(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150296
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
F24C 3/08 20060101AFI20170612BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
F24C3/08 U
F24C3/08 Q
F24C15/10 F
F24C15/10 B
F24C15/10 E
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-268044(P2013-268044)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-124916(P2015-124916A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】石野 洋二郎
【審査官】
長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−50607(JP,U)
【文献】
特開2003−254538(JP,A)
【文献】
特開平10−267227(JP,A)
【文献】
特開2003−247723(JP,A)
【文献】
実開昭51−96776(JP,U)
【文献】
特開昭51−98571(JP,A)
【文献】
特開昭52−126350(JP,A)
【文献】
実開昭56−153711(JP,U)
【文献】
特開2007−271210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/08
F24C 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の天板と、該天板に突出した炎孔部を備えるバーナーと、前記天板上に配置され被加熱物の底面部を支持する五徳とを備え、
前記炎孔部は、前記天板の後方側に向いた炎孔と被加熱物の底面部を支持する支持部を有し、該支持部が前記天板と面一の状態で収納自在であり、
前記五徳は、前記炎孔部の後方の設定位置に着脱自在に取り付けられることを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
前記天板は非磁性体で形成され、前記五徳には磁石が設置され、前記天板の設定位置には磁性体が設置されていることを特徴とする請求項1記載のガスコンロ。
【請求項3】
前記五徳は、左右一対の五徳体を備え、
前記炎孔部の支持部と前記五徳体は、前記天板から一定高さの支持面を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のガスコンロ。
【請求項4】
前記左右一対の五徳体は、平面視が湾曲形状であり、平面視外向き凸の取り付け状態と平面視内向き凸の取り付け状態を置換できるように、2点で前記天板の設定位置に取り付けられていることを特徴とする請求項3記載のガスコンロ。
【請求項5】
前記左右一対の五徳体は、前記炎孔部が形成する火炎の燃焼排気を前記天板の後方側に導く側面を有することを特徴とする請求項3又は4記載のガスコンロ。
【請求項6】
前記左右一対の五徳体の後端間には、前記燃焼排気を前記天板の後方側に送る開放口が形成されていることを特徴とする請求項5記載のガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロは、一般に、本体の天板上にバーナーの炎孔部を突出させて設け、その周囲に被加熱物の底(鍋底など)を支持する五徳を配置する構造を備えている。五徳は、通常天板に対して取り外し自在に設けられ、天板には五徳を一定の位置に保持するための凹凸部が設けられている。
【0003】
このようなガスコンロは、天板の上面にバーナー炎孔部の突出や五徳を保持するための凹凸があるため、煮こぼれなどで天板が汚れた場合の清掃を簡易に行うことができない問題がある。これに対しては、下記特許文献1に示した従来技術のように、天板を平面状にする提案がなされている。この従来技術は、天板に開口した加熱口を設け、天板の下方にバーナーの炎孔を配置し、加熱口を閉鎖可能に形成された蓋部材を設け、この蓋部材の姿勢を加熱口が開口される姿勢と加熱口が閉鎖される姿勢とを択一的に切換可能にしたものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−213749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術は、加熱口を蓋部材で閉鎖することで、天板を平面状にすることが可能になる。しかしながら、バーナーの炎孔を天板の下に配置して加熱口を介して燃焼ガスを上方に排出しているので、炎孔から被加熱物の底までの距離をある程度大きくせざるを得なくなり、火炎の最も温度が高い部分を被加熱物の底に当てることができず直火加熱の加熱効率を十分に高めることができない問題がある。また、燃焼ガスの排出方向が必然的に鉛直上向きになるので、被加熱物の底に当たった燃焼ガスが周囲360°に拡がることになり、燃焼ガスの排気がガスコンロの周囲に拡がると共に、火炎の輻射熱がガスコンロの周囲に伝搬して、ガスコンロの使用環境を悪化させる問題がある。特に、使用者が立つガスコンロの前方側にも燃焼排気や輻射熱が拡がるので、使用者が快適にガスコンロを使用することができない問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、ガスコンロの天板を平面化することで、清掃の容易性と外観性を改善すること、その際に、直火加熱の加熱効率を高めること、ガスコンロの使用環境を悪化させること無く、良好な使用快適性を得ること、などが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明によるガスコンロは、以下の構成を少なくとも具備するものである。
