特許第6152013号(P6152013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152013
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170612BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 B
   H01L21/304 631
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-169245(P2013-169245)
(22)【出願日】2013年8月16日
(65)【公開番号】特開2015-37172(P2015-37172A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−152967(JP,A)
【文献】 特開2013−021114(JP,A)
【文献】 特開2013−008831(JP,A)
【文献】 特開2012−104780(JP,A)
【文献】 特開2008−016486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の方向に延びる複数の第一の分割予定ラインと、前記第一の分割予定ラインと交差する方向に延びる複数の第二の分割予定ラインとが表面に設定されたウェーハを薄化するとともに前記分割予定ラインに沿って分割し所定の仕上げ厚みのチップを複数形成するウェーハの加工方法であって、
前記ウェーハの前記表面側に保護部材を貼着し、前記保護部材を介してチャックテーブルの保持面に前記ウェーハを保持する保持ステップと、
前記保持ステップの後に、前記ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザ光線の集光点を前記ウェーハ内部のチップの仕上げ厚みに至らない領域に位置付けた状態で、前記ウェーハの裏面側から前記レーザ光線を前記分割予定ラインに沿って照射し、前記ウェーハ内部の前記チップの前記仕上げ厚みよりも前記裏面側に前記分割予定ラインに沿った分割起点改質層を形成する改質層形成ステップと、
前記改質層形成ステップの途中に、前記第一の方向および前記第二の方向の前記分割予定ラインのそれぞれ1本以上で、前記レーザ光線の前記集光点を前記ウェーハ内部に位置付けた状態で、前記ウェーハの裏面側から前記レーザ光線を前記分割予定ラインに沿って前記ウェーハの厚さ方向に積み重ねるように複数回照射して分割用改質層を形成して、前記ウェーハの厚さ方向で当該ウェーハを分割する分割加工を施し、前記分割起点改質層の形成によって前記ウェーハに生じる反りを低減させる反り低減分割ステップと、
前記改質層形成ステップと前記反り低減分割ステップとの後に、前記ウェーハの裏面を研削して少なくとも前記分割起点改質層を起点に前記ウェーハを分割できる前記仕上げ厚みへと薄化し、前記分割起点改質層を除去して前記仕上げ厚みのチップを複数形成する研削ステップと、を備えたウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光線を照射して分割するウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面にデバイスが形成されたウェーハの分割予定ラインに沿って切削ブレードによりハーフカットした後、ウェーハの裏面を研削して所定の厚みの個々のチップを製造する、いわゆる先ダイシングが知られているが、切削ブレードによるハーフカットに代わり、切り代の狭小化やチップの抗折強度の向上が期待されるレーザ光線を用いてウェーハ内部に改質層を形成した後、ウェーハの裏面を研削して所定の厚みの個々のチップを製造する加工方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2012−32751号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなウェーハの加工方法では、ウェーハの内部に形成される改質層が膨張し、この改質層がウェーハの表面側に集中することから、ウェーハが反りやすかった。ウェーハが反った状態でレーザ光線を照射すると、レーザ光線の集光点に対するウェーハの厚さ方向の相対位置が変化することから、改質層を所定の位置に形成できず、改質層がウェーハの表面に偏ることがある。改質層がウェーハの表面に偏ると、ウェーハが所定の厚みになるまで裏面を研削しても、改質層がチップの側面に残存し、チップの強度が低くなってしまうことがある。