【文献】
細野秀雄, 他8名,“酸化物TFT駆動有機EL用電子注入層物質:アモルファスC12A12エレクトライド”,第60回応用物理学会春季学術講演予稿集,2013年 3月11日,29p-G13-1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エレクトライドの薄膜において、アルミニウム原子とカルシウム原子のモル比(Ca/Al)は、0.3〜5.0の範囲である、請求項7乃至11のいずれか一つに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について詳しく説明する。
【0025】
まず、本発明の特徴をより良く理解するため、
図1を参照して、従来の半導体装置の構成について簡単に説明する。
【0026】
図1には、従来の半導体装置の概略的な断面を示す。
【0027】
図1に示すように、従来の半導体装置1は、基板10と、半導体層5と、ソース電極20と、ドレイン電極22と、ゲート電極24とを有する。
【0028】
半導体層5は、基板10の上部に配置され、ソース電極20およびドレイン電極22は、半導体層5の上部に配置される。ソース電極20およびドレイン電極22の上部には、ゲート絶縁層30を介して、ゲート電極24が配置される。通常、半導体層5としては、酸化物半導体からなる層、または有機化合物半導体からなる層等が使用される。
【0029】
このような半導体装置1は、例えば、液晶パネルや電子ペーパーなどのような電気光学装置、および発光表示装置等に利用することができる。
【0030】
ここで、従来の半導体装置1においては、さらなる高性能化および高機能化のため、ソース電極20と半導体層5の界面、およびドレイン電極11と半導体層5の界面における接触抵抗の低減が求められている。この界面での接触抵抗が大きくなると、半導体装置1の動作特性が低下するためである。
【0031】
一般に、半導体層5がN型半導体の場合、金属製のソース電極20/ドレイン電極22と、半導体層5の界面での接触抵抗を抑制する際には、オーミック接合を利用することが効果的である。オーミック接合とは、半導体層側に空間電荷層が形成されないようにして、金属と半導体を接合させた状態を意味し、この場合、金属/半導体界面に、整流性は生じなくなる(すなわち、電子は両方向に流れる)。
【0032】
しかしながら、金属製のソース電極20/ドレイン電極22と半導体層5との界面に、そのようなオーミック接合を発現させるためには、ソース電極20/ドレイン電極22の仕事関数を、半導体層5の仕事関数よりも小さくする必要がある。しかしながら、通常、そのような仕事関数を有する金属材料は、あまり多くはない。また、仕事関数の低い金属は活性であり反応性が高く、他の成分と容易に反応層を形成するため、低仕事関数の金属と半導体層とを直接接合させることが難しかった。このため、このような対応では、ソース電極20/ドレイン電極22の材質が大きく制限されてしまうという問題が生じる。
【0033】
一方、金属製のソース電極20/ドレイン電極22の仕事関数が、半導体層5よりも大きい場合には、金属/半導体の界面に、ショットキー障壁が形成される。この場合、半導体側に生じる空間電荷層をできるだけ薄くして、トンネル効果によって接触抵抗を抑制することが考えられる。しかしながら、空間電荷層を薄くするためには、半導体層内のキャリア密度を著しく高める必要がある。従って、この方法も、現実的な対応策にはならない場合がある。
【0034】
これに対して、本発明では、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極および半導体層を有する半導体装置であって、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の片方または双方と前記半導体層との間に、カルシウム原子およびアルミニウム原子を含む非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜を有することを特徴とする半導体装置が提供される。
【0035】
本発明による半導体装置は、前記ソース電極および前記ドレイン電極の片方または双方と前記半導体層との間に、カルシウム原子およびアルミニウム原子を含む非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜が配置されるという特徴を有する。
【0036】
ここで、カルシウム原子およびアルミニウム原子を含む非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜は、半導体的な電気的特性を示し、仕事関数が比較的低いという特徴を有する。例えば、この薄膜の仕事関数は、2.4eV〜4.5eVの範囲(例えば2.8eV〜3.2eV)である。また、この薄膜は、電子密度が高いという特徴を有する。薄膜の電子密度は、例えば、2.0×10
17cm
−3〜2.3×10
21cm
−3の範囲である。
【0037】
本発明による半導体装置では、このような薄膜の存在により、前記ソース電極および前記ドレイン電極の片方または双方と前記半導体層との間における接触抵抗を、有意に低下させることができる。このため、本発明では、従来に比べて高い動作特性を有する半導体装置を提供することができる。
【0038】
本発明は、半導体層がN型半導体の場合に、より効果を奏する。特に、半導体層の仕事関数よりソース電極の仕事関数およびドレイン電極の仕事関数が大きい場合に効果を奏する。
【0039】
上述の通り、N型半導体の場合は半導体層よりもソース電極およびドレイン電極の仕事関数を低くすることでオーミック接合を発現させることができる。しかし、仕事関数の低い金属は活性であり反応性が高く、他の成分と容易に反応層を形成するため、オーミック接合を発現させることが難しかった。本発明に係るエレクトライドの薄膜は、低い仕事関数を有しているにも関わらず、高い化学的耐久性を有しており、さらに高いキャリア密度(電子密度)を有している。そのため、半導体層(N型半導体)とエレクトライドの薄膜との間にオーミック接合を発現させることができ、ソース電極およびドレイン電極(金属)との間にトンネル効果を発現させることができる。その結果、ソース電極およびドレイン電極の片方または双方と半導体層との間における接触抵抗を有意に低下させることができ、従来に比べて高性能な半導体装置を提供することができる。
【0040】
エレクトライドの薄膜の仕事関数は、半導体層の仕事関数よりも小さいことが好ましい。半導体層の仕事関数とエレクトライドの薄膜の仕事関数の差は、0超〜3.0eVが好ましく、0.1〜2.5eVがより好ましく、0.5〜2.0eVがさらに好ましい。このような仕事関数の差を有することで、容易にオーミック接合を発現させることができ、接触抵抗を有意に低減させることができる。
【0041】
また、本発明は、半導体層が酸化物半導体の場合により効果を奏し、N型の酸化物半導体の場合に特に効果を奏する。例えば、半導体層として、酸化物半導体の一例であるIGZO(In−Ga−Zn−O)からなる層を適用する。IGZOからなる層の仕事関数は、4.3eV〜4.5eVである。ソース電極およびドレイン電極としてアルミニウム(Al)を適用するとき、Alからなるソース電極およびドレイン電極の仕事関数は4.1eVである。この場合、ソース電極およびドレイン電極の片方または双方と半導体層とを直接接合させると、反応層を生じオーミック接合は発現させにくい。これに対して、本発明では、ソース電極およびドレイン電極の片方または双方と半導体層との間に、カルシウム原子およびアルミニウム原子を含む非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜が配置される。このエレクトライドの薄膜の仕事関数は、2.4eV〜4.5eVの範囲であり、例えば2.8eV〜3.2eVの範囲とすることができ、IGZOからなる層の仕事関数と比較して充分低くすることができる。しかも、このエレクトライドの薄膜は化学的に安定なため反応層を形成しにくい。また、ソース電極およびドレイン電極(金属)とエレクトライドの薄膜の界面においては、エレクトライドの薄膜の電子密度が高いため、トンネル効果により接触抵抗が低下される。このため、オーミック接合を発現させることが容易となり、ソース電極およびドレイン電極の片方または双方と半導体層との間の接触抵抗を低下させることができる。その結果、従来より高性能な半導体装置を提供することができる。
