(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対向する陽極と陰極の間に、1つ以上の発光層を含む有機電界発光素子において、少なくとも1つの発光層が2つのホスト材料と少なくとも1つの発光性ドーパントを含有し、該2つのホスト材料のうち、1つが下記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される化合物から選ばれるホスト材料であり、他の1つが下記一般式(3)で表される化合物から選ばれるホスト材料であることを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】
(ここで、環aは2つの隣接環の任意の位置で縮合する式(a1)で表される芳香環又は複素環を示し、X
1は
C−Rを示す。環bは2つの隣接環の任意の位置で縮合する式(b1)で表される複素環を示し、Ar
1、Ar
2は炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基を示
すが、少なくとも一つは置換又は未置換の炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基であり、L
1は炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結された基を示し、Ar
1、Ar
2およびL
1におけるこれらの芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基は、置換基を有してもよい。pは0〜7の整数を示す。ここで、pが2以上の場合、L1はそれぞれ同一でも異なってもよい。R、R
1〜R
3は独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示し、それぞれ置換基を有しても
よい)
【化2】
(ここで、環c、環c’は隣接環の任意の位置で縮合する式(c1)で表される芳香環又は複素環を表し、環d、環d’は隣接環の任意の位置で縮合する式(d1)で表される複素環を表し、同一であっても異なっていても良い。X
2はC−R’又はNを示す。Zは炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結してなる2価の連結基を表すが、Nに連結する基は炭素数6〜22の芳香族炭化水素基または炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基である。Ar
3は炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基を表し、L
2は炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結してなる基を示し、Z、Ar
3およびL
2におけるこれらの芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基は、置換基を有してもよい。qは0〜7の整数を示す。ここで、qが2以上の場合、L
2はそれぞれ同一でも異なってもよい。R’、R
4〜R
8は独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示し、それぞれ置換基を有しても
よい)
【化3】
(ここで、R
9〜R
12は独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルコキシ基を表し、l、mは1または2の整数を示す。nは1〜6の整数を示し、R
13、R
14は独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基を、X
3〜X
5は独立に、C−H又はNを示す。nが2以上の場合、R
13、R
14およびX
3〜X
5は、それぞれ同一でも異なっても
よい。)
2つのホスト材料のうち1つが前記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される化合物から選ばれるホスト材料であり、他の1つが前記一般式(3)で表される化合物から選ばれるホスト材料であって、2つのホスト材料の電子親和力の差(ΔEA)が0.1eVより大きいことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
発光性ドーパントがルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体からなる燐光発光ドーパントであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の有機電界発光素子は、対向する陽極と陰極の間に、1つ以上の発光層を含む有機電界発光素子において、1つ以上の発光層を含む有機電界発光素子において、少なくとも1つの発光層が2つのホスト材料と少なくとも1つの発光性ドーパントを含有するものであり、該2つのホスト材料のうち、1つが下記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される化合物から選ばれるホスト材料であり、他の1つが下記一般式(3)で表される化合物から選ばれるホスト材料である。
【0021】
上記一般式(1)又は(2)において、環a、環c、環c’は2つの隣接環の任意の位置で縮合する式(a1)、(c1)で表される芳香環又は複素環を示す。ここで、(a1)おいて、X
1はC−R又はNを示すが、C−Rであることが好ましい。また、(c1)において、X
2はC−R’又はNを示すが、C−R’であることが好ましい。
【0022】
上記一般式(1)、(2)において、環b、環d、環d’は2つの隣接環の任意の位置で縮合する式(b1)、(d1)で表される複素環を示す。ここで、環cと環c’、環dと環d’は同一であっても異なっていても良い。
【0023】
一般式(1)または(2)で表される化合物において、式(a1)または(c1)で表される芳香族炭化水素環または複素環は、2つの隣接環と任意の位置で縮合することができるが、構造的に縮合できない位置がある。式(a1)または(c1)で表される芳香族炭化水素環または複素環は、6つの辺を有するが、隣接する2つの辺で2つの隣接環と縮合することはない。また、一般式(1)、(2)において、式(b1)または(d1)で表される複素環は2つの隣接環と任意の位置で縮合することができるが、構造的に縮合できない位置がある。すなわち、式(b1)または(d1)で表される複素環は、5つの辺を有するが、隣接する2つの辺で2つの隣接環と縮合することはなく、また、窒素原子を含む辺で隣接環と縮合することはない。したがって、一般式(1)、(2)で表される化合物の異性体の骨格の種類は限られる。
【0024】
上記一般式(1)、式(b1)、及び式(d1)において、Ar
1〜Ar
3は、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基を示し、これらの芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基はそれぞれ置換基を有してもよい。
