(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光通信信号を伝送する現用光伝送路に設けられる第1及び第2の光分岐結合部と、前記第1の光分岐結合部と前記第2の光分岐結合部との間に接続される迂回用光伝送路とを備える光伝送路二重化装置において、前記第1の光分岐結合部と前記第2の光分岐結合部との間の前記現用光伝送路と前記迂回用光伝送路とに生じる遅延時間差を計測するシステムであって、
前記第1の光分岐結合部において分岐されたのち前記現用光伝送路を経て前記第2の光分岐結合部に到達した光通信信号を電気的な第1のシリアル信号に変換し、前記第1の光分岐結合部において分岐されたのち前記迂回用光伝送路を経て前記第2の光分岐結合部に到達した光通信信号を電気的な第2のシリアル信号に変換する光電変換部と、
前記第1及び第2のシリアル信号のうち少なくとも一方のシリアル信号に遅延を与えることにより前記第1のシリアル信号と前記第2のシリアル信号との時間差を補正する遅延部と、
前記第1のシリアル信号を電気的な第1のパラレル信号に変換し、前記第2のシリアル信号を電気的な第2のパラレル信号に変換する信号変換部と、
前記第1のパラレル信号と前記第2のパラレル信号との第1の時間差を演算する時間差演算部と、
前記遅延部から出力された前記第1のシリアル信号と前記第2のシリアル信号との論理和を出力する論理回路と、
前記論理回路からの出力信号に基づいて、前記遅延部から出力された前記第1のシリアル信号と前記第2のシリアル信号との時間差の有無を確認する確認部と
を備え、
前記遅延部は、前記第1の時間差と、前記第1の時間差に前記第1及び第2のパラレル信号のビット数に応じた時間を加算した第2の時間差と、前記第1の時間差に前記ビット数に応じた時間を減算した第3の時間差とを順次補正するように、前記少なくとも一方のシリアル信号に遅延を与え、
前記時間差演算部は、前記第1ないし第3の時間差のうち、前記確認部において前記第1のシリアル信号と前記第2のシリアル信号との時間差が実質的に無いと確認された時間差を前記遅延時間差として選択する、遅延時間差計測システム。
光通信信号を伝送する現用光伝送路に設けられる第1及び第2の光分岐結合部と、前記第1の光分岐結合部と前記第2の光分岐結合部との間に接続される迂回用光伝送路とを備える光伝送路二重化装置において、前記第1の光分岐結合部と前記第2の光分岐結合部との間の前記現用光伝送路と前記迂回用光伝送路とに生じる遅延時間差を計測する方法であって、
前記第1の光分岐結合部において分岐されたのち前記現用光伝送路を経て前記第2の光分岐結合部に到達した光通信信号を電気的な第1のシリアル信号に変換し、前記第1の光分岐結合部において分岐されたのち前記迂回用光伝送路を経て前記第2の光分岐結合部に到達した光通信信号を電気的な第2のシリアル信号に変換する光電変換ステップと、
前記第1のシリアル信号を電気的な第1のパラレル信号に変換し、前記第2のシリアル信号を電気的な第2のパラレル信号に変換する信号変換ステップと、
前記第1のパラレル信号と前記第2のパラレル信号との第1の時間差を演算する時間差演算ステップと、
前記第1及び第2のシリアル信号のうち少なくとも一方のシリアル信号に遅延を与えることにより前記第1のシリアル信号と前記第2のシリアル信号との時間差を補正し、前記第1のシリアル信号と前記第2のシリアル信号との論理和を演算し、該演算結果に基づいて、前記第1のシリアル信号と前記第2のシリアル信号との時間差の有無を確認する遅延処理ステップと
を備え、
前記遅延処理ステップでは、前記第1の時間差と、前記第1の時間差に前記第1及び第2のパラレル信号のビット数に応じた時間を加算した第2の時間差と、前記第1の時間差に前記ビット数に応じた時間を減算した第3の時間差とが順次補正されるように、前記少なくとも一方のシリアル信号に遅延を与え、
前記第1ないし第3の時間差のうち、前記遅延処理ステップにおいて前記第1のシリアル信号と前記第2のシリアル信号との時間差が実質的に無いと確認された時間差を前記遅延時間差として選択する、遅延時間差計測方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。