【文献】
日立金属株式会社,アモルファス金属リサイクル施設稼働,Materials Mag!c(日立金属株式会社ニュースリリース),日本,2013年 2月28日
【文献】
岩田邦男,アモルファス変圧器のリサイクルに関する研究,技術開発ニュース,中部電力,2003年 7月,No.103,P.19-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態による再生合金の製造方法を詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態による再生合金の製造方法は、アモルファス合金リボンを含む磁心、たとえばアモルファス合金リボンが積層された磁心を用意する工程S1と、磁心を破砕する工程S2と、任意に行われる磁気選別工程S3と、破砕片に有機溶剤を接触させ破砕片を洗浄する工程S4と、洗浄に用いた有機溶剤を容器から選択的に排出する工程S5と、容器内に残留する有機溶剤を蒸発させる工程S6と、得られた再生合金材料(洗浄後の破砕片)を溶解する工程S7と、得られた合金溶湯を用いて再生アモルファス合金リボンを製造する工程S8とを含んでいてよい。
【0026】
以下では、
図1に示したフローの順に、再生合金原料を用いたアモルファス合金リボンの製造方法の具体的な工程を説明する。本実施形態の方法によれば、使用後の磁心から得られた再生合金材料を、再生アモルファス合金用の溶解原料として直接溶解炉に投入することができる。
【0027】
<破砕工程>
破砕工程は、リサイクル用に回収された、アモルファス合金リボンを含む磁心を、破砕機を用いて機械的に破砕する工程である。
【0028】
破砕機としては、2軸せん断式破砕機を使用することができる。
図2(a)および(b)は、2軸せん断式破砕機の一例を模式的に示す斜視図である。
図2(a)に示すように、本実施形態で利用可能な破砕機10は、平行に配置された軸回転可能な2つの軸部材12を有する。軸部材12のそれぞれは、
図2(b)に示すようなせん断刃14を複数備えている。なお、
図2(b)には、それぞれの軸部材12が備えるせん断刃14を1つだけ示しているが、実際には複数のせん断刃14が、刃先の周方向の位置を変えてスタックされていてよい。また、各軸部材12に設けられたせん断刃14はせん断刃を有しない円盤状の部材を挟んで設けられており、一方の軸部材12のせん断刃14の間隙に、他方の軸部材12のせん断刃14が互い違いに配置されていてもよい。なお、
図2(a)では、軸部材12を円柱のように示しているが、実際には、例えば特開昭63−147561号公報に記載のように、せん断刃14の外周部が噛み合うように軸部材12が設けられていてよい。
【0029】
このような2軸せん断式破砕機10を用いれば、磁心Cを構成するアモルファス合金リボンを、合金リボンの破砕片に効率良く破砕することができる。
【0030】
せん断刃14の直径は、例えば、500〜800mmであり、厚さは例えば40〜80mmである。このようなサイズのせん断刃14を用いれば、破砕後の取扱いが困難な微細な破砕片が生成されにくい。
【0031】
また、破砕機10では、例えば、複数のせん断刃14が2軸(軸部材12)のそれぞれに10枚から20枚スタックされていて、2軸の刃列16を形成している。ここでは、せん断刃14を備える軸部材12を、刃列16と呼ぶことがある。また、2軸の刃列16は交互に刃の周辺部分の一部(約50mm)が重なる構造となっている。ただし、破砕機10の構成は上記の構成に限られず、種々の態様の2軸せん断式破砕機を用いることができる。また、2軸せん断式破砕機だけでなく、1軸せん断式破砕機などの他の態様の破砕機も使用し得る。
【0032】
以下、破砕機10を用いた破砕動作について説明する。
【0033】
2軸せん断式破砕機10が備える2軸の刃列16の間に、上方から磁心Cを1ヶずつ投入する。各刃列16は、磁心Cを挟みこむように軸回転(正回転)する。2軸の刃列16の回転方向は、互いに対して逆となる。ここでは、各刃列16の互いに対面する部分が、上方から下方に向かって回転する回転方向を正回転と呼んでいる。
【0034】
