特許第6149071号(P6149071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149071
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】基板をデチャックする方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20170607BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20170607BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   H05H1/46 M
   H01L21/68 R
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-133166(P2015-133166)
(22)【出願日】2015年7月2日
(62)【分割の表示】特願2012-501439(P2012-501439)の分割
【原出願日】2010年3月16日
(65)【公開番号】特開2015-216391(P2015-216391A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】12/410,202
(32)【優先日】2009年3月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マックミリン・ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】トン・ホセ・ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ワン・イェン−クン・ビクター
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−367967(JP,A)
【文献】 特開2005−129837(JP,A)
【文献】 特開2007−335657(JP,A)
【文献】 特開2005−217356(JP,A)
【文献】 特開2007−258636(JP,A)
【文献】 特開2002−134489(JP,A)
【文献】 特表2002−540624(JP,A)
【文献】 実開平07−033973(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0078891(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
H01L 21/67−21/683
H05H 1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバー内で静電チャックから基板をデチャックする方法であって、
処理ガスを前記プラズマ処理チャンバーに供給し、
前記処理ガスをプラズマ状態に励起させ、
前記プラズマ処理チャンバーを減圧かつ低RF電力状態に維持して、前記基板の上方に2mm以上の厚みのプラズマ・シースを形成し、
前記基板を、前記静電チャックの支持面の上方に、プラズマを不安定化させることなく、前記プラズマ・シース内の中間リフト位置まで持ち上げて、前記基板を前記中間リフト位置に保持し、
前記プラズマを消滅させ、
前記基板を、前記中間リフト位置の上方に、前記基板を前記プラズマ処理チャンバーから取り出すことのできる上昇位置まで持ち上げる、方法であり、
前記持ち上げは、リフトピンが前記静電チャックの上表面に対して少なくとも3つの位置に前記基板を昇降するガス圧式リフト機構によって行われ、
前記ガス圧式リフト機構は、
上部チャンバーと下部チャンバーとを有する筺体と、
前記上部チャンバー内で上下に移動するようにスライド可能に取り付けられる上部ピストンと、
前記下部チャンバー内で上下に移動するようにスライド可能に取り付けられる下部ピストンと、を備え、
前記下部チャンバーが、前記下部ピストンの移動上限を規定するハードストップを備え、
前記3つの位置が、
(1)前記上部ピストンが前記静電チャックの前記上表面の下方に前記リフトピンを位置させる下降位置と、
(2)前記下部ピストンが前記ハードストップに接して、前記下部ピストンのシャフトが前記上部ピストンを持ち上げる前記中間リフト位置と、
(3)前記基板を前記プラズマ処理チャンバーから取り出すことができる前記上昇位置と、であり、
前記上部ピストンと前記下部ピストンが、独立にガス圧により作動し、
前記筺体が、加圧ガス源に動作可能に接続される複数の吸気口を備え、
前記複数の吸気口が、前記上部ピストンの上方で前記上部チャンバーの一部と流体連結する第1の吸気口と、前記上部ピストンの下方で前記上部チャンバーの一部と流体連結する第2の吸気口と、前記下部ピストンの上方で前記下部チャンバーの一部と流体連結する第3の吸気口と、前記下部ピストンの下方で前記下部チャンバーの一部と流体連結する第4の吸気口と、を含み、
前記上部ピストンに印加される上向きの力が、前記第1の吸気口に供給される加圧ガスにより与えられる反対向きのガス圧により制限され、
前記基板のデチャックが実行されたことを示す指標として、前記リフトピンに印加される力を用いる、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記ガス圧式リフト機構は、前記上部ピストンから上方に伸長するシャフトに動作可能に接続されるリフトピン・ヨークを備える、方法。
【請求項3】
請求項に記載の方法であって、
前記第1の吸気口は、25〜65psigの圧力でガスを供給する第1のガス源に流体連結し、前記第2、第3及び第4の吸気口は、70〜120psimの圧力でガスを供給する第2のガス源に流体連結し、
前記ガス圧式リフト機構は、さらに、前記第1及び第2のガス源から前記複数の吸気口に選択的にガスを供給するように操作可能なコントローラーを備える、方法。
【請求項4】
請求項に記載の方法であって、
前記ガス圧式リフト機構は、前記第1のガス源と前記第2のガス源のいずれかに流体連結するように前記第1の吸気口を設定する働きをする弁を備える、方法。
【請求項5】
プラズマ処理チャンバー内で静電チャックから基板をデチャックする方法であって、
処理ガスを前記プラズマ処理チャンバーに供給し、
前記処理ガスをプラズマ状態に励起させ、
前記プラズマ処理チャンバーを減圧かつ低RF電力状態に維持して、前記基板の上方にプラズマ・シースを形成し、
前記基板を、前記静電チャックの支持面の上方に、プラズマを不安定化させることなく、前記プラズマ・シース内の中間リフト位置まで持ち上げて、前記基板を前記中間リフト位置に保持し、
前記プラズマを消滅させ、
前記基板を、前記中間リフト位置の上方に、前記基板を前記プラズマ処理チャンバーから取り出すことのできる上昇位置まで持ち上げる、方法であり、
前記持ち上げは、リフトピンが前記静電チャックの上表面に対して少なくとも3つの位置に前記基板を昇降するガス圧式リフト機構によって行われ、
前記ガス圧式リフト機構は、
上部チャンバーと下部チャンバーとを有する筺体と、
前記上部チャンバー内で上下に移動するようにスライド可能に取り付けられる上部ピストンと、
前記下部チャンバー内で上下に移動するようにスライド可能に取り付けられる下部ピストンと、を備え、
前記下部チャンバーが、前記下部ピストンの移動上限を規定するハードストップを備え、