【0025】
Ar
1〜Ar
3は、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜5の単環の芳香族複素環基であり、単環の芳香族複素環基は6員環であることが好ましい。Ar
1、Ar
2はp+1価の基であり、Ar
3はq+1価の基である。
【0026】
これらAr
1〜Ar
3の具体例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、ヘリセン、ヘキサフェン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、チアジアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、又はトリアジンからp+1個またはq+1個の水素を除いて生じる基が挙げられる。好ましくはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、又はトリアジンからp+1個またはq+1個の水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0027】
一般式(1)、式(b1)、式(d1)において、L
1、L
2は、それぞれ炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結してなる基を示し、これらの基は各々置換基を有してもよい。
【0028】
L
1、L
2は、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結してなる基であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜7連結してなる基である。
【0029】
L
1、L
2の具体例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、ヘリセン、ヘキサフェン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、キサンテン、オキサトレン、ジベンゾフラン、ペリキサンテノキサンテン、チオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、チオナフテン、イソチアナフテン、チオフテン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、ピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、カルバゾール、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、フェノテルラジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アンチリジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、又はベンゾイソチアゾール、又はこれら芳香族化合物の芳香環が複数連結された芳香族化合物から1個の水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0030】
ここで、L
1およびL
2が複数の芳香族化合物の芳香環が複数連結された基としては、例えば下記で示すような連結様式が挙げられる。
【0032】
式(4)〜(6)中、Ar
11〜Ar
16は置換または未置換の芳香環を示す。芳香環は芳香族炭化水素化合物、または芳香族複素環化合物の環を意味し、1価以上の基であることができる。芳香環が連結するとは、芳香環が直接結合で結合して連結することを意味する。芳香環が置換の芳香環である場合、置換基が芳香環であることはない。
【0033】
上記式(4)〜(6)の具体例としては、例えばビフェニル、ターフェニル、ビピリジン、ビピリミジン、ビトリアジン、ターピリジン、フェニルターフェニル、ビナフタレン、フェニルピリジン、ジフェニルピリジン、フェニルピリミジン、ジフェニルピリミジン、フェニルトリアジン、ジフェニルトリアジン、フェニルナフタレン、ジフェニルナフタレン、カルバゾリルベンゼン、ビスカルバゾリルベンゼン、ビスカルバゾリルトリアジン、ジベンゾフラニルベンゼン、ビスジベンゾフラニルベンゼン、ジベンゾチオフェニルベンゼン、ビスジベンゾチオフェニルベンゼン等から水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0034】
一般式(2)中、Zは、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結してなる2価の連結基を示すが、Nに連結する基は炭素数6〜22の芳香族炭化水素基または炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基である。好ましくは、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜7連結してなる2価の連結基であり、Nに連結する基は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基または炭素数3〜5の単環の芳香族複素環基であり、単環の芳香族複素環基は6員環であることが好ましい。各々の芳香環は独立に置換基を有してもよい。
【0035】
Zの具体例としては、L
1、L
2の具体例で例示した芳香族化合物、又はこれらが複数連結された芳香族化合物等から2個の水素を除いて生じる2価の基が挙げられるが、Nに連結する基は炭素数6〜22の芳香族炭化水素基または炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基である。
【0036】
ここで、Zが複数の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基から構成される場合、例えば下記で示すような連結様式が挙げられ、この場合Ar
21、Ar
23は炭素数6〜22の芳香族炭化水素基または炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基である。また、化学式中で示された連結手を有する基に代わり、式(7)ではAr
22、式(8)ではAr
22、Ar
24、式(9)ではAr
24、Ar
25、Ar
26、が連結手を有することも可能であり、その場合は連結手を有する基が炭素数6〜22の芳香族炭化水素基または炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基である。
【0037】
(式(7)〜(9)中、Ar
21〜Ar
26は置換または未置換の芳香環を示す。)
【0038】
一般式(1)、式(b1)、式(d1)において、pおよびqは0〜7の整数を示す。好ましくは0〜5であり、より好ましくは0〜3である。
【0039】
Ar
1〜Ar
3、Z、およびL
1、L
