特許第6152914号(P6152914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6152914新規なジカルボン酸無水物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152914
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】新規なジカルボン酸無水物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/18 20060101AFI20170619BHJP
   C07D 493/22 20060101ALI20170619BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALN20170619BHJP
【FI】
   C07D493/18CSP
   C07D493/22
   !G02F1/1337 525
【請求項の数】8
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2016-118082(P2016-118082)
(22)【出願日】2016年6月14日
(62)【分割の表示】特願2013-512479(P2013-512479)の分割
【原出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2016-210784(P2016-210784A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-101814(P2011-101814)
(32)【優先日】2011年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】野田 尚宏
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−287324(JP,A)
【文献】 特開平10−104633(JP,A)
【文献】 特開平02−223916(JP,A)
【文献】 特開平09−208698(JP,A)
【文献】 特開昭59−166530(JP,A)
【文献】 特開昭60−156692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 493/00
G02F 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルフリルアルコールを塩基の存在下、式[4]で表される置換アルキルハライドと反応して、式[5]で表される化合物を得た後、アセチレンジカルボン酸と反応させて、式[6]で表される化合物を得、次に、これを酸化して、式[3]で表される化合物を得、次に、これを還元して、式[2]で表される化合物を得た後、脱水剤により、式[1]で表される化合物を得ること特徴とする式[1]で表される化合物の製造法。
【化1】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、又はシアノ基を含有した炭素数1〜20のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【化2】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
【化3】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
【化4】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
【化5】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
【化6】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
【請求項2】
前記Rが、n−テトラデシル基である請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
下記の式[1]で表される化合物。
【化7】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、又はシアノ基を含有した炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【請求項4】
前記Rが、n−テトラデシル基である請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
下記の式[2]で表される化合物。
【化8】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、又はシアノ基を含有した炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【請求項6】
前記Rが、n−テトラデシル基である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
下記の式[3]で表される化合物。
【化9】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、又はシアノ基を含有した炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【請求項8】
前記Rが、n−テトラデシル基である請求項7に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向処理剤用のポリイミド前駆体若しくはポリイミドの末端を修飾するのに好適に使用される、新規な側鎖置換脂環式エポキシジカルボン酸無水物、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶配向膜は液晶を一定の方向に配向させるという役割を担っている。現在、工業的に利用されている主な液晶配向膜は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸ともいわれる。)やポリアミド酸をイミド化したポリイミドの溶液からなるポリイミド系の液晶配向処理剤を、基板に塗布し成膜することで作製される。また、基板面に対して液晶を平行配向又は傾斜配向させる場合は、成膜した後、更にラビングによる表面延伸処理が行われている。
【0003】
液晶表示素子の表示特性の向上のために、ポリアミック酸やポリイミドの構造を種々変更し最適化を行なったり、特性の異なる樹脂をブレンドしたり、添加剤を加えるなどにより、液晶配向性の改善やプレチルト角のコントロール、電気特性などの改善などが可能となり、更なる表示特性の改善を行なうことができるとして、数々の技術が提案されてきた。例えば、特許文献1では高い電圧保持率を得るために、特定の繰り返し構造を有するポリイミド樹脂を用いることが提案されている。また、特許文献2では残像現象に対し、イミド基以外に窒素原子を有する可溶性ポリイミドを用いることにより、残像が消去されるまでの時間を短くすることが提案されている。
【0004】
また、液晶配向膜は液晶に対し、ある一定の傾斜角(プレチルト角)を付与する役割も担っており、プレチルト角を付与する方法として側鎖を含有するジアミンなどが提案されており、プレチルト角の付与が液晶配向膜の開発において重要な課題となって来ている(特許文献3〜6参照)。
また、ポリイミド膜に液晶分子の一軸配向性を付与するプロセスとしてのラビング処理を行う際に、膜の剥がれや削れが起こり難い液晶配向膜が求められている。(特許文献7〜9参照)
【0005】
近年では液晶表示素子の高性能化、大面積化、表示デバイスの省電力化などが進み、様々な環境下での使用がされるようになり、液晶配向膜に求められる特性も多様かつ高水準なものになってきた。特に、ディスプレイの大型化に伴いバックライトの光や熱が強くなってきており、光や熱による劣化に耐えうる材料の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本特開平2−287324号公報
【特許文献2】日本特開平10−104633号公報
【特許文献3】日本特開平02−223916号
【特許文献4】日本特開平04−281427号公報
【特許文献5】日本特開平05−043687号公報
【特許文献6】日本特開平10−333153号
【特許文献7】日本特開平10−46151号公報
【特許文献8】日本特開平2007−11221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の事情に鑑みなされたものであり、ラビング耐性が良好であり、構造によってはプレチルト角の付与もでき、かつ、バックライトの照射によっても劣化が起こり難い液晶配向膜を得ることができる液晶配向処理剤に好適に使用される、側鎖置換基を有する脂環式エポキシジカルボン酸無水物で修飾したポリイミド前駆体、これをイミド化したポリイミドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、脂環式構造のオキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に側鎖置換基を有する新規なジカルボン酸無水物及びその製造法を確立し、さらに該ジカルボン酸無水物により、その末端が化学修飾されたポリイミド前駆体及び/又はポリイミドを得ることに成功した。
【0009】
かかる末端が化学修飾されたポリイミド前駆体及び/又はポリイミドは、各種有機溶媒に対する溶解性に優れ、沸点の低い有機溶媒類に対しても溶解し得るポリイミド系ポリマーが得られる。このため、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料などの電子材料、さらに光導波路等の光通信用材料として好適に用いることができる。特に、液晶配向処理剤に使用した場合には、ラビング処理時の削れが改善され、バックライトの照射によっても劣化が起こり難く、また、構造により液晶への高いプレチルト角が付与できる、優れた液晶配向膜が得られる。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
(1)フルフリルアルコールを塩基の存在下、式[4]で表される置換アルキルハライドと反応して、式[5]で表される化合物を得た後、アセチレンジカルボン酸と反応させて、式[6]で表される化合物を得、次に、これを酸化して、式[3]で表される化合物を得、次に、これを還元して、式[2]で表される化合物を得た後、脱水剤により、式[1]で表される化合物を得ること特徴とする式[1]で表される化合物の製造法。
【化1】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、又はシアノ基を含有した炭素数1〜20のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【化2】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
【化3】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
【化4】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
【化5】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
【化6】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
(2)前記Rが、n−テトラデシル基である上記(1)に記載の製造法。
