(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の電極と前記接地電極との間に複数の中間電極を提供でき、使用時に、前記複数の中間電極の各々に印加される電圧が、前記第1の電極から前記接地電極へ向けて低下する、請求項1に記載の静電クランプ。
前記第1の電極と前記少なくとも1つの中間電極が共通の電源を共用し、前記印加される電圧を前記第1の電極と前記少なくとも1つの中間電極とに振り分ける抵抗回路網が提供される、請求項1から4のいずれか一項に記載の静電クランプ。
前記クランプが、2つ目の第1の電極と、前記2つ目の第1の電極と前記接地電極との間に位置する少なくとも1つの第2の中間電極と、をさらに備えるバイポーラクランプであり、
使用時に、前記2つ目の第1の電極と前記少なくとも1つの第2の中間電極が、それぞれ、前記第1の電極と第1の中間電極とに印加される電圧と符号が逆の第1の電圧と第2の電圧とに保持され、
前記第2の中間電極に印加される第2の電圧が、前記2つ目の第1の電極に印加される前記第1の電圧とグランドとの間にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の静電クランプ。
前記半導体製造装置が、リソグラフィ装置、レチクル検査装置、ウェーハ検査装置、及び空間像メトロロジー装置のいずれかである、請求項10に記載の半導体製造装置。
【背景技術】
【0003】
[003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板のターゲット部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。この場合、代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが与えられる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。
【0004】
[004] 従来のリソグラフィ装置は、パターン全体をターゲット部分に1回で露光することによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、基板を所与の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンを所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0005】
[005] 静電クランプはある種の波長、例えば、EUVで動作するリソグラフィ装置で使用できる。これは、この波長では、リソグラフィ装置のある領域が真空条件下で動作するからである。静電クランプを提供して、マスク又は基板(ウェーハ)などのオブジェクトをそれぞれマスクテーブル又はウェーハテーブルなどのオブジェクト支持体に静電気によってクランプすることができる。また、静電クランプ力を用いて静電クランプを両面モードで動作しているリソグラフィ装置のウェーハテーブルその他の部分にクランプすることができる。
【0006】
[006] 従来の静電クランプは、1つの電極又は複数の電極が上の(第1の)電極と下の(第2の)電極又は隔離層との間に配置されたスタックを備える。例えば、下層が研磨されている場合、各電極は上側の研磨面に配置される。次に、電極上に上層が配置される。上層と下層は接着される。各電極は複数の部分を含んでいてもよい。それらの電極部分のすべて又は幾つかは下層の全表面を覆う必要はない。場所によっては電極は存在しない。電極又は電極の部分間の領域にはバリア(誘電体又は絶縁)層を充填してもよく、又は空けておいてもよい。
【0007】
[007] 電極は異なる電圧、例えば、+3kV及び0V、又は+3kV及び−3kVで駆動でき、その結果、異なる電極間に電場が形成される。電極間のバリアには3kV以上の電圧が掛かることがある。例えば、隣接する電極が+3kV及び−3kVで駆動されたとすると、電極間のバリアには6kVの電位差が掛かる。
【0008】
[008] バリアが耐えられる電圧レベルはそのクランプ性能で表されるファクタである。電極間のバリアが障害になり、電極間の放電とクランプ力の低下を引き起こす障害の仕組みが存在する。クランプ力がいくらかでも低減すれば、静電クランプの性能に大きな影響があり、その結果、リソグラフィシステムのスループットが低減し、集積回路の出力が低減する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0026]
図1は、本発明のある実施形態によるリソグラフィ装置100を概略的に示したものである。この装置は、放射ビームB(例えばUV放射、又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続された支持構造又は支持体又はパターン支持体(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ以上のダイを含む)に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSとを含む。
【0020】
[0027] 照明システムは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気型等の光学コンポーネント、又はそれらの任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0021】