2は上記のような芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はこれらが連結された基を示すが、これらの基は置換基を有することができる。この場合、置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、又は炭素数1〜20のアルキルスルホニル基であるが、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜24のアラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数12〜36のジアリールアミノ基である。なお、置換基の数は0〜5、好ましくは0〜2が好ましい。
【0040】
上記置換基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルイコシル、ナフチルメチル、アントラニルメチル、フェナンスレニルメチル、ピレニルメチル、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、デセニル、イコセニル、エチニル、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、デシニル、イコシニル、ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチニルアミノ、ジデシルアミノ、ジイコシルアミノ、ジフェニルアミノ、ナフチルフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、ジアントラニルアミノ、ジフェナンスレニルアミノ、ジピレニルアミノ、ジフェニルメチルアミノ、ジフェニルエチルアミノ、フェニルメチルフェニルエチルアミノ、ジナフチルメチルアミノ、ジアントラニルメチルアミノ、ジフェナンスレニルメチルアミノ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ベンゾイル、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、バレリルオキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノニロキシ、デトキシ、ウンデシルオキシ、ドデトキシ、トリデトキシ、テトラデトキシ、ペンタデトキシ、ヘキサデトキシ、ヘプタデトキシ、オクタデトキシ、ノナデトキシ、イコキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ、ペントキシカルボニルオキシ、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル等が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等のC1〜12のアルキル基、フェニルメチル、フェニルエチル、ナフチルメチル、アントラニルメチル、フェナンスレニルメチル、ピレニルメチル等のC7〜20のアラルキル基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノニロキシ、デトキシ等のC1〜10のアルコキシ基、ジフェニルアミノ、ナフチルフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、ジアントラニルアミノ、ジフェナンスレニルアミノ等のC6〜15の芳香族炭化水素基を2つ有するジアリールアミノ基が挙げられる。
【0041】
一般式(1)、式(a1)、一般式(2)、式(c1)において、R、R’、R
1〜R
8は独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基であり、好ましくは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜24のアラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数12〜36のジアリールアミノ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基であり、より好ましくは、水素、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基である。なお、水素以外の基である場合は、それぞれの基は置換基を有してもよい。
【0042】
炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルイコシル、ナフチルメチル、アントラニルメチル、フェナンスレニルメチル、ピレニルメチル、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、デセニル、イコセニル、エチニル、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、デシニル、イコシニル、ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチニルアミノ、ジデシルアミノ、ジイコシルアミノ、ジフェニルアミノ、ナフチルフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、ジアントラニルアミノ、ジフェナンスレニルアミノ、ジピレニルアミノ、ジフェニルメチルアミノ、ジフェニルエチルアミノ、フェニルメチルフェニルエチルアミノ、ジナフチルメチルアミノ、ジアントラニルメチルアミノ、ジフェナンスレニルメチルアミノ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ベンゾイル、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、バレリルオキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノニロキシ、デトキシ、ウンデシルオキシ、ドデトキシ、トリデトキシ、テトラデトキシ、ペンタデトキシ、ヘキサデトキシ、ヘプタデトキシ、オクタデトキシ、ノナデトキシ、イコキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ、ペントキシカルボニルオキシ、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル等が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等の炭素数1〜10のアルキル基、フェニルメチル、フェニルエチル、ナフチルメチル、アントラニルメチル、フェナンスレニルメチル、ピレニルメチル等の炭素数7〜17のアラルキル基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノニロキシ、デトキシ等の炭素数1〜10のアルコキシ基、ジフェニルアミノ、ナフチルフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、ジアントラニルアミノ、ジフェナンスレニルアミノ等の炭素数12〜28のジアリールアミノ基が挙げられる。