【0042】
また、本発明は、半導体層が有機物半導体の場合により効果を奏し、半導体層をN型の有機半導体として用いる場合に特に効果を奏する。有機半導体からなる層はキャリア密度が10
10cm
−1〜10
17cm
−1未満と一般的に低く、金属製のソース電極およびドレイン電極と接触抵抗が発生しやすい。有機半導体からなる層においてキャリアタイプは、有機半導体からなる層のHOMO、LUMOと、ソース電極およびドレイン電極の仕事関数の相対関係に影響をうけることが知られ、有機半導体からなる層のHOMOとソース電極およびドレイン電極の仕事関数の差、もしくは有機半導体からなる層のLUMOとソース電極およびドレイン電極の仕事関数の差において、前者が後者より小さい場合はP型、前者が後者より大きい場合はN型となる傾向がある。エレクトライドの薄膜は、低い仕事関数を有するため、有機半導体からなる層に電子を注入することができる。すなわち、有機半導体からなる層をN型として用いることができる。
【0043】
例えば、半導体層として、有機物半導体の一例であるC60フラーレンからなる層を適用する。C60フラーレンの仕事関数は、4.6eVである。ソース電極およびドレイン電極として金(Au)を適用するとき、Auからなるソース電極およびドレイン電極の仕事関数は5.0eVである。この場合、ソース電極およびドレイン電極の双方または片方と半導体層とを直接接合させると、ソース電極およびドレイン電極の仕事関数が大きいため、オーミック接合は発現させにくい。これに対して、本発明では、ソース電極およびドレイン電極の片方または双方と半導体層との間に、カルシウム原子およびアルミニウム原子を含む非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜が配置される。このエレクトライドの薄膜の仕事関数は、2.4eV〜4.5eVの範囲であり、例えば2.8eV〜3.2eVの範囲とすることができ、C60フラーレンからなる層の仕事関数と比較して充分低くすることができる。しかも、このエレクトライドの薄膜は化学的に安定なため反応層を形成しにくい。また、ソース電極およびドレイン電極(金属)とエレクトライドの薄膜の界面においては、エレクトライドの薄膜の電子密度が高いため、トンネル効果により接触抵抗が低下される。このため、オーミック接合を発現させることが容易となり、ソース電極およびドレイン電極の片方または双方と半導体層との間の接触抵抗を低下させることができる。その結果、従来より高性能な半導体装置を提供することができる。
【0044】
また、エレクトライドの薄膜における電子親和力と仕事関数の差をΔFとし、半導体層における電子親和力と仕事関数の差をΔBとした場合に、ΔFとΔBとの差が0に近いことが好ましい。例えば、ΔFとΔBとの差の絶対値は0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0がさらに好ましい。ΔFとΔBとの差の絶対値を極力小さくすることで、半導体層とエレクトライドの薄膜を接合したときに、それぞれの伝導帯の底のエネルギー準位が揃うため、半導体層とエレクトライドの薄膜との間の接触抵抗を低くすることが可能となる。半導体層として、酸化物半導体の一例であるIGZOからなる層を適用する例を説明する。エレクトライドの薄膜は、電子親和力が2.5eVであり、仕事関数が3.0eVである場合は、ΔFは0.5eVである。IGZOからなる層は、電子親和力が4.2eVであり、仕事関数が4.3eV〜4.5eVである場合は、ΔBは0.1eV〜0.3eVである。ΔFとΔBとの差は0.4以下となり、非常に低い接触抵抗とすることができる。半導体層とエレクトライドの薄膜との間の接触抵抗を低下させることで、ソース電極およびドレイン電極の片方または双方と半導体層との間の接触抵抗を低下させることができる。その結果、従来より高性能な半導体装置を提供することができる。
【0045】
エレクトライドの薄膜は、高いイオン化ポテンシャルを有してよい。このエレクトライドの薄膜のイオン化ポテンシャルは7.0eV〜9.0eVであっても良く、7.5eV〜8.5eVであっても良い。
【0046】
また、半導体層が有機半導体の場合は、エレクトライドの薄膜のイオン化ポテンシャルが、有機半導体からなる層のイオン化ポテンシャルよりも大きいことが好ましい。エレクトライドの薄膜と有機半導体からなる層のイオン化ポテンシャルの差は、1.1eV〜3.5eVであっても良く、1.3eV〜3.3eVであっても良く、1.6eV〜3.0eVであっても良い。
【0047】
さらに、エレクトライドの薄膜のイオン化ポテンシャルと仕事関数の差が、有機半導体からなる層のイオン化ポテンシャルと仕事関数の差よりも大きいことが、より好ましい。例えば、エレクトライドの薄膜のイオン化ポテンシャル(IP)と仕事関数(WF)の差(IP−WF)を、ΔEとする。有機半導体からなる層のイオン化ポテンシャル(IP)と仕事関数(WF)の差を、ΔAとする。この両者の差(ΔE−ΔA)は、1.3eV〜5.8eVが好ましく、2.0eV〜5.0eVがより好ましく、2.5eV〜4.5eVが特に好ましい。
【0048】
例えば、本発明の半導体装置が薄膜電界効果型トランジスタの場合、トランジスタのオフ時(ゲート電圧が0、またはゲート電圧として負の電圧が印加される場合)にソース電極へホールが伝導し、オフ電流(リーク電流)が生じる場合がある。特に、半導体層として有機半導体を適用した場合、オフ電流の問題が生じやすい。オフ電流の発生は、消費電力の増加などを引き起こすおそれがある。
【0049】
しかし、上述のようにエレクトライドの薄膜が高いイオン化ポテンシャルを有し、さらに有機半導体からなる層に対してイオン化ポテンシャルが充分に大きく、特に有機半導体からなる層に対してイオン化ポテンシャルと仕事関数の差が充分に大きいと、優れたホールブロック効果が得られる。これは、上述のエレクトライドの薄膜のイオン化ポテンシャルの差(ΔE)と、有機半導体からなる層のイオン化ポテンシャルと仕事関数の差(ΔA)と、の差(ΔE−ΔA)が、ホール伝導におけるエネルギー障壁となるからである。充分高いエネルギー障壁を有することで、ホール伝導をブロックでき、オフ電流を抑制することが可能となる。
【0050】
(用語の定義について)
ここで、本発明による半導体装置に含まれる、「カルシウム原子およびアルミニウム原子を含む非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜」に関連する用語について説明しておく。
【0051】
(非晶質酸化物のエレクトライド)
本願において、「カルシウム原子およびアルミニウム原子を含む非晶質酸化物のエレクトライド」、すなわち「非晶質酸化物のエレクトライド」は、カルシウム原子、アルミニウム原子および酸素原子から構成される非晶質を溶媒とし、電子を溶質とする溶媒和からなる非晶質固体物質を意味する。非晶質酸化物中の電子は、陰イオンとして働く。電子はバイポーラロンとして存在しても良い。
【0052】
図2には、非晶質酸化物のエレクトライドの構造を概念的に示す。
【0053】
