特許第6153604号(P6153604)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153604
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】抗菌性キノリン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/10 20060101AFI20170619BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20170619BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170619BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170619BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20170619BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20170619BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20170619BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   C07D401/10CSP
   A61P31/04
   A61P43/00 121
   A61K45/00
   A61K31/5377
   A61K31/4709
   C07D401/14
   C07D405/14
【請求項の数】38
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2015-507549(P2015-507549)
(86)(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公表番号】特表2015-518003(P2015-518003A)
(43)【公表日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】EP2013058703
(87)【国際公開番号】WO2013160435
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】12165934.6
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ギルモント,ジェローム,エミール,ジョージズ
(72)【発明者】
【氏名】モッテ,マガリ,マドレーヌ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】ランソワ,デイビッド,フランシス,アレイン
(72)【発明者】
【氏名】バレマンズ,ウェンディ,ミア アルバート
【審査官】 杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−514795(JP,A)
【文献】 特表2007−518775(JP,A)
【文献】 特表2010−511671(JP,A)
【文献】 特表2005−504747(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/091324(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 201/00 − 521/00
A61K 31/00 − 31/80
A61P 1/00 − 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その任意の立体化学的異性体形態を含む、式(Ia)または(Ib):
【化1】


[式中、
pは、1、2、3、または4に等しい整数であり;
は、水素、シアノ、シアノC1〜6アルキル、ホルミル、カルボキシル、ハロ、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ポリハロC1〜6アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルチオ、C1〜6アルキルチオC1〜6アルキル、−C=NOR11、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、アミノC1〜6アルキル、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノC1〜6アルキル、C1〜6アルキルカルボニルアミノC1〜6アルキル、R9b10bN−C(=O)−、アリールC1〜6アルキル、アリールカルボニル、R9a10aN−C1〜6アルキル、ジ(アリール)C1〜6アルキル、アリール、C3〜6シクロアルキル、R9a10aN−、R9a10aN−C(=O)−、C1〜4アルキル−S(=O)−、またはHetであり;
は、水素、C1〜6アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシ、メルカプト、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、アミノ、ピロリジノ、または式
【化2】


(式中、Yは、CH、O、S、NH、またはN−C1〜6アルキルである)の基であり;
は、水素、ハロ、C1〜6アルキル、アリール、またはHetであり;
は、アリールまたはHetであり;
は、水素、C1〜6アルキル、アリールC1〜6アルキル、Het、HetC1〜6アルキル、または−C(=NH)−NHであり;
は、水素、C1〜6アルキル、またはモノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノであり;
は、オキソであり;または
およびRは、共に基−CH=CH−N=を形成し;
9aおよびR10aは、それらが結合する窒素原子と共に、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、4−チオモルホリニル、2,3−ジヒドロイソインドール−1−イル、チアゾリジン−3−イル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジル、ヘキサヒドロ−1H−アゼピニル、ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピニル、ヘキサヒドロ−1,4−オキサゼピニル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−イル、ピロリニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、およびトリアジニルからなる群から選択される基を形成し、各基は、1、2、3、または4個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、C1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキル、ハロ、アリールC1〜6アルキル、ヒドロキシ、C1〜6アルキルオキシ、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、C1〜6アルキルチオ、C1〜6アルキルチオC1〜6アルキル、アリール、ピリジル、またはピリミジニルであり
9bおよびR10bはそれぞれ独立して、水素、C1〜6アルキル、アリール、またはHetを表し;
11は、水素またはC1〜6アルキルであり;
アリールは、フェニル、ナフチル、アセナフチル、またはテトラヒドロナフチルから選択される同素環であって、各環は1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、ハロ、シアノ、シアノC1〜6アルキル、ニトロ、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、C1〜6アルキル、フェニルで置換されていてもよいC2〜6アルケニル、ポリハロC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、カルボキシル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、モノホリニル、またはモノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノカルボニルから選択される、同素環であり;
アリールは、フェニル、ナフチル、アセナフチル、またはテトラヒドロナフチルから選択される同素環であって、各環は1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、ハロ、シアノ、シアノC1〜6アルキル、ニトロ、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、C1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルチオ、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、カルボキシル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、Het、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノカルボニル、またはC1〜4アルキル−S(=O)−から選択される、同素環であり;
Hetは、N−フェノキシピペリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、4−チオモルホリニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、またはピリダジニルから選択される単環式複素環、またはキノリニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル、またはベンゾ[1,3]ジオキソリルから選択される二環式複素環であって、各単環式および二環式複素環は、1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、ハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、またはアリールC1〜6アルキルから選択される、単環式または二環式複素環である]
の化合物、そのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物。
【請求項2】
が、ハロ、C1〜4アルキル−S(=O)−、またはHetである、請求項1に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項3】
pが1である、請求項1または2に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項4】
が、C1〜6アルキルオキシ、または式
【化3】


[式中、YはOである]の基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項5】
が水素である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項6】
が1個の置換基で置換されていてもよいフェニルであって、前記置換基がハロ、シアノ、またはC1〜4アルキル−S(=O)−から選択されるフェニルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項7】
がナフチルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項8】
が、水素、C1〜6アルキル、フェニルC1〜6アルキル、または−C(=NH)−NHである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項9】
が水素であり、かつRがオキソである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項10】
前記化合物が式(Ia)の化合物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項11】
がキノリン環の6位に置かれる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項12】
アリールが、それぞれが独立して、ハロ;シアノ;アルキル;またはアルキルオキシから選択される、1個または2個の置換基で置換されていてもよいフェニルである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項13】
Hetが、ピペジニル、フラニル、ピリジニル、ベンゾフラニル、またはベンゾ[1,3]ジオキソリルである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項14】
pが1であり;
がハロ;C1〜6アルキルチオ;C1〜4アルキル−S(=O);またはHetであり;
が、C1〜6アルキルオキシまたはモルホリニルであり;
が水素であり;
が、3位または4位のいずれかでハロ、シアノ、またはC1〜4アルキル−S(=O)−で置換されていてもよいフェニルであり;かつ
が、水素、C1〜6アルキル、フェニルC1〜6アルキル、または−C(=NH)−NHである、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項15】
前記化合物が、その任意の立体化学的異性体形態を含む、以下の化合物:
【表1】


【表2】

【表3】

;そのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物から選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
薬剤として使用するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項17】
細菌感染の治療用薬剤として使用するための請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物
【請求項18】
薬学的に許容される担体、および請求項1〜15のいずれか一項に定義される化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物の治療有効量を有効成分として含む医薬組成物。
【請求項19】
細菌感染の治療用薬剤の製造のための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物の使用。
【請求項20】
前記細菌感染がグラム陽性菌による感染である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記グラム陽性菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記グラム陽性菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)である、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記細菌感染がマイコバクテリア感染である、請求項19に記載の使用。
【請求項24】
前記マイコバクテリア感染が結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による感染である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
(a)請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物と、(b)1つまたは複数の他の抗菌薬と
を含む、組合せ医薬
【請求項26】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物を含む医薬組成物であって、1つまたは複数の他の抗菌薬と組合せて用いるための医薬組成物。
【請求項27】
細菌感染の治療における同時使用、個別使用、または逐次使用のための組合せ製剤としての、(a)請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物と、(b)1つまたは複数の他の抗菌薬とを含有する製品。
【請求項28】
細菌感染を治療するための医薬組成物であって、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物、またはそのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、もしくはその溶媒和物を含む、医薬組成物。
【請求項29】
前記細菌感染がグラム陽性菌による感染である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記グラム陽性菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記グラム陽性菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記細菌感染がマイコバクテリア感染である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記マイコバクテリア感染が結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による感染である、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
請求項1に記載の化合物を調製するための方法であって、
a)Pが保護基である式(IIa)の中間体を脱保護して、
【化4】


式(Ia−1)により表される、Rが水素である式(Ia)の化合物を調製すること
を特徴とする、方法
【請求項35】
請求項1に記載の化合物を調製するための方法であって、
b)塩酸またはトリフルオロ酢酸で式(IIa)の中間体を脱保護して
【化5】


式(Ib−2)により表される、Rが水素であり、Rが水素であり、かつRがオキソである式(Ib)の化合物を調製すること
を特徴とする、方法。
【請求項36】
請求項1に記載の化合物を調製するための方法であって、
c)式(Va)の中間体を式(VIa)の化合物と反応させて、
【化6】


式(Ia)の化合物を調製すること
を特徴とする、方法。
【請求項37】
式(Ia)または(Ib)の化合物を相互変換することをさらに特徴とする、請求項34〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
式(Ia)または(Ib)の化合物を、治療上活性な無毒性酸付加塩に、または治療上活性な無毒性塩基付加塩に変換すること、あるいは逆に、
酸付加塩を遊離塩基に変換すること、または塩基付加塩を遊離酸に変換すること
をさらに特徴とする、請求項34〜37のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、これらに限定されないが、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボビス(M.bovis)、らい菌(M.leprae)、マイコバクテリウム・アビウム(M.avium)、およびマイコバクテリウム・マリヌム(M.marinum)などの病原性マイコバクテリア、または病原性のブドウ球菌(Staphylococci)もしくは連鎖球菌(Streptococci)を原因とする疾患を含む、細菌性疾患の治療に有用な新規の置換キノリン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は、全世界に分布する、重篤で致死的となり得る感染症である結核(TB)の病原体である。世界保健機構(World Health Organization)の推定によると、毎年800万を超える人がTBに罹患し、年間200万人が結核により死亡する。最近の10年間で、TBの症例は世界中で20%増加しており、最も貧困な地域で最も負担が大きくなっている。これらの傾向が継続すると、TB発生率は次の20年で41%増加することになる。有効な化学療法の導入以来50年であるが、TBは依然として、世界でAIDSに次ぐ、成人の感染による死亡原因の主たるものである。TBの蔓延を助長するのは、多剤耐性株の出現の増加とHIVとの極めて有害な共生である。HIV陽性でかつTBに感染した人は、HIV陰性の人よりも活動的なTBを発症する可能性が30倍高く、またTBは、世界においてHIV/AIDSに罹患した3人のうちの1人の死亡原因となっている。
【0003】
結核治療に対する既存の方法はすべて、複数薬剤の併用を含む。例えば、米国公衆衛生局(U.S.Public Health Service)により推奨されるレジメンは、イソニアジド、リファンピシン、およびピラジナミドの2ヶ月間の併用と、それに続くイソニアジドおよびリファンピシンのみによるさらに4ヶ月間の併用である。これらの薬剤はHIVに感染した患者ではさらに7ヶ月間継続される。結核菌(M.tuberculosis)の多剤耐性株に感染した患者の場合には、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、カプレオマイシン、エチオナミド、サイクロセリン、シプロフォキサシン(ciprofoxacin)、およびオフロキサシンなどの薬剤が、この併用療法に加えられる。結核の臨床治療に有効な単一薬剤も、6ヶ月未満の治療を可能にする薬剤の併用も存在しない。
【0004】
患者および提供者のコンプライアンスを容易にするレジメンを可能にすることにより現行の治療を改善する新規薬剤に対する医療上の高い必要性が存在する。より短期間のレジメンおよび管理の必要性が少ないレジメンがこれを達成するための最良の方法である。治療の恩恵の大部分は、4種の薬剤が一緒に投与される集中的段階、すなわち殺菌段階の期間である最初の2ヶ月に現れ;細菌負荷は大幅に低減され、患者は非感染になる。4〜6ヶ月の継続段階、すなわち滅菌段階が、残存する細菌を排除し、かつ再発のリスクを最小限に抑えるために必要とされる。治療を2ヶ月以下に短縮する、有効な滅菌薬剤があれば、極めて有益である。集中的に管理する必要性を少なくすることによりコンプライアンスを容易にする薬剤も必要とされている。明らかに、治療の全期間および薬剤の投与頻度の両方を低減する化合物があれば、最も大きな恩恵が得られるであろう。
【0005】
TBの蔓延を助長するのは、多剤耐性株、すなわちMDR−TBの発生の増加である。世界中のすべての症例の最大4パーセントが、MDR−TB、すなわち、最も有効な薬剤である4種標準薬剤、イソニアジド、およびリファンピンに耐性な菌株とみなされている
。MDR−TBは、治療しないと致死的であり、しかも標準的治療により十分に治療することができず、そのため、最大2年間、「第2選択」薬が治療に必要となる。これらの薬剤は、多くの場合、毒性がありかつ高価で、有効性もわずかである。有効な治療法がない状態で、感染性のMDR−TB患者がこの疾患を広め続けており、MDR−TB株による感染を新たに生み出している。薬剤耐性株、特にMDR株に対する活性を示す可能性のある、新規の作用機序を有する新規薬剤に対する医療上の高い必要性が存在する。
【0006】
本明細書の上記または下記に使用される「薬剤耐性」という用語は、微生物分野の技術者により十分理解されている用語である。薬剤耐性マイコバクテリウム(Mycobacterium)は、以前有効であった少なくとも1種の薬剤に対してもはや感受性を示さず、また以前有効であった少なくとも1種の薬剤による抗菌性攻撃に耐える能力を発達させたマイコバクテリウム(Mycobacterium)である。薬剤耐性株は、この耐性力をその子孫に受け継がせることができる。前記耐性は、単一薬剤または種々の薬剤に対するその感受性を変化させる、細菌細胞におけるランダムな遺伝子突然変異に起因する可能性がある。MDR結核は、少なくともイソニアジドおよびリファンピシン(現在最も強力な2種の抗TB薬剤である)に対する細菌耐性(他の薬剤に対する耐性を伴うかまたは伴わない)による特定形態の薬剤耐性結核である。したがって、本明細書の上記または下記に使用される場合は常に、「薬剤耐性」には、多剤耐性が含まれる。
【0007】
TBの蔓延を制御することに関する別の要因には、潜伏性TBの問題がある。数十年にわたる結核(TB)制御プログラムにもかかわらず、約20億人が、無症候性であるが、結核菌(M.tuberculosis)に感染している。これらの個体の約10%に、一生の間に活動的なTBを発症するリスクがある。TBの世界的な蔓延は、HIV患者のTB感染および多剤耐性TB株(MDR−TB)の増加により加速されている。潜伏性TBの再活性化が、疾患発症の高リスク要因であり、HIV感染個体の死亡原因の32%を占める。TBの蔓延を制御するためには、休止状態または潜伏状態の細菌を殺すことができる新規な薬剤を発見する必要がある。休止状態のTBは、腫瘍壊死因子αまたはインターフェロン−γに対する抗体のような免疫抑制剤の使用により宿主免疫が抑制されるなどのいくつかの要因によって再活性化されて疾患を引き起こし得る。HIV陽性患者の場合、潜伏性TBに利用可能な唯一の予防的治療は、リファンピシン、ピラジナミドの2〜3ヶ月レジメンである。この治療レジメの効力はまだ明確ではなく、さらに資源が限定される環境下では、治療期間が重大な制約となる。したがって、潜伏性TB細菌を保持する個体に対して、化学予防薬として作用し得る新規薬剤を同定する必要性が大いにある。結核菌(tubercle bacilli)は、吸入により健常個体に侵入するが、肺の肺胞マクロファージにより貪食される。これにより、強力な免疫応答および肉芽腫の形成がもたらされるが、この肉芽腫は、T細胞により取り囲まれた、結核菌(M.tuberculosis)感染マクロファージからなる。6〜8週間後、宿主免疫応答により、壊死による感染細胞の死および特定の細胞外細菌による乾酪性物質の蓄積が生じ、その周辺をマクロファージ、類上皮細胞、および周辺リンパ組織の層が取り囲む。健常個体の場合には、マイコバクテリアの大部分は、これらの環境下で死滅するが少数の細菌はなお生き残り、非複製的な代謝低下状態で存在すると考えられ、イソニアジドのような抗TB薬による殺菌に対して耐性となっている。これらの細菌は、疾患の何ら臨床徴候を示すことなく、生理的環境の変化がある中で、個体の生涯にわたってさえ残存することができる。しかしながら、症例の10%で、これらの潜伏性細菌が再活性化して疾患を引き起こすことがある。これらの存続する細菌の発生に関する仮説の1つは、ヒト病変における病態生理学的な環境、すなわち、低下した酸素分圧、限定された栄養源、および酸性pHの環境である。これらの要因によって、主要な抗マイコバクテリウム薬に対してこれらの細菌が表現型として耐性になると仮定されている。
【0008】
TBの蔓延を管理することに加えて、第1選択の抗生物質に対する耐性の問題が生じて
いる。重要な例の一部として、ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、バンコマイシン耐性腸球菌(enterococci)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、多剤耐性サルモネラ菌(salmonellae)が挙げられる。
【0009】
抗生物質に対する耐性は、重大な結果をもたらしている。耐性菌を原因とする感染は、治療に応答せず、その結果、病気が長期にわたり、また死のリスクが高まる。治療の不成功により、感染力のある期間が延長され、それによって、地域社会の中を移動する感染した人の数が増加し、したがって、耐性菌感染に罹患するリスクに一般住民が曝される。病院は、世界中で抗菌薬耐性問題の重要な構成要素である。感受性が高い患者、集中的かつ長期間の抗菌薬の使用、および交差感染が組み合わさると、高度に耐性の病原菌による感染が生じる。
【0010】
抗菌薬による自己治療が、耐性に寄与する別の主要な要因である。自己治療の抗菌薬は、不必要であることもあり、投薬が不適切なことも多く、活性薬剤を適当量含有していないこともある。
【0011】
推奨治療に関する患者のコンプライアンスは別の主要な問題である。患者は、気分がよくなり始めると薬物の服用を忘れ、治療を中断するか、または全コースを行うことができないことがあり、それによって、微生物が殺されるよりも適合するのに理想的な環境が築かれる。
【0012】
複数の抗生物質に対する耐性が出現するため、医師は、有効な治療法がない感染症に直面している。そのような感染症の罹患率、死亡率、および財政的費用により、世界中で医療制度に対する負担が増大している。
【0013】
したがって、細菌感染、特に薬剤耐性および潜伏性のマイコバクテリア感染を含むマイコバクテリア感染、さらに他の細菌感染、特に耐性細菌株を原因とする細菌感染を治療するための新規な化合物に対する高度な必要性が存在する。
【0014】
国際公開第2004/011436号パンフレット、国際公開第2005/070924号パンフレット、国際公開第2005/070430号パンフレット、国際公開第2005/075428号パンフレット、および国際公開第2007/014885号パンフレットは、マイコバクテリア(Mycobacteria)、特に結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対して活性を有する、特定の置換キノリン誘導体について開示している。国際公開第2005/117875号パンフレットは、耐性マイコバクテリア株に対する活性を有する置換キノリン誘導体について記載している。国際公開第2006/067048号パンフレットは、潜伏結核に対する活性を有する置換キノリン誘導体について記載している。これらの置換キノリン誘導体の特定の化合物の1つが、Science(2005),307,223−227に記載されており、またその作用様式が国際公開第2006/035051号パンフレットに記載されている。
【0015】
国際公開第2006/131519号パンフレット、国際公開第2007/000434号パンフレット、国際公開第2007/000435号パンフレット、国際公開第2007/000436号パンフレット、国際公開第2007/014934号パンフレット、国際公開第2007/014940号パンフレット、および国際公開第2007/014941号パンフレットは、ブドウ球菌(Staphylococcus)および連鎖球菌(Streptococcus)などの細菌に対する活性を有する特定の置換キノリン誘導体について開示している。
【0016】
国際公開第2008/068266号パンフレット、国際公開第2008/068267号パンフレット、国際公開第2008/068268号パンフレット、国際公開第2008/068269号パンフレット、国際公開第2008/068270号パンフレット、および国際公開第2008/068272号パンフレットは、マイコバクテリア(Mycobacteria)、特に結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対して、さらにブドウ球菌(Staphylococcus)および連鎖球菌(Streptococcus)などの細菌に対して活性を有する特定の置換キノリン誘導体について開示している。
【0017】
抗生物質耐性感染を治療するための他の置換キノリンが、米国特許第5,965,572号明細書(米国)に、細菌微生物の増殖を阻害するための他の置換キノリンが国際公開第00/34265号パンフレットに開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、特にマイコバクテリアの細菌増殖の阻害であるが、連鎖球菌(Streptococci)およびブドウ球菌(Staphylococci)などの他の細菌の細菌増殖も阻害する特性を有する、新規化合物、特に置換キノリン誘導体を提供することであり、したがって、これらの化合物は、細菌性疾患、特に、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、または結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(潜伏性疾患を含み、かつ薬剤耐性結核菌株を含む)、マイコバクテリウム・ボビス(M.bovis)、らい菌(M.leprae)、マイコバクテリウム・アビウム(M.avium)、およびマイコバクテリウム・マリヌム(M.marinum)などの病原菌を原因とする細菌性疾患の治療に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、その任意の立体化学的異性体形態を含む、式(Ia)または(Ib):
【化1】


