特許第6150384号(P6150384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6150384-易分割性油中水型乳化油脂食品 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150384
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】易分割性油中水型乳化油脂食品
(51)【国際特許分類】
   A23C 15/12 20060101AFI20170612BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   A23C15/12
   A23D7/00 500
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-70416(P2013-70416)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-193124(P2014-193124A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松井 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 浩
(72)【発明者】
【氏名】重松 明典
【審査官】 藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−308152(JP,A)
【文献】 実開昭53−115184(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
A23D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の大きさに成型された油中水型乳化油脂組成物、割断面を介して複数連接され、
前記割断面における隣接した油中水型乳化油脂組成物が、複数の接触点で連接し、
前記接触点の各々の面積が割断面の面積の1%以下であり、複数の接触点の面積の総和が割断面の面積の3%〜65%であって、且つ、割断面における水滴面積率が30%未満である
ことを特徴とする易分割性油中水型乳化油脂食品。
【請求項2】
前記割断面の接触点が、割断面全体に渡って分布することを特徴とする請求項1記載の易分割性油中水型乳化油脂食品。
【請求項3】
流動状の油中水型乳化油脂組成物を、整流板を有するノズルから吐出し、任意の大きさの油中水型乳化油脂組成物を複数成型した後、適当な圧力を加え、割断面を介して複数の油中水型乳化油脂組成物を連接固化することを特徴とする易分割性油中水型乳化油脂食品の製造方法において、
前記流動状の油中水型乳化油脂組成物の針入度が160(1/10mm)以下であり、
前記流動状の油中水型乳化油脂組成物のノズル通過時の線速度が1cm/s以下であり、
前記適当な圧力が100gf/平方センチメートル以下の処理によるものである
ことを特徴とする易分割性油中水型乳化油脂食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易分割性を有する油中水型乳化油脂食品、及び、その製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型乳化油脂食品の代表的なものとして、バター、マーガリン、及び、スプレッドがある。これらの油中水型乳化油脂食品は、一般家庭用と業務用で用途が異なり、例えば一般家庭用に関しては、調理用油脂やパン等に塗布する食卓用油脂として使用される。一方で、業務用では、製パン時に生地(ドウ)に練りこむ原料油脂として使用されるほか、製菓やチョコレート等の原料油脂として、溶融させて配合する形で使用される。
油中水型乳化油脂食品の1つであるバターは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令において、「生乳、牛乳又は特別牛乳から得られた脂肪粒を練圧したもの」と定義されており、製造方法としてはバッチ式製造と連続式製造に分けられるが、経る工程は、ほぼ同一である。