(3)下記の式[1]で表される化合物。
【化7】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、又はシアノ基を含有した炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
(4)前記Rが、n−テトラデシル基である上記(3)に記載の化合物。
(5)下記の式[2]で表される化合物。
【化8】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、又はシアノ基を含有した炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
(6)前記Rが、n−テトラデシル基である上記(5)に記載の化合物。
(7)下記の式[3]で表される化合物。
【化9】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、又はシアノ基を含有した炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
(8)前記Rが、n−テトラデシル基である上記(7)に記載の化合物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の脂環式エポキシジカルボン酸無水物により、その末端が化学修飾されたポリイミド前駆体及び/又はポリイミドによれば、各種有機溶媒に対する溶解性に優れ、沸点の低い有機溶媒類に対しても溶解性し得るポリイミド系ポリマーが提供される。
このポリイミド系ポリマーは、例えば、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料などの電子材料、さらに光導波路等の光通信用材料として好適に用いることができる。特に、液晶配向処理剤に使用した場合には、含有するエポキシ基によてポリイミド主鎖間の架橋構造により、ラビング処理時の削れが改善され、バックライトや熱などによる電圧保持率の低下が少ないなど、信頼性の高いた優れた液晶配向膜が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[側鎖置換脂環式エポキシジカルボン酸無水物]
本発明の側鎖置換脂環式エポキシジカルボン酸無水物は、下記の一般式[1]又は一般式[2]で表される。
【化12】
(式中、Yは炭素数0〜2のアルキレン又は酸素原子を表し、Rは水素原子又は−X−X−Xで表される有機基を表し、式中Xは単結合又は−CH−であり、Xは単結合又は−O−であり、Xは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、又はシアノ基を含有した炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0017】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
なお、以下において、nはノルマルを、iはイソを、sはセカンダリーを、tはターシャリーを、cはシクロをそれぞれ表す。
【0018】
上記一般式[1]、[2]中、RにおけるXにおいて、炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、より大きなプレチルト角を得る目的であれば、Rとしては、炭素数2〜20のアルキル基が好ましく、炭素数5〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数8〜18のアルキル基がより一層好ましい。
一方で、プレチルト角を必要としないIPS方式の液晶表示素子の液晶配向剤に用いる場合においては、Rは無置換すなわち水素原子であるのが好ましく、液晶ディスプレイの用途により種々選択される。
【0019】
上記一般式の中でも、下記構造のものが好ましく用いられる。
【化13】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、又はシアノ基を含有した炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0020】
例えば、上記一般式[2]において、Yが炭素原子であり、Rが水素原子である化合物である、3,4−エポキシ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8,9−ジカルボン酸無水物は、日本特開昭60−156692の手法に基づき製造することが出来る。
【0021】
また、上記式[1]において、Yが酸素原子であり、R中のXが−CH−、Xが酸素原子、及びXがアルキル側鎖である化合物である、5,6−エポキシ−1−置換オキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、EAOAと略記する)の製造方法は、下記の一連の反応スキームで表される。
【化14】
(式中、Rは上記と同じ意味を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【0022】
すなわち、第1工程は、フルフリルアルコール(FA)を塩基の存在下、アルキルハライドと反応させて、2−置換オキシメチルフラン(ADF)を得る。
第2工程は、ADFをアセチレンジカルボン酸と反応させて、1−置換オキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン−2,3−ジカルボン酸(AEEC)を得る。
第3工程は、AEECを酸化し、2,3−エポキシ−1−置換オキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン−5,6−ジカルボン酸(EADC)を得る。
第4工程は、EADCを還元して、2,3−エポキシ−1−置換オキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−ジカルボン酸(EAAC)を得る。
第5工程は、EAACを脱水剤によりEAOAを得る。
【0023】
以下に各工程の詳細について述べる。
第1工程の原料のフルフリルアルコール(FA)は、市販品をそのまま使用することができる。
もう一方の原料である置換アルキルハライドとしては、炭素数1〜20のアルキルハライド、炭素数1〜20のハロアルキルハライド、炭素数2〜20のシアノアルキルハライドが挙げられる。
Xであるハロゲン原子としては、弗素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子が挙げられる。
【0024】
具体的には、Rが炭素数1〜20のアルキル基であるアルキルハライドとしては、沃化メタン、沃化エタン、沃化プロパン、沃化ブタン、沃化ペンタン、沃化ヘキサン、沃化ヘプタン、沃化オクタン、沃化ノナン、沃化デカン、臭化ブタン、臭化ペンタン、臭化ヘキサン、臭化ヘプタン、臭化オクタン、臭化ノナン、臭化デカン、臭化ウンデカン、臭化ドデカン、臭化トリデカン、臭化テトラデカン、臭化ペンタデカン、臭化ヘキサデカン、臭化ヘプタデカン、臭化オクタデカン、臭化ノナデカン、臭化エイコサン等が挙げられる。
【0025】
炭素数1〜20のハロアルキル基であるハロアルキルハライドとしては、CF3I、CF3CH2I、CF3CF2I、CF3(CH2)2I、CF3(CF2)2I、CF3CF2CH2I、CF3(CF2)3I、CF3CF2(CH2)2I、CF3(CF2)4I、CF3(CF2)2(CH2)2I、CF3(CF2)5I、CF3(CF2)3(CH2)2I、CF3(CF2)6I、CF3(CF2)4(CH2)2I、CF3(CF2)7I、CF3(CF2)5(CH2)2I、CF3(CF2)8I、CF3(CF2)6(CH2)2I、CF3(CF2)9I、CF3(CF2)7(CH2)2I、CF3(CF2)10I、CF3(CF2)8(CH2)2I、CF3(CF2)11I、CF3(CF2)12I、CF3(CF2)13I、CF3(CF2)14I、CF3(CF2)15I、CF3(CF2)16I、CF3(CF2)17I、CF3(CF2)18I、CF3(CF2)19I等が挙げられる。
シアノ基を含有した炭素数1〜20のアルキル基であるシアノアルキルハライドとしては、BrCH2CN、Br(CH2)2CN、Br(CH2)3CN、Br(CH2)4CN、Br(CH2)5CN、Br(CH2)6CN、Br(CH2)7CN、Br(CH2)4C(CH3)2CN、Br(CH2)8CN、Br(CH2)9CN、Br(CH2)10CN、Br(CH2)11CN、Br(CH2)12CN、Br(CH2)13CN、Br(CH2)14CN、Br(CH2)15CN、Br(CH2)16CN、Br(CH2)17CN、Br(CH2)18CN、Br(CH2)19CN等が挙げられる。
【0026】
上記アルキルハライドの使用量は、FAに対し、2〜3モル倍が好ましく、2〜2.5モル倍がより好ましい。
塩基としては、金属水素化物が好ましく、具体的には、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が用いられ、特には水素化ナトリウムが好ましい。
その使用量は、FAに対し、2〜3モル倍が好ましく、2〜2.5モル倍がより好ましい。
【0027】
反応溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等が好ましい。反応溶媒の使用量は、フルフリルアルコール1質量部に対して2〜20質量部が好ましく、3〜15質量部がより好ましい。
また、アルキルハライドが臭化物の場合は、金属沃化物を加えることもできる。金属沃化物としては、沃化ナトリウムや沃化カリウムが挙げられる。
この沃化物の使用量は、FAに対し、0.1〜3モル倍が好ましく、0.2〜2.5モル倍がより好ましい。
反応温度は、−30〜200℃程度が好ましく、0〜150℃がより好ましい。
反応後は、溶媒を除いて濃縮し、その後酢酸エチルを加えてから、塩酸水等で酸性にして有機層を分液し、その後濃縮することにより油状粗物を得る。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー等で精製することにより目的のADFが得られる。
【0028】
第2工程のディールズ・アルダー反応に用いるアセチレンジカルボン酸は、市販品をそのまま用いることができる。その使用量は、ADFに対して1〜1.5モル倍が好ましく、1〜1.2モル倍がより好ましい。
反応溶媒は、用いることが好ましく、例えば、反応溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等が挙げられる。反応溶媒の使用量は、2〜20質量倍が好ましく、3〜15質量倍がより好ましい。
【0029】
反応温度は、0〜200℃程度が好ましく、0〜150℃がより好ましい。
反応後は濃縮し、その後得られた粗物にn−ヘキサン又はn−ヘプタンと酢酸エチルの混合液を加えて加温溶解し、その後氷冷すると目的のAEECの結晶が析出する。
この粗結晶は、n−ヘキサン又はn−ヘプタンと酢酸エチルの混合液を用いた再結晶を繰り返すことにより純度を上げることができる。
【0030】
第3工程の酸化法に用いられる酸化剤としては、酸素分子、過酸化水素、有機過酸化物等が使用できる。なかでも、有機過酸化物を用いる場合は、過酢酸が温和な反応条件で高収率を与えることから好ましい。その使用量は、AEECに対して1〜3モル倍が好ましく、1.5〜2モル倍がより好ましい。
さらに、生成物の安定剤としてリン酸水素ニナトリウムを共存させて置くこともできる。その使用量は、AEECに対して0.01〜1モル倍が好ましく、0.05〜0.5モル倍がより好ましい。
【0031】