[式中、
pは、1、2、3、または4に等しい整数であり;
は、水素、シアノ、シアノC1〜6アルキル、ホルミル、カルボキシル、ハロ、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ポリハロC1〜6アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルチオ、C1〜6アルキルチオC1〜6アルキル、−C=N−OR11、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、アミノC1〜6アルキル、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノC1〜6アルキル、C1〜6アルキルカルボニルアミノC1〜6アルキル、R9b10bN−C(=O)−、アリールC1〜6アルキル、アリールカルボニル、R9a10aN−C1〜6アルキル、ジ(アリール)C1〜6アルキル、アリール、C3〜6シクロアルキル、R9a10aN−、R9a10aN−C(=O)−、C1〜4アルキル−S(=O)−、またはHetであり;
は、水素、C1〜6アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシ、メル
カプト、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、アミノ、ピロリジノ、または式
【化2】


(式中、Yは、CH、O、S、NH、またはN−C1〜6アルキルである)の基であり;
は、水素、ハロ、C1〜6アルキル、アリール、またはHetであり;
は、アリールまたはHetであり;
は、水素、C1〜6アルキル、アリールC1〜6アルキル、Het、Het1〜6アルキル、または−C(=NH)−NHであり;
は、水素、C1〜6アルキル、またはモノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノであり;
は、オキソであり;または
およびRは、互いに結合して基−CH=CH−N=を形成し;
9aおよびR10aは、それらが結合する窒素原子と共に互いに結合して、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、4−チオモルホリニル、2,3−ジヒドロイソインドール−1−イル、チアゾリジン−3−イル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジル、ヘキサヒドロ−1H−アゼピニル、ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピニル、ヘキサヒドロ−1,4−オキサゼピニル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−イル、ピロリニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、およびトリアジニルからなる群から選択される基であって、各基は、1、2、3、または4個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、C1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキル、ハロ、アリールC1〜6アルキル、ヒドロキシ、C1〜6アルキルオキシ、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、C1〜6アルキルチオ、C1〜6アルキルチオC1〜6アルキル、アリール、ピリジル、またはピリミジニルから選択される基を形成し;
9bおよびR10bはそれぞれ独立して、水素、C1〜6アルキル、アリール、またはHetを表し;
11は、水素またはC1〜6アルキルであり;
アリールは、フェニル、ナフチル、アセナフチル、またはテトラヒドロナフチルから選択される同素環であって、各環は1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、ハロ、シアノ、シアノC1〜6アルキル、ニトロ、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、C1〜6アルキル、フェニルで置換されていてもよいC2〜6アルケニル、ポリハロC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、カルボキシル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、モノホリニル、またはモノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノカルボニルから選択される、同素環であり;
アリールは、フェニル、ナフチル、アセナフチル、またはテトラヒドロナフチルから選択される同素環であって、各環は1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、ハロ、シアノ、シアノC1〜6アルキル、ニトロ、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、C1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルチオ、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、カルボキシル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、Het、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノカルボニル、またはC1〜4アルキル−S(=O)−から選択される、同素環であり;
Hetは、N−フェノキシピペリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、4−チオモルホリニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、またはピリダジニルから選択される単環式複素環、またはキノリニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル、またはベンゾ[1,3]ジオキシニルから選択される二環式複素環であって、各単環式および二環式複素環は、1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、ハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシまたはアリールC1〜6アルキルから選択される、単環式または二環式複素環である]
による新規置換キノリン誘導体、そのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用する場合は常に、「式(Ia)または(Ib)の化合物」あるいは「本発明による化合物」という用語は、その薬学的に許容される塩またはそのN−オキシド形態またはその溶媒和物も含むことを意味する。
【0021】
例えば、Rがオキソに等しく、Rが水素に等しい式(Ib)による化合物は、Rがヒドロキシに等しい式(Ia)による化合物の互変異性等価物(ケト−エノール互変異性)であるという点で、式(Ia)および(Ib)の化合物は相互に関係する。
【0022】
Hetの定義では、複素環の可能な異性形態をすべて含むことを意味し、例えば、ピロリルは1H−ピロリルおよび2H−ピロリルを含む。
【0023】
本明細書の上記または下記に記述される、式(Ia)または(Ib)の化合物の置換基(例えば、RまたはRを参照のこと)の定義に記載したアリール、アリール、またはHetは、他に記載がない限り、適宜、任意の環炭素またはヘテロ原子を介して、式(Ia)または(Ib)の分子残部に結合することができる。したがって、例えば、Hetがイミダゾリルである場合、それは、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル等であり得る。
【0024】
置換基から環系の中に引いた線は、その結合が適切な環原子のいずれと形成されてもよいことを示す。
【0025】
本明細書の上記または下記に記述される、薬学的に許容される塩は、式(Ia)または式(Ib)による化合物が形成し得る治療上有効な無毒性酸付加塩形態を含むことを意味する。前記酸付加塩は、適切な酸、例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、特に塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸;有機酸、例えば酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロパン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、およびパモン酸で式(Ia)または式(Ib)による化合物の塩基形態を処理することにより得ることができる。
【0026】
酸性プロトンを含有する式(Ia)または(Ib)の化合物は、適切な有機および無機の塩基で処理することによって、その治療上有効な無毒性金属またはアミン付加塩形態に変換することができる。本明細書の上記または下記に記述される薬学的に許容される塩は、式(Ia)または(Ib)の化合物が形成し得る、治療上有効な無毒性金属またはアミ
ン付加塩形態(塩基付加塩形態)も含むことを意図する。適切な塩基付加塩形態は、例えば、アンモニウム塩、アルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等、有機塩基、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、4種のブチルアミン異性体、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、キヌクリジン、ピリジン、キノリン、およびイソキノリンなどの第一級、第二級、および第三級の脂肪族アミンおよび芳香族アミンとの塩、ベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ヒドラバミンの塩、ならびに例えばアルギニン、リシン等のアミノ酸との塩を含む。
【0027】
逆に、前記の酸または塩基の付加塩形態は、適切な塩基または酸による処理により遊離形態に変換することができる。
【0028】
薬学的に許容される塩という用語は、式(Ia)または(Ib)の化合物の塩基性窒素と例えば置換されていてもよいC1〜6アルキルハライド、アリールC1〜6アルキルハライド、C1〜6アルキルカルボニルハライド、アリールカルボニルハライド、HetC1〜6アルキルハライド、またはHetカルボニルハライド、例えばヨウ化メチル、ヨウ化ベンジルなどの適切な第四級化剤との間の反応により、式(Ia)または(Ib)の化合物から形成され得る第四級アンモニウム塩(第四級アミン)も含む。好ましくは、Hetは、フラニルまたはチエニルから選択される単環式複素環、またはベンゾフラニルもしくはベンゾチエニルから選択される二環式複素環であって、各単環式および二環式複素環は、1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、ハロ、アルキル、およびアリールの群から選択される、単環式複素環または二環式複素環である。好ましくは、第四級化剤はC1〜6アルキルハライドである。C1〜6アルキルトリフルオロメタンスルホネート、C1〜6アルキルメタンスルホネート、およびC1〜6アルキルp−トルエンスルホネートなど、良好な脱離基を有する他の反応物も使用することができる。第四級アミンは正に荷電した窒素を有する。薬学的に許容される対イオンとしては、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロアセテート、アセテート、トリフレート、スルフェート、スルホネートが挙げられる。好ましくは、対イオンはヨードである。選択した対イオンは、イオン交換樹脂を使用して導入することができる。
【0029】
好ましくは、薬学的に許容される塩という用語は、本明細書の上記に記述される、薬学的に許容される酸付加塩および塩基付加塩を意味する。
【0030】
溶媒和物という用語は、式(Ia)または(Ib)の化合物が形成することができる水和物および溶媒付加形態ならびにそれらの塩を含む。そのような形態の例としては、例えば、水和物、アルコラート等が挙げられる。
【0031】
本出願の枠組みでは、本発明による化合物は、その立体化学的異性体形態をすべて含むことを本質的に意図するものである。本明細書の上記および下記で使用される「立体化学的異性体形態」という用語は、式(Ia)および(Ib)の化合物、ならびにそれらのN−オキシド、薬学的に許容される塩、溶媒和物、または生理学的に機能的な誘導体が有し得る、あらゆる可能な立体異性体形態を指定する。他に記述または指示がない限り、化合物の化学的指定は、あらゆる可能な立体化学的異性体形態の混合物を表す。特に、不斉中心は、R配置であってもS配置であってもよく;二価環式(部分)飽和基上の置換基は、シス配置またはトランス配置のいずれであってもよい。二重結合を包含する化合物は、前記二重結合でE(entgegen)立体化学またはZ(zusammen)立体化学を取ることができる。シス、トランス、R、S、E、およびZという用語は、当業者に周知
である。式(Ia)および(Ib)の化合物の立体化学的異性体形態を、本発明の範囲内に包含することを明らかに意図するものである。3.特別に興味のある化合物は、立体化学的に純粋な式(Ia)または(Ib)の化合物である。
【0032】
CAS命名法規約によると、絶対配置が知られている不斉中心が分子中に存在する場合、RまたはSの記述子が、最小番号のキラル中心、すなわち基準中心に(カーン・インゴルド・プレローグ順位則に基づいて)割り当てられる。
【0033】
特定の立体異性体が示される場合、これは、前記形態が他の異性体を実質的に含有しない、すなわち、他の異性体を50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満、さらに好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満しか伴っていないことを意味する。したがって、式(Ia)または(Ib)の化合物が、例えば、特定の鏡像異性体として指定されている場合、これは、この化合物が他の鏡像異性体を実質的に含有していないことを意味する。
【0034】
式(Ia)および(Ib)のいずれの化合物も、また中間体化合物の一部も、それらの構造中に不斉中心を有しており、それによって少なくとも2つの立体化学的に異なる構造がもたらされ得る。以下の構造では、不斉中心はで示される。
【化3】
【0035】
式(Ia)および(Ib)のいずれの化合物も、鏡像異性体の混合物、特にラセミ混合物の形態で合成され得るものであり、これらの鏡像異性体は、当技術分野で公知の分割手順によって、互いに分離することができる。式(Ia)および(Ib)のいずれの化合物でも、その鏡像異性形態を分離する方法として、キラル固定相を使用する液体クロマトグラフィーが挙げられる。前記純粋な立体化学的異性体形態はまた、反応が立体特異的に起こるならば、対応する純粋な立体化学的異性体形態の適切な出発物質から誘導することができる。好ましくは、特定の立体異性体が所望される場合、前記化合物は立体特異的な調製方法により合成される。これらの方法では、鏡像異性的に純粋な出発物質が有利に使用される。
【0036】
式(Ia)または(Ib)の化合物の互変異性体形態は、例えば、エノール基がケト基に変換される(ケト−エノール互変異性)式(Ia)または(Ib)の化合物を含むことを意図するものである。式(Ia)および(Ib)の化合物の互変異性体形態、または本発明の中間体の互変異性体形態は、本発明の範囲に包含されることを意図するものである。
【0037】
本化合物のN−オキシド形態は、1つまたはいくつかの第三級窒素原子がいわゆるN−オキシドに酸化される、式(Ia)または(Ib)の化合物を含むことを意図するものである。
【0038】
式(Ia)および(Ib)の化合物は、三価窒素をそのN−オキシド形態に変換するための当技術分野で公知の手順に従って、その対応するN−オキシド形態に変換することができる。前記N−酸化反応は、一般に、式(Ia)または(Ib)の出発物質を適切な有機または無機の過酸化物と反応させることにより行うことができる。適切な無機過酸化物
は、例えば、過酸化水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の過酸化物、例えば過酸化ナトリウム、過酸化カリウムを含み;適切な有機過酸化物は、例えばベンゼンカルボペルオキソ酸またはハロ置換ベンゼンカルボペルオキソ酸、例えば3−クロロベンゼンカルボペルオキソ酸、ペルオキソアルカン酸、例えばペルオキソ酢酸、アルキルヒドロペルオキシド、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシドなどのペルオキシ酸を含み得る。適切な溶媒は、例えば、水、低級アルコール、例えばエタノール等、炭化水素、例えばトルエン、ケトン、例えば2−ブタノン、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、およびこのような溶媒の混合物である。
【0039】
本出願の枠組みでは、本発明による化合物は、その化学元素のあらゆる同位体の組合せをすべて含むことを本質的に意図するものである。本出願の枠組みでは、化学元素は、特に式(Ia)または(Ib)による化合物に関連して記述される場合、天然に存在するか合成的に製造されたかにかかわらず、また天然の存在比で存在するか同位体的に濃縮された形態であるかにかかわらず、この元素のあらゆる同位体および同位体混合物を含む。具体的には、水素が記述される場合、それは、H、H、H、およびそれらの混合物を指すと理解され;炭素が記述される場合、それは、11C、12C、13C、14C、およびそれらの混合物を指すと理解され;窒素が記述される場合、それは、13N、14N、15N、およびそれらの混合物を指すと理解され;酸素が記述される場合、それは、14O、15O、16O、17O、18O、およびそれらの混合物を指すと理解され;またフッ素が記述される場合、それは、18F、19F、およびそれらの混合物を指すと理解される。
【0040】
したがって、本発明による化合物は、本質的に、1つまたは複数の元素の1つまたは複数の同位体を有する化合物およびそれらの混合物を含み、それらには、1つまたは複数の非放射性原子がその放射性同位体の1つに置換されている、放射標識化合物とも呼ばれる放射性化合物が含まれる。「放射標識化合物」という用語は、少なくとも1つの放射性原子を含有する、式(Ia)または(Ib)による任意の化合物、その薬学的に許容される塩、またはそのN−オキシド形態、またはその溶媒和物を意味する。例えば、化合物は、陽電子により、またはガンマ線を放出する放射性同位体により標識することができる。放射性リガンド結合手法(膜レセプターアッセイ)の場合には、H原子または125I原子が置換のために選択される原子である。イメージングの場合には、最も一般に使用される陽電子放出(PET)放射性同位体は、11C、18F、15O、および13Nであり、これらはすべて、加速器で生成され、それぞれ20、100、2、および10分の半減期を有する。これらの放射性同位体の半減期は極めて短いので、現場にそれらを生成するための加速器を有する施設のみそれらを使用することが可能であり、したがって、それらの使用には制限がある。これらの中で最も広く使用されているのは、18F、99mTc、201Tl、および123Iである。これらの放射性同位体の取り扱い、それらの生成、単離、および分子への取り込みは、当業者に公知である。
【0041】
特に、放射性原子は、水素、炭素、窒素、イオウ、酸素、およびハロゲンの群から選択される。好ましくは、放射性原子は、水素、炭素、およびハロゲンの群から選択される。
【0042】
特に、放射性同位体は、H、11C、18F、122I、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Br、および82Brの群から選択される。好ましくは、放射性同位体は、H、11C、および18Fの群から選択される。
【0043】
本出願の枠組みでは、C1〜6アルキルは、例えばメチル、エチル、プロピル、2−メチル−エチル、ペンチル、ヘキシル等の1〜6個の炭素原子を有する、直鎖または分枝の飽和炭化水素基を表す。C1〜6アルキルの好ましい亜群は、例えばメチル、エチル、プロピル、2−メチル−エチル等の1〜4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝の飽和炭
化水素基を表すC1〜4アルキルである。
【0044】
本出願の枠組みでは、C2〜6アルケニルは、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等の二重結合を含有する、2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝の炭化水素基であり;C2〜6アルキニルは、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等の三重結合を含有する、2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝の炭化水素基であり;C3〜6シクロアルキルは、3〜6個の炭素原子を有する環式飽和炭化水素基であり、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルに対する総称である。
【0045】
本出願の枠組みでは、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードの群から選択される置換基である。好ましくは、ハロは、ブロモ、フルオロ、またはクロロであり;特にクロロまたはブロモである。
【0046】
本出願の枠組みでは、ポリハロC1〜6アルキルは、モノまたはポリハロ置換C1〜6アルキルとして定義され、例えば、1つまたは複数のフルオロ原子を含むメチル、例えばジフルオロメチル、またはトリフルオロメチル、1,1−ジフルオロ−エチル等である。2個以上のハロ原子がポリハロC1〜6アルキルの定義内でC1〜6アルキル基に結合している場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0047】
興味深い実施形態は、Rが、水素、シアノ、カルボキシル、ハロ、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、ポリハロC1〜6アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、アミノC1〜6アルキル、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノC1〜6アルキル、R9b10bN−C(=O)−、アリール、R9a10aN−、R9a10aN−C(=O)−、C1〜4アルキル−S(=O)−、またはHetであり;特に、Rが、水素、シアノ、カルボキシル、ハロ、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、ポリハロC1〜6アルキル、ヒドロキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、アミノC1〜6アルキル、R9b10bN−C(=O)−、アリール、C1〜4アルキル−S(=O)−、またはHetであり;さらに特には、Rが、ハロ、特にブロモ、C1〜4アルキル−S(=O)−、特にCH−(S=O)−、またはHet、特にピリジニルである、式(Ia)または(Ib)の化合物に関する。
【0048】
第2の興味深い実施形態は、pが1または2;特にpが1である、式(Ia)もしくは(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの亜群の化合物に関する。
【0049】
第3の興味深い実施形態は、Rが、水素、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、アミノ、または式
【化4】