【0043】
炭素数6〜22の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基である場合の具体例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、キサンテン、オキサトレン、ジベンゾフラン、ペリキサンテノキサンテン、チオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、チオナフテン、イソチアナフテン、チオフテン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、ピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、チアジアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、カルバゾール、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、フェノテルラジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アンチリジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、又はベンゾイソチアゾールから水素を除いて生じる基が挙げられる。好ましくはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、イソインドール、インダゾール、プリン、イソキノリン、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、インドール、カルバゾール、ジベンゾフラン、又はジベンゾチオフェンから水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0044】
一般式(1)、式(a1)、一般式(2)、式(c1)において、R、R’、R
1〜R
8が水素以外の基であって、その基が置換基を有する場合の置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基である。好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜24のアラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数12〜36のジアリールアミノ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基であり、より好ましくは、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基ならびに炭素数3〜16の芳香族複素環基である。なお、置換基の数はR、R’、R
1〜R
8の1つ当たり、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。
【0045】
上記炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基ならびに炭素数3〜16の芳香族複素環基の具体例は、上記R、R’、R
1〜R
8の具体例と同様である。
【0046】
前記一般式(1)及び(2)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
【0050】
一般式(3)において、l、mは1または2の整数を示す。R
9〜R
12は独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルコキシ基を表すが、好ましくは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基である。
【0051】
一般式(3)において、R
13、R
14は独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基であるが、好ましくは、水素、炭素数1〜10のアルキル基である。
【0052】
一般式(3)において、nは1〜6のいずれかの整数を示し、好ましくは3または4である。
【0053】
一般式(3)において、X
3〜X
5は独立に、C―H又はNを示すが、C−Hであることが好ましい。
【0054】
一般式(3)において、nが2以上の整数の場合、R
13、R
14およびX
3〜X
5は、独立して、変化してもよい。また、それぞれの環の連結位置はオルト位、メタ位であってもパラ位であっても良く、限定されない。
【0055】
前記一般式(3)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
【0057】
また、2つのホスト材料のEA差が0.1eVより離れていると良い結果を与える。EA差が0.1eV以下のホスト同士の混合では電荷バランスがほとんど変わらないことから、本来の素子特性を損なうことなく、薄膜安定性を向上できるが、EA差が0.1eVより離れているホストを混合することで、逆に電子の流れる経路を混合する2つのホストのEAが大きい方に制限することができ、発光層内の電子の流れを抑制することが出来る。その結果、発光層内への電子の閉じ込めが容易になり、高効率でありながら長寿命な素子を提供することができる。好ましくは、EA差が0.2〜1.5eVの範囲にあることがよい。尚、EAの値は、ホスト材料薄膜での、光電子分光法により得られたイオン化ポテンシャルの値と、紫外−可視域の吸収スペクトルを測定し、その吸収端から求めたエネルギーギャップの値を用いて算出することができる。但し、測定方法はこれに限定されない。
【0058】
2つのホスト材料は、素子を作成する前に混合して1つの蒸着源を用いて蒸着しても構わないし、複数の蒸着源を用いた共蒸着等の操作により素子を作成する時点で混合しても構わない。ホスト材料の混合比(重量比)について、特に制限はないが、95:5〜5:95の範囲が好ましく、より好ましくは90:10〜10:90の範囲である。
【0059】
次に、本発明の有機EL素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機EL素子の構造は何ら図示のものに限定されるものではない。
【0060】
(1)有機EL素子の構成
図1は本発明に用いられる一般的な有機EL素子の構造例を模式的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は電子注入層、8は陰極を各々示す。本発明の有機EL素子では、陽極、発光層、電子輸送層及び陰極を必須の層として有するが、必要により他の層を設けてもよい。他の層とは、例えば正孔注入輸送層や電子阻止層及び正孔阻止層が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、正孔注入輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層のいずれか又は両者を意味する。
