特許第6150242号(P6150242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6150242製造ラインを構成するためのユニットとその組み立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150242
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】製造ラインを構成するためのユニットとその組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   H01L21/68 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-264845(P2012-264845)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-110358(P2014-110358A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月20日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度エネルギー使用合理化技術開発等に係る経済産業省プロジェクト、革新的製造プロセス技術開発(ミニマルファブ)」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】302046920
【氏名又は名称】株式会社デザインネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】原 史朗
(72)【発明者】
【氏名】前川 仁
(72)【発明者】
【氏名】二川 真士
(72)【発明者】
【氏名】松宮 良和
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−134582(JP,A)
【文献】 特開2003−142360(JP,A)
【文献】 特開昭60−115216(JP,A)
【文献】 特許第4058923(JP,B2)
【文献】 特開2006−242679(JP,A)
【文献】 特開2012−054414(JP,A)
【文献】 特開2003−179120(JP,A)
【文献】 特表2001−526458(JP,A)
【文献】 特表2009−538541(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0045665(US,A1)
【文献】 特開2007−217756(JP,A)
【文献】 特開平05−051742(JP,A)
【文献】 特開2008−130369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ一定の工程を担う定型化されたフレーム14を有するユニット12を配列して、被処理物を処理するラインを構成するためのものであって、下記の要素を備えたことを特徴とするユニット。
(a)前記フレーム14は、前室24と、該前室と隣接する処理室26とを備える。
(b)前記前室24は、隣接するユニット12から前記被処理物を受け取って前記処理室26に搬送するために保持する保持機構42を備える。
(c)前記処理室26は、前記被処理物に一定の処理を施す処理装置58を備える。
(d)前記被処理物は、前記前室24から内部搬送装置44により搬送されて前記処理室26の内部の処理装置58に受け渡される。
(e)前記処理装置58で処理をした前記被処理物は、前記処理装置58から前記内部搬送装置44により搬送されて前記前室24の保持機構42に受け渡される。
(f)前記前室24と前記処理室26との境界には、両者を隔てる基準プレート30が上下方向に沿って配置されており、この基準プレート30には、前記内部搬送装置44により搬送される前記被処理物を通過させる窓32が設けられている。
(g)前記基準プレート30には、前記前室24側の面に前記保持機構42が固定され、前記処理室26側の面に前記処理装置58が固定されて、前記保持機構42と前記処理装置58が前記基準プレート30を介して所定の位置関係となるように位置決めして固定されている。
【請求項2】
請求項1に記載のユニット12に対して下記の要素を加えたことを特徴とするユニット。
(h)前記ユニット12の内部には、前記基準プレート30のほかに、単数または複数の副基準プレート31が設けられており、前記副基準プレート31には、任意の処理装置58が固定されている。
(j)前記各基準プレート30の位置に対する前記副基準プレート31の位置を、前記基準プレート30の面上の位置決め精度で位置決めした。
【請求項3】