(1)本願発明による遅延時間差計測システムは、光通信信号を伝送する現用光伝送路に設けられる第1及び第2の光分岐結合部と、第1の光分岐結合部と第2の光分岐結合部との間に接続される迂回用光伝送路とを備える光伝送路二重化装置において、第1の光分岐結合部と第2の光分岐結合部との間の現用光伝送路と迂回用光伝送路とに生じる遅延時間差を計測するシステムであって、第1の光分岐結合部において分岐されたのち現用光伝送路を経て第2の光分岐結合部に到達した光通信信号を電気的な第1のシリアル信号に変換し、第1の光分岐結合部において分岐されたのち迂回用光伝送路を経て第2の光分岐結合部に到達した光通信信号を電気的な第2のシリアル信号に変換する光電変換部と、第1及び第2のシリアル信号のうち少なくとも一方のシリアル信号に遅延を与えることにより第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との時間差を調整する遅延部と、第1のシリアル信号を電気的な第1のパラレル信号に変換し、第2のシリアル信号を電気的な第2のパラレル信号に変換する信号変換部と、第1のパラレル信号と第2のパラレル信号との第1の時間差を演算する時間差演算部と、遅延部から出力された第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との論理和を出力する論理回路と、論理回路からの出力信号に基づいて、遅延部から出力された第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との時間差の有無を確認する確認部とを備え、遅延部は、第1の時間差と、第1の時間差に第1及び第2のパラレル信号のビット数に応じた時間を加算した第2の時間差と、第1の時間差にビット数に応じた時間を減算した第3の時間差とを順次補正するように、上記少なくとも一方のシリアル信号に遅延を与え、時間差演算部は、第1ないし第3の時間差のうち、確認部において第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との時間差が実質的に無いと確認された時間差を遅延時間差として選択する。
【0012】
(2)本願発明による遅延時間差計測方法は、光通信信号を伝送する現用光伝送路に設けられる第1及び第2の光分岐結合部と、第1の光分岐結合部と第2の光分岐結合部との間に接続される迂回用光伝送路とを備える光伝送路二重化装置において、第1の光分岐結合部と第2の光分岐結合部との間の現用光伝送路と迂回用光伝送路とに生じる遅延時間差を計測する方法であって、第1の光分岐結合部において分岐されたのち現用光伝送路を経て第2の光分岐結合部に到達した光通信信号を電気的な第1のシリアル信号に変換し、第1の光分岐結合部において分岐されたのち迂回用光伝送路を経て第2の光分岐結合部に到達した光通信信号を電気的な第2のシリアル信号に変換する光電変換ステップと、第1のシリアル信号を電気的な第1のパラレル信号に変換し、第2のシリアル信号を電気的な第2のパラレル信号に変換する信号変換ステップと、第1のパラレル信号と第2のパラレル信号との第1の時間差を演算する時間差演算ステップと、第1及び第2のシリアル信号のうち少なくとも一方のシリアル信号に遅延を与えることにより第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との時間差を補正し、第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との論理和を演算し、該演算結果に基づいて、第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との時間差の有無を確認する遅延処理ステップとを備え、遅延処理ステップでは、第1の時間差と、第1の時間差に第1及び第2のパラレル信号のビット数に応じた時間を加算した第2の時間差と、第1の時間差にビット数に応じた時間を減算した第3の時間差とが順次補正されるように、少なくとも一方のシリアル信号に遅延を与え、第1ないし第3の時間差のうち、遅延処理ステップにおいて第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との時間差が実質的に無いと確認された時間差を遅延時間差として選択する。
【0013】
上記の遅延時間差計測システム及び遅延時間差計測方法では、局側伝送装置(OLT)又は加入者側伝送装置(ONU)から送出された光通信信号が、第1の光分岐結合部によって分岐される。分岐された一方の光通信信号は、現用光伝送路を通って第2の光分岐結合部に達する。その後、この光通信信号は、第1のシリアル信号に変換されたのち第1のパラレル信号に変換される。また、分岐された他方の光通信信号は、迂回用光伝送路を通って第2の光分岐結合部に達する。その後、この光通信信号は、第2のシリアル信号に変換されたのち第2のパラレル信号に変換される。これらのパラレル信号は、時間差演算部(時間差演算ステップ)において互いに比較され、第1のパラレル信号と第2のパラレル信号との間の時間差(第1の時間差)が演算される。
【0014】