[0028] 支持構造はパターニングデバイスを保持する。支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。支持構造は機械式、真空式、静電式又はその他のクランプ技術を用いてパターニングデバイスを保持でき、以下に詳述するように、本発明は静電クランプに関する。支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
【0022】
[0029] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0023】
[0030] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
【0024】
[0031] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折型光学システム、反射型光学システム、反射屈折型光学システム、磁気型光学システム、電磁気型光学システム及び静電気型光学システム、又はそれらの任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
【0025】
[0032] 支持構造及び基板テーブルをこれ以後物品支持体と呼ぶ。物品は、これに限定されないが、レチクルなどのパターニングデバイスと、ウェーハなどの基板とを含む。
【0026】
[0033] 本明細書に示すように、装置は反射型(例えば、反射マスクを使用する)である。あるいは、装置は透過型(例えば、透過マスクを使用する)であってもよい。
【0027】
[0034] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルを並行して使用するか、1つ以上の他のテーブルを露光に使用している間に1つ以上のテーブルで予備工程を実行することができる。
【0028】
[0035] また、リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆えるタイプでもよい。液浸液はまた、例えばマスクと投影システムの間などのリソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させる技術として当技術分野で周知である。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムと基板の間に液体が存在するというほどの意味である。
【0029】
[0036]
図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを含むビームデリバリシステムを用いて、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の場合には、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0030】
[0037] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するアジャスタを含んでいてもよい。通常、イルミネータの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調整することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータ及びコンデンサなどの他の種々のコンポーネントを含んでいてもよい。イルミネータを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0031】
[0038] 放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)に入射し、パターニングデバイスMAによってパターニングされる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAに反射した後、放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2のポジショナPWと位置センサIF2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)を用いて、基板テーブルWTは、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めできるように正確に移動できる。同様に、第1のポジショナPMと別の位置センサIF1を用いて、例えば、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えば、マスク)MAを正確に位置決めできる。一般に、支持構造(例えば、マスクテーブル)MTの移動は、第1のポジショナPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現できる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、支持構造(例えば、マスクテーブル)MTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。パターニングデバイス(例えば、マスク)MA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に位置してもよい(スクライブレーンアライメントマークとして知られている)。同様に、パターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0032】