請求項1または2に記載のユニット12に対して下記の要素を加えたことを特徴とするユニット。
(k)前記被処理物は、半導体ウエハ38である。
(m)前記外部搬送装置40は前記半導体ウエハ38を密閉したケース36に収容して搬送する。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のユニット12に対して下記の要素を加えたことを特徴とするユニット。
(n)前記基準プレート30は、前記保持機構42と前記処理装置58とを位置決めして固定するための、位置決めピン48または位置決めピン48を差し込むホール50または位置決め用壁面を備える。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のユニット12に対して下記の要素を加えたことを特徴とするユニット。
(p)前記フレーム14は、前記床面20上に支持装置22を介して支持されている。
(q)前記各ユニット12の前室24と処理室26との間に配置された基準プレート30の位置が、前記床面20に対して一定の関係にあるように、前記基準プレート30が前記フレーム14に固定されている。
【請求項6】
請求項5に記載のユニット12に対して下記の要素を加えたことを特徴とするユニット。
(r)隣接するユニット12のいずれか一方に、隣接するユニット12間で被処理物を搬送するための専用の外部搬送装置40を設けた。
(s)前記被処理物は、隣接するユニット12から外部搬送装置40により搬送されて、前記前室24の保持機構42に受け渡される。
(t)前記被処理物は、隣接するユニット12に対して、前記外部搬送装置40により前記前室24の保持機構42から取り出されて受け渡される。
【請求項7】
請求項1に記載した要素を備えるユニットを、以下の手順で組み立てるユニットの組み立て方法。
(u)支持板56とアーム52を備えた補助具57を使用する。
(v)前記アーム52は一端を前記支持板56に固定し他端側に標識54を備えている。
(w)前記支持板56を前記基準プレート30に位置決め固定して、前記アーム52の標識54の部分を前記処理室内部に配置する。
(x)前記標識54の位置を基準にして、前記処理装置もしくはその一部分の位置決めをする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定型化された外観のフレームを有し、被処理物の製造ライン中で所定の製造工程を担うユニットとその組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造ラインを、それぞれ一定の製造工程を担うユニット(ミニマル装置)を配列して構成したものが知られている(特許文献1)。この半導体製造ラインは、半導体ウエハを密閉したケースに収容して、ユニットからユニットに搬送して加工する。ユニット内部やウエハ搬送系だけがクリーンルーム構造になっている。従って、大きなクリーンルームが不要で、多品種少量生産に適するという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−54414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
少ないスペースで半導体製造ラインを構築するためには、各ユニットを接近させて配置する。ユニットを定型化された外観のフレームを有する構造にする。これにより、工程順を変更したり、新たな工程を追加したりして、容易にレイアウト変更が可能になる。
【0005】
しかしながら、この目的に適するユニットのサイズは、例えば、高さ200cm、幅30cm、奥行き60cm程度の比較的スリムなものが適するといわれている。この狭い空間に、例えば、ハーフインチウエハ(半導体ウエハ)を加工する装置を収容する。具体的には、例えば、レジスト塗布装置、露光装置、現像装置、エッチング装置といったプロセス装置である。
【0006】
これらのプロセス装置はいずれも専門性が高く、それぞれの装置毎に別個に設計され製造される。しかしながら、加工中の半導体ウエハを相互に受け渡すための連携動作が必要であり、複数のプロセス装置を同一ユニットの内部に組み込む場合に、高い取り付け位置精度が要求される。これがユニットの生産性を低下させる原因になっていた。
【0007】
上記のようなプロセス装置とともに、例えば、半導体ウエハの検査装置や分析装置、あるいは保管管理をする装置も、同様のユニットに組み込まれて使用される。このような様々な処理装置を組み込むユニットに、上記のような共通の課題があった。
上記の課題を解決するために、本発明は、自動的に、処理装置について、要求される高い組み立て(取り付け)精度を実現できる構造のユニットとその組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