ここで、シリアル/パラレル変換用のクロック信号のタイミングが第1のパラレル信号と第2のパラレル信号とで一致している場合には、この第1の時間差が、第1の光分岐結合部と第2の光分岐結合部との間の現用光伝送路と迂回用光伝送路とに生じる遅延時間差と一致する。しかしながら、これらのクロック信号が互いにずれている場合、第1及び第2のパラレル信号のシリアル/パラレル変換タイミングが互いにずれるので、或る瞬間に第1及び第2のパラレル信号を抽出しても、一方のパラレル信号データに対して他方のパラレル信号データが、該一方のパラレル信号データと比較されるべきパラレル信号データの前若しくは後のパラレル信号データである可能性がある。これらのパラレル信号データを比較対象としてしまうと、パラレル信号データを構成するビット数に応じた時間だけ、遅延時間差に誤差が生じてしまう。
【0015】
そこで、上記の遅延時間差計測システム及び遅延時間差計測方法では、時間差演算部(時間差演算ステップ)において第1の時間差が算出されたのち、遅延部(遅延処理ステップ)において、第1の時間差と、第1の時間差に第1及び第2のパラレル信号のビット数に応じた時間を加算した第2の時間差と、第1の時間差に該ビット数に応じた時間を減算した第3の時間差とを順次補正するように、少なくとも一方のシリアル信号に遅延が与えられる。そして、論理回路(遅延処理ステップ)において、これらの第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との論理和を演算したのち、確認部(遅延処理ステップ)において、論理演算結果に基づき、遅延付与後の第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との時間差の有無を確認する。例えば、第1のシリアル信号のタイミングと第2のシリアル信号のタイミングとが互いに一致している場合には、それらの論理和を演算しても内容は全く変わらない。従って、遅延付与後の第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との間に時間差が無いことがわかる。その後、第1ないし第3の時間差のうち、確認部(遅延処理ステップ)において第1のシリアル信号と第2のシリアル信号との時間差が実質的に無いと確認された時間差が、遅延時間差として選択される。
【0016】
従って、本願発明の遅延時間差計測システム及び遅延時間差計測方法によれば、シリアル/パラレル変換クロックが互いにずれている場合であっても、算出される遅延時間差に誤差が生じることを回避し、現用光伝送路と迂回用光伝送路との遅延時間差を精度良く計測することができる。
【0017】
(3)上記の遅延時間差計測システムでは、遅延部が、少なくとも一方のシリアル信号をパラレル信号に変換するシリアル/パラレル変換部と、シリアル/パラレル変換部から出力されたパラレル信号に遅延を与える遅延処理部と、遅延処理部から出力されたパラレル信号をシリアル信号に変換するパラレル/シリアル変換部とを有することが好ましい。これにより、本願発明の遅延部を好適に構成することができる。
【0018】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態にかかる遅延時間差計測システム及び遅延時間差計測方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る遅延時間差計測システムを備える光伝送路二重化装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の光伝送路二重化装置1Aは、局側伝送装置(OLT)100と加入者側伝送装置(ONU)101とを接続する現用光伝送路102の一部区間(例えば、設備工事等により経路の変更が必要な区間)に設置される。光伝送路二重化装置1Aは、光分岐結合部11及び12、迂回用光伝送路13及び14、遅延時間調整部20、並びに遅延時間差計測システム30Aを備えている。
【0020】
光分岐結合部11は、本実施形態における第1の光分岐結合部であって、上記一部区間の一端側(本実施形態ではONU101側)における現用光伝送路102上に配置される。光分岐結合部11には、迂回用光伝送路13の一端が光結合される。光分岐結合部11は、ONU101から送出された光通信信号(上り信号)L
UPを、現用光伝送路102及び迂回用光伝送路13に分岐(分波)する。また、光分岐結合部11は、OLT100から送出されて現用光伝送路102を伝送された光通信信号(下り信号)L
DOWN1と、OLT100から送出されて迂回用光伝送路13及び14を伝送された光通信信号(下り信号)L
DOWN2とを互いに結合(合波)してONU101へ出力する。