反応溶媒としては、酢酸、1,4−ジオキサン等が挙げられる。その使用量は、AEECに対して2〜20質量倍が好ましく、3〜15質量倍がより好ましい。
反応温度は、0〜150℃程度が好ましく、0〜100℃がより好ましい。反応後は濃縮し、その後、得られた粗物に酢酸エチルを加えて溶解し、その後、水洗すると目的のEADCの油状粗物が得られる。更に、この油状粗物にアセトニトリルを加えて加温すると、不溶物が分離しスラリー化する。その後スラリーをセライトろ過し、ろ液を濃縮・減圧乾燥することにより、目的のEADCの油状物を得る。
【0032】
第4工程の還元法は、二重結合を単結合に変換する種々の一般的還元法が適用できる。例えば、(1)金属および金属塩による還元、(2)金属水素化物による還元、(3)金属水素錯化合物による還元、(4)ジボランおよび置換ボランによる還元、(5)ヒドラジンによる還元、(6)ジイミドによる還元、(7)リン化合物による還元、(8)電解還元、(9)接触還元等を挙げることができる。
これらの中で、最も実用的方法は(9)の接触還元方法である。本発明で採用できる接触還元法は以下の通りである。
【0033】
接触還元法においては、還元剤として好ましくは水素ガスが使用され、触媒、及び溶媒が使用されるのが好ましい。
触媒としては、周期律表の第8族のパラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金、ニッケル、コバルト、鉄、又は第1族の銅等が使用できる。これらの金属は単独で、又は他の元素と複合させた多元系で使用される。触媒の形態は、各金属単独、ラネー型触媒、ケイソウ土、アルミナ、ゼオライト、炭素又はその他の担体に担持させた触媒、錯体触媒等が挙げられる。
【0034】
具体的には、パラジウム/炭素、ルテニウム/炭素、ロジウム/炭素、白金/炭素、パラジウム/アルミナ、ルテニウム/アルミナ、ロジウム/アルミナ、白金/アルミナ、還元ニッケル、還元コバルト、ラネーニッケル、ラネーコバルト、ラネー銅、酸化銅、銅クロマト、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、クロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)イリジウム等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものはパラジウム/炭素、ルテニウム/炭素等である。
触媒の使用量は、5質量%金属担持触媒として、基質に対し0.1〜30質量%が、特には、0.5〜20質量%が好ましい。
【0035】
溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等に代表されるアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等に代表されるエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピル等に代表されるエステル類等が使用できる。
その使用量は、原料に対し、1〜50質量倍の範囲が好ましく、特には3〜20質量倍の範囲が好ましい。
【0036】
水素圧は常圧〜10MPa(100kg/cm)の範囲が好ましく、特には常圧〜3MPa(30kg/cm)の範囲が好ましい。
反応温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、特に10〜100℃の範囲が好ましい。還元反応は、水素吸収量によって追跡することができる。
反応後は、濾過により触媒を除いた後、ろ液を濃縮・減圧乾燥すると、目的のEAACの油状物が得られる。
【0037】
第5工程の脱水法としては、(a)脂肪族カルボン酸無水物法、(b)蟻酸及びp−トルエンスルホン酸法、(c)芳香族炭化水素による共沸法等が挙げられる。これらの中でも、操作上簡便で、経済的でもあり、目的物がより高収率で得られることから、(a)脂肪族カルボン酸無水物法を用いることが好ましい。
脂肪族カルボン酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられるが、経済性の点から無水酢酸が好ましい。
脂肪族カルボン酸無水物の添加量は、原料EAACに対して2〜30モル倍が好ましく、3〜20モル倍がより好ましい。
【0038】
上記脱水反応は、反応溶媒を共存させて行うことが好ましい。この工程では、反応の進行に伴って反応液が着色し、生成物の結晶も着色し易くなるが、反応溶媒を共存させることで、反応液の着色を軽減でき、その結果として、生成物の着色を抑制することができる。
反応溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、キュメン等の芳香族炭化水素化合物やアセトニリルが挙げられる。中でも、トルエンが好ましい。
反応溶媒の添加量は、原料EAACに対し、1〜30質量倍が好ましく、3〜20質量倍がより好ましい。
又、脱色を目的に活性炭を存在させて反応を行うこともできる。この場合、活性炭の使用量は、原料EAACに対し、1〜100質量%が好ましく、3〜50質量%がより好ましい。
【0039】
反応温度は、通常50〜150℃程度が好ましいが、反応完結までの時間を短縮することを考慮すると、60〜130℃が好適である。
反応時間は、反応温度との相関になるが、通常10分〜5時間が好ましく、15分〜3時間がより好ましい。
脱水反応後は、室温(25℃)に冷却してからセライトを用いてろ過し、得られたろ液を濃縮すると、目的のEAOAの油状物が得られる。未反応のEAACが残余した場合は、前記脱水反応を繰り返すことにより目的物の純度を上げることができる。
【0040】
[修飾されるポリイミド前駆体及びポリイミド]
上記した側鎖置換脂環式エポキシジカルボン酸無水物を使用し、該化合物により修飾された、本発明では、ポリイミド前駆体又はポリイミドが得られる。本発明において、ポリイミド前駆体とは、ポリアミック酸及び/又はポリアミック酸エステルを表す。ポリアミック酸は、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応によって得られる。ポリアミック酸エステルは、ジアミン成分とテトラカルボン酸ジエステルジクロリドを塩基存在下で反応させる、またはテトラカルボン酸ジエステルとジアミンを適当な縮合剤、塩基の存在下にて反応させることによって得られる。
また、ポリイミドは、このポリアミック酸を脱水閉環させる、あるいはポリアミック酸エステルを加熱閉環させることにより得られる。かかるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのいずれも液晶配向膜を得るための重合体として有用である。
【0041】
使用されるジアミン成分は、特に限定されないが、その具体例を挙げるとすれば以下の通りである。
脂環式ジアミン類の例としては、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
芳香族ジアミン類の例としては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、2,5−ジアミノ−p−キシレン、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビベンジル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’―ジメチルジフェニルメタン、2,2’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[(4−アミノフェノキシ)メチル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、α、α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフロロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,4−ジアミノジフェニルアミン、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノアントラキノン、1,3−ジアミノピレン、1,6−ジアミノピレン、1,8―ジアミノピレン、2,7−ジアミノフルオレン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、ベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェニル)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェニル)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェニル)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェニル)デカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェノキシ)デカン、ジ(4−アミノフェニル)プロパン−1,3−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ブタン−1,4−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ペンタン−1,5−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ヘキサン−1,6−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ヘプタン−1,7−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)オクタン−1,8−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ノナン−1,9−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)デカン−1,10−ジオエート、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕プロパン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ブタン、1,5−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ペンタン、1,6−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ヘキサン、1,7−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ヘプタン、1,8−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕オクタン、1,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ノナン、1,10−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕デカンなどが挙げられる。
【0042】