それぞれ一定の工程を担う定型化されたフレーム14を有するユニット12を配列して、被処理物を処理するラインを構成するためのものであって、下記の要素を備えたことを特徴とするユニット。
(a)前記フレーム14は、前室24と、該前室と隣接する処理室26とを備える。
(b)前記前室24は、隣接するユニット12から前記被処理物を受け取って前記処理室26に搬送するために保持する保持機構42を備える。
(c)前記処理室26は、前記被処理物に一定の処理を施す処理装置58を備える。
(d)前記被処理物は、前記前室24から内部搬送装置44により搬送されて前記処理室26の内部の処理装置58に受け渡される。
(e)前記処理装置58で処理をした前記被処理物は、前記処理装置58から前記内部搬送装置44により搬送されて前記前室24の保持機構42に受け渡される。
(f)前記前室24と前記処理室26との境界には、両者を隔てる基準プレート30が上下方向に沿って配置されており、この基準プレート30には、前記内部搬送装置44により搬送される前記被処理物を通過させる窓32が設けられている。
(g)前記基準プレート30には、前記前室24側の面に前記保持機構42が固定され、前記処理室26側の面に前記処理装置58が固定されて、前記保持機構42と前記処理装置58が前記基準プレート30を介して所定の位置関係となるように位置決めして固定されている。
【0009】
〈構成2〉
構成1に記載のユニット12に対して下記の要素を加えたことを特徴とするユニット。
(h)前記ユニット12の内部には、単数または複数の基準プレート30が設けられており、各基準プレート30には、任意の処理装置58が固定されている。
【0010】
〈構成3〉
構成1または2に記載のユニット12に対して下記の要素を加えたことを特徴とするユニット。
(k)前記被処理物は、半導体ウエハ38である。
(m)前記外部搬送装置40は前記半導体ウエハ38を密閉したケース36に収容して搬送する。
【0011】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載のユニット12に対して下記の要素を加えたことを特徴とするユニット。
(n)前記基準プレート30は、前記保持機構42と前記処理装置58とを位置決めして固定するための、位置決めピン48または位置決めピン48を差し込むホール50または位置決め用壁面を備える。
【0012】
〈構成5〉
構成1乃至4のいずれかに記載のユニット12に対して下記の要素を加えたことを特徴とするユニット。
(p)前記フレーム14は、前記床面20上に支持装置22を介して支持されている。
(q)前記各ユニット12の前室24と処理室26との間に配置された基準プレート30の位置が、前記床面20に対して一定の関係にあるように、前記基準プレート30が前記フレーム14に固定されている。
【0013】
〈構成6〉
構成5に記載のユニット12に対して下記の要素を加えたことを特徴とするユニット。
(r)隣接するユニット12のいずれか一方に、隣接するユニット12間で被処理物を搬送するための専用の外部搬送装置40を設けた。
(s)前記被処理物は、隣接するユニット12から外部搬送装置40により搬送されて、前記前室24の保持機構42に受け渡される。
(t)前記被処理物は、隣接するユニット12に対して、前記外部搬送装置40により前記前室24の保持機構42から取り出されて受け渡される。
【0014】
〈構成7〉
構成1に記載した要素を備えるユニットを、以下の手順で組み立てるユニットの組み立て方法。
(u)支持板56とアーム52を備えた補助具57を使用する。
(v)前記アーム52は一端を前記支持板56に固定し他端側に標識54を備えている。
(w)前記支持板56を前記基準プレート30に位置決め固定して、前記アーム52の標識54の部分を前記処理室内部に配置する。
(x)前記標識54の位置を基準にして、前記処理装置もしくはその一部分の位置決めをする。
【発明の効果】
【0015】
〈構成1の効果〉
外部搬送装置40は、隣接するユニット12との間で、前室24を通じて被処理物を受け渡しする。前室24は、基準平面16を基準にして位置決めされている。従って、隣接するユニット12との関係で、外部搬送装置40による被処理物の受け渡し時に求められる許容誤差をクリアすることができる。
一方、ユニット12の内部では、前室24から基準プレート30の窓32を通じて処理装置58までの間を、被処理物が移動する。
処理室26内部には任意の処理装置58が配置され、その間を被処理物が移動する。処理装置58相互間では、より高い精度の位置決めが要求される。そこで、前室24と処理室26の境界にあって、両者の隔壁としての高い強度を備える基準プレート30に、保持機構42や処理装置58に共通の位置決め機構を設けた。即ち、フレーム14は位置決めに利用しない。