【0021】
光分岐結合部12は、本実施形態における第2の光分岐結合部であって、上記一部区間の他端側(本実施形態ではOLT100側)における現用光伝送路102上に配置される。光分岐結合部12には、迂回用光伝送路14の一端が光結合される。光分岐結合部12は、OLT100から送出された光通信信号(下り信号)L
DOWNを、現用光伝送路102及び迂回用光伝送路14に分岐(分波)する。また、光分岐結合部12は、ONU101から送出されて現用光伝送路102を伝送された光通信信号(上り信号)L
UP1と、ONU101から送出されて迂回用光伝送路13及び14を伝送された光通信信号(上り信号)L
UP2とを互いに結合(合波)してOLT100へ出力する。
【0022】
遅延時間調整部20は、迂回用光伝送路13及び14と現用光伝送路102との間の遅延時間差を解消するために、迂回用光伝送路13及び14を伝送される光通信信号L
DOWN2及びL
UP2に遅延を与える。本実施形態の遅延時間調整部20は、光−電気変換器(O/E)21及び22と、可変遅延器23及び24と、電気−光変換器(E/O)25及び26とを有する。光−電気変換器(O/E)21は、WDMカプラ27を介して迂回用光伝送路14の他端から光通信信号L
DOWN2を受け、電気信号に変換する。可変遅延器23は、この電気信号を入力し、所定時間の遅延を与えたのち電気−光変換器(E/O)25へ出力する。電気−光変換器(E/O)25は、この電気信号を再び光通信信号L
DOWN2に変換し、WDMカプラ28を介して迂回用光伝送路13の他端に出力する。また、光−電気変換器(O/E)22は、WDMカプラ28を介して迂回用光伝送路13の他端から光通信信号L
UP2を受け、電気信号に変換する。可変遅延器24は、この電気信号を入力し、所定時間の遅延を与えたのち電気−光変換器(E/O)26へ出力する。電気−光変換器(E/O)26は、この電気信号を再び光通信信号L
UP2に変換し、WDMカプラ27を介して迂回用光伝送路14の他端に出力する。
【0023】
なお、本実施形態では、電気−光変換器(E/O)26は変換後の光通信信号L
UP2の波長を可変とする機能を有する。ONU101から送出される光通信信号L
UPの波長をλ1としたとき、電気−光変換器(E/O)26は、通常の光通信動作時には光通信信号L
UP2の波長を例えばλ1とし、後述する遅延時間計測時には光通信信号L
UP2の波長を例えばλ1とは異なるλ2とする。一実施例では、λ1=1.31μm、λ2=1.65μmである。
【0024】
遅延時間差計測システム30Aは、光分岐結合部11と光分岐結合部12との間の現用光伝送路102と迂回用光伝送路13及び14との間に生じる遅延時間差を計測するシステムである。遅延時間差計測システム30Aは、計測用光伝送路15を介して光分岐結合部12と光学的に結合されており、現用光伝送路102を伝送された光通信信号L
UP1と、迂回用光伝送路13及び14を伝送された光通信信号L
UP2とが合波された光信号L
UP3を、光分岐結合部12から受ける。
【0025】
図2及び
図3は、本実施形態の遅延時間差計測システム30Aの内部構成を示すブロック図である。
図2及び
図3に示されるように、遅延時間差計測システム30Aは、波長フィルタ31a及び31bと、第1の信号処理部33と、第2の信号処理部35と、時間差演算部39とを備えている。そして、第1の信号処理部33は、光電変換部33a、クロックデータリカバリ(CDR)回路33b、パラレルクロック生成部33c、シリアル/パラレル(S/P)変換部33d、遅延処理部33e、パラレル/シリアル(P/S)変換部33f、CDR回路33g、パラレルクロック生成部33h、S/P変換部33iを含んで構成されている。同様に、第2の信号処理部35は、光電変換部35a、CDR回路35b、パラレルクロック生成部35c、及びS/P変換部35d、遅延処理部35e、P/S変換部35f、CDR回路35g、パラレルクロック生成部35h、S/P変換部35iを含んで構成されている。なお、CDR回路33b及び35b、パラレルクロック生成部33c及び35c、S/P変換部33d及び35d、遅延処理部33e及び35e、並びにP/S変換部33f及び35fは、本実施形態における遅延部36を構成する。
【0026】
波長フィルタ31a及び31bは、光通信信号L
UP1と光通信信号L
UP2とが合波されて成る光信号L
UP3を入力する。波長フィルタ31aは、光通信信号L
UP1(波長λ1)を通過させ、波長フィルタ31bは、光通信信号L
UP2(波長λ2)を通過させる。波長フィルタ31aを通過した光通信信号L