図2に示すように、非晶質酸化物のエレクトライド70は、カルシウム原子、アルミニウム原子および酸素原子から構成される非晶質からなる溶媒72中に、バイポーラロン74と呼ばれる特徴的な部分構造が分散された状態で存在する。バイポーラロン74は、2つのケージ76が隣接し、さらにそれぞれのケージ76に、電子(溶質)78が包摂されて構成されている。ただし、非晶質酸化物の状態は上記に限られず、ひとつのケージ76に2つの電子(溶質)78が包接されてもよい。また、これらのケージが複数凝集した状態でもよく、凝集したケージは微結晶とみなすこともできるため、非晶質中に微結晶が含まれた状態も本発明において非晶質とみなす。
【0054】
本発明において、非晶質酸化物のエレクトライドは、バイポーラロンのケージ構造が保持される範囲で、カルシウム原子、アルミニウム原子、酸素原子のほかに、Sr、Mg、Ba、Si、Ge、Ga、In、およびBからなる群から選択される1以上の原子を含んでいても良い。また、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、およびCuからなる群から選択される1以上の原子、Li、Na、およびKからなる群から選択される1以上の原子、またはCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群から選択される1以上の原子を含んでいても良い、
また、本発明において、非晶質酸化物のエレクトライドは、2つのケージに包接されている2つの電子が、他の陰イオンに置換された化合物であっても良い。他の陰イオンとしては、例えば、H
−、H
2−、H
2−、O
−、O
2−、OH
−、F
−、Cl
−、およびS
2−からなる群から選択される1以上の陰イオンが挙げられる。
【0055】
また、非晶質酸化物のエレクトライドは、半導体的な電気的特性を示し、低い仕事関数を有する。仕事関数は2.4eV〜4.5eVであっても良く、2.8eV〜3.2eVであることが好ましい。また、非晶質酸化物のエレクトライドは、高いイオン化ポテンシャルを有する。イオン化ポテンシャルは7.0eV〜9.0eVであっても良く、7.5eV〜8.5eVであっても良い。
【0056】
(エレクトライドの薄膜)
バイポーラロンは、光子エネルギーが1.55eV〜3.10eVの可視光の範囲では光吸収がほとんどなく、4.6eV付近で光吸収を示す。従って、本発明によるエレクトライドの薄膜は、可視光において透明である。また、薄膜サンプルの光吸収特性を測定し、4.6eV付近の光吸収係数を測定することにより、薄膜サンプル中にバイポーラロンが存在するかどうか、すなわち薄膜サンプルが非晶質酸化物のエレクトライドを有するかどうかを確認することができる。
【0057】
本発明では、エレクトライドの薄膜におけるアルミニウム原子とカルシウム原子のモル比(Ca/Al)は、0.3〜5.0の範囲が好ましい。0.3以上であると、高い電子密度を保持できる。また、5.0以下であると、薄膜の耐久性に優れる。0.5〜1.6の範囲がより好ましく、0.55〜1.00の範囲が特に好ましい。薄膜の組成分析は、XPS法、EPMA法またはEDX法等により行うことができる。膜厚が100nm以下の場合はXPS法、50nm以上の場合はEPMA法、3μm以上の場合はEDX法による分析が可能である。
【0058】
本発明におけるエレクトライドの薄膜は、X線回折の測定をすると、ピークは観察されず、ハローのみが観察される。本発明では、エレクトライドの薄膜は、微結晶を含んでいても良い。薄膜内に微結晶が含有されているか否かは、例えば薄膜の断面TEM(透過型電子顕微鏡)写真などから判断される。結晶状態における組成は、12CaO・7Al
2O
3、CaO・Al
2O
3、3CaO・Al
2O
3等で表わされる。
【0059】
本発明では、エレクトライドの薄膜において、前記4.6eVの位置での光吸収値は、100cm
−1以上であっても良く、200cm
−1以上であっても良く、1000cm
−1以上であっても良く、5000cm
−1以上であっても良く、8000cm
−1以上であっても良く、10000cm
−1以上であっても良い。エレクトライドの薄膜において、4.6eVの位置の吸収値は、50nm以上の厚さの薄膜、好ましくは100nm以上の厚さの薄膜を用いると、精度よく測定できる。
【0060】
本発明では、エレクトライドの薄膜は、電子密度が2.0×10
17cm
−3以上2.3×10
21cm
−3以下の範囲で電子を含むことが好ましい。電子密度は、1.0×10
18cm
−3以上がより好ましく、1×10
19cm
−3以上がさらに好ましく、1×10
20cm
−3以上が特に好ましい。
【0061】
なお、エレクトライドの薄膜の電子密度は、ヨウ素滴定法により測定することができる。ちなみに、エレクトライドの薄膜におけるバイポーラロンの密度は、測定された電子密度を1/2倍することにより算定することができる。
【0062】
このヨウ素滴定法は、5mol/lのヨウ素水溶液中にエレクトライドの薄膜のサンプルを浸漬し、塩酸を加えて溶解させた後、この溶液中に含まれる未反応ヨウ素の量を、チオ硫酸ナトリウムで滴定検出する方法である。この場合、サンプルの溶解により、ヨウ素水溶液中のヨウ素は、以下の反応によりイオン化する:
I
2+e
−→2I
− (1)式
また、チオ硫酸ナトリウムでヨウ素水溶液を滴定した場合、
2Na
2S
2O
3+I
2→2NaI+Na
2S
4O
6 (2)式
の反応により、未反応のヨウ素がヨウ化ナトリウムに変化する。最初の溶液中に存在するヨウ素量から、(2)式で滴定検出されたヨウ素量を差し引くことにより、(1)式の反応で消費されたヨウ素量が算定される。これにより、エレクトライドの薄膜のサンプル中の電子密度を測定することができる。ヨウ素滴定法は、エレクトライドの薄膜が結晶質または非晶質のいずれにおいても適用可能である。
【0063】
本発明では、エレクトライドの薄膜の膜厚は、これに限られるものではないが、例えば、100nm以下であっても良く、10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましい。0.5nm以上であっても良い。
【0064】
エレクトライドの薄膜は、ケージ中の電子のホッピング伝導により、導電性を有する。本発明によるエレクトライドの薄膜の室温での直流電気伝導率は、10
−11S・cm
−1〜10
−1S・cm
−1であっても良く、また、10
−7S・cm
−1〜10
−3S・cm
−1であっても良い。
【0065】
エレクトライドの薄膜は、バイポーラロン74のほかに、部分構造として、酸素欠損に電子が一つ捕獲された、F
+センターを有することがある。F
+センターは複数のCa
2+イオンに1つの電子が取り囲まれて構成されており、ケージは有さない。F
+センターは3.3eVを中心として、1.55eV〜3.10eVの可視光の範囲で光吸収を有する。
【0066】
F
+センターの濃度が5×10
18cm
−3未満であると、薄膜の透明性が高まるため、好ましい。F
+センターの濃度が、1×10
18cm
−3以下であるとより好ましく、1×10
17cm
−3以下であるとさらに好ましい。なお、F
+センターの濃度は、ESRにおける、g値1.998の信号強度により測定できる。
【0067】
エレクトライドの薄膜において、4.6eVの光子エネルギー位置における光吸収係数に対する、3.3eVの位置における光吸収係数の比は、0.35以下であっても良く、0.25以下がより好ましく、0.15以下がさらに好ましい。
【0068】
エレクトライドの薄膜は、多結晶薄膜と比較して、結晶粒界を有さないため、平坦性に優れている。本発明によるエレクトライドの薄膜の表面の自乗平均面粗さ(RMS)は、0.1nm〜10nmであっても良く、また、0.2nm〜5nmであっても良い。RMSが2nm以下であると、素子の特性が向上するため、より好ましい。また、RMSが10nm以上であると素子の特性が低下するおそれがあるため、研磨工程などを追加する必要が生じる。上記のRMSは、たとえば、原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。
