(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。以下に説明する第1の実施形態(実施例1)及び第2の実施形態(実施例2)は、広帯域周波数誤差を検出する際に、IQ信号を差動復調してI軸との間の角度を算出し、差動変調され毎シンボル同じキャリア位置に配置されている広帯域周波数誤差検出用パイロット信号を累積処理することで、そのキャリア位置を特定し、キャリア間隔以上の周波数誤差を検出することを特徴とする。
【0019】
また、実施例1は、狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出する際に、周波数軸上でシンボルの同期加算により狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号を抽出し、抽出した狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号の偏角を時間軸上で観測し、その変化量から、正負の方向を含む周波数誤差及びクロック誤差を検出する。実施例2は、狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出する際に、周波数軸上でシンボルの同期加算により狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号を抽出し、抽出した狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号の中から振幅値の高い狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号を選択し、選択した狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号の偏角を時間軸上で観測し、その変化量から、正負の方向を含む周波数誤差及びクロック誤差を検出する。以下、実施例1,2について説明する。
【0020】
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。前述のとおり、実施例1は、IQ信号を差動復調してI軸との間の角度を算出し、差動変調され毎シンボル同じキャリア位置に配置されている広帯域周波数誤差検出用パイロット信号を累積処理することで、そのキャリア位置を特定し、キャリア間隔以上の広帯域周波数誤差を検出すると共に、周波数軸上でシンボルの同期加算により狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号を抽出し、抽出した狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号の偏角を時間軸上で観測し、その変化量から、正負の方向を含む狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出する。
【0021】
図1は、実施例1によるOFDM波測定装置の構成を示すブロック図である。このOFDM波測定装置1は、周波数変換部11、A/D(Analog/Digital)変換部12、直交復調部13、誤差検出部14、狭帯域周波数誤差補正部15−1,15−2、シンボル切出部16−1,16−2,16−3,16−4、FFT部17−1,17−2,17−3,17−4、シンボル加算部18−1,18−2,18−3、SPパターン検出部(パターン検出部)19、クロック誤差補正部20−1,20−2、SP抽出部(パイロット抽出部)21−1,21−2、誤差検出部22、受信電力算出部23、スペクトル算出部24、遅延プロファイル算出部25、広帯域周波数誤差補正部26及び広帯域周波数誤差検出部27を備えている。
【0022】
周波数変換部11は、受信アンテナにて受信したOFDM信号のRF(Radio Frequency:無線周波数)信号を入力し、周波数変換してIF(Intermediate Frequency:中間周波数)信号を生成し、A/D変換部12に出力する。A/D変換部12は、周波数変換部11からIF信号を入力し、アナログのIF信号をデジタルのIF信号に変換し、直交復調部13に出力する。直交復調部13は、A/D変換部12からデジタルのIF信号を入力し、直交復調してI(In-phase:同相),Q(Quadrature:直交位相)のベースバンド信号を生成し、誤差検出部14及び狭帯域周波数誤差補正部15−1に出力する。
【0023】
誤差検出部14は、直交復調部13からIQのベースバンド信号を入力し、時間軸上の所定のデータ先頭位置を基準にして、4シンボル単位に加算を順次行い、加算結果にガードインターバル相間を施してガードインターバル相関値を算出し、ガードインターバル相関値に基づいてシンボル先頭位置、クロック誤差及び周波数誤差を検出する。ここで、所定のデータ先頭位置は、IQのベースバンド信号の時間軸上における任意の位置を示す。また、誤差検出部14により検出される周波数誤差の範囲は、キャリア間隔の±1/2である。
【0024】
そして、誤差検出部14は、検出したシンボル先頭位置をシンボル切出部16−1,16−2,16−3,16−4に出力し、検出したクロック誤差(時間軸上のシンボル加算にて検出したクロック誤差)をクロック誤差補正部20−1に出力し、検出した周波数誤差(時間軸上のシンボル加算にて検出した周波数誤差)を狭帯域周波数誤差として狭帯域周波数誤差補正部15−1に出力する。ここで、誤差検出部14によるシンボル先頭位置、クロック誤差及び周波数誤差の検出処理は既知であり、その詳細については前述の特許文献3を参照されたい。
【0025】
狭帯域周波数誤差補正部15−1は、直交復調部13からIQのベースバンド信号を入力すると共に、誤差検出部14から狭帯域周波数誤差を入力し、入力した狭帯域周波数誤差に基づいて、ベースバンド信号(IQ信号)における周波数の誤差を補正する。そして、狭帯域周波数誤差補正部15−1は、狭帯域周波数誤差を補正したベースバンド信号を広帯域周波数誤差補正部26及びシンボル切出部16−4に出力する。
【0026】
シンボル切出部16−4は、狭帯域周波数誤差補正部15−1から狭帯域周波数誤差が補正されたベースバンド信号を入力すると共に、誤差検出部14からシンボル先頭位置を入力する。そして、シンボル切出部16−4は、誤差検出部14において4シンボル単位の加算の基準としたデータ先頭位置からシンボル先頭位置分シフトした位置を基準にして、ベースバンド信号からGIを除去し有効シンボルの信号を切り出す。そして、シンボル切出部16−4は、有効シンボルの信号をFFT部17−4に出力する。
【0027】
FFT部17−4は、シンボル切出部16−4から有効シンボルの信号を入力し、FFTしてキャリアシンボルを生成し、キャリアシンボルのFFT出力信号を広帯域周波数誤差検出部27に出力する。
【0028】