【0061】
(2)基板
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの平滑で透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0062】
(3)陽極
基板1上には陽極2が設けられるが、陽極は正孔輸送層への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物、インジウム及び/又は亜鉛の酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、あるいは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。更に、導電性高分子の場合は電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。陽極は異なる物質で積層して形成することも可能である。陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常、60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みは、通常、5〜1000nm、好ましくは10〜500nm程度である。不透明でよい場合には、陽極は基板と同一でもよい。また、更には上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0063】
(4)正孔輸送層
陽極2の上に正孔輸送層4が設けられる。両者の間には、正孔注入層3を設けることもできる。正孔輸送層の材料に要求される条件としては、陽極からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、更に安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。また、発光層5に接するために発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないことが求められる。上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、素子には更に耐熱性が要求される。従って、Tgとして85℃以上の値を有する材料が望ましい。
【0064】
本発明で使用できる正孔輸送材料としては、従来この層に用いられている公知の化合物を用いることができる。例えば、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5-234681号公報)、4,4',4"-トリス(1-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J. Lumin., 72-74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体からなる芳香族アミン化合物(Chem.Commun., 2175頁、1996年)、2,2',7,7'-テトラキス-(ジフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth. Metals, 91巻、209頁、1997年)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、各々、混合して用いてもよい。
また、上記の化合物以外に、正孔輸送層の材料として、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7-53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym. Adv. Tech., 7巻、33頁、1996年)等の高分子材料が挙げられる。
【0065】
正孔輸送層を塗布法で形成する場合は、正孔輸送材料を1種又は2種以上と、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤とを添加し、溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により陽極上に塗布し、乾燥して正孔輸送層を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、通常、50重量%以下が好ましい。
【0066】
真空蒸着法で形成する場合は、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10
-4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた、陽極が形成された基板上に正孔輸送層を形成させる。正孔輸送層の膜厚は、通常、1〜300nm、好ましくは 5〜100nmである。この様に薄い膜を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法がよく用いられる。
【0067】
(5)正孔注入層
正孔注入の効率を更に向上させ、かつ、有機層全体の陽極への付着力を改善させる目的で、正孔輸送層4と陽極2との間に正孔注入層3を挿入することも行われている。正孔注入層を挿入することで、初期の素子の駆動電圧が下がると同時に、素子を定電流で連続駆動した時の電圧上昇も抑制される効果がある。正孔注入層に用いられる材料に要求される条件としては、陽極とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定、すなわち、ガラス転移温度が高く、ガラス転移温度としては100℃以上が要求される。更に、イオン化ポテンシャルが低く陽極からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。
【0068】
この目的のために、これまでに銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物(特開昭63−295695号公報)、ポリアニリン(Appl. Phys. Lett., 64巻、1245頁,1994年)、ポリチオフェン(Optical Materials, 9巻、125頁、1998年)等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜(Synth. Met., 91巻、73頁、1997年)や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物(J.Phys. D, 29巻、2750頁、1996年)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)やヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)などのP型有機物(WO2005-109542号公報)が報告されている。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、混合して用いてもよい。正孔注入層の場合も、正孔輸送層と同様にして薄膜形成可能であるが、無機物の場合には、更に、スパッタ法や電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法が用いられる。以上の様にして形成される正孔注入層の膜厚は、通常、1〜300nm、好ましくは 5〜100nmである。
