(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プラズマが生成される処理空間を画成する処理容器及び前記処理空間内にガスを供給するガス供給部を備えるプラズマ処理装置を用いて、多層膜材料をエッチングするプラズマ処理方法であって、
前記多層膜材料は、ポリシリコン層、該ポリシリコン層上に形成された第1金属層、及び、前記第1金属層上に形成されたタングステン層を含むハードマスク層を有し、
塩素及びケイ素を含有する化合物、塩素及びホウ素を含有する化合物、又は、塩素及び水素を含有する化合物を含む塩化物含有ガスと、塩素を含有する塩素含有ガスと、炭素及びフッ素を含有する処理ガスとを混合させた混合ガスを用いてプラズマを生成し、前記ハードマスク層をエッチングマスクとして、前記第1金属層の上面から前記ポリシリコン層の下面まで同一エッチング条件で一括してエッチングし、
前記塩化物含有ガスの流量が、前記塩化物含有ガス及び前記塩素含有ガスの総流量に対して、75.0%以下である、
プラズマ処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0017】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置の構成を示す概略図である。
図1に示すプラズマ処理装置10は、容量結合型平行板プラズマエッチング装置であり、略円筒状の処理容器12を備えている。処理容器12は、例えば、その表面は陽極酸化処理されたアルミニウムから構成されている。この処理容器12は保安接地されている。
【0018】
処理容器12の底部上には、絶縁材料から構成された円筒上の支持部14が配置されている。この支持部14は、例えばアルミニウムといった金属から構成された基台16を支持している。この基台16は、処理容器12内に設けられており、一実施形態においては、下部電極(第2電極)を構成している。
【0019】
基台16の上面には、静電チャック18が設けられている。静電チャック18は基台16と共に一実施形態の載置台を構成している。静電チャック18は、導電膜である電極20を一対の絶縁層又は絶縁シート間に配置した構造を有している。電極20には、直流電源22が電気的に接続されている。この静電チャック18は、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により被処理体(ワークピース)Xを吸着保持することができる。
【0020】
基台16の上面であって、静電チャック18の周囲には、フォーカスリングFRが配置されている。フォーカスリングFRは、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリングFRは、被エッチング層の材料によって適宜選択される材料から構成されており、例えば、シリコン又は石英から構成され得る。
【0021】
基台16の内部には、冷媒室24が設けられている。冷媒室24には、外部に設けられたチラーユニットから配管26a,26bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給される。このように循環される冷媒の温度を制御することにより、静電チャック18上に載置された被処理体Xの温度が制御される。
【0022】
また、プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャック18の上面と被処理体Xの裏面との間に供給する。
【0023】
また、処理容器12内には、上部電極30(第1電極)が設けられている。この上部電極30は、下部電極である基台16の上方において、当該基台16と対向配置されており、基台16と上部電極30とは、互いに略平行に設けられている。これら上部電極30と下部電極を構成する基台16との間には、被処理体Xにプラズマエッチングを行うための処理空間Sが画成されている。
【0024】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。上部電極30は、電極板34及び電極支持体36を含み得る。電極板34は、処理空間Sに面しており、複数のガス吐出孔34aを画成している。この電極板34は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体から構成され得る。
【0025】
電極支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この電極支持体36は、水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。このガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、電極支持体36にはガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0026】
ガス供給管38には、スプリッタ43、バルブ42a〜42d及びマスフローコントローラ(MFC)44a〜44dを介して、ガス源40a〜40dが接続されている。なお、MFCの代わりにFCSが設けられていてもよい。ガス源40aは、例えば、炭素及びフッ素を含有する処理ガスのガス源である。炭素及びフッ素を含有する処理ガスは、例えば、一般式C
