特許第6153256号(P6153256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6153256熱間鍛造性、耐高温酸化性および高温ハロゲンガス腐食性に優れたNi基合金およびこのNi基合金を用いた部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153256
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】熱間鍛造性、耐高温酸化性および高温ハロゲンガス腐食性に優れたNi基合金およびこのNi基合金を用いた部材
(51)【国際特許分類】
   C22C 19/05 20060101AFI20170619BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20170619BHJP
   C23C 14/00 20060101ALI20170619BHJP
   C22F 1/10 20060101ALN20170619BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20170619BHJP
【FI】
   C22C19/05 D
   C23C16/44 B
   C23C14/00 B
   !C22F1/10 H
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 694B
   !C22F1/00 692B
   !C22F1/00 692A
   !C22F1/00 611
   !C22F1/00 623
   !C22F1/00 625
   !C22F1/00 626
   !C22F1/00 630K
   !C22F1/00 640B
   !C22F1/00 640D
   !C22F1/00 650A
   !C22F1/00 661Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-175390(P2013-175390)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-80675(P2014-80675A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2016年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-213676(P2012-213676)
(32)【優先日】2012年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510312950
【氏名又は名称】日立金属MMCスーパーアロイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139240
【弁理士】
【氏名又は名称】影山 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100119921
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 正之
(74)【代理人】
【識別番号】100113826
【弁理士】
【氏名又は名称】倉地 保幸
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139240
【弁理士】
【氏名又は名称】影山 秀一
(72)【発明者】
【氏名】坂井 広和
(72)【発明者】
【氏名】菅原 克生
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−120221(JP,A)
【文献】 特開昭63−096235(JP,A)
【文献】 特開平08−053729(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1570171(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/170139(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/00 − 49/14
C23C 14/00
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で
Al:2.0〜5.0%、
Si:0.1〜2.5%、
Cr:0.8〜4.0%、
Mn:0.1〜1.5%、
B:0.001〜0.01%、
Zr:0.001〜0.1%を含有し、
残りがNiおよび不可避不純物からなる熱間鍛造性、耐高温酸化性および耐高温ハロゲンガス腐食性に優れたNi基合金。
【請求項2】
重量%で
Al:3.6〜4.2%、
Si:1.1〜1.7%、
Cr:1.6〜2.3%、
Mn:0.2〜0.7%、
B:0.001〜0.007%、
Zr:0.001〜0.06%を含有し、
残りがNiおよび不可避不純物からなる請求項1に記載の熱間鍛造性、耐高温酸化性および耐高温ハロゲンガス腐食性に優れたNi基合金。
【請求項3】