平板状の天板と、該天板に突出した炎孔部を備えるバーナーと、前記天板上に配置され被加熱物の底面部を支持する五徳とを備え、前記炎孔部は、前記天板の後方側に向いた炎孔と被加熱物の底面部を支持する支持部を有し、該支持部が前記天板と面一の状態で収納自在であり、前記五徳は、前記炎孔部の後方の設定位置に着脱自在に取り付けられることを特徴とするガスコンロ。
【発明の効果】
【0008】
このような特徴を有する本発明のガスコンロは、炎孔部を天板と面一の状態に収納して五徳を取り外すことで、天板を平面化することができ、清掃の容易性と外観性を改善することができる。また使用時には、天板上に炎孔部を突出させることで直火加熱の加熱効率を高めることができ、炎孔を後方に向けることで、燃焼排気の拡散を防ぎ、ガスコンロの使用環境を悪化させること無く、良好な使用快適性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガスコンロを示した説明図である((a)が平面図であり、(b)が部分断面図である。)。
【
図2】バーナーの炎孔部の一例を示しており、これを後方側からみた説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るガスコンロの炎孔部収納状態及び五徳の着脱状態を示した説明図である((a)が平面図であり、(b)が部分断面図である。)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るガスコンロを示した説明図である((a)が平面図であり、(b)が部分断面図である。)。なお、本明細書、図面、特許請求の範囲における「前」又は「前方」とは、ガスコンロに対してその使用者が立つ側を指し、「後」又は「後方」とは、ガスコンロにおける「前」又は「前方」と対向する側を指す。また、「左」,「右」とは使用者がガスコンロに向いた状態での左右を指している。
【0011】
ガスコンロ1は、天板2、バーナー3、五徳4を備える。天板2は、平板状であり、本体10の上部を構成している。天板2は、耐熱性の材料、例えば、ジュラルミンなどで形成することができる。バーナー3は、天板2に突出した炎孔部30を備え、炎孔部30に混合ガスを供給する燃料供給部31を備えている。燃料供給部31はガスノズル5から噴射される燃料ガスと一次空気とを混合して混合ガスを形成する。炎孔部30は、天板2のやや前方側に位置して、天板2の後方側に向いた炎孔30Aを有する。炎孔部30には、炎孔30Aが開口した側に必要に応じて立ち消え温度センサ32を設けることができる。なお、バーナー3には、一般的なガスコンロのバーナーが備える点火装置やバルブ機構を付加することができる。
【0012】
図2は、バーナー3の炎孔部30の一例を示しており、これを後方側からみた図である。炎孔部30には、後方に向けて混合ガスを出射するスリット状の炎孔30Aを複数備えている。また、炎孔30Aの上部には、空気流路30Bが形成され、その上に被加熱物の底面部を支持する支持面30C1を有する支持部30Cが設けられている。炎孔30Aの上部にはスペーサ30B1を介して支持部30Cを設けることで、支持部30Cの下に空気流路30Bが形成されている。
【0013】
五徳4は、
図1に示すように、炎孔30Aより天板2の後方側に位置して天板2の前後に延設され、炎孔30Aから出射する混合ガスに点火した火炎の燃焼排気を天板2の後方側に導く対向した側面40Aを有する左右一対の五徳体40を備える。五徳体40は、流線状に湾曲した側面40Aを有すると共に、鍋などの被加熱物Wの底面部Wtを支持する平面状の支持面40Bを備えている。
【0014】
図3は、本発明の実施形態に係るガスコンロの炎孔部収納状態及び五徳の着脱状態を示した説明図である((a)が平面図であり、(b)が部分断面図である。)。ガスコンロ1は、
図3(b)に示すように、炎孔部30の支持部30Cが天板2と面一の状態で収納自在であり、五徳4(五徳体40)が炎孔部30の後方における天板2の設定位置に着脱自在に取り付けられている。
【0015】
具体的には、天板2は非磁性体の材料(例えばジュラルミンなど)で形成されており、五徳4を取り付ける設定位置に磁性体20が設置されている。また、五徳体40,42には、磁性体20に吸着する磁石43が設置されている。これによって、五徳4は天板2の設定された位置に固定することができ、また、五徳4を天板2から簡易に取り外すことができる。
図3(a)に示すように、五徳4は、左右一対の五徳体40に対して、被加熱物の底面部中央を支持する五徳体42を追加して備えることができる。この五徳体42は、燃焼排気の後方への流れを阻害しない流線形の側面を有している。