[0039] 図示の装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
1.ステップモードでは、パターニングデバイス(例えば、マスクテーブル)MT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で像が形成されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
2.スキャンモードでは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。支持構造(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
3.別のモードでは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に適用できる。
【0033】
[0040] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0034】
[0041]
図2は、レチクル又はウェーハなどの物品の縁部に印加できる従来技術の静電クランプ1の部分断面図である。また
図2は図の矢印によってクランプが生成できるクランプ圧力を示す。クランプ1は絶縁材料から形成された下部3と、誘電体材料から形成された上部4とを備える。上部4は複数のバール5から形成され、それによって、バールの最上部が物品(図示せず)が保持される平面2を決定する。第1の電極6が下部3と上部4との間に提供され、第1の電極6は静電クランプ力を生成する電圧(通常は3kV)に保持されるように構成されている。接地電極7はグランドに保持され、第1の電極と接地電極との間のバリアの役割を果たす空隙8の分だけ第1の電極6から離間している。空隙8には絶縁材料、誘電体材料を充填してもよく、又は空けておいてもよい。
【0035】
[0042]
図2の下向きの矢印は
図2の従来のクランプが生成できるクランプ圧力を概略的に示す。矢印の長さはクランプ力を示し、その大きさが、以下に説明するように、印加される電圧、上部4の誘電率、及びクランプ1の様々な部分の寸法を含む幾つかのパラメータに依存する均一なクランプ圧力が第1の電極の幅一杯に生成されることが分かる。
【0036】
[0043] 電極6に電圧が印加されると、物品が静電クランプ力によって平面2内に保持される。以下の式に従って静電又は静電容量クランプ力を印加電圧に関連付けることができる。
【数1】
上式で、
P
clampは、クランプするオブジェクト上に作用するクランプ圧力、
ε
0は、真空の誘電率(8.854×10
−12)、
ε
Rは、クランプ1の上部4の誘電体の比誘電率、
Vは、電極6に印加される電圧、
dは、クランプ1の上部4の厚さ、
gは、クランプ1の上部4の上面とオブジェクトがクランプされる平面2との間のギャップ(バール5の高さ)。
【0037】
[0044] 真空と比較してバールの誘電率は大きく、この領域での静電容量も増加するため、クランプ圧力はバールの領域で増加することを理解されたい。バールの領域では、式(1)が成り立つが、厚さdはバールの高さだけ増加し、ギャップgは同じ量だけゼロまで低減する。
【0038】
[0045] 上記の従来技術の潜在的な問題とは、バリア8の両端に高電圧(例えば、3kV)が存在し、このためにバリアが破壊され、第1の電極と接地電極との間に短絡が発生する可能性があるということである。
【0039】
[0046]
図3は、
図2と同様の図であるが、本発明のある実施形態によるクランプΓを示す。同様のコンポーネントは説明を省略する。
図3の実施形態では、第2の電極6bが第1の電極6aと接地電極7との中間に提供されている。中間電極と呼んでもよい第2の電極6bは、第1の電極6aに印加される電圧とグランドとの間の電圧に保持され、特に第1の電極6aの電圧のほぼ半分の値に保持されるのが望ましい。
図3の構造の場合、2つのバリア8a、8bが存在する。すなわち、第1及び第2の電極6a、6bの間に位置する第1のバリア8aと、第2の電極6bと接地電極7との間に位置する第1のバリア8bである。
図2と同様、下向きの矢印はクランプ圧力を示し、また
図2と同様、第1の電極6aが加える均一なクランプ圧力が存在し、さらに第2の電極6bが加えるこれよりも小さいクランプ圧力が存在する。第2の電極6bが第1の電極6aの電圧の半分の電圧に保持される場合、クランプ圧力は電圧の二乗によって決まるため、第2の電極6bによるクランプ圧力は第1の電極によるクランプ圧力の4分の1になる。
【0040】
[0047]
図2の従来の構造と比較した場合の
図3の実施形態の潜在的な利点は、第2の電極6bが第1の電極の電圧とグランドとの間の電圧に保持されるため、各バリア8a、8bの両端の電圧が低下するという点である。特に、例えば、第2の電極が第1の電極の電圧とグランドとの間の中間の電圧に保持される場合、各バリアの両端の電圧は