(式中、Yは、CH、O、S、NH、またはN−C1〜6アルキルである)の基であり;特に、Rが、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、または式
【化5】

(式中、Yは、CHまたはOである)の基であり;さらに特には、Rが、C1〜6アルキルオキシまたはC1〜6アルキルチオであり;さらに一層特には、Rが、C1〜6アルキルオキシ、特にメチルオキシ、または式
【化6】


(式中、YはOである)の基である、式(Ia)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0050】
第4の興味深い実施形態は、Rが、水素、ハロ、またはC1〜6アルキルであり;特に、Rが水素である、式(Ia)もしくは(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0051】
第5の興味深い実施形態は、Rがアリールであり;特に、Rが、フェニルまたはナフチルであり、それぞれが1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基が独立して、ハロ、シアノ、C1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、C1〜4アルキル−S(=O)−から選択され;さらに特には、Rが、1、2、または3個の置換基で置換されていてもよいフェニルまたはナフチルであり、各置換基が独立して、ハロ、シアノ、C1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、またはC1〜4アルキル−S(=O)−から選択され;さらに一層特には、Rが、1個の置換基で置換されていてもよいフェニルまたはナフチルであり、前記置換基が、ハロ、特にクロロ、シアノ、またはC1〜4アルキル−S(=O)、特にCH−(S=O)−である、式(Ia)もしくは(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0052】
第6の興味深い実施形態は、RがHetであり;特に、Rが、N−フェノキシピペリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、またはピリダジニルから選択される単環式複素環であり;各単環式複素環が、1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基が独立して、ハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、またはC1〜6アルキルオキシから選択され;さらに特には、Rが、ピペリジニル、ピラゾリル、フラニル、またはピリジニル、特にピラゾリルまたはピリジニルから選択される単環式複素環であり;各単環式複素環が、ハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、またはC1〜6アルキルオキシから選択される1個の置換基、特にヒドロキシで置換されていてもよい、式(Ia)もしくは(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0053】
第7の興味深い実施形態は、Rが、水素、C1〜6アルキル、アリールC1〜6アルキル、Het、または−C(=NH)−NHであり;特に、Rが、水素、C1〜6アルキル、アリールC1〜6アルキル、または−C(=NH)−NHであり;さらに特には、Rが、水素、C1〜6アルキル、フェニルC1〜6アルキル、または−C(=NH)−NHであり;さらに一層特には、Rが、水素、C1〜6アルキル、ベンジル、またはフェニルエチルである、式(Ia)もしくは(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0054】
第8の興味深い実施形態は、Rが水素またはC1〜6アルキル、特にエチルであり、Rがオキソであり;特に、Rが水素であり、かつRがオキソである、式(Ib)、
または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0055】
第9の興味深い実施形態は、式(Ia)もしくは(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物であって、式(Ia)の化合物である、化合物に関する。
【0056】
第10の興味深い実施形態は、式(Ia)もしくは(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物であって、式(Ib)の化合物である、化合物に関する。
【0057】
第11の興味深い実施形態は、Rがキノリン環の6位に置かれる、式(Ia)もしくは(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0058】
本出願の枠組みでは、式(Ia)または(Ib)の化合物のキノリン環は、以下のように番号づけられる。
【化7】
【0059】
第12の興味深い実施形態は、アリールがナフチルまたはフェニルであり、より好ましくはフェニルであり、それぞれが、ハロ、例えばクロロ;シアノ;アルキル、例えばメチル;またはアルキルオキシ、例えばメチルオキシからそれぞれ独立して選択される、1または2個の置換基で置換されていてもよい、式(Ia)もしくは(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0060】
第13の興味深い実施形態は、アリールがナフチルまたはフェニルであり、より好ましくはフェニルであり、それぞれが、ハロ、例えばクロロ;シアノ;C1〜6アルキル、例えばメチル;アルキルオキシ、例えばメチルオキシ;C1〜6アルキルチオ、例えばメチルチオ;またはC1〜4アルキル−S(=O)−、例えばメチル−S(=O)−から選択される、1または2個の置換基で置換されていてもよい、式(Ia)もしくは(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0061】
第14の興味深い実施形態は、Hetが、ピペルジニル(piperdinyl)、フラニル、ピリジニル、ベンゾフラニル、またはベンゾ[1,3]ジオキソリルである、式(Ia)もしくは(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0062】
第15の興味深い実施形態は、以下の定義:
pが1である;
が、ハロ、特にブロモ、クロロ、またはフルオロ;C1〜6アルキルチオ、特にメチルチオ;C1〜4アルキル−S(=O)−、特にメチル−S(=O)−;またはHet、特にピリジニルである;
が、C1〜6アルキルオキシ、特にメチルオキシ、またはHet、特にモルホリニルである;
が水素である;
が、3位または4位のいずれかでハロ、特にクロロ、シアノ、またはC1〜4アルキ
ル−S(=O)−、特にメチル−S(=O)−で置換されていてもよいフェニルである;および
が、水素、C1〜6アルキル、特にメチル、フェニルC1〜6アルキル、特にベンジルもしくはフェニルエチル、または−C(=NH)−NHである、
の1つまたは複数、好ましくはすべてがあてはまる、式(Ia)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0063】
第16の興味深い実施形態は、以下の定義:
pが1である;
が、ハロ、特にブロモ、クロロ、またはフルオロ;C1〜6アルキルチオ、特にメチルチオ;C1〜4アルキル−S(=O)−、特にメチル−S(=O)−;またはHet、特にピリジニルである;
が水素である;
が、3位または4位のいずれかでハロ、特にクロロ、シアノ、またはC1〜4アルキル−S(=O)−、特にメチル−S(=O)−で置換されていてもよいフェニルである;
が、水素、C1〜6アルキル、特にメチル、フェニルC1〜6アルキル、特にベンジルもしくはフェニルエチル、または−C(=NH)−NHである;
が、水素またはC1〜6アルキル、特にエチルである;および
がオキソである、
の1つまたは複数、好ましくはすべてがあてはまる、式(Ib)、または興味深い実施形態として本明細書の上記に記述されるそれらの任意の亜群の化合物に関する。
【0064】
本発明による好ましい化合物は、その任意の立体化学的異性体形態;そのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を含む、以下の化合物から選択される。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
薬理学
本発明による化合物は、驚くべきことに、マイコバクテリア感染、特に、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(その潜伏性かつ薬剤耐性の形態を含む)、マイコバクテリウム・ボビス(M.bovis)、マイコバクテリウム・アビウム(M.avium)、らい菌(M.leprae)、およびマイコバクテリウム・マリヌム(M.marinum)などの病原性マイコバクテリアを原因とする疾患を含む、細菌感染の治療に適していることが示された。したがって、本発明はまた、薬剤として使
用するための、特に、マイコバクテリア感染を含む細菌感染の治療のための薬剤として使用するための、本明細書の上記に定義される式(Ia)または(Ib)の化合物、およびその立体化学的異性体形態、その薬学的に許容される塩またはそのN−オキシド形態またはその溶媒和物に関する。
【0069】
さらに、本発明はまた、マイコバクテリア感染を含む細菌感染を治療するための薬剤を製造するための、式(Ia)または(Ib)の化合物、およびその立体化学的異性体形態、その薬学的に許容される塩またはそのN−オキシド形態またはその溶媒和物、ならびに本明細書の下記に記載されるその医薬組成物のいずれかの使用に関する。
【0070】
したがって、別の態様では、本発明は、マイコバクテリア感染を含む細菌感染に罹患しているかまたはそのリスクがある患者を治療する方法であって、本発明による、治療有効量の化合物または医薬組成物を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0071】
マイコバクテリアに対する活性に加えて、本発明による化合物は他の細菌に対しても活性がある。一般に、病原菌は、グラム陽性病原菌またはグラム陰性病原菌のいずれかとして分類することができる。グラム陽性病原菌およびグラム陰性病原菌の両方に対して活性がある抗生物質は、一般に、広域スペクトルの活性を有するとみなされる。本発明の化合物は、グラム陽性病原菌および/またはグラム陰性病原菌、特にグラム陽性病原菌に対して活性があるとみなされる。具体的には、本化合物は、少なくとも1種のグラム陽性菌に対して、好ましくは数種のグラム陽性菌に対して、より好ましくは1種または複数のグラム陽性菌および/または1種または複数のグラム陰性菌に対して活性がある。
【0072】
本化合物は殺菌活性または静菌活性を有する。
【0073】
グラム陽性およびグラム陰性の好気性細菌および嫌気性細菌の例としては、ブドウ球菌(Staphylococci)、例えば黄色ブドウ球菌(S.aureus);腸球菌(Enterococci)、例えばフェカリス菌(E.faecalis);連鎖球菌(Streptococci)、例えば肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)、ミュータンス菌(S.mutans)、化膿性連鎖球菌(S.pyogens);桿菌(Bacilli)、例えば枯草菌(Bacillus subtilis);リステリア属(Listeria)、例えばリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);ヘモフィルス属(Haemophilus)、例えばインフルエンザ菌(H.influenza);モラクセラ属(Moraxella)、例えばモラクセラ・カタラーリス(M.catarrhalis);シュードモナス属(Pseudomonas)、例えばシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa);およびエシェリキア属、例えば大腸菌(E.coli)が挙げられる。グラム陽性病原菌、例えばブドウ球菌(Staphylococci)、腸球菌(Enterococci)、および連鎖球菌(Streptococci)は、いったん確立されると、治療することが困難であるばかりでなく、例えば病院環境から根絶することも困難になる耐性菌の発生のために特に重要である。そのような菌株の例としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(staphylococci)(MRCNS)、ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、および多剤耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)が挙げられる。
【0074】
本発明の化合物は、耐性細菌株に対しても活性を示す。
【0075】
本発明の化合物は、例えばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococc
us aureus)(MRSA)などの耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含む黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対して、特に活性がある。
【0076】
したがって、本発明はまた、ブドウ球菌(Staphylococci)を原因とする感染を含む細菌感染を治療するための薬剤を製造するための、式(Ia)または(Ib)の化合物、およびその立体化学的異性体形態、その薬学的に許容される塩またはそのN−オキシド形態またはその溶媒和物、ならびに本明細書の下記に記載されるその医薬組成物のいずれかの使用に関する。
【0077】
したがって、別の態様では、本発明は、ブドウ球菌(Staphylococci)を原因とする感染を含む細菌感染に罹患しているかまたはそのリスクがある患者を治療する方法であって、本発明による、治療有効量の化合物または医薬組成物を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0078】
いずれの理論にも拘束されるものではないが、本化合物の活性は、F1F0 ATPシンターゼの阻害、具体的には、F1F0 ATPシンターゼのF0複合体の阻害、より具体的には、F1F0 ATPシンターゼのF0複合体のサブユニットcの阻害にあり、これによって、細菌の細胞ATPレベルが枯渇して細菌が死滅することが教示される。したがって、本発明の化合物は、特に、F1F0 ATPシンターゼが適切に機能することにその生存が依存する細菌に対して活性がある。
【0079】
本化合物により治療することができる細菌感染としては、例えば、中枢神経系感染、外耳感染、中耳感染、例えば急性中耳炎、硬膜静脈洞感染、眼感染、口腔感染、例えば歯、歯ぐき、および粘膜の感染、上気道感染、下気道感染、泌尿生殖器感染、消化管感染、婦人科感染、敗血症、骨および関節の感染、皮膚および皮膚組織の感染、細菌性心内膜炎、熱傷、外科手術の抗菌薬予防投与、ならびに癌化学療法を受けている患者または臓器移植患者などの免疫抑制患者への抗菌薬予防投与が挙げられる。
【0080】
本明細書の上記または下記において記載する場合は常に、化合物が細菌感染を治療することができるということは、その化合物が、1種または複数の細菌株による感染を治療することができることを意味する。
【0081】
本発明はまた、薬学的に許容される担体、および治療有効量の本発明による化合物を有効成分として含む組成物に関する。本発明による化合物は、投与目的に応じて種々の剤形に製剤化することができる。適切な組成物として、全身投与薬剤のために通常使用されるあらゆる組成物を挙げることができる。本発明の医薬組成物を調製するために、有効成分としての、場合によっては付加塩形態にある有効量の特定化合物を、薬学的に許容される担体と密に混合して一緒にするが、この担体は、投与のために所望される調製物形態に応じて、多種多様な形態を取り得る。これらの医薬組成物は、特に、経口投与または非経口注入による投与に適した単位投与剤形が望ましい。例えば、経口投与剤形の組成物を調製する際には、懸濁液、シロップ、エリキシル、エマルジョン、および溶液などの経口液体製剤の場合には、例えば水、グリコール、油、アルコール等の通常の医薬媒体のいずれも使用することができ;または粉末、丸剤、カプセル、および錠剤の場合には、デンプン、糖、カオリン、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等の固体担体を使用することができる。投与が容易であるために、錠剤およびカプセルが、最も有利な経口投与単位剤形であり、この場合には、固体の医薬担体が明らかに使用される。非経口組成物については、担体は、通常、例えば溶解を促進する他の成分が含まれ得るが、少なくとも大部分は滅菌水で構成される。例えば、担体が生理食塩水、グルコース溶液、または生理食塩水とグルコース溶液の混合液で構成される注射液を調製することができる。また、注射用懸濁液も調製す
ることができ、この場合には、適切な液体担体、懸濁剤等を使用することができる。さらに、使用直前に液体形態製剤に変換することを意図した固体形態製剤も含まれる。
【0082】
投与方法に応じて、医薬組成物は、有効成分を、好ましくは0.05〜99重量%、より好ましくは0.1〜70重量%、さらにより好ましくは0.1〜50重量%、また薬学的に許容される担体を、1〜99.95重量%、より好ましくは30〜99.9重量%、さらにより好ましくは50〜99.9重量%含むことになる。ここで、パーセントは組成物の全重量を基準にしたものである。
【0083】
医薬組成物は、さらに、当技術分野で公知の種々の他の成分、例えば、滑沢剤、安定剤、緩衝剤、乳化剤、粘度調節剤、界面活性剤、防腐剤、香味剤、または着色剤を含有することができる。
【0084】
投与の容易さおよび投与量の均一性のために、単位投与形態で上述の医薬組成物を製剤化することが特に有利になる。本明細書で使用する単位投与剤形は、単一投与量として適切な物理的に別個の単位であり、各単位は、必要とされる医薬担体と結合して所望の治療効果をもたらすと計算される所定量の有効成分を含有する。そのような単位投与剤形の例としては、錠剤(分割錠剤またはコーティング錠剤を含む)、カプセル、丸剤、粉末パケット、オブラート、坐剤、注射液、または懸濁液等、およびそれらを複数に分割したものがある。本発明による化合物の1日投与量は、当然のことながら、使用する化合物、投与方法、所望される治療、および対象となるマイコバクテリア疾患に応じて異なることになる。しかしながら、一般には、本発明による化合物を1グラム以下、例えば体重1kg当たり10〜50mgの範囲内の1日投与量で投与する場合に、十分な結果が得られる。
【0085】
式(Ia)または式(Ib)の化合物が細菌感染に対して活性がある事実があれば、細菌感染を効果的に駆除するために、本化合物を他の抗菌薬と組み合わせることができる。
【0086】
したがって、本発明はまた、(a)本発明による化合物と、(b)1種または複数の他の抗菌薬との組合せに関する。
【0087】
本発明はまた、薬剤として使用するための、(a)本発明による化合物と、(b)1種または複数の他の抗菌薬との組合せに関する。
【0088】
本発明はまた、細菌感染を治療するための、直ぐ上に定義された組合せまたは医薬組成物の使用に関する。
【0089】
薬学的に許容される担体、ならびに治療有効量の(a)本発明による化合物と(b)1種または複数の他の抗菌薬とを有効成分として含む医薬組成物もまた、本発明に含まれる。
【0090】
組合せとして投与する場合の(a)本発明による化合物と(b)他の抗菌薬との重量比は、当業者により決定され得る。前記比ならびに正確な投与量および投与頻度は、当業者に周知のように、本発明による特定の化合物および使用する他の抗菌薬、治療される特定の症状、治療される症状の重症度、年齢、体重、性別、食事、投与時間および特定の患者の全身健康状態、投与方法、ならびに個体が服用し得る他の薬剤に依存する。さらに、治療を受ける被験体の応答に応じて、かつ/または本発明の化合物を処方する医師の診断に応じて、1日の有効量を低減することも、増加することも可能であることは明白である。式(Ia)または(Ib)の本化合物と他の抗菌薬との特定の重量比は、1/10〜10/1の範囲、特には1/5〜5/1の範囲、さらに特には1/3〜3/1の範囲とすることができる。
【0091】
本発明による化合物および1種または複数の他の抗菌薬は、単一製剤中に一緒にしても、同時に、個別に、または逐次的に投与できるように、別々の製剤中に製剤化してもよい。したがって、本発明はまた、細菌感染の治療における同時使用、個別使用、または逐次使用のための組合せ製剤としての、(a)本発明による化合物、および(b)1種または複数の他の抗菌薬を含有する製品に関する。
【0092】
式(Ia)または(Ib)の化合物と組み合わせることができる他の抗菌薬は、例えば、当技術分野で公知の抗菌薬である。他の抗菌薬は、β−ラクタム基の抗生物質、例えば、天然ペニシリン、半合成ペニシリン、天然セファロスポリン、半合成セファロスポリン、セファマイシン、1−オキサセフェム、クラブラン酸、ペネム、カルバペネム、ノカルディシン、モノバクタム;テトラサイクリン、アンヒドロテトラサイクリン、アントラサイクリン;アミノグリコシド;ヌクレオシド、例えば、N−ヌクレオシド、C−ヌクレオシド、炭素環式ヌクレオシド、ブラスチシジンS;マクロライド、例えば、12員環マクロライド、14員環マクロライド、16員環マクロライド;アンサマイシン;ペプチド、例えば、ブレオマイシン、グラミシジン、ポリミキシン、バシトラシン、ラクトン結合を含有する大環状ペプチド抗生物質、アクチノマイシン、アンホマイシン、カプレオマイシン、ディスタマイシン、エンデュラサイジン、ミカマイシン、ネオカルチノスタチン、ステンドマイシン、バイオマイシン、バージニアマイシン;シクロヘキシミド;サイクロセリン;バリオチン;ザルコマイシンA;ノボビオシン;グリセオフルビン;クロラムフェニコール;マイトマイシン;フマギリン;モネンシン;ピロールニトリン;ホスホマイシン;フシジン酸;D−(p−ヒドロキシフェニル)グリシン;D−フェニルグリシン;エンジインを含む。
【0093】
式(Ia)または(Ib)の本化合物と組み合わせ得る特定の抗生物質は、例えば、ベンジルペニシリン(カリウム、プロカイン、ベンザチン)、フェノキシメチルペニシリン(カリウム)、フェネチシリンカリウム、プロピシリン、カルベニシリン(二ナトリウム、フェニルナトリウム、インダニルナトリウム)、スルベニシリン、チカルシリン二ナトリウム、メチシリンナトリウム、オキサシリンナトリウム、クロキサシリンナトリウム、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、アンピシリン、メズロシリン、ピペラシリンナトリウム、アモキシシリン、シクラシリン、ヘクタシリン、スルバクタムナトリウム、塩酸タランピシリン、塩酸バカンピシリン、ピブメシリナム、セファレキシン、セファクロル、セファグリシン、セファドロキシル、セフラジン、セフロキサジン、セファピリンナトリウム、セファロチンナトリウム、セファセトリルナトリウム、セフスロジンナトリウム、セファロリジン、セファトリジン、セフォペラゾンナトリウム、セファマンドール、塩酸ベフォチアム、セファゾリンナトリウム、セフチゾキシムナトリウム、セフォタキシムナトリウム、塩酸セフメノキシム、セフロキシム、セフトリアキソンナトリウム、セフタジジム、セホキシチン、セフメタゾール、セフォテタン、ラタモキセフ、クラブラン酸、イミペネム、アズトレオナム、テトラサイクリン、塩酸クロルテトラサイクリン、デメチルクロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ロリテトラサイクリン、ミノサイクリン、塩酸ダウノルビシン、ドキソルビシン、アクラルビシン、硫酸カナマイシン、ベカナマイシン、トブラマイシン、硫酸ゲンタマイシン、ジベカシン、アミカシン、ミクロノマイシン、リボスタマイシン、硫酸ネオマイシン、硫酸パラモマイシン、硫酸ストレプトマイシン、ジヒドロストレプトマイシン、デストマイシンA、ヒグロマイシンB、アプラマイシン、シソマイシン、硫酸ネチルマイシン、塩酸スペクチノマイシン、硫酸アストロマイシン、バリダマイシン、カスガマイシン、ポリオキシン、ブラスチシジンS、エリスロマイシン、エリスロマイシンエストレート、リン酸オレアンドマイシン、トラセチロレアンドマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、チロシン、イベルメクチン、ミデカマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、グラミシジンS、ポリミキシンB、バシトラシン、硫酸コリス