請求項1または2に記載のNi基合金から構成された、チップコンデンサやリチウム電池正極物質の焼成トレイ、CVD装置部材、PVD装置部材、LCD装置部材および半導体製造装置部材。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱間鍛造性、耐高温酸化性および高温ハロゲンガス腐食性に優れたNi基合金、さらに、このNi基合金を用いた部材、特に、チップコンデンサの焼成トレイ、リチウム電池正極物質の焼成トレイ、CVD装置部材、PVD装置部材、LCD装置部材および半導体製造装置部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、酸化炉や焼成炉で使用するトレイなどの部材には、部材から発生する酸化スケールの製品への混入を防ぐために、耐高温酸化性に優れたNi基合金が使用されている。
このような耐高温酸化性に優れたNi基合金としては、例えば、特許文献1に示すように、質量%で(以下、%は質量%を示す)Al:3.6〜4.4%を含有し、さらに必要に応じて、Si:0.1〜2.5%、Cr:0.8〜4.0%、Mn:0.1〜1.5%の内の1種または2種以上を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、高温熱交換機用のフィン、チューブとして用いられる耐高温酸化性に優れたNi基合金が提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、Al:0.05〜2.5%、Si:0.3〜2.5%、Cr:0.5〜3.0%、Mn:0.5〜1.8%を含有し、かつ、Si/Cr<1.1以下とし、残部がNiおよび不可避不純物からなる耐熱性と耐食性に優れたNi基合金が提案されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、Al:3.1〜4.3%、Si:0.5〜1.5%、Cr:1〜2%、Mn:0.45〜0.65%、MgとCaの一種又は二種を0.005〜0.05%含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなる高温強度および耐火花消耗性に優れた点火プラグ電極材用のNi基合金が提案されている。
【0005】
また、CVD装置部材、PVD装置部材、LCD装置部材および半導体製造装置部材には、ハロゲン系ガスによる耐プラズマ反応性や成膜・クリーニングに対する耐食性にすぐれたNi−Al層を表面に形成した純ニッケルまたはNi基合金部材が使用されている。
このような高温ハロゲンガス腐食性に優れた部材としては、例えば、特許文献4に示すように、基材の材質が純ニッケルまたはNi−Cr−Fe合金で、その表面にNi−Al合金層を形成した皮膜形成処理装置用部材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3814822号公報
【特許文献2】特開平2−163336号公報
【特許文献3】特許第3206119号公報
【特許文献4】特開2012−219369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電子部品やリチウムイオン電池正極物質の製造用治具などの用途では、耐高温酸化性に優れ、かつ、大型の冶具部材が求められている。しかし、上記特許文献1〜3として示したNi基合金は熱間鍛造性あるいは耐高温酸化性が十分とはいえないため、熱間鍛造性及び耐高温酸化性が要請される用途のNi基合金としては満足できる特性を備えるものではなかった。
さらに、半導体製造装置部材などの用途では、高い寸法精度が求められる部位や可動部でも更なるハロゲンガスに対する耐食性が求められるようになった。しかし、上記特許文献4として示した皮膜形成処理装置用部材は、基材を機械加工した後に、皮膜形成処理を施すため、高い寸法精度を出すことが困難であり、可動部では皮膜がミクロ的に破壊されパーティクルを発生させる源になってしまうことがら、こうした部位で満足できる特性を備えるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は、かかる課題を解決し、従来よりも一層優れた熱間鍛造性を有し、かつ、すぐれた耐高温酸化性・耐高温ハロゲンガス腐食性を有するNi基合金を開発すべく鋭意研究を行ったところ、重量%で、Al:2.0〜5.0%、Si:0.1〜2.5%、Cr:0.8〜4.0%、Mn:0.1〜1.5%、残部がNiおよび不可避不純物からなる前記特許文献1に記載されるような成分組成のNi基合金に対して、B:0.001〜0.01%及びZr:0.001〜0.1%を含有せしめることによって、このNi基合金は、前記特許文献1に記載されるNi基合金と同等の耐高温酸化性を示すばかりか、より一段とすぐれた熱間鍛造性を備え、かつ高温ハロゲンガスにも優れた耐腐食性を示すという研究結果が得られたのである。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、
「(1)重量%で
Al:2.0〜5.0%、
Si:0.1〜2.5%、
Cr:0.8〜4.0%、
Mn:0.1〜1.5%、
B:0.001〜0.01%、
Zr:0.001〜0.1%を含有し、
残りがNiおよび不可避不純物からなる熱間鍛造性、耐高温酸化性および耐高温ハロゲンガス腐食性に優れたNi基合金。
(2)重量%で
Al:3.6〜4.2%、
Si:1.1〜1.7%、
Cr:1.6〜2.3%、
Mn:0.2〜0.7%、
B:0.001〜0.007%、
Zr:0.001〜0.06%を含有し、
残りがNiおよび不可避不純物からなる前記(1)に記載の熱間鍛造性、耐高温酸化性および耐高温ハロゲンガス腐食性に優れたNi基合金。
(3)前記(1)または(2)に記載のNi基合金から構成されたチップコンデンサやリチウム電池正極物質の焼成トレイ、CVD装置部材、PVD装置部材、LCD装置部材および半導体製造装置部材。」