前記3つの位置が、
(1)前記上部ピストンが前記静電チャックの前記上表面の下方に前記リフトピンを位置させる下降位置と、
(2)前記下部ピストンが前記ハードストップに接して、前記下部ピストンのシャフトが前記上部ピストンを持ち上げる前記中間リフト位置と、
(3)前記基板を前記プラズマ処理チャンバーから取り出すことができる前記上昇位置と、であり、
前記上部ピストンと前記下部ピストンが、独立にガス圧により作動し、
前記筺体が、加圧ガス源に動作可能に接続される複数の吸気口を備え、
前記複数の吸気口が、前記上部ピストンの上方で前記上部チャンバーの一部と流体連結する第1の吸気口と、前記上部ピストンの下方で前記上部チャンバーの一部と流体連結する第2の吸気口と、前記下部ピストンの上方で前記下部チャンバーの一部と流体連結する第3の吸気口と、前記下部ピストンの下方で前記下部チャンバーの一部と流体連結する第4の吸気口と、を含み、
前記上部ピストンに印加される上向きの力が、前記第1の吸気口に供給される加圧ガスにより与えられる反対向きのガス圧により制限され、
前記第1の吸気口は、第1のガス源に流体連結し、前記第2、第3及び第4の吸気口は、第2のガス源に流体連結し、
前記ガス圧式リフト機構は、さらに、前記第1及び第2のガス源から前記複数の吸気口に選択的にガスを供給するように操作可能なコントローラーを備える、方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法であって、
前記ガス圧式リフト機構は、前記第1のガス源と前記第2のガス源のいずれかに流体連結するように前記第1の吸気口を設定する働きをする弁を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
静電チャックは、プラズマエッチング等の処理の際に、半導体ウエハ及び他の基板を保持するために用いられる。静電チャック(ESC)は、静電ポテンシャルを利用して、処理の間、基板を所定の位置に保持(クランプ)する。基板をチャックにクランプすることにより、ヘリウム(He)等の熱伝導性の高いガスを基板とチャックとの間に供給し、基板とチャックとの間の熱伝達を促進することができる。基板は、リフトピンによりESCから取り外され、移動アームにより処理チャンバーから取り出される。
【0002】
ESCを用いる場合、チャックから基板を取り外すために、基板とチャックとの間に残留する静電気力を取り除く必要がある、という問題が生じる。この残留力は、基板とESCの支持面との間の境界に電荷が蓄積されることにより生じる。基板を取り外す、すなわち、基板をデチャックするために様々な方法が開発されている。たとえば、電極を接地させたり、あるいは、電極に印加するチャック電圧の極性を反対にして電極を放電させたりすることができる。ただし、これらの方法では、電極及び基板上の電荷をすべて完全に取り除くことはできなかった。残留する静電気引力を取り除くためには機械的な力が必要となる場合が多いが、これは、基板を破損する可能性があり、あるいは、予期せぬ位置から基板を回収するという困難な問題を生じる可能性もある。さらに、基板のデチャック及び取り外し工程の際に、不要な粒子が生じ、処理済みの基板を汚染してしまう可能性もある。
【0003】
今日まで様々な開発がなされてきたが、処理済みの基板をデチャックする際に電位スパイクを減少させる装置及び方法が求められている。
【発明の概要】
【0004】
プラズマ処理チャンバーの基板デチャックシステムは、基板のデチャック時に、電位スパイクを減少させて、基板をESC(静電チャック)から取り外せるように構成される。
【0005】
プラズマ処理チャンバー内で静電チャックから基板をデチャックする一方法では、処理ガスをチャンバーに供給し、処理ガスをプラズマ状態に励起させ、プラズマ処理チャンバーを減圧かつ低RF電力状態に維持して、基板の上方に2mm以上の厚みのプラズマ・シースを形成し、基板を、静電チャックの支持面の上方に、プラズマを不安定化させることなく、プラズマ・シース内の中間リフト位置まで持ち上げて、基板を中間リフト位置に保持し、プラズマを消滅させ、基板を、中間リフト位置の上方に、基板をプラズマ処理チャンバーから取り出すことのできる上昇位置まで持ち上げる。
【0006】
他の実施形態では、プラズマリアクター用のガス圧式リフト機構であって、リフトピンが、静電チャックの上表面に対して少なくとも3つの位置に基板を昇降する。リフト機構は、望ましくは、鉛直方向に並ぶガス圧作動式上部ピストンと下部ピストンとを備え、上部ピストンは上部チャンバー内で上下に移動するようにスライド可能に取り付けられ、下部ピストンは下部チャンバー内で上下に移動するようにスライド可能に取り付けられ、下部チャンバーは下部ピントンの移動上限を規定するハードストップを備える。少なくとも3つの位置は、望ましくは、(1)上部ピストンと下部ピストンの両方を各々の下降位置に下げた下降位置と、(2)下部ピストンをハードストップと接するその上昇位置まで上げ、下部ピストンから上方に伸長するシャフトが上部ピストンに接し部分的に上部ピストンを持ち上げる中間リフト位置と、(3)上部ピストンをその上昇位置まで上げ、上部ピストンにより駆動されるリフトピン上に支持される基板をプラズマチャンバーから取り出すことができる上昇位置と、を含む。上部ピストンは、ヨーク駆動リフトピンと協働する上部シャフトを備え、(1)上部ピストンと下部ピストンとを各々の下降位置に下げて、基板を基板支持体上に下降させる、(2)両方のピストンを各々の中間リフト位置に上げて、基板を中間リフト位置まで上昇させる、及び、(3)上部ピストンをその上昇位置まで上げて、移動アームにより基板を取り外し可能な上昇位置まで基板を上昇させる。
【0007】
好適な方法において、処理チャンバーは、プラズマエッチングチャンバーであり、処理は、基板の上表面に隣接してプラズマを発生させて、基板の上表面上の露出層をプラズマエッチングすることを含む。あるいは、処理は、(たとえば、化学蒸着、熱酸化、スパッタリング又は他の析出処理により)基板の上表面上に層を形成することを含んでいても良い。さらに、処理は、フォトレジスト又は他の材料を基板から剥離するものでもよい。
本発明は、以下の適用例としても実現可能である。
[適用例1]
プラズマ処理チャンバー内で静電チャックから基板をデチャックする方法であって、
処理ガスを前記チャンバーに供給し、
前記処理ガスをプラズマ状態に励起させ、
前記プラズマ処理チャンバーを減圧かつ低RF電力状態に維持して、前記基板の上方に2mm以上の厚みのプラズマ・シースを形成し、
前記基板を、前記静電チャックの支持面の上方に、プラズマを不安定化させることなく、前記プラズマ・シース内の中間リフト位置まで持ち上げて、前記基板を前記中間リフト位置に保持し、
前記プラズマを消滅させ、
前記基板を、前記中間リフト位置の上方に、前記基板を前記プラズマ処理チャンバーから取り出すことのできる上昇位置まで持ち上げる、方法。
[適用例2]
適用例1に記載の方法であって、
(a)前記処理ガスがアルゴン、窒素、又はその混合ガスである、
(b)前記基板が2〜30秒間、前記中間リフト位置で保持される、及び/又は、
(c)前記基板を前記中間リフト位置まで持ち上げる場合、前記静電チャックの前記支持面よりも0.5〜3mm上に持ち上げる、方法。
[適用例3]
適用例1に記載の方法であって、
デチャック時に、電気絶縁材料から形成されるリフトピンにより前記基板を持ち上げ、電圧を前記静電チャックに印加する、方法。