【0069】
エレクトライドの薄膜の組成は、12CaO・7Al
2O
3の化学量論比と異なっていても良く、製造の際に用いたターゲットの組成比と異なっていても良い。
【0070】
(本発明の一実施例による半導体装置について)
次に、
図3を参照して、本発明の一実施例による半導体装置について説明する。
図3には、本発明の一実施例による半導体装置(第1の半導体装置)100の断面を模式的に示す。
【0071】
図3に示すように、第1の半導体装置100は、基板110と、半導体層105と、ソース電極120と、ドレイン電極122と、ゲート電極124とを有する。
【0072】
半導体層105は、基板110の上部に配置され、ソース電極120およびドレイン電極122は、半導体層105の上部に配置される。ソース電極120およびドレイン電極122の上部には、ゲート絶縁層130を介して、ゲート電極124が配置される。
【0073】
ここで、第1の半導体装置100は、ソース電極120と半導体層105の間、および/またはドレイン電極122と半導体層105の間に、カルシウム原子およびアルミニウム原子を含む非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜(エレクトライドの薄膜)150が配置されているという特徴を有する。
【0074】
例えば、
図3の例では、ソース電極120と半導体層105の間に、第1のエレクトライドの薄膜150aが配置され、ドレイン電極122と半導体層105の間に、第2のエレクトライドの薄膜150bが配置されている。
【0075】
前述のように、このようなエレクトライドの薄膜150a、150bは、仕事関数が小さく、電子密度が高いという特徴を有する。
【0076】
従って、ソース電極120と半導体層105の間に、第1のエレクトライドの薄膜150aを配置した場合、ソース電極120と半導体層105の界面の接触抵抗を有意に抑制することができるという効果が得られる。同様に、ドレイン電極122と半導体層105の間に、第2のエレクトライドの薄膜150bを配置した場合、ドレイン電極122と半導体層105の界面の接触抵抗を有意に抑制することができる。
【0077】
従って、第1の半導体装置100は、従来に比べて有意に高い動作特性を発揮することができる。
【0078】
(半導体装置100の構成部材について)
次に、半導体装置100を構成する各部材について、簡単に説明する。
【0079】
(基板110)
基板110の材質は、特に限られない。基板110は、例えば、ガラス基板、セラミック基板、プラスチック基板、および樹脂基板等の絶縁基板であっても良い。
【0080】
あるいは、基板110は、半導体基板および金属基板であり、表面に絶縁層が形成されていても良い。
【0081】
(半導体層105)
半導体層105の材質は、特に限られない。半導体層105は、例えば、酸化物半導体および有機半導体など、一般的な半導体材料で構成されても良い。
【0082】
酸化物半導体としては、例えばIn、Ti、Nb、Sn、Zn、Gd、Cd、Zr、Y、La、およびTa等の遷移金属の酸化物や、SrTiO
3、CaTiO
3、ZnO・Rh
2O
3、CuGaO
2、およびSrCu
2O
2等の酸化物が挙げられる。
【0083】
例えば、酸化物半導体は、In、Sn、Zn、Ga、およびCdのうちの少なくとも1種の酸化物を含んでも良い。酸化物半導体は、In、Sn、Zn、およびGaのうちの少なくとも1種の酸化物を含むことが好ましく、In、Ga、およびZnのうちの少なくとも1種を含む酸化物(例えばIn−O系)を含むことがより好ましい。
【0084】
例えば、酸化物半導体は、In、Ga、およびZnのうちの少なくとも2種、例えば全ての酸化物を含んでも良い。
【0085】
そのような酸化物半導体の一例は、IGZO(In−Ga−Zn−O)、ITO(In−Sn−O)、ISZO(In−Si−Zn−O)、IGO(In−Ga−O)、ITZO(In−Sn−Zn−O)、IZO(In−Zn−O)、およびIHZO(In−Hf−Zn−O)等である。このような酸化物半導体で構成される膜は、非晶質であっても良く、結晶質であっても良く、非晶質と結晶質とを含む状態であっても良い。
【0086】
一方、有機半導体としては、例えば、多環芳香族化合物、共役二重結合化合物、マクロ環化合物、金属フタロシアニン錯体、電荷移動錯体、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、オリゴチオフェン類、フラーレン類、カーボンナノチューブ、などが挙げられる。例えばポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリチエニレンビニレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリアニリン、ポリジアセチレン、ポリアズレン、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリセレノフェン、ポリフラン、ポリ(p−フェニレン)、ポリインドール、ポリビリダジン、ナフタセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、トリフェノジオキサジン、トリフェノジリアジン、ヘキサセン−6,15−キノン、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィド、ポリビニルピリジン、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、アントラセンテトラカルボン酸ジイミド、C60、C70、C76、C78、C84、およびこれらの誘導体を用いることができる。また、これらの具体例としては、一般的にP型半導体とされるペンタセン、テトラセン、α−セキシチオフェン(6T)、銅フタロシアニン、ビス(1,2,5−チアジアゾロ)−p−キノビス(1,3−ジチオール)、ルブレン、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)(略称:PTV)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:P3HT)、(ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−ビチオフェン])(略称:F8T2)等がある。また、一般にN型半導体とされる7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、N,N'−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、銅(II)1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−フキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン(略称:F16CuPc)、3',4'−ジブチル−5,5''−ビス(ジシアノメチレン)−5,5''−ジヒドロ−2,2':5',2''−テルチオフェン)(略称: DCMT)等がある。なお、有機半導体においてP型やN型の特性は、その物質固有のものではなく、キャリアを注入する電極との関係や注入の際の電界の強度に依存する。
【0087】
(ソース電極120、ドレイン電極122)
ソース電極120およびドレイン電極122の材質は、導電性を有する限り特に限られない。ソース電極120およびドレイン電極122は、例えば、金属で構成されても良い。
ソース電極120およびドレイン電極122は、例えば、Al、Ag、Au、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、およびWから選定された少なくとも一つの元素を含む合金であっても良い。ソース電極120およびドレイン電極122は、例えば、ITO、アンチモン酸化物(Sb