広帯域周波数誤差検出部27は、FFT部17−4からFFT出力信号を入力し、キャリア毎に、FFT出力信号であるIQ信号を差動復調し、差動復調した信号とI軸との間の角度を算出し、算出した角度に基づいて、DBPSK(Differential Binary Phase Shift Keying:差動2相位相変調)で変調され毎シンボル同じキャリア位置に配置されているパイロット信号を累積処理することで、そのキャリア位置をキャリア単位で特定し、特定したパイロット信号のキャリア位置と当該パイロット信号の正しいキャリア位置(送信装置が配置した当該パイロット信号のキャリア位置)との間の相関値を算出し、キャリア間隔以上の周波数誤差を検出する。そして、広帯域周波数誤差検出部27は、検出した周波数誤差を広帯域周波数誤差として広帯域周波数誤差補正部26に出力する。毎シンボル同じキャリア位置に配置され、広帯域周波数誤差を検出するために用いるパイロット信号としては、例えばTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号、AC(Auxiliary Channel)信号が用いられる。広帯域周波数誤差検出部27の処理の詳細については後述する。
【0029】
ここで、OFDM波測定装置1が受信するOFDM波には、当該OFDM波を送信する送信装置がDBPSKの変調方式にて変調し毎シンボル同じキャリア位置に配置したパイロット信号が含まれるものとする。
【0030】
広帯域周波数誤差補正部26は、狭帯域周波数誤差補正部15−1から狭帯域周波数誤差が補正されたベースバンド信号を入力すると共に、広帯域周波数誤差検出部27から広帯域周波数誤差を入力し、入力した広帯域周波数誤差に基づいて、入力したベースバンド信号(狭帯域周波数誤差が補正されたIQ信号)における周波数の誤差を補正する。そして、広帯域周波数誤差補正部26は、広帯域周波数誤差を補正したベースバンド信号を狭帯域周波数誤差補正部15−2及びシンボル切出部16−1に出力する。
【0031】
シンボル切出部16−1は、広帯域周波数誤差補正部26から広帯域周波数誤差が補正されたベースバンド信号を入力すると共に、誤差検出部14からシンボル先頭位置を入力する。そして、シンボル切出部16−1は、シンボル切出部16−4と同様の処理を行って有効シンボルの信号を切り出し、切り出した有効シンボルの信号をFFT部17−1に出力する。
【0032】
FFT部17−1は、シンボル切出部16−1から有効シンボルの信号を入力し、FFTしてキャリアシンボルを生成し、キャリアシンボルのFFT出力信号をシンボル加算部18−1に出力する。この場合、FFT部17−1は、シンボル番号が4n番目のキャリアシンボル、シンボル番号が4n+1番目のキャリアシンボル、シンボル番号が4n+2番目のキャリアシンボル及びシンボル番号が4n+3番目のキャリアシンボルの4グループに分け、そのグループ毎にFFT出力信号をシンボル加算部18−1に出力する。nは、0以上の整数である。
【0033】
シンボル加算部18−1は、FFT部17−1からFFT出力信号である4グループのキャリアシンボル(シンボル番号が4n番目のキャリアシンボル、シンボル番号が4n+1番目のキャリアシンボル、シンボル番号が4n+2番目のキャリアシンボル及びシンボル番号が4n+3番目のキャリアシンボル)を入力し、グループ毎にキャリアシンボルの同期加算を行う。すなわち、シンボル加算部18−1は、各グループについて、サブキャリア毎にベクトル加算を行う。そして、シンボル加算部18−1は、グループ毎の同期加算結果であるシンボル番号が4n番目のキャリアシンボルの同期加算結果、シンボル番号が4n+1番目のキャリアシンボルの同期加算結果、シンボル番号が4n+2番目のキャリアシンボルの同期加算結果及びシンボル番号が4n+3番目のキャリアシンボルの同期加算結果をSPパターン検出部19に出力する。具体的には、シンボル加算部18−1は、同期加算の処理として、ループフィルタによる加算処理、または移動平均による加算処理を行う。ここで、シンボル加算部18−1による加算処理は既知であり、その詳細については前述の特許文献3を参照されたい。
【0034】
SPパターン検出部19は、シンボル加算部18−1から4グループの同期加算結果(シンボル番号が4n番目のキャリアシンボルの同期加算結果、シンボル番号が4n+1番目のキャリアシンボルの同期加算結果、シンボル番号が4n+2番目のキャリアシンボルの同期加算結果及びシンボル番号が4n+3番目のキャリアシンボルの同期加算結果)を入力する。そして、SPパターン検出部19は、これらの同期加算結果と、予め設定された4つのSPパターンとの間の相関値を算出し、4つの相関値に基づいて、SPの抽出が可能か否かを判定し、SP抽出可またはSP抽出不可の信号を生成し、SP抽出可のときの最大相関値を有するSPパターンを検出する。そして、SPパターン検出部19は、SP抽出不可能であると判定した場合、SP抽出不可の信号をSP抽出部21−1,21−2に出力し、SP抽出可能であると判定した場合、SP抽出可の信号及びSPパターンをSP抽出部21−1,21−2に出力する。ここで、SPパターン検出部19によるSPパターン検出処理は既知であり、その詳細については前述の特許文献3を参照されたい。
【0035】
ここで、SPパターン検出部19において、受信信号の電力が低レベルの場合、SPパターンの検出処理開始直後は、同期加算結果と4つのSPパターンとの間の相関値の差はさほど無い。これは、受信信号の電力が低レベルの場合には、1シンボル内にそれぞれ存在する異なる4種類のSP信号(振幅及び位相が異なるSP信号)を、明確に区別することができないからである。同期加算されるシンボル数が増加してSPパターンの検出処理が進むことで、4つの相関値のうちの1つの相関値が他の3つの相関値よりも大きくなる。すなわち、同期加算結果は、同期加算処理が進むに従って、4つのSPパターンのうちの1つのSPパターンに近くなる。これは、受信信号の電力が低レベルの場合であっても、同期加算処理が進むことで、1シンボル内に存在する異なる4種類のSP信号を明確に区別することができるからである。この相関値の違いに基づいて、SP抽出可能及びSPパターン、またはSP抽出不可能が判定される。
【0036】
シンボル切出部16−2及びFFT部17−2は、前述のシンボル切出部16−1及びFFT部17−1と同様の処理をそれぞれ行う。
【0037】
クロック誤差補正部20−1は、FFT部17−2からFFT出力信号である4グループのキャリアシンボルを入力すると共に、誤差検出部14からクロック誤差(時間軸上のシンボル加算にて検出されたクロック誤差)を入力し、グループ毎に、クロック誤差に基づいて、現在のシンボル位置と理想的なシンボル位置との間の時間差に対応するクロック数を示す差分τを算出し、SP信号の位相を2πf
kτ逆回転させることで、クロック誤差を補正し、クロック誤差が補正された4グループのキャリアシンボルをシンボル加算部18−2に出力する。ここで、f
kは、サブキャリア番号kにおけるSP信号の中心キャリア周波数を示す。クロック誤差補正部20−1によるクロック誤差補正処理は既知であり、その詳細については前述の特許文献3を参照されたい。
【0038】