また、反った状態のウェーハを研削装置のチャックテーブルに載置すると、吸引保持できない虞もある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ウェーハの反りを低減させることができるウェーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウェーハの加工方法は、第一の方向に延びる複数の第一の分割予定ラインと、前記第一の分割予定ラインと交差する方向に延びる複数の第二の分割予定ラインとが表面に設定されたウェーハを薄化するとともに前記分割予定ラインに沿って分割し所定の仕上げ厚みのチップを複数形成するウェーハの加工方法であって、前記ウェーハの前記表面側に保護部材を貼着し、前記保護部材を介してチャックテーブルの保持面に前記ウェーハを保持する保持ステップと、前記保持ステップの後に、前記ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザ光線の集光点を前記ウェーハ内部のチップの仕上げ厚みに至らない領域に位置付けた状態で、前記ウェーハの裏面側から前記レーザ光線を前記分割予定ラインに沿って照射し、前記ウェーハ内部の前記チップの前記仕上げ厚みよりも前記裏面側に前記分割予定ラインに沿った分割起点改質層を形成する改質層形成ステップと、前記改質層形成ステップの途中に、前記第一の方向および前記第二の方向の前記分割予定ラインのそれぞれ1本以上で、前記レーザ光線の前記集光点を前記ウェーハ内部に位置付けた状態で、前記ウェーハの裏面側から前記レーザ光線を前記分割予定ラインに沿って前記ウェーハの厚さ方向に積み重ねるように複数回照射して分割用改質層を形成して、前記ウェーハの厚さ方向で当該ウェーハを分割する分割加工を施し、前記分割起点改質層の形成によって前記ウェーハに生じる反りを低減させる反り低減分割ステップと、前記改質層形成ステップと前記反り低減分割ステップとの後に、前記ウェーハの裏面を研削して少なくとも前記分割起点改質層を起点に前記ウェーハを分割できる前記仕上げ厚みへと薄化し、前記分割起点改質層を除去して前記仕上げ厚みのチップを複数形成する研削ステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のウェーハの加工方法によれば、改質層形成ステップの前または途中に、第一の分割予定ラインおよび第二の分割予定ラインのそれぞれ1本以上に対して、ウェーハの厚さ方向で当該ウェーハを分割する分割加工を施すので、第一の分割予定ラインおよび第二の分割予定ラインのそれぞれにおいて、少なくとも1本の分割予定ラインに沿ってウェーハが分割される。このため、ウェーハの加工方法によれば、分割前のウェーハに対して分割後のウェーハの相対的な面積が小さくなり、分割起点改質層によるウェーハ内部の膨張の累積も小さくなるので、分割起点改質層の形成により生じるウェーハの反りを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るウェーハの加工方法の保持ステップの説明図である。
図2図2は、保持ステップによりチャックテーブルに保持されたウェーハの概略構成図である。
図3図3は、実施形態に係るウェーハの加工方法の改質層形成ステップの説明図である。
図4図4は、実施形態に係るウェーハの加工方法の反り低減分割ステップの説明図である。
図5図5は、ウェーハの内部に形成される分割起点改質層および分割用改質層の説明図である。
図6図6は、実施形態に係るウェーハの加工方法の研削ステップの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0010】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係るウェーハの加工方法の保持ステップの説明図である。図2は、保持ステップによりチャックテーブルに保持されたウェーハの概略構成図である。図3は、実施形態に係るウェーハの加工方法の改質層形成ステップの説明図である。図4は、実施形態に係るウェーハの加工方法の反り低減分割ステップの説明図である。図5は、ウェーハの内部に形成される分割起点改質層および分割用改質層の説明図である。図6は、実施形態に係るウェーハの加工方法の研削ステップの説明図である。
【0011】
本実施形態は、ウェーハの加工方法に関する。本実施形態に係るウェーハの加工方法は、図1に示すように、互いに交差する複数の第一の分割予定ラインS1と第二の分割予定ラインS2とが表面Waに設定され、第一の分割予定ラインS1と第二の分割予定ラインS2とで区画された領域の表面WaにデバイスWDが形成されたウェーハWの加工方法である。本実施形態に係るウェーハの加工方法は、保持ステップ、改質層形成ステップ、反り低減分割ステップおよび研削ステップを含んでいる。
【0012】
