特許第6149223号(P6149223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6149223
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】板状物の貼着方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20170612BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20170612BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   !H01L21/304 622J
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-87145(P2013-87145)
(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公開番号】特開2014-212188(P2014-212188A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴司
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 寛
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−119578(JP,A)
【文献】 特開2010−062269(JP,A)
【文献】 特開2012−143723(JP,A)
【文献】 特開2011−249652(JP,A)
【文献】 特開2010−155298(JP,A)
【文献】 特開2011−216763(JP,A)
【文献】 特開2012−124230(JP,A)
【文献】 特開2002−203828(JP,A)
【文献】 特開2004−247611(JP,A)
【文献】 特開平11−307585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物をシートに貼着する板状物の貼着方法であって、
接着剤をはじく程度に濡れ性が低い面を有する該シートの該面の一点に接着剤を供給して半球状に盛り上がる該接着剤の山を形成する接着剤供給ステップと、
該接着剤供給ステップを実施した後、板状物の被貼着面を該シートの該面に対面させた状態で板状物を該シートに対して相対移動させて、該接着剤の山の頂点から板状物で該接着剤の山を押し広げ該シートの該面に該接着剤を介して板状物を貼着する貼着ステップと、を備え
該接着剤として、粘度が15Pa・s以上のエポキシ系樹脂を用いることを特徴とする板状物の貼着方法。
【請求項2】
前記シートとして、ポリスチレンから形成されたシート、フッ素樹脂コーティングが施されたシート、又は、コロナ放電処理が施されたシートを用いる請求項1記載の板状物の貼着方法。
【請求項3】
前記接着剤は紫外線の照射で硬化する紫外線硬化樹脂から構成され、
前記シートは紫外線を透過し、
前記貼着ステップを実施した後、該シートを介して該接着剤に紫外線を照射して該接着剤を硬化させる硬化ステップ、を更に備えた請求項1又は2記載の板状物の貼着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ等の板状物をシート上に貼着する板状物の貼着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の数多くのデバイスが表面に形成され、且つ個々のデバイスが分割予定ライン(ストリート)によって区画された半導体ウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに加工された後、切削装置(ダイシング装置)によって分割予定ラインを切削して個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に広く利用されている。
【0003】
半導体ウエーハ(以下、単にウエーハと略称することがある)の裏面を研削する研削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削砥石を有する研削ホイールが回転可能に装着された研削手段とを備えていて、ウエーハを高精度に所望の厚みに研削できる。
【0004】
半導体ウエーハの裏面を研削するには、多数のデバイスが形成されたウエーハの表面側をチャックテーブルで吸引保持しなければならないため、デバイスを保護するためにポリエチレン塩化ビニル、ポリオリフィン等の基材の一面にアクリル系の粘着層を配設して構成される保護テープが半導体ウエーハの表面に貼着される。