チン、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、エンラマイシン、ミカマイシン、バージニアマイシン、硫酸カプレオマイシン、バイオマイシン、エンビオマイシン、バンコマイシン、アクチノマイシンD、ネオカルチノスタチン、ベスタチン、ペプスタチン、モネンシン、ラサロシド、サリノマイシン、アンフォテリシンB、ナイスタチン、ナタマイシン、トリコマイシン、ミトラマイシン、リンコマイシン、クリンダマイシン、塩酸パルミチン酸クリンダマイシン、フラボホスホリポール、サイクロセリン、ペチロシン、グリセオフルビン、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール、マイトマイシンC、ピロールニトリン、ホスホマイシン、フシジン酸、ビコザマイシン、チアムリン、シッカニンである。
【0094】
式(Ia)または(Ib)の化合物と組み合わせ得る他の抗マイコバクテリア薬は、例えば、リファンピシン(=リファンピン);イソニアジド;ピラジナミド;アミカシン;エチオナミド;エタンブトール;ストレプトマイシン;パラ−アミノサリチル酸;サイクロセリン;カプレオマイシン;カナマイシン;チオアセタゾン;PA−824;キノロン/フルオロキノロン、例えば、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、スパルフロキサシンなど;マクロライド、例えば、クラリスロマイシン、クロファジミン、アモキシシリンとクラブラン酸など;リファマイシン;リファブチン;リファペンチン;国際公開第2004/011436号パンフレットに開示される化合物である。
【0095】
全般的調製
本発明による化合物は、一般に、それぞれが当業者に公知の一連のステップにより調製することができる。
【0096】
が水素である式(Ia)の化合物は、式(Ia−1)により表されるが、式(II−a)(式中、Pは、C1〜6アルキルオキシカルボニル基、特にtert−ブチルオキシカルボニル基などの適切な保護基である)の中間体を、例えば、ジクロロメタンまたはイソプロパノールなどの適切な溶媒中で、トリフルオロ酢酸または塩酸などの適切な酸により、脱保護することによって調製することができる。あるいは、PがベンジルオキシカルボニルなどのアリールC1〜6アルキルオキシカルボニルを表すこともあり、ジクロロメタンなどの適切な溶媒中で、三臭化ホウ素による処理により脱保護を行うことができる。
【化8】
【0097】
が水素であり、Rが水素であり、かつRがオキソである式(Ib)の化合物は、式(Ib−2)により表されるが、式(IIa)の中間体を、例えば、テトラヒドロフランまたはイソプロパノールなどの適切な溶媒中で、塩酸またはトリフルオロ酢酸などの適切な酸により、脱保護することによって調製することができる。
【化9】
【0098】
式(Ia)の化合物は、式(Va)の中間体を、テトラヒドロフラン中に例えばジイソプロピルアミンを含む溶媒系において、例えばヘキサン中のn−ブチル−リチウムの存在下で、式(VIa)の化合物と反応させることによって調製することができる。あるいは
、この反応は、N−(1−メチルエチル)−2−プロパンアミンのテトラヒドロフラン溶液中にて、例えばn−ブチル−リチウムの存在下で行うことができる。両反応とも、好ましくは、例えば約−70℃〜−78℃の低温で行われる。さらなる代替案では、例えばテトラヒドロフラン、ヘプタン、およびエチルベンゼンを含む溶媒系において、リチウムジイソプロピルアミドの存在下で反応を行うことを含む。反応は、酢酸などの酸性媒体およびメタノールなどの適切な溶媒において、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを使用して行うこともできる。
【化10】
【0099】
所望の化合物を得るように上記反応を最適化するために、適切な温度、希釈、および反応時間を探索することは、当業者の知識の範囲内とみなされる。
【0100】
式(Ia)または(Ib)の化合物はさらに、式(Ia)または(Ib)の化合物を、当技術分野で公知の基変換反応により相互変換することによって調製することができる。
【0101】
式(Ia)または(Ib)の化合物は、三価窒素をそのN−オキシド形態に変換するための当技術分野で公知の手順に従って、その対応するN−オキシド形態に変換することができる。前記N−酸化反応は、一般に、式(Ia)または(Ib)の出発物質を適切な有機または無機の過酸化物と反応させることにより行うことができる。適切な無機過酸化物は、例えば、過酸化水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の過酸化物、例えば過酸化ナトリウム、過酸化カリウムを含み;適切な有機過酸化物は、例えばベンゼンカルボペルオキソ酸またはハロ置換ベンゼンカルボペルオキソ酸、例えば3−クロロベンゼンカルボペルオキソ酸、ペルオキソアルカン酸、例えばペルオキソ酢酸、アルキルヒドロペルオキシド、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシドなどのペルオキシ酸を含み得る。適切な溶媒は、例えば、水、低級アルコール、例えばエタノール等、炭化水素、例えばトルエン、ケトン、例えば2−ブタノン、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、およびこのような溶媒の混合物である。
【0102】
がハロ、例えばブロモである式(Ia)または(Ib)の化合物は、例えばトルエンまたは1,2−ジメトキシエタン(DME)などの適切な溶媒中、例えばPd(OAc)またはPd(PPhなどの適切な触媒の存在下、かつ例えばKPO、KCOまたはNaCOなどの適切な塩基の存在下で、アリール−B(OH)もしくはHet−B(OH)、またはその誘導体と反応させることにより、RがアリールまたはHetである式(Ia)または(Ib)の化合物に変換することができる。
【0103】
同様に、Rがハロ、例えばブロモである式(Ia)または(Ib)の化合物は、例えばトルエンまたは1,2−ジメトキシエタン(DME)などの適切な溶媒中で、例えばPd(PPhなどの適切な触媒の存在下、CHB(OH)または(CHSnなどの適切なアルキル化剤により処理することによって、Rがアルキル、例えばメチルである式(Ia)または(Ib)の化合物に変換することができる。
【0104】
がハロ、特にブロモまたはアリールC1〜6アルキルである式(Ia)または(Ib)の化合物は、例えばアルコール、例えばメタノールなどの適切な溶媒の存在下、かつ例えばパラジウム/炭素などの適切な触媒の存在下で、HCOONHと反応させることによって、Rが水素である式(Ia)または(Ib)の化合物に変換することができる。あるいは、そのような変換は、例えば、ジエチルエーテルなどの適切な溶媒中で、n−
ブチル−リチウムを使用して行うことができる。
【0105】
がハロ、特にブロモまたはクロロであり、Rが水素以外、例えば1−エチルフェニルなどのアリールC1〜6アルキル基である式(Ia)または(Ib)は、メタノールなどの適切な溶媒中で、酢酸の存在下、パラジウム/炭素を用いる水素化により、Rが水素であり、かつRが水素である式(Ia)または(Ib)の化合物に変換することができる。
【0106】
がハロ、特にブロモである式(Ia)または(Ib)の化合物はまた、n−ブチル−リチウムおよび例えばテトラヒドロフランなどの適切な溶媒の存在下で、N,N−ジメチルホルムアミドと反応させることにより、Rがホルミルである化合物に変換することができる。次いで、これらの化合物はさらに、例えばアルコール、例えばメタノール、およびテトラヒドロフランなどの適切な溶媒の存在下で、例えばNaBHなどの適切な還元剤と反応させることによって、Rが−CH−OHである式(Ia)または(Ib)の化合物に変換することができる。
【0107】
がハロ、特にブロモである式(Ia)または(Ib)の化合物はまた、ヘキサン中のn−ブチル−リチウムの存在下で、例えば二酸化炭素で処理することにより、Rがカルボキシルである化合物に変換することができる。
【0108】
がカルボキシルである式(Ia)または(Ib)の化合物は、ジクロロメタンなどの適切な溶媒において、例えば1−ヒドロキシベンゾトリアゾールおよびN’−(エチルカルボンイミドイル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンの存在下で、適切なHet−NH化合物で処理することにより、RがHet−NH−CO−である式(Ia)または(Ib)の化合物に変換することができる。
【0109】
がC2〜6アルケニルである式(Ia)または(Ib)の化合物は、Rがハロ、例えばブロモ等である式(Ia)または(Ib)の化合物を、例えばN,N−ジメチルホルムアミドなどの適切な溶媒の存在下、例えばPd(PPhなどの適切な触媒の存在下で、例えばトリブチル(ビニル)チンなどのトリブチル(C2〜6アルケニル)チンと反応させることによって調製することができる。この反応は、好ましくは、高温で行われる。
【0110】
がR9a10aN−である式(Ia)または(Ib)の化合物は、例えばトリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムなどの適切な触媒、例えば2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニルなどの適切なリガンド、例えばナトリウムt−ブトキシドなどの適切な塩基、および例えばトルエンなどの適切な溶媒の存在下で、R9a10aNHまたはその機能的誘導体と反応させることにより、Rがハロ、例えばブロモ等である式(Ia)または(Ib)の化合物から調製することができる。例えば、Rがピリジニルである場合、式(Ia)または(Ib)の最初の前記化合物は、1,2−ジメトキシエタンなどの適切な溶媒中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウムなどの適切な触媒および炭酸カリウムなどの適切な塩基の存在下で、ボロン酸1,3−プロパンジオール環状エステルなどのピリジン化合物と反応させることができる。
【0111】
が−C=N−OR11である式(Ia)または(Ib)の化合物は、Rがホルミルである式(Ia)または(Ib)の化合物から、例えばピリジンなどの適切な溶媒の存在下で、塩酸ヒドロキシルアミンまたは塩酸C1〜6アルコキシルアミンと反応させることにより調製することができる。
【0112】
が−CH−NHである式(Ia)または(Ib)の化合物は、Rがホルミル
である式(Ia)または(Ib)の化合物から、H、例えばパラジウム/炭素などの適切な触媒、および例えばNH/アルコール、例えばNH/メタノールなどの適切な溶媒の存在下で還元することによって調製することができる。Rが−CH−NHである式(Ia)または(Ib)の化合物は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、酢酸、および例えばアセトニトリルなどの適切な溶媒の存在下で、例えばパラホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドなどの適切なアルデヒドまたはケトン試薬と反応させることによって、Rが−CH−N(C1〜6アルキル)である式(Ia)または(Ib)の化合物に変換することができる。
【0113】
がR9a10aN−CH−である式(Ia)または(Ib)の化合物は、例えばBHCNなどの適切な還元剤、例えばアセトニトリルおよびテトラヒドロフランなどの適切な溶媒、および例えば酢酸などの適切な酸の存在下で、Rがホルミルである式(Ia)または(Ib)の化合物を式R9a10aN−Hの適切な試薬と反応させることによって調製することができる。
【0114】
がアミノである式(Ia)または(Ib)の化合物は、Rがカルボキシルである式(Ia)または(Ib)の化合物を、例えばトルエンなどの適切な溶媒中で、例えばジフェニルホスホリルアジド(DPPA)などの適切なアジドおよび例えばトリエチルアミンなどの適切な塩基と反応させることによって調製することができる。得られた生成物はクルチウス反応を受け、トリメチルシリルエタノールを加えることにより、カルバメート中間体が形成される。次のステップで、この中間体を、例えばテトラヒドロフランなどの適切な溶媒中で、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)と反応させ、アミノ誘導体を得る。
【0115】
がアミノカルボニル、モノもしくはジ(アルキル)アミノカルボニル、またはR9a10aN−C(=O)−である式(Ia)または(Ib)の化合物は、Rがカルボキシルである式(Ia)または(Ib)の化合物を、適切なアミン、例えばヒドロキシベンゾトリアゾールなどの適切なカップリング試薬、例えば1,1’−カルボニルジイミダゾールまたはN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドなどの適切な活性化試薬、例えばトリエチルアミンなどの適切な塩基、および例えばテトラヒドロフランおよび塩化メチレンなどの適切な溶媒と反応させることによって調製することができる。
【0116】
がアリールカルボニルである式(Ia)または(Ib)の化合物は、最初のステップ(a)において、n−ブチル−リチウムおよび例えばテトラヒドロフランなどの適切な溶媒の存在下で、Rがハロ、例えばブロモ等である式(Ia)または(Ib)の化合物を、適切なアリールアルデヒドと反応させることによって調製することができる。この反応は、好ましくは、例えば−70℃などの低温で行われる。次のステップ(b)において、ステップ(a)で得られた生成物は、例えば塩化メチレンなどの適切な溶媒の存在下で、例えば酸化マンガンなどの適切な酸化剤で酸化される。
【0117】
がハロで置換されているフェニルである式(Ia)または(Ib)の化合物は、例えばPd(PPhなどの適切な触媒の存在下、例えばNaCOなどの適切な塩基ならびに例えばトルエンまたは1,2−ジメトキシエタン(DME)およびアルコール、例えばメタノールなどの適切な溶媒の存在下で、Het−B(OH)と反応させることによって、RがHetで置換されているフェニルである式(Ia)または(Ib)の化合物に変換することができる。
【0118】
がハロ、特にブロモである式(Ia)または(Ib)の化合物は、例えばジメチルホルムアミドなどの適切な溶媒において、トリス[μ−[(1,2−η:4,5−η)−
(1E,4E)−1,5−ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン]]ジパラジウム(Pd(dba))および[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ−κP)フェロセン]ジクロロパラジウム(dppf)の存在下で、シアノ誘導体、例えばシアン化亜鉛と反応させることにより、Rがシアノである式(Ia)または(Ib)の化合物に変換することができる。
【0119】
がメトキシである式(Ia)の化合物は、例えば塩酸などの適切な酸および例えばジオキサンまたはテトラヒドロフランなどの適切な溶媒の存在下で加水分解させることによって、Rが水素であり、かつRがオキソである式(Ib)の対応する化合物に変換することができる。
【0120】
が水素である式(Ia)または(Ib)の化合物は、通常の手法を使用して、Rが水素以外である式(Ia)または(Ib)の対応する化合物に変換することができる。例えば、RがC1〜6アルキルである式(Ia)または(Ib)の化合物は、Rが水素である式(Ia)または(Ib)の化合物のアルキル化によって調製することができ、例えば、Rがメチルである場合には、ジクロロメタンなどの適切な溶媒中、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライドの存在下で、ホルムアルデヒド水溶液により処理することによって調製することができる。RがアリールC1〜6アルキルである式(Ia)または(Ib)の化合物は、例えば、アセトニトリルなどの適切な溶媒において、炭酸カリウムなどの塩基の存在下で、適切なアリールC1〜6アルキルハライドで処理することによる、Rが水素である式(Ia)または(Ib)の化合物のアリールアルキル化によって調製することができる。RがアリールC1〜6アルキルである式(Ia)または(Ib)の化合物は、Rが水素である式(Ia)または(Ib)の化合物を処理することによって、例えば、ジクロロメタンなどの適切な溶媒において、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライドとベンズアルデヒドなどの適切なアルデヒドで処理することによって調製することができる。
【0121】
が水素である式(Ia)または(Ib)の化合物は、例えば、アセトニトリルなどの適切な溶媒において、1H−ピラゾール−1−カルボキサミジンおよびトリエチルアミンなどの塩基で処理することによって、Rが−C(=NH)−NHである、式(Ia)および(Ib)の対応する化合物に変換することができる。
【0122】
が水素以外である式(Ia)または(Ib)の化合物は、通常の手法を使用して、Rが水素である式(Ia)または(Ib)の対応する化合物に変換することができる。例えば、RがアリールC1〜6アルキル基、例えばエチル−1−フェニル基である式(Ia)または(Ib)の化合物は、メタノールなどの適切な溶媒中、パラジウム/炭素の存在下で、水素化することによって、Rが水素である式(Ia)または(Ib)の対応する化合物に変換することができる。
【0123】
上記および下記の反応において、反応生成物は反応媒体から単離することができ、また、必要ならば、抽出、結晶化、およびクロマトグラフィーなど、当技術分野で一般に公知の方法によってさらに精製することができることは明らかである。2種以上の鏡像異性形態で存在する反応生成物は、公知の方法、特に、分取HPLC、キラルクロマトグラフィーなどの分取クロマトグラフィーにより、その混合物から単離することができる。個々のジアステレオ異性体または個々の鏡像異性体はまた、超臨界流体クロマトグラフィー(SCF)により得ることができる。
【0124】
出発物質および中間体は、商業的に入手可能であるか、または当技術分野で一般に公知の通常の反応手順に従って、調製することができる化合物である。上記の方法において出発物質として有用なピペリドン化合物は、例えば、Xiaocong M.Ye el,
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,20(2010)2195−2199、Michel Guillaume et al,Organic Process Research and Development 2007,11,1079−1086および国際公開第2005/123081号パンフレットに記載の手順に従って調製することができる。キノリン出発物質として有用な化合物の調製に関する種々の手順は、本明細書で上記に言及の国際公開(WO)明細書に記載されている。
【0125】
具体的には、式(II−a)の中間体は、以下の反応スキーム(1)により調製することができる。
【化11】
【0126】
反応スキーム(1)では、キノリン化合物を、テトラヒドロフランなどの適切な溶媒中で、例えばヘキサン中のn−ブチル−リチウムと共に、ピペリジン−4−オン誘導体と反応させる。
【0127】
スキーム(1)で使用されるキノリン出発物質は、通常の方法で、例えば、Rが水素である場合には、以下のスキーム(1−a)に従って調製することができる。
【化12】
【0128】
スキーム(1−a)では、ステップ(a)は、オキソ基のハロ(Hal)基への変換、好ましくは、例えば、ジメチルホルムアミドなどの適切な溶媒中で、オキシ塩化リンにより処理することによるクロロへの変換によるベンゼンプロパンアミド化合物の環化を含む。
【0129】
ステップ(b)では、得られたハロ(Hal)基を、通常の方法で、例えば、メタノールなどの適切な溶媒中で、ナトリウムメトキシドなどのアルコキシド化合物で処理して、C1〜6アルキルオキシ基(特にメチルオキシ基)を形成させることによって、適切なR基に変換することができる。
【0130】
スキーム(1)で使用されるキノリン出発物質は、Rがハロ、特にクロロである場合に、以下のスキーム(1−b)に従って調製することができる。
【化13】
【0131】
スキーム(1−b)では、ステップ(a)は、ハロゲン化剤、特に三塩化リンなどの塩素化剤の存在下、高温、例えば約80℃における、アミノベンゼン誘導体とベンゼンプロパン酸誘導体の反応を含む。
【0132】
ステップ(b)では、2−Hal基を、通常の方法で、例えば、好ましくはメタノール
などの適切な溶媒中で、アルキルオキシ基を導入するための、ナトリウムアルコキシド、例えばナトリウムメトキシドなどの適切なアルキルオキシ化剤によって、所望のR基に変換することができる。
【0133】
スキーム(1)で使用されるキノリン出発物質は、Rがアルキル、アリール、またはHetである場合、以下のスキーム(1−c)に従って調製することができる。
【化14】
【0134】
スキーム(1−c)では、ステップ(a)は、高温、例えば180℃における、アミノフェニルアルカノンと、適切なβ−オキソベンゼン(またはヘテロシクリル)−プロパン酸アルキル(alk)エステル、好ましくはベンゼンプロパン酸エステル、例えばエチルエステルとの反応を含む。
【0135】
ステップ(b)では、得られたキノリン誘導体を、例えば、好ましくは約100℃などの高温で、1,2−エタンジオールなどの適切な溶媒中でヒドラジンと反応させた後、水酸化カリウムなどの塩基を添加することによって、キノリン核の3位に結合したオキソ基を還元してメチレン(−CH−)基に変換する。
【0136】
ステップ(c)では、2−オキソ基を、アセトンなどの適切な溶媒中で、ベンジルトリエチルアンモニムクロライドの存在下、好ましくは80℃などの高温で、オキシ塩化リンなどの適切なハロゲン化剤で処理することによって、通常の方法で、ハロ(Hal)基、例えばクロロ基に変換することができる。
【0137】
ステップ(d)では、2−ハロ基を、通常の方法で、例えば、好ましくはメタノールなどの適切な溶媒中で、アルキルオキシ基を導入するための、ナトリウムアルコキシド、例えばナトリウムメトキシドなどの適切なアルキルオキシ化剤によって、所望のR基に変換することができる。
【0138】
スキーム(1)で使用されるピペリジン−4−オン誘導体は、一般に公知であり、文献中で公知の方法またはそれに類似した方法によって調製することができる。例えば、そのような誘導体は、以下のスキーム(2)に従って調製することができる。
【化15】
【0139】
ステップ(a)では、Pが、C1〜4アルキレンジオキシジオキシ基、特に1,2−エチレンジオキシ基など、オキソ基の前駆体基であるピペリジン誘導体を処理して、例えば塩酸などの酸により処理して、C1〜4アルキレンジオキシ基をオキソ基に変換することによって、前駆体基を所望のオキソ基に変換する。ステップ(b)では、保護基Pを、通常の方法で導入することができる。したがって、例えば、P基がC1〜6アルキルオキシカルボニル基である場合、ピペリジン−4−オン化合物を、テトラヒドロフランなどの適切な溶媒中、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で、ジ−tert−ブチルジカ
ルボネートなどの適切なジ−C1〜6アルキルジカルボネートと反応させることができる。
【0140】
あるいは、上記のピペリジン−4−オン誘導体は、以下の反応スキーム(3)に従い、対応する3,4−ジヒドロピリジン化合物の還元によって調製することができる。
【化16】
【0141】
この反応では、3,4−ジヒドロピリジン化合物を、例えば、テトラヒドロフランなどの適切な溶媒中で、好ましくは約−78℃の温度で、リチウムヒドロトリス(1−メチルプロピル)(1−)ボレートなどの還元剤で還元する。
【実施例】
【0142】
実験の部
一部の化合物または中間体では、その不斉中心炭素原子の絶対立体化学配置または二重結合における配置は、実験的に決定されなかった。しかしながら、そのような異性体形態は、例えばNMRなどの当技術分野で公知の方法を使用して、当業者により明白に特徴づけられ得る。実際の立体化学配置を決定するための最も適切な方法を見分けることは、当業者の知識の範囲内とみなされる。
【0143】
本明細書の以下において、「BTEAC」はベンジルトリエチルアンモニウムクロライドを意味し、「n−BuLi」はn−ブチルリチウムを意味し、「DCM」はジクロロメタン(CHCl)を意味し、「DIPE」はジイソプロピルエーテルを意味し、「DME」は1,2−ジメトキシエタンを意味し、「DMF」はN,N−ジメチルホルムアミドを意味し、「dppf」は[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ−κP)フェロセン]ジクロロパラジウムを意味し、「EtOAc」は酢酸エチルを意味し、「EtOH」はエタノールを意味し、「MeOH」はメタノール(CHOH)を意味し、「Pd(dba)」はトリス[μ−[(1,2−η:4,5−η)−(1E,4E)−1,5−ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン]]ジパラジウム(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムとも)を意味し、「RT」は室温を意味し、「RM」は反応混合物を意味し、「THF」はテトラヒドロフランを意味し、「SFC」は超臨界流体クロマトグラフィーを意味する。
【0144】
A.中間体の調製
実施例A1
中間体1の調製
【化17】