xF
y(x、y:整数)で表記されるガスであり、CF
4及びC
4F
8のうち少なくとも1つを含有するガスである。ガス源40bは、例えば、塩素及びケイ素を含有する化合物、塩素及びホウ素を含有する化合物、又は、塩素及び水素を含有する化合物を含む塩化物含有ガスのガス源である。塩化物含有ガスは、例えば、BCl
3、SiCl
4及びHClのうち少なくとも1つを含有するガスである。ガス源40cは、例えば、塩素Cl
2を含有する塩素含有ガスのガス源である。ガス源40dは、例えば、パージ用ガスの窒素や不活性ガスのAr等を含むガスのガス源である。これらのガス源40a〜40dからのガスは、ガス供給管38からガス拡散室36aに至り、ガス通流孔36b及びガス吐出孔34aを介して処理空間Sに吐出される。ガス源40a〜40d、バルブ42a〜42d、MFC44a〜44d、スプリッタ43、ガス供給管38、並びに、ガス拡散室36a、ガス通流孔36b、及びガス吐出孔34aを画成する上部電極30は、一実施形態におけるガス供給部を構成している。
【0027】
また、プラズマ処理装置10は、接地導体12aを更に備え得る。接地導体12aは、略円筒状の接地導体であり、処理容器12の側壁から上部電極30の高さ位置よりも上方に延びるように設けられている。
【0028】
また、プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。また、デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチングの副生成物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。
【0029】
処理容器12の底部側においては、支持部14と処理容器12の内壁との間に排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。この排気プレート48の下方において処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内を所望の真空度まで減圧することができる。また、処理容器12の側壁には被処理体Xの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0030】
また、処理容器12の内壁には、導電性部材(GNDブロック)56が設けられている。導電性部材56は、高さ方向において被処理体Xと略同じ高さに位置するように、処理容器12の内壁に取り付けられている。この導電性部材56は、グランドにDC的に接続されており、異常放電防止効果を発揮する。なお、導電性部材56はプラズマ生成領域に設けられていればよく、その設置位置は
図1に示す位置に限られるものではない。例えば、導電性部材56は、基台16の周囲に設けられる等、基台16側に設けられてもよく、また上部電極30の外側にリング状に設けられる等、上部電極30の近傍に設けられてもよい。
【0031】
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、下部電極を構成する基台16に高周波電力を供給するための給電棒58を更に備えている。給電棒58は、一実施形態に係る給電ラインを構成している。給電棒58は、同軸二重管構造を有しており、棒状導電部材58a及び筒状導電部材58bを含んでいる。棒状導電部材58aは、処理容器12外から処理容器12の底部を通って処理容器12内まで略鉛直方向に延在しており、当該棒状導電部材58aの上端は、基台16に接続されている。また、筒状導電部材58bは、棒状導電部材58aの周囲を囲むように当該棒状導電部材58aと同軸に設けられており、処理容器12の底部に支持されている。これら棒状導電部材58a及び筒状導電部材58bの間には、略環状の2枚の絶縁部材58cが介在して、棒状導電部材58aと筒状導電部材58bとを電気的に絶縁している。
【0032】
また、一実施形態において、プラズマ処理装置10は、整合器70、71を更に備え得る。整合器70、71には、棒状導電部材58a及び筒状導電部材58bの下端が接続されている。この整合器70、71には、第1の高周波電源62(第1電源部)及び第2の高周波電源64(第2電源部)がそれぞれ接続されている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の第1の高周波(RF:Radio Frequency)電力(第1周波数の電力)を発生する電源であり、27〜100MHzの周波数、一例においては40MHzの高周波電力を発生する。また、第1の高周波電力は、一例においては0〜2000Wである。第2の高周波電源64は、基台16に高周波バイアスを印加し、被処理体Xにイオンを引き込むための第2の高周波電力(第2周波数の電力)を発生する。第2の高周波電力の周波数は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数であり、一例においては3MHzである。また、第2の高周波電力は、一例においては0〜5000Wである。また、直流電源60は、ローパスフィルタを介して、上部電極30に接続されている。この直流電源60は、負の直流電圧を上部電極30に出力する。上記構成によって、下部電極を構成する基台16に二つの異なる高周波電力を供給し、上部電極30に直流電圧を印加し得る。