代表的な製造工程としては、まず原料乳をセパレーターと呼ばれる連続式分離機でクリームと脱脂乳に分離する分離工程と、分離工程を経たクリームをプレート式熱交換機等によって殺菌する(リパーゼ等の酵素を失活させる)殺菌工程、殺菌工程を経た後に3〜10℃の温度で8時間程度保持するエージング工程、エージング工程後にバター粒の形成を行うチャーニング工程、チャーニング工程後、混練し組織を均一化するワーキング工程がある。
一方、マーガリンやファットスプレッドにおいては、パーム油、サフラワー油、大豆油、ナタネ油、ヤシ油、ラード、魚油等の動植物油脂をそのままあるいは水素添加して硬化したものを用いて乳化剤と共に油層を調製し、この油層と水に乳化剤や安定剤あるいは脱脂乳や香料等の風味成分からなる水層とを混合乳化した後ピンマシンやボテーター等により急冷・混練する方法により製造される。これらの油中水型乳化食品は、配合する油脂の固体脂含有指数(SFI)により、ハード系とソフト型に分類され、また含有する水分量も15重量%前後から50重量%と幅広いものである。
【0003】
上記のようにして製造された油中水型乳化油脂食品は、使用目的に応じて、種々の形態に包装されるが、代表的なものは、一般家庭用では100g〜200g 程度のブロック状であり、製菓・製パン・冷菓等の原料として使用される業務用用途では、10kg〜30kg単位のブロック状である。
これらの油中水型乳化油脂組成物は、約5℃の冷蔵温度や約−25℃〜−10℃の冷凍温度に冷却され、流通・保存されるのが一般的である。このため、油中水型乳化食品を構成する油脂のグリセリドが固化し、ネットワークが形成されるため、硬度が飛躍的に高くなり、使用時に適当な大きさや形状に切り分けることは困難を伴うものである。したがって、あらかじめ常温下で柔らかくなるまで保持したり、あるいは業務用途では食品用粉砕機が用いられたり、切断装置を用いて細断して使用するといったことが行われている。
【0004】
このような油中水型乳化油脂食品の使用時の問題を解決するために、適当な大きさの油中水型乳化油脂食品に水層の割断面層を形成する方法(特許文献1)やプレカットを加えた油中水型乳化油脂食品を製造する方法(特許文献2)、吐出された油中水型乳化油脂食品にミスト状の殺菌水を噴霧し水膜を形成させた後、瞬間凍結し、任意の長さで切断することでプレカット油中水型乳化油脂食品を製造する(特許文献3)方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1の方法では割断面となる水層が凍結している場合には容易には分割できず、また、割断面以外で割れてしまうといった問題が生じている。また、特許文献2の方法では、10kg〜30kgといった大型のブロック状を成型する場合に大掛かりな設備が必要となることや、モールドの形状で油中水型乳化油脂食品の形状が決まってしまうため、製造時の作業性が悪いという問題がある。なお、特許文献3の方法では、冷凍状態からも分割可能な旨の記載があるものの、この分割は3日間かけて、ゆっくりと時間を掛けて解凍し、分割するものであるため、本発明でいうところの易分割性には当てはまらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−308152号公報
【特許文献2】特開平8−322413号公報
【特許文献3】特開平10−155381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の課題を踏まえ、本願発明は、冷蔵、または、冷凍状態からでも、使用時に容易に、且つ、迅速に分割することが可能な易分割性油中水型乳化油脂食品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本願発明は以下の構成を有するものである。
(1)任意の大きさに成型された油中水型乳化油脂組成物を、割断面を介して複数連接してなる易分割性油中水型乳化油脂食品。
(2)前記割断面における隣接した油中水型乳化油脂組成物が、複数の接触点で連接していることを特徴とする(1)記載の易分割性油中水型乳化油脂食品。
(3)前記接触点の各々の面積が割断面の面積の1%以下であり、複数の接触点の面積の総和が割断面の面積の3%〜65%であって、且つ、割断面における水滴面積率が30%未満であることを特徴とする(1)記載の易分割性油中水型乳化油脂食品。
(4)前記割断面の接触点が、割断面全体に渡って分布することを特徴とする(2)記載の易分割性油中水型乳化油脂食品。