[適用例4]
適用例1に記載の方法であって、
(a)前記基板がガラスキャリアに接合されたシリコンウエハの場合に、前記方法は、さらに、前記シリコン材をプラズマエッチングすることを含む、
(b)前記基板が半導体ウエハの場合に、前記方法は、さらに、前記ウエハ内のシリコン層をエッチングすることを含む、又は、
(c)前記基板が少なくとも1層の誘電体を含む半導体ウエハの場合に、前記方法は、さらに、前記誘電体に開口部をプラズマエッチングすることを含む、方法。
[適用例5]
適用例5に記載の方法であって、
前記誘電体に開口部をプラズマエッチングする間、前記基板の下面にヘリウムガスを供給し、さらに、基板を前記中間リフト位置まで上昇させる前に、ヘリウムガスの供給を停止する、方法。
[適用例6]
適用例1に記載の方法であって、
前記基板を前記静電チャックから取り外す前に、前記基板の下面にヘリウムガスを供給し、その後、前記基板の下面へのヘリウムガスの供給を停止する、方法。
[適用例7]
適用例1に記載の方法であって、
前記基板の下面にヘリウムガスを供給し、さらに、処理ガスがプラズマ状態となっている間に、1〜5トールのヘリウム背圧を前記基板の下面に印加する、方法。
[適用例8]
適用例1に記載の方法であって、
前記静電チャックに印加する電圧を、前記基板を持ち上げる前に、基板電位スパイクの大きさを25V未満に減少させるのに十分な値に設定する、方法。
[適用例9]
適用例1に記載の方法であって、
前記基板を前記上昇位置まで持ち上げる際に、前記基板を前記静電チャックの前記支持面の少なくとも5mm上まで持ち上げる、方法。
[適用例10]
適用例1に記載の方法であって、
(a)前記プラズマ処理チャンバーは、上部シャワー電極が前記基板を支持する下部電極に対向して配置される容量結合プラズマ処理チャンバーであって、前記励起させる場合に、前記下部電極に高周波電力(RF電力)を供給する、又は、
(b)前記プラズマ処理チャンバーは、コイルを備える誘導結合プラズマ処理チャンバーであって、前記励起させる場合に、前記コイルにRF電力を供給する、方法。
[適用例11]
適用例10に記載の方法であって、
前記チャンバーは容量結合プラズマ処理チャンバーであって、前記上部電極と前記下部電極との間のギャップが少なくとも20mmであり、前記チャンバー内の圧力が15〜500ミリトール(mTorr)である、方法。
[適用例12]
適用例1に記載の方法であって、
さらに、前記プラズマを消滅させる前に、デチャック電圧を印加する、方法。
[適用例13]
適用例12に記載の方法であって、
前記デチャック電圧を、前記基板上のプラズマ誘導バイアスの50V又は200Vの範囲内の値に設定する、方法。
[適用例14]
適用例1に記載の方法であって、
さらに、前記基板を持ち上げる前に前記基板を処理し、
前記処理が、
(a)前記基板の上表面上に層を形成する、又は、
(b)前記基板からフォトレジストを剥離する、
ことを含む、方法。
[適用例15]
適用例1に記載の方法であって、
前記中間リフト位置への持ち上げ、及び、前記中間リフト位置から上方への持ち上げのいずれも、ガス圧式アクチュエータによる持ち上げを含み、
シャトル弁を通るガス流が持ち上げ力の削減に貢献する、方法。
[適用例16]
リフトピンが静電チャックの上表面に対して少なくとも3つの位置に基板を昇降するプラズマリアクター用のガス圧式リフト機構であって、
上部チャンバーと下部チャンバーとを有する筺体と、
前記上部チャンバー内で上下に移動するようにスライド可能に取り付けられる上部ピストンと、
前記下部チャンバー内で上下に移動するようにスライド可能に取り付けられる下部ピストンと、を備え、
前記下部チャンバーが、前記下部ピストンの移動上限を規定するハードストップを備え、
前記3つの位置が、
(1)前記上部ピストンが前記静電チャックの前記上表面の下方に前記リフトピンを位置させる下降位置と、
(2)前記下部ピストンが前記ハードストップに接して、前記下部ピストンのシャフトが前記上部ピストンを持ち上げる中間リフト位置と、
(3)前記基板を前記プラズマチャンバーから取り出すことができる上昇位置と、であり、
前記上部ピストンと前記下部ピストンが、独立にガス圧により作動する、リフト機構。
[適用例17]
適用例16に記載のリフト機構であって、
さらに、前記上部ピストンから上方に伸長するシャフトに動作可能に接続されるリフトピン・ヨークを備える、リフト機構。
[適用例18]
適用例16に記載のリフト機構であって、
前記筺体が、加圧ガス源に動作可能に接続される複数の吸気口を備え、
前記複数の吸気口が、前記上部ピストンの上方で前記上部チャンバーの一部と流体連結する第1の吸気口と、前記上部ピストンの下方で前記上部チャンバーの一部と流体連結する第2の吸気口と、前記下部ピストンの上方で前記下部チャンバーの一部と流体連結する第3の吸気口と、前記下部ピストンの下方で前記下部チャンバーの一部と流体連結する第4の吸気口と、を含み、
前記上部ピストンに印加される上向きの力が、前記第1の吸気口に供給される加圧ガスにより与えられる反対向きのガス圧により制限される、リフト機構。
[適用例19]
適用例18に記載のリフト機構であって、
前記第1の吸気口は、25〜65psigの圧力でガスを供給する第1のガス源に流体連結し、前記第2、第3及び第4の吸気口は、70〜120psimの圧力でガスを供給する第2のガス源に流体連結し、
さらに、前記第1及び第2のガス源から前記複数の吸気口に選択的にガスを供給するように操作可能なコントローラーを備える、リフト機構。
[適用例20]
適用例19に記載のリフト機構であって、
さらに、前記第1のガス源と前記第2のガス源のいずれかに流体連結するように前記第1の吸気口を設定する働きをする弁を備える、リフト機構。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態におけるプラズマリアクターの断面側面図。
【0009】
図2A】ESC(静電チャック)上に支持された基板ピンリフトシステムを示す図。
【0010】
図2B】基板がESCの上方にリフトされた状態で図2Aのピンリフトシステムを示す図。
【0011】
図3A】下降位置におけるガス圧式リフトのハードウェアを例示する図。
図3B】中間リフト位置におけるリフトのハードウェアを例示する図。
図3C】上昇位置におけるリフトのハードウェアを例示する図。
【0012】
図4】ガス圧式リフトのハードウェアの制御システムを例示する概略図。
【0013】
図5】さまざまな方法を用いてデチャックを行なった際の基板電圧を示す図。
【0014】
図6A】プラズマ活性デチャック工程を行なわず、さまざまなデチャック電圧を用いて基板をデチャックした際の基板電圧を示す図。
図6B】プラズマ活性デチャック工程を行なって、さまざまなデチャック電圧を用いて基板をデチャックした際の基板電圧を示す図。
【0015】
図7】ヘリウム背圧を用いる方法、ヘリウム背圧なしの方法、及びプラズマ活性中間リフト工程を用いて各々デチャックされた基板の粒子汚染の程度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、数値又は数値範囲と共に「約」という用語を用いる場合には、その値の±10%の範囲内で、その値より大きい数値又は数値範囲や、その値より小さい数値又は数値範囲を意味する。
【0017】