磁心Cは刃列16の間に挟まれて一部が破砕される。破砕片となったものは、刃列16の隙間から下方へと落下する。なお、軸回転する各刃列16の動力源(モータ)に一定以上の負荷がかかったとき、刃列16が逆回転を一定時間行うようにモータが制御されていてもよい。その後、再度正回転を行うことにより、破砕が進行する。このようにして、必要に応じて、正回転と逆回転とを繰り返しながら、磁心の全てが合金リボン破砕片となる。
【0035】
トランスとして使用されていた磁心は、絶縁油に浸漬された状態であったものが多い。ここで、前記磁心の場合は、通常、数千枚ものアモルファス合金リボンが積層されて構成されているので、隣接する合金リボン間には、毛管現象により、絶縁油が残留している。
【0036】
また、磁心の合金リボン端部の露出部分が脱落しないように、合金リボン端部の露出部分に、エポキシ樹脂が塗布されている場合がある。エポキシ樹脂を使用しない場合であっても、合金リボン端部が脱落したときに絶縁油中に遊離しないように、磁心が絶縁紙や絶縁布で覆われている場合がある。
【0037】
2軸せん断式破砕機を用いれば、前述の残留する絶縁油や、エポキシ樹脂、絶縁紙、絶縁布が存在しても、破砕動作の障害になることなく、生産性高くアモルファス合金リボン破砕片に破砕することができる。
【0038】
また、破砕される磁心に、銅製やアルミニウム製のコイルが巻回されている場合であっても、2軸せん断式破砕機を用いれば、コイルごとアモルファス合金リボンの破砕を適切に行うことができる。
【0039】
<磁気選別工程>
破砕工程の後、磁気選別機を用いて、磁性を有する合金リボン粉砕片を選択的に磁気吸着させる。これによって、磁性体である合金リボン粉砕片と樹脂や銅などの非磁性物とを分離する。磁気選別工程は、後述する絶縁油洗浄工程の前に、必要に応じて行ってよい工程である。
【0040】
破砕工程において、磁心とともに、巻回されていた銅製やアルミニウム製のコイルも破砕される場合、得られる破砕片に銅製やアルミニウム製の破砕片が含まれる。このような場合、特に本工程を実施することが有効であり、非磁性体である銅やアルミニウムの破砕片を除去することができる。
【0041】
なお、破砕機に投入される磁心が、アモルファス合金リボン以外に、少量のエポキシ樹脂と絶縁油のみが含まれていることが明らかな場合は本工程を省略しても良い。
【0042】
<洗浄工程>
有機溶剤と、破砕工程で得られた合金リボンの破砕片とを円筒状のドラム型容器中に投入し、主に合金リボン破砕片に付着している絶縁油を有機溶剤に溶解させる工程である。
【0043】
図3(a)〜(c)は、洗浄工程で用いられるドラム型洗浄器20の一例を示す概略図である。
図3(a)〜(c)に示すように、ドラム型洗浄器20は、略円筒形の形状を有し、円筒の中心軸を回転軸22として回転可能に支持されたドラム型容器20A(以下、ドラム20Aと呼ぶことがある)を備えている。ドラム20Aは、地面に対して円筒を横向きにした形で、その回転軸22が地面に対して略水平になるように設置されている。
【0044】
ドラム型洗浄器20を用いて行う洗浄工程において、まず、円筒状のドラム20Aの内部に、合金リボン粉砕片を投入し、次に加熱した有機溶剤を投入してからドラム20Aを密閉する。その後、ドラム20Aを所定の時間にわたって回転軸22の周りに回転させる。回転軸22(およびドラム20Aの中心軸)は上記のように地面に対して水平に配置されていてもよいし、20°以内の角度で傾斜していても良い。なお、ドラム20Aの回転は、
図3(a)に示すように回転軸22に接続された回転モータ32を用いて行うことができる。
【0045】
ドラム20Aを回転運動させることによって、ドラム20Aの内部で有機溶剤が流動する。また、有機溶剤とともに破砕片もドラム20A内を移動する。このように、有機溶剤に流れを生じさせながら、その流れのなかで破砕片を洗浄するので、高い洗浄効果が得られる。なお、回転運動に限らず、容器(ここではドラム20A)を揺動させたり、角度や方向を変えて繰り返し容器を傾斜させたり、あるいは、容器をドラム回転軸方向にピストン運動させたりすることなどによっても、容器内の有機溶剤に十分な流れを生じさせることができる。また、容器の運動の形態に応じて、ドラム型に限らず種々の形状の容器が用いられてよい。