を特徴とするものである。
【0010】
次に、この発明のNi基合金について、その合金組成における各成分元素の数値限定理由について詳述する。
【0011】
Al:
Alは、Ni基合金の表面にアルミナ被膜を形成し、耐高温酸化性を向上させ、酸化スケールの発生を低減する作用があり、また特に高温フッ素系ガス環境では保護性の高いフッ化アルミニウムを形成し、腐食生成物の発生を抑制することでパーティクルの発生を低減する作用があるので添加するが、その含有量が2.0%未満では十分なアルミナ皮膜やフッ化アルミニウム皮膜が形成されないので所望の効果が得られず、一方、その含有量が5.0%を超えると、素地中にγ´相(NiAl金属間化合物)が析出することにより熱間加工性が低下し、加工することが困難となるので好ましくない。したがって、Alの含有量は2.0〜5.0%と定めた。より好ましいAlの含有量は3.6〜4.2%である。
【0012】
Si:
Siは、耐高温酸化性を向上させる作用があるので添加するが、その含有量が0.1%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方、その含有量が2.5%を超えると、熱間加工時に割れが発生し易くなることから、その含有量を0.1〜2.5%と定めた。より好ましいSiの含有量は、1.1〜1.7%である。
【0013】
Cr:
Crは、耐熱性を向上させる作用があるので添加するが、その含有量が0.8%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方、その含有量が4.0%を超えると、高温強度が低下傾向を示すようになることから、その含有量を0.8〜4.0%と定めた。より好ましいCrの含有量は、1.6〜2.3%である。
【0014】
Mn:
Mnは、高温強度を向上させる作用があるので添加するが、その含有量が0.1%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方、その含有量が1.5%を超えると、耐高温酸化性が低下することから、その含有量を0.1〜1.5%と定めた。より好ましいMnの含有量は、0.2〜0.7%である。
【0015】
BおよびZr:
BとZrは、これらを共存させて添加することにより、Ni基合金の熱間鍛造性を向上させる作用がある。
BとZr、それぞれの含有量について言えば、Bの含有量が0.001%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方、その含有量が0.01%を超えると、逆に熱間鍛造性を低下させることから、Bの含有量は、0.001〜0.01%と定めた。より好ましいBの含有量は、0.001〜0.007%である。
また、Zrも、Ni基合金の熱間鍛造性を向上させるが、Zrの含有量が0.001%未満では、熱間鍛造性向上に所望の効果が得られず、一方、その含有量が0.1%を超えると、B添加の場合と同様、逆に熱間鍛造性を低下させることから、Zrの含有量は、0.001〜0.1%と定めた。より好ましいZrの含有量は、0.001〜0.06%である。
【0016】
本発明では、BとZrを、それぞれ、0.001〜0.01%、0.001〜0.1%(好ましくは、それぞれを、0.001〜0.007%、0.001〜0.06%)の範囲内で、両者を同時に添加含有せしめるが、いずれか一方のみを添加する場合、あるいは、いずれか一方でも本発明範囲外の添加量となった場合には、熱間鍛造性の向上効果を期待することはできない。これは、BとZrの同時添加によって、Ni基合金の結晶粒界が強化されるために、熱間鍛造における粒界破断発生が抑制されることによるものと推測される。
【0017】
前記した合金成分組成からなる本発明のNi基合金は、耐高温酸化性・耐高温ハロゲンガス腐食性に優れるとともに、すぐれた熱間鍛造性を有することから、好適には、チップコンデンサの焼成トレイ、リチウム電池正極物質の焼成トレイ、CVD装置部材、PVD装置部材、LCD装置部材および半導体製造装置部材等の構成部材として用いることができる。
また、本発明のNi基合金は、上記のほか、Ni基合金の板材、管材、線材、鋳造材、鍛造材、およびこれらから加工形成される治具や部材のうち、酸化炉用部材、焼成炉用部材、銀錫焼成工程のマッフル、超硬合金製造用工程用治具、特殊粉末(LED原料等)焼成工程用レトルト等、耐高温酸化性と熱間鍛造性を必要とする各種用途に使用することが勿論可能である。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、この発明のNi基合金は極めて優れた熱間鍛造性、耐高温酸化性および耐高温ハロゲンガス腐食性を有することから、本発明のNi基合金から作製したチップコンデンサの焼成トレイ、リチウム電池正極物質の焼成トレイは、酸化スケールの発生も少なく手入れが不要であり、長寿命でコストの低減を図ることができ、また本発明のNi基合金から作製したCVD装置部材、PVD装置部材、LCD装置部材および半導体製造装置部材はハロゲンガス系のプロセス環境でも腐食によるパーティクルの発生が抑制されることから、製造物である半導体やFPDの歩留まり向上に寄与し、産業上優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0020】
原料を所定の割合に配合し、これらを高周波溶解炉にて真空溶解、真空鋳造し、表1に示す合金成分組成を有し、直径:300mmの寸法をもった本発明Ni基合金1〜15からなるインゴットを作製した。
ついで、このインゴットを1200℃の温度に加熱した状態で熱間鍛造を施して、厚さ:25mm、幅:300mmの寸法を有する板状体を作製した。