芳香族−脂肪族ジアミンの例としては、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノ−N−メチルベンジルアミン、4−アミノ−N−メチルベンジルアミン、3−アミノフェネチルアミン、4−アミノフェネチルアミン、3−アミノ−N−メチルフェネチルアミン、4−アミノ−N−メチルフェネチルアミン、3−(3−アミノプロピル)アニリン、4−(3−アミノプロピル)アニリン、3−(3−メチルアミノプロピル)アニリン、4−(3−メチルアミノプロピル)アニリン、3−(4−アミノブチル)アニリン、4−(4−アミノブチル)アニリン、3−(4−メチルアミノブチル)アニリン、4−(4−メチルアミノブチル)アニリン、3−(5−アミノペンチル)アニリン、4−(5−アミノペンチル)アニリン、3−(5−メチルアミノペンチル)アニリン、4−(5−メチルアミノペンチル)アニリン、2−(6−アミノナフチル)メチルアミン、3−(6−アミノナフチル)メチルアミン、2−(6−アミノナフチル)エチルアミン、3−(6−アミノナフチル)エチルアミンなどが挙げられる。
【0043】
複素環式ジアミン類の例としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、2,7−ジアミノジベンゾフラン、3,6−ジアミノカルバゾール、2,4−ジアミノ−6−イソプロピル−1,3,5−トリアジン、2,5−ビス(4−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどが挙げられる。
脂肪族ジアミン類の例としては、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、1,6−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、1,7−ジアミノ−2,5−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−4,4−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−3−メチルヘプタン、1,9−ジアミノ−5−メチルヘプタン、1,12−ジアミノドデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタンなどが挙げられる。
【0044】
側鎖にアルキル基、フッ素含有アルキル基、芳香環、脂肪族環、複素環、又はそれらからなる大環状置換体を有するジアミン化合物を併用してもよい。具体的には、下記の式[DA1]〜式[DA26]のジアミンを例示することができる。
【化15】
(式[DA1]〜式[DA5]中、Rは、炭素数1〜22のアルキル基又はフッ素含有アルキル基である。)
【0045】
【化16】
(式[DA6]〜式[DA9]中、Sは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CH−、−O−、−CO−、又は−NH−を表し、Rは炭素数1〜22のアルキル基又はフッ素含有アルキル基を表す。)
【0046】
【化17】
(式[DA10]及び式[DA11]中、Sは、−O−、−OCH−、−CH2O−、−COOCH−、又は−CHOCO−を表す、Rは炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基を表す。)
【0047】
【化18】
(式[DA12]〜式[DA14]中、Sは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH−、−CHOCO−、−CHO−、−OCH−、又は−CH−を表し、Rは炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基を表す。)
【0048】
【化19】
(式[DA15]及び式[DA16]中、Sは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH−、−CHOCO−、−CHO−、−OCH−、−CH−、−O−、又は−NH−を表し、Rはフッ素基、シアノ基、トリフルオロメタン基、ニトロ基、アゾ基、ホルミル基、アセチル基、アセトキシ基、又は水酸基を表す。)
【0049】
【化20】
【化21】
(式[DA17]〜[DA20]中、R10は炭素数3〜12のアルキル基を表し、1,4−シクロへキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス体である。)
【0050】
【化22】
【0051】
【化23】
【0052】
【化24】
【0053】
また、以下のジアミンを併用してもよい。
【化25】
(式[DA31]中、mは0〜3の整数であり、式[DA34]中、nは1〜5の整数である。)
【0054】
[DA−27]、[DA−28]等のジアミンを使用した場合、得られるポリマーを使用する液晶配向処理から得られる液晶配向膜は、液晶表示素子の電圧保持率(VHRとも言う)を向上させることができ、また、[DA−29]〜[DA−34]のジアミンの使用は、液晶表示素子の蓄積電荷低減に効果がある。
【0055】
さらに、ジアミン化合物としては、下記の式[DA−35]で示されるようなジアミノシロキサンなども挙げることができる。
【化26】
(式[DA−35]中、mは1から10の整数である。)
上記のジアミン化合物は、液晶配向膜とした際の液晶配向性、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0056】
ポリイミド前駆体を得るために、ジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸二無水物は特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸−3,4:7,8−二無水物、ヘキサシクロ[6.6.0.12,7.03,6.19,14.010,13]ヘキサデカン−4,5,11,12−テトラカルボン酸−4,5:11,12−二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンー1,2−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0057】
更には、上記脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物に加えて、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用すると、液晶配向性が向上し、かつ液晶セルの蓄積電荷を低減させることができるので好ましい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0058】
ポリアミド酸エステルを得るためにジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸ジアルキルエステルは特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
脂肪族テトラカルボン酸ジエステルの具体的な例としては1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸ジアルキルエステル、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸ジアルキルエステル、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸ジアルキルエステル、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸−3,4:7,8−ジアルキルエステル、ヘキサシクロ[6.6.012,7.03,6.19,14.010,13]ヘキサデカン−4,5,11,12−テトラカルボン酸−4,5:11,12−ジアルキルエステル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンー1,2−ジカルボンジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0059】
芳香族テトラカルボン酸ジアルキルエステルとしては、ピロメリット酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,3’,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテルジアルキルエステル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンジアルキルエステル、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸ジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0060】
テトラカルボン酸二無水物は、液晶配向膜にした際の液晶配向性、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上併用することができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応により、本発明のポリアミド酸を得るにあたっては、公知の合成手法を用いることができる。一般的にはテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを有機溶媒中で反応させる方法である。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、有機溶媒中で比較的容易に進行し、かつ副生成物が発生しない点で有利である。
【0061】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶媒としては、生成したポリアミド酸が溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリアミド酸を溶解させない溶媒であっても、生成したポリアミド酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。
また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリアミド酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒はなるべく脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0062】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを有機溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸二無水物をそのまま、または有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、これらのいずれの方法を用いても良い。また、テトラカルボン酸二無水物またはジアミン成分が複数種の化合物からなる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させても良く、個別に順次反応させても良く、さらに個別に反応させた低分子量体を混合反応させ高分子量体としても良い。
【0063】
その際の重合温度は−20〜150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは−5〜100℃の範囲である。
また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分の反応溶液中での合計濃度が、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0064】
ポリアミド酸を製造する重合反応においては、テトラカルボン酸二無水物の合計モル数と、ジアミン成分の合計モル数の比は0.8〜1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリアミド酸の分子量は大きくなる。