シンボル加算部18−2は、クロック誤差補正部20−1からクロック誤差(時間軸上のシンボル加算にて検出されたクロック誤差)が補正された4グループのキャリアシンボルを入力し、シンボル加算部18−1と同様の処理を行い、シンボル番号が4n番目のキャリアシンボルの同期加算結果、シンボル番号が4n+1番目のキャリアシンボルの同期加算結果、シンボル番号が4n+2番目のキャリアシンボルの同期加算結果及びシンボル番号が4n+3番目のキャリアシンボルの同期加算結果をSP抽出部21−1に出力する。また、シンボル加算部18−2は、同期加算の回数をカウントし、これを計算シンボル数として誤差検出部22に出力する。
【0039】
SP抽出部21−1は、シンボル加算部18−2から4グループの同期加算結果を入力すると共に、SPパターン検出部19からSP抽出不可、またはSP抽出可及びSPパターンを入力する。そして、SP抽出部21−1は、SP抽出不可を入力した場合、SP抽出処理を行わない。一方、SP抽出部21−1は、SP抽出可を入力した場合、SPパターンに基づいて4グループの同期加算結果からSP信号を抽出すると共に、CP信号を抽出し、抽出したSP信号及びCP信号を誤差検出部22に出力する。
【0040】
誤差検出部22は、SP抽出部21−1からSP信号及びCP信号を入力すると共に、シンボル加算部18−2から同期加算の回数を示す計算シンボル数を入力し、OFDM波の左端の最も周波数の低いSP信号及び右端の最も周波数の高いCP信号を観測し、これらのSP信号及びCP信号の1シンボルあたりの偏角変化量が安定する計算シンボル数以上になった段階で、これらのSP信号及びCP信号について時間軸上で偏角を算出し、周波数誤差及びクロック誤差を検出する。そして、誤差検出部22は、検出した周波数誤差(周波数軸上のシンボル加算及び時間軸上の偏角算出にて検出した周波数誤差)を狭帯域周波数誤差として狭帯域周波数誤差補正部15−2に出力すると共に、検出したクロック誤差(周波数軸上のシンボル加算及び時間軸上の偏角算出にて検出したクロック誤差)をクロック誤差補正部20−2に出力する。誤差検出部22の処理の詳細については後述する。
【0041】
狭帯域周波数誤差補正部15−2は、広帯域周波数誤差補正部26から広帯域周波数誤差が補正されたベースバンド信号を入力すると共に、誤差検出部22から狭帯域周波数誤差(周波数軸上のシンボル加算及び時間軸上の偏角算出にて検出された狭帯域周波数誤差)を入力し、入力した狭帯域周波数誤差に基づいて、再度、狭帯域周波数誤差補正部15−1と同様の処理を行い、入力したベースバンド信号における周波数誤差を補正する。そして、狭帯域周波数誤差補正部15−2は、狭帯域周波数誤差(周波数軸上のシンボル加算及び時間軸上の偏角算出にて検出された周波数誤差)を補正したベースバンド信号をシンボル切出部16−3に出力する。
【0042】
シンボル切出部16−3及びFFT部17−3は、シンボル切出部16−1及びFFT部17−1と同様の処理を行う。クロック誤差補正部20−2は、FFT部17−3からFFT出力信号である4グループのキャリアシンボルを入力すると共に、誤差検出部22からクロック誤差(周波数軸上のシンボル加算及び時間軸上の偏角算出にて検出したクロック誤差)を入力し、クロック誤差補正部20−1と同様の処理を行い、グループ毎に、キャリアシンボルのクロック誤差を補正する。そして、クロック誤差補正部20−2は、クロック誤差(周波数軸上のシンボル加算及び時間軸上の偏角算出にて検出したクロック誤差)を補正した4グループのキャリアシンボルをシンボル加算部18−3に出力する。
【0043】
シンボル加算部18−3及びSP抽出部21−2は、シンボル加算部18−1及びSP抽出部21−1と同様の処理を行う。受信電力算出部23、スペクトル算出部24及び遅延プロファイル算出部25は、SP抽出部21−2からSP信号を入力し、OFDM信号の受信電力、スペクトル及び遅延プロファイルをそれぞれ算出する。尚、OFDM信号の受信電力、スペクトル及び遅延プロファイルの算出手法は既知であるから、ここでは詳細な説明を省略する。また、SP抽出部21−2は、SP信号以外のパイロット信号を抽出し、受信電力算出部23、スペクトル算出部24及び遅延プロファイル算出部25は、そのパイロット信号を用いて、受信電力、スペクトル及び遅延プロファイルをそれぞれ算出するようにしてもよい。
【0044】
(広帯域周波数誤差検出部)
次に、
図1に示した広帯域周波数誤差検出部27について詳細に説明する。前述のとおり、広帯域周波数誤差検出部27は、キャリア毎に、FFT出力信号であるIQ信号を差動復調し、差動復調した信号とI軸との間の角度を算出し、算出した角度に基づいて、DBPSKで変調され毎シンボル同じキャリア位置に配置されているパイロット信号を累積処理することで、そのキャリア位置をキャリア単位で特定し、特定したパイロット信号のキャリア位置と当該パイロット信号の正しいキャリア位置(送信装置が配置した当該パイロット信号のキャリア位置)との間の相関値を算出し、キャリア間隔以上の周波数誤差を検出する。
【0045】
図2は、広帯域周波数誤差検出部27の構成を示すブロック図であり、
図3は、広帯域周波数誤差検出部27の処理を示すフローチャートである。
図2を参照して、この広帯域周波数誤差検出部27は、差動復調部28、係数算出部29、配置情報メモリ30及び相関算出部31を備えている。
【0046】
図3を参照して、広帯域周波数誤差検出部27の差動復調部28は、FFT部17−4から入力したFFT出力信号を差動復調することで、キャリア毎に、現在のシンボルのIQ信号及び1つ手前のシンボルのIQ信号を用いて差動復調信号を生成する(ステップS301)。そして、差動復調部28は、差動復調信号を係数算出部29に出力する。
【0047】
ここで、シンボル数をM、キャリア本数をN、シンボル番号をm(0≦m<M)、キャリア番号をn(0≦n<N)とする。また、シンボル番号m及びキャリア番号nのFFT信号であるIQ信号を、a
m,n+jb
m,nと表す。差動復調部28は、現在のシンボル番号をmとすると、キャリア毎に、現在のシンボルのIQ信号a
m,n+jb
m,n、及び1つ手前のシンボルのIQ信号a
m-1,n+jb
m-1,nを用いて、以下の式により差動復調信号a’
m,n+jb’
m,nを求める。
【数1】
【0048】
係数算出部29は、差動復調部28から差動復調信号を入力し、キャリア毎に、差動復調信号であるIQ信号とI軸との間の角度を算出する(ステップS302)。DBPSKの変調方式にて変調され毎シンボル同じキャリア位置に配置されたパイロット信号のキャリアについては、角度は0度に近くなる。
【0049】
そして、係数算出部29は、算出した角度のコサイン値からサイン値を減算した結果を用いて、シンボル方向へ累積して平均した係数RxTMCC(n)を算出する(ステップS303)。DBPSKの変調方式にて変調され毎シンボル同じキャリア位置に配置されたパイロット信号のキャリアについては、係数RxTMCC(n)は1に近くなる。
【0050】
具体的には、係数算出部29は、以下の式により、差動復調信号a’
m,n+jb’
m,nとI軸との間の角度θ
m,nを算出する。
【数2】
角度θ
m,nは、0〜90deg(度)の値となる。
【0051】
そして、係数算出部29は、算出した角度θ