こうすれば、各処理装置58を別個独立に設計して製造しても、基準プレート30の所定位置に取り付けると、処理装置58相互間についても、高い位置決め精度を実現できる。
〈構成2の効果〉
ユニット12の内部の複数の基準プレート30に各種の処理装置58を高精度に位置決め固定することができる。
〈構成3の効果〉
ユニット12の外部では、汚損を防ぐために半導体ウエハ38をケース36に収容して運搬する。一方ユニット12の内部では、半導体ウエハ38をケース36から取り出して搬送する。半導体ウエハ38は薄くて衝突により破損しやすい。また、精密な姿勢制御も要求される。基準プレート30を利用して処理装置58等を高精度に位置決めすることにより安全な制御ができる。
〈構成4の効果〉
基準プレート30に対して、各処理装置58を、ピン48やホール50あるいは壁を用いて簡単に高精度に位置決めできる。なお、位置決め用壁面というは処理装置58の一部と相互に密着して嵌りあう溝51や凸条等のことである。基準プレート30の各部に様々な位置決め構造を設けるとよい。
〈構成5の効果〉
フレーム14に取り付ける基準プレート30を、隣接するユニット12との相対的な関係を考慮して位置決めする。これにより、隣接するユニット12間での被処理物の円滑な搬送を可能にする。
〈構成6の効果〉
ラインに配列された複数のユニット12のうちのいずれかの互いに隣接するユニット12に、これらのユニット12間で専用に被処理物を搬送する装置を設ける。ユニット12を配置する床面20には凹凸があり、ライン全体について高精度に平坦であることは望めない。即ち、全てのユニット12を精密に整列させて位置決めをすることができない場合が多い。隣接するユニット12間に、それぞれ専用の搬送装置を設けると、床面20の平坦度が大きく影響しない。両者の位置関係のみを一定に調整すれば足りる。
〈構成6の効果〉
他の装置を組み込む前に、補助具57を使用して、任意の処理装置やその一部を基準プレート30に対して正確に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ユニットのフレームの実施例外観斜視図である。
図2】半導体ウエハの搬送に使用するケースの外観斜視図である。
図3】外部搬送装置の実施例を示す2台のユニットの正面図である。
図4】複数のユニットの配列方法を示す概略図である。
図5】ユニット12の床面への設置構造を示す斜視図である。
図6】前室の主要部斜視図である。
図7】基準プレートの斜視図である。
図8】ユニットの補助具57の実施例を示す斜視図である。
図9】補助具57の使用方法を示す斜視図である。
図10】基準プレート30の変形例斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般に、相互に連携動作をさせる複数のユニットは、ユニットを設置する床面を基準として各ユニットを正立させ、一定間隔で並べる。ユニットの規格を統一して、隣接するユニットとの間の位置関係を調整する。
【0018】
また、ユニットのフレームには、様々な装置を固定する。一般には、ユニットのフレームの各所に印を付けて、各装置をその印に合わせて位置決めする。
【0019】
しかしながら、半導体ウエハ処理用のミニファブシステムの場合には、ユニットに組み込まれる処理装置の位置決めに要求される精度が、ユニットのフレームの組み立て精度よりも1桁ほど高い。半導体ウエハ処理のためのユニットに組み込まれる処理装置は、位置決めの許容誤差が10分の1mm程度である。
【0020】
ユニットのフレームは、重量過剰にならないように、あまり太くて丈夫な骨材は採用されない。しかも、フレームに使用される骨材は長尺であって、フレーム全体で上記のような高精度な位置決めを実現するのは不可能に近い。
【0021】
また、処理装置相互間で相対的な位置決めをする方法も考えられる。搬送装置の搬送機構を基準に位置決めをする方法も考えられる。しかしながら、その場合には、基準となる装置が存在しないと、別の装置の取り付けができない。基準となる装置を交換したりすると、全体の置決めに狂いが生じる。搬送装置や複数の処理装置をそれぞれ別個独立に設計し製造するような場合に、調整がうまくいかない。
【0022】
そこで、本発明では、フレームの中心付近にある前室と処理室との間に配置された基準プレートを、ユニット内部の装置の位置決めに利用する。ユニットの内部には、上記基準プレート以外に、さらに、単数または複数の副基準プレートを設けることができる。上記基準プレートの位置に対する各副基準プレートの位置を、上記基準プレートの面上の位置決め精度で位置決めするとよい。
【0023】