2O
3)、ジルコニウム酸化物(ZrO
2)、スズ酸化物(SnO
2)、亜鉛酸化物(ZnO)、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(ZnO−Al
2O
3:アルミニウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、GZO(ZnO−Ga
2O
3:ガリウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、NbドープTiO
2、TaドープTiO
2、およびIWZO(In
2O
3−WO
3−ZnO:三酸化タングステンおよび酸化亜鉛がドーピングされたインジウム酸化物)等の金属酸化物材料で構成されても良い。また、ソース電極120およびドレイン電極122は、可視光を透過する程度に薄くした金属を用いて、透明電極としてもよい。
【0088】
半導体層105が有機半導体で構成される場合、ソース電極120およびドレイン電極122は、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、およびナトリウムなどの金属およびそれらを含む合金で構成されても良い。
【0089】
半導体層105は、仕事関数が3.5〜7.0eVであっても良く、4.0〜5.0eVであることが好ましい。
【0090】
半導体層105は、キャリア密度が10
11〜10
17cm
−3未満であっても良く、10
14〜10
16cm
−3であることが好ましい。
【0091】
(ゲート電極124)
ゲート電極124の材質は、導電性を有する限り特に限られない。
【0092】
ゲート電極124は、例えばAl、Ag、Au、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、およびWから選ばれた元素、またはこれらの元素を成分とする金属もしくは合金、または上述した元素を組み合わせた合金等であっても良い。ゲート電極124は、例えば、ITO、アンチモン酸化物(Sb
2O
3)、ジルコニウム酸化物(ZrO
2)、スズ酸化物(SnO
2)、亜鉛酸化物(ZnO)、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(ZnO−Al
2O
3:アルミニウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、GZO(ZnO−Ga
2O
3:ガリウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、NbドープTiO
2、TaドープTiO
2、およびIWZO(In
2O
3−WO
3−ZnO:三酸化タングステンおよび酸化亜鉛がドーピングされたインジウム酸化物)等の金属酸化物材料で構成されても良い。また、ゲート電極124は、可視光を透過する程度に薄くした金属を用いて、透明電極としてもよい。
【0093】
ゲート絶縁層130は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒素を含む酸化ケイ素および酸素を含む窒化ケイ素などの無機絶縁材料や、アクリルやポリイミドなどの有機絶縁材料で構成されても良い。
【0094】
あるいは、ゲート絶縁層130は、珪素と酸素との結合で骨格構造が構成され、置換基として少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、アリール基)、フルオロ基を有する材料、いわゆるシロキサン系の材料で構成されても良い。
【0095】
ゲート絶縁層130は、単層であっても、2以上の層から構成されても良い。
【0096】
(半導体装置の構造について)
図3に示した第1の半導体装置100は、いわゆるトップゲート構造−トップコンタクト方式で構成されている。しかしながら、半導体装置を構成する各部材の配置構造は、これに限られるものではない。
【0097】
ここで、半導体装置の構成部材の配置構造には、例えば、(i)トップゲート構造−トップコンタクト方式、(ii)トップゲート構造−ボトムコンタクト方式、(iii)ボトムゲート構造−トップコンタクト方式、および(iii)ボトムゲート構造−ボトムコンタクト方式、等が存在する。
【0098】
以下、これらの配置構造について簡単に説明する。
【0099】
前述の
図3には、トップゲート構造−トップコンタクト方式で構成された半導体装置100の一例を示す。
【0100】
図3に示すように、この半導体装置100では、ゲート電極124は、半導体層105の上部に配置されており(トップゲート構造)、ソース電極120およびドレイン電極122も、半導体層105の上部に配置されている(トップコンタクト方式)。なお、半導体装置100において、半導体層105は、チャネルエッチ型であっても、チャネル保護型であっても良い。
【0101】
次に、
図4には、トップゲート構造−ボトムコンタクト方式で構成された半導体装置の一例を示す。
【0102】
図4に示すように、この半導体装置400は、基板410上に形成された半導体層405と、ソース電極420およびドレイン電極422と、ゲート絶縁層430と、ゲート電極424とを有する。
【0103】
この例では、ゲート電極424は、半導体層405の上部に配置されている(トップゲート構造)。一方、ソース電極420およびドレイン電極422は、半導体層405の下側に配置されている(ボトムコンタクト方式)。
【0104】
なお、この
図4に示した半導体装置400の例では、ソース電極420と半導体層405の間に、第1のエレクトライドの薄膜450aが配置され、ドレイン電極422と半導体層405の間に、第2のエレクトライドの薄膜450bが配置されている。ただし、第1のエレクトライドの薄膜450aおよび第2のエレクトライドの薄膜450bの一方は、省略されても良い。
【0105】
次に、
図5には、ボトムゲート構造−トップコンタクト方式で構成された半導体素子の一例を示す。
【0106】
図5に示すように、この半導体装置500は、基板510上に、半導体層505と、ソース電極520およびドレイン電極522と、ゲート絶縁層530と、ゲート電極524とを有する。
【0107】
この例では、ゲート電極524は、半導体層505の下側に配置されている(ボトムゲート構造)。一方、ソース電極520およびドレイン電極522は、半導体層505の上側に配置されている(トップコンタクト方式)。なお、半導体装置500において、半導体層505は、チャネルエッチ型であっても、チャネル保護型であっても良い。
【0108】
なお、この
図5に示した半導体装置500の例では、ソース電極520と半導体層505の間に、第1のエレクトライドの薄膜550aが配置され、ドレイン電極522と半導体層505の間に、第2のエレクトライドの薄膜550bが配置されている。ただし、第1のエレクトライドの薄膜550aおよび第2のエレクトライドの薄膜550bの一方は、省略されても良い。
【0109】
次に、
図6には、ボトムゲート構造−ボトムコンタクト方式で構成された半導体素子の一例を示す。
【0110】
図6に示すように、この半導体装置600は、基板610上に、半導体層605と、ソース電極620およびドレイン電極622と、ゲート絶縁層630と、ゲート電極624とを有する。
【0111】
この例では、ゲート電極624は、半導体層605の下側に配置されている(ボトムゲート構造)。一方、ソース電極620およびドレイン電極622も、半導体層605の下側に配置されている(ボトムコンタクト方式)。
【0112】
この
図6に示した半導体装置600の例では、ソース電極620と半導体層605の間に、第1のエレクトライドの薄膜650aが配置され、ドレイン電極622と半導体層605の間に、第2のエレクトライドの薄膜650bが配置されている。ただし、第1のエレクトライドの薄膜650aおよび第2のエレクトライドの薄膜650bの一方は、省略されても良い。