(5)流動状の油中水型乳化油脂組成物を、整流板を有するノズルから吐出し、任意の大きさの油中水型乳化油脂組成物を複数成形した後、適当な圧力を加え、割断面を介して複数の油中水型乳化油脂組成物を連接固化することを特徴とする易分割性油中水型乳化油脂食品の製造方法。
(6)前記流動状の油中水型乳化油脂組成物のノズル通過時の線速度が1cm/s以下であることを特徴とする(4)記載の易分割性油中水型乳化油脂食品の製造方法。
(7)前記流動状の油中水型乳化油脂組成物の針入度を160(1/10mm)以下に調整することを特徴とする(4)記載の易分割性油中水型乳化油脂食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の易分割性油中水型乳化油脂食品は、冷蔵、あるいは、冷凍状態においても、あらかじめ設定した割断面で迅速、且つ、容易に分割することができ、家庭用用途や業務用用途などにおける利便性を向上したものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】接着圧付加する場合の製造工程を示す。
図2】角型ノズル、及び、内部に設置した整流板を示す。
図3】角型ノズル、及び、内部に設置した整流板を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の油中水型乳化油脂食品は、任意の大きさに成型された油中水型乳化油脂組成物を、割断面を介して複数連接し、易分割性を有する油中水型乳化油脂食品を提供するものである。
【0011】
本願発明において、油中水型乳化油脂組成物としては特に限定されるものではなく、バターであれば通常の工程を経て製造されたもののほか、製造後、冷凍保存を経た後に解凍された物等が挙げられ、また、マーガリンやファットスプレッドも使用可能である。
これらの油中水型乳化油脂組成物を任意の大きさで複数成形し、割断面同士が合わさるように油中水型乳化油脂組成物を両側から加圧することにより割断面を介して複数連接させた易分割性油中水型乳化油脂食品を得る。
【0012】
本発明の易分割性油中水型乳化油脂食品は、その割断面において、隣接する油中水型乳化油脂組成物が複数の接触点を介して連接される。各接触点の面積は割断面の面積の1%以下とし、各接触点の面積の総和は、割断面の面積の3%〜65%の範囲とし、水滴面積率は割断面の面積の30%未満とする。接触点の面積の総和が3%未満の場合は、製造中の搬送過程において連接を維持できずに割れる危険性が高く、65%以上の場合には容易には分割できない。また、各接触点の面積が割断面の面積の1%以上となると、割断面における接触部分が偏った状態で存在することになるため、分割性や連接の維持の面で問題が生じる可能性が高い。また、割断面における水滴の面積の割合(以下、「水滴面積率」という。)が30%以上となると、冷蔵条件では分割できるものであっても、冷凍条件では水滴部分が凍結するために分割できないため、割断面における水滴面積率は30%未満であることが望ましい。
なお、本明細書の以降の記載において、「接触面積率」とは、割断面の面積に対する各接触点の面積の総和の比率を示すものとする。
【0013】
なお、本願発明においては、例えば、スクリューフィーダーの吐出口に整流板を設けたノズルを設置し、ここに油中水型乳化油脂組成物を通過させることにより、任意の大きさの油中水型乳化油脂組成物を同時に複数成型することが可能である。この方法によると、複数成型された油中水型乳化油脂組成物は、整流板によって任意の大きさとなり、その後、ノズルの吐出口の壁によって内側方向への圧力が加わることによって複数の油中水型乳化油脂組成物が連接され、油中水型乳化油脂食品とすることができる。なお、この際に用いる整流板は、ステンレス製でもよいし、ステンレス製の整流板の表面をフッ素樹脂加工、サンドブラスト加工するなどしたものであってもよい。この整流板を設けた吐出ノズルを通過させて本発明の油中水型乳化油脂食品を調製する場合、油中水型乳化油脂組成物がノズルを通過する際の線速度は1cm/s以下とすることが望ましい。1cm/sよりも速い速度でノズルを通過させた場合、油中水型乳化油脂組成物間に離水が発生し、割断面間の水滴面積率が30%を超え、冷蔵条件では、良好に分割できるものの、冷凍条件においては、その水層が割断面間において接着剤様の働きをするため、割断面に沿って良好に分割できないなどの問題が発生する。