各基準プレートには、任意の処理装置を固定する。各処理装置は、それぞれ互いに高精度な位置関係が要求されるものであってよい。例えば、一定の場所に支持固定した半導体ウエハに複数の処理装置で順番に処理を行うような場合がある。また、複数の処理装置間で半導体ウエハを受け渡しながら処理をする場合がある。
【0024】
このような場合に、半導体ウエハの支持固定装置や複数の処理装置を、上記の基準プレートや副基準プレート上に、高精度に位置決めをして固定するとよい。
【0025】
また、処理装置を設計製造する担当者は、該当する基準プレート上に、要求されたサイズで要求した機能を実現するようにすればよく、役割分担が容易になる。
【0026】
一方、ユニット外では、半導体ウエハをケースに収容して運搬する。隣接するユニットとの間のケースの搬送には、ユニット内部ほどの精度は要らない。各ユニットの前室の相対的な位置関係が一定の範囲にあればよい。
【0027】
しかしながら、床面に高低差や凸凹があると遠く離れたユニットとの間の相対位置調整は困難である。実際には、隣接するユニット間でケーズの受け渡しをするのが通常だから、隣接するユニット間だけで、相対位置の調整をするとよい。
【0028】
このとき、各ユニットの前室と処理室との間に配置された基準プレートの位置が、床面に対して一定の関係にあるように、フレームを構成する。これで、十分に隣接するユニット間の位置決めを保証することができる。以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、ユニットのフレームの実施例外観斜視図である。
ユニット12は、それぞれ一定の製造工程を担うように構成されている。この図には、ユニット12の定型化されたフレーム14の部分のみを図示した。特許文献1に記載されたように、例えば、ユニット12を工程順に配列して、半導体ウエハを加工する製造ラインを構成する。
【0030】
既に説明したように、ユニット12には、被処理物の検査や分析や保管等の機能を持つものもあり、その用途に応じて自由に最適なレイアウトでユニット12が配列される。ユニット12の規格が統一されているので、被処理物の搬送装置や処理装置を、製造元の区別なく、組み合わせて使用できる。この種のミニマル装置を利用するシステムは、半導体デバイスの多品種少量生産ライン等に適するものとして開発されたが、その他の様々な製品の生産や検査等に広く利用できる。以下の実施例では、被処理物として半導体デバイスを例にして説明を進める。
【0031】
図2は半導体ウエハの搬送に使用するケースの外観斜視図である。
図のように、底蓋37の上に半導体ウエハ38を乗せた状態でケース36を密閉する。ケース36には、例えば、0.5インチ半導体ウエハ38を一枚収容する。ケース36は特許文献1に示されたように、半導体ウエハ38を密閉して収容する容器である。このケース36により半導体ウエハ38を保護するので、クリーンルーム無しでユニット12の間で半導体ウエハ38のやりとりができる。
【0032】
図1に示したフレーム14は、図中に破線で示した位置に、前室24と処理室26とを備える。前室24は、ケース36を受け取って一時的に保持する保持機構42を備える。この保持機構42で、半導体ウエハ38はケース36から取り出される。保持機構42に保持された半導体ウエハ38(被処理物)は、前室24から処理室26に搬送される。処理室26は、半導体ウエハ38に一定の処理を施す処理装置58を備える。
【0033】
半導体ウエハ38は、処理装置58によりフォトレジスト処理やエッチング処理等を施される。処理室26で処理された半導体ウエハ38は、前室24の保持機構42に戻される。そして、保持機構42において再びケース36に収容される。
【0034】
図3は、外部搬送装置の実施例を示す2台のユニットの正面図である。
この図では、互いに隣接する2台のユニット12の上部のみを概略図示した。図のように、保持機構42に保持されたケース36は、例えば、一方のユニット12に取り付けられた外部搬送装置40の搬送機41に吊り下げられて取り出され、隣接するユニット12へ受け渡される。外部搬送装置40は、隣接するユニット間で被処理物を搬送するための専用のもので構わない。
【0035】
図4は、複数のユニットの配列方法を示す概略図である。また、図5は、ユニット12の床面への設置構造を示す斜視図である。
図3(a)に示すユニット12を、例えば、図3(b)に示すように近接させて配列する。例えば、図3(b)に示すように3台のユニット12を連携動作させる場合には、これらを床面20上に正確に位置決めする。ユニット12の底面には、例えば4個の支持装置22が取り付けられている。例えば、ユニット12の底面を共通の基準平面16に一致させるように、支持装置22を調節する。
【0036】