【0033】
また、一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、制御部Cntを更に備え得る。この制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部、例えば電源系やガス供給系、駆動系及び電源系等を、制御する。この制御部Cntでは、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により、プラズマ処理装置10の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、制御部Cntの記憶部には、プラズマ処理装置10で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置10の各構成部に処理を実行させるためのプログラム、即ち、処理レシピが格納される。
【0034】
このプラズマ処理装置10を用いてエッチングを行うときには、静電チャック18上に被処理体Xが載置される。被処理体Xは、被エッチング層と、当該被エッチング層上に設けられたレジストマスクを有し得る。そして、排気装置50により処理容器12内を排気しながら、ガス源40a〜40dからの処理ガスを所定の流量で処理容器12内に供給し、処理容器12内の圧力を、例えば0.1〜50Paの範囲内に設定する。
【0035】
次いで、第1の高周波電源62が、第1の高周波電力を基台16に供給する。また、第2の高周波電源64が、第2の高周波電力を基台16に供給する。さらに、直流電源60が、第1の直流電圧を上部電極30に供給する。これにより、上部電極30と基台16との間に高周波電界が形成され、処理空間Sに供給された処理ガスが、プラズマ化する。このプラズマで生成される正イオンやラジカルによって被処理体Xの被エッチング層がエッチングされる。
【0036】
以下、
図2を参照して、上述したプラズマ処理装置10を用いたプラズマ処理方法の一実施形態について説明する。
図2はエッチングの工程を示す概略断面図である。
図2に示すエッチングの工程における制御は、制御部Cntにより実行される。一実施形態のプラズマ処理方法は、上述したプラズマ処理装置10を用い、タングステンを含むマスクを介してポリシリコン層及び金属層からなる少なくとも2層構造を被エッチング層として一括でエッチングし、所定のパターンにパターニングする。すなわち、金属層の上面からポリシリコン層の下面に至るまで同一のエッチング条件でエッチングする。以下では、該2層構造を有する3層構造(金属層/ポリシリコン層/金属層)を被エッチング層として一括でエッチングする場合を説明する。
【0037】
図2に示すように、まず被処理体Xが準備され、被処理体Xが処理容器12の静電チャック18に載置される。
図2の(A)に示すように、被処理体Xは、基板B上に、下地層4、第2金属層9、ポリシリコン層8、第1金属層7が順次積層された多層膜材料である。第1金属層7上には、所定の平面形状を有するマスク層3が配置されている。下地層4としては、例えばポリシリコンからなる層が採用され得る。第1金属層7及び第2金属層9としては、例えばチタン又はチタン化合物(窒化チタン又はチタンシリサイド等)を含む層が採用され得る。第1金属層7上には、所定の平面形状を有するマスク層(ハードマスク層)3が配置されている。マスク層3は、最上面の層が酸化物系の層からなるいわゆるハードマスクであり、多層構造を形成している。例えば、マスク層3は、タングステン層6及びシリコン酸化層5を含む。マスク層3は、少なくともタングステン層6を有していればよく、タングステンナイトライド層又はシリコンナイトライド層等を有していてもよい。マスク層3は、所定のガス(例えばCF
4及びO
2の混合ガス)等を用いてエッチングすることによりパターニングされて得られる。以下、
図2の(A)に示す被処理体Xを例に挙げて、一実施形態のプラズマ処理方法について説明する。
【0038】
図2の(A)に示す被処理体Xが準備されると、エッチング工程を行う。エッチング工程においては、まず、ガス供給部は、処理容器12へ、塩化物含有ガス(BCl
3、SiCl
4又はHCl)、塩素含有ガス(Cl
2)、及び、炭素及びフッ素を含有する処理ガス(CF
4又はC
4F
8)を混合させた混合ガスを供給する。混合比については、例えば、塩化物含有ガスの流量が、塩化物含有ガスの流量及び塩素含有ガスの流量を加算して得られる総流量に対して、75.0%以下となればよい。75.0%よりも大きい比率で塩化物含有ガスを供給すると、塩素ラジカルの生成量が小さくなってしまい、エッチングレートが極端に遅くなるおそれがある。なお、塩化物含有ガスについては、混合されていればよいため、塩化物含有ガスの流量及び塩素含有ガスの流量を加算して得られる総流量に対して0%より大きければよく、少なくとも25.0%以上であればよい。炭素及びフッ素を含有する処理ガス(CF