【0069】
(6)発光層
正孔輸送層4の上に発光層5が設けられる。発光層は、単一の発光層から形成されていてもよいし、複数の発光層を直接接するように積層して構成されていてもよい。発光層は、2つのホスト材料と蛍光性発光材料又は燐光性発光材料として構成され、2つのホスト材料は、一般式(1)又は(2)の化合物と一般式(1)〜(3)の化合物の組み合わせが良く、特に一般式(1)又は(2)の化合物と一般式(3)の組み合わせがよい。
【0070】
ホスト材料に添加する蛍光性発光材料としては、ペリレン、ルブレンなどの縮合環誘導体、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン660、DCM1、ペリノン、クマリン誘導体、ピロメテン(ジアザインダセン)誘導体、シアニン色素などが使用できる。
【0071】
ホスト材料に添加する燐光性発光材料としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金などから選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。具体的には以下の特許公報に記載されている化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されない。
【0072】
WO2009-073245号公報、WO2009-046266号公報、WO2007-095118号公報、WO2008-156879号公報、WO2008-140657号公報、US2008-261076号公報、特表2008-542203号公報、WO2008-054584号公報、特表2008-505925号公報、特表2007-522126号公報、特表2004-506305号公報、特表2006-513278号公報、特表2006-50596号公報、WO2006-046980号公報、WO2005113704号公報、US2005-260449号公報、US2005-2260448号公報、US2005-214576号公報、WO2005-076380号公報、US2005-119485号公報、WO2004-045001号公報、WO2004-045000号公報、WO2006-100888号公報、WO2007-004380号公報、WO2007-023659号公報、WO2008-035664号公報、特開2003-272861号公報、特開2004-111193号公報、特開2004-319438号公報、特開2007-2080号公報、特開2007-9009号公報、特開2007-227948号公報、特開2008-91906号公報、特開2008-311607号公報、特開2009-19121号公報、特開2009-46601号公報、特開2009-114369号公報、特開2003-253128号公報、特開2003-253129号公報、特開2003-253145号公報、特開2005-38847号公報、特開2005-82598号公報、特開2005-139185号公報、特開2005-187473号公報、特開2005-220136号公報、特開2006-63080号公報、特開2006-104201号公報、特開2006-111623号公報、特開2006-213720号公報、特開2006-290891号公報、特開2006-298899号公報、特開2006-298900号公報、WO2007-018067号公報、WO2007/058080号公報、WO2007-058104号公報、特開2006-131561号公報、特開2008-239565号公報、特開2008-266163号公報、特開2009-57367号公報、特開2002-117978号公報、特開2003-123982号公報、特開2003-133074号公報、特開2006-93542号公報、特開2006-131524号公報、特開2006-261623号公報、特開2006-303383号公報、特開2006-303394号公報、特開2006-310479号公報、特開2007-88105号公報、特開2007-258550号公報、特開2007-324309号公報、特開2008-270737号公報、特開2009-96800号公報、特開2009-161524号公報、WO2008-050733号公報、特開2003-73387号公報、特開2004-59433号公報、特開2004-155709号公報、特開2006-104132号公報、特開2008-37848号公報、特開2008-133212号公報、特開2009-57304号公報、特開2009-286716号公報、特開2010-83852号公報、特表2009-532546号公報、特表2009-536681号公報、特表2009-542026号公報等。
【0073】
好ましい燐光発光ドーパントとしては、Ir等の貴金属元素を中心金属として有するIr(ppy)3等の錯体類、Ir(bt)2・acac3等の錯体類、PtOEt3等の錯体類が挙げられる。これらの錯体類の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されない。
【0075】
前記燐光発光ドーパントが発光層中に含有される量は、2〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲にあることがよい。
【0076】
発光層の膜厚については特に制限はないが、通常、1〜300nm、好ましくは5〜100nmであり、正孔輸送層と同様の方法にて薄膜形成される。
【0077】
(7)電子輸送層
素子の発光効率を更に向上させることを目的として、発光層5と陰極8の間に、電子輸送層6が設けられる。電子輸送層としては、陰極からスムーズに電子を注入できる電子輸送性材料が好ましく、一般的に使用される任意の材料を用いることができる。このような条件を満たす電子輸送材料としては、Alq3などの金属錯体(JP 59-194393A)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(USP 5,645,948)、キノキサリン化合物(JP6-207169A)、フェナントロリン誘導体(JP5-331459A)、2−t−ブチル−9,10−N,N'−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0078】
電子輸送層の膜厚は、通常、1〜300nm、好ましくは5〜100 nmである。電子輸送層は、正孔輸送層と同様にして塗布法あるいは真空蒸着法により発光層上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0079】