【0005】
ウエーハの裏面研削では、このような保護テープが表面に貼着された保護テープ側をチャックテーブルの保持面で吸引保持し、ウエーハの裏面を研削してウエーハを一様な厚みに薄化するが、保護テープの粘着層の厚みにばらつきがあるため、ウエーハを一様な厚みに研削するのは容易ではない。特に、ウエーハの口径が大きくなればなるほど、保護テープの粘着層に厚みばらつきが発生するため、ウエーハを一様な厚みに研削するのは難しい。
【0006】
一方、インゴットからワイヤーソー等を使用して切り出されたウエーハは反りやうねりを有している。このようなウエーハは研削により平坦化する加工が行われる。このウエーハの研削時には、一方の面に樹脂を塗付し、樹脂を硬化させることにより当該一方の面側を平坦面とした後、該平坦面側を保持し、他方の面に研削砥石を接触させて研削を行うことにより、ウエーハのうねりや反りを除去する方法及び装置が提案されている(特開2009−148866号公報参照)。
【0007】
この公開公報に記載された樹脂被覆装置においては、接着剤として作用する紫外線硬化樹脂と紫外線硬化樹脂を支持する支持テーブルとが固着しないように支持テーブル上にシートを配設し、シートとともにウエーハの一方の面に樹脂を塗付して硬化させて一方の面側を平坦面としている。
【0008】
このように保護テープに代わってシート上に塗付された液状樹脂にウエーハの表面側をプレス等で押し付けて液状樹脂を一様な厚さとした後硬化させる方法は、ウエーハの裏面研削時に使用するウエーハの表面を保護する保護手段として有効であり、特にウエーハの口径が大きくなればその利用価値が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−148866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された樹脂被覆方法では、上面に接着剤が供給されたシートにウエーハを押圧して貼着する際に、接着剤とウエーハとの間に気泡が混入してしまうと気泡が混入した部分は局所的に接着剤で支持されないため、後の加工で悪影響を及ぼしてしまうという問題がある。
【0011】
具体的には、例えば気泡が混入することで研削時にウエーハを吸引保持して十分固定することができず、研削加工中に接着剤からウエーハが剥離してしまったりする等の問題を生じることがある。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接着剤と板状物との間に気泡が混入されにくい板状物の貼着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、板状物をシートに貼着する板状物の貼着方法であって、接着剤をはじく程度に濡れ性が低い面を有する該シートの該面の一点に接着剤を供給して半球状に盛り上がる該接着剤の山を形成する接着剤供給ステップと、該接着剤供給ステップを実施した後、板状物の被貼着面を該シートの該面に対面させた状態で板状物を該シートに対して相対移動させて、該接着剤の山の頂点から板状物で該接着剤の山を押し広げ該シートの該面に該接着剤を介して板状物を貼着する貼着ステップと、を備え、該接着剤として、粘度が15Pa・s以上のエポキシ系樹脂を用いることを特徴とする板状物の貼着方法が提供される。
【0014】
好ましくは、シートとして、ポリスチレンから形成されたシート、フッ素樹脂コーティングが施されたシート、又は、コロナ放電処理が施されたシートを用いる。好ましくは、接着剤は紫外線の照射で硬化する紫外線硬化樹脂から構成され、シートは紫外線を透過し、本発明の板状物の貼着方法は、貼着ステップを実施した後、シートを介して接着剤に紫外線を照射して接着剤を硬化させる硬化ステップを更に備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の板状物の貼着方法によると、シート上の一点に接着剤を供給して接着剤の山を形成し、その後、板状物をシートに対して相対移動させて接着剤の山の頂点から板状物で接着剤の山を押し広げることで、シート上に接着剤を介して板状物を貼着する。
【0016】
板状物は接着剤とほぼ点接触で接触した後、板状物で接着剤が押し広げられて板状物がシート上に貼着されるため、接着剤と板状物との間に空気が入り込むことが防止されるので、接着剤と板状物との間に気泡が混入されにくい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】接着剤供給ステップを示す側面図である。
図2】半導体ウエーハの表面側斜視図である。
図3】貼着ステップを示す一部断面側面図である。