【0113】
このように、半導体装置の構造には、各種態様が存在する。本発明における半導体装置は、これらのいかなる態様で構成されても良い。本発明における半導体装置では、これらのいずれの構成においても、ソース電極と半導体層の界面、および/またはドレイン電極と半導体層の界面において、接触抵抗を有意に抑制することができるという効果が得られることは明らかであろう。
【0114】
また、本発明において、半導体装置の種類は、特に限られない。半導体装置は、例えば、
図3〜
図6に示したような、薄膜トランジスタのような電界効果型トランジスタであっても良い。
【0115】
また、半導体層として有機半導体を用いる場合は、ボトムコンタクト方式の構成とすることが好ましい。製造プロセスによる有機半導体の劣化をより防ぐことができる。
【0116】
(本発明による半導体装置の製造方法について)
次に、
図7を参照して、
図3に示した第1の半導体装置100の製造方法の一例について説明する。
【0117】
図7には、第1の半導体装置を製造する際のフローの一例を概略的に示す。
図7に示すように、この製造方法は、
基板上に半導体層を形成するステップ(ステップS110)と、
カルシウム原子およびアルミニウム原子を含む非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜を成膜するステップ(ステップS120)と、
ソース電極およびドレイン電極を形成するステップ(ステップS130)と、
ゲート電極を形成するステップ(ステップS140)と、
を有する。
【0118】
以下、各ステップについて説明する。なお、以下の説明では、明確化のため、各部材には、
図3に示した参照符号を使用する。
【0119】
(ステップS110)
まず、基板110上に、半導体層105が成膜される。
【0120】
半導体層105の成膜方法は、特に限られず、従来から実施されている方法で、基板110上に半導体層105を成膜しても良い。
【0121】
半導体層105が酸化物半導体の場合、半導体層105は、一般的なスパッタリング法などにより、基板110上に成膜される。また、半導体層105が有機半導体の場合、半導体層105は、蒸着法、スピンコート法、または液滴吐出法などにより、基板110上に成膜される。
【0122】
成膜された半導体層105は、所望のパターンにパターン化される。例えば、半導体層105は、フォトリソグラフィー等を行うことにより、所望のパターンにパターン化することができる。また、有機半導体の場合は、液滴吐出法などにより、半導体層105のパターンを直接形成することもできる。
【0123】
(ステップS120)
次に、半導体層105の上に、エレクトライドの薄膜が成膜される。このエレクトライドの薄膜は、後に、第1のエレクトライドの薄膜150aおよび/または第2のエレクトライドの薄膜150bとなる。
【0124】
一例として、エレクトライドの薄膜の成膜方法として、
電子密度が2.0×10
17cm
−3〜2.3×10
21cm
−3の結晶質C12A7エレクトライドのターゲットを準備する工程(S121)と、
前記ターゲットを用いて、酸素分圧が0.1Pa未満の雰囲気下で、気相蒸着法により、半導体層上に成膜を行う工程(S122)と、
を有する成膜方法について説明する。
【0125】
(ステップS121)
まず、以降の工程S120で使用される成膜用のターゲットが準備される。
【0126】
ターゲットは、結晶質C12A7エレクトライドで構成される。
【0127】
(結晶質C12A7)
本願において、「結晶質C12A7」とは、12CaO・7Al
2O
3の結晶、およびこれと同等の結晶構造を有する同型化合物を意味する。本化合物の鉱物名は、「マイエナイト」である。
【0128】
本発明における結晶質C12A7は、結晶格子の骨格により形成されるケージ構造が保持される範囲で、C12A7結晶骨格のCa原子および/またはAl原子の一部乃至全部が他の原子に置換された化合物、ならびにケージ中のフリー酸素イオンの一部乃至全部が他の陰イオンに置換された同型化合物であっても良い。なお、C12A7は、Ca
12Al
14O
33またはCa
24Al
28O
66と表記されることがある。
【0129】
同型化合物としては、これに限られるものではないが、例えば、下記の(1)〜(5)の化合物が例示される。
(1)結晶中のCa原子の一部乃至全部が、Sr、Mg、およびBaからなる群から選択される一以上の金属原子に置換された同型化合物。例えば、Ca原子の一部乃至全部がSrに置換された化合物としては、ストロンチウムアルミネートSr
12Al
14O
33があり、CaとSrの混合比が任意に変化された混晶として、カルシウムストロンチウムアルミネートCa
12−xSr
XAl
14O
33(xは1〜11の整数;平均値の場合は0超12未満の数)などがある。
(2)結晶中のAl原子の一部乃至全部が、Si、Ge、Ga、In、およびBからなる群から選択される一以上の原子に置換された同型化合物。例えば、Ca
12Al
10Si
4O
35などが挙げられる。
(3)12CaO・7Al
2O
3の結晶(上記(1)、(2)の化合物を含む)中の金属原子および/または非金属原子(ただし、酸素原子を除く)の一部が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、およびCuからなる群から選択される一以上の原子、Li、Na、およびKからなる群から選択される一以上のアルカリ金属原子、またはCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbからなる群から選択される一以上の希土類原子と置換された同型化合物。
(4)ケージに包接されているフリー酸素イオンの一部乃至全部が、他の陰イオンに置換された化合物。他の陰イオンとしては、例えば、H
−、H
2−、H
2−、O
−、O
2−、OH
−、F
−、Cl
−、およびS
2−からなる群から選択される一以上の陰イオンや、窒素(N)の陰イオンなどがある。
(5)ケージの骨格の酸素の一部が、窒素(N)などで置換された化合物。
【0130】
(結晶質C12A7エレクトライド)
本願において、「結晶質C12A7エレクトライド」とは、前述の「結晶質C12A7」において、ケージに包接されたフリー酸素イオン(ケージに包接された他の陰イオンを有する場合は、当該陰イオン)の一部乃至全部が電子に置換された化合物を意味する。
【0131】
結晶質C12A7エレクトライドにおいて、ケージに包接された電子は、ケージに緩く束縛され、結晶中を自由に動くことができる。このため、結晶質C12A7エレクトライドは、導電性を示す。特に、全てのフリー酸素イオンが電子で置き換えられた結晶質C12A7は、[Ca
24Al
28O
64]
4+(4e
−)と表記されることがある。
【0132】
結晶質C12A7エレクトライド」は、Ca原子、Al原子、およびO原子を含み、Ca:Alのモル比が13:13〜11:15の範囲であり、Ca:Alのモル比は、12.5:13.5〜11.5:14.5の範囲であることが好ましく、12.2:13.8〜11.8:14.2の範囲であることがより好ましい。
【0133】
結晶質C12A7エレクトライド製のターゲットの製造方法は、特に限られない。ターゲットは、例えば、従来のバルク状の結晶質C12A7エレクトライドの製造方法を用いて製造しても良い。例えば、結晶質C12A7の焼結体を、Ti、Al、CaまたはCなどの還元剤の存在下で、1150℃〜1460℃程度、好ましくは、1200℃〜1400℃程度に加熱処理することにより、結晶質C12A7エレクトライド製のターゲットを製造しても良い。結晶質C12A7エレクトライドの粉体を圧縮して成形した圧粉体をターゲットとして用いてもよい。結晶質C12A7の焼結体を、カーボンおよび金属アルミニウムの存在下で、焼結体と金属アルミニウムが接触しない状態に保ちながら、1230℃〜1415℃で加熱処理することにより、効率的に大面積の結晶質C12A7エレクトライド製のターゲットを作製できる。