しかしながら、支持装置22の長さ調整だけでは、多数のユニット12の精密な高さ調整と位置決めは難しい。そこで、図4(a)に示すように、床面20に、各ユニット12を固定するための固定装置34を取り付けておく。図4(b)に示すようにユニット12を固定装置34に固定すると、複数のユニット12を床面20上に位置決めできる。これにより、隣接するユニットの間隔を、例えば、5mmに揃えることができる。
【0037】
なお、多数のユニットを配列したラインで、各ユニットを設置した床面全体が必ずしも平坦であるという保証がない。自動的に半導体ウエハ38等の被処理物を搬送する場合には、隣接するユニット間で高さの調整等をして、外部搬送装置40が吸収可能な許容誤差の範囲に両者を位置合わせすれば足りる。
【0038】
即ち、各ユニットを、隣接するフレームと一定の位置関係になるように位置決めすればよい。従って、外部搬送装置40を、隣接するユニット間で被処理物を搬送するための専用のものにするとよい。なお、隣接するユニットとの間では被処理物のやりとりをしないユニットについては、任意の基準で位置決めをすればよい。即ち、隣接する各ユニットの前室と処理室(図1)との間に配置された基準プレート(図1)の位置が、床面に対して一定の関係にあるように、フレームを構成するとよい。
【0039】
図6は、前室の主要部斜視図である。
図のように、前室24と処理室26の境界では、フレーム14に基準プレート30が固定されている。この基準プレート30の前室24側には、ゲートバルブ46と保持機構42とが固定されている。保持機構42には、図3で説明したように半導体ウエハ38を収容したケース36が保持されている。
【0040】
保持機構42の部分に、ケース36から半導体ウエハ38を取り出す機構が設けられている。ケース36から取り出された半導体ウエハ38は、内部搬送装置44によって窓32を通じて処理室26側に搬送される。基準プレート30の処理室26側には、例えば、半導体ウエハ38をエッチングする処理装置58が固定されている。処理装置58に受け渡されて処理された半導体ウエハ38は、例えば、処理室26の内部に収容された、洗浄装置に送られて洗浄処理後、内部搬送装置44により取り出されて再び保持機構42に受け渡される。
【0041】
図7は、基準プレートの斜視図である。
上記のように、前室24と処理室26との境界には、両者を隔てる基準プレート30が配置されている。この基準プレート30には、上記の内部搬送装置44により搬送される半導体ウエハ38を通過させる窓32が設けられている。図6の例では、窓32の部分にゲートバルブ46を固定した。ゲートバルブ46は、蒸着加工等のために処理室26が真空装置を構成するような場合に設けられる。ゲートバルブ46の構成は既知の半導体製造設備等に設けられたものと同様のものである。
【0042】
この基準プレート30には、図6に示した保持機構42や処理装置58を位置決めして固定するための、位置決め機構を設ける。図7の例では、ピン48やホール50や溝51が位置決め機構に該当する。基準プレート30は例えば、厚さが9mmの、ステンレス板やクロームメッキを施した鉄板等により構成する。表面の加工精度は十数ミクロン以下のものである。従って、基準プレート30の面上に位置決めをすると、要求される許容誤差の0.1mm以下の精度で位置決めができる。
【0043】
処理装置58は、例えば、レジスト塗装、露光、現像、エッチングといった機能を備える装置である。ピン48やホール50や溝51を設けておくと、いずれの処理装置も、この基準プレート30に対して、簡単に高精度に位置決めできる。溝51は基準プレート30のいずれかの面に位置決め用壁面を形成する。位置決め用壁面というは処理装置の一部と相互に密着して嵌りあう溝や凸条等のことである。基準プレートの各部に様々な位置決め構造を設けるとよい。
【0044】
ユニット12の内部では、半導体ウエハ38を加工するために露出させて搬送する。前室24から基準プレート30の窓32を通じて処理装置までの間を、半導体ウエハが移動する。半導体ウエハ38は薄くて衝突により破損しやすい。また、精密な姿勢制御も要求される。基準プレート30を利用して保持機構42や処理装置を高精度に位置決めすれば、精密な姿勢制御が可能になる。
【0045】
フレーム14の寸法や傾きの許容誤差は例えば、1mm〜1.5mm、もっと精度が高い場合でも、0.5mm程度である。一方、処理装置58の取り付け位置の許容誤差は例えば、0.1mm程度であって、より高い精度が要求される。従って、処理装置58をフレーム14に固定すると、高精度の位置決めが困難になる。そこで、前室24と処理室26に最も近く、かつ、両者の隔壁としての強度を備える基準プレート30に、位置決めピン48等を設けたのである。高い位置決め精度を要求される装置が基準プレート30の近傍に集中しているから、この構造が最適といえる。