4又はC
4F
8)については、混合ガスの総量に対して5.9%〜20.0%程度の範囲で供給すればよい。
【0039】
そして、制御部Cntがプラズマを発生させるように各構成機器を動作させる。プラズマが発生すると、マスク層3をエッチングマスクとしてエッチングが開始される。プラズマにより生成された塩素ラジカルは、第1金属層7、ポリシリコン層8及び第2金属層9を順にエッチングして、
図2の(B)に示すように下地層4が露出したところでエッチングを終了する。当該エッチング工程では、第1金属層7の上面から第2金属層9の下面に至るまでのエッチング条件(例えば混合ガスの圧力・比率・組成、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64の印加電力、基板温度等)は同一である。
【0040】
以上の工程によって、3層構造(金属層/ポリシリコン層/金属層)のエッチングが終了する。上記工程では、塩素含有ガスに、塩化物含有ガス(BCl
3、SiCl
4又はHCl)及び処理ガス(CF
4又はC
4F
8)が混合されているため、ボーイング等の異常形状を抑制することができる。以下、
図3を用いて詳細を説明する。
【0041】
図3は、本実施形態に係る方法及び装置の作用効果を説明する概要図である。対比のために、
図3の(A)及び(B)を用いて比較例から説明する。
図3の(A)は、比較例1のエッチングの過程を模式的に示すものである。比較例1は、塩素含有ガス(Cl
2)のみを供給してプラズマエッチングを行う場合である。
図3の(A)に示すように、Clラジカルは、第1金属層7、ポリシリコン層8及び第2金属層9のエッチャントとして機能し、異方的エッチングをする。しかしながら、塩素含有ガスのみを供給してプラズマエッチングする場合、ポリシリコン層8はボーイング形状となり、第1金属層7はテーパー形状となるため、設計値通りにエッチングすることが困難である。
【0042】
図3の(B)は、比較例2のエッチングの過程を模式的に示すものである。比較例2は、塩素含有ガス(Cl
2)及び処理ガス(CF
4又はC
4F
8)が混合された混合ガスを採用してプラズマエッチングを行う場合である。
図3の(B)に示すように、Clラジカルは第1金属層7、ポリシリコン層8及び第2金属層9のエッチャントとして機能し、異方的エッチングをする。このとき、ポリシリコン層8の側壁8aには、炭素を含む化合物(例えばCF系反応生成物)が保護膜として形成される。したがって、ポリシリコン層8の側壁8aは、Clラジカルによってエッチングされることなく、その形状を保持することができる。しかし、CF
4又はC
4F
8から生成されたFラジカルが被処理体Xの表面に存在する。Fラジカルは、金属に対して等方的なエッチャントとして機能するため、マスク層3を構成しているタングステン層6の側壁をエッチングする。このため、タングステン層6の形状が良好でなくなる。特に、タングステン層6の幅方向の厚みが小さくなり、設計値通りとならない。マスク層3に含まれるタングステン層6は、エッチングのための単なるマスク材料ではなく、デバイス製品としての構成要素であるため、タングステン層6の形状が悪化することは好ましくない。このように、塩素含有ガス(Cl
2)及び処理ガス(CF
4又はC
4F
8)を供給してプラズマエッチングをする場合には、タングステン層6の異常形状の発生という問題がある。
【0043】
これに対して、本実施形態に係るプラズマ処理方法及び装置10によれば、上記比較例1及び比較例2と比べて異常形状を抑制することができる。本実施形態に係るプラズマ処理方法及び装置では、塩素含有ガス(Cl
2)、処理ガス(CF
4又はC
4F
8)及び塩化物含有ガス(BCl
3、SiCl
4又はHCl)が混合された混合ガスを採用してプラズマエッチングを行う。
図3の(C)に示すように、Clラジカルは第1金属層7、ポリシリコン層8及び第2金属層9のエッチャントとして機能し、異方的エッチングをする。このとき、ポリシリコン層8の側壁8aには、炭素を含む化合物(例えばCF系反応生成物)が保護膜として形成される。したがって、ポリシリコン層8の側壁8aは、Clラジカルによってエッチングされることなく、その形状を保持することができる。そして、CF
4又はC
4F
8から生成されたFラジカルは、塩化物含有ガスに含まれるB、Si又はH(
図3の(C)ではBを例示)と反応し、揮発性の反応生成物(化合物)となり、排気される。すなわち、いわゆるスカベンジの効果によってFラジカルを除去することができる。したがって、タングステン層6の側壁は、Fラジカルによってエッチングされることなく、その形状を保持することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係るプラズマ処理方法及び装置によれば、塩素含有ガス(Cl
2)に含まれる塩素ラジカルにより第1金属層7及びポリシリコン層8をエッチングする際に、炭素及びフッ素を含有する処理ガス(CF
4又はC
4F
8)を同時に処理空間Sへ導入することにより、炭素を含む生成物をポリシリコン層8の側壁に保護膜として形成することができる。よって、ポリシリコン層8の水平方向への不必要なエッチングを抑制することが可能となる。さらに、第1金属層7及びポリシリコン層8をエッチングする際に、ケイ素、ホウ素又は水素を含有する塩化物含有ガス(BCl
