によって加工される被加工物であるウエーハとしての光デバイスウエーハの斜視図および要部を拡大して示す断面図が示されている。図7の(a)および(b)に示す光デバイスウエーハ10は、例えば厚さが150μmのサファイア基板100の表面100aにn型窒化物半導体層111およびp型窒化物半導体層112とからなる発光層110が例えば10μmの厚さで積層されている。そして、発光層110が格子状に形成された複数のストリート120によって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイス130が形成されている。以下、この光デバイスウエーハ10の内部にストリート120に沿って改質層を形成する方法について説明する。
【0029】
先ず、光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板100の表面100aに形成された光デバイス130を保護するために、光デバイスウエーハ10を構成する発光層110の表面110aに保護部材を貼着する保護部材貼着工程を実施する。即ち、図8に示すように光デバイスウエーハ10を構成する発光層110の表面110aに保護部材としての保護テープTを貼着する。なお、保護テープTは、図示の実施形態においては厚さが100μmのポリ塩化ビニル(PVC)からなるシート基材の表面にアクリル樹脂系の糊が厚さ5μm程度塗布されている。
【0030】
上述した保護部材貼着工程を実施したならば、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に光デバイスウエーハ10の保護テープT側を載置し、該チャックテーブル36上に光デバイスウエーハ10を吸着保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル36上に保持された光デバイスウエーハ10は、サファイア基板100の裏面100bが上側となる。
【0031】
上述したように光デバイスウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段7の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段7の直下に位置付けられると、撮像手段7および図示しない制御手段によって光デバイスウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段7および図示しない制御手段は、光デバイスウエーハ10の所定方向に形成されているストリート120と、ストリート120に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段6の集光器67との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、光デバイスウエーハ10に形成されている上記所定方向に対して直行する方向に延びるストリート120に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、光デバイスウエーハ10のストリート120が形成されている表面110aは下側に位置しているが、撮像手段7が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板100の裏面100bから透かしてストリート120を撮像することができる。なお、光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板は可視光を透過するので、必ずしも赤外線CCDを用いる必要はない。
【0032】
以上のようにしてチャックテーブル36上に保持された光デバイスウエーハ10に形成されているストリート120を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図9の(a)で示すようにチャックテーブル36をレーザー光線照射手段6の集光器67が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート120を集光器67の直下に位置付ける。そして、図9の(a)で示すように集光器67から照射されるパルスレーザー光線の常光LB1の集光点Paおよび異常光LB2の集光点Pbを光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板100の内部に位置付ける。なお、集光器67から照射されるパルスレーザー光線の常光LB1の集光点Paおよび異常光LB2の集光点Pbは、図9の(b)で示すようX軸方向およびY軸方向に互いにXaおよびYbの間隔をもって位置付けられる。
【0033】
次に、制御手段8は、パルスレーザー光線発振手段62を作動して集光器67から光デバイスウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線LBの常光LB1と異常光LB2を照射するとともに、加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を、図9の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる(改質層形成工程)。そして、図9の(c)で示すように集光器67の照射位置がストリート120の他端(図9の(c)において右端)に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともに、チャックテーブル36の移動を停止する。この結果、図9の(d)に示すように所定のストリート120に沿ってX軸方向にXaおよびY軸方向にYbの間隔もって常光LB1による複数の改質層S1と異常光LB2による複数の改質層S2が形成される。
【0034】
なお、上記改質層形成工程の加工条件は、例えば次のように設定されている。
波長 :1064nm
繰り返し周波数 :100kHz
出力 :1W
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :300mm/秒
【0035】
上記加工条件においては、図9の(d)において改質層S1と改質層S2との間隔d1が3μmで改質層S1および改質層S2のそれぞれのX軸方向の間隔d2が3μm(300mm/100kHz=3μm)となる。上述したように、光デバイスウエーハ10の所定方向に形成された全てのストリート120に沿って上記改質層形成工程を実施したならば、光デバイスウエーハ10を保持したチャックテーブル36を90度回動した位置に位置付ける。そして、光デバイスウエーハ10の上記所定方向と直交する方向に形成された全てのストリート120に沿って上記改質層形成工程を実施する。改質層形成工程が全てのストリート120に沿って実施された光デバイスウエーハ10は、改質層S1、S2が形成されたストリート120に沿って破断するウエーハ分割工程に搬送される。そして、ウエーハ分割工程において改質層S1、S2が形成されたストリート120に沿って外力を付与することにより、改質層S1、S2に沿って個々の光デバイス130に分割される。このようにして分割された光デバイス130は、図10に示すように破断面130aがジグザグな形状に形成されるので、輝度が向上する。
【0036】
次に、上記レーザー加工装置を用いた他の加工方法について説明する。
この加工方法においては加工条件を次の通り設定する。
波長 :355nm
繰り返し周波数 :100kHz
出力 :4W
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :300mm/秒
上記のように加工条件に設定し、シリコン等の基板の表面にSiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)が積層された機能層によって半導体デバイスを形成せしめた形態の半導体ウエーハにおいて、常光の集光点と異常光の集光点をX軸方向およびY軸方向に互いに間隔をもって位置付けてレーザー加工することにより、ストリートに沿って機能層を除去することができる。
【符号の説明】
【0037】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:レーザー光線照射ユニット
53:集光点位置調整手段
6:レーザー光線照射手段
62:パルスレーザー光線発振手段
63:出力調整手段
64:ビームエキスパンダー
65:分光手段
651:1/2波長板
652:複屈折レンズ
653:分光角度調整手段
66:1/4波長板
67:集光器
671:方向変換ミラー
672:集光レンズ
8:制御手段
10:光デバイスウエーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10