【0046】
保持装置42や処理装置58を基準プレート30の特定の場所に固定するものと決めておけば、各装置をそれぞれ別個の部門や製造元で設計製造しても、自動的に全体として高い組み立て精度を実現できる。
【0047】
図8は、ユニットの補助具57の実施例を示す斜視図である。また、図9は、その補助具57の使用方法を示す斜視図である。
上記のユニット12の処理室26には、基準プレート30に直接固定できない処理装置も含まれる場合がある。また、基準プレート30に一部を固定した処理装置58であっても、基準プレート30から離れた部分の位置決め精度を確認したいことがある。さらに、前室24に何も取り付けられていない状態で、前室24の装置との関係で処理装置の位置決めをしたい場合がある。図の補助具57はそのような場合に利用する。
【0048】
図8において、この補助具57は、支持板56とアーム52とを備えている。アーム52の一端59は支持板56に固定されている。アーム52の他端60には、標識54が取り付けられている。支持板56の形状は、基準プレート30の形状に合わせて任意に選定できる。アーム52の形状も任意であり、精度を維持できれば、湾曲していても構わない。
【0049】
図9に示すように、支持板56は、基準プレート30の、例えば、前室24に面する面に位置決め固定される。そして、基準プレート30の窓32からアーム52を処理室26側に突き出させる。こうして、アーム52の一端59が基準プレート30上に位置決めされ、他端60に設けた標識54が、処理室26内部の空間の一点を差し示す状態になる。なお、この例では、基準プレート30の前室側にはまだ他の装置が取り付けられていない。一方基準プレート30の処理室側には、これから各種の装置を固定するから開放しておきたい。従って、支持板56を基準プレート30の前室側に固定して、基準プレート30の窓を通じてアーム52を処理室26側に突き出させるようにしている。
【0050】
例えば、いずれかの処理装置の一部の位置を上記の標識54の位置を基準にして微調整して、位置決めすることができる。前室24全体を組み立てる前に処理室内部の組み立てを行う場合がある。この場合であっても、基準プレート30と上記の補助具57を使用すれば、処理装置の位置決めと動作の確認をすることができる。即ち、処理装置が標識54の位置との関係で正確に機能するかどうかを確認できる。
【0051】
以上のように、フレーム14に設けた基準プレート30に位置決めの基準を設けることにより、高い精度でユニット12の内部に保持機構42や処理装置58を組み込むことが可能になる。
【0052】
図10は、基準プレート30の変形例斜視図である。
図のユニットのフレーム14は破線で概略を示した。このユニットは、基準プレート30以外に、2枚の副基準プレート31a、31bを備えている。基準プレート30は、先の実施例で説明したとおり、前室24と処理室26との境界に配置されたものである。副基準プレート31aは基準プレート30と一辺を接し、基準プレート30と直交するものである。さらに、副基準プレート31aの垂直下方に、床面に平行に向いた基準プレート31bを配置した。
【0053】
上記の基準プレート31a、基準プレート31bは、いずれも、基準プレート30の面上の位置決め精度で、各種の処理装置を固定することができる。基準プレート30と、副基準プレート31a、副基準プレート31bの間は、相互に高精度に相対的な位置決めをする即ち、各基準プレート30の位置に対する副基準プレート31a、31bの位置を、基準プレート30の面上の位置決め精度で位置決めする。
【0054】
なお、この実施例では、基準プレート30と、副基準プレート31a、副基準プレート31bがそれぞれ一辺を接するように連結して配置されている。これにより、複数の基準プレート間の相対位置決めの精度を確保できる。しかし、十分に接近して配置されているか、あるいは何らかの精度の高い連結手段により連結されていれば、互いに離れてフレーム14に固定されていても構わない。
【符号の説明】
【0055】
12 ユニット
14 フレーム
16 基準平面
20 床面
22 支持装置
24 前室
26 処理室
30 基準プレート
31a 副基準プレート
31b 副基準プレート
32 窓
34 固定装置
36 ケース
37 底蓋
38 半導体ウエハ
40 外部搬送装置
41 搬送機
42 保持機構
44 内部搬送装置
46 ゲートバルブ
48 ピン
50 ホール
51 溝
52 アーム
54 標識
56 支持板
57 補助具
58 処理装置
59 一端
60 他端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10