ESC(静電チャック)からのデチャック時に電位スパイクを減少させることができるデチャック方法を説明する。
【0018】
基板としては、たとえば、集積回路の製造に用いられる半導体ウエハ、3次元チップ集積用基板、フラットパネル・ディスプレイの製造に用いられるガラス基板、又は、ガラスキャリアに接合されたシリコンウエハを用いることができる。
【0019】
本発明は、容量結合プラズマリアクター、たとえば、カリフォルニア州フレモントのラムリサーチ社(Lam Research Corporation)から市販されているExelan(商標)プラズマ・エッチャー等のプラズマリアクターに好適に適用可能である。
【0020】
好適なプラズマリアクターは、二重周波数容量結合プラズマリアクターであり、上部シャワーヘッド電極と下部電極とを備え、下部電極に2つの異なる周波数(たとえば、27MHz及び2MHz)でRFエネルギー(高周波エネルギー)が供給される。たとえば、参照することによりその開示内容が全体として本明細書に組み込まれる同一出願人が所有する米国特許第6,391,787号を参照のこと。プラズマリアクターが容量結合プラズマ・エッチングリアクターである場合には、下部電極には約500から3000ワットのRFエネルギーが供給され、デチャック処理時には必要に応じて50ワットの低いワット数とすることが望ましい。
【0021】
また、本発明の実施形態は、誘導結合プラズマリアクターにも好適に適用可能である。たとえば、参照することによりその開示内容が全体として本明細書に組み込まれる同一出願人が所有する米国特許第7,223,321号を参照のこと。このようなリアクターの作動時には、反応性ガスがチャンバー内に流され、RF電源(高周波電源)からコイルに高周波電力が印加され、コイルの周りに電磁場が形成される。電磁場は、チャンバーに誘導結合されて、反応性ガスをプラズマに励起させる。
【0022】
図1に、一実施形態におけるプラズマリアクターを示す。このようなプラズマリアクターの詳細に関しては、参照することにより本明細書に組み込まれる同一出願人による米国特許出願2008/0318433に記載されている。ただし、さまざまな構成の処理チャンバー並びに下部電極及び上部電極、チャンバー壁及び処理ガス分配システムを含む内部構成要素を用いることができる。たとえば、参照することにより各々本明細書に組み込まれる、同一出願人が所有する米国特許第6,824,627号及び第7,428,550号を参照のこと。
【0023】
図1において、容量結合プラズマ処理チャンバー100は、その内部に取り付けられたプラズマ閉じ込めリングアセンブリ10を備える。プラズマ処理チャンバー100は、底部表面104を有する上部電極102を備える。本実施形態において、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,391,787号に記載されるように、底部表面104は、上部電極102の露出面に隣接して形成されるプラズマの局在密度を制御するように構成される段部106を備える。本実施形態において、上部電極102は、処理ガスをプラズマ処理チャンバー100内に分配するように配置されるガス流路108を備えるシャワーヘッド電極である。上部電極102は、シリコン(たとえば、単結晶シリコン又は多結晶シリコン)又は炭化ケイ素から成るものでもよい。
【0024】
本実施形態において、上部電極102は、(たとえば、200mmウエハ処理用の)一体型電極である。上部電極102は、グラファイトや炭化ケイ素等の適当な材料から成る支持部材110に取り付けられる(たとえば、エラストマー結合される)ことが望ましい。支持部材は、上部電極102の対応するガス流路108に流体連結するガス流路112を備える。
【0025】
上部電極は、平面電極でもよいし、あるいは、同一出願人が所有する米国特許第6,391,787号に開示されるシャワーヘッド電極等の非平面型段付上部電極でもよい。RF電極は、任意の適当な導電性材料から形成可能である。たとえば、上部電極が高純度で低抵抗率の単結晶から形成され、下部電極がシリコン(たとえば、ドープされたシリコン)やアルミニウム等の金属から形成されるものでもよい。
【0026】
別の実施形態において、上部電極は、(たとえば、300mmウエハ等のより大きなウエハ処理用の)二分割型又は多分割型構造でもよく、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる同一出願人による米国特許出願2005/0133160に記載されるように、一体型の内側電極部材と、内側電極部材を囲む外側電極部材とを備えるものでもよい。米国特許出願2005/0133160に記載されるように、本実施形態において、支持部材は、内側電極部材と同様に伸長する支持板と、外側電極部材と同様に伸長する支持リングと、を備えることが望ましい。
【0027】
図1に示すプラズマ処理チャンバー300の実施形態において、望ましくは、熱制御板114が支持部材110上に備えられる。参照することにより本明細書に組み込まれる同一出願人による米国特許出願2005/0133160に記載されるように、熱制御板114は、上部電極102の温度を制御するために用いられる1つ以上のヒーターを備えることが望ましい。
【0028】
プラズマ処理チャンバー100は、処理ガスを上部電極102に供給する(図示しない)ガス源を備える。処理ガスは、上部電極102内のガス流路108によりチャンバー内に分配される。上部電極102を、整合回路を介してRF電源116により駆動するようにしてもよい。別の実施形態において、上部電極102を電気的に接地して、プラズマ処理チャンバー100の基板支持部120の下部電極により供給される電力の帰還路を形成するようにしてもよい。
【0029】
本実施形態において、処理ガスは、プラズマ処理チャンバー100内で、上部電極102と基板支持部120上に支持される半導体ウエハ等の半導体基板122との間の空間内のプラズマ発生領域に供給される。
【0030】
半導体ウエハの代わりに、基板122は、フラットパネル・ディスプレイに加工されるガラス基板や、(たとえば、3次元チップ集積用に)処理されるガラス基板によって支持されるシリコンウエハでもよい。基板122は、処理時に選択的に除去される(エッチングされる)1つ又は複数の層を備えるものでもよい。あるいは、処理は、基板上に1つ又は複数の層を形成することを含んでいてもよいし、フォトレジスト剥離のような他の処理を含んでいてもよい。
【0031】
基板支持部120は、望ましくは、静電クランプ力により基板支持部上に半導体基板122を固定する静電チャック124を備える。静電チャック124は、下部電極(底面電極とも称する)に組み込まれるものでも、下部電極上に積載されるものでもよく、(通常は、整合回路を介して)RF電源126及び127の少なくともいずれか1つにより駆動されるものでもよい。
【0032】
下部電極を用いて、RF電力を供給して、基板上方のギャップ内で処理ガスからプラズマを生成し、さらに、必要に応じて、基板にRFバイアスを印加するようにしてもよい。上部及び/又は下部電極とプラズマとの間に結合されるエネルギーの量は、基板処理に用いられるプラズマの密度及びエネルギーに影響する。たとえば、結合エネルギーが大きければ、イオンエネルギーも高くなる傾向があり、逆に、結合エネルギーが小さければ、イオンエネルギーも低くなる傾向がある。それに応じて、イオンエネルギーが高ければ、基板処理の進行が早くなる傾向があり、逆に、イオンエネルギーが低ければ、基板処理の進行が遅くなる傾向がある。さらに、下部電極により生成されるエネルギーを用いて、基板表面近傍でシース電圧を形成し、基板に向かってプラズマ内のイオンを加速させて、処理反応を促進させるようにしてもよい。