UP1は、第1の信号処理部33の光電変換部33aに入力される。波長フィルタ31bを通過した光通信信号L
UP2は、第2の信号処理部35の光電変換部35aに入力される。
【0027】
光電変換部33aは、光通信信号L
UP1を受光し、光強度に応じた電気信号を生成することにより、光通信信号L
UP1を電気的な第1のシリアル信号S
1に変換する。光電変換部33aは、シリアル信号S
1を遅延部36に提供する。また、光電変換部35aは、光通信信号L
UP2を受光し、光強度に応じた電気信号を生成することにより、光通信信号L
UP2を電気的な第2のシリアル信号S
2に変換する。光電変換部35aは、シリアル信号S
2を遅延部36に提供する。
【0028】
遅延部36は、シリアル信号S
1及びS
2を入力し、シリアル信号S
1及びS
2のうち少なくとも一方のシリアル信号に遅延を与えることにより、シリアル信号S
1とシリアル信号S
2との時間差を補正する。本実施形態の遅延部36では、シリアル信号S
1をCDR回路33b及びS/P変換部33dが受ける。また、シリアル信号S
2をCDR回路35b及びS/P変換部35dが受ける。
【0029】
本実施形態では、ONU101から送出される光通信信号L
UPにおいて、データにクロックが重畳されている。CDR回路33bは、光通信信号L
UP1のクロックを表すクロック信号C
11をシリアル信号S
1から抽出し、抽出したクロック信号C
11をパラレルクロック生成部33cに提供する。また、CDR回路35bは、光通信信号L
UP2のクロックを表すクロック信号C
12をシリアル信号S
2から抽出し、抽出したクロック信号C
12をパラレルクロック生成部35cに提供する。
【0030】
パラレルクロック生成部33cは、クロック信号C
11に基づいて、S/P変換用のクロック信号C
21を生成する。同様に、パラレルクロック生成部35cは、クロック信号C
12に基づいて、S/P変換用のクロック信号C
22を生成する。S/P変換部33dは、クロック信号C
21を用いてシリアル信号S
1をパラレル信号P
1に変換する。また、S/P変換部35dは、クロック信号C
22を用いてシリアル信号S
2をパラレル信号P
2に変換する。
【0031】
遅延処理部33eは、パラレル信号P
1を入力し、パラレル信号P
1に遅延を与えることによりパラレル信号P
3を生成する。同様に、遅延処理部35eは、パラレル信号P
2を入力し、パラレル信号P
2に遅延を与えることによりパラレル信号P
4を生成する。このときの遅延時間(具体的には、遅延時間に相当するビット数)は、後述する時間差演算部39から提供される信号S
8によって制御される。すなわち、パラレル信号P
3とパラレル信号P
4とが信号S
8に示される時間差を有することとなるように、各々の遅延時間が制御される。遅延処理部33e,35eから出力されたパラレル信号P
3,P
4は、それぞれP/S変換部33f,35fに提供される。P/S変換部33fは、パラレル信号P
3をシリアル信号S
3に変換し、シリアル信号S
3を、
図3に示されるCDR回路33gを介してS/P変換部33iに提供する。また、P/S変換部35fは、パラレル信号P
4をシリアル信号S
4に変換し、シリアル信号S
4を、
図3に示されるCDR回路35gを介してS/P変換部35iに提供する。
【0032】
CDR回路33gは、光通信信号L
UP1のクロックを表すクロック信号C
31をシリアル信号S
3から抽出し、抽出したクロック信号C
31をパラレルクロック生成部33hに提供する。また、CDR回路35gは、光通信信号L
UP2のクロックを表すクロック信号C
32をシリアル信号S
4から抽出し、抽出したクロック信号C
32をパラレルクロック生成部35hに提供する。
【0033】
パラレルクロック生成部33hは、クロック信号C
31に基づいて、シリアル/パラレル変換用の第1のクロック信号C
41を生成する。同様に、パラレルクロック生成部35hは、クロック信号C
32に基づいて、シリアル/パラレル変換用の第2のクロック信号C
42を生成する。S/P変換部33iは、本実施形態における第1の信号変換部であって、クロック信号C
41を用いてシリアル信号S
3を電気的な第1のパラレル信号P
5に変換する。また、S/P変換部35iは、本実施形態における第2の信号変換部であって、クロック信号C
42を用いてシリアル信号S
4を電気的な第2のパラレル信号P
6に変換する。
【0034】
図4は、S/P変換部33i,35iにおけるシリアル/パラレル変換の様子を示すタイミングチャートである。
図4(a)〜
図4(c)はそれぞれシリアル信号S
3、クロック信号C
41、及びパラレル信号P
5を示しており、