この熱間鍛造した板状体をさらに1200℃の温度で熱間圧延し、幅:300mmの寸法を有する熱延板に加工し、さらにこの熱延板を、900℃から急冷する熱処理を施したのち、表面の酸化スケールを除去し、最終的に厚さ:3mmの板材を作製した。
【0021】
比較のために、原料を所定の割合に配合し、これらを高周波溶解炉にて真空溶解、真空鋳造し、表2、表3に示す合金成分組成を有し、直径:300mmの寸法をもった比較Ni基合金1〜12及び従来Ni基合金1からなるインゴットを作製した。
なお、表3に示す従来Ni基合金1は、前記特許文献1に記載された合金成分組成からなるNi基合金である。また、同じく表3に示す従来Ni基合金2は、半導体製造装置等に多くの使用実績のある重量%で、Cr:15.5%、Fe:9%、残部Niおよび不可避不純物の化学組成をもつ、いわゆる600合金(UNS N06600)と言われる合金である。
上記の比較Ni基合金1〜12及び従来Ni基合金1からなるインゴットについて、本発明Ni基合金1〜15と同様な熱間鍛造、熱間圧延、熱処理および酸化スケール除去処理を施した。従来Ni基合金2は市販の3mm板を購入した。
なお、熱間鍛造中に鍛造割れを発生したものについては、表2、表3に「熱間鍛造中割れ発生」と記した。
【0022】
次いで、本発明Ni基合金1〜15、比較Ni基合金1〜12及び従来Ni基合金1のうち、熱間鍛造中に鍛造割れを発生せず、厚さ:3mmの板材を作製することができたもの、および、従来Ni基合金2について、次のようにして、耐高温酸化性の評価試験を実施した。
まず、上記で作製した厚さ:3mmの板材から、それぞれ、50×25×3mmtの腐食試験片を作製した。
次いで、これら試験片の表面を研磨し最終的に耐水エメリー紙#400仕上げとした。
次いで、研磨後の試料をアセトン中超音波振動状態に5分間保持し脱脂した。次いで、前記本発明Ni基合金1〜15、比較Ni基合金1〜12および従来Ni基合金1、2からなるそれぞれの腐食試験片について、750℃×30時間の暴露試験を10回繰り返し実施し、試験後の腐食試験片の断面を光学顕微鏡により観察して酸化被膜の厚さを測定した。
【0023】
さらに、別途同様の方法で作成した前記本発明Ni基合金1〜15、比較Ni基合金1〜12および従来Ni基合金1、2からなるそれぞれの試験片について、プラズマCVDチャンバー内のガス排気口付近に取り付け、高温のフッ素系ガスに曝したときのパーティクル量を比較した。試験条件は、次の通りである。チャンバー内圧力:5torr、クリーニングガス:C、電極間に750Wの高周波電力を印加することで60秒間プラズマを発生させた。試験片近傍のガス排気口に取り付けたパーティクルカウンターによりパーティクル数を測定した。この時、チャンバー内温度を500℃に保持した。評価は従来Ni基合金2を100%として比較した。
表1〜表3に、その測定結果を示す。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
表1と表2に示される結果から、この発明から外れた合金成分組成を有する比較Ni基合金1〜12の内、比較Ni基合金2、4、9〜12については、熱間鍛造中に割れを発生したため、耐高温酸化性評価試験・耐高温ハロゲンガス腐食性評価試験にまで至らなかった。同様に比較Ni基合金7については、熱間鍛造後に微細な割れ発生を確認したため、耐高温酸化性評価試験・耐高温ハロゲンガス腐食性評価試験にまで至らなかった。
特に、Zrを単独添加した比較Ni基合金9、Bを単独添加した比較Ni基合金11、また、ZrとBのいずれかが本発明範囲外である比較Ni基合金10、12については、いずれも熱間鍛造中に割れを発生し、熱間鍛造性が劣るものであった。
また、熱間鍛造が可能であった比較Ni基合金1、3についても、いずれも酸化皮膜の厚さが厚く形成されており、本発明Ni基合金1〜15と比較すると、耐高温酸化性に劣るものであった。また、熱間鍛造が可能であった比較Ni基合金5、6、8についても、いずれもパーティクル発生率が高く、本発明Ni基合金1〜15と比較すると、耐高温ハロゲンガス腐食性に劣るものであった。
また、表1、表3に示される結果から、本発明Ni基合金1〜15は、従来材料である従来Ni基合金1に比べ熱間鍛造性に優れていることがわかる。なお、従来Ni基合金1についても、熱間鍛造中に割れを発生したため、耐高温酸化性評価試験にまで至らなかった。さらに、従来材料である従来Ni基合金2に比べ耐高温ハロゲンガス腐食性に優れていることがわかる。
上記表1〜表3の結果から、本発明のNi基合金は、特に、合金成分であるBとZrをそれぞれ所定量、同時添加しているため、熱間鍛造性に優れ、しかも、耐高温酸化性・耐高温ハロゲン腐食性に優れるものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明のNi基合金は、熱間鍛造性に優れ、また、耐高温酸化性・耐高温ハロゲンガス腐食性にも優れることから、チップコンデンサの焼成トレイ、リチウム電池正極物質の焼成トレイ、CVD装置部材、PVD装置部材、LCD装置部材および半導体製造装置部材を構成する部材として好適である。
さらに、これ以外にも、Ni基合金の板材、管材、線材、鋳造材、鍛造材、およびこれらから加工形成される治具や部材のうち、酸化炉用部材、焼成炉用部材、銀錫焼成工程のマッフル、超硬合金製造用工程用治具、特殊粉末(LED原料等)焼成工程用レトルト等、耐高温酸化性と熱間鍛造性を必要とする各種用途の構成部材として適用することが可能である。