3、SiCl
4又はHCl)を同時に処理空間Sへ導入することにより、塩素ラジカルを生成しつつ、塩化物含有ガスに含まれるケイ素、ホウ素又は水素が処理ガスに含まれるフッ素ラジカルと反応させることができる。このため、フッ素ラジカルがハードマスク層に含まれるタングステン層の側壁をエッチングすることを抑制することが可能となる。このように、マスクの形状を維持しつつ被エッチング材料の形状異常を防止することができるため、形状異常を抑制しつつ同一エッチング条件で一括してエッチングすることが可能となる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0046】
例えば、上述した実施形態では、下部電極を構成する基台16に二つの高周波電源が接続されているが、基台16と上部電極30のうち一方に第1の高周波電源が接続され、他方に第2の高周波電源が接続されていてもよい。
【0047】
[実施例]
以下、上記効果を説明すべく本発明者が実施した実施例について述べるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
(形状改善効果の評価)
実施例1では、
図1に示すプラズマ処理装置10によりプラズマ処理を行った。被エッチング材料としては
図2の(A)に示す構成を採用し、
図2の(B)に示す構成となるように、同一の処理条件で第1金属層7、ポリシリコン層8及び第2金属層9を順にエッチングした。実施例1のエッチング工程は、以下に示す処理条件とした。
【0049】
(実施例1)
処理空間Sの圧力:25mTоrr(3.33Pa)
第1の高周波電源62の電力:0W
第2の高周波電源64の電力:500W(13MHz)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:30sccm
BCl
3ガス:50sccm
C
4F
8ガス:5sccm
なお、バイアス引き込み用の第2の高周波電源64のみで電力印加しているが、周波数が高いためプラズマ生成可能である。
【0050】
比較例1では、Cl
2ガスのみ供給した。その他は実施例1と同一とした。
(比較例1)
処理空間Sの圧力:25mTоrr(3.33Pa)
第1の高周波電源62の電力:0W
第2の高周波電源64の電力:500W(13MHz)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:80sccm
【0051】
比較例2では、Cl
2ガス及びC
4F
8ガスを混合させて供給した。その他は実施例1と同一とした。
(比較例2)
処理空間Sの圧力:25mTоrr(3.33Pa)
第1の高周波電源62の電力:0W
第2の高周波電源64の電力:500W(13MHz)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:80sccm
C
4F
8ガス:10sccm
【0052】
上記条件によって得られた実施例1及び比較例1,2の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、タングステン層6の形状、第1金属層(バリアメタル層)7及びポリシリコン層8の形状を評価した。
図4は、形状に関する指標を説明する図である。
図4に示すように、「Top CD」は、タングステン層6の上端部の幅であり、タングステン層6とシリコン酸化層5と接する側の端部における横方向(水平方向)の幅である。また、「Mid CD」は、タングステン層6の中央部における横方向の幅である。ここでは、イニシャルとしてエッチング前のタングステン層6の「Mid CD」を測定しておき、エッチング後の「Mid CD」を測定し、それらの差分「ΔMid CD」によってタングステン層6の形状を評価した。また、「Btm CD」は、第1金属層7の下端部の横方向の間隔である。また、「MAX CD」は、ポリシリコン層8の横方向の最大幅である。ここでは、「MAX CD」と「Btm CD」との差を、ボーイングの評価値として採用し、ポリシリコン層8の形状を評価した。実施例1及び比較例1,2の測定結果を
図5に示す。
【0053】
図5は、実施例1及び比較例1,2の測定結果を纏めた表である。
図5に示すように、比較例1では、タングステン層6の「ΔMid CD」は3.7nmとなり良好であったが、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が18.8nmと大きな値となった。一方、比較例2では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が6.89nmとなり、C
4F
8ガスを供給することで比較例1と比べてポリシリコン層8の異常形状が抑制されたことが確認された。しかし、比較例2では、タングステン層6の「ΔMid CD」が7.1nmとなり、C
4F
8ガスを供給することで比較例1と比べてタングステン層6の異常形状が発生したことが確認された。すなわち、比較例1、2により、タングステン層6の形状とポリシリコン層8の形状とがトレードオフの関係になっていることが確認された。