本発明のポリイミドは、前記のポリアミド酸を脱水閉環させて得られるポリイミドであり、液晶配向膜を得るための重合体として有用である。
本発明のポリイミドにおいて、アミド酸基の脱水閉環率(イミド化率)は、必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
【0065】
[ポリイミド]
ポリアミド酸をイミド化させる方法としては、ポリアミド酸の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、ポリアミド酸の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
ポリアミド酸を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100〜400℃、好ましくは120〜250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
ポリアミド酸の触媒イミド化は、ポリアミド酸の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。
【0066】
塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。
酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0067】
[ポリアミック酸エステル]
ポリアミック酸エステルを合成する方法としては、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応や、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを適当な縮合剤、塩基の存在下に反応させることによりポリイミドの前駆体の一種であるポリアミック酸エステルを得ることができる。または、予めポリアミック酸を重合し、高分子反応を利用して、アミック酸中のカルボン酸をエステル化することでも得ることができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜4倍モルであることが好ましい。
【0068】
縮合剤の存在下に縮合重合を行なう場合、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニル、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジンー2−イル)4−メトキシモルホリウムクロリド n−水和物などが使用できる。
【0069】
また、上記縮合剤を用いる方法において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量は(C1)に対して0.1〜1.0倍モル量であることが好ましい。
上記の反応に用いる溶媒は、上記したポリアミック酸を重合する際に用いられる溶媒と同様なものが使用できるが、モノマーおよびポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが良く、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0070】
[ポリマーの回収]
ポリアミド酸、ポリアミック酸エステル、又はポリイミドの反応溶液から、生成したポリアミド酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミドを回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して沈殿させれば良い。
沈殿に用いる貧溶媒としてはメタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2〜10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素などが挙げられ、これらの中から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
本発明の液晶配向処理剤に含有されるポリアミド酸及びポリイミドの分子量は、得られる塗膜の強度、塗膜形成時の作業性、及び塗膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000〜1,000,000とするのが好ましく、より好ましくは、10,000〜150,000である。
【0071】
[末端が修飾されたポリイミド前駆体、及びポリイミド]
上記した脂環式エポキシジカルボン酸無水物は、アミノ基に対して反応性を有しており、例えば、ポリマー末端アミノ基が過剰に存在するポリアミック酸またはポリアミック酸エステルのようなポリイミド前駆体ポリマーに対して、この脂環式エポキシジカルボン酸無水物を反応させることにより、末端が化学修飾されたポリイミド前駆体を得ることができる。
また、末端が修飾されたポリイミドは、好ましくは、上記末端が修飾されたポリイミド前駆体をイミドすることにより得られる。一方、ポリイミド前駆体をイミドして得られたポリイミドに対し、上記した脂環式エポキシジカルボン酸無水物を反応させて末端が修飾されたポリイミドを得る場合は、前段階であるイミド化の過程において使用される無水酢酸などと末端のアミノ基が反応してしまいアセチルアミド末端となってしまうので好ましくない。
【0072】
脂環式エポキシジカルボン酸無水物を用いてポリイミド前駆体の末端の修飾を行う場合、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルの末端基がアミノ基過剰であることが好ましい。すなわち、ポリイミド前駆体には、ジカルボン酸無水物と反応するアミノ基の割合が、テトラカルボン酸由来の末端基とジアミン由来の末端基の合計数に対して、好ましくは50〜100%、特に好ましくは、80〜100%であるのが好ましい。
このため、ポリイミド前駆体を得る重合の際に使用されるテトラカルボン酸二無水物の割合は、ジアミンよりも少ないことが好ましく、より好ましくはジアミン成分100モルに対しテトラカルボン酸二無水物は80〜99.5モルが好ましく、90〜99モルが特に好ましい。
【0073】
本発明の脂環式エポキシジカルボン酸無水物をポリアミック酸の末端アミノ基に反応させる際、この反応は容易に進行するので反応の条件は特に限定されない。例えば、修飾されるポリイミド前駆体に対して、脂環式エポキシジカルボン酸無水物を添加し、−10〜150℃、好ましくは0〜100℃、特に好ましくは室温において、1〜100時間、特には3〜30時間で反応させることができる。
この際、反応の促進のために、必要に応じてピリジンなどの有機塩基を存在させてもよい。
【0074】
末端の化学修飾を行うポリイミド前駆体の構造は特に限定はされないが、末端アミンの反応性が高いものほど好ましい。末端基の近傍に反応を阻害するような置換基がある場合、末端の化学修飾が困難になる場合がある。従って、立体障害となる置換基を有しないジアミンを用いて得られたポリアミック酸やポリアミック酸エステル、或いは反応性が高いアミノ基が末端基となるような重合法を用いて得られたポリアミック酸やポリアミック酸エステルが好ましく用いられる。
【0075】
<液晶配向処理剤>
本発明の液晶配向処理剤は、液晶配向膜を形成するための塗布液であり、被膜を形成するポリマー成分が有機溶媒に溶解した溶液である。このポリマー成分は、上記末端が修飾されたポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドから選ばれる少なくとも一種の重合体を含む樹脂成分である。液晶配向処理剤中のポリマー成分の含有量は、1〜20質量%が好ましく、より好ましくは3〜15質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。
本発明において、前記のポリマー成分は、全てが上記末端が修飾されたポリイミド前駆体、及び/又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドであってもよく、また、それ以外の他のポリマー成分が混合されていてもよい。その際、全ポリマー成分中におけるこれら他のポリマー成分の含有量は、好ましくは.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%である。
かかる他のポリマー成分は、例えば、テトラカルボン酸ニ無水物成分と反応させるジアミン成分として、特定ジアミン化合物以外のジアミン化合物を使用して得られるポリアミド酸又はポリイミドなどが挙げられる。
【0076】
本発明の液晶配向処理剤に用いる有機溶媒は、樹脂成分を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
本発明の液晶配向処理剤は、上記以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶配向処理剤を塗布した際の膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などである。
【0077】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)の具体例としては、次のものが挙げられる。
例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1−ヘキサノール、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどの低表面張力を有する溶媒が挙げられる。
これらの貧溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上記のような溶媒を用いる場合は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。
【0078】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。
より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R−30(大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子社製)などが挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向処理剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0079】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物などが挙げられる。
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0080】
更に、基板と膜の密着性向上に加え、バックライトによる電気特性低下などを防ぐ目的で、以下のようなフェノプラスト系の添加剤を含有しても良い。具体的なフェノプラスト系添加剤を以下に示すが、この構造に限定されない。
【0081】
【化27】
【0082】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、液晶配向処理剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。使用量が0.1質量部未満であると、密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると、液晶の配向性が悪くなる場合がある。