(8)陰極
陰極8は、電子輸送層6に電子を注入する役割を果たす。陰極として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極の膜厚は通常、陽極と同様である。低仕事関数金属からなる陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
更に、電子注入層7として、陰極8と電子輸送層6の間にLiF 、MgF
2、Li
2O等の極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも素子の効率を向上させる有効な方法である。
【0080】
なお、
図1とは逆の構造、すなわち、基板1上に陰極8、電子注入層7、電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機EL素子を設けることも可能である。この場合も、必要により層を追加したり、省略したりすることが可能である。
【0081】
本発明の有機EL素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれでもあることができる。本発明の有機EL素子によれば、発光層を2つのホスト材料からなる混合ホストとし、そのホスト材料の内少なくとも一つに特定の化合物を用いることで、低い電圧であっても発光効率が高くかつ駆動安定性においても大きく改善された素子が得られ、フルカラーあるいはマルチカラーのパネルへの応用において優れた性能を発揮できる。
【0082】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。
【実施例】
【0083】
実施例1
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10
−4Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層として銅フタロシアニン(CuPc)を20nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層として4,4−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)を20nmの厚さに形成した。次に発光層として、第一ホストとして化合物1−4を、第二ホストとして化合物3−37を、発光層ゲストとしてトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(PPy)
3)をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに形成した。この時、第一ホストと第二ホストとIr(PPy)
3の蒸着速度比(気化物の体積速度比)は、47:47:6であった。次に、正孔阻止層としてアルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノラート(BAlq)を10nmの厚さに形成した。次に、電子輸送層としてトリス−(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)(Alq
3)を40nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を100nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。表1に作製した有機EL素子の輝度、外部量子効率及び輝度半減寿命を示す。
【0084】
実施例2〜4
実施例1において、発光層第二ホストとして表1に記載した化合物を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。表1に作製した有機EL素子の輝度、外部量子効率及び輝度半減寿命を示す。
【0085】
例11〜15(比較)
実施例1において、発光層ホストとして表1に記載した化合物を単独で用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。なお、ホスト量は、実施例1における第1ホストと第2ホストの合計と同じ量とし、ゲスト量は同様とした。得られた有機EL素子に電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。表1に作製した有機EL素子の輝度、外部量子効率及び輝度半減寿命を示す。
【0086】
表1に、作製した有機EL素子の輝度、外部量子効率(初期特性)及び輝度半減寿命(寿命特性)を示す。輝度及び外部量子効率は、駆動電流2.5mA/cm
2の時の値であり、輝度半減時間は、初期輝度1000cd/m
2の時の値である。化合物No.は上記化学式に付した番号である。
【0087】
【表1】
【0088】
表1において、本発明の実施例1〜4と例11〜15とを比較すると、特定骨格を有する二種類の化合物を発光層ホストとして用いることにより、輝度及び外部量子効率が向上し、輝度半減時間が著しく伸長することがわかる。これらの結果より、本発明によれば、高効率、かつ、良好な寿命特性を示す有機EL燐光素子を実現可能であることが明らかとなった。
【0089】
実施例5
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10
−4Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層としてCuPcを20nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPBを20nmの厚さに形成した。次に発光層として、第一ホストとして化合物2−5を、第二ホストとして化合物3−37を、発光層ゲストとしてIr(PPy)
3をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに形成した。この時、第一ホストと第二ホストとIr(PPy)
3の蒸着速度比は、47:47:6であった。次に、正孔阻止層としてBAlqを10nmの厚さに形成した。次に、電子輸送層としてAlq
3を40nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を100nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。
表2に作製した有機EL素子の輝度、外部量子効率及び輝度半減寿命を示す。
【0090】
実施例6〜7
実施例5において、発光層第二ホストとして表2に記載してある化合物を用いた以外は実施例5と同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。表2に作製した有機EL素子の輝度、外部量子効率及び輝度半減寿命を示す。
【0091】
例16〜19(比較)
実施例5において、発光層ホストとして表2に記載してある化合物を単独で用いた以外は実施例5と同様にして有機EL素子を作製した。なお、ホスト量は、実施例5における第1ホストと2ホストの合計と同じ量とした。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。