【0016】
このようなガスコンロ1は、天板2から五徳4を取り外して、バーナー3の炎孔部30を収納して、炎孔部30の支持部30Cを天板2と面一にすることで、天板2上を平面化することができる。このように、非使用時に天板2上を平面化することで、天板2上の清掃を簡易に行うことができる。また、天板2のフラット化によって非使用時の美観を向上させることができる。
【0017】
また、ガスコンロ1は、
図3(a)に示すように、左右一対の五徳体40が、平面視が湾曲形状であり、平面視外向き凸の取り付け状態と平面視内向き凸の取り付け状態を置換できるように、2点で天板2の設定位置に取り付けられている。このように一対の五徳体40を固定すると、五徳体40を図示の実線で示した平面視外向き凸の湾曲状態で取り付けることで、比較的外径の大きい底面部Wt(1)を安定的に支持することが可能になり、五徳体40を図示の一点破線で示した平面視内向き凸の湾曲状態で取り付けることで、比較的外径の小さい底面部Wt(2)を安定的に支持することが可能になる。このように、ガスコンロ1は、一組の五徳体40で底面部の外径が異なる被加熱物を安定的に支持することが可能になる。
【0018】
ガスコンロ1は、
図1に示すように、天板2上に突出した炎孔部30の支持面30C1と一対の五徳体40の支持面40Bとで被加熱物Wの底面部Wtを支持している。炎孔部30の炎孔30Aは、天板2の左右に直線的に配列されており、一対の五徳体40の前端間に配置されている。
【0019】
炎孔部30の支持面30C1と一対の五徳体40の支持面40Bに被加熱物Wの底面部Wtを支持した状態では、被加熱物Wの底面部Wtと五徳体40の側面40Aと平板状の天板2で囲まれた空間が形成されることになり、その空間の前方側に炎孔30Aが配置されている。これによって、前述した空間が炎孔30Aに形成される火炎の燃焼排気を後方に流す流路を形成することになり、燃焼排気をガスコンロ1の周囲に拡散させず後方に集めることが可能になる。また、炎孔部30と一対の五徳体40の前端との間には間隙Sが形成されている。この間隙Sは、前述した空間に二次空気を流入させるためのものであり、炎孔30Aから出射する混合ガスによる引き込み効果で間隙Sから二次空気が前述した空間内に流入する。
【0020】
また、炎孔部30の支持面30C1と一対の五徳体40の支持面40Bに被加熱物Wの底面部Wtを支持した状態では、底面部Wtと支持面30C1,40Bとの密着によって、火炎が炎孔部30や五徳体40の外側に溢れるのを遮蔽することができる。これによってガスコンロ1の前方又は側方からは火炎が見えない状態になり、火炎からの輻射熱を効果的に遮蔽することが可能になる。
【0021】
ガスコンロ1は、
図1に示すように、炎孔部30の支持部30Cと一対の五徳体40が天板2から一定高さの支持面30C1,40Bを備え、一対の五徳体40の後端間には、燃焼排気を天板2の後方側に送る開放口41が形成されている。このような構成を備えることで、前述した空間を経由した燃焼排気が開放口41を通って天板2の後方側に集中的に排気されることになる。
【0022】
図4は、五徳4として採用される各五徳体40,42の格納状態を示した説明図である。五徳4は天板2に対して着脱自在であるため、これを天板2から取り外した際には、まとめて格納することが好ましい。前述した実施形態では各五徳体40,42は磁石43を備えているので、この磁石43の吸着力を利用して取り外した五徳体40,42を一体に纏めることができる。この際、五徳体40は一方の外側面が一方の内側面と一部で同一の湾曲面を有しており、五徳体40と五徳体42はその内側面と外側面が一部で同一の湾曲面を有している。これによって図示のようにコンパクトに纏めた状態で吸着保持することが可能になる。
【0023】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るガスコンロ1は、炎孔部30の収納や五徳4を着脱自在にすることで、平板状の天板2により清掃の容易性と良好な外観性確保が可能になる。また、炎孔30Aから出射する混合ガスに点火した火炎の燃焼排気を天板2の後方側に集中排気することができるので、ガスコンロ1の使用環境を悪化させること無く、使用快適性を向上させることができる。
【0024】
特に、本発明の実施形態に係るガスコンロ1は、後方向きに火炎を形成する炎孔30Aを有する炎孔部30に支持部30Cが設けられ、その支持面30C1に被加熱物Wの底面部Wtが支持されるので、前方に向かう火炎を遮蔽した状態で被加熱物Wを加熱することができる。これによって、ガスコンロ1の前方側に立つ使用者に火炎の輻射熱や燃焼排気が向かうことを効果的に抑止でき、良好な使用快適性を得ることができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1:ガスコンロ,2:天板,20:磁性体,
3:バーナー,30:炎孔部,
30A:炎孔,30B:空気流路,30C:支持部,30C1:支持面,
31:燃料供給部,32:立ち消え温度センサ,
4:五徳,40,42:五徳体,40A:側面,40B:支持面,
41:開放口,43:磁石,
S:間隙,W:被加熱物,Wt:底面部