m,nを用いて、以下の式により、係数RxTMCC(n)を計算する。
【数3】
係数RxTMCC(n)は、0〜1の値となる。
【0052】
図11は、角度θ
m,nと(cosθ
m,n−sinθ
m,n)の関係を示す図である。
図11に示すように、角度θ
m,nと(cosθ
m,n−sinθ
m,n)とは、角度θ
m,n=0〜90degに対して(cosθ
m,n−sinθ
m,n)=1〜−1となり、ほぼ直線の関係になっている。DBPSKの変調方式にて変調され毎シンボル同じキャリア位置に配置されたパイロット信号のキャリアについては、その角度θ
m,nは0degに近い値をとり、
図11に示すように、係数RxTMCC(n)は1に近くなる。一方、このパイロット信号以外のキャリアについては、ランダムな角度θ
m,nをとるから、係数RxTMCC(n)は0に近くなる。
【0053】
これにより、1に近い係数RxTMCC(n)におけるnの値を、前記パイロット信号のキャリア位置として特定することができる。また、測定対象のシンボル数Mを増やすことにより、前記パイロット信号のキャリア位置はさらに特定し易くなるから、信号電力が熱雑音以下の低レベルであっても、前記パイロット信号のキャリア位置を特定することができる。そして、後述の相関算出部31において、キャリア間隔以上の周波数誤差を検出することができる。
【0054】
配置情報メモリ30には、DBPSKの変調方式にて変調され、毎シンボル同じキャリア位置に配置されたパイロット信号のキャリア位置(キャリア番号)が定義された配置情報TxTMCC(n)が格納されている。TxTMCC(n)には、当該パイロット信号のキャリア番号iのときに1(TxTMCC(i)=1)、それ以外のキャリア番号では0が設定されているものとする。
【0055】
相関算出部31は、係数算出部29からキャリア毎の係数RxTMCC(n)を入力すると共に、配置情報メモリ30から配置情報TxTMCC(n)を読み出し、係数RxTMCC(n)と配置情報TxTMCC(n)との間の相関値Corr(k)を算出する(ステップS304)。ここで、検出する最大周波数誤差をキャリア間隔の±K倍(整数倍)とすると、相関値Corr(k)(−K≦k≦Kとする)は、以下の式により算出される。
【数4】
【0056】
そして、相関算出部31は、算出した相関値Corr(k)が−K≦k≦Kの範囲で最大となるkを特定し、特定したkにキャリア間隔を乗算することで、広帯域周波数誤差を検出する(ステップS305)。検出された広帯域周波数誤差は、広帯域周波数誤差補正部26へ出力される。
【0057】
このように、広帯域周波数誤差検出部27におけるステップS301〜ステップS305の処理により、DBPSKの変調方式にて変調され、毎シンボル同じキャリア位置に配置されたパイロット信号について累積処理を行い、配置情報との相関関係を求めることでパイロット信号のキャリア位置をキャリア単位で特定することができ、キャリア間隔以上の広帯域周波数誤差を検出することができる。
【0058】
(誤差検出部)
次に、
図1に示した誤差検出部22について詳細に説明する。前述のとおり、誤差検出部22は、SP抽出部21−1からSP信号及びCP信号を入力すると共に、シンボル加算部18−2から同期加算の回数を示す計算シンボル数を入力し、OFDM波の左端の最も周波数の低いSP信号及び右端の最も周波数の高いCP信号を観測し、これらのSP信号及びCP信号の1シンボルあたりの偏角変化量が安定する計算シンボル数以上になった段階で、これらのSP信号及びCP信号について時間軸上で偏角を算出し、狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出する。
【0059】
図4は、誤差検出部22がSP抽出部21−1から入力したSP信号の推移イメージを示す。具体的には、誤差検出部22がSP抽出部21−1から入力したSP信号について、同じキャリア位置のSP信号を時系列に観測し、IQ軸上にプロットしたイメージ(M番目のシンボルにおけるSP信号の位置及びN番目のシンボルにおけるSP信号の位置)を示している。N>Mとする。(1)は狭帯域周波数誤差及びクロック誤差(以下、総称して誤差という。)がない場合、(2)は誤差がある場合を示す。
【0060】
図4(1)に示すように、誤差がない場合、SP信号は、IQ軸の原点を通る直線上にプロットされ、SP信号の偏角α1は、どの時間(シンボル)で観測しても変わらない。これに対し、
図4(2)に示すように、誤差がある場合、SP信号は直線上にプロットされず、SP信号の偏角α1,α2は、時間の経過と共に変化する。また、この場合のSP信号の偏角の変化量(1つのOFDMシンボル間に変化する偏角の量)は、キャリアシンボルによって異なる。
【0061】
図5は、送受信機間の周波数誤差及びクロック誤差とパイロットキャリアの中心周波数の関係を示す図である。
図5(1)における縦の実線及び
図5(2)〜(4)における縦の点線は、各OFDMキャリアにおける中心周波数の位置を示す。
図5(2)に示すように、OFDMキャリアが周波数誤差Δfcのみを含む場合、全てのキャリアシンボルの中心周波数は、一律にΔfcだけずれる。このため、全てのキャリアシンボルについて、偏角の変化量は同じとなる。
図5(3)に示すように、OFDMキャリアがクロック誤差Δfclkのみを含む場合、中央の位置(0)にあるキャリアシンボルから周波数位置が離れるほど、キャリアシンボルのクロック誤差Δfclkは大きくなる。したがって、
図5(4)に示すように、OFDMキャリアが周波数誤差及びクロック誤差を含む場合、誤差は周波数誤差Δfcとクロック誤差Δfclkの和となる。このため、キャリアシンボルの偏角の変化量は、キャリアシンボルの周波数位置によって異なることになる。そこで、誤差検出部22は、複数のキャリアシンボルについて、それぞれの偏角の変化量を算出し、その変化量から狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出する。
【0062】
図6(1)は、OFDM波の左端の最も周波数の低いSP信号(左端SP信号)におけるIQ軸上の推移例を示す図であり、
図6(2)は、OFDM波の右端の最も周波数の高いCP信号(右端CP信号)におけるIQ軸上の推移例を示す図であり、
図6(3)は、左端SP信号における偏角の変化量θの推移例を示す図である。
図6(1)(2)に示すように、左端SP信号及び右端CP信号共に、シンボルが進むに従い、その位置は誤差によって回転するが、所定シンボル以上の計算シンボルになると、それ以降は、IQ軸上の原点を中心とした円周上を回転するようになる。また、
図6(3)に示すように、左端SP信号は、所定シンボル以上の計算シンボルになると、1シンボルあたりの偏角の変化量θが安定するようになる。これは、右端CP信号についても同様である。したがって、誤差検出部22は、1シンボルあたりの偏角の変化量θが安定した段階で(所定の計算シンボル数以上になった段階で)、誤差検出に用いる偏角の変化量として、1シンボルあたりの偏角の変化量θを求めればよい。
【0063】
図7は、実施例1において観測対象となる左端SP信号及び右端CP信号を説明する図である。