モルホリン(4.5ml)中の6−ブロモ−2−クロロ−3−[(4−クロロフェニル)メチル]キノリン(1g、0.0027mol)の混合物を90℃で一晩撹拌し、氷水中に注いだ。沈殿を濾過し、HOで洗浄し、60℃で真空乾燥して、1.01g(90%)の中間体1を得た。
【0145】
実施例A2
a)中間体2の調製
【化18】


4−(メチルチオ)ベンゼンプロパノイルクロライド(9g、0.042mol)のCHCl(80ml)溶液を、0℃で、4−ブロモベンゼンアミン(7.19g、0.042mol)およびN,N−ジエチルエタンアミン(6.4ml、0.046mol)のCHCl(70ml)溶液に滴下した。この混合物をRTで一晩撹拌し、水中に注いだ。有機層をCHClで抽出して、水で洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させて乾固した。残渣をDIPE/CHClから結晶化した。沈殿を濾別し、乾燥して、5.5g(38%)の中間体2を得た。
【0146】
b)中間体3の調製
【化19】


DMF(1.81ml、0.0236mol)、次いで中間体2(5.5g、0.0157mol)を、5℃で、POCl(10.2ml、0.011mol)に少量ずつ加えた。この混合物を90℃で一晩撹拌した後、RTに冷却して、氷水中に注いた。有機層をCHClで抽出して、10%KCO水溶液で洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させて乾固した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:シクロヘキサン/CHCl 50/50;15〜40μm)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させて乾固して、2.15gの中間体3を得た。
【0147】
c)中間体4の調製
【化20】


中間体3(2.15g、0.0057mol)のCHOH(5.6ml)中CHONa 33%およびCHOH(50ml)溶液を一晩撹拌および還流した後、0℃に冷却した。沈殿を濾過し、CHOHで洗浄し、60℃で真空乾燥して、1.75g(82%)の中間体4を得た。
【0148】
d)中間体5の調製
【化21】


ヘキサン中のn−BuLi 1.6M(8.015ml、12.824mol)を、N気流下、−20℃で、ジイソプロピルアミン(1.797ml、12.824mmol)のTHF(18ml)溶液に滴下した。この混合物を−20℃で20分間撹拌した後、−70℃に冷却した。中間体4(4g、10.687mmol)のTHF(40ml)溶液を加えた。混合物を−70℃で1時間撹拌した。1,1−ジメチルエチル4−オキソ−1−ピペリジンカルボン酸エステル(3.194g、16.03mmol)のTHF(1
6ml)溶液を−70℃で加えた後、−70℃で1時間撹拌した。水およびEtOAcを−30℃で加えた。有機層を分離して水、次いで食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)して濾過し、溶媒を蒸発させて乾固した。残渣(7.5g)を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(Merck、200g、SiO 15〜40μm、溶出液:シクロヘキサン/EtOAc:80/20)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させて乾固し、1.95g(32%)の中間体5を得た。
【0149】
e)中間体6の調製
【化22】


DCM(40ml)中の中間体5(1.95g、3.4mmol)および3−クロロペルオキシ安息香酸(2.514g、10.2mmol)の混合物を一晩撹拌した。この混合物を10%炭酸カリウム水溶液中に注ぎ、DCMで抽出した。有機層を分離して水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させて乾固して、2.6g(106.859%)の中間体6を得た。
【0150】
実施例A3
a)中間体7の調製
【化23】


中間体7を、6−ブロモ−3−[(4−クロロフェニル)メチル]−2−メトキシキノリン(5g、13.787mmol)および1,1−ジメチルエチル4−オキソ−1−ピペリジンカルボン酸エステル(3.297g、16.545mmol)から出発して、中間体5に類似した方法で調製した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(B6745;SiO 10〜40μm;450g;シクロヘキサン/EtOAc 90/10)により精製した。所望の画分を集め、溶出液を蒸発させて、3.2g(41.31%)の中間体7を得た。
【0151】
b)中間体8の調製
【化24】


中間体7(3.92g、0.0070mol)、3−(1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)ピリジン(2.27g、0.0140mol)、およびPd(PPhのDME(99ml)溶液、MeOH(52ml)、および2M KCO溶液(14.4ml)を90℃で2時間撹拌した後、室温に冷却し、水中に注ぎ、DCMで抽出した。有機層を分離して、MgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:CHCl/CHOH/NHOH 99/1/0.1〜94/6/0.6)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させて、3.14g(80%)の中間体8を得た。
【0152】
実施例A4
a)中間体9の調製
【化25】