【0134】
ここで、このターゲット、すなわち結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、2.0×10
17cm
−3〜2.3×10
21cm
−3の範囲である。結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、1×10
18cm
−3以上であることが好ましく、1×10
19cm
−3以上であることが好ましく、1×10
20cm
−3以上がより好ましく、5×10
20cm
−3以上がさらに好ましく、1×10
21cm
−3以上が特に好ましい。ターゲットを構成する結晶質C12A7エレクトライドの電子密度が高いほど、低い仕事関数を有するエレクトライドの薄膜が得られやすくなる。特に、仕事関数が3.0eV以下であるエレクトライドの薄膜を得るには、結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、1.4×10
21cm
−3以上がより好ましく、1.7×10
21cm
−3以上がさらに好ましく、2×10
21cm
−3以上が特に好ましい。特に、すべてのフリー酸素イオン(他の陰イオンを有する場合は当該陰イオン)が電子で置換された場合、結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、2.3×10
21cm
−3となる。結晶質C12A7エレクトライドの電子密度が2.0×10
17cm
−3を下回ると、成膜によって得られるエレクトライドの薄膜の電子密度が小さくなる。
【0135】
結晶質C12A7エレクトライドの電子密度は、光吸収測定法により、測定することができる。結晶質C12A7エレクトライドは、2.8eV付近に特有の光吸収を有するので、その吸収係数を測定することにより、電子密度を求めることができる。特に、試料が焼結体である場合は、焼結体を粉砕して、粉末としたのち、拡散反射法を用いると簡便である。
【0136】
得られたターゲットは、次工程で非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜を成膜する際の原料ソースとして使用される。
【0137】
なお、ターゲットの表面は、使用前に、機械的手段等により研磨されても良い。一般に、従来の方法で得られた結晶質C12A7エレクトライドのバルク体は、表面に、ごく薄い被膜(異物)を有する場合がある。表面にこのような被膜が形成されたターゲットをそのまま使用して、成膜処理を実施した場合、得られる薄膜の組成が所望の組成比から逸脱する可能性がある。しかしながら、ターゲット表面の研磨処理を実施しておくことにより、このような問題を有意に抑制することができる。
【0138】
(ステップS122)
次に、前述の工程S121において作製されたターゲットを用いて、気相蒸着法により、半導体層上に成膜が行われる。
【0139】
本願において、「気相蒸着法」とは、物理気相成膜(PVD)法、PLD法、スパッタリング法、および真空蒸着法を含む、ターゲット原料を気化させてからこの原料を基板上に堆積させる成膜方法の総称を意味する。
【0140】
「気相蒸着法」の中でも、特に、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法では、大面積領域に、比較的均一に薄膜を成膜することができる。なお、スパッタリング法には、DC(直流)スパッタリング法、高周波スパッタリング法、ヘリコン波スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、およびマグネトロンスパッタリング法等が含まれる。
【0141】
以下、スパッタリング法により成膜を行う場合を例に、工程S122について説明する。
【0142】
エレクトライドの薄膜を成膜する際の被成膜基板の温度は、特に限られず、室温〜例えば700℃までの範囲の、いかなる温度を採用しても良い。なお、エレクトライドの薄膜を成膜する際に、基板を必ずしも「積極的に」加熱する必要はないことに留意する必要がある。ただし、蒸着源の輻射熱によって、被成膜基板の温度が「付随的に」上昇する場合はあり得る。例えば、被成膜基板の温度は、500℃以下であっても良く、200℃以下であっても良い。
【0143】
被成膜基板を「積極的に」加熱しない場合、基板の材料として、例えばガラスやプラスチックのような、700℃を超える高温側で耐熱性が低下する材料を使用することが可能になる。
【0144】
成膜時の酸素分圧(チャンバー内の酸素分圧)は、0.1Pa未満であることが好ましい。酸素分圧は、0.01Pa以下であることが好ましく、1×10
−3Pa以下であることがより好ましく、1×10
−4Pa以下であることがさらに好ましく、1×10
−5Pa以下であることが特に好ましい。酸素分圧が0.1Pa以上になると、成膜された薄膜に酸素が取り込まれ、電子密度が低下するおそれがある。
【0145】
一方、成膜時の水素分圧は、0.004Pa未満であることが好ましい。0.004Pa以上であると、成膜された薄膜中に水素またはOH成分が取り込まれ、非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜の電子密度が低下する可能性がある。
【0146】
使用されるスパッタガスとしては、特に限られない。スパッタガスは、不活性ガスまたは希ガスであっても良い。不活性ガスとしては、例えば、N
2ガスが挙げられる。また、希ガスとしては、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Kr(クリプトン)、およびXe(キセノン)が挙げられる。これらは、単独で使用しても、他のガスと併用しても良い。あるいは、スパッタガスは、NO(一酸化窒素)のような還元性ガスであっても良い。
【0147】
スパッタガス(チャンバー内の圧力)の圧力は、特に限られず、所望の薄膜が得られるように、自由に選定することができる。特に、スパッタガス(チャンバー内の圧力)の圧力P(Pa)は、基板とターゲットの間の距離をt(m)とし、ガス分子の直径をd(m)としたとき、
8.9×10
−22/(td
2)<P<4.5×10
−20/(td
2) (3)式
を満たすように選定されても良い。この場合、スパッタ粒子の平均自由行程が、ターゲット〜被成膜基板間の距離とほぼ等しくなり、スパッタ粒子が残存酸素と反応することが抑制される。また、この場合、スパッタリング法の装置として、背圧が比較的高く、安価で簡易的な真空装置を用いることが可能となる。
【0148】
以上、スパッタリング法を例に、非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜を成膜する方法について、簡単に説明した。しかしながら、非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜の成膜方法は、これに限られるものではなく、前述の2つの工程(工程S121およびS122)を適宜変更したり、あるいは各種工程を追加しても良いことは明らかである。
【0149】
例えば、前述の工程S122において、スパッタリング法により、非晶質酸化物のエレクトライドの成膜を開始する前に、ターゲットに対して、プレスパッタリング処理(ターゲットのドライエッチング処理)が実施されても良い。
【0150】
プレスパッタリング処理を実施することにより、ターゲットの表面が清浄化され、その後の成膜処理(本成膜)において、所望の組成の薄膜を形成することが容易となる。
【0151】