図4】接着剤硬化ステップを示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、接着剤供給ステップを示す側面図が示されている。まず、ガラス等の透明部材から形成された支持基台16の支持面16a上にシート10を載置し、シート10上の一点、好ましくはシート10の中心部分の一点に接着剤18を供給して、シート10に接着剤18の山を形成する。接着剤18の山は、半球状に盛り上がるのが好ましい。
【0019】
このように接着剤18の半球状の山を形成するためには、接着剤18の粘度がある程度以上であるのが好ましく、粘度は接着剤18の種類に応じて適宜設定される。例えば、接着剤18としてエポキシ系樹脂を採用する場合には、その粘度は15Pa・s以上であるのが好ましい。
【0020】
ここで、接着剤18の山を適正に形成するためには、シート10の接着剤18に対するぬれ性が重要なファクターであり、シート10の表面が接着剤18を弾く程度にぬれ性が低い性質を有しているのが好ましい。
【0021】
例えば、シート10をポリスチレンから形成すると、シート10の表面にこのような性質を付与することができる。或いは、シート10をポリエチレン塩化ビニル、ポリオレフィン等の樹脂から形成し、シート10の表面にフッ素樹脂コーティングを施すか或いはコロナ放電処理を施すようにすると、シート10の表面に接着剤18を弾く程度に濡れ性が低い性質を付与することができる。好ましくは、接着剤18は紫外線の照射で透過する紫外線硬化樹脂から構成され、シート10は紫外線に対して透明であるのが好ましい。
【0022】
図2を参照すると、シート10が貼着される板状物の一種である半導体ウエーハ(以下、単にウエーハと略称することがある)11の表面側斜視図が示されている。半導体ウエーハ11の表面11aには複数の分割予定ライン(ストリート)13が格子状に形成されているとともに、分割予定ライン13で区画された各領域にIC,LSI等のデバイス15が形成されている。半導体ウエーハ11は例えばシリコンウエーハから構成され、その厚みは約700μm程度である。11bはウエーハ11の裏面である。
【0023】
次に、図3及び図4を参照して、ウエーハ11の表面11aに硬化された接着剤層18aとシート10とからなる保護シート32を貼着する方法について説明する。図3(A)を参照すると、プレス装置20はポーラスセラミックス等から形成された吸引保持部24を有する保持テーブル22を備えており、吸引保持部24は電磁切替弁26を介して吸引源28に選択的に接続される。
【0024】
図3(A)に示すように、プレス装置20の保持テーブル22でウエーハ11の裏面11b側を吸引保持し、保持テーブル22を矢印A方向に降下させて、図3(B)に示すように、ウエーハ11の表面11aを半球状の接着剤18に点接触させる。
【0025】
この状態から、保持テーブル22を更にゆっくりと降下させて接着剤18をシート10に対して押圧すると、接着剤18は矢印B方向に一様に引き延ばされ、シート10が一様に引き延ばされた接着剤18を介してウエーハ11の表面11aに貼着される(貼着ステップ)。
【0026】
この状態で、図4に示すように、ガラス等の透明材料から形成された支持台16の下方に配置された紫外線ランプ30を点灯して、支持台16及び紫外線を透過する性質を有するシート10を通して、一様に引き延ばされた接着剤18に紫外線を照射して接着剤18を硬化させ接着性を有する接着剤層18aとする。プレス装置20の保持テーブル22を上昇させると、ウエーハ11の表面11aにシート10と接着剤層18aとからなる保護シート32を貼着することができる。
【0027】
上述したウエーハの貼着方法では、接着剤供給ステップでシート10上の一点に接着剤18を供給して接着剤の山を形成し、貼着ステップでは、ウエーハ11の被貼着面をシート10に対面させた状態でウエーハ11をシート10に対して相対移動させて、接着剤18の山の頂点からウエーハ11で接着剤18の山を押し広げシート10上に接着剤18を貼着する。
【0028】
これにより、ウエーハ11の表面11aにシート10と硬化された接着剤層18aとからなる保護シート32が貼着される。従って、接着剤18とウエーハ11との間に空気が入り込むことが防止されるため、接着剤18とウエーハ11との間に気泡が混入されることが抑制される。
【0029】
上述した実施形態では、ウエーハ11の表面11aに接着剤18を介してシート10を貼着する例について説明したが、シート10が貼着される板状物はウエーハ11に限定されるものではなく、一般的な板状の被加工物(板状物)を含むものである。
【符号の説明】
【0030】
10 シート
11 半導体ウエーハ
16 支持台
18 接着剤
20 プレス装置
22 保持テーブル
24 吸引保持部
28 吸引源
30 紫外線ランプ
図1
図2
図3
図4