【0092】
表2に作製した有機EL素子の輝度、外部量子効率及び輝度半減寿命を示す。輝度及び外部量子効率は、駆動電流2.5mA/cm
2の時の値であり、輝度半減時間は、初期輝度1000cd/m
2の時の値である。
【0093】
【表2】
【0094】
表2において、本発明の実施例5〜7と例16〜19とを比較すると、特定骨格を有する二種類の化合物を発光層ホストとして用いることにより、輝度及び外部量子効率が向上し、輝度半減時間が著しく伸長することがわかる。これらの結果より、本発明によれば、高効率、かつ、良好な寿命特性を示す有機EL燐光素子を実現可能であることが明らかとなった。
【0095】
例20(比較)
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10
−4 Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層としてCuPcを20nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPBを20nmの厚さに形成した。次に発光層として、第一ホストとして化合物2−5を、第二ホストとして以下に示す化合物Aを、発光層ゲストとしてIr(PPy)
3をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに形成した。この時、第一ホストと第二ホストとIr(PPy)
3の蒸着速度比は、47:47:6であった。次に、正孔阻止層としてBAlqを10nmの厚さに形成した。次に、電子輸送層としてAlq
3を40nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を100nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0096】
また、発光層ホストとして下記化合物Aを単独で用いた有機EL素子も同様に作製した。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、両有機EL素子から極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。表2に作製した有機EL素子の輝度、外部量子効率及び輝度半減寿命を示す。
【0097】
【0098】
表2より、化合物2−5と化合物Aとの混合ホストと、化合物A単独ホスト及び化合物2−5単独ホスト(例16)とを比較すると、化合物2−5と化合物Aとの混合ホストを発光層ホストに用いることにより、輝度及び外部量子効率は向上するが、輝度半減時間は短縮してしまったことがわかる。この結果より、特定骨格以外の化合物の混合ホストを発光層ホストとして用いた場合には、駆動寿命特性が劣化する場合があることが判った。
【0099】
実施例8
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10
−4Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層としてCuPcを25nmの厚さに形成し、次に第一正孔輸送層としてNPBを10nmの厚さに形成し、さらに第二正孔輸送層として4,4',4''−トリス(N−カルバゾリル)−トリフェニルアミン(TCTA)を10nmの厚さに形成した。次に発光層として、第一ホストとして化合物1−90を、第二ホストとして化合物3−4を、発光層ゲストとしてトリス[1−(4′−シアノフェニル)−3−メチルベンゾイミダゾール−2−イリデン−C
2,C
2']−イリジウム(III)(Ir(cn-pmic)
3)をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに形成した。この時、第一ホストと第二ホストとIr(cn-pmic)
3の蒸着速度比は、45:45:10であった。次に、正孔阻止層として2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)を10nmの厚さに形成した。次に、電子輸送層としてAlq
3を25nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を100nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、極大波長460nmの発光スペクトルが観測され、Ir(cn-pmic)
3からの発光が得られていることがわかった。表3に作製した有機EL素子の輝度、外部量子効率及び輝度半減寿命を示す。
【0100】
例21(比較)
実施例8において、発光層ホストとして化合物1−90のみを使用した以外は、実施例8と同様にして有機EL素子を作製した。ホスト量は、実施例8における第1ホストと第2ホストの合計と同じ量とした。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長460nmの発光スペクトルが観測され、Ir(cn-pmic)
3からの発光が得られていることがわかった。表3に作製した有機EL素子の輝度、外部量子効率及び輝度半減寿命を示す。
【0101】
例22(比較)
実施例8において、発光層ホストとして化合物3−4のみを使用した以外は、実施例8と同様にして有機EL素子を作成した。ホスト量は、実施例8における第1ホストと第2ホストの合計と同じ量とした。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長460nmの発光スペクトルが観測され、Ir(cn-pmic)
3からの発光が得られていることがわかった。
【0102】
表3に作製した有機EL素子の輝度、外部量子効率及び輝度半減寿命を示す。輝度及び外部量子効率は、駆動電流2.5mA/cm
2の時の値であり、輝度半減時間は、初期輝度1000cd/m
2の時の値である。
【0103】
【表3】
【0104】
表3において、本発明の実施例8と例21〜22とを比較すると、特定骨格を有する二種類の化合物を発光層ホストとして用いることにより、輝度及び外部量子効率が向上し、輝度半減時間が著しく伸長することがわかる。これらの結果より、本発明によれば、高効率、かつ、良好な寿命特性を示す有機EL燐光素子を実現可能であることが明らかとなった。
【0105】
本発明の有機EL素子は、特定の化合物を混合ホストとして用いることで、低電圧でありながら、燐光発光分子の最低励起三重項エネルギーを閉じ込めるのに十分高い最低励起三重項エネルギーを有していることから、発光層内からのエネルギー流出がなく、高効率かつ長寿命を達成でき、フラットパネルディスプレイ(携帯電話表示素子、車載表示素子、OAコンピュータ表示素子やテレビ等)、面発光体としての特徴を生かした光源(照明、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板や標識灯等への応用において、その技術的価値は大きいものである。