本発明の液晶配向処理剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、さらには、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物を添加してもよい。
【0083】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の液晶配向処理剤は、基板上に塗布、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして、又は垂直配向用途などでは配向処理無しで液晶配向膜として用いることができる。この際、用いる基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、若しくはアクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることができる。また、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。
【0084】
また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。
液晶配向処理剤の塗布方法は特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ、ロールコーター、スリットコーター、スピンナーなどがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0085】
液晶配向処理剤を基板上に塗布した後の焼成は、ホットプレートなどの加熱手段により50〜300℃、好ましくは80〜250℃で行い、溶媒を蒸発させて、塗膜を形成させることができる。焼成後に形成される塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があり、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜100nmである。
液晶を水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成後の塗膜をラビング又は偏光紫外線照射などで処理する。
【0086】
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向処理剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製し、液晶表示素子としたものである。
液晶セル作製の一例を挙げるならば、液晶配向膜の形成された1対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサーを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサーを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが例示できる。このときのスペーサーの厚みは、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmである。
以上のようにして、本発明の液晶配向処理剤を用いて作製された液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用できる。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定して解釈されるものではない。
尚、実施例で用いた分析法は以下の通りである。
[1][質量分析(MASS)]
機種:AQ-Tod(JEOL社製)、 イオン化法:DART+ 、測定範囲:m/z = 100〜1000。
[2][1H NMR]
機種:Varian社製NMR、 System 400NB(400MHz)。
測定溶媒:CDCl3、DMSO−d
標準物質:tetramethylsilane(TMS).
[3][融点(m.p.)]
機種:微量融点測定装置(MP−S3)(ヤナコ機器開発研究所社製)。
【0088】
実施例1
3,4−エポキシ−トリシクロ〔5,2,1、02,6〕デカン−8,9−ジカルボン酸無水物[ETCDA]の合成
この化合物の合成は、日本特開昭60−156692の手法に基づき行った。
【0089】
実施例2
2,3−エポキシ−1−テトラデカオキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物(ETOA)の合成
<TDFの合成>
【化28】
【0090】
500mLの四つ口反応フラスコにフルフリルアルコール(FA)29.4g(300mmol)とN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)206g(7質量倍)を仕込み、氷浴下マグネティクスタラーで攪拌しながら、内温6℃〜13℃で水素化ナトリウム(純度55%)14.4g(330mmol)を1時間かけて添加した。続いて、氷浴を外し、室温(20℃)に昇温し、スラリー状で1時間攪拌を継続した。ここで、再び氷浴で内温5℃に冷却してから、n−ブロモテトラデカン87.3g(315mmol)を40分かけて滴下した。更に50℃に昇温し、18時間攪拌を継続した。反応終了後、減圧で濃縮し、得られた粗物に氷浴下で酢酸エチルと水を加えて攪拌下に、35質量%塩酸33gを滴下し、溶液を酸性にした。その後、有機層を分液し、水洗した後濃縮すると暗赤色油状物が87.9g得られた。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=9/1〜3/1(v/v))で精製すると油状物66.8g(収率75.6%)が得られた。
【0091】
この油状物は、MASS及びH NMRから、目的の2−テトラデカオキシメチルフラン(TDF)であることを確認した。
MASS ( ESI+, m/z(%) ) : 294.26([M]+, 100)
1H NMR (CDCl3, δppm ) : 0.866-0.897 ( m, 3H ), 1.254-1.387 ( m, 24H ), 1.551-1.639 ( m, 2H ), 3.435-3.473 ( m, 2H ), 4.433 ( d, J=1.2 Hz, 2H ), 6.298-6.343 ( m, 2H ), 7.395-7.402 ( m, 1H )
【0092】
<TEECの合成>
【化29】
【0093】
100mLの四つ口反応フラスコにTDF11.6g(39.4mmol)、アセチレンジカルボン酸5.7g(50.0mmol)及び1,4−ジオキサン74を仕込み、120℃油浴で18時間、マグネティクスタラーで攪拌した。 続いて、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した後、その残渣にn−ヘプタン/酢酸エチル=9/1(v/v)を加えて、60℃で溶解し、その後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮してから、n−ヘプタンを少量加えて、氷冷した。析出した結晶をろ過し、n−ヘプタン/酢酸エチル=9/1(v/v)で洗浄後、50℃で減圧乾燥すると灰色結晶8.6g(収率56%)が得られた。
【0094】
この結晶は、MASS及びH NMRから、目的の1−テトラデカオキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン−5,6−ジカルボン酸(TEEC)であることを確認した。
MASS ( ESI+, m/z(%) ) : 409.2 ([M+H]+, 100)
1H NMR (CDCl3, δppm ) : 0.866-0.895 ( m, 3H ), 1.255 ( s, 24H ), 1.595-1.644 ( m, 2H ), 3.592-3.789 ( m, 2H ), 4.179-4.241( m, 1H ), 4.463 ( d, J=11.6 Hz, 1H ), 5.785 ( t, J=2.0 Hz, 1H ), 7.014 ( t, J=2.8 Hz, 1H ), 7.266-7.289 ( m, 1H ), 10.350 ( brs, 2H )
m.p.(℃):73-75
【0095】
<ETECの合成>
【化30】
【0096】
500mLの四つ口反応フラスコにTEEC19.5g(47.7mmol)、1,4−ジオキサン156g(8質量倍)及びリン酸ナトリウム1.36gを仕込み、氷浴で12℃に冷却し、マグネティクスタラーで攪拌しながら過酢酸(純度39%)18.6g(95.0mmol)を滴下した。氷浴を外し室温に昇温するとやや発熱し、温度29℃で2時間攪拌した。更に、50℃で19時間攪拌した後、反応を停止させた。その後、減圧で濃縮すると、黄色ガム状物25gが得られた。この黄色ガム状物に酢酸エチル100mLと水70mLを加え、加温して溶解した後、分液して有機層を分離した。有機層を水30mLで水洗し、その後、濃縮・減圧乾燥すると、黄色ゲル20.5gが得られた。更に、黄色ゲルにアセトニトリル77gを加えて、60℃に加温すると懸濁液になり、20℃で20時間静置すると固形分が沈降した。沈降した固形分をセライトでろ過した後、減圧乾燥すると赤色ペースト状物18.2g(収率90%)が得られた。
【0097】
この生成物は、MASS、及びH NMRから、目的の2,3−エポキシ−1−テトラデカオキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプセ−5−エン−5,6−ジカルボン酸(ETEC)であることを確認した。
MASS ( ESI, m/z(%) ) : 423.5([M-H], 100)
1H NMR (CDCl3, δppm ) : 0.878 ( t, J=6.8 Hz, 3H ), 1.287( s, 24H ), 1.578( s, 2H ), 3.521-3.599 ( m, 2H ), 3.707 ( d, J=19.2 Hz, 1H ), 3.907 ( d, J=32.8 Hz, 1H ), 4.047 ( d, J=12.8 Hz, 1H ), 4.112 ( d, J=9.2 Hz, 0.5H ), 4.343 ( d, J=11.6 Hz, 0.5H ), 5.185 ( d, J=1.6 Hz, 1H )
【0098】
<ETACの合成>
【化31】
【0099】
300mLの四つ口反応フラスコにETEC18.0g(42.4mmol)、1,4−ジオキサン147g(8質量倍)及び5%Pd/C(水分含量;55.99質量%)4.03gを仕込み、窒素置換後、大気圧の水素雰囲気下(風船充填)、25〜27℃で54時間攪拌した。続いて、セライトろ過により触媒を除去し、ろ液を濃縮すると赤色油状物17.7gが得られた。次に、酢酸エチル100gと水40gを加えて溶解後、有機層を濃縮・減圧乾燥すると、赤色油状物15.6g(収率86.5%)が得られた。
【0100】
この生成物は、MASS、及びH NMRから、目的の2,3−エポキシ−1−テトラデカオキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−ジカルボン酸(ETAC)であることを確認した。
MASS ( ESI, m/z(%) ) : 425.9([M-H], 100)