図7に示すように、左端SP信号は、周波数軸上の中心キャリアの位置から周波数が低い方向へ2808本目のキャリア位置の信号であり、最も周波数の低いSP信号である。また、右端CP信号は、周波数軸上の中心キャリアの位置から周波数が高い方向へ2808本目のキャリア位置の信号であり、最も周波数が高いCP信号である。誤差検出部22は、SP抽出部21−1から入力したSP信号及びCP信号のうち、
図7に示した位置の左端SP信号及び右端CP信号を観測し、
図6に示したように、左端SP信号及び右端CP信号の1シンボルあたりの偏角変化量が安定した段階で、それぞれの偏角の変化量を算出し、それらの変化量から狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出する。
【0064】
図8は、実施例1による誤差検出部22の処理を示すフローチャートである。まず、誤差検出部22は、SP抽出部21−1からSP信号及びCP信号を入力すると共に、シンボル加算部18−2から同期加算の回数を示す計算シンボル数を入力する(ステップS801)。そして、誤差検出部22は、入力した計算シンボル数から予め設定されたM番目のシンボル(Mシンボル目)を判定すると、Mシンボル目のSP信号及びCP信号のうちの左端SP信号におけるIQ値(I
SP(M),Q
SP(M))及び右端CP信号におけるIQ値(I
CP(M),Q
CP(M))をメモリに格納する(ステップS802)。ここで、Mは、左端SP信号及び右端CP信号において1シンボルあたりの偏角変化量が安定する計算シンボル数以上になった段階のシンボル数であり、左端SP信号及び右端CP信号が配置されたシンボルを指定するための、予め設定された値が用いられる。後述する実施例2においても同様である。
【0065】
誤差検出部22は、入力した計算シンボル数から予め設定されたN(>M)番目のシンボル(Nシンボル目)を判定すると、Nシンボル目のSP信号及びCP信号のうちの左端SP信号におけるIQ値(I
SP(N),Q
SP(N))及び右端CP信号におけるIQ値(I
CP(N),Q
CP(N))をメモリに格納する(ステップS803)。ここで、Nは、左端SP信号及び右端CP信号において1シンボルあたりの偏角変化量が安定する計算シンボル数以上になった段階の前記Mよりも大きいシンボル数であり、左端SP信号及び右端CP信号が配置されたシンボルを指定するための、予め設定された値が用いられる。後述する実施例2においても同様である。
【0066】
尚、誤差検出部22は、ステップS802及びステップS803において、左端SP信号及び右端CP信号の1シンボルあたりの偏角変化量が安定する計算シンボル数以上になった段階として、入力した計算シンボル数から予め設定されたM,Nシンボル目を判定するようにしたが、
図6に示したように、左端SP信号及び右端CP信号の1シンボルあたりの偏角変化量が安定した段階を判定し、その後の左端SP信号及び右端CP信号が配置されたシンボルをMシンボル目とし、Mよりも大きく、左端SP信号及び右端CP信号が配置されたシンボルをNシンボル目として判定するようにしてもよい。例えば、誤差検出部22は、所定数のシンボル毎に、左端SP信号及び右端CP信号の1シンボルあたりの偏角変化量を算出し、その偏角変化量の変化が一定のしきい値以下になったときに、前述の安定した段階であると判定してもよい。また、誤差検出部22は、入力した計算シンボル数を用いて、所定数のシンボル毎に、左端SP信号及び右端CP信号の振幅値を算出し、その振幅値の平均値についてその変化が一定のしきい値以下になったときに、前述の安定した段階であると判定してもよい。後述する実施例2においても同様である。
【0067】
誤差検出部22は、メモリから、Mシンボル目の左端SP信号のIQ値(I
SP(M),Q
SP(M))及び右端CP信号のIQ値(I
CP(M),Q
CP(M))、並びに、Nシンボル目の左端SP信号のIQ値(I
SP(N),Q
SP(N))及び右端CP信号のIQ値(I
CP(N),Q
CP(N))を読み出し、以下の式により、これらのIQ値を用いて、左端SP信号における1シンボルあたりの偏角変化量(回転量)θ
SP及び右端CP信号における1シンボルあたりの偏角変化量θ
CPを算出する(ステップS804)。
[数5]
θ
SP={atan(Q
SP(N)/I
SP(N))−atan(Q
SP(M)/I
SP(M))}/(N−M) ・・・(5)
[数6]
θ
CP={atan(Q
CP(N)/I
CP(N))−atan(Q
CP(M)/I
CP(M))}/(N−M) ・・・(6)
【0068】
誤差検出部22は、ステップS804にて算出した左端SP信号の偏角変化量θ
SP及び右端CP信号の偏角変化量θ
CPを、以下の式により、左端SP信号の中心周波数のずれ量ΔF
SP及び右端CP信号の中心周波数のずれ量ΔF
CPに変換する(ステップS805)。
[数7]
ΔF
SP=θ
SP/1.008e
-3/2/π ・・・(7)
[数8]
ΔF
CP=θ
CP/1.008e
-3/2/π ・・・(8)
ここで、1.008e
-3はOFDMシンボル長(sec)を示す。
【0069】
誤差検出部22は、以下の式により、ステップS805にて変換した左端SP信号の中心周波数のずれ量ΔF
SP及び右端CP信号の中心周波数のずれ量ΔF
CPを用いて、周波数誤差Δfc及びクロック誤差Δfclkを算出し、周波数誤差Δfcを狭帯域周波数誤差として狭帯域周波数誤差補正部15−2に出力し、クロック誤差Δfclkをクロック誤差補正部20−2に出力する(ステップS806)。
[数9]
Δfc=(ΔF
CP+ΔF
SP)/2 ・・・(9)
[数10]
Δfclk=(ΔF
CP−ΔF
SP)×8192/5616 ・・・(10)
ここで、FFTサイズを8192とし、サブキャリア本数を5617とする。これにより、周波数誤差Δfc及びクロック誤差Δfclkは、同時に算出される。
【0070】
ステップS806における前記数式(9)(10)について詳細に説明する。右端CP信号の中心周波数のずれ量ΔF
CPは、全てのキャリアにおける一定の周波数誤差Δfcと、FFT時のクロック誤差の成分とによって定まる。FFT時にはクロックは中央キャリアに合わせられており、右端CP信号は中央キャリアの位置から周波数が高い方向へ2808本目のキャリア位置にあることから、右端CP信号のクロック誤差の成分は、Δfclk×2808/8192となる。したがって、右端CP信号の中心周波数のずれ量ΔF
CPは、以下の式で表される。
[数11]
ΔF
CP=Δfc+Δfclk×2808/8192 ・・・(11)
【0071】
左端SP信号の中心周波数のずれ量ΔF
SPも、右端CP信号と同様に、全てのキャリアにおける一定の周波数誤差Δfcと、FFT時のクロック誤差の成分とによって定まる。また、左端SP信号は中心キャリアの位置から周波数が低い方向へ2808本目のキャリア位置にあることから、左端SP信号のクロック誤差の成分は、右端CP信号とは異なり負の値となり、Δfclk×(−2808)/8192となる。したがって、左端SP信号の中心周波数のずれ量ΔF