図2の半分になる。
【0041】
[0048]
図4は、従来技術で公知のクランプの別の形態を示す。
図4のクランプはバイポーラクランプとして知られており、等しいが符号が逆の電圧に保持される2つの第1の電極16a、16bを備える(例えば、電極16aは+3kV、電極16bは−3kVに保持される)。この点を除けば、2つの第1の電極16a、16bは同一であり、
図2の従来技術のクランプと同様、各電極はその幅全体にわたって均一なクランプ圧力を生成する。しかしながら、
図4のクランプでは、バリアの破壊の可能性という潜在的な問題はさらに深刻であり得る。
図4のクランプでは、2つの第1の電極16a、16bは単一のバリア18によって隔てられ、2つの第1の電極は等しいが符号が逆の電圧に保持されるため、バリアの両端の電位は各電極に個別に印加される電圧の2倍になる(例えば、各電極が+3kVと−3kVに保持される場合、6kVである)。
【0042】
[0049]
図5は、本発明によるバイポーラクランプ1’’のある実施形態を示す図である。この実施形態では、2つの第1の電極16a、16bに加えて、2つの第1の電極16a、16bと、それぞれ2つの第1の電極16a及び接地電極17の間と2つ目の第1の電極16b及び接地電極17bの間に配置された2つの第2の電極又は中間電極16c、16dとから等距離に位置する接地電極17が提供されている。この構造は4つのバリア18a、18b、18c、18dを画定する。バリア18aは電極16aと16cとの間に位置し、バリア18bは電極16bと接地電極17との間に位置し、バリア18cは接地電極17と電極16dとの間に位置し、最後に、バリア18dは電極16dと16bとの間に位置する。
【0043】
[0050] 電極16c及び16dはそれぞれ電極16a及び16bの電圧と符号が同じであるがそれらの電圧力とグランドとの間の大きさの電圧に保持されている。例えば、電極16aが+3kVに保持されている場合、16cは+1.5kVに保持されていてもよい。電極16bが−3kVに保持されている場合、16dは−1.5kVに保持されていてもよい。したがって、4つのバリア18a、18b、18c、18dの各々の両端の電位は
図4の従来の構造内のバリア18の両端の6kVと比較してわずかに+1.5kVであることが理解される。
【0044】
[0051]
図5の実施形態では、第2の電極16c、16dは図のより小さい矢印で示すように小さいクランプ圧力を加えることに留意されたい。
【0045】
[0052]
図6は、本発明のある実施形態による静電クランプの部分断面図(
図7のX−X’に沿った)である。
図6の実施形態では、静電クランプ21は、使用時に、ほぼ固定された平面22内に物品を保持するように構成され、複数のバールから形成され、それによって、バールの最上部が物品が保持される平面22を決定するバール25を有する下部23と上部24とを含む。第1の電極26aはクランプの下部23と上部24との間に配置されている。第2の電極26b及び接地電極27はクランプ21の下部23と上部24との間に配置されているが、それらが互いに又は第1の電極26aに接触しないように下部23と上部24との界面に沿って変位している。第1及び第2の電極26a、26bの間と第2の電極26bと接地電極27との間のバリアを画定する空隙28a、28b、28cには絶縁又は誘電体材料を充填してもよく、又は空けておいてもよい。
【0046】
[0053] 少なくとも第1の電極26aに電圧を供給するように構成された電圧源30を提供してもよい。第1及び第2の電極26a、26bを互いに接続するように抵抗器31を構成してもよい。第2の電極26bを接地電極27に接続するように別の抵抗器32を構成してもよい。アース接続33を提供することで接地電極27を接地することができる。
【0047】
[0054] 第1の電極26aの電圧は電圧源30によって供給される電圧とほぼ同様であることを理解されたい。第2の電極26bの電圧は以下の式に記述するように第1の抵抗器31と第2の抵抗器32の抵抗値の比によって定義される。
【数2】
上式で、
V
2は、第2の電極26bの電圧、
R
2は、第2の抵抗器32の抵抗値、
Riは、第1の抵抗器31の抵抗値、
V
Sは、電圧源30によって供給される電圧。
【0048】
[0055] 本発明のある実施形態では、第1の抵抗器31と第2の抵抗器32の抵抗値はほぼ同じである。抵抗値R
1とR
2が同様であれば、電圧V
2は供給電圧V
Sのほぼ半分となる。抵抗値が上記の通りであれば、第1の電極26aと第2の電極26bとの間の電圧(V
S−V
2)は電圧源30によって供給される電圧のほぼ半分になる。第2の電極26bと第3の電極27との間の電圧も電圧源30によって供給される電圧のほぼ半分になる。
【0049】
[0056] 中間電極(ここでは第2の電極26b)を導入することで、任意の2つの電極間のバリア28には第1の電極26aに印加される電圧の半分の電圧が掛かることを理解されたい。任意のバリアがその2倍分耐える必要がある最大電圧を低減することで、バリアすなわちクランプの破壊障害の危険が大幅に低下する。
【0050】
[0057]
図7は、本発明のある実施形態によるクランプ21の平面図を示し、その一部が
図6の断面図に示されている。
図7のクランプ21は2極型で、
図6に示すその部分断面図はクランプの片側の半分、特に