【0046】
ドラム20Aの形状(容量)は、処理量に応じて設計すれば良い。例えば、合金リボン破砕片1000〜2000kgを処理できるように、ドラム20Aの内径が1500〜2000mm、回転軸方向の内部の長さが2500〜3500mmに設定される。ドラム20A内に投入する有機溶剤の量としては、合金リボン破砕片1000kgに対して、500〜1000kgとすることで、効率的に洗浄できる。ドラム20Aの材質としては、一般構造用炭素鋼であるSS400やステンレス等を使用できる。
【0047】
破砕片に付着している絶縁油を効果的に有機溶剤に溶解するために、ドラム20Aを、例えば毎分1〜3回転の回転数で30分〜60分の間、一方向に回転させる。ただし、ドラム20Aを、所定時間ごとに反対方向に回転させてもよい。なお、ドラム20Aの回転によって合金リボン破砕片および有機溶剤はドラム内を移動するが、この過程で破砕片はさらに細かく破砕され得る。特に、後述するフィンのような突出構造をドラム20A内に設ける場合、ドラム回転中における破砕が促進される。
【0048】
ドラム20Aの回転数が毎分1回未満であると、合金リボン破砕片と有機溶剤との撹拌が不十分となり、十分な洗浄効果が得られないおそれがある。一方、毎分3回を超える回転数では、合金リボン破砕片のドラム20A内の移動が不十分となり、同様に洗浄不足となるおそれがある。
【0049】
また、処理時間30分未満では、残留絶縁油を有機溶剤に十分に溶解させることができないおそれがある。一方、処理時間が60分を超えると、上記のようにドラム回転中に生じる合金リボン破砕片の破砕が進み過ぎて、20mm未満の微細な合金リボン破砕片が増加するおそれがある。特に、ドラム20A内に突出構造が設けられている場合には、微細な合金リボン破砕片が生成されやすい。このような微細な合金リボン破砕片は、ドラム20Aからの取り出しが困難である。
【0050】
図3に示すように、洗浄器20では、合金リボン破砕片の投入及び取り出しのための投入/取り出し口24が、ドラム20Aの外周の一部に設けられている。投入/取り出し口24は、例えば、軸方向に1000〜1300mm、周方向に300〜400mmの大きさで設けると良い。投入/取り出し口24は、蓋24Aによりドラム20Aを密閉封止できるように構成されていることが好ましい。
【0051】
また、洗浄後の有機溶剤の排出口26として、回転軸22を挟んで投入/取り出し口24の反対側の位置に、パンチングメタルと金属メッシュからなる溶剤排出口26が設けられていると好ましい。溶剤排出口26は、バルブによる開閉ができるものである。パンチングメタルの穴径(直径)は、合金リボン破砕片が概ね通過できない5mm以上、10mm以下が好ましい。また、金属メッシュは、細かすぎる合金リボン破砕片による目詰まりが発生しにくいように、20メッシュ以上40メッシュ以下が好ましい。
【0052】
なお、ドラム20Aからの有機溶剤の排出をより容易に行うために、ドラム内部に圧縮空気を導入する吐出口28を備えていると好ましい。
【0053】
ドラム20A内に投入する有機溶剤は、除去すべき絶縁油を溶解できるものであれば任意のものであって良い。例えば、安価で入手しやすく、毒性も低いナフテン系有機溶剤を使用することができる。
【0054】
絶縁油の溶解を促進させるために、ドラム20Aに投入する直前に、有機溶剤を加熱しておいてもよい。加熱する温度としては40〜100℃が好ましい。40℃未満では絶縁油の溶解が不十分になる恐れがある。100℃を超えると有機溶剤の蒸気圧が高くなり、作業時の有機溶剤の臭気の点で好ましくない。さらには、火気への対策費用が増大する。より好ましくは、50〜70℃の温度に加熱される。
【0055】
図3(a)に示すように、有機溶剤は、例えば、ドラム20Aの回転軸に沿って設けられた連通孔(配管)を介して、外部に配置された溶剤タンク38からドラム20Aの内部に供給される。また、有機溶剤の加熱は、溶剤タンク38において行われてもよいし、溶剤タンク38から上記の連通孔までの配管において行われてもよい。
【0056】
本実施形態のドラム型洗浄器20は、