SPは、以下の式で表される。
[数12]
ΔF
SP=Δfc+Δfclk×(−2808)/8192 ・・・(12)
これにより、前記数式(11)(12)から前記数式(9)(10)が導出される。
【0072】
このように、実施例1の誤差検出部22におけるステップS801〜ステップS806の処理により、SP抽出部21−1により抽出されたSP信号及びCP信号のうち、左端SP信号及び右端CP信号を観測し、所定の計算シンボル数以上になった段階で、これらのSP信号及びCP信号について時間軸上で偏角を算出し、狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出するようにした。
【0073】
従来は、絶対値の周波数誤差を検出した後、周波数誤差の方向を判定するために、SP信号電力がピーク値となる計算シンボル数を求める等の複雑な処理が必要であった。これに対し、誤差検出部22は、SP信号等の偏角を時間軸上で観測し、その変化量から正負の方向を含む狭帯域周波数誤差を算出するようにしたから、従来よりも少ない計算量にて簡易な手法で、精度の高い狭帯域周波数誤差を算出することができる。また、従来は、時間軸上の加算処理及びガード相関処理によりクロック誤差を算出していたのに対し、誤差検出部22は、周波数軸上でシンボル加算によりパイロット信号を抽出し、抽出したパイロット信号の偏角を時間軸上で観測し、その変化量からクロック誤差を算出するようにした。これにより、従来よりも精度の高いクロック誤差を算出することができる。したがって、受信電力が低レベルであっても、精度の高い狭帯域周波数誤差及びクロック誤差が算出され、これらの誤差が補正されるから、OFDM波の信号を精度高く測定することが可能となる。つまり、受信電力、スペクトル及び遅延プロファイルを精度高く測定することが可能となる。
【0074】
以上のように、実施例1のOFDM波測定装置1によれば、広帯域周波数誤差検出部27は、キャリア毎に、FFT出力信号であるIQ信号を差動復調し、差動復調した信号とI軸との間の角度を算出し、算出した角度に基づいて、DBPSKで変調され毎シンボル同じキャリア位置に配置されているパイロット信号を累積処理することで、そのキャリア位置をキャリア単位で特定し、特定したパイロット信号のキャリア位置と当該パイロット信号の正しいキャリア位置との間の相関値を算出し、キャリア間隔以上の広帯域周波数誤差を検出するようにした。
【0075】
これにより、信号電力が熱雑音以下の低レベルであっても、DBPSKの変調方式にて変調され、毎シンボル同じキャリア位置に配置されたパイロット信号のキャリア位置をキャリア単位で特定することができ、キャリア間隔以上の広帯域周波数誤差を検出することができる。したがって、キャリア間隔以上の周波数誤差がある熱雑音以下の低レベルの信号においても、受信電力、スペクトル及び遅延プロファイルを精度高く測定することが可能となる。また、実施例1の誤差検出部22が狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出し、狭帯域周波数誤差補正部15−2及びクロック誤差補正部20−2がこれらを補正することで、受信電力、スペクトル及び遅延プロファイルを一層精度高く測定することが可能となる。
【0076】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。前述のとおり、実施例2は、IQ信号を差動復調してI軸との間の角度を算出し、差動変調され毎シンボル同じキャリア位置に配置されている広帯域周波数誤差検出用パイロット信号を累積処理することで、そのキャリア位置を特定し、キャリア間隔以上の広帯域周波数誤差を検出すると共に、周波数軸上でシンボルの同期加算により狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号を抽出し、抽出した狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号の中から振幅値の高い狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号を選択し、選択した狭帯域周波数誤差検出用パイロット信号の偏角を時間軸上で観測し、その変化量から、正負の方向を含む狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出する。
【0077】
実施例2によるOFDM波測定装置1は、
図1に示した実施例1によるOFDM波測定装置1と同じ構成であり、実施例1と同じ処理により広帯域周波数誤差を検出するが、実施例1の誤差検出部22とは異なる処理を行う。誤差検出部22以外の構成部は、実施例1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0078】
実施例2の誤差検出部22は、SP抽出部21−1からSP信号及びCP信号を入力すると共に、シンボル加算部18−2から同期加算の回数を示す計算シンボル数を入力し、予め設定された範囲A,B内で最も振幅値が高いSP1信号及びSP2信号をそれぞれ選択し、SP1信号及びSP2信号の1シンボルあたりの偏角変化量が安定する計算シンボル数以上になった段階で、選択したSP1信号及びSP2信号について時間軸上の偏角を算出し、狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出する。
【0079】
(誤差検出部)
次に、実施例2の誤差検出部22について詳細に説明する。
図9は、実施例2において選択されるSP1信号及びSP2信号を説明する図である。
図9に示すように、周波数軸上で、SP1信号が選択される範囲A及びSP2信号が選択される範囲Bが予め設定されている。ここで、SP1信号の中心周波数は、SP2信号の中心周波数よりも低いものとする。範囲A内の複数のSP信号のうち、最も振幅値が高いSP信号としてSP1信号が選択され、範囲B内の複数のSP信号のうち、最も振幅値が高いSP信号としてSP2信号が選択される。選択されたSP1信号が、周波数軸上の中心キャリアの位置から周波数が低い方向へa本目のキャリア位置の信号であり、SP2信号が、周波数軸上の中心キャリアの位置から周波数が高い方向へb本目のキャリア位置の信号であるとすると、SP1信号は、中心キャリアから周波数が低い方向へa×Δf(Hz)離れた位置にあり、SP2信号は、中心キャリアから周波数が高い方向へb×Δf(Hz)離れた位置にある。ここで、Δfはキャリア間隔の周波数を示す。
【0080】
例えば、周波数軸上でキャリアが配置されている周波数領域において、SP1信号が選択される範囲Aとして、最も周波数の低いSP信号を含む範囲であって、最も周波数の低いキャリア位置から1/4の範囲が予め設定され、SP2信号が選択される範囲Bとして、最も周波数の高いSP信号を含む範囲であって、最も周波数の高いキャリア位置から1/4の範囲が予め設定される。これにより、周波数が近い範囲A,Bが設定されている場合に比べ、SP1信号の中心周波数とSP2信号の中心周波数とが離れることになり、偏角の差が大きくなるから、精度の高い狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を算出することができる。