図7に示すクランプの左側のみを示している。
図7の右側の図は以下に説明するように各電極に印加される電圧の符号だけが異なる同一の鏡像である。
図7の左側の電極には正電圧が、図の右側の電極には負電圧が供給される。
【0051】
[0058] まず
図7の左側を見ると、第1の電極26aが電圧源30に接続され、図では、アース接続33に対して正の電圧が供給されるように示されている。第2の電極26bは第1の電極26aを取り囲み、式(2)によって記述される第1及び第2の抵抗器(31,32)の電圧比に従ってより小さい正の電圧を供給され、第1の電極26aと第2の電極26bとの間のバリア28aには第1及び第2の電極(26a,26b)の電圧差が掛かる。接地電極27は第2の電極26bを取り囲み、アース接続33に接続される。第2の電極26bと接地電極27との間のバリア28bには第2の電極と接地電極(26b,27)との電圧差が掛かる。
【0052】
[0059] 第1の電極26aは145mmと35mmの寸法を有していてもよい。第2の電極26bの幅は0.1mmと1mmとの間、例えば、0.3mm(第1の電極の幅の約1%)であってもよく、
図7に示すように、第1の電極26aを取り囲んでいてもよい。考えられることとして、第2の電極の幅はレチクルクランプ内の5mm又は10mmのバール又はバールのピッチの幅と同じであってもよい。第1の電極26aと第2の電極26bとの間のバリア28aは幅が0.7mmであってもよく、第2の電極26bと接地電極27との間のバリア28bも同様の寸法を有していてもよい。しかしながら、これらの寸法は例示的なものに過ぎず、具体的な用途に応じて変化してもよい。抵抗器の通常の値は300メガオーム前後である。約3kVの電圧が330メガオームの3つの抵抗器によって分割された場合、得られる電流は1μA、抵抗器の散逸は1mWである。
【0053】
[0060] 抵抗器の選択は高速での切替の効果を考慮して行なうことができる。できるだけ大型の抵抗器を使用して電流を低下させて電力の散逸を低減することが有益であるが、大型の抵抗器の場合、応答時間が長くなる。例えば、上記の寸法の第2の電極26bは約(145+145+35+35)×0.3mm
2、又は108mm
2の領域を占める。幾何形状静電容量、すなわち、単位面積あたりの静電容量は次の式で得られる。
【数3】
上式で、
C
Aは単位面積あたりの静電容量。
その他のすべての記号は式(1)に関連する上記の通常の意味を有する。
【0054】
[0061] 誘電体の厚さ(d)を50μm、相対絶縁耐力(ε
R)を5、バールの高さ(g)を20μmとすると、単位面積あたりの静電容量(C
A)は30pF/cm
2である。この領域の電極は約32pFの静電容量を有する。
【0055】
[0062] 電圧に応じて電極を切り替える際に、抵抗器32の抵抗値が電極の静電容量と結合してRC時定数を生成することを理解されたい。RC時定数は電極電圧を変更する際の速度を制限する定数である。この立ち上がり時間は0.1s未満、望ましくは0.01s未満である必要がある。上記のように32pFの電極静電容量を使用した場合、330メガオームの抵抗値であるとRC時定数は約0.01sになる。
【0056】
[0063]
図7の右側は左側の鏡像であり、2つ目の第2の電極26dによって取り囲まれた2つ目の第1の電極26cを示し、第2の電極26dは接地電極27によって取り囲まれている。電極26c及び26dの間にバリア28cが画定され、電極26dと接地電極27との間にバリア28dが画定されている。電極26cには第2の電圧源36によって電圧が供給され、電極26dには抵抗器37と38との組み合わせによって電圧が供給される。抵抗器37と38の抵抗値の比が式(2)に記述するように電極26dに供給される電圧を定義する。電源30が電極26a、26bに正の電圧を供給する場合、電源36は電極26c、26dに負の電圧を提供する。
【0057】
[0064]
図8は、平面22内でクランプされる物品に作用するクランプ圧力を示す図である。第1の電極26aによって第1のクランプ圧力Piが掛けられる。第2の電極26bによって第2のクランプ圧力P
2が掛けられる。クランプ圧力の大きさは式(1)から得られる。したがって、第1及び第2の抵抗器(31、32)の抵抗値がほぼ等しい場合、第1の電極26aの電圧は第2の電極26bの電圧の2倍になる。第1の電極26aによって掛けられる結果としてのクランプ圧力Piは第2の電極26bによって掛けられる結果としてのクランプ圧力P
2の4倍になる。右側が鏡像であるため、同一のクランプ圧力が形成される。例えば、電極26cはクランプ圧力P
3を生成し、電極26dはクランプ圧力P
4を生成する。クランプの正の側と負の側が印加電圧の符号以外同一であるとすると、PiはP
3に等しく、P
2はP
4に等しい。
【0058】
[0065] クランプ24の上部とバール25の最上部との距離は50μmと1000μmとの間であってもよいが、この寸法はいかなる具体的な用途に応じて選択できることが理解される。
【0059】
[0066]
図6には2つのバール25しか示していないが、一般に複数のバールを使用できることを理解されたい。
【0060】
[0067] この実施形態に示すクランプは一般に矩形であり、したがって、レチクル用のクランプとして特に好適であることが特に