【0054】
これに対して、実施例1では、タングステン層6の「ΔMid CD」は2.8nmとなり比較例1、2と比べて良好であった。さらに、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が4.0nmとなり比較例1、2と比べて良好であった。よって、Cl
2ガス、BCl
3ガス及びC
4F
8ガスの混合ガスによって、タングステン層6の形状とポリシリコン層8の形状との両方が良好となり、トレードオフの関係を解消することが確認された。すなわち、形状異常を抑制しつつ同一エッチング条件で一括してエッチングすることができることが確認された。
【0055】
(形状改善効果を奏するガス混合比の確認)
以下では、ガスの混合比を変化させて形状改善効果を奏するガス混合比を確認した。実施例2〜4は、Cl
2ガス及びBCl
3ガスの総流量を80sccmの固定値とし、その中でCl
2ガス及びBCl
3ガスの流量比を変化させてエッチングし、形状を評価した。実施例2〜4は、以下の処理条件とし、その他は実施例1と同一とした。処理条件に示すBCl
3ガス流量比とは、BCl
3ガス流量/(BCl
3ガス流量+Cl
2ガス流量)*100を意味するものである。
(実施例2)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:50sccm
BCl
3ガス:30sccm
C
4F
8ガス:10sccm
BCl
3ガス流量比=37.5%
(実施例3)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:30sccm
BCl
3ガス:50sccm
C
4F
8ガス:10sccm
BCl
3ガス流量比=62.5%
(実施例4)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:30sccm
BCl
3ガス:50sccm
C
4F
8ガス:20sccm
BCl
3ガス流量比=62.5%
【0056】
比較例3では、Cl
2ガス及びC
4F
8ガスを混合させて供給した。その他は実施例2〜4と同一とした。
(比較例3)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:80sccm
BCl
3ガス:0sccm
C
4F
8ガス:10sccm
BCl
3ガス流量比=0%
【0057】
図6は、実施例2〜4及び比較例3の測定結果を纏めた表である。なお、イニシャル(エッチング前)の「Mid CD」は、29.1nmであった。
図6に示すように、比較例3(BCl
3ガス流量比0%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が6.9nmであり、タングステン層6の「ΔMid CD」が5.5nmとなった。一方、実施例2(BCl
3ガス流量比37.5%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が7.9nm、タングステン層6の「ΔMid CD」が3.1nmとなった。すなわち、BCl
3ガス流量比37.5%では、ポリシリコン層8の形状についてはC
4F
8ガスを供給した際に見られる形状改善効果とほぼ同一であり、タングステン層6の形状については大きく改善されていることが確認された。そして、実施例3(BCl
3ガス流量比62.5%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が2.0nm、タングステン層6の「ΔMid CD」が3.5nmとなった。実施例4(BCl
3ガス流量比62.5%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が1.0nm、タングステン層6の「ΔMid CD」が2.5nmとなった。このように、BCl
3ガス流量比が37.5〜62.5%の範囲において形状異常を抑制する度合いは同程度であることが確認された。
【0058】
次に、実施例2〜4及び比較例3と比べて処理時間を短くした上で、ガスの混合比を変化させて形状改善効果を奏するガス混合比を確認した。実施例5〜7は、Cl
2ガス及びBCl
3ガスの総流量を80sccmの固定値とし、その中でCl
2ガス及びBCl
3ガスの流量比を変化させてエッチングし、形状を評価した。実施例5〜7は、以下の処理条件とし、その他は実施例1と同一とした。
(実施例5)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:50sccm
BCl
3ガス:30sccm
C
4F
8ガス:10sccm
BCl
3ガス流量比=37.5%
(実施例6)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:50sccm
BCl
3ガス:30sccm
C
4F
8ガス:5sccm
BCl
3ガス流量比=37.5%
(実施例7)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:30sccm
BCl
3ガス:50sccm