【0081】
図10は、実施例2による誤差検出部22の処理を示すフローチャートである。まず、誤差検出部22は、
図8に示したステップS801と同様に、SP抽出部21−1からSP信号及びCP信号を入力すると共に、シンボル加算部18−2から同期加算の回数を示す計算シンボル数を入力する(ステップS1001)。
【0082】
誤差検出部22は、入力した計算シンボル数から予め設定されたMシンボル目を判定すると、Mシンボル目において、予め設定された範囲A内の複数のSP信号について振幅値をそれぞれ算出し、最も振幅値が高いSP信号としてSP1信号(中心キャリアからa本目のキャリア、
図9を参照)を選択すると共に、予め設定された範囲B内の複数のSP信号について振幅値をそれぞれ算出し、最も振幅値が高いSP信号としてSP2信号(中心キャリアからb本目のキャリア)を選択する(ステップS1002)。
【0083】
尚、誤差検出部22は、予め設定されたMシンボル目よりも前のシンボルにおいて、前記と同様の処理により、SP1信号及びSP2信号を選択するようにしてもよい。
【0084】
誤差検出部22は、Mシンボル目において、ステップS1002にて選択したSP1信号のIQ値(I
SP1(M),Q
SP1(M))及びSP2信号のIQ値(I
SP2(M),Q
SP2(M))をメモリに格納する(ステップS1003)。そして、誤差検出部22は、入力した計算シンボル数から予め設定されたN(>M)シンボル目を判定すると、ステップS1002にて選択した同じキャリア位置のSP1信号のIQ値(I
SP1(N),Q
SP1(N))、及び同じキャリア位置のSP2信号のIQ値(I
SP2(N),Q
SP2(N))をメモリに格納する(ステップS1004)。
【0085】
誤差検出部22は、メモリから、Mシンボル目のSP1信号のIQ値(I
SP1(M),Q
SP1(M))及びSP2信号のIQ値(I
SP2(M),Q
SP2(M))、並びに、Nシンボル目のSP1信号のIQ値(I
SP1(N),Q
SP1(N))及びSP2信号のIQ値(I
SP2(N),Q
SP2(N))を読み出し、以下の式により、これらのIQ値を用いて、SP1信号における1シンボルあたりの偏角変化量(回転量)θ
SP1及びSP2信号における1シンボルあたりの偏角変化量θ
SP2を算出 する(ステップS1005)。
[数13]
θ
SP1={atan(Q
SP1(N)/I
SP1(N))−atan(Q
SP1(M)/I
SP1(M))}/(N−M) ・・・(13)
[数14]
θ
SP2={atan(Q
SP2(N)/I
SP2(N))−atan(Q
SP2(M)/I
SP2(M))}/(N−M) ・・・(14)
【0086】
誤差検出部22は、ステップS1005にて算出したSP1信号の偏角変化量θ
SP1及びSP2信号の偏角変化量θ
SP2を、以下の式により、SP1信号の中心周波数のずれ量ΔF
SP1及びSP2信号の中心周波数のずれ量ΔF
SP2に変換する(ステップS1006)。
[数15]
ΔF
SP1=θ
SP1/1.008e
-3/2/π ・・・(15)
[数16]
ΔF
SP2=θ
SP2/1.008e
-3/2/π ・・・(16)
ここで、1.008e
-3はOFDMシンボル長(sec)を示す。
【0087】
誤差検出部22は、以下の式により、ステップS1006にて変換したSP1信号の中心周波数のずれ量ΔF
SP1及びSP2信号の中心周波数のずれ量ΔF
SP2を用いて、周波数誤差Δfc及びクロック誤差Δfclkを算出し、周波数誤差Δfcを狭帯域周波数誤差として狭帯域周波数誤差補正部15−2に出力し、クロック誤差Δfclkをクロック誤差補正部20−2に出力する(ステップS1007)。
[数17]
Δfc=(a×ΔF
SP2+b×ΔF
SP1)/(a+b) ・・・(17)
[数18]
Δfclk=(ΔF
SP2−ΔF
SP1)×8192/(a+b) ・・・(18)
ここで、FFTサイズを8192とし、サブキャリア本数を5617とする。これにより、周波数誤差Δfc及びクロック誤差Δfclkは、同時に算出される。
【0088】
ステップS1007における前記数式(17)(18)について詳細に説明する。SP1信号の中心周波数のずれ量ΔF
SP1は、全てのキャリアにおける一定の周波数誤差Δfcと、FFT時のクロック誤差の成分とによって定まる。FFT時にはクロックは中央キャリアに合わせられており、SP1信号は中心キャリアの位置から周波数が低い方向へa本目のキャリア位置にあることから、SP1信号のクロック誤差の成分は、Δfclk×(−a)/8192となる。したがって、SP1信号の中心周波数のずれ量ΔF
SP1は、以下の式で表される。
[数19]
ΔF
SP1=Δfc+Δfclk×(−a)/8192 ・・・(19)
【0089】
SP2信号の中心周波数のずれ量ΔF
SP2も、SP1信号と同様に、全てのキャリアにおける一定の周波数誤差Δfcと、FFT時のクロック誤差の成分とによって定まる。また、SP2信号は中心キャリアの位置から周波数が高い方向へb本目のキャリア位置にあることから、SP2信号のクロック誤差の成分は、SP1信号とは異なり正の値となり、Δfclk×b/8192となる。したがって、SP2信号の中心周波数のずれ量ΔF
SP2は、以下の式で表される。
[数20]
ΔF
SP2=Δfc+Δfclk×b/8192 ・・・(20)
これにより、前記数式(19)(20)から前記数式(17)(18)が導出される。
【0090】
このように、実施例2の誤差検出部22におけるステップS1001〜ステップS1007の処理により、SP抽出部21−1により抽出されたSP信号であって、所定範囲A,B内のSP信号のうち最も振幅値が高いSP1信号及びSP2信号をそれぞれ選択し、選択したSP1信号及びSP2信号を観測し、所定の計算シンボル数以上になった段階で、これらのSP1信号及びSP2信号について時間軸上で偏角を算出し、狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出するようにした。これにより、受信状態の良いSP1信号及びSP2信号を用いて狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を算出するようにしたから、実施例1の効果に加え、受信したOFDM信号が、特定の周波数においてキャリアの振幅値が低い、いわゆるマルチパス等を含む場合であっても、OFDM波の信号を精度高く測定することが可能となる。つまり、受信電力、スペクトル及び遅延プロファイルを精度高く測定することが可能となる。
【0091】
以上のように、実施例2のOFDM波測定装置1によれば、実施例1と同様に、パイロット信号のキャリア位置をキャリア単位で特定することができ、キャリア間隔以上の広帯域周波数誤差を検出することができる。したがって、キャリア間隔以上の周波数誤差がある熱雑音以下の低レベルの信号においても、受信電力、スペクトル及び遅延プロファイルを精度高く測定することが可能となる。また、実施例2の誤差検出部22が狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出し、狭帯域周波数誤差補正部15−2及びクロック誤差補正部20−2がこれらを補正することで、受信電力、スペクトル及び遅延プロファイルを一層精度高く測定することが可能となる。