ここで、加工対象としてのウェーハWは、特に限定されないが、例えば、シリコン、ガリウムヒ素(GaAs)等を母材とする板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ、セラミック、ガラス、サファイア(Al)系の板状の無機材料基板、金属や樹脂等の板状の延性材料等、板状の各種加工材料である。ウェーハWは、図1に示すように、第一の分割予定ラインS1と第二の分割予定ラインS2とにより区画された領域に、例えば、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)等のデバイスWDが形成されている。ウェーハWは、粘着テープTを介して、環状フレームFに支持されている。粘着テープTは、ダイシングテープとも呼ばれ、ウェーハWの表面Waに貼着される保護部材である。
【0013】
第一の分割予定ラインS1と第二の分割予定ラインS2とは、ウェーハWの表面Waに形成された複数のデバイスWDに基づいて、ウェーハWの表面Waに予め設定されている。第一の分割予定ラインS1は、第一の方向Xに延びている。第二の分割予定ラインS2は、第一の分割予定ラインS1と交差する方向に延びており、本実施形態において、第二の方向Yに延びている。第一の分割予定ラインS1と第二の分割予定ラインS2とは、本実施形態において、互いに直交している。第一の分割予定ラインS1と第二の分割予定ラインS2とにより区画された領域は、本実施形態において、正方形である。
【0014】
(保持ステップ)
保持ステップは、図2に示すように、チャックテーブル11にウェーハWを吸引保持させるステップである。保持ステップは、図4に示すレーザ加工装置10により実施される。
【0015】
ここで、レーザ加工装置10は、図4に示すように、チャックテーブル11と、レーザ光線照射手段12と、撮像手段13と、図示しない移動手段と、を含んで構成されている。
【0016】
チャックテーブル11は、ウェーハWを吸引保持する時に環状フレームFの外周縁を挟んで固定する図示しないクランプを有している。チャックテーブル11は、図2に示すように、円盤状に形成され、上面が水平方向と平行に形成されている。チャックテーブル11は、図3に示すように、上面と面一に形成された保持面11aを有している。保持面11aは、ポーラスセラミックで構成され、図示しない真空吸引源と接続されている。
【0017】
レーザ光線照射手段12は、図4に示すように、ウェーハWに対してレーザ光線Lを照射するレーザヘッド12aと、図示しないレーザ光線発振手段を収容するケーシング12bと、を備えている。レーザヘッド12aは、チャックテーブル11に吸引保持されたウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザ光線Lを照射する。レーザヘッド12aは、レーザ光線Lの集光点PをウェーハW内部の厚さ方向に変えることができる。レーザヘッド12aは、図3に示すように、ウェーハW内部の分割予定ラインS1、S2上の所定の領域に集光点Pを位置付けてレーザ光線Lを照射することにより、ウェーハW内部の表面Wa側に分割起点改質層Ksを形成する。また、レーザヘッド12aは、図4に示すように、ウェーハ内部の表面Wa側から裏面Wb側にかけてウェーハの厚さ方向に集光点Pを積み重ねるように位置付けてレーザ光線Lを複数回照射することにより、複数の分割用改質層Kdを形成する。なお、本実施形態において、所定の領域は、ウェーハWの薄化に伴って当該ウェーハWが個々のチップに分割される厚みよりも裏面Wb側、すなわちチップの仕上げ厚みdよりも裏面Wb側となる領域であり、チップの仕上げ厚みdに至らない領域である。
【0018】
本実施形態において、分割起点改質層Ksは、図3に示すように、ウェーハW内部のチップの仕上げ厚みdに至らない領域内の表面Wa側の同じ深さにレーザ光線Lが照射されて形成されるものである。また、本実施形態において、分割用改質層Kdは、図5に示すように、ウェーハW内部のチップの仕上げ厚みdよりも表面Wa側から裏面Wb側にかけて、ウェーハWの厚さ方向に積み重ねるようにレーザ光線Lが照射されて形成されるものである。各改質層Ks、Kdは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態となった領域である。各改質層Ks、Kdは、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、および、これらの領域が混在した領域等である。
【0019】
撮像手段13は、例えば、可視光線および赤外線等を捕らえるCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを用いたカメラ等である。撮像手段13は、可視光線の他に、ウェーハWに対して透過性のある赤外線を照射する照射手段を含んでいる。撮像手段13は、ウェーハWの裏面Wb側から赤外線を照射することにより、ウェーハWの表面Wa側に設定された第一の分割予定ラインS1および第二の分割予定ラインS2を検出可能である。撮像手段13は、ウェーハWの裏面Wb側から撮像し、アライメント調整用画像データを生成する。
【0020】