DMF(9.71ml、0.126mol)を5℃でPOCl(54.89ml、0.589mol)に滴下した後、4−クロロ−N−(4−クロロフェニル)ベンゼンプロパンアミド(24.75g、84.132mmol)を5℃で少量ずつ加えた。得られた混合物を80℃で一晩加熱した後、RTに冷却し、水および氷の中に注いだ。沈澱を濾別し、水で洗浄し、DIPE中に取り込んだ。沈澱を濾別し、乾燥(真空中、60℃)して、26.67g(98%)の中間体9を得た。
【0153】
b)中間体10の調製
【化26】


CHOH中のCHONa 30%(110.272ml、0.579mol)を、中間体9(26.67g、82.667mmol)のメタノール(518ml)溶液に加えた。この混合物を80℃で一晩撹拌した後、RTに冷却し、溶媒を減圧下で蒸発させた。混合物を水および氷の上に注ぎ、沈澱を濾別して水で洗浄した。粉末を60℃で真空乾燥して、21.4g(81%)の中間体10を得た。
【0154】
c)中間体11の調製
【化27】


HCl 3N(50ml)を中間体10(9.7g、30.484mmol)のTHF溶液に加えた。このRMを70℃で一晩加熱した。混合物をRTに冷却し、氷水中に注いだ。溶液を45分間撹拌し、沈殿を濾過し、水で洗浄し、60℃で一晩真空乾燥して、7.66g(82%)の中間体11を得た。
【0155】
d)中間体12の調製
【化28】


NaH(173.568mg、7.233mmol)を、窒素下、5℃で、中間体11(2g、6.575mmol)のDMF(25ml)溶液に加えた。このRMをRTで30分間撹拌した。次いで、エチル2−ブロモアセテート(0.802ml、7.233mmol)を5℃でRMに加えた。RMをRTで一晩撹拌した。水およびEtOAcをRTで加えた。
【0156】
沈殿を濾別し、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(15〜40μm、1.95g、シクロヘキサン/EtOAc 80/20)により精製した。画分を集め、蒸発乾固し、0.89g(34%)の中間体12を得た。
【0157】
濾液を分離して水および食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させて乾固して、1.78g(69%)の中間体12を得た。
【0158】
e)中間体13の調製
【化29】


AlLi(48.626mg、1.281mmol)を、窒素下、0℃で、中間体12(1g、2.562mmol)のTHF(10ml)溶液に加えた。このRMを0℃で30分間撹拌した。HAlLi(0.5等量)を加え、RMを0℃で30分間撹拌した。次いで、EtOAcおよび水をRMに加えた。有機層を分離して水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させて乾固した。
【0159】
残渣を、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(15〜40μm、4.29g、CHClを20分間、次いでCHCl/MeOH/NHOH 98/2/0.1を40分間)により精製した。純粋な画分を集め、溶出液を蒸発させて、中間体13を得、次のステップの手順に使用した。さらに精製することにより、不純画分からさらに多くの生成物を得ることができる。
【0160】
f)中間体14の調製
【化30】


中間体13(805mg、2.312mmol)、(1,1−ジメチルエチル)ジメチルシリル1,1,1−トリフルオロメタンスルホン酸、エステル(916.617mg、3.468mmol)、およびピリジン(0.28ml、3.468mmol)のDCM(2ml)溶液をRTで7時間撹拌した。MeOH(800μl)をRMに加え、それを10%KCO水溶液に注いだ。この混合物をCHClで抽出した。有機画分を分離して水で洗浄し、MgSOで乾燥し、蒸発乾固した。残渣を、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(15〜40μm、0.915g、シクロヘキサン/EtOAc
70/30)により精製した。
【0161】
純粋な画分を集め、蒸発乾固して、中間体14を得、次のステップの手順に使用した。
【0162】
g)中間体15の調製
【化31】


ヘキサン中のn−BuLi 1.6M(0.973ml、1.557mmol)を、−20℃で、ジイソプロピルアミン(0.219ml、1.557mmol、0.72g/ml)のTHF(2ml)溶液に滴下した。この混合物をこの温度で20分間撹拌した後、−78℃に冷却した。中間体14(600mg、1.297mmol)のTHF(6ml)溶液を加えた後、−78℃で1時間撹拌した。1,1−ジメチルエチル4−オキソ−1−ピペリジンカルボン酸エステル(310.19mg、1.557mmol)のTHF(3ml)溶液を−78℃で加えた後、−78℃で1時間撹拌した。水およびEtOAcを加え、有機層を分離して水、次いで食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥して濾過し、蒸発乾固した。
【0163】
残渣を、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(15〜40μm、800mg、シクロヘキサン/EtOAc 90/10〜80/20)により精製した。純粋な画分を集め、蒸発乾固し、614mg(71.5%)の中間体15を得た。
【0164】
h)中間体16の調製
【化32】


中間体15(520mg、0.786mmol)およびテトラブチルアンモニウムフルオライド(0.943ml、0.943mmol)のTHF(5ml)溶液を0℃で2時間撹拌した。水およびEtOAcを加え、有機層を分離して水および食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥して濾過し、溶媒を蒸発させて乾固して、535mgの中間体16を得た。
【0165】
i)中間体17の調製
【化33】


メタンスルホニルクロライド(0.0537ml、0.694mmol)を、0℃で、中間体16(380mg、0.694mmol)およびN,N−ジエチルエタンアミン(0.0965ml、0.694mmol)のDCM(4ml)溶液に加えた。このRMを0℃で2時間撹拌した。溶媒を蒸発させて乾固して、600mgの中間体17を得た。
【0166】
j)中間体18の調製
【化34】


中間体17(600mg、0.959mmol)、N−メチルメタンアミン(216.208mg、4.796mmol)、およびKCO(662.784mg、4.796mmol)のアセトニトリル(6ml)溶液を、一晩還流(81℃)撹拌した。EtOAcおよび水をこのRMに加え、有機層を水および食塩水で洗浄し、乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(15〜40μm、mg、CHCl/MeOH/NHOH 95/5/0.1)により精製した。純粋な画分を集め、蒸発乾固し、171mg(31%)の中間体18を得た。
【0167】
実施例A5
a)中間体19の調製
【化35】


6−ブロモ−3−[(4−クロロフェニル)メチル]−2−メトキシキノリン(10g、27.6mmol)、3N HCl(100ml)、およびTHF(100ml)の溶液を、70℃で一晩加熱した。この混合物をRTに冷却し、氷水中に注いだ。溶液を30分間撹拌し、沈殿を濾過し、水で洗浄し、60℃で真空乾燥して、9.56g(99.4%)の中間体19を得た。融点220℃。
【0168】
b)中間体20の調製
【化36】


ヨウ化エチル(3.29ml、41.13mmol)を、中間体19(4.78mg、13.71mmol)、BTEAC(1.56g、6.85mmol)、および10N NaOH(67ml)のTHF(50ml)溶液に加えた。この混合物を水中に注ぎ、EtOAcで抽出した。有機層を合わせて食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥して濾過し、濃縮した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:DCM 100%、15〜40μm)により精製した。純粋な画分を集め、蒸発乾固し、3g(58%)の中間体20を得た。融点118℃。
【0169】
B.化合物の調製
実施例B1
化合物1の調製
【化37】


ヘキサン中のn−BuLi 1.6M(0.84ml、0.0013mol)を、N気流下、−20℃で、N−(1−メチルエチル)−2−プロパンアミン(0.19ml、0.0013mol)のTHF(2.7ml)溶液に滴下した。この混合物を−20℃で20分間撹拌した後、−70℃に冷却した。中間体1(0.508g、0.0012mol)のTHF(5ml)溶液を加えた。混合物を1.5時間撹拌した。1−(2−フェニルエチル)−4−ピペリドン(0.222g、0.0010mol)のTHF(2ml)溶液を滴下した。混合物を−70℃で2時間撹拌した後、−30℃にして、HO中に注ぎ、EtOAcで抽出した。有機層を飽和NaClで洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:CHCl/CHOH 98/2;15〜40μm)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させた。残渣を2−プロパノン/フマル酸(3等量)に溶解し、フマル酸塩に変換した。沈殿を1時間撹拌して濾過し、2−プロパノンで洗浄し、60℃で真空乾燥して、0.194g(92%)の化合物1を得た。融点158℃。
【0170】
実施例B2
a)化合物2の調製
【化38】


ヘキサン中のn−BuLi 1.6M(3ml、4.78mmol)を、窒素気流下、−20℃で、ジイソプロピルアミン(0.67ml、4.78mmol)のTHF(7ml)溶液に徐々に加えた。この混合物を−20℃で20分間撹拌した後、−70℃に冷却した。中間体20(1.5g、3.98mmol)のTHF(15ml)溶液を徐々に加えた。混合物を−70℃で1.5時間撹拌した。1−フェニルメチル−4−ピペリドン(0.785ml、4.38mmol)のTHF(8ml)溶液を徐々に加えた。混合物を−70℃で2時間撹拌し、氷水と共に−30℃で加水分解し、EtOAcで抽出した。有機層を分離して、MgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(15〜40μm、DCM/MeOH/NHOH:97/3/0.1)により精製した。純粋な画分を集め、蒸発乾固して、白色泡状物質を得、それをアセトン(3ml)中で結晶化して、0.105gの化合物2を得た。融点212℃。
【0171】
b)化合物3の調製
【化39】


DME(10ml)中の化合物2(0.42g、0.7mmol)、3−(1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)ピリジン(0.241g、1.5mmol)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.086g)の混合物、CHOH(8ml)、ならびに炭酸カリウム2M(1.8ml)の溶液を90℃で4時間撹拌した。RTに冷却した後に、この反応混合物を水中に注ぎ出し、CHClで抽出した。有機層を分離して乾燥(MgSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:CHCl/CHOH/NHOH;98/2/0.1)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させた。残渣を2−プロパノンから結晶化した。沈殿を濾別し、乾燥して、0.117g(28%)の化合物3を得た。融点172℃。
【0172】
c)化合物4の調製
【化40】


DME(4ml)中の化合物29(0.15g、0.2mmol)、フェニルボロン酸(0.053g、0.4mmol)、およびPd(PPh(0.34g、0.3mmol)の混合物、MeOH(2ml)、ならびに2M炭酸カリウム溶液(0.3ml)を90℃で2時間撹拌した後、水およびDCMの中に注いだ。有機層を分離して乾燥(MgSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:CHCl/CHOH 97/3;15〜40μm)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させて、0.108g(73%)の化合物4を得た。
【0173】
実施例B3
化合物5の調製
【化41】


3−ベンジル−6−ブロモ−2−メトキシキノリン(0.00091mol)をTHF(6ml)に溶解し、この溶液をAr雰囲気下で−70℃に冷却した。THF/ヘプタン/エチルベンゼン(0.00100mol)中のリチウム−ジイソプロピルアミン2Mを滴下し、この反応混合物を−70℃で1.5時間撹拌した。1−(2−フェニルエチル)−4−ピペリドン(0.00109mol)のTHF(4ml)溶液を加え、得られた反応混合物を−70℃で1.5時間、次いで0℃で1時間撹拌した。氷水を加えることにより、反応溶液を−10℃で加水分解した。この混合物を、ジエチルエーテルで2回、DCMで2回抽出した。有機層を分離して乾燥(NaSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣(0.519g)を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:石油エーテル/ジエチルエーテル//NHOH 10/1/0.1、5/1/0.1、2/1/0.1から純粋なジエチルエーテルに)により精製した。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させて、0.100gの化合物5を得た。
【0174】
実施例B4
a)化合物6の調製
【化42】


ヘキサン中のn−BuLi 1.6M(0.84ml、0.0013mol)を、N気流下、−20℃で、N−(1−メチルエチル)−2−プロパンアミン(0.19ml、0.0013mol)のTHF(2.7ml)溶液に滴下した。この混合物を−20℃で20分間撹拌した後、−70℃に冷却した。6−ブロモ−3−[(4−クロロフェニル)メチル]−2−メトキシキノリン(2g、0.0055mol)のTHF(20ml)溶液を加えた。混合物を−70℃で1時間撹拌した。1−(フェニルメチル)−4−ピペリ
ドン(1.17ml、0.0066mol)のTHF(12ml)溶液を加えた。混合物を−70℃で3時間撹拌した。水を加えた。混合物をEtOAcで抽出した。有機層を飽和NaClで洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:シクロヘキサン/EtOAc:30/70;15〜40μm)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させて、1.8g、60%の化合物6を得た。
【0175】
b)化合物7および8の調製
【化43】


化合物6(0.4g、0.7mmol)を、SFC Chiralpack AD(溶出液:CO/(CHCN/CHOH 90/10)50/50、次いでCHCl/CHOH 99/1)により2つの鏡像異性体に分割した。2つの画分を集め、溶媒を蒸発させて、0.14gの化合物7;旋光度:−130.99°(589nm、c0.484w/v%、DMF、20℃)、および0.16gの化合物8;旋光度:+132.07°(589nm、c0.421w/v%、DMF、20℃)を得た。
【0176】
実施例B5
化合物9の調製
【化44】


中間体5(0.25g、0.4mmol)およびトリフルオロ酢酸(1ml)のCHCl(5ml)溶液を、RTで45分間撹拌した。この混合物を10%KCO水溶液中に注ぎ出し、CHClで抽出した。有機層を分離して水で洗浄し、乾燥(MgSO)して濾過し、溶媒を蒸発させて乾固した。残渣を2−プロパノン/EtOHに溶解し、(E)−2−ブテンジオン酸塩に変換した。沈殿を濾別し、乾燥して、0.146gの化合物9(55%)を得た。融点204℃。
【0177】
実施例B6
化合物10の調製
【化45】


HCl 3N(1ml)を化合物6(0.1g、0.1mmol)のTHF(1ml)溶液に加えた。この混合物を70℃で6時間撹拌した後、RTにして、HO中に注ぎ、KCOで塩基性にして、EtOAcで抽出した。有機層を飽和NaClで洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣をジエチルエーテルから結晶化した。沈殿を濾別し、乾燥して、0.08g(82%)の化合物10を得た。融点244℃。
【0178】
実施例B7
化合物11の調製
【化46】


化合物6(0.2g、0.3mmol)、トリブチルエテニルスタンナン(0.21ml、0.7mmol)、およびジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.025g)のDMF(4ml)溶液を、80℃で10分間撹拌した。0.5等量のトリブチルエテニルスタンナンおよび0.5等量のジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを加えた。混合物を80℃で5分間撹拌した。0.5等量のトリブチルエテニルスタンナンおよび0.5等量のジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを再度加えた。混合物を80℃で10分間撹拌し、フッ化カリウムの溶液中に注ぎ出した。EtOAcを加えた。混合物を1時間撹拌し、セライト上で濾過した。セライトをEtOAcで洗浄した。有機層を飽和NaClで洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、Kromasil上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:CHCl/CHOH 100/0〜97/3/0.3;3〜5μm)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させた。残渣を2−プロパノン/フマル酸に溶解し、フマル酸塩に変換した。沈殿を1時間撹拌して濾別し、2−プロパノンで洗浄し、60℃で真空乾燥して、0.081g(67%)の化合物11を得た。融点195℃。
【0179】
実施例B8
化合物12の調製
【化47】


ギ酸アンモニウム(0.143g、0.0022mol)、次いでチャコール上のパラジウム(0.25g)を、N気流下で、化合物6(0.25g、0.4mmol)のCHOH(5ml)溶液に加えた。この混合物を1時間15分撹拌および還流した後、RTにして、セライト上で濾過した。セライトをEtOAcで洗浄した。濾液を飽和NaClで洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:CO/CHOH/イソプロピルアミン 90/10/0.5)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させた。残渣をDIPEから結晶化した。沈殿を濾別し、乾燥して、0.025g(16%)の化合物12を得た。融点119℃。
【0180】
実施例B9
化合物13の調製
【化48】


DMF(1.5ml)中の化合物6(0.15g、0.2mmol)、Zn(CN)(0.019g、0.1mmol)、Pd(dba)(0.012g)、およびdppf(0.015g)の混合物、ならびにHO(15滴)を、マイクロウエーブオーブン中で100℃で10分間撹拌した。Zn(CN)(0.6等量)、Pd(dba)(0.05当量)、およびdppf(0.1等量)を加えた。この混合物をマイクロウエーブオーブン中で100℃で15分間撹拌した。Zn(CN)(0.3等量)、Pd(dba)(0.02等量)、およびdppf(0.05等量)を加えた。混合物を100℃で10分間撹拌し、HO中に注ぎ、EtOAcで抽出した。有機層を飽和NaClで洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、Kromasil上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:CHCl/CHOH/NHOH
100/0/0〜96/4/0.4;3.55m、次いでCHOH/NHHCO0.5%、80/20;5μm)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させた。残渣を2−プロパノン/フマル酸に溶解し、フマル酸塩に変換した。沈殿を3時間撹拌して濾過し、2−プロパノンで洗浄し、60℃で真空乾燥して、0.035g(61%)の化合物13を得た。融点199℃。
【0181】
実施例B10
a)化合物14の調製
【化49】