図3(b)に示すように、ドラム20Aの内周面から内側に突出するフィン20Bを備えている。フィン20Bが設けられていることによって、ドラム回転時に、破砕が不十分で比較的大きい合金リボン破砕片に折り曲げ応力がかかる。これにより、より小さな合金リボン破砕片に破砕することができ、さらには、合金リボン破砕片の大きさのばらつきも小さくなる。
【0057】
このように、ドラム20Aを回転させて行う洗浄工程では、洗浄のみではなく、合金リボン破砕片の破砕をより促進することができる。これにより、投入された合金リボン破砕片を、所定の大きさ以下に破砕することができる。したがって、後工程でのドラムからの合金リボン破砕片の取り出しを、より容易に行うことができる。
【0058】
フィン20Bは、例えば、ドラム内周面に突き出た長方形の金属製板である。回転中心軸22から見て、同じ角度で複数枚のフィン20Bが設けられていてもよい。金属製板(フィン20B)の長辺長さは、回転軸方向におけるドラム内部の寸法と同じ長さであることが好ましく、金属製板の短辺の長さは、ドラム内周半径の20〜50%の長さであることが好ましい。金属製板の厚さは、耐久性の点で10〜15mmが好ましい。金属製板の材質は一般構造用炭素鋼であるSS400やステンレス等であってよい。
【0059】
フィン20Bの機械的強度を維持するために、ドラム内部の2端面に接続されるフィン20Bの2短辺を、それぞれドラムの2端面に対して、溶接やボルト留めにより固定することが好ましい。
【0060】
フィン20Bの枚数は、洗浄や破砕の程度により、4枚〜8枚のいずれかの枚数を選択できるが、洗浄・破砕の効率とメンテナンスの点で、角度60度毎に6枚設けるのが好ましい。また、フィン20Bは、典型的にはドラムの半径方向に沿って(すなわち中心軸に向かって)突出しているが、これに限られず、半径方向に対して0°〜40°の角度を為す方向に突出していてもよい。
【0061】
また、フィン20Bは、軸方向に沿ってドラム端面部からドラム中央部まで伸びる形状を有していてもよい。この場合、ドラムの一方の端面部から中央部に延びる6枚のフィンを角度60°ごとに設けるとともに、ドラムの他方の端面部から中央部に延びるフィンを角度60°ごと、かつ、上記の一方の端面部から中央部に延びる6枚のフィンに対して30°ずれた角度で配置(すなわち互い違いに配置)させてもよい。
【0062】
洗浄後の合金リボン破砕片の大きさは、ドラム20Aからの取り出しの容易さを考慮すると、最大50mm以下が好ましい。より好ましくは、最大40mm以下である。
【0063】
合金リボン破砕片の大きさを最大50mm以下にするためには、フィン20Bの突出長さ(長方形の短辺長さ)を、ドラム内周半径の30〜35%にすると良い。最大40mm以下にするためには、フィン20Bの突出長さを、ドラム内周半径の28〜32%にすると良い。
【0064】
また、フィン20Bの形状は、上記に説明した長方形に限定されず、種々の形状であってよい。長方形の突き出た長辺が、直線ではなく、波状や、ジグザグ形状に形成されていても良い。
【0065】
<有機溶剤排出工程>
洗浄工程後に、有機溶剤をドラム内部から排出する工程である。
【0066】
この工程は、上記の絶縁油洗浄工程において溶け込んだ油分を含む有機溶剤を、ドラム20Aから排出することで、不純物としての油分を低減するものである。
【0067】
なお、絶縁油洗浄工程と溶剤排出工程とを繰り返して行なえば、ドラム20A内に在留する絶縁油分をより一層低減することができる。ただし、洗浄工程と排出工程とを繰り返して行なうと処理工数が増加するため、生産性を高めるためには一回づつの工程とすることが望ましい。
【0068】
ドラム20Aを軸回転させて、溶剤排出口26が最下部に位置するようにドラム20Aの姿勢を制御してからバルブを開くことによって、溶剤をドラム20Aの外に排出することができる。また、その直後に、圧縮空気を吐出口28からドラム内部に導入すれば、ドラム内部の溶剤をより効果的に排出することができる。ドラム内部に導入する圧縮空気の圧力としては、0.15〜0.25MPa(ゲージ圧)が好ましい。また、圧縮空気の代わりに、圧縮窒素ガスを用いることで、火気に対してより安全性を高めることができる。
【0069】