移動手段は、チャックテーブル11をX軸方向に移動させ、レーザ光線照射手段12をY軸方向およびZ軸方向に移動させるものである。移動手段は、チャックテーブル11をその中心軸周りに回転させることも可能である。移動手段は、X軸方向にチャックテーブル11を移動させることで、レーザヘッド12aから照射されるレーザ光線Lを第一の分割予定ラインS1に沿って照射させる。なお、本実施形態において、X軸方向は、鉛直方向と直交する方向である。また、Y軸方向は、X軸方向および鉛直方向と直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向と直交する方向であり、鉛直方向である。
【0021】
このように構成されたレーザ加工装置10においては、フレームカセットからウェーハWが搬出され、図2に示すように、環状フレームFの粘着テープTを介して、チャックテーブル11の保持面11aにウェーハWの表面Wa側が載置される。次に、レーザ加工装置10においては、図示しない真空吸引源により、チャックテーブル11の保持面11aにウェーハWの表面Wa側が吸引保持される。
【0022】
図2に示すように、レーザ加工装置10により、環状フレームFの粘着テープTを介してチャックテーブル11の保持面11aにウェーハWの表面Waが吸引保持されると、保持ステップは終了する。
【0023】
(改質層形成ステップおよび反り低減分割ステップ)
改質層形成ステップは、図3に示すように、上記保持ステップの後に、第一の分割予定ラインS1および第二の分割予定ラインS2に沿った分割起点改質層Ksを形成するステップである。反り低減分割ステップは、改質層形成ステップの途中に、ウェーハWの中心を通る分割予定ラインS1、S2に沿ってウェーハWを分割して、ウェーハWに生じる反りを低減させるステップである。改質層形成ステップおよび反り低減分割ステップは、レーザ加工装置10により実施される。
【0024】
レーザ加工装置10においては、上記保持ステップの後に、チャックテーブル11に吸引保持されたウェーハWに対して、撮像手段13により裏面Wb側から赤外線が照射され、アライメント調整用画像が撮像され、アライメント調整用画像データが生成される。次に、レーザ加工装置10においては、アライメント調整用画像データに基づいてチャックテーブル11とレーザ光線照射手段12とのアライメントが調整される。次に、レーザ加工装置10においては、ウェーハWの表面に設定された第一の分割予定ラインS1においてレーザ光線Lの集光点PがウェーハW内部の仕上げ厚みdに至らない領域に位置付けられるように、移動手段によりチャックテーブル11とレーザ光線照射手段12とが移動される。
【0025】
次に、レーザ加工装置10においては、レーザ光線Lの集光点PがウェーハW内部の仕上げ厚みdに至らない領域に位置付けられた状態で、移動手段によりチャックテーブル11とレーザ光線照射手段12とが相対移動され、一端側の第一の分割予定ラインS1から、ウェーハWの中心を通る第一の分割予定ラインS1の前まで、ウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザ光線LがウェーハWの裏面Wb側から順次照射される。このとき、第一の分割予定ラインS1に沿って、ウェーハW内部の表面Wa側でありチップの仕上げ厚みdに至らない領域内に分割起点改質層Ksが形成される。
【0026】
次に、レーザ加工装置10においては、図4および図5に示すように、ウェーハWの中心を通る第一の分割予定ラインS1に沿って、ウェーハW内部のチップの仕上げ厚みdよりも表面Wa側から裏面Wb側にかけて、ウェーハWの厚さ方向に積み重ねるようにレーザ光線Lが複数回繰り返して照射される。このとき、ウェーハWは、ウェーハWの中心を通る第一の分割予定ラインS1に沿って、ウェーハWが当該ウェーハWの厚さ方向で分割される。
【0027】
次に、レーザ加工装置10においては、移動手段によりチャックテーブル11とレーザ光線照射手段12とが相対移動され、他端側の第一の分割予定ラインS1まで順次レーザ光線Lが照射される。このとき、第一の分割予定ラインS1に沿って、ウェーハW内部の表面Wa側でありチップの仕上げ厚みdに至らない領域内に分割起点改質層Ksが形成される。
【0028】
次に、レーザ加工装置10においては、チャックテーブル11を90度回転させた後、第二の分割予定ラインS2上においてレーザ光線Lの集光点PがウェーハW内部の仕上げ厚みdに至らない領域に位置付けられた状態で、第一の分割予定ラインS1と同様にレーザ光線Lが一端側の第二の分割予定ラインS2から、ウェーハの中心を通る第二の分割予定ラインS2の前まで順次レーザ光線Lが照射される。このとき、第二の分割予定ラインS2に沿って、ウェーハW内部の表面Wa側でありチップの仕上げ厚みdに至らない領域内に分割起点改質層Ksが形成される。
【0029】