トリフルオロ酢酸(10ml)中の中間体7(2.7g、4.81mmol)およびDCM(30ml)の混合物を5℃で30分間、次いでRTで1時間撹拌した。この混合物を10%炭酸カリウム水溶液中に注ぎ、DCMで抽出した。有機層を分離して水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させて乾固して、1.12g(50%)の化合物14を得た。融点169℃。
【0182】
b)化合物15の調製
【化50】


酢酸(2滴)およびCHOH(4ml)中の化合物14(0.4g、0.9mmol)および1−(フェニルメチル)−4−ピペリドン(0.23ml、0.0013mol)の混合物をRTで1時間撹拌した。NaBHCN(0.11g、0.0017mol)を加えた。この混合物をRTで3日間撹拌した。水を加えた。混合物をセライト上で濾過した。セライトをEtOAcで洗浄した。有機層を分離して、MgSOで乾燥し、濾別し、溶媒を蒸発させた。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:CHCl/MeOH/NHOH 95/5/0.5;15〜40μm)により精製した。所望の画分を集め、溶媒を蒸発させた。残渣を2−プロパノン(2ml)に溶解し、(E)−2−ブテンジオン酸塩(2等量、0.2mmol)に変換した。沈澱を濾別し、乾燥(真空中、60℃)して、0.065gの化合物15を得た。融点228℃。
【0183】
実施例B11
化合物16の調製
【化51】


CHCl(8ml)中の化合物14(0.4g、0.72mmol)およびホルムアルデヒド37%水溶液(0.24ml、3.0mmol)の混合物を15分間撹拌した後、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド(0.38g、1.8mmol)を加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。この混合物を水中に注ぎ出し、CHClで抽出した。有機層を分離して水で洗浄し、MgSOで乾燥して濾過し、溶媒を蒸発させて乾固した。残渣をジエチルエーテルから結晶化した。沈殿を濾別し、乾燥して、0.052g(15%)の化合物16を得た。融点193℃。
【0184】
実施例B12
化合物17の調製
【化52】


CHCN(5ml)中の化合物14(0.26mmol;120mg)、1−(ブロモメチル)−3−フルオロベンゼン(0.39mmol;50μl)、およびKCO(0.39mmol、53.9mg)の混合物を、18時間撹拌および還流した。この混合物をRTに冷却し、水中に注いだ。EtOAcを混合物に加え、有機層を抽出して、水、次いで食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥して濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(Merck、30g、SiO 15〜40μm、シクロヘキサン/EtOAc 75/25)により精製を行った。純粋な画分を集め、溶出液を蒸発させた。残渣をアセトン(1ml)に溶解した。アセトン/EtOH(50/50:2ml)に溶解したフマル酸(1等量)を混合物に加えた。得られた沈殿を濾別し、乾燥して、27mg(15.15%)の化合物17を得た。
【0185】
実施例B13
a)化合物18および19の調製
【化53】


中間体6(3.4mmol、2.059g)のトリフルオロ酢酸(5ml)およびDCM(25ml)溶液をRTで45分間撹拌した。この混合物を10%炭酸カリウム水溶液中に注ぎ、DCMで抽出した。有機層を分離して水で洗浄し、MgSOで乾燥して濾過し、溶媒を蒸発させて乾固した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(B6694、SiO 14〜40μm、溶出液:DCM/MeOH/NHOH水溶液:93/7/0.1〜90/10/1)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させて乾固して、0.3g(17.457%)の化合物18を得た。塩基最終生成物の試料はフマル酸塩の化合物19として結晶化した。
【0186】
b)化合物20の調製
【化54】


1,2−ジクロロエタン(5ml)中の化合物18(0.3g、0.6mmol)、ベンズアルデヒド(0.06ml、0.6mmol)、およびナトリウムトリアセトキシボロハイドライド(0.189g、0.89mmol)の混合物を一晩撹拌した。この溶液を水中に注いだ。混合物をCHClで抽出して、水で洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、溶媒を蒸発させて乾固した。粗生成物を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(SiO 3.5μm、溶出液:CHCl/MeOH/NHOH水溶液:100/0/0〜96/4/0.4)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させて乾固して、0.047g(13.3%)の化合物20を得た。
【0187】
実施例B14
a)化合物21の調製
【化55】


ヘキサン中のn−BuLi 1.6M(5.7ml、9.06mmol)を、窒素気流下、−70℃で、化合物6(2g、3.62mmol)のTHF(20ml)溶液に滴下した。この混合物を−70℃で1.30時間撹拌した後、DMF(2.24ml;29mmol)を加えた。得られた混合物を−70℃で2時間撹拌した後、水を加えた。混合物をEtOAcで抽出した。有機層を水、次いで食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥して濾過し、蒸発乾固した。残渣をジイソプロピルエーテルおよびメタノールから結晶化した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:CHCl/MeOH、96/4、15〜40μm、450g)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させて乾固して、0.712g(39%)の化合物21を得た。
【0188】
b)化合物22の調製
【化56】


水素化ホウ素ナトリウム(9.1mg、0.24mmol)を、0℃で、化合物21(0.12g、0.24mmol)のMeOH(2.5ml)およびTHF(2.5ml)溶液に加えた。この混合物を0℃で2時間撹拌した後、水を加え、EtOAcで抽出した。有機層を水、次いで食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥して濾過し、蒸発乾固した。フマル酸(0.049g、0.42mmol)を、純粋生成物のアセトン(3ml)溶液に少量ずつ加え、純粋生成物を(E)−2−ブテンジオン酸塩に変換した。混合物を室温で1時間撹拌した。沈殿を濾別し、アセトンで洗浄し、60℃で真空乾燥して、0.080g(51.9%)の化合物22を得た。融点196℃。
【0189】
実施例B15
a)化合物23の調製
【化57】


ヘキサン中のn−BuLi 1.6M(5.7ml、9.06mmol)を、窒素気流下、−70℃で、化合物6(2g、3.62mmol)のTHF(20ml)溶液に滴下した。この混合物を−70℃で2時間撹拌した。COを−78℃でこのRMに通して泡立たせた。水を、−20℃で注意深く加えた。有機層をEtOAcで抽出して、MgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を濃縮した。残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液:CHCl/MeOH、85/15、15〜40μm、300g)により精製した。純粋な画分を集め、溶媒を蒸発させて乾固して、0.600g(32.6%)の化合物23を得た。
【0190】
b)化合物24の調製
【化58】


1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(58mg、0.43mmol)およびN’−(エチルカルボンイミドイル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン塩酸塩(82mg、0.43mmol)を化合物23(170mg、0.33mmol)のCHCl(2ml)溶液に加えた。得られた混合物をRTで2時間撹拌した後、3−ピリジンアミン(40mg、0.43mmol)を少量ずつ加えた。この溶液を室温で一晩撹拌した。水を加え、有機層をEtOAcで抽出して、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣を、CHCl/CHOH/NHOH 98/2/0.2〜CHCl/CHOH/NHOH 92/8/0.8による、SiOHカラム(5μm、30×150mm)上のクロマトグラフィーにより精製した。純粋な画分を集め、蒸発乾固した。残渣をDIPEから結晶化して、65mg(33.33%)の化合物24を得た。
【0191】
実施例B16
化合物25の調製
【化59】


化合物14(0.365g、0.79mmol)をN,N−ジエチルエタンアミン(0.55ml、3.95mol)のアセトニトリル(9ml)溶液に加えた。次いで、1H−ピラゾール−1−カルボキサミジン塩酸塩(0.348g、2.37mmol)を加え、得られた混合物を75℃で36時間撹拌した。得られた沈殿を濾過し、CHCNで洗浄した。固体を水で3回洗浄し、60℃で真空乾燥して、0.276g(69%)の化合物25を得た。
【0192】
実施例B17
化合物26の調製
【化60】


HCl 3N(5ml)およびTHF(5ml)中の中間体8(0.9mmol)の混合物を、70℃で一晩撹拌した後、RTに冷却し、氷水中に注ぎ出し、30分間撹拌した。沈殿を濾過し、水で洗浄し、60℃で真空乾燥した。残渣をDIPEから結晶化した。沈殿を濾別し、60℃で真空乾燥した。この画分を2−プロパノンに溶解し、(E)−2−ブテンジオン酸塩に変換した。沈殿を濾別し、2−プロパノンで洗浄し、60℃で真空乾燥して、0.047g(37%)の化合物26を得た。融点250℃。
【0193】
実施例B18
化合物27の調製
【化61】