また、大部分の有機溶剤を排出した後、圧縮空気の導入を止めるとともに、溶剤排出口26に設けられたバルブを閉じて6時間〜18時間程度放置してから、再度、有機溶剤排出口26のバルブを開いて有機溶剤を排出してもよい。このときにも、吐出口28から圧縮空気を導入することで、有機溶剤の排出除去をより進めることができる。
【0070】
なお、溶剤排出口26から排出された有機溶剤は、
図3(a)に示すように、例えば自重によって、溶剤タンク38へと回収されてもよい。また、溶剤排出口26から回収した有機溶剤を再利用するために、溶剤タンク38には、蒸留装置36が接続されていてもよい。
【0071】
また、
図5に示すように、2つの溶剤タンク38A、38Bおよびこれらに共通に接続する蒸留装置36を準備し、洗浄工程ごとに、2つのタンク38A、38Bを交互に使用してもよい。より具体的に説明すると、ある洗浄工程後に一方のタンク38Aに使用済みの有機溶剤を回収する場合において、次の洗浄工程のために他方のタンク38Bから清浄な有機溶剤をドラム20Aへと供給する。その後、他方のタンク38Bから供給された有機溶剤を用いて次の洗浄工程を行っている間、一方のタンク38Aに回収された有機溶剤を蒸留装置36によって浄化する。この洗浄工程が終わった時には、他方のタンク38Bにて使用済みの有機溶剤を回収し、一方のタンク38Aに溜められた浄化済みの有機溶剤を、次の洗浄工程のためにドラム20Aへと供給する。また、この洗浄工程中に、他方のタンク38Bに回収された有機溶剤は蒸留装置36によって浄化する。このように、2つのタンク38A、38Bを用いて、洗浄工程ごとに、タンク38A、38Bから浄化された有機溶剤を交互にドラム20Aへと供給することにより、蒸留装置36による長時間の清浄化を待つことなく、洗浄工程を続けて行うことができる。
【0072】
なお、溶剤排出口26から排出される使用済み有機溶剤に加えて、後述する真空ポンプ34からの使用済み有機溶剤が溶剤タンク38、38A、38Bに回収されてもよい。
【0073】
<残留有機溶剤蒸発工程>
ドラム内部を減圧し、ドラムを外周部から加熱して、ドラム内に残留する有機溶剤を蒸発除去する工程である。
【0074】
有機溶剤を排出し、排出口のバルブを閉じた後、ドラム内部を減圧しながら、ドラム外周部に設けられた加熱装置を用いてドラムを外周部から加熱する。
【0075】
ドラム内を減圧するために、ドラム20Aには、
図3(a)に示す真空ポンプ34が接続されている。また、減圧時に、ドラム内で気化した有機溶剤は真空ポンプ34によって吸引される。真空ポンプ34が吸引した有機溶剤は、溶剤タンク38に戻される。この有機溶剤も、蒸留装置36で浄化することによって再利用することができる。
【0076】
また、ドラム20Aを外側から加熱する加熱装置としては、例えば、
図3(a)に示すようなスチームジャケット25を用いてもよい。スチームジャケット25はドラム20Aの外周面に接するように設けられている。スチームジャケット25には、図示しない配管を介して高温のスチームが導入され、これにより、ドラム20Aを外側から加熱することができる。
【0077】
本乾燥工程において、ドラムを軸回転させることで蒸発・乾燥効率を高めることができる。回転動作中、ドラム内部のフィン20Bがリボン破砕片と接触し、これがリボン破砕片を撹拌、分散するので、蒸発および乾燥が行われやすくなる。回転数としては、毎分1〜2回転が好ましい。また、乾燥時間は、3〜10時間で、ほとんどの溶剤を蒸発除去させることができる。
【0078】
加熱の熱源としてスチーム(水蒸気)を用いることで、残留する有機溶剤(または気化した溶剤)がドラム20Aの外に漏れ出た場合でも、爆発や火災が起こる危険性が無く、安全である。蒸発能力を高めるためには、スチームの温度を140〜160℃に設定することが好ましい。また、スチームは冷えて水滴となるが、加熱装置は、蓄積される水滴が一定量を超えるとドレインより排出できる機構を有していてもよい。
【0079】
なお、蒸発した有機溶剤は、上記のように真空ポンプ34によって回収され、図示しない液化装置によってトラップされる。また、トラップされた有機溶剤量を計量することによって、蒸発乾燥した量を見積もることができる。また、トラップされた有機溶剤は溶剤タンク38に戻され、再利用することができる。