【0033】
望ましくは、下部電極の外周面が、下部電極の上方に配置されウエハを取り囲むエッジリングを用いて、少なくともウエハの外側端部を越えて伸長するように構成される。
【0034】
半導体基板122のプラズマ処理の間、プラズマ閉じ込めリングアセンブリ10は、上部電極102と半導体基板122との間のプラズマ閉じ込め領域内にプラズマを閉じ込める。エッジリング126及び128は、望ましくは、半導体基板122を取り囲むように配置され、プラズマを集束させて、エッチングの均一性を向上させる。
【0035】
(図示しない)真空ポンプ、望ましくはターボ分子ポンプを用いて、プラズマ処理チャンバー300内を所望の減圧レベルに維持することができる。
【0036】
利用可能な平行平板プラズマリアクターの例として、二重周波数プラズマエッチングリアクターが挙げられる(たとえば、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる同一出願人が所有する米国特許第6,090,304号参照のこと)。このようなリアクターにおいて、ガス源からエッチングガスをシャワーヘッドに供給し、2つのRF源からシャワーヘッド電極及び/又は下部電極に異なる周波数でRFエネルギーを供給することにより、プラズマをリアクター内で生成するようにしてもよい。あるいは、シャワーヘッド電極を電気的に接地して、下部電極に2つの異なる周波数でRFエネルギーを供給するようにしてもよい。
【0037】
基板を処理する際には、基板を、チャンバー内に投入し、下部電極の支持面上に載置する。たとえば、(図示しない)ロボットアームで、ロードロック移送チャンバーから処理チャンバーに基板を運ぶようにしてもよい。(図示しない)リフトピンアセンブリは、リフト機構により昇降可能なリフトピンを備える。リフトピンが下部電極から電気的及び熱的に絶縁されていることが望ましい。リフトピンをサファイアから形成することが望ましいが、金属や誘電体から形成するようにしてもよい。ロボットアームによりリフトピンの先端上に基板を載置し、リフト機構により基板を支持面上に下降させるようにしてもよい。基板の処理後、リフト機構によりリフトピンを上昇させて、下部電極から離れるように基板を持ち上げて、ロボットアームを介して、処理チャンバーから基板を取り出せるようにしてもよい。
【0038】
参照することによりその開示内容が本明細書に組み込まれる同一出願人が所有する米国特許第6,646,857号に記載されるように、ピンリフター・ヨークによりリフトピンを昇降させるようにしてもよい。あるいは、下部電極が、支持面に向かって/支持面から離れるように移動可能なケーブル作動リフトピン等のリフトピンを備え、リフトピンが下部電極に形成された穴を通って移動することにより基板を昇降させるようにしてもよい。真空チャンバーにおいて基板を移動させるケーブル作動ドライブアセンブリに関しては、参照することによりその開示内容が全体として本明細書に組み込まれる同一出願人が所有する米国特許第5,798,066号に開示されている。リフトピンホールの数は、通常、基板の大きさによって決まる。好適な実施形態において、リフトピンは、ガスにより、たとえば、ガス圧式リフトハードウェアを用いて、駆動される。
【0039】
好適な実施形態において、基板をエッチングする方法は、下部電極上に基板を支持し、処理ガスをチャンバーに供給し、処理ガスをプラズマに励起させて、基板の露出面をプラズマでエッチングすることを含む。この方法は、たとえば、フッ素化酸化ケイ素(FSG)等のドープされた酸化ケイ素、二酸化ケイ素等のドープされていない酸化ケイ素、スピンオンガラス(spin-on-glass:SOG)、BPSG(ホウリンケイ酸塩ガラス)及びBSG(リンケイ酸塩ガラス)等のケイ酸塩ガラス、ドープされた又はドープされていない熱成長酸化ケイ素、ドープされた又はドープされていないTEOS析出酸化ケイ素等の低誘電率誘電体を含むさまざまなシリコン及び/又は誘電体層をエッチングするのに適用可能である。エッチング可能な他の材料の例としては、Applied Materials社から市販されているBLACK DIAMONDや、Novellus社から市販されている低誘電率膜のCORAL群等の有機低誘電率材料が挙げられる。誘電体ドーパントとしては、たとえば、ホウ素、リン及び/又はヒ素を用いることができる。多結晶シリコン、アルミニウム、銅、チタン、タングステン、モリブデンやこれらの合金等の金属、窒化チタン等の窒化物、ケイ化チタン(チタンシリサイド)、ケイ化コバルト(コバルトシリサイド)、ケイ化タングステン(タングステンシリサイド)、ケイ化モリブデン(モリブデンシリサイド)等の金属シリサイド等の導電性又は半導体層を誘電体で被覆するようにしてもよい。
【0040】
2300Exelan(商標)システムにおいて、ESCは、酸化物エッチング処理の間、温度制御下部電極上にシリコンウエハを保持するために用いられる。ウエハの温度制御は、ESCの上面とウエハの下面(裏面)との間に供給される加圧ヘリウム(He)により行なわれる。ヘリウムを用いたウエハ裏面の冷却制御システムの詳細に関しては、参照することによりその開示内容が本明細書に組み込まれる同一出願人が所有する米国特許第6,140,612号に記載されている。クランプ電圧の印加停止後にウエハをデチャックする際にヘリウムを用いることができるが、デチャック中及びデチャックの直後に流したヘリウムにより、ESCとウエハ裏面との間のヘリウム境界からプラズマエッチング面に粒子が移動し、ウエハ表面側に形成された集積回路の損傷を与える可能性がある。
【0041】
プラズマ処理基板の粒子汚染を軽減するために、ウエハをプラズマガスに晒すようにしてもよい。これにより、プラズマ処理チャンバーから基板を取り出すために基板を持ち上げる際の基板電位の変動を最小限に抑えることができると考えられる。このための方法の1つは、メカニカル・リフトピンを用いて、ウエハを中間リフト位置まで上昇させて、少なくとも部分的にウエハをプラズマ・シース内に配置させる方法である。
【0042】
必要に応じて、デチャックプラズマが発生中にウエハがわずかに離れるように低いヘリウム背圧(たとえば、5トール(Torr)以下)を印加し、プラズマが消滅する前に背圧印加を停止するようにしてもよい。プラズマが消滅した状態でヘリウムを印加し続けると、ヘリウムガス流により裏面側の粒子がウエハの表面側に移動する可能性がある。
【0043】
1つの実施形態においては、ESCへの電圧印加を停止し、ヘリウム境界へのヘリウム供給を停止した後で、プラズマがチャンバー内に維持されている間に、リフトピンを上昇させて、基板をESCから離すように持ち上げる。ウエハ下方へのプラズマの進入を防ぎ、また、プラズマが不安定化するのを防ぐと共に、基板がプラズマ・シース内に保持される。
【0044】
次に、プラズマを消滅させて、基板をチャンバーから取り出し可能な上昇位置まで基板を上昇させる。
【0045】
実施形態では説明しているが、力センサーやデチャック電圧の印加は必ずしもデチャック処理に必須ではない。ただし、必要に応じて、いずれか片方又は両方を用いることができる。