【0014】
本発明では、複数の油中水型乳化油脂組成物を、割断面同士を合わせて加圧することにより、易分割性油中水型乳化油脂食品とするが、この時の圧力は、油中水型乳化油脂組成物の硬度によって適宜設定する必要がある。これは割断面に加える圧力が一定であっても、油中水型乳化油脂組成物の硬度によって割断面の接触面積率が変化することによる。割断面に加える圧力としては、例えば、針入度が110(1/10mm)の時には約70gf/cm以下、針入度が140(1/10mm)の時には約50gf/cm以下とすることが望ましい。
【0015】
図1は、本発明の整流板を設けた吐出ノズルを利用した易分割性油中水型乳化油脂食品の製造工程を示したものである。スクリューフィーダー(1)吐出部先端に、内部に整流板(4)を有する角型ノズル(3)を設置する。次いで、スクリューフィーダーに同設されたホッパー(2)内に油中水型乳化油脂組成物を投入する。油中水型乳化油脂組成物は流量を調整して、角型ノズル内部に設置した整流板を適当な線速度で通過する。次いで、角型ノズル内部の整流板の後段部で、切断された油中水型乳化油脂組成物の割断面を連接し、搬送を続け成型し、角型ノズルより排出することで油中水型乳化油脂組成物とすることができる。
【0016】
角型ノズル内部に設置した整流板は、不必要に揃断がかかる厚さでなければ、どのような厚さでも問題ないが、2mm程度のものが好ましい。吐出された油中水型乳化油脂組成物が、一定長になった段階で、切断機(5)を用いて、搬送方向に対して略垂直に切断する。切断した油中水型乳化油脂組成物を排出コンベアで接着区画まで搬送し、この区画において、割断面に対して垂直方向より適当な圧力を加えることで、易分割性乳化油脂食品が得られる。なお、易分割性乳化油脂食品の易分割性は、この時加える圧力または油中水型乳化油脂組成物の硬度によって、適宜調整することが可能である。易分割性は接触面積率が小さいほど分割し易いが、極端に接触面積率を小さくすると、製造中や流通の過程で分割してしまう恐れがあるため、3%以上とすることが好ましい。
また、搬送方向に一定長に吐出された複数の油中水型乳化油脂組成物を、搬送方向に再度連接させて、同方向より適当な圧力を加えても同効果、つまり、易分割性油中水型乳化油脂食品が得られる。そのため、所望の形状、重量に応じ、角型ノズルの吐出部面積、もしくは、ノズルからの吐出長さを変えることで、任意の易分割性油中水型乳化油脂食品が得られる。なお、この際の加圧方法に特に制限はなく、油圧やエアーシリンダーなど適宜用いればよい。
【0017】
なお、本発明においては、油中水型乳化油脂組成物の硬度を調製することによって、割断面における接触率を調整するが、本明細書においてはその指標として針入度を用いている。本明細書において、針入度は、ペネトロメーター(RIGOSHA& Co. LTD. 製)に円錐角45°、重量約163.6gの貫入棒を用いて、5秒間に貫入する深さ [1/10mm] の測定値を意味する。なお、この値が大きいほど、油中水型乳化油脂食品が柔らかいことを示す。
【0018】
以下に本発明の実施例を示すが、あくまでも例示であり、本発明はこれらになんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
常法に従い製造されたバターを、温度調整によって、針入度を30(実施例品1)、110(実施例品2)、140(実施例品3)、160(実施例品4)(いずれも単位は1/10mm)となるよう調製した。調製したバターを図1に示すスクリューフィーダーで供給し、線速度0.8cm/sで整流板を備えた角型ノズル(図2)を通過させて、複数の油中水型乳化油脂組成物を得た。本角型ノズルの先端断面は長辺11 ×短辺5.5 cmであって、短辺の中心に整流板を一枚設置したノズルであり、バターは2区画に分かれ搬送される。
得られた油中水型乳化油脂組成物を、それぞれ割断面を介して連接するように両側面から25gf/cm2の圧力で5分間加圧し、易分割性油中水型乳化油脂組成物(実施例品1〜4)を得た。
【0020】
[比較例1]