【0080】
以上のように残留有機溶剤を蒸発させて除去することにより、乾燥した再生合金リボン片が得られ、ドラムからこれを回収することができる。
【0081】
なお、常圧で加熱蒸発する方法も考えられるが、ガス化した有機溶剤に対する火災、爆発の予防手段等を必要とする場合があるので、安全上、減圧して加熱蒸発を行うことが好ましい。
【0082】
<再生合金リボン片溶解工程>
ドラム型洗浄器20から取り出した再生合金リボン片を、溶解原料の一部として大気または非酸化性雰囲気に載置された溶解炉に投入する工程である。
【0083】
再生合金リボン片と同一の組成を有する合金溶湯に投入する場合、合金溶湯の成分調整は特に必要としない場合が多い。上記方法によって得られた再生合金リボン片は、合金溶湯を得るための材料としてそのまま用いることが可能である。
【0084】
しかしながら、乾燥工程で得られた再生合金リボン片においては、溶剤は概ね乾燥除去されるが、溶剤排出工程で残留した溶剤に溶け込んでいる絶縁油分は、完全には除去されず、蒸発残渣分として残留することがある。また、残留するエポキシ樹脂なども幾分含まれていることがある。
【0085】
このように、油分や樹脂成分が合金リボン片に残留して付着していると、再生合金リボン片を溶解原料の一部として使用したときに、合金溶湯中の炭素量が増加する。本発明者の検討によれば、合金溶湯全体質量に対して、使用する再生合金リボン片が質量で10%以下であれば、特に組成の調整を必要としないことが多いことがわかった。より好ましくは、質量の6%以下である。再生合金リボン片使用による十分なコストメリットを出すためには質量の3%以上が好ましい。
【0086】
ただし、再生合金リボン片(再生合金材料)を原料として製造される再生合金リボンに含まれる炭素量が比較的多くてもよい場合もある。このような場合には、合金溶湯全体質量に対して10%を超える質量比となる再生合金リボン片を用いてもよい。例えば、上記の洗浄工程と溶剤排出工程とを繰り返して行い、破砕されたリボン片に付着していた油分がほとんど除去されているような場合には、再生合金リボン片のみを原料として用いてアモルファス合金リボンを製造してもよい。
【0087】
なお、溶湯中に過剰な炭素が含まれる場合、炭素のみを選択的に低減させることは困難である場合が多い。その理由は、以下の通りである。アモルファス合金の組成系は、Fe−Si−B系が一般的である。従って、その溶湯中の炭素を、空気導入(空気バブリング等)によって酸化除去しようとしても、SiやBが先に酸化する傾向がある。よって、炭素量を低減することは困難となる場合が多い。
【0088】
<合金リボン製造工程>
本工程は、溶解工程により得られた溶湯を冷却ロール上に出湯してリボン状に急冷凝固することによって、アモルファス合金リボンを得る工程である。
【0089】
図4は、本実施形態における、アモルファス合金リボンを製造するための合金製造装置40を示す。合金製造装置40は、溶解炉42において溶解された原料合金(上記の再生合金リボン片を含む)である溶湯40Aを、溶湯溜め44の下部に設けられたノズルを介して回転中の冷却ロール46に接触させるように構成されている。なお、溶湯溜め44における溶湯の温度を保持するための加熱装置(誘導コイル)45が設けられていてもよい。
【0090】
アモルファス合金の製造には、上記の合金製造装置40を用いて回転冷却ロール46の周面に出湯してリボンを得る単ロール法が適用される。冷却ロール46の材料としては、熱伝導率の良い銅を主成分とする銅合金を用いるのが好ましい。合金製造装置40において、冷却ロール46の表面で急冷凝固された溶湯は、ガイド48を通してアモルファス合金リボン40Bとして巻き取ることができる。以上の工程により、再生合金リボン片を用いたアモルファス合金リボンを製造することができる。
【実施例】
【0091】
トランスを解体し、質量50kgのアモルファス積層磁心を40ヶ、合計2000kgを2軸せん断式破砕機に順次投入した。磁心を1ヶ当り約3分で破砕した。破砕機の2つ軸部材にはそれぞれにせん断刃が10枚ずつスタックされており、各せん断刃の直径は700mm、厚さは50mmであった。