例えば、ターゲットを長時間使用すると、ターゲットの表面に酸素が取り込まれ、ターゲットを構成する結晶質C12A7エレクトライドの電子密度が低下する場合がある。このようなターゲットを使用した場合、成膜された薄膜においても、電子密度が低下するおそれがある。また、ターゲットを長時間使用すると、ターゲット(すなわち結晶質C12A7エレクトライド)を構成する各成分のスパッタ速度の違いにより、ターゲットの組成が、最初の組成から逸脱するおそれがある。このようなターゲットを使用した場合、成膜された薄膜においても、組成が所望の値から逸脱するおそれがある。しかしながら、プレスパッタリング処理を実施することにより、このような問題が抑制される。
【0152】
なお、プレスパッタリング処理に使用されるガスは、本成膜の際に使用されるスパッタガスと同一であっても異なっていても良い。特に、プレスパッタリング処理に使用されるガスは、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、N
2(窒素)、Ar(アルゴン)、および/またはNO(一酸化窒素)であることが好ましい。
【0153】
このような方法で、パターン化された半導体層105の上部に、エレクトライドの薄膜が成膜される。
【0154】
その後、エレクトライドの薄膜を、フォトリソグラフィー処理等により、所望のパターンにパターン化することにより、第1および/または第2のエレクトライドの薄膜150a、150bを形成することができる。
【0155】
半導体層105が酸化物半導体の場合、スパッタリング法により、被成膜基板を大気に晒さずに半導体層105とエレクトライドの薄膜を連続して形成することができる。トップゲート構造−トップコンタクト方式、またはボトムゲート構造−トップコンタクト方式においては、半導体層105とエレクトライドの薄膜を連続して形成することが好ましい。
【0156】
エレクトライドの薄膜は、パターン化した後に熱処理することが好ましい。熱処理温度は、300℃以上が好ましく、500℃以上がより好ましい。被膜および被成膜基板の耐えられる温度以下とし、700℃以下が好ましい。所定の温度における保持時間は、1分〜2時間であってもよく、10分〜1時間であってもよい。また、熱処理するタイミングは、エレクトライドの薄膜をパターン化した後でもよいし、エレクトライドの薄膜上にソース電極およびドレイン電極を形成した後(例えば
図3の例)でもよいし、エレクトライドの薄膜上に半導体層を形成した後(例えば
図4の例)でもよい。熱処理することで、パターン化する際などにエレクトライドの薄膜がダメージを受けた場合に回復を図ることができる。
【0157】
(ステップS130)
次に、第1および/または第2のエレクトライドの薄膜150a、150bの上部に、ソース電極120およびドレイン電極122が形成される。
【0158】
ソース電極120およびドレイン電極122の形成には、従来より実施されている各種方法が利用できる。
【0159】
ソース電極120およびドレイン電極122を形成する導電層を成膜後に、膜のフォトリソグラフィー処理等を行うことにより、ソース電極120およびドレイン電極122を形成することができる。
【0160】
ここで、ソース電極120は、第1のエレクトライドの薄膜150aの上に配置され、および/またはドレイン電極122は、第2のエレクトライドの薄膜150bの上に配置される。
【0161】
これにより、ソース電極120と半導体層105の界面、および/またはドレイン電極122と半導体層105の界面の接触抵抗が低減される。
【0162】
図3の断面図では、半導体層105とソース電極102および/またはドレイン電極122は直接接触する部分がない例を模式的に示している。しかし、本発明においては、エレクトライドの薄膜が存在することで接触抵抗の低減を図ることができれば、半導体層とソース電極および/またはドレイン電極とが直接接触する部分を有していても構わない。例えば、半導体層とエレクトライドの薄膜を連続して成膜し、フォトリソグラフィー処理により一括でパターン化する。半導体層のパターンの側面は、エレクトライドの薄膜に覆われない構成となりやすい。次に、エレクトライドの薄膜上に、ソース電極およびドレイン電極を形成する。このとき、半導体層のパターンの側面は、ソース電極およびドレイン電極と接触する構成としても良い。
【0163】
(ステップS140)
次に、ソース電極120およびドレイン電極122を覆うように、ゲート絶縁膜130が形成される。
【0164】
ゲート絶縁膜130は、ディップ法、スピンコート法、液滴吐出法、キャスト法、スピ
ナー法、印刷法などの塗布法や、CVD法、スパッタリング法などの方法によって成膜しても良い。
【0165】
その後、ゲート絶縁膜130上に、ゲート電極124が形成される。ゲート電極124の形成には、従来より実施されている各種方法が利用できる。例えば、ゲート電極124は、スパッタリング法および蒸着法等により形成されても良い。ゲート電極124を形成する導電層を成膜後に、膜のフォトリソグラフィー処理等を行うことにより、ゲート電極124を形成することができる。
【0166】
以上の工程により、第1の半導体装置100を製造することができる。
【0167】
なお、以上の記載では、
図3に示した第1の半導体装置100を例に、本発明による半導体装置を製造する方法の一例について説明した。
【0168】
しかしながら、同様の方法により、半導体装置400、半導体装置500、さらには半導体装置600を製造できることは、当業者には明らかである。すなわち、
図7に示した各ステップの順番を変更することにより、各構成の半導体装置を製造することができる。
【0169】
また、本発明の半導体装置に用いられる基板、電極、半導体層のすべてを透明な材料とすることで透明な半導体装置を製造することができる。
【0170】
また、本発明の半導体装置は発光表示装置に利用できる。発光表示装置が備える有機エレクトロルミネッセンス素子は、以下のいずれかの構成であっても良い。
(1)基板、陽極、および陰極をこの順に有し、基板側を光取出し面とする構成であり、エレクトライドの薄膜が、陽極と陰極の間に存在するか、または陰極を構成する。
(2)基板、陽極、および陰極をこの順に有し、陰極側を光取出し面とする構成であり、エレクトライドの薄膜が、陽極と陰極の間に存在するか、または陰極を構成する。
(3)基板、陰極、および陽極をこの順に有し、基板側を光取出し面とする構成であり、エレクトライドの薄膜が、陽極と陰極の間に存在するか、または陰極を構成する。
(4)基板、陰極、および陽極をこの順に有し、陽極側を光取出し面とする構成であり、エレクトライドの薄膜が、陽極と陰極の間に存在するか、または陰極を構成する。
【0171】
有機エレクトロルミネッセンス素子に含まれる「エレクトライドの薄膜」は、本発明における半導体装置に含まれる、「カルシウム原子およびアルミニウム原子を含む非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜」であっても良い。
【0172】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極との間に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層を順に有する構成であっても良い。ただし、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、および/または電子注入層は省略されても良い。エレクトライドの薄膜は、例えば電子注入層を構成することができる。電子注入層にエレクトライドの薄膜を利用する場合、発光層と電子注入層(エレクトライドの薄膜)の間には、金属酸化物で構成される電子輸送層が配置されてもよい。電子輸送層は、アモルファス、結晶質、またはアモルファスと結晶質の混合相の形態であってもよい。例えば、電子輸送層は、ZnO−SiO
2、In
2O
3−SiO
2、SnO
2−SiO
2、ZnO、In−Ga−Zn−O、In−Zn−O、またはSnO
2で構成されても良い。