図4(d)〜
図4(f)はそれぞれシリアル信号S
4、クロック信号C
42、及びパラレル信号P
6を示している。
図4(a)及び
図4(d)に示されるように、シリアル信号S
3及びS
4は、時系列に並ぶ複数のビットデータBDを含んでいる。便宜上、同図では、遅延時間差計測システム30Aへの到達が早い順に、各ビットデータBDに番号が付されている。
図4(b)及び
図4(e)に示されるように、クロック信号C
41及びC
42は、それぞれシリアル信号S
3及びS
4に含まれる二以上の所定数のビット列(例えば10ビット、20ビット等)にわたる周期を有する。
図4(c)及び
図4(f)に示されるように、パラレル信号P
5及びP
6は、クロック信号C
41及びC
42に示される一周期内に含まれる所定数のビット列に相当するデータからなる。なお
図4では、説明のため、クロック信号C
42がクロック信号C
41に対して2ビット分遅延している。同図には、クロック信号C
41とクロック信号C
42との時間差Td
1が示されている。
【0035】
時間差演算部39は、パラレル信号P
5とパラレル信号P
6とを相互に比較することにより、パラレル信号P
5とパラレル信号P
6との間の時間差(第1の時間差)を演算する。
図5は、時間差演算部39におけるパラレル信号P
5とパラレル信号P
6との比較の様子を説明するための図である。
図5(a)は、パラレル信号P
5に含まれるデータ列を表しており、
図5(b)は、パラレル信号P
6に含まれるデータ列を表している。なお、図中の数字は、1ビット毎に付されたデータ番号を示している。また、この例では、一単位のパラレル信号が10ビットの信号列によって構成されているが、一単位のパラレル信号を構成するビット数は任意である。
【0036】
時間差演算部39は、まず、複数単位のパラレル信号P
5の内容と、複数単位のパラレル信号P
6の内容とを相互に比較する(
図5(c))。そして、これらが互いに一致しない場合、例えばパラレル信号P
6の内容を1ビットずつシフトさせ、再び比較を行う(
図5(d))。時間差演算部39は、パラレル信号P
5の内容とパラレル信号P
6の内容とが互いに一致するまで、この動作を繰り返す(
図5(e))。そして、時間差演算部39は、パラレル信号P
5の内容とパラレル信号P
6の内容とが互いに一致したときのパラレル信号P
6のシフト数に相当する時間を、第1の時間差として算出する。
【0037】
また、本実施形態の遅延時間差計測システム30Aは、論理回路32と、確認部34とを更に備えている。論理回路32は、遅延部36から出力されたシリアル信号S
3とシリアル信号S
4との論理和(OR)を出力する。この論理和を示すシリアル信号S
5は、確認部34に提供される。確認部34は、論理回路32から出力されるシリアル信号S
5に基づいて、遅延部36から出力されたシリアル信号S
3とシリアル信号S
4との時間差の有無を確認する。
【0038】
本実施形態の確認部34は、CDR回路34aと、パラレルクロック生成部34bと、S/P変換部34cと、エラーチェック部34dとを有する。CDR回路34aは、クロック信号C
5をシリアル信号S
5から抽出し、抽出したクロック信号C
5をパラレルクロック生成部34bに提供する。パラレルクロック生成部34bは、クロック信号C
5に基づいて、シリアル/パラレル変換用のクロック信号C
6を生成する。S/P変換部34cは、クロック信号C
6を用いてシリアル信号S
5をパラレル信号P
7に変換する。エラーチェック部34dは、例えばパラレル信号P
7とパラレル信号P
5及びパラレル信号P
6との一致・不一致をチェックすることにより、論理和演算前のシリアル信号S
3とシリアル信号S
4とのタイミングが互いに一致している(すなわち、時間差が実質的に無い)か否かを確認する。或いは、エラーチェック部34dは、パラレル信号P
7のKエラーやCRCエラー、チェックサム(Checksum)等を確認することによって、シリアル信号S
3とシリアル信号S
4との時間差の有無を確認してもよい。
【0039】
以上の構成を備える本実施形態の遅延時間差計測システム30Aの動作について、本実施形態の遅延時間差計測方法と共に説明する。
図6は、遅延時間差計測システム30Aの動作及び遅延時間差計測方法を示すフローチャートである。なお、本実施形態の遅延時間差計測方法は、光通信信号を伝送する現用光伝送路102に設けられる光分岐結合部11,12と、光分岐結合部11と光分岐結合部12との間に接続される迂回用光伝送路13,14とを備える光伝送路二重化装置1Aにおいて、光分岐結合部11と光分岐結合部12との間の現用光伝送路102と迂回用光伝送路13,14との間に生じる遅延時間差を計測する方法である。