【0092】
以上、実施例1,2を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1,2に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。前記実施例1,2では、OFDM波測定装置1の広帯域周波数誤差検出部27は、DBPSKで変調され毎シンボル同じキャリア位置に配置されているパイロット信号のキャリア位置をキャリア単位で特定するようにしたが、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying:差動4相位相変調)で変調され毎シンボル同じキャリア位置に配置されているパイロット信号のキャリア位置を特定するようにしてもよい。この場合、OFDM波測定装置1が受信するOFDM波には、当該OFDM波を送信する送信装置がDQPSKの変調方式にて変調して毎シンボル同じキャリア位置に配置したパイロット信号が含まれるものとする。本発明では、差動復調した信号とI軸との間の角度に基づいて、パイロット信号のキャリア位置をキャリア単位で特定するために、当該パイロット信号は差動変調されていればよい。
【0093】
また、本発明は、前記実施例1,2の他、パイロット信号に基づいてOFDM信号を測定するOFDM波測定装置であれば適用することができる。例えば、特許文献3の
図1〜
図4に記載されたOFDM波測定装置にも適用がある。具体的には、OFDM波測定装置は、特許文献3の
図1〜
図4において、本発明と同様に、周波数誤差補正部(狭帯域周波数誤差補正部)の後段に、広帯域周波数誤差補正部26、シンボル切出部16−4、FFT部17−4及び広帯域周波数誤差検出部27を備えるように構成される。
【0094】
また、前記実施例1,2による誤差検出部22では、SP信号及びCP信号、またはSP信号を用いて狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出するようにしたが、SP信号及びCP信号以外のパイロット信号を用いるようにしてもよい。例えば、実施例2による誤差検出部22は、予め設定された範囲A(周波数の低い領域)内で複数のSP信号から最も振幅値の高いSP信号を選択し、予め設定された範囲B(周波数の高い領域)内で複数のSP信号から最も振幅値の高いSP信号を選択するようにしたが、範囲B内で複数のSP信号及びCP信号から最も振幅値の高いSP信号またはCP信号を選択するようにしてもよい。
【0095】
また、実施例1による誤差検出部22は、異なる2つのSP信号及びCP信号を用いて狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出するようにしたが、異なる2つのSP信号を用いるようにしてもよいし、異なる3つ以上のSP信号等を用いるようにしてもよい。また、実施例2による誤差検出部22は、異なる2つのSP信号等を用いて狭帯域周波数誤差及びクロック誤差を検出するようにしたが、異なる3つ以上のSP信号等を用いるようにしてもよい。例えば、実施例1,2による誤差検出部22は、2本のSP信号の組み合わせにより第1の周波数誤差及びクロック誤差を検出し、他の2本のSP信号の組み合わせにより第2の周波数誤差及びクロック誤差を検出し、検出した第1の周波数誤差及びクロック誤差と第2の周波数誤差及びクロック誤差からそれぞれの中央値を求め、周波数誤差の中央値を狭帯域周波数誤差として狭帯域周波数誤差補正部15−2に出力し、クロック誤差の中央値をクロック誤差補正部20−2に出力するようにしてもよい。また、2本のSP信号についての3組以上の組み合わせについて、それぞれの周波数誤差及びクロック誤差を検出し、これらの平均値を求めて狭帯域周波数誤差補正部15−2及びクロック誤差補正部20−2にそれぞれ出力するようにしてもよい。
【0096】
尚、OFDM波測定装置1のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。OFDM波測定装置1は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。OFDM波測定装置1に備えた直交復調部13、誤差検出部14、狭帯域周波数誤差補正部15−1,15−2、シンボル切出部16−1,16−2,16−3,16−4、FFT部17−1,17−2,17−3,17−4、シンボル加算部18−1,18−2,18−3、SPパターン検出部19、クロック誤差補正部20−1,20−2、SP抽出部21−1,21−2、誤差検出部22、受信電力算出部23、スペクトル算出部24、遅延プロファイル算出部25、広帯域周波数誤差補正部26及び広帯域周波数誤差検出部27の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0097】
また、
図1のOFDM波測定装置1に備えた周波数変換部11及びA/D変換部12以外の構成部、すなわち直交復調部13、誤差検出部14、狭帯域周波数誤差補正部15−1,15−2、シンボル切出部16−1,16−2,16−3,16−4、FFT部17−1,17−2,17−3,17−4、シンボル加算部18−1,18−2,18−3、SPパターン検出部19、クロック誤差補正部20−1,20−2、SP抽出部21−1,21−2、誤差検出部22、受信電力算出部23、スペクトル算出部24、遅延プロファイル算出部25、広帯域周波数誤差補正部26及び広帯域周波数誤差検出部27を備えた測定装置を構成することができる。この測定装置も、通常のコンピュータを使用することができ、前述のOFDM波測定装置1と同様に、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。この測定装置に備えた直交復調部13等の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0098】
この場合、
図1に示した周波数変換部11及びA/D変換部12を備えた受信装置は、受信アンテナにてOFDM信号を受信し、A/D変換部12により変換したデジタルのIF信号を受信OFDM信号データとしてメモリに格納する。そして、測定装置は、受信装置のメモリに格納された受信OFDM信号データをダウンロードし、または記憶装置を介して読み出すことで、受信OFDM信号データをメモリに格納する。そして、測定装置は、メモリから受信OFDMデータを読み出し、直交復調部13等の機能を記述したプログラムを実行する。これにより、受信装置にて受信したOFDM信号を、測定装置にて処理することができ、受信電力等を算出することができる。
【0099】
これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。