【0092】
このようにして破砕を行うことにより、同質量の合金リボン破砕片が得られた。得られた合金リボン破砕片には、最大長さ約50mmの不定形のものから、最大長さ約150mm以上の不定形のものまで、様々な大きさの破砕片が含まれていた。
【0093】
次に、磁気選別装置を用いて、合金リボン破砕片からエポキシ樹脂破砕粉などを除去した。
【0094】
その後、合金リボン破砕片2000kgを、内部寸法が直径1700mm、回転軸方向長さ2500mmの水平回転するドラム(材質SS400製)内に、投入/取り出し口(回転軸方向長さ1300mm×周方向長さ350mm)から投入した。さらに、60℃に加熱したJX日鉱日石エネルギー株式会社製「ナフテゾールグレード160」をドラム内に2000kg投入した。その後、気密性がある蓋でドラムを封止した。
【0095】
なお、ドラムの内周面には、回転中心軸から見て角度60度毎に合計6枚のフィンが設けられている。各フィンは、回転軸に向かって突出しており、突出長さ300mm、厚さ13mmのSS400製の板部材から構成されている。
【0096】
ドラムを、回転数毎分1.5回転で50分運転し、主に破砕片に付着した絶縁油の洗浄を行った。
【0097】
その後、ドラムの有機溶剤排出口を最下部に回転させた状態で、有機溶剤排出口のバルブを開いた。直後に、ドラム内部に、圧縮空気吐出口から、圧力0.2MPaで圧縮空気を導入し、有機溶剤を排出した。なお、有機溶剤排出口には、穴径(直径)8mmのパンチングメタルと30メッシュの金属メッシュが設けられており、有機溶剤のみが排出され、合金リボン破砕粉は、ほとんど排出されなかったことを確認できた。
【0098】
次に、溶剤排出口のバルブを閉じて、ドラム外周部を囲んでいるスチーム加熱装置を用いてドラムを加熱しながらドラム内部を減圧した。
【0099】
スチームの温度は約150℃であった。スチームが冷却されることにより生じた水滴は、適時ドレインより排出した。
【0100】
乾燥は、回転数毎分1.5回転でドラムを回転させながら6時間行い、ほとんどの溶剤を蒸発除去した。蒸発した有機溶剤は、冷却装置によりトラップした。トラップされた有機溶剤量を計量することで、蒸発乾燥した量を見積もった。
【0101】
その後、スチームによる加熱を停止し、ドラム内部が大気圧になるように空気を導入した。次に、ドラムの投入/取り出し口が最上部になるように回転させて、蓋を開けた後、投入/取り出し口が最下部になるように回転させて、合金リボン破砕片を、金属製バケットに取り出した。得られた再生合金リボン片の最大大きさを評価したところ、20mmから50mmのものが、質量比で約95%を占めていた。
【0102】
次に、上記のようにして得られた再生合金リボン片を用いてアモルファス合金リボンを製造した。このために、まず、合金溶湯の容量(質量)が1000kgである、大気中に置かれた誘導炉に溶湯原料を投入した。溶湯原料として、下記の1)〜4)の4種類の原料を、合計質量が1000kgで、かつ、組成が、原子%で、Si:8.9%、B:11.2%、残部Fe及び不可避不純物になるように投入した。なお、合金再生リボン片の組成は上記の組成と同一であった。
1)再生合金リボン片:50kg
2)フェロボロン
3)フェロシリコン
4)純鉄
【0103】
本実施例において、原料全体の質量に占める再生合金リボン片の質量の割合は(50/1000=)5%であった。
【0104】
溶解後、回転する銅合金製の冷却ロールに対して、セラミックス製のノズルから溶湯を吐出させて、幅140mm、厚さ25μmのアモルファス合金リボンを製造した。
【0105】
製造した合金リボンの炭素含有量を、燃焼―赤外線吸収法により測定したところ、0.3原子%であった。この値は、上記の1)に示す再生合金リボン片を使用せずに、2)〜4)を原料として製造したアモルファス合金リボンの値と同等であった。
【0106】
また、上記の1)〜4)を原料とした合金リボンと、2)〜4)を原料とした合金リボンとで、リボン性状、磁気特性を比較評価したが、有意差は認められず、性状安定性に優れることを確認できた。