1H NMR (CDCl3, δppm ) : 0.814 ( t, J=6.4Hz, 3H ), 1.197( s, 24H ), 1.428( s, 2H ), 2..741 ( d, J=10.8 Hz, 0.5H ), 3..001 ( d, J=10.8 Hz, 0.5H ), 3..176 ( d, J=10.8 Hz, 0.5H ), 3.253-3.307 ( m, 1H ), 3.342-3.422 ( m, 0.5H ), 3..684 ( d, J=5.2 Hz, 1H ), 3.772 ( s, 1H ), 4..189 ( d, J=17.2 Hz, 1H ), 4..389 ( d, J=42.0 Hz, 1H ), 4..474 ( t, J=6.0 Hz, 1H ), 5.316 ( s, 1H )
【0101】
<ETOAの合成>
【化32】
【0102】
100mLの四つ口反応フラスコにETAC15.6g(36.6mmol)、無水酢酸37.3g(365mmol)、活性炭4.7g及びトルエン125gを仕込み、内温71℃(油浴75℃)で2時間30分攪拌した。続いて、セライトろ過した後、濃縮・減圧乾燥すると、赤色油状物13.1g(収率82%)が得られた。
次に、この油状物13.0gに、アセトニトリル104g、無水酢酸30.6g(300mmol)及び活性炭6.5gを仕込み、内温71℃(油浴75℃)で3時間攪拌した。反応終了後、25℃に冷却してから1時間静置し、セライトろ過した後、濃縮・減圧乾燥すると、淡橙色油状物9.1g(収率74%)が得られた。
【0103】
この生成物は、MASS、及びH NMRから、目的の2,3−エポキシ−1−テトラデカオキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−ジカルボン酸無水物(ETOA)であることを確認した。
MASS ( ESI, m/z(%) ) : 407.0([M-H], 100)
1H NMR (CDCl3, δppm ) : 0.880 ( t, J=6.8Hz, 3H ), 1.299( s, 24H ), 1.583-1.637( m, 2H ), 2.010-2.301( m, 2H ), 3.372-3.661 ( m, 2H ), 3.823-4.242 ( m, 3H ), 4.558-4.965 ( m, 1H ), 5.366 ( s, 1H )
【0104】
<液晶配向膜特性評価>
ポリアミック酸、およびポリイミドの合成などに使用した化合物の略号は、以下のとおりである。
<テトラカルボン酸二無水物>
CBDA:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
TDA:3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
【化33】
【0105】
<ジアミン>
p−PDA:1,4−フェニレンジアミン
DDM:4,4−ジアミノジフェニルメタン
C18DAB:4−オクタデシルオキシ−1,3−ジアミノベンゼン
【化34】
【0106】
<末端を化学修飾した化合物>
E−NDA:2,3−エポキシ−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−5,6−ジカルボン酸無水物
ETCDA:3,4−エポキシ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8,9−ジカルボン酸無水物
ETOA:2,3−エポキシ−1−テトラデカオキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−ジカルボン酸無水物
【化35】
<有機溶媒>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
γ−BL:γ−ブチロラクトン
BCS:ブチルセロソルブ
【0107】
<分子量の測定>
重合反応により得られたポリマーの分子量は、該ポリイミドをGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を算出した。
GPC装置:Shodex社製 (GPC−101)、
カラム:Shodex社製 (KD803、KD805の直列)、
カラム温度:50℃、
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・HO)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10mL/L)、
流速:1.0mL/分、
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000、30,000)、および、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000、1,000)。
【0108】
<イミド化率の測定>
合成例におけるポリイミドのイミド化率は次のようにして測定した。
ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管(草野科学社製 NMRサンプリングチューブスタンダード)に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6、0.05質量%TMS混合品)0.53mLを添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液を日本電子データム社製NMR測定器(JNW−ECA500)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5〜10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。

イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100

上記式において、xはアミド酸のNH基に由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基のプロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0109】
実施例3(CBDA /p−PDA、アミン末端過剰ポリアミック酸の重合)
メカニカルスターラーと窒素導入管を取り付けた100ml四口フラスコに、p−PDA5.41g(50.0mmol)、及び脱水NMP81.8gを計り取り、窒素を流しながらp−PDAを完全に溶解させた。その後、水で冷やしながらCBDA9.02g(46.0mmol)をゆっくり加え、そのまま6時間反応させることにより、15質量%のポリアミック酸溶液(PAA−1)を得た。PAA−1の分子量は、8300/18700(Mn/Mw)であった。
【0110】
比較例1
PAA−1を20.00g秤量し、NMP15.0g、及びBCS15.0gを加えて希釈し、PAA−1が6質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の液晶配向処理剤(配向剤―1)を得た。
【0111】
実施例4(E−NDA修飾 CBDA/p−PDA、ポリアミック酸の重合)
メカニカルスターラーと窒素導入管を取り付けた50ml四口フラスコに、PAA−1を20.0g計り取り、E−NDA(Mw:180.16g/mol)を0.19g(1.03mmol:p−PDAに対し、約0.10mol等量)加え、室温で24時間反応させることによりPAA−2を得た。
この溶液にNMP15.0g、及びBCS15.0gを加えて希釈し、PAA−2が約6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の液晶配向処理剤(配向剤−2)を得た。
【0112】
実施例5(ETCDA修飾 CBDA/p−PDA、ポリアミック酸の重合)
メカニカルスターラーと窒素導入管を取り付けた50ml四口フラスコにPAA−1を20.0g計り取り、ETCDA(Mw:220.22g/mol)を0.22g(1.03mmol:p−PDAに対し約0.10mol等量となるように)加え、室温で24時間反応させることによりPAA−3を得た。
この溶液にNMP15.0g、及びBCS15.0gを加えて希釈し、PAA−3が約6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の液晶配向処理剤(配向剤−3)を得た。
【0113】
実施例6(ETOA修飾 CBDA/p−PDA、ポリアミック酸の重合)
メカニカルスターラーと窒素導入管を取り付けた50ml四口フラスコにPAA−1を20.0g計り取り、ETOA(Mw:408.53g/mol)を0.42g(1.03mmol:p−PDAに対し約0.10mol等量)加え、室温で24時間反応させることによりPAA−4を得た。
この溶液にNMP15.0g、及びBCS15.0gを加えて希釈し、PAA−4が約6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の液晶配向処理剤(配向剤−4)を得た。
【0114】
実施例7(CBDA/DDM、アミン末端過剰ポリアミック酸の重合)
メカニカルスターラーと窒素導入管を取り付けた200ml四口フラスコにDDM9.91g(50.0mmol)、及び脱水NMP107.3gを計り取り、窒素を流しながらDDMを完全に溶解させた後、水で冷やしながらCBDA9.02g(46.0mmol)をゆっくり加え、そのまま6時間反応させることにより、15質量%のポリアミック酸溶液(PAA−5)を得た。PAA−5の分子量は9500/21400(Mn/Mw)であった。
【0115】
比較例2
PAA−Aを20.00g秤量し、NMP15.0g、及びBCS15.0gを加えて希釈し、PAA−5が6質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の液晶配向処理剤(配向剤―5)を得た。
【0116】
実施例8(E−NDA修飾 CBDA/DDM、ポリアミック酸の重合)
メカニカルスターラーと窒素導入管を取り付けた50ml四口フラスコにPAA−5を20.0g計り取り、E−NDA(Mw:180.16g/mol)を0.19g(1.03mmol:DDMに対し約0.10mol等量)加え、室温で24時間反応させることによりPAA−6を得た。
この溶液にNMP15.0g、及びBCS15.0gを加えて希釈し、PAA−6が約6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の液晶配向処理剤(配向剤−6)を得た。
【0117】
実施例9(ETCDA修飾 CBDA/DDM、ポリアミック酸の重合)
メカニカルスターラーと窒素導入管を取り付けた50ml四口フラスコにPAA−5を20.0g計り取り、ETCDA(Mw:220.22g/mol)を0.22g(1.03mmol:DDMに対し約0.10mol等量)加え、室温で24時間反応させることによりPAA−7を得た。
この溶液にNMP15.0g、及びBCS15.0gを加えて希釈し、PAA−7が約6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の液晶配向処理剤(配向剤−7)を得た。
【0118】
実施例10(ETOA修飾 CBDA/DDM、ポリアミック酸の重合)
メカニカルスターラーと窒素導入管を取り付けた50ml四口フラスコにPAA−5を20.0g計り取り、ETOA(Mw:408.53g/mol)を0.42g(1.03mmol:DDMに対し約0.10mol等量)加え、室温で24時間反応させることによりPAA−8を得た。
この溶液にNMP15.0g、及びBCS15.0gを加えて希釈し、PAA−8が約6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の液晶配向処理剤(配向剤−8)を得た。
【0119】
実施例11(TDA/p−PDA、C18DAB(10)、アミン末端過剰ポリアミック酸の重合)