図7から分かる。本発明の各実施形態はウェーハ用の静電クランプに等しく適用できる。ウェーハ用のクランプは通常円形であり、したがって、第1の電極26a及び26cは一般に半円形であり、第2の電極26b、26dはD字形であり、接地電極27は円形である。あるいは、その各々が円の一部である複数の第1の電極が提供される別の構造を想像してもよい。
【0061】
[0068] 第2の電極26b、26dは、それらが第1の電極26a、26cの電圧とグランドとの間の中間の電圧に保持されるという点で中間電極と考えることができる。単一の中間電極が提供される場合、この中間電極は第1の電極と接地電極の中間の電圧に保持され、各バリアの両端の電位が等しくなることが望ましい。しかしながら、第1の電極と接地電極の間にそのような中間電極を2つ以上提供することも可能である。例えば、第1の電極と接地電極との間に3つのバリアがあるように2つの中間電極を設けてもよい。その場合、すべてのバリアにわたって電位を等しく分割するために、第1の電極の近位側の中間電極を第1の電極の電圧の3/4に保持し、第2の中間電極(接地電極の近位側の)を第1の電極の電圧の1/2に保持してもよい。一般に、異なる電圧を間に段階的に印加して複数の中間電極を使用して、形成されるバリアすべてにわたって等しい電位を生成することができることを理解されたい。
【0062】
[0069] 複数のバリアの存在によって電極が利用可能な領域が低減し、総クランプ力が低減することが理解される。しかしながら、これは、クランプ圧力が電圧の二乗の関数であると想定すれば大幅に増加させる必要がない供給電圧をわずかに増加させることで補償できる。
【0063】
[0070] 原則として、各電極には必要な電圧を証明するために専用の電源を設けてもよいが、そのような構造は複雑で追加の高電圧増幅器を要し、不必要に高価である。したがって、望ましくは、そのすべてに同じ符号の電圧を供給する複数の電極を単一の電源に接続し、各電極に電源を振り分ける抵抗回路網を設けてもよい。そのような構造は正確な電圧制御という利点がある。例えば、ソフトウェアエラーの可能性がなく、簡単で低コストである。抵抗器の1つはリアルタイムの制御及び調整を可能にする可変抵抗器であってもよい。
【0064】
[0071] 本発明の幾つかの実施形態では、すべてに同じ符号の電圧が供給される複数の電極グループがあってもよい。そのような構造では、電極の各グループに専用の電源とグループ内の電極に電圧を振り分ける専用の抵抗回路網とを提供することが望ましい。
【0065】
[0072] また、電極間にクランプ電圧を等分する形態のみ図示しているが、不均一な分割も使用できる。これによって、クランプ圧力を制御して均一なクランプ圧力ではなく整形されたクランプ圧力を提供することができる。例えば、クランプ縁部での圧力勾配を整形して特に、例えば、支持される物品に突起部があって縁部での圧力勾配を制御して物品への損傷の危険を最小限に抑え、及び/又は縁部の平坦度を最適化することが望ましい場合に有益な効果を与えることができる。
【0066】
[0073] 以上の説明で、グランドと接地電極とに言及した。しかしながら、1つの接地電極が特に望ましいが、1つの電極を固定電圧に保持し、第1の電極に電圧を印加し、その固定電圧に対して中間電極を決定してもよいことに留意されたい。
【0067】
[0074] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。このような代替的用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0068】
[0075] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は文脈によってはその他の分野、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組合せを印加することでレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0069】
[0076] 本明細書では静電クランプに特に言及しているが、本明細書に記載する静電クランプは、レチクル検査装置、ウェーハ検査装置、空間像メトロロジーシステム、及びより一般的にはウェーハ又はレチクルなどの物品をプラズマエッチャー又は析出装置内などの真空又は周囲(非真空)条件下で測定又は処理する半導体製造システム又は装置内での使用などの別の用途を有していてもよいことを理解されたい。
【0070】
[0077] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、355nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極紫外線(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を包含する。
【0071】
[0078] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気及び静電気型光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はそれらの組合せを指すことができる。
【0072】
[0079] 上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。