C
4F
8ガス:5sccm
BCl
3ガス流量比=62.5%
【0059】
比較例4では、Cl
2ガス及びC
4F
8ガスを混合させて供給した。その他は実施例5〜7と同一とした。
(比較例4)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:80sccm
BCl
3ガス:0sccm
C
4F
8ガス:10sccm
BCl
3ガス流量比=0%
【0060】
図7は、実施例5〜7及び比較例4の測定結果を纏めた表である。なお、イニシャル(エッチング前)の「Mid CD」は、28.3nmであった。
図7に示すように、比較例4(BCl
3ガス流量比0%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が6.9nmであり、タングステン層6の「ΔMid CD」が7.1nmとなった。一方、実施例5(BCl
3ガス流量比37.5%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が6.9nm、タングステン層6の「ΔMid CD」が4.3nmとなった。実施例6(BCl
3ガス流量比37.5%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が9.9nm、タングステン層6の「ΔMid CD」が4.2nmとなった。そして、実施例7(BCl
3ガス流量比62.5%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が4.0nm、タングステン層6の「ΔMid CD」が2.8nmとなった。このように、BCl
3ガス流量比が37.5〜62.5%の範囲において形状異常を抑制する度合いは同程度であることが確認された。
【0061】
次に、さらにガスの混合比を変化させて形状改善効果を奏するガス混合比を確認した。実施例8,9は、Cl
2ガス及びBCl
3ガスの総流量を80sccmの固定値とし、その中でCl
2ガス及びBCl
3ガスの流量比を変化させてエッチングし、形状を評価した。実施例8,9は、以下の処理条件とし、その他は実施例1と同一とした。
(実施例8)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:60sccm
BCl
3ガス:20sccm
C
4F
8ガス:20sccm
BCl
3ガス流量比=25.0%
(実施例9)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:20sccm
BCl
3ガス:60sccm
C
4F
8ガス:20sccm
BCl
3ガス流量比=75.0%
【0062】
比較例5では、Cl
2ガス及びC
4F
8ガスを混合させて供給した。その他は実施例5〜7と同一とした。
(比較例5)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:80sccm
BCl
3ガス:0sccm
C
4F
8ガス:20sccm
BCl
3ガス流量比=0%
【0063】
図8は、実施例8,9及び比較例5の測定結果を纏めた表である。なお、イニシャル(エッチング前)の「Mid CD」は、31.6nmであった。
図8に示すように、比較例5(BCl
3ガス流量比0%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が6.9nmであり、タングステン層6の「ΔMid CD」が5.0nmとなった。一方、実施例8(BCl
3ガス流量比25.0%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が8.9nm、タングステン層6の「ΔMid CD」が3.5nmとなった。実施例9(BCl
3ガス流量比75.0%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が3.0nm、タングステン層6の「ΔMid CD」が1.3nmとなった。すなわち、BCl
3ガス流量比が25.0〜75.0%の範囲においても、形状異常を抑制する度合いは同程度であることが確認された。なお、BCl
3ガス流量比75.0%よりも大きくした場合には、エッチングレートが極端に低下するため評価していない。
【0064】
(塩化物含有ガスの確認)
実施例10は、塩化物含有ガスとしてSiCl
4ガスを採用した。以下の処理条件とし、その他は実施例1と同一とした。
(実施例10)
混合ガスの流量
Cl
2ガス:60sccm
SiCl
4ガス:20sccm
C
4F
8ガス:20sccm
SiCl
4ガス流量比=25.0%
【0065】
実施例10の結果を
図8に示す。なお、イニシャル(エッチング前)の「Mid CD」は、31.6nmであった。
図8に示すように、実施例10(SiCl
4ガス流量比25.0%)では、ポリシリコン層8のボーイングの評価値が12.9nm、タングステン層6の「ΔMid CD」が3.5nmとなった。すなわち、SiCl
4ガスを採用した場合であっても、BCl
3ガスと同様に、形状異常を抑制しつつ同一エッチング条件で一括してエッチングすることができることが確認された。