攪拌子と窒素導入管を取り付けた50ml枝つきナスフラスコにTDA4.50g(15.0mmol)、及び脱水NMP25.6gを計り取り、窒素を流しながらC18DAB1.88g(5.00mmol)を加え、40℃で3時間反応させた。
メカニカルスターラーと窒素導入管を取り付けた200ml四口フラスコにp−PDA4.87g(45.0mmol)、及び脱水NMP93.4gを計り取り、窒素を流しながらp−PDAを完全に溶解させた後、先に調整した反応溶液とTDAを9.76g(32.5mmol)を水冷下でゆっくり加え、40℃にて16時間反応させることにより、15質量%のポリアミック酸溶液(PAA−9)を得た。PAA−9の分子量は8500/20300(Mn/Mw)であった。
【0120】
実施例12(TDA/p−PDA、C18DAB(10)、ポリイミドの合成)
攪拌子を入れた100mlナスフラスコにPAA−9を30.0g計り取り、NMP45.0g、無水酢酸10.9g(106.8mmol)、及びピリジン5.08g(64.2mmol)を加え、室温で30分攪拌した後、40℃で3時間反応させた。反応後、約10℃ほどに冷却したメタノール300mlに、攪拌しながら反応溶液をゆっくり注ぎ、固体を析出させた。析出した固体を濾過にて回収し、更にメタノール200mlを用いて2回分散洗浄した後、100℃にて12時間乾燥させ、ポリイミド(SPI−1)を得た。SPI−1の分子量は7900/18500(Mn/Mw)であり、イミド化率は84%であった。
攪拌子を入れた100mlナスフラスコにSPI−1を3.0g計り取り、γ−BLを34.5g加え、50℃で16時間攪拌し溶解させ、更にγ−BLを12.5g加え、SPI−1が6質量%、γ−BLが94質量%のポリイミド溶液(SPI−1S)を得た。
【0121】
実施例13(E−NDA修飾 TDA/p−PDA、C18DAB(10)、ポリイミドの合成)
攪拌子を入れた100mlナスフラスコにPAA−9を30.0g計り取り、E−NDA(Mw:180.16g/mol)を0.19g(1.07mmol:ジアミンに対し約0.10mol等量)加え、40℃で6時間反応させた後、NMPを45.0g、無水酢酸10.9g(106.8mmol)、及びピリジン5.08g(64.2mmol)を加え、室温で30分攪拌した後、40℃で3時間反応させた。反応後、約10℃ほどに冷却したメタノール300mlに、攪拌しながら反応溶液をゆっくり注ぎ、固体を析出させた。析出した固体を濾過にて回収し、更にメタノール200mlを用いて2回分散洗浄した後、100℃にて12時間乾燥させ、ポリイミド(SPI−2)を得た。SPI−2の分子量は8400/19200(Mn/Mw)であり、イミド化率は87%であった。
攪拌子を入れた100mlナスフラスコにSPI−2を3.0g計り取り、γ−BLを34.5g加え、50℃で16時間攪拌し溶解させ、更にγ−BLを12.5g加え、SPI−1が6質量%、γ−BLが94質量%のポリイミド溶液(SPI−2S)を得た。
【0122】
実施例14(ETCDA修飾 TDA/p−PDA、C18DAB(10)、ポリイミドの合成)
攪拌子を入れた100mlナスフラスコにPAA−9を30.0g計り取り、ETCDA(Mw:220.22g/mol)を0.23g(1.07mmol:ジアミンに対し約0.10mol等量)加え、40℃で6時間反応させた後、NMPを45.0g、無水酢酸10.9g(106.8mmol)、及びピリジン5.08g(64.2mmol)を加え、室温で30分攪拌した後、40℃で3時間反応させた。反応後、約10℃ほどに冷却したメタノール300mlに、攪拌しながら反応溶液をゆっくり注ぎ、固体を析出させた。析出した固体を濾過にて回収し、更にメタノール200mlを用いて2回分散洗浄した後、100℃にて12時間乾燥させ、ポリイミド(SPI−3)を得た。SPI−3の分子量は7900/18800(Mn/Mw)であり、イミド化率は88%であった。
攪拌子を入れた100mlナスフラスコにSPI−2を3.0g計り取り、γ−BLを34.5g加え、50℃で16時間攪拌し溶解させ、更にγ−BLを12.5g加え、SPI−1が6質量%、γ−BLが94質量%のポリイミド溶液(SPI−3S)を得た。
【0123】
実施例15(ETOA修飾 TDA/p−PDA、C18DAB(10)、ポリイミドの合成)
攪拌子を入れた100mlナスフラスコにPAA−9を30.0g計り取り、ETOA(Mw:408.53g/mol)を0.44g(1.07mmol:ジアミンに対し約0.10mol等量)加え、40℃で6時間反応させた後、NMPを45.0g、無水酢酸10.9g(106.8mmol)、及びピリジン5.08g(64.2mmol)を加え、室温で30分攪拌した後、40℃で3時間反応させた。反応後、約10℃ほどに冷却したメタノール300mlに、攪拌しながら反応溶液をゆっくり注ぎ、固体を析出させた。析出した固体を濾過にて回収し、更にメタノール200mlを用いて2回分散洗浄した後、100℃にて12時間乾燥させ、ポリイミド(SPI−4)を得た。SPI−4の分子量は8200/19100(Mn/Mw)であり、イミド化率は85%であった。
攪拌子を入れた100mlナスフラスコにSPI−2を3.0g計り取り、γ−BLを34.5g加え、50℃で16時間攪拌し溶解させ、更にγ−BLを12.5g加え、SPI−1が6質量%、γ−BLが94質量%のポリイミド溶液(SPI−4S)を得た。
【0124】
実施例16(CBDA、PMDA(50)/DDM、ポリアミック酸の重合)
メカニカルスターラーと窒素導入管を取り付けた300ml四口フラスコにDDM19.83g(100.0mmol)、脱水NMP111.0g、及びγ−BL111.0を計り取り、窒素を流しながらDDMを完全に溶解させた後、水で冷やしながらPMDA10.91g(50.0mmol)、及びCBDA8.43g(43.0mmol)をゆっくり加え、そのまま6時間反応させることにより、15質量%のポリアミック酸溶液(PAA−10)を得た。PAA−10の分子量は10100/21400(Mn/Mw)であった。
攪拌子を入れた1LのナスフラスコにPAA−10を250.0g計り取り、γ−BL281.3g、及びBCS93.8gを加えて希釈し、PAA−10が6質量%、NMPが17質量%、γ−BLが62質量%、BCSが15質量%のポリアミック酸溶液(PAA−10S)を得た。
【0125】
比較例3
攪拌子を入れた300mlナスフラスコに、実施例12で調製したポリイミド溶液(SPI−1S)40.0gと実施例16で調製したポリアミック酸溶液(PAA−10)160gを加えて24時間攪拌し、SPI−1が1.2質量%、PAA−10が4.8質量%、NMPが14質量%、γ―BLが68質量%、BCSが12質量%の液晶配向処理剤(配向剤―9)を得た。
【0126】
実施例17
ポリイミド溶液SPI−2Sを用いて比較例3と同様の操作を行い、液晶配向処理剤(配向剤−10)を得た。
【0127】
実施例18
ポリイミド溶液SPI−3Sを用いて比較例3と同様の操作を行い、液晶配向処理剤(配向剤−11)を得た。
【0128】
実施例19
ポリイミド溶液SPI−3Sを用いて比較例3と同様の操作を行い、液晶配向処理剤(配向剤−12)を得た。
【0129】
<液晶セルの作製>
実施例及び比較例で調製した液晶配向処理剤について、以下のようにして液晶セルを作製した。
液晶配向処理剤を透明電極付きガラス基板にスピンコートし、80℃のホットプレート上で70秒間乾燥させた後、220℃のホットプレート上で10分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。ラビングによる液晶配向処理については、この塗膜面をロール径120mmのラビング装置でレーヨン布(吉川化工社製:YA−20R)を用いて、ロール回転数1000rpm、ロール進行速度50mm/sec、押し込み量0.3mmの条件でラビングし、液晶配向膜付き基板を得た。
また、ラビング耐性の評価においては、押し込み量を0.5mmにて行い、共焦点レーザー顕微鏡(レーザーテック社製 リアルタイム走査型レーザー顕微鏡 1LM21D)(レーザーテック社製「VL2000」)にて観察を行った。
【0130】
上記のように液晶配向処理を行なった液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に6μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板を液晶配向膜面が向き合いラビング方向が直行するようにして張り合わせ(ツイストネマティック液晶セル)、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、ツイストネマティックセルにおいては液晶MLC−2003(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、ツイストネマティック液晶セルを得た。
【0131】
作製した各液晶セルの物性の測定、および特性の評価の方法を以下に記述した。
<ラビング耐性評価>
ラビング耐性の検証試験としては、押し込み量を0.5mmに変えた条件でラビングし、膜表面を強焦点レーザー顕微鏡にて観察した。評価は以下のように行った。
○:削れカスやラビング傷が観察されない。
△:削れカスやラビング傷が観察される。
×:膜が剥離する又は目視でラビング傷が観察される。
【0132】
<プレチルト角測定>
作製したツイストネマティック液晶セルを105℃で5分間加熱した後、プレチルト角の測定と電圧保持率の測定を行った。プレチルト角はAXO METORICS社製のAxo Scan(ミュラーマトリクスポーラリメーター)を用いて測定した。
<バックライトエージング試験前後の電圧保持率測定>
作製したツイストネマティック液晶セルの電圧保持率の測定は、90℃の温度下で4Vの電圧を60μs間印加し、16.67ms後の電圧を測定し、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として計算した。
また、測定終了後、40inch型液晶TV用バックライトモジュール上に3週間放置し、電圧保持率測定を行い、変化率を見積もった。なお、電圧保持率(VHR)の測定には東陽テクニカ社製のVHR−1電圧保持率測定装置を使用し、エージング前後の変化率の算出は、以下の式を用いて行った。
(変化率算出式)

VHR変化率[%]=[1−(エージング後VHR/エージング前VHR)]×100

なお、表2および表3において、配向剤とは、液晶配向処理剤を意味する。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
表3中、本発明の実施例である液晶配向処理剤2〜4、6〜8及び10〜12は、いずれもラビング耐性が向上しており、側鎖がついたETOAにおいてはプレチルト角の付与の効果があることも確認された。また、VHRの向上の効果は見られないがバックライトエージングにおけるVHRの低下も抑制する効果が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の脂環式エポキシジカルボン酸無水物により、その末端が化学修飾されたポリイミド前駆体及び/又はポリイミドは、例えば、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料などの電子材料、さらに光導波路等の光通信用材料として好適に用いることができる。特に、液晶配向処理剤に使用した場合には、信頼性の高い液晶表示デバイスの作製が可能であり、TN液晶表示素子、STN液晶表示素子、TFT液晶表示素子、VA液晶表示素子、IPS液晶表示素子、OCB液晶表示素子などに好適に用いられる。