中間体18(170mg、0.296mmol)のHCl/2−プロパノール5M(2ml)溶液を、0℃で撹拌し、RTで5時間撹拌した。10%KCO水溶液を反応混合物に加えた。有機層を分離して水で洗浄し、MgSOで乾燥して濾過し、溶媒を蒸発させた。シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(15〜40μm、52mg、CHCl/MeOH/NHOH 85/15/1)により精製を行った。純粋な画分を集め、蒸発乾固し、25mg(17.8%)の化合物27を得た。
【0194】
以下の最終化合物は、上記の方法により調製した。上記のセクションBの実施例に記載される化合物は、関連するB実施例にアスタリスクを付けて示される。他の化合物は、指定の関連するB実施例に類似した方法で調製される。
【0195】
【表4】
【0196】
【表5】
【0197】
【表6】
【0198】
【表7】
【0199】
【表8】
【0200】
【表9】
【0201】
C.分析法
基本手順A:
HPLC測定は、脱気装置付き四式ポンプ、オートサンプラー、ダイオードアレイ検出器(DAD)、および以下のそれぞれの方法で指定されるカラムを備えたAlliance HT 2795(Waters)システムを使用して実施した。カラム温度は30℃に保持する。カラムからの流れを分割して、MSスペクトロメーターに送った。MS検出器はエレクトロスプレイイオン化源で構成した。方法1、2および3についは、LCT(Waters製のTime of Flight Zspray(商標)マススペクトロメーター)上で、キャピラリーニードルの電圧を3kVとし、イオン化源温度を100℃に維持し、方法4および5については、ZQ(商標)(Waters製の単純四極子Zspray(商標)マススペクトロメーター)上で、3.15kV、110℃に維持した。ネブライザーガスとして窒素を使用した。データ収集は、Waters−Micromass MassLynx−Openlynxデータシステムを用いて行った。
【0202】
基本手順B
LC測定は、脱気装置付き複式ポンプ、オートサンプラー、ダイオードアレイ検出器(DAD)、および以下のそれぞれの方法で指定されるカラムを備えたUPLC(超性能液体クロマトグラフィー)Acquity(Waters)を使用して実施した。カラム温度は40℃に保持する。カラムからの流れを、MS検出器に送った。MS検出器はエレクトロスプレイイオン化源で構成した。Quattro(Waters製の三重四極子マススペクトロメーター)上で、キャピラリーニードルの電圧を3kVとし、イオン化源温度を130℃に維持した。ネブライザーガスとして窒素を使用した。データ収集は、Waters−Micromass MassLynx−Openlynxデータシステムを用
いて行った。
【0203】
方法1
基本手順Aに加えて:逆相HPLCを、Kromasil C18カラム(5μm、4.6×150mm)上で流速1.0ml/分にて実施した。3種の移動相(移動相A:100% 7mM酢酸アンモニウム;移動相B:100%アセトニトリル;移動相C:0.2%ギ酸+99.8%超純水)を使用して、30%のA、40%のB、および30%のC(1分間保持)から4分で100%のBになるような勾配条件で流し、さらに100%のBで5分間流し、初期条件で3分間再平衡化した。5μlの注入量を使用した。正のイオン化モードに対するコーン電圧を20Vにした。質量スペクトルは、0.08秒のインタースキャンディレイを使用して、0.8秒で100〜900回走査することにより得た。
【0204】
方法2
基本手順Aに加えて:逆相HPLCを、Kromasil C18カラム(5μm、4.6×150mm)上で流速1.0ml/分にて実施した。3種の移動相(移動相A:100% 7mM酢酸アンモニウム;移動相B:100%アセトニトリル;移動相C:0.2%ギ酸+99.8%超純水)を使用して、30%のA、40%のB、および30%のC(1分間保持)から4分で100%のBになるような勾配条件で流し、さらに100%のBで5分間流し、初期条件で3分間再平衡化した。5μlの注入量を使用した。正負のイオン化モードに対するコーン電圧を20Vにした。質量スペクトルは、0.08秒のインタースキャンディレイを使用して、0.8秒で100〜900回走査することにより得た。
【0205】
方法3
基本手順Aに加えて:逆相HPLCを、Xterra−MS C18カラム(5μm、4.6×150mm)上で流速1.0ml/分にて実施した。2種の移動相(移動相A:100% 7mM酢酸アンモニウム;移動相B:100%アセトニトリル)を使用して、85%のA、15%のB(3分間保持)から5分で20%のA、80%のBになるような勾配条件で流し、20%のAおよび80%のBを6分間保持し、初期条件で3分間再平衡化した。20μlの注入量を使用した。コーン電圧を正のイオン化モードに対して20V、負のイオン化モードに対して20Vにした。質量スペクトルは、0.08秒のインタースキャンディレイを使用して、0.8秒で100〜900回走査することにより得た。
【0206】
方法4
基本手順Aに加えて:逆相HPLCを、Sunfire C18カラム(3.5μm、4.6×100mm)上で初期流速0.8ml/分にて実施した。2種の移動相(移動相A:35% 6.5mM酢酸アンモニウム+30%アセトニトリル+35%ギ酸(2ml/l);移動相B:100%アセトニトリル)を使用して、100%のA(1分間保持)から4分で100%のBになるような勾配条件で流し、100%のBを流速1.2ml/分で4分間保持し、初期条件で3分間再平衡化した。10μlの注入量を使用した。正負のイオン化モードに対するコーン電圧を20Vにした。質量スペクトルは、0.3秒のインタースキャンディレイを使用して、0.4秒で100〜1000回走査することにより得た。
【0207】
方法5
基本手順Aに加えて:逆相HPLCを、Sunfire C18カラム(3.5μm、4.6×100mm)上で初期流速0.8ml/分にて実施した。2種の移動相(移動相A:35% 6.5mM酢酸アンモニウム+30%アセトニトリル+35%ギ酸(2ml/l);移動相B:100%アセトニトリル)を使用して、100%のA(1分間保持)から4分で100%のBになるような勾配条件で流し、100%のBを流速1.2ml/
分で4分間保持し、初期条件で3分間再平衡化した。10μlの注入量を使用した。正のイオン化モードを、4つの異なるコーン電圧(20、40、50、55V)で使用した。質量スペクトルは、0.1秒のインタースキャンディレイを使用して、0.4秒で100〜1000回走査することにより得た。
【0208】
方法6
基本手順Bに加えて:逆相UPLCを、Waters Acquity架橋エチルシロキサン/シリカハイブリッド(BEH)C18カラム(1.7μm、2.1×100mm)上で流速0.4ml/分にて実施した。2種の移動相(移動相A:100% 7mM酢酸アンモニウム;移動相B:100%アセトニトリル)を使用して、80%のAおよび20%のB(0.5分間保持)から3.5分で10%のAおよび90%のBになるような勾配条件で流し、それを2分間保持し、初期条件で2分間再平衡化した。2μlの注入量を使用した。正負のイオン化モードに対するコーン電圧を20Vにした。質量スペクトルは、0.1秒のインタースキャンディレイを使用して、0.2秒で100〜1000回走査することにより得た。
【0209】
方法7
基本手順Bに加えて:逆相UPLCを、Waters Acquity架橋エチルシロキサン/シリカハイブリッド(BEH)C18カラム(1.7μm、2.1×100mm)上で流速0.4ml/分にて実施した。2種の移動相(移動相A:100% 7mM酢酸アンモニウム;移動相B:100%アセトニトリル)を使用して、80%のAおよび20%のB(0.5分間保持)から3.5分で10%のAおよび90%のBになるような勾配条件で流し、それを2分間保持し、初期条件で2分間再平衡化した。2μlの注入量を使用した。正のイオン化モードに対するコーン電圧は、20、30、45、60Vにした。質量スペクトルは、0.1秒のインタースキャンディレイを使用して、0.2秒で100〜1000回走査することにより得た。
【0210】
方法8
基本手順Bに加えて:逆相UPLCを、Waters Acquity BEH(架橋エチルシロキサン/シリカハイブリッド)C18カラム(1.7μm、2.1×100mm)上で流速0.35ml/分にて実施した。2種の移動相(移動相A:95% 7mM酢酸アンモニウム/5%アセトニトリル;移動相B:100%アセトニトリル)を使用して、90%のAおよび10%のB(0.5分間保持)から3.5分で8%のAおよび92%のBになるような勾配条件で流し、それを2分間保持し、0.5分かけて初期条件に戻し、それを1.5分間保持した。2μlの注入量を使用した。正負のイオン化モードに対するコーン電圧を20Vにした。質量スペクトルは、0.1秒のインタースキャンディレイを使用して、0.2秒で100〜1000回走査することにより得た。
【0211】
方法9
基本手順Bに加えて:逆相UPLCを、Thermo Hypersil Gold C18カラム(1.9μm、2.1×100mm)上で流速0.40ml/分にて実施した。2種の移動相(移動相A:95% 7mM酢酸アンモニウム/5%アセトニトリル;移動相B:100%アセトニトリル)を使用して、72%のAおよび28%のB(0.5分間保持)から3.5分で8%のAおよび92%のBになるような勾配条件で流し、それを2分間保持し、0.5分かけて初期条件に戻し、それを1.5分間保持した。2μlの注入量を使用した。正負のイオン化モードに対するコーン電圧を20Vにした。質量スペクトルは、0.1秒のインタースキャンディレイを使用して、0.2秒で100〜1000回走査することにより得た。
【0212】
方法10
基本手順Bに加えて:逆相UPLCを、Waters HSS(高強度シリカ)C18カラム(1.8μm、2.1×100mm)上で流速0.40ml/分にて実施した。2種の移動相(移動相A:95% 7mM酢酸アンモニウム/5%アセトニトリル;移動相B:100%アセトニトリル)を使用して、72%のAおよび28%のB(0.5分間保持)から3.5分で8%のAおよび92%のBになるような勾配条件で流し、それを2分間保持し、0.5分かけて初期条件に戻し、それを1.5分間保持した。2μlの注入量を使用した。正負のイオン化モードに対するコーン電圧を20Vにした。質量スペクトルは、0.1秒のインタースキャンディレイを使用して、0.2秒で100〜1000回走査することにより得た。
【0213】
C2.旋光度
旋光計を使用して旋光度を測定した。[α]20は、温度20℃でナトリウムD線の波長(589nm)の光で測定された旋光度を示す。セル光路長は1dmである。[α]20の後に、旋光度を測定するために使用した溶液の温度、濃度、および溶媒を示す。
【0214】
C3.融点
いくつかの化合物について、直線的温度勾配による加熱プレート、スライディングポインター、および摂氏温度スケールからなるKoflerホットベンチを用いて融点を得た。
【0215】
【表10】
【0216】
【表11】
【0217】
【表12】
【0218】
【表13】
【0219】
D.薬理学的実施例
D.1.化合物について、マイコバクテリウム・スメグマチス(M.Smegmatis)ATCC607株に対する抗菌活性を試験するin vitroの方法
無菌の平底96ウェルプラスチックマイクロタイタープレートに、0.25%BSAを添加した無菌脱イオン水180μlを満たした。次いで、化合物の原液(7.8×最終試験濃度)を、細菌増殖に対するそれらの効果を評価するために、カラム2の一連の重複ウェルに45μl容量で加えた。特注ロボットシステム(Zymark Corp.,Hopkinton,MA)を使用して、マイクロタイタープレートのカラム2から11にかけて、5倍希釈系列(180μl中の45μl)を直接作製した。疎水性が高い化合物に伴うピペッティング誤差を最小限に抑えるために、3回希釈ごとにピペットチップを変えた。接種菌を含む(カラム1)および含まない(カラム12)無処理対照試料を、各マイクロタイタープレートに含ませた。ウェル当たり約250CFUの細菌接種量を、2.8×Mueller−Hintonブロス培地の100μl容量で、カラム12を除いた列AからHに加えた。接種菌を含まない、同量のブロス培地をカラム12の列AからHに加えた。培養物を、加湿5%CO雰囲気下、37℃で48時間インキュベートした(開放空気弁および連続換気を備えたインキュベーター)。インキュベーションの終了時、すなわち接種2日後に、細菌増殖の量を蛍光定量的に測定した。そのために、アラマーブルー(10倍)を、20μl容量ですべてのウェルに加え、プレートを50℃でさらに2時間インキュベートした。
【0220】
励起波長530nmおよび発光波長590nm(ゲイン30)にて、コンピュータ制御の蛍光光度計(Cytofluor,Biosearch)で蛍光を読み取った。化合物により得られる増殖阻害パーセントを、標準的方法により算出し、細菌増殖を90%阻害する濃度として定義されるIC90(μg/ml)として表した。その結果を表7に示す。
【0221】
D.2.化合物について、非マイコバクテリア株に対する抗菌活性を試験するin vitroの方法
感受性試験用の細菌懸濁液の調製:
この試験で使用する細菌を、無菌脱イオン水中のMueller−Hintonブロス(Becton Dickinson−カタログ番号275730)を100ml含有するフラスコにて、37℃で振盪させながら、一晩増殖させた。原液(0.5ml/チューブ)は、使用するまで−70℃に保存した。細菌力価測定をマイクロタイタープレートで実施し、TCID50を検出した。TCID50は、接種を受けた培養物の50%で細菌増殖が生じる稀釈度を表す。一般に、TCID50が約100の接種量レベルを感受性試験に使用した。
【0222】
抗菌感受性試験:IC90の測定
マイクロタイタープレートアッセイ
無菌の平底96ウェルプラスチックマイクロタイタープレートに、0.25%BSAを添加した無菌脱イオン水180μlを満たした。次いで、化合物の原液(7.8×最終試験濃度)をカラム2に45μl容量で加えた。マイクロタイタープレートのカラム2からカラム11にかけて、5倍希釈系列(180μl中の45μl)を直接作製した。接種菌
を含む(カラム1)および含まない(カラム12)無処理対照試料を、各マイクロタイタープレートに含ませた。細菌の種類に応じて、ウェル当たり約10〜60CFUの細菌接種量(100 TCID50)を、2.8×Mueller−Hintonブロス培地の100μl容量で、カラム12を除いた列AからHに加えた。接種菌を含まない、同量のブロス培地をカラム12の列AからHに加えた。培養物を、標準大気下(開放空気弁および連続換気を備えたインキュベーター)、37℃で24時間インキュベートした。インキュベーションの終了時、すなわち接種1日後に、細菌増殖の量を蛍光定量的に測定した。そのために、レサズリン(0.6mg/ml)を、接種3時間後にすべてのウェルに20μl容量で加え、プレートを再度一晩インキュベートした。青色からピンク色への色の変化により、細菌の増殖が示された。励起波長530nmおよび発光波長590nmにて、コンピュータ制御の蛍光光度計(Cytofluor Biosearch)で蛍光を読み取った。化合物により得られる増殖阻害%を、標準的方法により算出した。IC90(μg/mlで表示)を、細菌増殖を90%阻害する濃度として定義した。結果を、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)株を使用したアッセイについての表7に示す。
【0223】
寒天希釈法
Mueller−Hinton寒天を使用する培地に含む、NCCLS標準による標準寒天希釈法を実施することにより、MIC99値(細菌増殖を99%阻害するための最小濃度)を決定することができる。Clinical laboratory standard institute.2005.Methods for dilution Antimicrobial susceptibility tests for
bacteria that grows Aerobically:approved standard−sixth edition
【0224】
時間死滅アッセイ
化合物の殺菌または静菌活性を、ブロス微量希釈法を使用して、時間死滅アッセイで測定することができる。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に関する時間死滅アッセイでは、黄色ブドウ球菌(S.aurues)の開始接種量をMuller−Hintonブロス中で10CFU/mlとする。抗菌性化合物は、MIC(すなわち、マイクロタイタープレートアッセイで測定する場合、IC90)の0.1〜10倍の濃度で使用する。抗菌薬を入れないウェルを培養物増殖の対照とする。微生物および試験化合物を含有するプレートを、37℃でインキュベートする。0、3、6、および24時間インキュベーション後に試料を取り出して、無菌PBS中で段階希釈(10−1〜10−6)し、Mueller Hinton寒天上に播種(200μl)することにより、生菌数を測定する。プレートを、37℃で24時間インキュベートして、コロニー数を測定する。時間に対して1ml当たりのlog10CFUをプロットすることにより、死滅曲線を作成することができる。殺菌効果は、一般に、無処理接種菌に比較した、1ml当たりのCFU数の3−log10減少として定義される。薬剤の持ち越し効果の可能性は、段階希釈および播種に使用した最高希釈におけるコロニーのカウントにより除去される。Zurenko,G.E.et al.In vitro activities of U−100592 and U−100766,novel oxazolidinone antibacterial agents.Antimicrob.Agents Chemother.40,839−845(1996)。
【0225】
細胞ATPレベルの測定
細胞の全ATP濃度(ATP生物発光キット、Rocheを使用する)の変化を分析するために、黄色ブドウ球菌(S.aureus)(ATCC29213)ストックの培養物を100mlのMueller Hintonフラスコ中で増殖させ、37℃で24時間振盪インキュベーター(300rpm)にてインキュベートすることにより、アッセイ
を実施する。OD405を測定して、CFU/mlを算出する。培養物を1×10CFU/ml(ATP測定用の最終濃度:1ウェル当たり1×10CFU/100μl)に希釈し、試験化合物を、MIC(すなわち、マイクロタイタープレートアッセイの場合、IC90)の0.1〜10倍で加える。これらのチューブを、300rpmおよび37℃で、0、30、および60分間インキュベートする。スナップキャップチューブからの細菌懸濁液0.6mlを使用して、新たな2mlエッペンドルフチューブに加える。0.6mlの溶菌試薬(Rocheキット)を加えて、最大速度で攪拌し、室温で5分間インキュベートする。氷上で冷却する。ルミノメーター(インジェクター付きLuminoskan Ascent Labsystems)を30℃に加温する。1カラム(=6ウェル)を100μlの同じ試料で満たす。インジェクターシステムを使用して、各ウェルに100μlのルシフェラーゼ試薬を加える。ルミネセンスを1秒間測定する。
【0226】
【表14】
【0227】
【表15】
【0228】
【表16】
【0229】
【表17】
【0230】
STA B29213は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC29213)を意味し;MSM 607は、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)(ATCC607)を意味し;ATCCは、American Type Tissue Cultureを意味する。

本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
その任意の立体化学的異性体形態を含む、式(Ia)または(Ib):
【化62】



[式中、
pは、1、2、3、または4に等しい整数であり;
は、水素、シアノ、シアノC1〜6アルキル、ホルミル、カルボキシル、ハロ、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ポリハロC1〜6アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルチオ、C1〜6アルキルチオC1〜6アルキル、−C=NOR11、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、アミノC1〜6アルキル、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノC1〜6アルキル、C1〜6アルキルカルボニルアミノC1〜6アルキル、R9b10bN−C(=O)−、アリールC1〜6アルキル、アリールカルボニル、R9a10aN−C1〜6アルキル、ジ(アリール)C1〜6アルキル、アリール、C3〜6シクロアルキル、R9a10aN−、R9a10aN−C(=O)−、C1〜4アルキル−S(=O)−、またはHetであり;
は、水素、C1〜6アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシ、メルカプト、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、アミノ、ピロリジノ、または式
【化63】


(式中、Yは、CH、O、S、NH、またはN−C1〜6アルキルである)の基であり;
は、水素、ハロ、C1〜6アルキル、アリール、またはHetであり;
は、アリールまたはHetであり;
は、水素、C1〜6アルキル、アリールC1〜6アルキル、Het、HetC1〜6アルキル、または−C(=NH)−NHであり;
は、水素、C1〜6アルキル、またはモノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノであり;
は、オキソであり;または
およびRは、互いに結合して基−CH=CH−N=を形成し;
9aおよびR10aは、それらが結合する窒素原子と共に互いに結合して、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、4−チオモルホリニル、2,3−ジヒドロイソインドール−1−イル、チアゾリジン−3−イル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジル、ヘキサヒドロ−1H−アゼピニル、ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピニル、ヘキサヒドロ−1,4−オキサゼピニル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−イル、ピロリニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、およびトリアジニルからなる群から選択される基であって、各基は、1、2、3、または4個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、C1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキル、ハロ、アリールC1〜6アルキル、ヒドロキシ、C1〜6アルキルオキシ、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、C1〜6アルキルチオ、C1〜6アルキルチオC1〜6アルキル、アリール、ピリジル、またはピリミジニルから選択される基を形成し;
9bおよびR10bはそれぞれ独立して、水素、C1〜6アルキル、アリール、またはHetを表し;
11は、水素またはC1〜6アルキルであり;
アリールは、フェニル、ナフチル、アセナフチル、またはテトラヒドロナフチルから選択される同素環であって、各環は1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、ハロ、シアノ、シアノC1〜6アルキル、ニトロ、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、C1〜6アルキル、フェニルで置換されていてもよいC2〜6アルケニル、ポリハロC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、カルボキシル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、モノホリニル、またはモノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノカルボニルから選択される、同素環であり;
アリールは、フェニル、ナフチル、アセナフチル、またはテトラヒドロナフチルから選択される同素環であって、各環は1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、ハロ、シアノ、シアノC1〜6アルキル、ニトロ、アミノ、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、C1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルチオ、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、カルボキシル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、Het、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノカルボニル、またはC1〜4アルキル−S(=O)−から選択される、同素環であり;
Hetは、N−フェノキシピペリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、4−チオモルホリニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、またはピリダジニルから選択される単環式複素環、またはキノリニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル、またはベンゾ[1,3]ジオキソリルから選択される二環式複素環であって、各単環式および二環式複素環は、1、2、または3個の置換基で置換されていてもよく、各置換基は独立して、ハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、またはアリールC1〜6アルキルから選択される、単環式または二環式複素環である]
の化合物、そのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物。
[2]
が、ハロ、C1〜4アルキル−S(=O)−、またはHetである、上記[1]に記載の化合物。
[3]
pが1である、上記[1]または[2]に記載の化合物。
[4]
が、C1〜6アルキルオキシ、または式
【化64】


[式中、YはOである]の基である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の化合物。
[5]
が水素である、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の化合物。
[6]
が1個の置換基で置換されていてもよいフェニルであって、前記置換基がハロ、シアノ、またはC1〜4アルキル−S(=O)−から選択されるフェニルである、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の化合物。
[7]
がナフチルである、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の化合物。
[8]
が、水素、C1〜6アルキル、フェニルC1〜6アルキル、または−C(=NH)−NHである、上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の化合物。
[9]
が水素であり、かつRがオキソである、上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の化合物。
[10]
前記化合物が式(Ia)の化合物である、上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の化合物。
[11]
がキノリン環の6位に置かれる、上記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の化合物。
[12]
アリールが、それぞれが独立して、ハロ;シアノ;アルキル;またはアルキルオキシから選択される、1個または2個の置換基で置換されていてもよいフェニルである、上記[1]〜[11]のいずれか一項に記載の化合物。
[13]
Hetが、ピペルジニル(piperdinyl)、フラニル、ピリジニル、ベンゾフラニル、またはベンゾ[1,3]ジオキソリルである、上記[1]〜[12]のいずれか一項に記載の化合物。
[14]
pが1であり;
がハロ;C1〜6アルキルチオ;C1〜4アルキル−S(=O);またはHetであり;
が、C1〜6アルキルオキシまたはモルホリニルであり;
が水素であり;
が、3位または4位のいずれかでハロ、シアノ、またはC1〜4アルキル−S(=O)−で置換されていてもよいフェニルであり;かつ
が、水素、C1〜6アルキル、フェニルC1〜6アルキル、または−C(=NH)−NHである、
上記[1]〜[13]のいずれか一項に記載の化合物。
[15]
前記化合物が、その任意の立体化学的異性体形態を含む、以下の化合物:
【表18】


【表19】

【表20】

;そのN−オキシド、その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物から選択される、
上記[1]に記載の化合物。
[16]
薬剤として使用するための、上記[1]〜[15]のいずれか一項に記載の化合物。
[17]
細菌感染の治療用薬剤として使用するための上記[1]〜[15]のいずれか一項に記載の化合物。
[18]
薬学的に許容される担体、および上記[1]〜[15]のいずれか一項に定義される化合物の治療有効量を有効成分として含む医薬組成物。
[19]
細菌感染の治療用薬剤の製造のための、上記[1]〜[15]のいずれか一項に記載の化合物の使用。
[20]
前記細菌感染がグラム陽性菌による感染である、上記[19]に記載の使用。
[21]
前記グラム陽性菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)である、上記[20]に記載の使用。
[22]
前記グラム陽性菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)である、上記[20]に記載の使用。
[23]
前記細菌感染がマイコバクテリア感染である、上記[19]に記載の使用。
[24]
前記マイコバクテリア感染が結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による感染である、上記[23]に記載の使用。
[25]
(a)上記[1]〜[15]のいずれか一項に記載の化合物と、(b)1つまたは複数の他の抗菌薬との組合せ。
[26]
細菌感染の治療における同時使用、個別使用、または逐次使用のための組合せ製剤としての、(a)上記[1]〜[15]のいずれか一項に記載の化合物と、(b)1つまたは複数の他の抗菌薬とを含有する製品。
[27]
a)Pが適切な保護基である式(II−a)の中間体を脱保護して、
【化65】


式(Ia−1)により表される、Rが水素である式(Ia)の化合物を調製すること;
b)適切な酸で式(IIa)の中間体を脱保護して、
【化66】


式(Ib−2)により表される、Rが水素であり、Rが水素であり、かつRがオキソである式(Ib)の化合物を調製すること;または
c)式(Va)の中間体を式(VIa)の化合物と反応させて、
【化67】


式(Ia)の化合物を調製すること;
あるいは所望により、式(Ia)または(Ib)の化合物を当技術分野で公知の変換に従って相互変換すること、またさらに、所望により、式(Ia)または(Ib)の化合物を、酸処理により治療上活性な無毒性酸付加塩に、または塩基処理により治療上活性な無毒性塩基付加塩に変換すること、あるいは逆に、酸付加塩形態をアルカリ処理により遊離塩基に変換すること、または塩基付加塩を酸処理により遊離酸に変換すること;また所望により、その立体化学的異性体形態またはN−オキシドを調製することを特徴とする、上記[1]に記載の化合物を調製するための方法。