【0040】
図6に示されるように、本実施形態の遅延時間差計測方法の光電変換ステップS11では、光電変換部33aが、光分岐結合部11において分岐されたのち現用光伝送路102を経て光分岐結合部12に到達した光通信信号L
UP1を電気的なシリアル信号S
1に変換する。また、光電変換部35aが、光分岐結合部11において分岐されたのち迂回用光伝送路13,14を経て光分岐結合部12に到達した光通信信号L
UP2を電気的なシリアル信号S
2に変換する。
【0041】
続く信号変換ステップS12では、遅延部36は、シリアル信号S
1,S
2に対して全く時間差を与えずに、シリアル信号S
3,S
4を出力する。そして、S/P変換部33iは、S/P変換用のクロック信号C
41を用いてシリアル信号S
3を電気的なパラレル信号P
5に変換する。また、S/P変換部35iは、S/P変換用のクロック信号C
42を用いてシリアル信号S
4を電気的なパラレル信号P
6に変換する。そして、時間差演算ステップS13では、時間差演算部39が、パラレル信号P
5とパラレル信号P
6との間の第1の時間差T
1を算出する。
【0042】
ここで、シリアル信号S
3,S
4をシリアル/パラレル変換してパラレル信号P
5,P
6を生成する際に用いられるクロック信号C
41及びC
42のタイミングが互いに一致している場合には、この第1の時間差が、光分岐結合部11と光分岐結合部12との間の現用光伝送路102と迂回用光伝送路13及び14との間に生じる遅延時間差と一致する。しかし、これらのクロック信号C
41及びC
42が互いにずれている場合がある。
【0043】
図7は、クロック信号C
41及びC
42が互いにずれている場合の(a)クロック信号C
41、(b)イネーブル信号EN、(c)パラレル信号P
5、(d)クロック信号C
42、(e)イネーブル信号EN、及び(f)パラレル信号P
6を示すタイミングチャートである。なお、イネーブル信号ENはパラレル信号P
5,P
6の比較タイミングを示す信号であり、
図3に示されるイネーブル信号生成部38から時間差演算部39に提供される。
【0044】
図7に示されるように、クロック信号C
41及びC
42が時間差Td
1だけ互いにずれている場合、クロック信号C
41及びC
42に基づいて生成されたパラレル信号P
5,P
6にも相互にずれが生じる。従って、例えばイネーブル信号ENの立ち上がりによって示される或る瞬間の比較タイミング(図中のタイミングTC)でパラレル信号データを抽出したとき、パラレル信号P
5のデータD1に対し、パラレル信号P
6のデータがパラレル信号P
5と比較されるべきデータの前若しくは後のパラレル信号データ(例えばデータD2)である可能性がある。これらのパラレル信号データを比較対象としてしまうと、第1の時間差T
1が、本来の遅延時間差に対し、パラレル信号を構成するビット数(図では10ビット)に応じた時間だけずれてしまう。
【0045】
一例として、パラレル信号P
5,P
6を構成するビット数が10ビットであり、時間差演算部39において算出された第1の時間差T
1が3ビットに相当する時間である場合を考える。クロック信号C
41及びC
42にずれがなく、パラレル信号P
5,P
6の比較対象データが互いに本来比較されるべきデータ(例えば図
7のデータD1)同士である場合には、現用光伝送路102と迂回用光伝送路13,14とに生じている遅延時間差は3ビットである。しかし、クロック信号C
41及びC
42のずれによって、パラレル信号P
6のデータ列のうち本来比較対象とすべきデータD1の前に入力されたデータD0と、パラレル信号P
5の比較対象データD1との比較の結果として3ビットという値が算出されたのであれば、実際の遅延時間差は13ビットに相当する時間である。また、パラレル信号P
6のデータ列のうち本来比較対象とすべきデータD1の後に入力されたデータD2と、パラレル信号P
5の比較対象データD1との比較の結果として3ビットという値が算出されたのであれば、実際の遅延時間差は−7ビットに相当する時間である。
【0046】
そこで、続く遅延処理ステップS14では、遅延部36が、シリアル信号S
3,S
4のうち少なくとも一方に遅延を与えることにより、シリアル信号S
3とシリアル信号S
4との時間差を補正する。具体的には、遅延部36は先ず、第1の時間差T
1を補正するように、シリアル信号S
3,S
4のうち少なくとも一方に遅延を与える。もし、パラレル信号P
5,P
6の比較対象データが互いに本来比較されるべきデータ(例えば
図7のデータD1)同士である場合には、シリアル信号S
3,S