次に、レーザ加工装置10においては、図4および図5に示すように、ウェーハWの中心を通る第二の分割予定ラインS2に沿って、ウェーハW内部のチップの仕上げ厚みdよりも表面Wa側から裏面Wb側にかけて、ウェーハWの厚さ方向に積み重ねるようにレーザ光線Lが複数回繰り返して照射される。このとき、ウェーハWは、ウェーハWの中心を通る第二の分割予定ラインS2に沿って、ウェーハWが当該ウェーハWの厚さ方向で分割される。
【0030】
次に、レーザ加工装置10においては、移動手段によりチャックテーブル11とレーザ光線照射手段12とが相対移動され、他端側の第二の分割予定ラインS2まで順次レーザ光線Lが照射される。このとき、第二の分割予定ラインS2に沿って、ウェーハW内部の表面Wa側でありチップの仕上げ厚みdに至らない領域内に分割起点改質層Ksが形成される。なお、分割予定ラインS1、S2に沿って形成された分割起点改質層Ksは、ウェーハWの表面Waに形成されたデバイスWDよりも裏面Wb側、かつ、仕上げ厚みdよりも裏面Wb側に位置する。また、ウェーハWは、周方向に等間隔で四分割されているため、分割前のウェーハWに対して分割後のウェーハWの相対的な面積が小さくなり、分割起点改質層KsによるウェーハW内部の膨張の累積も小さくなり、分割起点改質層Ksの形成により生じるウェーハWの反りが低減される。
【0031】
次に、レーザ加工装置10においては、真空吸引源による吸引が停止され、チャックテーブル11によるウェーハWの吸引保持が解除された後、フレーム搬送手段により、レーザ加工後のウェーハWがチャックテーブル11からフレームカセットに収納される。
【0032】
分割予定ラインS1、S2の全てに沿って分割起点改質層Ksが形成されると、改質層形成ステップは終了する。また、ウェーハWの中心を通る分割予定ラインS1、S2のそれぞれに沿ってウェーハWが分割されると、反り低減分割ステップは終了する。
【0033】
(研削ステップ)
研削ステップは、上記改質層形成ステップと上記反り低減分割ステップとの後に、ウェーハWの裏面を研削し、分割起点改質層Ksを除去して仕上げ厚みdのチップを複数形成するステップである。研削ステップは、図6に示すように、公知の研削装置20により実施される。
【0034】
ここで、研削装置20は、図6に示すように、チャックテーブル21と、研削手段22と、を含んで構成されている。
【0035】
チャックテーブル21は、レーザ加工装置10のチャックテーブル11と同様に、円盤状に形成されており、保持面21aを有している。保持面21aは、ポーラスセラミックで構成され、図示しない真空吸引源と接続されている。
【0036】
研削手段22は、スピンドル22aと、マウンタ22bと、基台部22cと、研削砥石22dと、を備えている。スピンドル22aは、図示しない回転駆動機構によって回転自在に支持されている。マウンタ22bは、基台部22cをスピンドル22aに着脱可能に取り付ける。基台部22cの下面には、研削砥石22dが配設されている。研削手段22は、図示しない研削水供給ノズルから研削水を供給しながら、研削砥石22dとチャックテーブル21とを同方向に回転させつつウェーハWの裏面Wb側に研削砥石22dを接触させて、ウェーハWを研削する。
【0037】
このように構成された研削装置20においては、上記改質層形成ステップと上記反り低減分割ステップとの後に、図示しないフレーム搬送手段により、レーザ加工後のウェーハWがフレームカセットから搬出され、環状フレームFの粘着テープTを介して、チャックテーブル21の保持面21aにウェーハWの表面Wa側が載置される。次に、研削装置20においては、図示しない真空吸引源により、チャックテーブル21の保持面21aにウェーハWの表面Wa側が吸引保持される。
【0038】
次に、研削装置20においては、図示しない研削水供給ノズルから研削水が供給され、図6に示すように、研削手段22のスピンドル22aとチャックテーブル21とが同方向に回転され、ウェーハWの裏面Wbに研削砥石22dが接触され、ウェーハWの裏面Wbが研削される。次に、研削装置20においては、図示しない公知の接触式厚さ測定ゲージによりウェーハWの厚みが測定され、測定されたウェーハWの厚みが、少なくとも分割起点改質層Ksを起点にウェーハWを分割できる仕上げ厚みdへと薄化されると、研削手段22による研削が停止される。このとき、分割起点改質層Ksに対して研削砥石22dから研削負荷が加えられるので、分割起点改質層Ksを起点とするクラックがウェーハW内部に生じ、分割予定ラインS1、S2に沿ってウェーハWが分割される。これにより、分割起点改質層Ksが除去されて仕上げ厚みdのチップが複数形成される。形成された複数のチップは、粘着テープTにより支持される。このため、環状フレームFは、粘着テープTを介してウェーハWの形態が保たれた複数のチップを支持する。
【0039】
次に、研削装置20においては、真空吸引源による吸引が停止され、チャックテーブル21による複数のチップの吸引保持が解除された後、フレーム搬送手段により、図示しない洗浄・乾燥手段に複数のチップが搬送される。次に、研削装置20においては、洗浄および乾燥された複数のチップがフレーム搬送手段により洗浄・乾燥手段からフレームカセットに収納される。