常法に従い製造されたバターを、温度調整によって、針入度を20(比較例品1)、200(比較例品2)、220(比較例品3)(いずれも単位は1/10mm)となるよう調製した。調製したバターを図1に示すスクリューフィーダーで供給し、線速度0.8cm/sで整流板を備えた角型ノズル(図2)を通過させて、複数の油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた油中水型乳化油脂組成物を、それぞれ割断面を介して連接するように両側面から25gf/cm2の圧力で5分間加圧し、油中水型乳化油脂食品(比較例品1〜3)を得た。
【0021】
[試験例1]
実施例品1〜4、及び、比較例品1〜3について、各接触点の面積、及び、接触面積率の測定と、冷蔵条件、及び、冷凍条件での分割性評価試験を実施した。
各接触点の面積、及び、接触面積率の測定は、各油中水型乳化油脂食品を0℃に温度調整した後、割断面を含むように四角柱状に10個切出し、その後、各四角柱状の割断面に対して垂直に切出して厚さ1mmの10枚の切片を作成し、実体顕微鏡を用いて、各切片の切出した長さに対する各接触点の長さを測定し、得られた測定値から算出した。
冷蔵条件の分割性評価試験は、各油中水型乳化油脂食品を6℃で一週間保持後、割断面にバターナイフを差し込んだ際の割れやすさを、割断面に沿ってシャープに分割できたものを○、割断面に沿って一部分割できたものを△、割断面に沿わず、不定形に割れたものを×として評価した。
また、冷凍条件の分割性評価試験は、各油中水型乳化油脂食品を−18℃で一週間保持後、厚さ2mm平板より作成したクサビ型の冶具を差し込んだ際の割れやすさを、割断面に沿ってシャープに分割できたものを○、割断面に沿って一部分割できたものを△、割断面に沿わず、不定形に割れたものを×として評価した。
なお、割断面における水滴面積率については、ノズルから吐出された油中水型乳化油脂組成物を分割し、低温走査型電子顕微鏡下で取得した画像より算出した。
結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1の結果から、接触面積率が3%〜65%である実施例品1〜4については、割断面に沿って分割された。接触面積率が2%である比較例品1については、成型不良となり、搬送、または、流通の過程で割れてしまうことが明らかとなった。また、接触面積率が65%よりも大きい比較例品2、3については、冷蔵、冷凍いずれの条件においても割断面では割れず、完全に不定形に分割されてしまう結果となった。以上の結果から、任意の大きさに成型された油中水型乳化油脂組成物を、割断面を介して複数連接してなる油中水型乳化油脂食品において、接触点の各々の面積が割断面の面積の1%以下であり、且つ、複数の接触点の面積の総和を、割断面の面積の3%〜65%とすることで、易分割性を付与できることが明らかとなった。また、割断面における水滴面積率は、いずれの水準も30%未満であった。
【0024】
[試験例2]
常法に従い製造されたバターを、温度調整によって、針入度を20〜220(1/10mm)となるよう調製した。調製したバターを図1に示すスクリューフィーダーで供給し、整流板を備えた角型ノズル(図2)を通過させて、複数の油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた油中水型乳化油脂組成物を、それぞれ割断面を介して連接するように両側面から0〜100gf/cm2の圧力で5分間加圧して油中水型乳化油脂食品とし、割断面におけるそれぞれの接触面積率を測定した。なお、接着圧0gf/cm2は、油中水型乳化油脂組成物の自重による連接を意味する。
得られた結果から、接触面積率が3%〜65%のものを○、65%よりも大きいものを×、3%未満、又は、連接しなかったものを−として評価し、その結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2の結果から、針入度を160(1/10mm)以下とすることで、接触面積率を3%〜65%の範囲内とすることが可能であることが明らかとなった。
【実施例2】
【0027】
常法に従い製造されたバターを、温度調整によって、針入度を70、110(単位はいずれも1/10mm)となるよう調製した。それぞれ調整したバターを図1に示すスクリューフィーダーを用いて、線速度0.5(実施例品5、7)、1.0(実施例品6,8)cm/sで整流板を備えた角型ノズル(図2)を通過させて、複数の油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた油中水型乳化油脂組成物を、それぞれ割断面を介して連接するように両側面から25gf/cm2の圧力で5分間加圧し、易分割性油中水型乳化油脂食品(実施例品5〜8)を得た。