4の時間差はほぼゼロとなり、確認部34のエラーチェック部34dは、シリアル信号S
3,S
4の間に時間差が実質的に無いことを確認する。この場合、現用光伝送路102と迂回用光伝送路13,14とに生じている遅延時間差は第1の時間差T
1と等しい。
【0047】
しかし、パラレル信号P
5,P
6の比較対象データが互いに本来比較されるべきデータ同士ではない場合には、シリアル信号S
3,S
4のタイミングのずれが解消されないので、エラーチェック部34dは、シリアル信号S
3,S
4の間に時間差が存在することを確認する。この場合、遅延部36は、第1の時間差T
1にパラレル信号P
5,P
6のビット数(例えば10ビット)に応じた時間T
Aを加算した第2の時間差T
2(=T
1+T
A)を補正するように、シリアル信号S
3,S
4のうち少なくとも一方に遅延を与える。その結果、エラーチェック部34dがシリアル信号S
3,S
4に時間差が実質的に無いことを確認できれば、現用光伝送路102と迂回用光伝送路13,14とに生じている遅延時間差は第2の時間差T
2と等しい。また、依然としてエラーチェック部34dにおいて時間差の存在が認められる場合には、遅延部36は、第1の時間差T
1から時間T
Aを減算した第3の時間差T
3(=T
1−T
A)を補正するように、シリアル信号S
3,S
4のうち少なくとも一方に遅延を与える。その結果、エラーチェック部34dがシリアル信号S
3,S
4に時間差が実質的に無いことを確認できれば、現用光伝送路102と迂回用光伝送路13,14とに生じている遅延時間差は第3の時間差T
3と等しい。なお、遅延部36における第1の時間差T
1の補正、第2の時間差T
2の補正、及び第3の時間差T
3の補正は、上記の順序に限られるものではなく、任意の順序で行うことができる。また、これら3つの補正処理が全て完了する前にシリアル信号S
3,S
4に時間差が無いことが確認された場合には、残りの補正処理を省略してもよい。
【0048】
上記の遅延処理ステップS14ののち、選択ステップS15では、第1ないし第3の時間差T
1、T
2及びT
3のうち、シリアル信号S
3,S
4の時間差が実質的に無いと確認された時間差を遅延時間差として選択する。この選択は、例えば時間差演算部39において行われる。そして、選択された時間差が、現用光伝送路102と迂回用光伝送路13,14とに生じている遅延時間差として遅延時間差計測システム30Aから出力される。
【0049】
遅延時間差計測システム30Aから出力された遅延時間差を示す信号S
10は、
図1に示される制御装置45に提供される。制御装置45は、可変遅延器23及び24に対して遅延制御信号S
11を提供する。遅延制御信号S
11は、光通信信号L
DOWN2及びL
UP2がそれぞれ変換された電気信号に可変遅延器23及び24それぞれが付与すべき遅延時間を示している。可変遅延器23及び24それぞれは、遅延制御信号S
11に基づいて、光通信信号L
DOWN2及びL
UP2それぞれに対応する電気信号を遅延させることより、現用光伝送路102の遅延時間と迂回用光伝送路13,14の遅延時間との差をゼロに近づける(ステップS16)。
【0050】
以上に説明した本実施形態の遅延時間差計測システム30A及び遅延時間差計測方法によれば、シリアル/パラレル変換用のクロック信号C
41及びC
42が互いにずれている場合であっても、算出される遅延時間差に誤差が生じることを回避し、現用光伝送路102と迂回用光伝送路13,14との遅延時間差を精度良く計測することができる。
【0051】
また本実施形態のように、遅延部36は、シリアル信号S
1,S
2をパラレル信号P
1,P
2に変換するS/P変換部33d及び35dと、S/P変換部33d,35dから出力されたパラレル信号P
1,P
2に遅延を与える遅延処理部33e及び35eと、遅延処理部33e及び35eから出力されたパラレル信号P
3,P
4をシリアル信号S
3,S
4に変換するP/S変換部33f及び35fとを有することが好ましい。これにより、遅延部36を好適に構成することができる。
【0054】
本発明による遅延時間差計測システム及び遅延時間差計測方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態ではONU101から出力された光通信信号(上り信号)L
UPを用いて遅延時間を計測しているが、OLT100から出力された光通信信号(下り信号)L
DOWNを用いて遅延時間を計測してもよい。その場合、遅延時間差計測システム30Aは光分岐結合部11に結合されるとよく、光分岐結合部12が第1の光分岐結合部に相当し、光分岐結合部11が第2の光分岐結合部に相当することとなる。