【0046】
好適な実施形態において、プラズマ処理チャンバーにおいて静電チャックから基板をデチャックする方法は、上部電極と静電チャックにより支持面に押し付けるようにして基板を保持する下部電極との間のギャップに処理ガスを供給し、RF(高周波)電力を(たとえば、下部電極やコイルに)供給して、ギャップ内の処理ガスをプラズマ状態に励起させ、プラズマチャンバーを減圧状態に維持することにより下部電極の上方にプラズマ・シースを形成し、プラズマの不安定化やウエハ下方へのプラズマの進入を招いたりすることなく、プラズマ・シース内で、基板を支持面上方に中間リフト位置まで持ち上げ、適当な時間、たとえば、2秒間から30秒間、中間リフト位置で基板を保持し、基板を支持面上方に、プラズマ処理チャンバーから基板を取り出すことができる上昇位置まで持ち上げることを含む。
【0047】
この方法において、処理ガスはアルゴン、窒素、またはその混合ガスでもよい。基板を、電気絶縁材料(たとえば、サファイア)から形成されるリフトピンにより持ち上げる構成が望ましい。この場合、静電チャックの支持面より0.5mm〜3mm上(たとえば、1.5mm〜2mm上)の中間リフト位置に基板を持ち上げる。基板は、シリコンウエハや他の材料からなるウエハでもよく、少なくとも1層の誘電体層を備えるものでもよい。
【0048】
基板を持ち上げる前に、静電チャックに印加する電圧を、プラズマによりウエハ上に生じたと予測されるバイアスに対して所定の値に設定して、基板下面へのヘリウムガスの供給を停止することが望ましい。上部電極と下部電極との間のギャップは、任意の適当な距離、たとえば、少なくとも20mm、であればよく、チャンバー内の減圧レベルは、任意の適当な値、たとえば、25ミリトール(mTorr)以下、50ミリトール以下、100ミリトール以下、150ミリトール以下、200ミリトール以下、250ミリトール以下又は300ミリトール以下等、15〜500ミリトールの範囲の値、であればよい。基板を上昇位置まで持ち上げる場合、支持面の少なくとも9〜15mm上(たとえば、0.5〜12.5mm上)まで持ち上げることが望ましい。
【0049】
図2Aは、上述したウエハのデチャック方法を実施するために利用可能な半導体ウエハリフト装置の断面図である。このような装置の詳細に関しては、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる同一出願人が所有する米国特許第6,646,857号に記載されている。半導体ウエハリフト装置は、基板の大きさに応じた適当な数だけ形成される貫通部226を介して静電チャック204を貫通する複数のリフトピン228を備える。一般的には、等間隔で配置され、リフトヨーク230に接続される3又は4個のリフトピン228を備える。リフトピン228と静電チャック204との間の空間は、ベローズ232と密閉リング234とにより、チャックの下方の空間から分離される。ベローズ232を用いることにより、処理チャンバー内における環境遮断に影響を与えることなく、ヨーク230をチャック204に対して動かすことができる。歪みゲージ242が、絶縁体240と、モーター246により駆動されヨーク230を動かすリードスクリュー(送りネジ)244と、の間に配置される。リードスクリュー244の代わりに、ガス圧式リフト機構等、ピンリフター・ヨーク230を昇降できるものならば、任意の種類のリンクを用いることができる。
【0050】
歪みゲージ242がデジタルシグナルプロセッサ(DSP)250等のコントローラーに情報信号を送り、コントローラーからモーター制御装置252に信号が送られ、さらに、モーター制御装置252からモーター246に信号が送られて、リードスクリュー244の位置決め制御が行なわれる。エンコーダー248は、モーター246に連動して、信号をモーター制御装置252に送るように構成される。エンコーダー248により与えられた情報に、リードスクリュー244に関する現在の位置データが含まれるものでもよい。
【0051】
リフトピン228は、ウエハがチャック204に静電クランプされている間にウエハに損傷を与える可能性がある高応力が印加されることがないように、ウエハ206の下面に接触して、特に中間リフト工程の際に低圧を印加するように構成される。
【0052】
リフトヨーク230は、徐々に上方に動かされて、チャック204からウエハ206を持ち上げることができる。リフトピン228がウエハ206の持ち上げに抗する力を受けるが、この力はリフトヨーク230を介して歪みゲージ242に伝達されるものでもよい。歪みゲージ242による歪み測定をDSP250でモニターするようにしてもよい。モニターしている応力が許容可能範囲内にない場合には、DSP250(及び必要に応じて関連ソフトウェア)は、モーター制御装置252に、モーターのインクリメントを停止し、ウエハ206の静電放電が可能になるようにタイムアウトするように命令を出し、ウエハ206とチャック204との間の静電気引力を減少させるようにしてもよい。閾値に到達した場合、インクリメントが停止される。閾値は、リフトピンにより印加される力がウエハを損傷する可能性のあるレベルに達したことを確認できる設定値であることが望ましい。したがって、閾値を、ウエハの損傷を引き起こす可能性のあるレベルをほんの少し下回る値に設定する。このように設定すれば、十分な放電が行なわれない場合に過剰な力がウエハにかからないようにすることができる。
【0053】
重力下で許容可能な力の変動範囲は、ウエハの大きさに応じて決まるが、約1オンス(約0.278N)から約1ポンド(約22.2N)の範囲である。モニターしている力が許容可能範囲の場合には、DSP250及び関連ソフトウエアは、モーター制御装置252に、モーターのインクリメントを続行するように命令を出すものでもよい。モーターのインクリメントを行なう間、モーター246に取り付けられたエンコーダー248が、リードスクリュー244の位置をモニターして、モーター制御装置252にリードスクリューの位置を示す信号を送る。ヨーク230が所望の高さになった時点で、モーター制御装置252は、ヨーク230の持ち上げを停止するようにモーター246に命令する。
【0054】
図2Bに、リフトピン228がウエハ206を持ち上げた状態の半導体ウエハリフト装置の断面図を示す。図2Bに示す構成要素は、図2Aに示し、図2Aを参照して上述した構成要素を同一である。図2Bは、上述したようにウエハ206がチャック204から離れて中間リフト位置まで、さらに、上昇位置まで持ち上げる場合のリフトヨーク230の動きを図示している。この状態で、ロボットのブレードを用いて、ウエハ206をリフトピン228から取り外すことができる。次に、別のウエハ206をリフトピン228上に置いて、チャック204上まで下降させて処理を行なうことができる。
【0055】
別の実施形態において、モーター246とリードスクリュー244の代わりにガス圧ピンリフターを用いて、ピンリフト機構のストロークを制御するようにしてもよい。たとえば、別の加圧ガス源(たとえば、空気、アルゴン、ヘリウム及び窒素等のガス)により作動する駆動システムを用いて、プラズマ処理チャンバーに基板を出し入れする移送アームによりリフトピン上に基板を載せたりリフトピンから基板を取り外したりできる上昇位置、基板をESCでクランプ可能な下降位置、及び基板をプラズマ・シース内で保持する中間リフト位置に、ピンリフター・ヨークとリフトピンとを昇降するようにしてもよい。図3A図3Cを参照して後述するリフト用ハードウェアを用いて、このような昇降を行なうようにしてもよい。