【0028】
[比較例3]
常法に従い製造されたバターを、温度調整によって、針入度70、110[1/10mm]に調整した。それぞれ調整したバターを線速度1.5(比較例品4、7)、2(比較例品5、8)、3(比較例品6、9)cm/sで搬送し、整流板を備えた角型ノズル(図2)を通過させて、複数の油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた油中水型乳化油脂組成物を、それぞれ割断面を介して連接するように両側面から25gf/cm2の圧力で5分間加圧し、油中水型乳化油脂食品(比較例品4〜9)を得た。
【0029】
[試験例3]
実施例品5〜8、及び、比較例品4〜9について、試験例1と同様の方法により、各接触点の面積、接触面積率、及び、割断面における水滴面積率の測定と、冷蔵条件、及び、冷凍条件での分割性評価試験を実施した。
【0030】
【表3】
【0031】
表3の結果から、角型ノズル内に備えた整流板通過時の線速度を1.0cm/s以下とした場合、割断面における水滴面積率が30%未満となり、冷凍、及び、冷蔵条件で割断面に沿って良好に分割可能であることが分かった。また、線速度が1.0cm/s以上となると、割断面から離水し、割断面における水滴面積率が30%を超え、冷蔵条件では、良好に分割可能であったが、冷凍条件では、不定形に割れてしまうことが明らかになった。
【実施例3】
【0032】
大豆白絞油を主原料として常法に従ってハードタイプのマーガリンを製造し、6℃で保存した。このハードタイプマーガリンを、温度調整によって針入度を70[1/10mm]に調整した。スクリューフィーダー(1)先端に図3に示すノズルを設置した。本ノズルは、20×20 mmを一区画として、6区画からなる長辺60mm、短辺が40mmのノズルである。角型ノズルに備えた整流板通過時の線速度は、1cm/sであった。ノズルより吐出後、50mmの一定長になり次第、油中水型乳化油脂組成物を1cm/sの速度で図2の(5)を用いて切断した。その後、同条件にて、同形状の油中水型乳化油脂組成物を吐出し、先に吐出した同形状の油中水型乳化油脂組成物と連接し新たな割断面とし、それぞれ割断面を介して連接するように両側面から25gf/cm2の圧力で5分間加圧し、易分割性油中水型乳化油脂食品(実施例品9)を得た。
【0033】
[比較例4]
大豆白絞油を主原料として常法に従って製造し、6℃で保存したハードタイプのマーガリンを用いて、温度調整することで針入度を200[1/10mm]に調整した。スクリューフィーダー(1)先端に図3に示すノズルを設置した。角型ノズルに備えた整流板通過時の線速度は、1cm/sであった。ノズルより吐出後、50mmの一定長になり次第、油中水型乳化油脂組成物を1cm/sの速度で図2の(5)を用いて切断した。その後、同条件にて、同形状の油中水型乳化油脂組成物を吐出し、先に吐出した油中水型乳化油脂組成物と連接し新たな割断面とし、それぞれ割断面を介して連接するように両側面から25gf/cm2の圧力で5分間加圧し、油中水型乳化油脂食品(比較例品10)を得た。
【0034】
[試験例4]
実施例品9、及び、比較例品10について、試験例1と同様の方法により、各接触点の面積、接触面積率、及び、割断面における水滴面積率の測定と、冷蔵条件、及び、冷凍条件での分割性評価試験を実施した。
【0035】
【表4】
【0036】
表4の結果より、針入度200[1/10mm]の比較例品10は、冷蔵、及び、冷凍条件において、割断面、及び、同形状の油中水型乳化油脂組成物との連接部からも分割できず、針入度70[1/10mm]とした実施例品9では、冷蔵、及び、冷凍条件において、同形状の油中水型乳化油脂組成物との連接部を含め、すべての割断面が良好に分割可能であることが分かった。また、実施例品9、比較例品10ともに割断面における水滴面積率は、30%未満であった。
【符号の説明】
【0037】
1 スクリューフィーダー
2 ホッパー
3 角型ノズル
4 整流板
5 切断機
6 易分割性乳化油中水型油脂食品
7 輸送コンベア
8 接着圧付加区画
9 2区画角型ノズル
10 整流板
11 6区画角型ノズル
図1
図2
図3