【0040】
ウェーハWが仕上げ厚みdへと薄化され、仕上げ厚みdのチップが複数形成されると、研削ステップは終了する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係るウェーハの加工方法によれば、改質層形成ステップの途中に、複数の第一の分割予定ラインS1のうちの少なくとも1本に沿って分割用改質層Kdを形成し、複数の第二の分割予定ラインS2のうちの少なくとも1本に沿って分割用改質層Kdを形成する。また、本実施形態に係るウェーハの加工方法によれば、分割予定ラインS1、S2のうちの少なくとも1本はウェーハWの中心を通るものである。すなわち、本実施形態に係るウェーハの加工方法によれば、ウェーハWの中心を通る第一の分割予定ラインS1に沿って少なくとも1回ウェーハWを分割し、ウェーハWの中心を通る第二の分割予定ラインS2に沿って少なくとも1回ウェーハWを分割する。したがって、本実施形態に係るウェーハの加工方法によれば、ウェーハWを分割しない場合よりも、分割起点改質層Ksの膨張の累積を低減することができ、ウェーハの反りを低減させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係るウェーハの加工方法によれば、ウェーハの反りを低減させることができるので、ウェーハWの裏面Wb側に矯正改質部を形成する前に分割予定ラインの全てについて分断起点改質層を形成する従来技術の加工方法よりも、ウェーハWの反りを低減させることができる。また、従来技術では分断起点改質層に対して矯正改質部を多数設けるのに対して、本実施形態に係るウェーハWの加工方法では1本であり、加工効率がよい。
【0043】
また、本実施形態に係るウェーハの加工方法によれば、ウェーハの反りを低減させることができるので、レーザ光線Lの集光点Pに対するウェーハWの厚さ方向の相対位置の変化を抑制することができ、分割起点改質層Ksをチップの仕上げ厚みdに至らない領域に位置付けることができる。このため、ウェーハの加工方法によれば、少なくとも分割起点改質層Ksを起点にウェーハWを分割できる仕上げ厚みdへとウェーハWを薄化すると、分割起点改質層Ksを除去することができる。
【0044】
また、本実施形態に係るウェーハの加工方法によれば、研削ステップの実施により分割起点改質層Ksが除去されるので、チップの側面に分割起点改質層Ksが残存することによる抗折強度の低下を抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るウェーハの加工方法によれば、ウェーハの反りを低減させることができるので、研削装置20のチャックテーブル21に載置して吸引保持させることができる。
【0047】
また、上記反り低減分割ステップにおいてウェーハWに形成される分割用改質層Kdは、分割予定ラインS1、S2のそれぞれにおいてウェーハWの中心を通る1本に限定して形成されるものではなく、ウェーハWの反りを低減させることができる本数が形成されていればよい。すなわち、分割予定ラインS1、S2のそれぞれにおいて1本以上に分割用改質層Kdが形成されていればよい。なお、分割用改質層Kdは、上記反り低減分割ステップにおいて分割用改質層Kdが形成される加工時間を長くしないために、分割予定ラインS1、S2のそれぞれにおいて1本〜2本に形成されていることが好ましい。
【0048】
また、上記反り低減分割ステップにおいて、分割用改質層Kdは、チップの仕上げ厚みdよりも表面Wa側から形成されているが、所定の領域内、すなわちチップの仕上げ厚みdよりも裏面Wb側となる領域の表面Wa側から形成するようにしてもよい。これにより、上記研削ステップにより所定の厚みになるまでウェーハWの裏面Wbを研削すると、分割用改質層Kdが除去され、分割されたチップの側面に分割用改質層Kdが残存しなくなる。したがって、チップの側面に分割用改質層Kdが残存することによる抗折強度の低下を抑制することができる。
【0050】
また、ウェーハWは、円形状のものに限定されるものではなく、例えば、四角形状や多角形状等でもよい。
【0051】
また、上記の実施形態において、保持ステップがマウンタ装置およびレーザ加工装置10、改質層形成ステップおよび反り低減分割ステップがレーザ加工装置10、研削ステップが研削装置20により実施されているが、全てのステップが1つの装置で実施されてもよい。この場合、ウェーハWに対する加工効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
11 チャックテーブル
11a 保持面
d 仕上げ厚み
L レーザ光線
T 粘着テープ(保護部材)
W 被加工物
Wa 表面
Wb 裏面
Ks 分割起点改質層
Kd 分割用改質層
S1 第一の分割予定ライン
S2 第二の分割予定ライン
P 集光点
図1
図2
図3
図4
図5
図6