【0056】
ピンリフト機構をコントローラーの制御下で作動させ、リフトピンの位置をモニターして、少なくとも上昇位置(フルアップ位置又はアップ位置とも称する)、中間リフト位置及び下降位置にリフトピンを昇降するようにピンリフト機構に指示するようにしてもよい。リフト機構は、1つ以上の位置センサーを備える構成が望ましく、リフト機構が中間リフト位置に到達したこと及びアップ位置に到達したことを検出する光学センサーを備える構成がより望ましい。このような光学センサーにより、ヨークの動き又はヨークに固定した1つ以上のフラグの動きを検出することができる。
【0057】
プラズマリアクターで用いられるリフト機構の例を図3A図3B及び図3Cに示す。図2A及び図2Bに示すモーター及び関連部品の代わりにこのようなリフト機構を用いてもよい。上部ピストン301と下部ピストン302とは、それぞれ、いずれも筺体303内部の上部チャンバー304内と下部チャンバー305内とにスライド可能に取り付けられている。上部ピストン301は、望ましくは(図示しない)ピンリフター・ヨークに動作可能に接続される鉛直方向に伸長する上部シャフト311を備える。下部ピストン302は、上部ピストンを部分的に上昇させる役割を果たすことが可能な鉛直方向に伸長する下部シャフト312を備える。チャンバー304及び305は、筺体303に固定して取り付けられ、ESCに対して動かず固定されていることが望ましい。このようなリフト機構では、歪みゲージやその他これに類するもの(たとえば、力センサー)を用いる必要はないが、上部シャフト311とピンリフター・ヨークとの間等で用いることもできる。
【0058】
図3Aの概略図に示すように、第1の吸気口306を介してガス圧(たとえば、70〜120psig(ゲージ圧)、望ましくは90psig)を印加して、上部チャンバー304の上部を加圧することにより、リフト機構を下降位置に移動させることができる。この圧力により、上部ピストン301に対して下向きの力が加えられ、リフトピンの上端がESCの上面より下に位置するように、ヨークとリフトピンとを下降位置に押し下げる。下部ピストン302が上部ピストン301を持ちあげることがないように、吸気口308を介して、下部チャンバー305の上端部に90psig以下の圧力、たとえば、50psigの圧力を印加することが望ましい。
【0059】
図3Bの概略図に示すように、第1の吸気口306を介して上部チャンバー304の上端部にガス圧(たとえば、25〜65psig、望ましくは50〜60psig)を印加すると共に、第4の吸気口309を介して下部チャンバー305の下端部により高いガス圧(たとえば、70〜120psig、望ましくは90psig)を印加することにより、中間リフト位置に移動させることができる。したがって、下部チャンバー305の上端部におけるハードストップ310の位置に基づいて、所定の距離だけ下部ピストン302を上昇させる。ここで、ハードストップ310を予備調節して、所望の中間リフト位置を決めるようにすることが望ましい。下部ピストン302の下部シャフト312が、対応する部分上昇位置まで上部ピストン301を押し、この結果、ウエハを、ESC上方の中間リフト位置まで、すなわち、プラズマを不安定化させることなく、プラズマ・シース内まで、上昇させることができる。第3の吸気口308は、下部チャンバー305の上端部を通気させ、さらに、下降工程で、上部ピストン301を下降させる前に下部ピストン302を下降させるように加圧されるものでもよい
【0060】
図3Cの概略図に示すように、第2の吸気口307を介して上部チャンバー304の下部にガス圧(たとえば、60〜120psig、望ましくは90psig)を印加すると共に、第1の吸気口306を介して50psig(あるいは、必要に応じて、65、70又は75psig)のガス圧を印加して、上部チャンバー304の上部を加圧することにより、上部シャフト301を上昇させて、フルアップ位置に移動させることができる。
【0061】
中間リフト位置への移動とフルアップ位置への移動の際に上部チャンバーの上端部に印加される反対向きの圧力を用いて、ウエハがうまくデチャックされない場合(たとえば、ウエハが予想外に強い力でチャックに引き付けられている場合)に上向きの力の最大限度を決めて、ウエハ破損の危険性を最小限に抑えることができる。また、反対向きの圧力をかけることにより、リフトピンに対する所望の位置関係からウエハをずらす可能性のあるウエハに突然かかる力を抑制することができる。また、必要に応じて、デチャックが実行されたことを示す指標として、リフトピンに印加される力を用いるようにしてもよい。
【0062】
中間リフト位置では、ウエハをESCの約0.5〜約3mm(たとえば、2〜3mm)上まで上昇させ、また、アップ位置では、ESCの約9.5mm(0.375インチ)〜約12.5mm(0.433インチ)上まで上昇させることが望ましい。
【0063】
好適な実施形態において、供給管を介して、たとえば、別々の50psig(あるいは、必要に応じて、65psig、70psig又は75psig)のガス供給管と90psigのガス供給管とを介して、リフト機構にガス圧を供給するようにしてもよい。吸気口306〜309へのガス供給を、電子制御式開閉弁で制御するようにしてもよい。コントローラー、たとえば、プラズマリアクターの他の作動部分も制御するコントローラーを用いて、このような弁(バルブ)を開位置又は閉位置に駆動することが望ましい。
【0064】
図4は、ガス圧式アクチュエータのハードウェアの制御システムを例示する概略図である。ガス圧式アクチュエータ400は、ガス溜410に接続される第2ないし第4の吸気口307、308及び309と、シャトル弁401に接続される第1の吸気口306と、を備える。ガス溜は、制御弁を備える。ガス溜は、高圧ガス源420から高圧ガス(たとえば、60psigから120psig(ゲージ圧)、望ましくは90psig)の供給を受け、検知/制御論理回路440により制御されて、要求に従って吸気口307、308及び309とシャトル弁401とにガスを供給する。シャトル弁401は、ガス溜からガスの供給を受けると共に、低圧ガス源430(50psig又は必要に応じて、65psig、70psig又は75psigのガスを供給する)からガスの供給を受けるように接続される。シャトル弁401は、受け取ったガス圧のうち高い方を第1の吸気口306に供給することが望ましい(すなわち、シャトル弁401は、デフォルトでは低圧ガスを供給し、ガス溜410がシャトル弁401に高圧ガスを供給する場合には、高圧ガスを供給する)。あるいは、シャトル弁401をガス溜410と独立に制御することも可能である。検知/制御論理回路440が、(図示しない)他のセンサーからの入力、たとえば、ヨークの位置を検出するセンサーからの入力を受け取るようにしてもよい。
【0065】
ESCとウエハとにデチャック電圧を印加しつつ、又は、印加することなく、及び、ウエハの下面にヘリウムガスを供給しつつ、又は、供給することなく、中間リフト工程を実行するリフト機構を用いることができる。デチャック電圧を印加する場合には、ウエハを持ち上げる前にプラズマによりウエハ上に誘導されるバイアス電圧である200Vの範囲内の値に、たとえば、ゼロを含む−200Vから+200Vの範囲の値に、デチャック電圧を設定することが望ましい。300mmのEXELANの場合、好適なデチャック電圧は、50ミリトールで50W、27MHzのプラズマ条件下で−50V、すなわち、ウエハ上のバイアス電圧測定値である約20Vの範囲内である。デチャック電圧のみを用いる場合(たとえば、中間リフト工程の一部として、プラズマ発生状態(プラズマオン状態)の基板放電工程を行なわない場合)には、基板上に残った電荷を除去するのに十分なデチャック電圧の極性及び大きさは、基板の種類、基板の温度、デチャック方法等によって変動するため、基板電荷を除去するのに最適なデチャック電圧をリアクター処理条件が変動するたびに繰り返し決定する必要があり、時間がかかる等の問題がある。基板の電荷を中和しない限り、デチャック工程で、ウエハのリフト時に基板上にかかる電圧にスパイクが生じ、これにより、静電的に汚染物質が基板に付着する可能性がある。
【0066】
ウエハの下面に印加される1〜10トールのヘリウム背圧を用いて、ウエハが少なくとも部分的にプラズマ・シース内に配置される中間リフト位置までウエハをわずかに持ち上げるようにしてもよい。ヘリウム背圧を用いる場合の圧力は2〜5トールが好ましく、3トールがより好ましい。ただし、好適な実施形態において、プラズマオン状態におけるウエハの中間リフト位置への中間リフト工程より前に、デチャック工程で用いられるヘリウム背圧を0トールとしてもよい(ヘリウム背圧を印加しない)。
【0067】
図5に、ESCからのデチャック時におけるウエハ電圧を測定した試験の結果を示す。一点鎖線は、0トールのヘリウム背圧でのプラズマ・デチャック工程後にプラズマオフ状態で(プラズマが存在しない状態で)昇降を行なう場合のウエハ電圧を示す(「0T Heデチャック」と表示)。点線は、3トールのヘリウム背圧でのプラズマ・デチャック工程後にプラズマオフ状態で昇降を行なう場合のウエハ電圧を示す(「3T Heデチャック」と表示)。実線は、0トールのヘリウム背圧でのプラズマ・デチャック工程後にプラズマオン状態で(プラズマが発生している状態で)中間リフトデチャック工程を行なう場合のウエハ電圧を示す(「中間リフトデチャック」と表示)。プラズマオン状態での中間リフトデチャック工程では、ウエハを、ESCの支持面の上方に、プラズマ・シース内の中間リフト位置まで持ち上げる。ここで、グラフを見やすくするために、「ピンアップ」時間をずらして表示してある。以下に示す表に、これらの試験を実施した際に用いたパラメータの詳細を示す。
【0068】
プラズマ・シース内のウエハ位置にプラズマオン状態で中間リフトすることにより、ウエハのリフト時における電圧スパイクを最小限に抑えられることがわかる。これとは対照的に、ウエハを持ち上げる前にRF電力をオフにした場合には、大きな電圧スパイクが生じる。プラズマが存在しない状態でウエハを持ち上げる場合には、プラズマ・デチャック時に3トールのヘリウム背圧を印加することにより、ヘリウム背圧を印加しない場合に比べて、電圧スパイクの大きさを小さくすることができる。
【0069】
以下に示す表1は、プラズマオン状態での中間リフト工程を行なうデチャック試験に用いられたプラズマチャンバー操作パラメータを示す。この表及び他の表において、MEは「メインエッチング」を表わし、DCProbeは(ESCに印加する電圧の設定に用いられる)ウエハバイアス電圧測定値を意味し、DC1はデチャック1(デチャック処理の開始時における、プラズマリアクターを安定化させる最初の省電力設定を示す)を表わし、DC2はデチャック2(デチャック時における電力設定を示す)を表わす。
【表1】
【0070】
表2は、プラズマオン状態での中間リフトデチャック工程を行なわない0T Heデチャック試験に用いられたプラズマチャンバー操作パラメータを示す。
【表2】
【0071】
表3は、プラズマオン状態での中間リフトデチャック工程を行なわない3T Heデチャック試験に用いられたプラズマチャンバー操作パラメータを示す。
【表3】
【0072】
図6Aに、デチャック電圧を調節することにより、プラズマオフ状態でのウエハリフトのために、ピンアップ時におけるウエハ電位スパイクの制御が可能になることを示す。2本の濃い色の実線(太線と細線)は、デチャック電圧を−50Vとしたときの2回の測定結果を示し、この場合には、デチャック時に大きな正電圧スパイクが生じていることがわかる。薄い色の実線及び長い破線は、デチャック電圧を0Vとしたときの2回の測定結果を示し、この場合には、デチャック時に大きな負電圧スパイクが生じていることがわかる。3本の他の線(短い破線、点線及び星印の線)は、デチャック電圧を−25Vとしたときの3回の測定結果を示し、この場合には、他の測定例と比較して、デチャック時の電圧スパイクが小さいことがわかる。ESCに印加されるデチャック電圧を適切に選択することにより、ピンアップ時におけるウエハの電圧スパイクを最小限に抑えることができる。これらの試験では、プラズマオン状態でのデチャック工程の後、プラズマオフ状態でウエハのリフトを行なった。
【0073】
これに対して、図6Bに、デチャック時に異なるデチャック電圧を印加して、プラズマオン状態での中間リフト工程を行なった場合のウエハ電位の変化を示す。この場合には、ピンアップ時にプラズマがオン状態であり、図6Aと比較して、ピンアップ時におけるウエハの電位スパイクは終始低く(大きさが25V未満)、デチャック電圧値との相関性も低い。したがって、異なるデチャック電圧を用いる必要がある様々な状況において、中間リフト工程は、電圧スパイクの減少に有用であると考えられる。
【0074】
図7に、3トールのヘリウム背圧の存在下又は不在下で、デチャックプラズマを発生させるがプラズマオン状態の中間リフト工程は行なわない場合(カラムA及びカラムB)、及び、プラズマオン状態の中間リフトデチャック工程を行なう場合(カラムC)について、デチャックされたウエハ上で測定された粒子状汚染物質の数を示す。中間リフト・プラズマデチャック(0トールのヘリウム背圧によるプラズマデチャック後にプラズマオン状態での中間リフト)方法を用いることにより、3トールヘリウム印加後にプラズマオフ状態でデチャックする方法と比べて、粒子のカウント数が低くなる。
【0075】
中間リフト・プラズマデチャック方法で粒子カウント数が低い理由は、低い電圧スパイクの結果として静電気引力によるウエハへの粒子移動が減少することにより部分的に説明ができ、また、ウエハのデチャック及びリフト時に印加されるヘリウム背圧が0トールであることによりヘリウム流に載って移動する裏面粒子が減少することによっても部分的に説明ができる。たとえば、正のウエハ電位が最小限に抑えられれば、負電荷を持つウエハ裏面の粒子と隣接するエッジリング上の粒子とがウエハのリフト時にウエハに引き付けられる可能性が少なくなる。
【0076】
本発明を特定の実施形態や実施例を参照して説明したが、本発明の要旨の範囲内でさまざまに変形及び変更可能である。発明の要約、概要及び名称を含む本明細書の各部分は、何ら本発明の範囲を限定するものではなく、関係当局のみならず一般の人々が本発明の一般特性を速やかに理解する援助を目的としたものである。「手段」という用語を明示的に用いない限り、本明細書に記載されるいかなる特徴や構成要素もミーンズ・プラス・ファンクション(means-plus-function)を限定するものではない。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図7